(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】電池モジュール及びこれを備える車両
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20230912BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230912BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20230912BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20230912BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20230912BHJP
【FI】
H01M50/262 Z
H01M50/209
H01M50/242
H01M50/249
H01M50/264
(21)【出願番号】P 2020523596
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2019019678
(87)【国際公開番号】W WO2019235173
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018108159
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】信平 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】藤永 浩司
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-016799(JP,A)
【文献】特表2015-518258(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0140406(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0123191(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0138565(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0019455(US,A1)
【文献】特開2015-011989(JP,A)
【文献】国際公開第2017/052296(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/204 - 216
H01M 50/242
H01M 50/249
H01M 50/262 - 264
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子を有する複数の電池セルと、
前記複数の電池セルを積層した電池積層体の両側端面を覆う一対のエンドプレートと、
前記エンドプレート同士を締結する複数の締結部材と、
を備える電池モジュールであって、
前記エンドプレートは、前記電池積層体の両側端面に位置する電池セルの各側面をそれぞれ被覆する各締結部材の少なくとも一部を覆うオーバーラップ部を形成しており、
前記オーバーラップ部と前記締結
部材とを溶接して固定しており、
前記エンドプレートは、板状のプレート本体を備えており、
前記プレート本体の両側に、前記オーバーラップ部をそれぞれ螺合により固定してなる電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電池モジュールであって、
前記オーバーラップ部が、前記エンドプレートの縦方向に沿って連続的に形成されてなる電池モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池モジュールであって、
前記オーバーラップ部が、前記エンドプレートの側面と同一平面状に形成されてなる電池モジュール。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電池モジュールであって、
前記エンドプレートは、左右の側面にそれぞれオーバーラップ部を形成していると共に、平面視におけるオーバーラップ部同士の間隔が、前記電池積層体の平面視における間隔と一致されてなる電池モジュール。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一に記載の電池モジュールを備える車両であって、
前記電池モジュールと、該電池モジュールから電力供給される走行用のモータと、前記電池モジュール及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール及びこれを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電池モジュールは、車両の駆動用の電源装置や蓄電用の電源装置等に利用されている。このような電池モジュールは、大電流を出力可能に構成されることが好ましく、直列や並列に接続される充放電可能な複数の電池セルを備えている。また近年は電池モジュールの高容量化が望まれており、特に多数の電池セルの並列化に対応することが肝要となる。
【0003】
並列接続される複数の電池セルを備える電池モジュールとしては、下記特許文献1に記載の蓄電装置が知られている。下記特許文献に記載される蓄電装置900は、
図10及び
図11に示すように、複数の蓄電素子901をバインドバー915とエンドプレート920で締結している。この蓄電装置900は、複数の蓄電素子901の並び方向である第一方向の一端に配置されたエンドプレート920と、エンドプレート920と接続され、複数の蓄電素子に対して第一方向の拘束力を付与するバインドバー915とを備える。エンドプレート920及びバインドバー915の一方は、第一方向に沿った面を形成する基部と、基部から、第一方向と交差する第二方向に突出して設けられた突出部とを有し、エンドプレート920及びバインドバー915の他方は、基部及び突出部の少なくとも一方と溶接された接続部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構造では、
図12の水平断面図に示すように、矢印の方向の振動や衝撃に対して、溶接部分のみでバインドバー915の固定を維持することになるため、溶接部分が破断してバインドバー915による締結が外れてしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、複数の電池セルの締結状態を信頼性高く維持可能な電池モジュール及びこれを備える車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある側面に係る電池モジュールは、電極端子を有する複数の電池セルと、前記複数の電池セルを積層した電池積層体の両側端面を覆う一対のエンドプレートと、前記エンドプレート同士を締結する複数の締結部材とを備える。前記エンドプレートは、前記電池積層体の両側端面に位置する電池セルの各側面をそれぞれ被覆する各締結部材の少なくとも一部を覆うオーバーラップ部を形成しており、前記オーバーラップ部と前記締結部材とを溶接して固定しており、前記エンドプレートは、板状のプレート本体を備えており、前記プレート本体の両側に、前記オーバーラップ部をそれぞれ螺合により固定している。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によると、オーバーラップ部でもって締結部材のさらに側面を被覆した状態で溶接することにより、締結部材の外れを回避して強固に固定できる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係る電池モジュールの概略斜視図である。
【
図2】
図1に示す電池モジュールの分解斜視図である。
【
図3】
図2に示す電池モジュールからバスバーホルダを省略した状態を示す分解斜視図である。
【
図4】
図1に示す電池モジュールのIV-IV線における断面図である。
【
図5】実施形態2に係る電池モジュールの分解斜視図である。
【
図6】
図5に示す電池モジュールの水平断面図である。
【
図7】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電池モジュールを搭載する例を示すブロック図である。
【
図8】モータのみで走行する電気自動車に電池モジュールを搭載する例を示すブロック図である。
【
図9】蓄電用の電池モジュールに適用する例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る電池モジュールは、前記オーバーラップ部が、前記エンドプレートの縦方向に沿って連続的に形成されている。
【0011】
また本発明の他の実施形態に係る電池モジュールは、前記オーバーラップ部が、前記エンドプレートの側面と同一平面状に形成されている。
【0012】
さらに本発明の他の実施形態に係る電池モジュールは、前記エンドプレートは、左右の側面にそれぞれオーバーラップ部を形成している。
【0013】
また平面視におけるオーバーラップ部同士の間隔が、前記電池積層体の平面視における間隔と一致されている。
【0014】
上記構成によれば、締結部材を側面に配置した電池積層体の外側を、エンドプレートのオーバーラップ部で覆う際の遊びを低減して、溶接時の浮き上がりを阻止し、溶接の信頼性を向上できる。
【0015】
さらにまた本発明の他の実施形態に係る電池モジュールは、前記エンドプレートが、板状のプレート本体を備えている。
【0016】
前記プレート本体の両側に、前記オーバーラップ部をそれぞれ螺合により固定している。
【0017】
上記構成により、オーバーラップ部を別部材としてプレート本体の左右に固定する構成としたことで、オーバーラップ部をエンドプレートに設け易くなる。加えて、オーバーラップ部をプレート本体の左右に螺合式に固定する構成としたことで、プレート本体の左右に固定されるオーバーラップ部同士の間隔の調整が容易となり、締結部材の表面をオーバーラップ部で覆う際に隙間が発生することを回避して、溶接の信頼性の向上やオーバーラップ部により締結部材を押圧する構造の信頼性を向上できる利点も得られる。
【0018】
さらにまた本発明の他の実施形態に係る車両は、上記の電池モジュールと、該電池モジュールから電力供給される走行用のモータと、前記電池モジュール及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える。
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一若しくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0020】
実施形態に係る電池モジュールは、ハイブリッド車や電気自動車などの電動車両に搭載されて走行モータに電力を供給する電源、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの発電電力を蓄電する電源、あるいは深夜電力を蓄電する電源など、種々の用途に使用され、とくに大電力、大電流の用途に好適な電源として使用される。
【0021】
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係る電池モジュール100の斜視図を
図1に、その分解斜視図を
図2に、
図2からバスバーホルダ301を省略した分解斜視図を
図3に、それぞれ示す。
図1と
図2に示す電池モジュール100は、正負の電極端子2を備える複数の電池セル1と、これら複数の電池セル1の電極端子2に接続されて、複数の電池セル1を並列かつ直列に接続するