IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライク・ズワーン・ザードテールト・アン・ザードハンデル・ベスローテン・フェンノートシャップの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】CMV抵抗性対立遺伝子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/29 20060101AFI20230912BHJP
   A01H 6/02 20180101ALI20230912BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20230912BHJP
   C12Q 1/6895 20180101ALI20230912BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20230912BHJP
   C12Q 1/6858 20180101ALN20230912BHJP
【FI】
C12N15/29 ZNA
A01H6/02
A01H1/00 Z
C12Q1/6895 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6858 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020517939
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018076640
(87)【国際公開番号】W WO2019063839
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/074862
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15/720,757
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】NCIMB  NCIMB 42651
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500502222
【氏名又は名称】ライク・ズワーン・ザードテールト・アン・ザードハンデル・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】フィンセント・ラウレンス・アドリアヌス・コック
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ヘールト・ヤン・フェイツマ
(72)【発明者】
【氏名】ラウル・ヤコブス・ヨハネス・マリア・フライテルス
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0142924(US,A1)
【文献】Plant Molecular Biology Reporter,2015年,Vol.33,pp.1996-2005
【文献】The Plant Journal,2002年,Vol.32,pp.655-667
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
A01H 1/00-17/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウレンソウ植物中に存在する場合にCMVに対する抵抗性を付与するアルファ-CMVと命名される対立遺伝子であって、前記対立遺伝子によりコードされるタンパク質が、CC-NBS-LRRタンパク質であり、そのアミノ酸配列において:a)そのN末端でモチーフ「MAEIGYSVC」;b)モチーフ「KWMCLR」;およびc)配列番号10に少なくとも95%配列同一性を有するLRRドメインを含み、ここで前記対立遺伝子が、配列番号1に少なくとも0%配列同一性を有するゲノムヌクレオチド配列を有する、対立遺伝子。
【請求項2】
対立遺伝子が、優先度の高い順に配列番号2に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列同一性を有するコーディング配列を有する、請求項1に記載の対立遺伝子。
【請求項3】
対立遺伝子が、優先度の高い順に配列番号3に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列同一性を有するコーディング配列を有する、請求項1に記載の対立遺伝子。
【請求項4】
前記対立遺伝子が優先度の高い順に配列番号4に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、100%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする、請求項1に記載の対立遺伝子。
【請求項5】
対立遺伝子が、優先度の高い順に配列番号5に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、100%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする、請求項1に記載の対立遺伝子。
【請求項6】
そのアミノ酸配列において:a)そのN末端でモチーフ「MAEIGYSVC」;b)モチーフ「KWMCLR」;およびc)優先度の高い順に配列番号10に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、100%配列同一性を有するLRRドメインを含むCC-NBS-LRRタンパク質をコードする核酸であって、前記核酸がホウレンソウ植物中に存在する場合にCMVに対する抵抗性を付与する、核酸。
【請求項7】
優先度の高い順に配列番号1に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列同一性を有するゲノムヌクレオチド配列を有する、請求項6に記載の核酸。
【請求項8】
第一親ホウレンソウ植物を第二親ホウレンソウ植物と交雑させること、および得られたハイブリッドホウレンソウ種子を収穫することを含む、ハイブリッドホウレンソウ種子の製造方法であって、第一および/または第二親ホウレンソウ植物が請求項1-5のいずれかに記載の対立遺伝子または請求項6もしくは7に記載の核酸を含む、方法。
【請求項9】
第一および/または第二親が近交系の植物である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
請求項または請求項に記載の方法により生産される種子から成長したハイブリッドホウレンソウ植物。
【請求項11】
請求項1-5のいずれかに記載の対立遺伝子または請求項6もしくは7に記載の核酸を保有するホウレンソウ植物を同定する、または選択するための方法であって、植物のゲノムにおけるゲノムヌクレオチド配列またはその一部の存在を決定することを含み、ここで、前記配列が、配列番号1に優先度の高い順に90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列同一性を有する、方法。
【請求項12】
請求項1-2および4のいずれかに記載の対立遺伝子または請求項6もしくは7に記載の核酸を保有するホウレンソウ植物を同定する、または選択するための方法であって、植物のゲノムにおけるコーディング配列またはその一部の存在を決定することを含み、ここで、前記配列が、配列番号2に優先度の高い順に90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列同一性を有する、方法。
【請求項13】
請求項1、3および5のいずれかに記載の対立遺伝子または請求項6もしくは7に記載の核酸を保有するホウレンソウ植物を同定する、または選択するための方法であって、植物のゲノムにおけるコーディング配列またはその一部の存在を決定することを含み、ここで、前記配列が、優先度の高い順に配列番号3に90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列同一性を有する、方法。
【請求項14】
請求項1で規定されるLRRドメインの存在を決定することを含む、請求項1113のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
LRRドメインがLRRドメインを増幅するプライマー対を使用することにより決定され、ここでフォワードプライマーが配列番号6の配列を含む核酸分子である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
LRRドメインがLRRドメインを増幅するプライマー対を使用することにより決定され、ここでリバースプライマーが配列番号7の配列を含む核酸分子である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
配列番号6の配列を含む核酸分子であるフォワードプライマーおよび配列番号7の配列を含む核酸分子であるリバースプライマーを含むプライマー対。
【請求項18】
(a)請求項1-5のいずれか一項に記載の対立遺伝子または請求項6もしくは7に記載の核酸を含む植物を別の植物と交雑すること;(b)任意に1回以上の自殖および/または交雑を実施すること;(c)1回以上の自殖および/または交雑のあとに請求項1-5のいずれかに記載の前記対立遺伝子または請求項6もしくは7に記載の核酸を含む植物を選択すること:を含む、CMVへの抵抗性を示すホウレンソウ植物の製造方法。
【請求項19】
対立遺伝子を含む植物の選択が、請求項1116のいずれか一項に記載の方法による対立遺伝子の存在を決定することを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、キュウリモザイクウイルス(CMV)に対するホウレンソウ植物における抵抗性を付与できる対立遺伝子に関する。本発明はまた、前記対立遺伝子を保持するホウレンソウ植物、前記ホウレンソウ植物の繁殖材料(propagation material)、前記ホウレンソウ植物の細胞、および前記ホウレンソウ植物の種子に関する。本発明はさらに、対立遺伝子を保持するホウレンソウ植物を生産する方法、およびCMV抵抗性を付与するための育種における対立遺伝子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ホウレンソウ(Spinacia oleracea L.)は野菜として栽培されるヒユ科の顕花植物である。ホウレンソウの消費可能な部分は栄養成長期の葉および葉柄である。ホウレンソウは、バラ売り、束売り、袋詰め、缶詰、冷凍で販売される。ホウレンソウには3つの基本的な種類:工業用、生鮮用、アジア向けのホウレンソウがある。これらの種類の中には、サボイ、セミサボイ、スムースの3つの異なる葉が認識され得る。サボイはシワがあり(crinkly)かつカールした(curly)葉を有する。平らなまたは滑らかな(スムース)葉のホウレンソウは、広く、滑らかな葉を持っている。セミサボイは、葉が少ししわになっている品種である。ホウレンソウの主な市場はベビーリーフである。ベビーのホウレンソウの葉は、多くの場合、平らな葉の品種であり、通常、収穫される葉は約8センチメートル以下である。これらの柔らかくて甘い葉は、束ではなくばら売りされる。サラダによく使用されるが、軽く調理することもできる。
【0003】
ホウレンソウの生産を脅かす病害の1つは、キュウリモザイクウイルス(Cucumber Mosaic Virus)(CMV)である。キュウリモザイクウイルスは、ブロモウイルス科およびククモウイルス属に属する一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。前記ウイルスは世界中に分布しており、既知の植物ウイルスの中で最も広い宿主範囲を持っていると考えられている。100以上の植物科で1200以上の植物種に感染することができると報告されている。
【0004】
前記ウイルスは、多くのさまざまな方法で、例えば、機械的には、アブラムシなどの昆虫媒介生物によって、種子上で、さらには寄生雑草によっても伝染され得る。CMV感染の症状および重症度は、植物の種および年齢に依存する。CMVの典型的な症状は、斑点、黄変、リングスポットの形成、葉、果実、および花の発育不良および歪みである。
【0005】
ホウレンソウにおけるCMVはホウレンソウ胴枯病としても知られる。感染したホウレンソウ植物で観察される症状は、一般に葉の萎黄病の斑点、葉の狭小化、しわ、内転、ならびに葉脈の歪みである。
【0006】
ホウレンソウ栽培品種の一部にはCMV抵抗性が観察されるが、それらの栽培品種における抵抗性の遺伝学的基礎は、これまで分子レベルで特徴付けられておらず、すなわち、これまでの原因遺伝子とその配列は不明であった。さらに、ホウレンソウにおけるCMV抵抗性を同定することができる当技術分野で既知の密接に関連する分子マーカーも、当技術分野で既知の遺伝子自体の分子特性も存在しない。したがって、ホウレンソウ植物におけるCMV抵抗性の同定は、現在表現型アッセイに基づいており、病害試験で病害症状の非存在に基づいて抵抗性について多くの系統がスクリーニングされる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ホウレンソウにおけるCMVに抵抗性を付与する新しい抵抗性対立遺伝子を提供し、この抵抗性対立遺伝子を同定するための分子ツールを提供することである。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明に至る研究において、驚くべきことに、いくつかのPeronospora farinosa f.sp.spinaciae抵抗性を付与する対立遺伝子が観察されたのと同じ遺伝子座にCMV抵抗性を付与する対立遺伝子も位置することが見出された。
【0009】
この遺伝子座には、1または2のいわゆるWOLF遺伝子が位置する。「アルファ-WOLF」タイプまたは「ベータ-WOLF」タイプ遺伝子のいずれかである(まとめて「WOLF遺伝子またはアルファ-/ベータ-WOLF遺伝子」と呼ばれる)これらの1または2の遺伝子は、それぞれCC-NBS-LRR(コイルドコイル-ヌクレオチド結合部位-ロイシンリッチリピート(Coiled Coil-Nucleotide Binding Site-Leucine-Rich Repeat))ファミリーに属するタンパク質をコードする。ホウレンソウ植物に存在する対立遺伝子バリアント(または複数の対立遺伝子バリアント)に応じて、前記植物はベト病(downy mildew)の病原種に対する特定の抵抗性プロファイルを付与するWOLFタンパク質のバリアントを産生するだろう。本発明に至る研究は、アルファ-WOLF型の1つの対立遺伝子バリアントがベト病への抵抗性を提供せず、代わりにCMVへの抵抗性を与えることを解明した。
【0010】
本発明の文脈において、用語「対立遺伝子」または「対立遺伝子バリアント」は、特定の表現型、すなわち抵抗性、より具体的にはCMV抵抗性に関連する遺伝子のバージョンを示すために使用される。ホウレンソウ植物は、1または2のWOLF遺伝子を保有し得ることがわかった。これらの2つのWOLF遺伝子のそれぞれに対して、複数の対立遺伝子が存在する。本発明のWOLF遺伝子対立遺伝子は、CMVへの抵抗性を付与する。本発明の文脈において、対立遺伝子または対立遺伝子バリアントは核酸である。
【0011】
ホウレンソウ品種ビロフレー(Viroflay)のベータ-WOLF遺伝子は、スキャフォールド12735(配列:GenBank:KQ143339.1)、213573-221884位に位置する。ホウレンソウ植物がアルファ-WOLF遺伝子を保有するまたはアルファ-WOLF遺伝子のみ保有する場合にも、アルファ-WOLF遺伝子は、ベータ-WOLF遺伝子がビロフレーゲノムアセンブリーにおけるスキャフォールド12735に位置するのとほとんど同じ場所に位置する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
CMVに感受性であるホウレンソウ品種ビロフレーについてのゲノムアセンブリーが公開されている(Spinacia oleracea cultivar SynViroflay, whole genome shotgun sequencing project; Bioproject:PRJNA41497; GenBank:AYZV00000000.2; BioSample:SAMN02182572; GenBank:AYZV00000000.2; BioSample:SAMN02182572、Dohm et al, 2014, Nature 505:546-549)。ビロフレーのこのゲノムアセンブリーでは、ベータ-WOLF遺伝子はスキャフォールド12735(配列:GenBank:KQ143339.1)、213573-221884に位置する。この間隔でカバーされる配列は、ビロフレーのベータ-WOLF遺伝子の全ゲノム配列と、前記遺伝子の上流の2000塩基対配列と、遺伝子の下流配列に加えて、WOLF遺伝子の下流にある隣接遺伝子の遺伝子座までを含む。ホウレンソウ品種ビロフレーは単一のWOLF遺伝子、すなわちベータ-WOLF遺伝子を有するのみであるが、多くのほかのホウレンソウ系統は、ゲノムにおける同じ位置で単一のアルファ型WOLF遺伝子を有する。他のホウレンソウ系統はゲノムにおけるほぼ同じ位置で2つのWOLF遺伝子を有する。かかる場合に、2つのWOLF遺伝子は互いに隣接して位置する。2つのWOLF遺伝子を有するほとんどのホウレンソウ系統では、WOLF遺伝子の1つはアルファ型に属し、かつ他方のWOLF遺伝子は、ベータ型に属する。本発明に至る研究では、WOLF遺伝子座におけるこの対立遺伝子変異がPeronospora farinosa f.sp.spinaciaeの病原種に対する抵抗性における差異の原因であることが観察されたが、驚くべきことに、対立遺伝子バリアントの1つがベト病の代わりにCMVに対する抵抗性を付与する。
【0013】
アルファ-WOLF遺伝子の対立遺伝子およびベータ-WOLF遺伝子の対立遺伝子の差異は、コードされたタンパク質配列の特定の保存されたアミノ酸モチーフの存在にある。上述の通り、すべてのWOLFタンパク質はN末端からC末端に当技術分野で一般的に知られている以下のドメインを有する:コイルドコイルドメイン(RX-CC-様、cd14798)、NBSドメイン(「NB-ARCドメイン」とも呼ばれる、pfam00931;van der Biezen & Jones, 1998, Curr. Biol. 8:R226-R228)、およびLRRドメインを構成するロイシンリッチリピート(IPR032675)。さらに、すべてのWOLFタンパク質は、それらのアミノ酸配列中にN末端でモチーフ「MAEIGYSVC」を含む。これに加えて、すべてのアルファ-WOLFタンパク質は、それらのアミノ酸配列中にモチーフ「KWMCLR」を含むのに対して、すべてのベータ-WOLFタンパク質は、それらのアミノ酸配列中にモチーフ「HVGCVVDR」を含む。
【0014】
本発明は、アルファ-CMVと命名されるアルファ-WOLF遺伝子の新たなCMV抵抗性を付与する対立遺伝子に関する。
【0015】
具体的には、本発明は、CMV抵抗性を付与するアルファ-CMVと命名される対立遺伝子に関し、ここで、前記対立遺伝子によりコードされるタンパク質は、CC-NBS-LRRタンパク質であり、そのアミノ酸配列において以下を含む:a)そのN末端でモチーフ「MAEIGYSVC」;b)モチーフ「KWMCLR」;およびc)優先度の高い順に配列番号10に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するLRRドメイン。任意に、アルファ-CMV対立遺伝子は、そのアミノ酸配列においてさらなるモチーフ、すなわち「DQEDEGEDN」をさらに含む。
【0016】
本発明の目的のために、アルファ-CMV対立遺伝子によりコードされるタンパク質のLRRドメインは、優先度の高い順に、配列番号10に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するアミノ酸配列として同定される。本発明のLRRドメインはモチーフ「KWMCLR」で始まる。
【0017】
当業者は配列類似性の計算方法に精通している。適切には、配列類似性はEBLOSUM62マトリックスおよび「類似性スコア」を使用して、EMBOSSストレッチャー6.6.0(www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_stretcher)を使用して計算される。
【0018】
一実施形態では、アルファ-CMV対立遺伝子によりコードされるタンパク質のLRRドメインは優先度の高い順に配列番号10に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するアミノ酸配列として規定される。
【0019】
一実施形態では、本発明は、そのアミノ酸配列において以下を含むCC-NBS-LRRタンパク質をコードする核酸に関する:a)そのN末端でモチーフ「MAEIGYSVC」;b)モチーフ「KWMCLR」;およびc)優先度の高い順に配列番号10に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するLRRドメイン。
【0020】
さらなる実施形態では、本発明は、優先度の高い順に配列番号1に少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するゲノムヌクレオチド配列を有する核酸に関する。
【0021】
一実施形態では、本発明は、優先度の高い順に配列番号2または配列番号3に少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するコーディング配列を有する核酸に関する。
【0022】
本明細書中で規定されるアルファ-CMV対立遺伝子のLRRドメインは、特定のプライマーを使用してLRRドメインのアミノ酸配列をコードするゲノムDNAを増幅および配列決定し、続いてDNA配列をアミノ酸配列に翻訳し、それにより正しいリーディングフレームを選択する際に常識を適用することにより、決定してもよい。当業者はhttp://web.expasy.org/translate/で見つけることができるような無料で利用できるオンラインバイオインフォマティクスツールを使用してこれを行うことができる。
【0023】
アルファ-CMVなどのアルファ-WOLF遺伝子のLRRドメインのゲノム配列は、配列番号6の配列を有する核酸分子であるフォワードプライマーおよび配列番号7の配列を有する核酸分子であるリバースプライマー、を有するプライマー対を使用して増幅されてもよい。
【0024】
配列番号6および配列番号7を有するプライマーを使用してアルファ-CMV対立遺伝子などのアルファ-WOLF遺伝子のLRRドメインコード領域を増幅するための、Platinum Taq enzyme(Thermo Fisher Scientific)を使用するPCR条件は、以下のとおりである:95℃で3分(初期の変性ステップ);40増幅サイクルであって、各サイクルは以下からなる:95℃で30秒変性、60℃で30秒アニーリング、および72℃で30秒伸長;72℃で2分(最終伸長ステップ)。
【0025】
ベータ-WOLF遺伝子、例えば変種ビロフレーに存在するようなヌル(null)対立遺伝子のLRRドメインは、配列番号8の配列を有する核酸分子であるフォワードプライマーおよび配列番号7の配列を有する核酸分子であるリバースプライマーを使用して増幅されてもよい。
【0026】
配列番号8および配列番号7を有するプライマーを使用するベータ-WOLF遺伝子のLRRドメインコード領域を増幅するための、Platinum Taq enzyme(Thermo Fisher Scientific)を使用するPCR条件は以下の通りである:95℃で3分(初期の変性ステップ);40増幅サイクルであって、各サイクルは以下からなる:95℃で30秒変性、58℃で50秒アニーリングおよび72℃で50秒伸長;72℃で2分(最終伸長ステップ)。
【0027】
したがって、本発明はまた、アルファ-WOLF遺伝子のLRRドメインを増幅するための、より具体的にはアルファ-CMV対立遺伝子のLRRドメインを増幅するための、プライマー対に関し、ここで、フォワードプライマーが配列番号6の配列を含む核酸分子であり、かつリバースプライマーは配列番号7の配列を含む核酸分子である。本明細書で開示されるプライマーは、上述の条件を使用してWOLF遺伝子の一部を選択的に増幅するために具体的に設計されており、他のCC-NBS-LRRタンパク質コード遺伝子を増幅するためのものではない。
【0028】
本発明は、ホウレンソウ植物中に存在する場合にCMVに対する抵抗性を付与するアルファ-CMVに関し、ここで、前記対立遺伝子によりコードされるタンパク質は、CC-NBS-LRRタンパク質であり、そのアミノ酸配列において以下を含む:a)そのN末端でモチーフ「MAEIGYSVC」;およびb)モチーフ「KWMCLR」;およびここで前記対立遺伝子が、優先度の高い順に配列番号1に少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するゲノムヌクレオチド配列を有する。
【0029】
本発明は、優先度の高い順に配列番号1に少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するゲノム配列を有するアルファ-CMV対立遺伝子に関する。
【0030】
表2で提供される配列番号21は、アルファ-CMV対立遺伝子のゲノム配列およびベータ-CMV対立遺伝子のゲノム配列を表す。配列番号21は、アルファ-CMV対立遺伝子の開始コドン(ATG)の上流の2キロベース領域をさらに含む。配列番号2により表されるアルファ-CMV対立遺伝子のコーディング配列を使用することにより、当業者は配列番号1により表される開始コドン(ATG)の上流の2キロベース領域を有するアルファ-CMV対立遺伝子のゲノム配列を同定できる。
【0031】
本発明は、2つの異なるスプライスバリアントに関する。一実施形態では、本発明は、優先度の高い順に配列番号2に少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するコーディング配列を有するアルファ-CMV対立遺伝子に関する。これはアルファ-CMV対立遺伝子の第一スプライスバリアントである。別の実施形態では、本発明は、優先度の高い順に配列番号3に少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するコーディング配列を有するアルファ-CMV対立遺伝子に関する。これは、アルファ-CMV対立遺伝子の第二スプライスバリアントである。
【0032】
本発明のさらなる態様では、アルファ-CMV対立遺伝子は、優先度の高い順に、配列番号4に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。
【0033】
別の実施形態では、アルファ-CMV対立遺伝子は、優先度の高い順に配列番号5に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。
【0034】
アルファ-CMV対立遺伝子はホウレンソウ植物中に存在する場合にCMVへの抵抗性、好ましくはCMVへの完全な抵抗性を付与する。ホウレンソウ植物におけるCMVに対する抵抗性は、植物が2または3の本葉を有する場合に、2つの単離株(NL16およびSP43)の混合物であるCMVウイルスを植物に機械的に播種することにより試験されてもよい。試験される植物は昼間温度20℃、夜間温度18℃の状態で栽培され、少なくとも16時間光を受ける。播種は植物のすべての本葉にカーボランダム(carborundrum)粉末をまぶし、その後播種物を浸したスポンジでそれらをこすることにより行われる。播種物は水で希釈された等量の両方の分離株の混合物であり、好ましくは1:10希釈である。接種後、植物は水でわずかにすすがれる。症状は播種後7-9日観察されてもよい。抵抗性植物、すなわち本発明の対立遺伝子を含む植物は症状を示さないのに対して、感受性植物は典型的には矮性成長および植物の中心にモザイク症状を示す。
【0035】
本明細書に記載されている試験の詳細な例は、ホウレンソウの識別性、均一性、安定性に関するCPVOプロトコルで見つけることができる:http://www.cpvo.europa.eu/documents/TP/vegetales/TP_055-5Rev_Spinacia_oleracea.pdf。
【0036】
本発明の別の態様は、本発明のアルファ-CMV対立遺伝子を含むホウレンソウ植物に関し、種子の代表的なサンプルはNCIMB受託番号42651でNCIMBに寄託された。
【0037】
さらなる実施形態では、アルファ-CMV対立遺伝子を含む本発明の植物は、農学的にエリートなホウレンソウ植物である。
【0038】
本発明の文脈において、農学的にエリートなホウレンソウ植物は、人間の介入の結果である、識別可能で望ましい農学的形質の蓄積をもたらす遺伝子型を有する非自然発生の植物であり、例えば、交雑と選択、変異誘発、形質転換、またはそうでなければかかる形質を導入することによって達成される。農学的にエリートなホウレンソウ植物は、繁殖系統(例えば戻し交配(backcrss)系統、近交系(inbrerd))、栽培品種(cultivars)および品種(varieties)(開放受粉した、またはハイブリッド)などの種類にかかわらず任意の栽培されるSpinacia oleracea植物を含む。野生で発生するSpinacia oleraceaの植物(すなわち栽培されていないホウレンソウ)またはSpinacia tetrandraおよびSpinacia turkestanicaなどのSpinacia oleraceaの近縁野生種は、この定義に包含されない。
【0039】
好ましくは、アルファ-CMV対立遺伝子を含む農学的にエリートなホウレンソウ植物は、近交系またはハイブリッドの植物である。
【0040】
本明細書中で使用される場合、近交系の植物は、3回以上の自殖または戻し交配の結果である植物集団の植物;または倍加半数体である。近交系は、例えば、商用ハイブリッドの生産に使用される親系統であってもよい。
【0041】
本明細書で使用される場合、ハイブリッド植物は、様々な遺伝子型を有する2つの異なる植物間の交雑の結果である植物である。より具体的には、ハイブリッド植物は、2つの異なる近交系の植物間の交雑の結果である。かかるハイブリッド植物はFハイブリッド品種の植物であってもよい。
【0042】
ヘテロ接合型でアルファ-CMV対立遺伝子を保有する植物は、例えば品種ビロフレーに存在するようなベータ-WOLF0対立遺伝子をさらに含んでもよく、ここで、ベータ-WOLF0対立遺伝子はCMVまたはベト病への抵抗性を付与しない。あるいは、アルファ-CMV対立遺伝子についてヘテロ接合の植物は、ベト病への抵抗性を提供するアルファ-/ベータ-WOLF遺伝子の対立遺伝子をさらに含んでもよい。好ましくは、かかる対立遺伝子は1種以上のベト病への少なくとも中間的な抵抗性を提供するであろう。より好ましくは、かかる対立遺伝子は少なくとも10種のベト病への少なくとも中間的な抵抗性を提供するだろう。最も好ましくは、植物がPeronospora farinosa f.sp.spinaciae種Pfs:1-Pfs:16に完全に抵抗性であるように、アルファ-/ベータ-WOLF遺伝子の対立遺伝子は、ベト病に対する抵抗性を付与する。
【0043】
一実施形態では、本発明は、アルファ-CMV対立遺伝子およびベト病抵抗性を付与するアルファ-/ベータ-WOLF遺伝子の対立遺伝子を含む植物に関し、ここで、ベト病抵抗性を付与する対立遺伝子は、配列番号13に優先度の高い順に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するゲノム配列を有するベータ-WOLF3であり、かつここで前記植物は、CMVおよびPeronospora farinosa f.sp.spinaciae種Pfs:1、Pfs:3、Pfs:5、Pfs:9、Pfs:11、Pfs:12、Pfs:14、およびPfs:16に少なくとも抵抗性である。
【0044】
別の実施形態では、本発明は、アルファ-CMV対立遺伝子およびベト病抵抗性を付与するアルファ-/ベータ-WOLF遺伝子の対立遺伝子を含む植物に関し、ここで、ベト病抵抗性を付与する対立遺伝子が、配列番号14に優先度の高い順に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するゲノム配列を有するアルファ-WOLF6であり、かつ、ここで、前記植物は、CMVおよびPeronospora farinosa f.sp.spinaciae種Pfs:1、Pfs:2、Pfs:3、Pfs:4、Pfs:5、Pfs:6、Pfs:9、Pfs:11、Pfs:12、Pfs:14、Pfs:15、およびPfs:16に少なくとも抵抗性である。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、アルファ-CMV対立遺伝子およびベト病抵抗性を付与するアルファ-/ベータ-WOLF遺伝子の対立遺伝子を含む植物に関し、ここで、ベト病抵抗性を付与する対立遺伝子は、配列番号15に優先度の高い順に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するゲノム配列を有するアルファ-WOLF6bであり、かつ前記植物は、CMVおよびPeronospora farinosa f.sp.spinaciae種Pfs:1、Pfs:2、Pfs:3、Pfs:4、Pfs:5、Pfs:6、Pfs:9、Pfs:11、Pfs:12、Pfs:14、Pfs:15、Pfs:16および単離US1508に少なくとも抵抗性である。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、アルファ-CMV対立遺伝子およびベト病抵抗性を付与するアルファ-/ベータ-WOLF遺伝子の対立遺伝子を含む植物に関し、ここで、ベト病抵抗性を付与する対立遺伝子が、配列番号16に優先度の高い順に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するゲノム配列を有するアルファ-WOLF8であり、かつ、ここで、前記植物は少なくとも、CMVおよびPeronospora farinosa f.sp.spinaciae種Pfs:1、Pfs:2、Pfs:6、Pfs:8、Pfs:15への抵抗性、およびPfs:16への中間的な抵抗性を示す。
【0047】
別の実施形態では、本発明は、アルファ-CMV対立遺伝子およびベト病抵抗性を付与するアルファ-/ベータ-WOLF遺伝子の対立遺伝子を含む植物に関し、ここで、ベト病抵抗性を付与する対立遺伝子が、配列番号17に優先度の高い順に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するゲノム配列を有するアルファ-WOLF9であり、かつ、ここで、前記植物は、CMVおよびPeronospora farinosa f.sp.spinaciae種Pfs:1、Pfs:2、Pfs:3、Pfs:4、Pfs:5、Pfs:6、Pfs:7、Pfs:8、Pfs:9、Pfs:10、Pfs:11、Pfs:12、およびPfs:13に少なくとも抵抗性である。
【0048】
別の実施形態では、本発明は、アルファ-CMV対立遺伝子およびベト病抵抗性を付与するアルファ-/ベータ-WOLF遺伝子の対立遺伝子を含む植物に関し、ここで、ベト病抵抗性を付与する対立遺伝子が、配列番号18に優先度の高い順に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するゲノム配列を有するアルファ-WOLF11であり、かつ、ここで前記植物は、CMVおよびPeronospora farinosa f.sp.spinaciae種Pfs:1、Pfs:3、Pfs:4、Pfs:5、Pfs:7、Pfs:11、Pfs:13、Pfs:15、Pfs:16および単離US1508に少なくとも抵抗性である。
【0049】
別の実施形態では、本発明は、アルファ-CMV対立遺伝子およびベト病抵抗性を付与するアルファ-/ベータ-WOLF遺伝子の対立遺伝子を含む植物に関し、ここで、ベト病抵抗性を付与する対立遺伝子が、配列番号19に優先度の高い順に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するゲノム配列を有するアルファ-WOLF12であり、かつ、ここで前記植物は、CMVおよびPeronospora farinosa f.sp.spinaciae種Pfs:1、Pfs:2、Pfs:3、Pfs:4、Pfs:6、Pfs:7、Pfs:8、Pfs:9、Pfs:10、Pfs:11、Pfs:12および単離Pfs:13に少なくとも抵抗性である。
【0050】
別の実施形態では、本発明は、アルファ-CMV対立遺伝子およびベト病抵抗性を付与するアルファ-/ベータ-WOLF遺伝子の対立遺伝子を含む植物に関し、ここで、ベト病抵抗性を付与する対立遺伝子が、配列番号20に優先度の高い順に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するゲノム配列を有するアルファ-WOLF15であり、かつ、ここで前記植物は、CMVおよびPeronospora farinosa f.sp.spinaciae種Pfs:1、Pfs:2、Pfs:3、Pfs:4、Pfs:5、Pfs:6、Pfs:9、Pfs:11、Pfs:12、Pfs:13、Pfs:14、およびPfs:15に少なくとも抵抗性である。
【0051】
一実施形態では、アルファ-CMV対立遺伝子および1以上のPeronospora farinosa f.sp.spinaciae種への抵抗性を付与するアルファ-/ベータ-WOLF遺伝子の対立遺伝子を含む植物は、農学的にエリートな植物、好ましくはハイブリッド植物である。
【0052】
本発明は、アルファ-CMV対立遺伝子を含む繁殖材料にさらに関する。一実施形態では、繁殖材料は有性生殖に適している。かかる繁殖材料は、例えば小胞子、花粉、子房、胚珠、胚嚢および卵細胞を含む。別の実施形態では、繁殖材料は、栄養生殖に適している。かかる繁殖材料は、例えば挿し木(cutting)、根、茎、細胞、プロトプラスト、および再生可能な細胞の組織培養物(tissue culture)を含む。組織培養物を調製するのに適している植物の一部は、特に、葉、花粉、胚、子葉、胚軸、成長点の細胞、根端、葯、花、種子および茎である。
【0053】
本発明は、CMVへの抵抗性を示すホウレンソウ植物の生産のためのアルファ-CMV対立遺伝子を含む組織培養物の使用にさらに関する。
【0054】
本発明はまた、繁殖材料の供給源としてのアルファ-CMV対立遺伝子を含むホウレンソウ植物の使用に関する。
【0055】
本発明はまた、種子の供給源としてのアルファ-CMV対立遺伝子を含むホウレンソウ植物の使用に関する。
【0056】
さらに、本発明は、アルファ-CMV対立遺伝子を含むホウレンソウ植物の細胞に関する。かかる細胞は、単離された形態であってもよく、または完全な植物またはその部分の一部であってもよく、そして、かかる細胞はCMVへの抵抗性を付与するアルファ-CMV対立遺伝子を有するため本発明の細胞を構成する。本発明の植物の各細胞はCMVへの抵抗性を付与する遺伝情報を有する。本発明のかかる細胞はまた、本発明の対立遺伝子を含む新たな植物を再生産するために使用されてもよい再生可能な細胞であってもよい。
【0057】
一態様では、本発明は、CMVへの抵抗性を示すホウレンソウ植物の生産のためのアルファ-CMV対立遺伝子を含む細胞の使用に関する。
【0058】
本発明のさらに別の態様は、第一親ホウレンソウ植物を第二親ホウレンソウ植物と交雑させること、および得られたハイブリッドホウレンソウ種子を収穫することを含む、ハイブリッドホウレンソウ種子を作製するための方法に関し、ここで第一および/または第二親ホウレンソウ植物は、CMV対立遺伝子を含む。特定の実施形態では、第一および/または第二親植物は本明細書中で規定される近交系の植物である。
【0059】
本発明は、第一親ホウレンソウ植物を第二親ホウレンソウ植物と交雑させること、および得られたハイブリッドホウレンソウ種子を収穫することにより生産された種子から成長したハイブリッドホウレンソウ植物にさらに関し、ここで第一および/または第二親ホウレンソウ植物は、アルファ-CMV対立遺伝子を含む。
【0060】
本発明の別の態様は、ゲノムヌクレオチド配列またはその部分の存在(または非存在)について植物を決定すること、または検出すること、または測定すること、または定量的にもしくは定性的に確認すること、またはアッセイすることを含む、アルファ-CMV対立遺伝子を保有するホウレンソウ植物を同定する、または検出する、または遺伝子型決定する、または選択する方法に関し、ここで、前記配列は、配列番号1に優先度の高い順に80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有する。したがって、本発明は、ゲノムヌクレオチド配列またはその部分の存在(または非存在)について植物を決定すること、または検出すること、または測定すること、または定量的にもしくは定性的に確認すること、またはアッセイすることを含む、アルファ-CMV対立遺伝子を保有するかまたは保有しないとしてホウレンソウ植物を特性解析することを包含および含み、ここで、前記配列は、配列番号1に優先度の高い順に80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有し;前記方法は、植物のDNAまたはRNAを抽出または取得すること、およびヌクレオチド配列またはその部分のその存在または非存在に関するそれらの解析を含んでもよく、ここで、前記配列は、配列番号1に優先度の高い順に80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有する。配列情報および本明細書中に記載の方法を使用することにより、当業者は配列番号21を使用することによりアルファ-CMV対立遺伝子を保有するホウレンソウ植物を同定する、または検出する、または遺伝子型決定する、または選択することができ、ここで、前記配列は、配列番号21に優先度の高い順に80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有する。コーディング配列もしくはタンパク質またはその部分などのホウレンソウ植物の発現産物を解析して、前記産物がどこから発現したのかを確認し、植物が、ゲノムヌクレオチド配列またはその部分を有する(または有しない)かどうかを決定できることが本発明の範囲内でさらに理解され得もし、ここで、前記配列は、配列番号1に優先度の高い順に80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有する。かかるコーディング配列は、配列番号2および/または配列番号3に優先度の高い順に80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するだろうが、タンパク質は、配列番号4および/または配列番号5に優先度の高い順に95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有するアミノ酸配列を有する。
【0061】
一実施形態では、アルファ-CMV対立遺伝子を保有するホウレンソウ植物を同定または選択する方法は、植物のゲノムにおけるゲノムヌクレオチド配列またはその一部の存在を決定することを含み、ここで、前記配列は、配列番号1に優先度の高い順に80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有する。
【0062】
一実施形態では、アルファ-CMV対立遺伝子を保有するホウレンソウ植物を同定または選択する方法は、植物のゲノムにおけるゲノムヌクレオチド配列またはその一部の存在を決定することを含み、ここで、前記配列は、配列番号21に優先度の高い順に80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有する。
【0063】
本発明は、植物のゲノムにおけるコーディング配列またはその一部の存在を決定することを含むアルファ-CMV対立遺伝子を保有するホウレンソウ植物を同定または選択する方法にさらに関し、ここで、前記配列は、配列番号2に優先度の高い順に80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有する。
【0064】
本発明は、植物のゲノムにおけるコーディング配列またはその一部の存在を決定することを含むアルファ-CMV対立遺伝子を保有するホウレンソウ植物を同定または選択する方法にさらに関し、ここで、前記配列は、配列番号3に優先度の高い順に80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有する。
【0065】
ホウレンソウ植物のゲノムにおけるアルファ-CMV対立遺伝子が属するWOLF遺伝子の少なくとも一部のゲノムDNAまたはコーディングDNA配列を決定することは、当技術分野で公知の任意の適切な分子生物学的方法を使用して実施されてもよく、(ゲノム)PCR増幅、続いてサンガーシーケンス、全ゲノムシーケンス、トランスクリプトームシーケンス、配列特異的ターゲットキャプチャー、続いて次世代シーケンス(例えば、Integrated DNA TechnologiesのxGen(登録商標)ターゲットキャプチャーシステムを使用)、LRRドメインを含む遺伝子配列の特異的な増幅(たとえば、Jupe et al., 2013, Plant J. 76:530-544に記載のResistance Gene Enrichment Sequencing(RenSeq)手法を使用)続いてシーケンシングなどを含むがこれらに限定されない。
【0066】
別の実施形態では、本発明は、本明細書中で規定されるLRRドメインをコードするDNA配列を決定することを含むアルファ-CMV対立遺伝子を保有する植物を同定または選択する方法に関する。
【0067】
前記方法のさらなる実施形態では、アルファ-CMV対立遺伝子のLRRドメインはLRRドメインのゲノムDNA領域を増幅するプライマー対を使用することにより決定される。フォワードプライマーは好ましくは配列番号6の配列を含む核酸分子であり、かつリバースプライマーは好ましくは配列番号7の配列を含む核酸分子である。
【0068】
本発明の別の態様は、(a)アルファ-CMV対立遺伝子を含む植物を別の植物と交雑すること;(b)任意に1回以上の自殖および/または交雑を実施すること;(c)任意に各回の自殖または交雑のあとにアルファ-CMV対立遺伝子を含む植物を選択すること、を含むCMVへの抵抗性を含むホウレンソウ植物の製造方法に関する。
【0069】
アルファ-CMV対立遺伝子を含む植物を選択することは、配列番号1に優先度の高い順に80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有する対立遺伝子のゲノムDNA配列の存在を決定することにより遺伝子型的に行われてもよい。
【0070】
アルファ-CMV対立遺伝子を含む植物を選択することは、配列番号21に優先度の高い順に80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有する対立遺伝子のゲノムDNA配列の存在を決定することにより遺伝子型的に行われてもよい。
【0071】
別の実施形態では、アルファ-CMV対立遺伝子を含む植物を選択することは、配列番号2に優先度の高い順に80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有する対立遺伝子のコーディング配列の存在を決定することにより遺伝子型的に行われてもよい。
【0072】
別の実施形態では、アルファ-CMV対立遺伝子を含む植物を選択することは、配列番号3に優先度の高い順に80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%配列類似性を有する対立遺伝子のコーディング配列の存在を決定することにより遺伝子型的に行われてもよい。
【0073】
あるいは、アルファ-CMV対立遺伝子の存在は、病害試験、例えば本明細書に記載される試験で植物をアッセイすること、および本明細書に記載される症状の非存在に基づいてアルファ-CMV対立遺伝子を保有する植物を同定すること、または選択することにより表現型的に決定されてもよい。
【0074】
本発明は、CMVに対する抵抗性を付与するための育種におけるアルファ-CMV対立遺伝子を保有するホウレンソウ植物の使用にさらに関する。
【0075】
本発明はまた、本発明のアルファ-CMV対立遺伝子を保有するホウレンソウ植物の開発のための育種方法であって、前記対立遺伝子を含む生殖質が使用される方法に関する。本発明の対立遺伝子を含む植物に成長でき、かつ生殖質を代表できる種子は、受託番号NCIMB42651でNCIMBに寄託された。
【0076】
別の態様では、本発明は、アルファ-CMV対立遺伝子を含むホウレンソウ植物の製造方法に関し、前記方法は、以下を含む:(a)対立遺伝子を含む植物を別の植物と交雑すること;(b)任意にF1において前記対立遺伝子を含む植物を選択すること;(c)任意に得られたF1を好ましい親と戻し交配することおよびBC1F1において前記対立遺伝子を有する植物を選択すること;(d)任意に1以上のさらなる回の自殖、交雑、および/または戻し交配を実施し、その後、前記対立遺伝子を含むか、または前記対立遺伝子により付与されるCMVへの抵抗性を示す植物を選択すること。本発明はまた、この方法により生産されるホウレンソウ植物を包含する。
【0077】
本発明はまた、アルファ-CMV対立遺伝子を含むホウレンソウ植物の生産における、代表的な種子が受託番号NCIMB42651でNCIMBに寄託されたホウレンソウ植物の使用に関する。
【0078】
本発明はまた、天然または加工形態のいずれかで、本発明のホウレンソウ植物の収穫した葉および本発明のホウレンソウ植物の収穫した葉を含む食品に関する。
【0079】
本発明は、消費のためのアルファ-CMV対立遺伝子を含むホウレンソウ植物の使用にさらに関する。
【0080】
ホウレンソウの葉は通常、包装された形で販売され、事前に包装されたホウレンソウの葉、または前記葉を含むサラダで加工されたものを含むが、これらに限定されない。かかるパッケージの言及は例えば米国特許第5,523,136でなされており、これは、葉物(leafy produce)を含有するかかるパッケージを含む包装フィルムおよびかかる包装フィルムのパッケージならびに本発明のホウレンソウの葉と共に使用に適しているかかる包装フィルムおよびパッケージの作製および使用方法を提供する。したがって、本発明は、本発明のホウレンソウ植物の葉、ならびに本発明のホウレンソウ植物に由来する葉の使用ならびに作製および使用する方法を包含する。
【0081】
本発明は、家庭環境において、植物からの葉を収穫するための生育基質中に、本発明の1以上の植物、または本発明の植物に由来する1以上のホウレンソウ植物を含む容器にさらに関する。この方法で、消費者は、植物が収穫可能な状態にあるときに、サラダに使用するために非常に新鮮な葉を選ぶことができてもよい。
【0082】
寄託情報
そのゲノムにおいてヘテロ接合に本発明のアルファ-CMV対立遺伝子を含む植物の種子は、受託番号42651で2016年9月9日にUK、AB21 9YA、アベルディーン、ブックスバーン、クライブストーン エステート、フェルグソンビルディングNCIMB Ltdに寄託された。前記寄託はブダペスト条約の条件に従って行われた。特許が発行されると、寄託に関するすべての制限が削除され、寄託は37CFRセクション1.801-1.809の要件を満たすことを目的とする。特許の発行時に前記寄託は撤回できず、一般への公開に制限または条件はない。寄託は、30年間、または最新の要望の後5年に、または特許の有効期間内のいずれか長い方で保管所で維持され、そしてその期間内に必要に応じて代替される。
【0083】
配列情報
表2.配列情報.
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
【表36】
【表37】
【表38】
【表39】
【表40】
【表41】
【表42】
【表43】
【0084】
本発明は、以下の実施例においてさらに明確にされ、それは例示の目的のためだけに与えられ、決して本発明を限定することを意図しない。
【実施例
【0085】
実施例1
ホウレンソウ植物におけるCMVへの抵抗性についての試験
CMV感染への抵抗性は、http://www.cpvo.europa.eu/documents/TP/vegetales/TP_055-5Rev_Spinacia_oleracea.pdfで入手可能なホウレンソウの識別性、均一性、安定性に関する試験のCPVOプロトコルでに記載されているようにアッセイした。本発明のホウレンソウの種子は、品種ビロフレーおよびPolkaの種子とともに、5x5cmの土壌ブロックに、20℃の昼間温度および18℃の夜間温度で少なくとも16時間光を受ける栽培体制の下で播種した。植物が3つの本葉を発達させたとき、それらにCMVを接種した。播種はカーボランダム(carborundrum)粉末を植物の葉にまぶし、その後播種物に浸したスポンジで葉をこすることにより行った。播種物は水で単離株NL16およびSP43を希釈したものであった(1:10)。播種後、植物を水で軽くすすいだ。
【0086】
播種後7-9日で症状が観察されてもよい。抵抗性植物、すなわち本発明の対立遺伝子を含む植物は症状を示さないが、感受性植物は典型的には矮性成長および植物の中心にモザイク症状を示す。
【0087】
この特定の試験の植物は、症状の発生に基づいて抵抗性または感受性であると評価された。症状を示さない植物は、この特定の試験では抵抗性と見なした。感染の症状を示した植物は、このテストでは感受性と評価した。
【0088】
品種ビロフレーおよびPolkaのすべての植物は、それらが矮性成長および植物の中心にモザイク症状などの症状を示したため感受性であると評価されたが、本発明の植物は症状を示さず、抵抗性と評価された。
【0089】
実施例2
品種ビロフレーの植物へのCMV抵抗性の移入
寄託NCIMB42651の種子では、アルファ-CMV対立遺伝子がヘテロ接合的に存在する。この寄託物の種子を成熟したホウレンソウ植物に成長させ、個別に自殖しF2集団を生成した。
【0090】
F2種子50個を使用して実施例1に記載される病害試験のための植物を育成した。病害試験で抵抗性であると評価されたF2植物ををさらに成熟するまで育て、再び個別に自殖し、各植物についてF3集団を得た。各F3集団を再び実施例1に記載される病害試験に供した。CMV病害試験において完全に抵抗性であると評価されたF3集団の植物はホモ接合でアルファ-CMV対立遺伝子を含むと考えることができる。
【0091】
アルファ-CMV対立遺伝子がホモ接合である植物の1つを使用して、CMVに感受性である品種ビロフレーの植物と交雑し、F1種子を得、その後F1種子から栽培されたF1植物を得た。F1植物を自殖してF2集団の種子および植物を得た。この集団を再度実施例1に記載される病害試験に供した。病害試験はCMV抵抗性の分離パターンが3:1であることを示し、これは、優性遺伝の分離パターンと一致する。
【0092】
実施例3
LRRドメインコード領域の増幅
アルファ-CMV対立遺伝子を保有するCMV抵抗性ホウレンソウ植物の同定および選択は、アルファ-CMV対立遺伝子の存在についてDNAをスクリーニングすることによって効率的に行われ得る。例えば以下に記載するように、アルファ-CMV対立遺伝子のLRRドメインの配列を増幅すること、および任意に決定することにより行われ得る。
【0093】
実施例2で得られたF2集団からのホウレンソウ植物の単離ゲノムDNAを、フォワードプライマーACAAGTGGATGTGTCTTAGG(配列番号6)およびリバースプライマーTTCGCCCTCATCTTCCTGG(配列番号7)を使用して増幅した。プライマー対はアルファ-CMV対立遺伝子が属するアルファ-WOLF遺伝子のLRRドメインコード領域を増幅し、アルファ-WOLF遺伝子の一部を選択的に増幅するよう設計されており、他のCC-NBS-LRRタンパク質コード遺伝子を増幅するためのものではない。
【0094】
配列番号6および配列番号7を有するプライマーを使用するアルファ-WOLF遺伝子のLRRドメインコード領域を増幅するためのPlatinum Taq enzyme(Thermo Fisher Scientific)を使用するPCR条件は以下のとおりである:
-95℃で3分(初期の変性ステップ)
-40増幅サイクルであって、各サイクルは以下からなる:95℃で30秒変性、60℃で30秒アニーリング、および72℃で30秒伸長、
-72℃で2分(最終伸長ステップ)。
【0095】
実施例2で得られたF2集団からのホウレンソウ植物の単離ゲノムDNAをフォワードプライマーTCACGTGGGTTGTGTTGT(配列番号8)およびリバースプライマーTTCGCCCTCATCTTCCTGG(配列番号7)を使用して並行して増幅した。このプライマー対はビロフレーのベータ-WOLF0対立遺伝子が属するベータ-WOLF遺伝子のLRRドメインコード領域を増幅し、ベータ-WOLF遺伝子の一部を選択的に増幅するために設計されており、他のCC-NBS-LRRタンパク質コード遺伝子を増幅するためのものではない。
【0096】
配列番号7および配列番号8を有するプライマーを使用するベータ-WOLF遺伝子のLRRドメインコード領域を増幅するためのTaq酵素を使用するPCR条件は以下のとおりである:
-95℃で3分(初期の変性ステップ)
-40増幅サイクルであって、各サイクルは以下からなる:95℃で30秒変性、58℃で50秒アニーリングおよび72℃で50秒伸長、
-72℃で2分(最終伸長ステップ)。
【0097】
PCR産物をアガロースゲル上で可視化し(示さず)、DNAをPCR反応から精製した。続いて、PCR産物の配列を、当技術分野で周知の方法を使用して決定した。
【0098】
配列番号6および配列番号7を有するプライマーにより増幅されるアルファ-CMV対立遺伝子のLRRドメインの配列は配列番号9の下で表2で提供される。
【0099】
配列番号7および配列番号8を有するプライマーにより増幅されるベータ-WOLF0対立遺伝子のLRRドメインの配列は配列番号11の下で表2で提供される。
【0100】
PCR産物をアガロースゲルで可視化し(示さず)、これは、植物の約25%がアルファ-WOLF断片のみを含有し、約50%にアルファ-およびベータ-WOLF断片の両方を含有することが実証され、かつ残りの約25%の植物がベータ-WOLF断片のみを含有していたことを実証した。アルファ-WOLF断片を含有する植物はCMVについて抵抗性であると評価された植物と完全に相関した。ベータ-WOLF断片のみを含む植物は、CMVについて感受性であると評価された植物と完全に相関した。
【0101】
PCR反応からDNAを精製し、その後PCR産物の配列を決定した。アルファ-WOLF PCRは、アルファ-CMV対立遺伝子のLRRドメインのゲノム配列である、配列番号9の配列に対応する配列を与えた。ベータ-WOLF PCR産物は、ベータ-WOLF0対立遺伝子のLRRドメインのゲノム配列である、配列番号11の配列に対応する配列を与えた。
【0102】
最終的に、得られた配列をアルファ-CMV対立遺伝子およびベータ-WOLF0について、それぞれ配列番号10および配列番号12を有するLRRドメインの対応するアミノ酸配列に翻訳した(表2も参照)。
【0103】
実施例4
CMV抵抗性のハイブリッドおよび親系統の作製
Racoon(51-317RZ)に存在するWOLF対立遺伝子の1つは配列番号13を有するベータ-WOLF3であり、Peronospora farinosa f.sp.spinaciae種Pfs:1、Pfs:3、Pfs5、Pfs:9、Pfs:11、Pfs:12、Pfs:14、およびPfs:16に対する抵抗性を付与する。これらの種に対する完全な抵抗性に続いて、ベータ-WOLF3はPfs:8に対する中間的な抵抗性を提供する。本実験の目的は、ベータ-WOLF3対立遺伝子を本発明のアルファ-CMV対立遺伝子と組み合わせた安定なハイブリッドを作製することであった。
【0104】
ホモ接合でアルファ-CMV対立遺伝子を含む植物、例えば実施例2で得られた植物をハイブリッドRacoonの雄親系統の植物と交雑した。F1植物を実施例1に記載されるCMV病害試験に供し、かつ抵抗性植物を選択した。選択した植物を再度ハイブリッドRacoonの雄親系統の植物と交雑してBC集団を得た。BC集団を実施例1に記載されるCMV病害試験に供し、再度CMV抵抗性植物を選択した。これをBC集団が得られるまで3回以上繰り返した。
【0105】
再度、抵抗性植物をCMV病害試験から選択し、この植物を自殖した。得られたSBC集団から、アルファ-CMV対立遺伝子についてホモ接合である植物を実施例3で言及したWOLF遺伝子のLRRドメインの配列を決定することにより選択した。
【0106】
選択したホモ接合の植物をさらに交配してRacoonについて代替的なCMV抵抗性親系統として機能し得る集団を得た。
【0107】
このCMV抵抗性親系統からの植物をハイブリッドRacoonの雌親系統と交雑し、ベータ-WOLF3対立遺伝子により付与されるベト病抵抗性と組み合わせて、本発明のアルファ-CMV対立遺伝子により付与されるCMV抵抗性である新しいハイブリッド品種についての種子を生産した。
【0108】
同様の方法で、アルファ-CMV対立遺伝子を1以上のベト病種に対する抵抗性を付与するアルファ-/ベータ-WOLF対立遺伝子と組み合わせてハイブリッドを作製できる。
【配列表】
0007348173000001.app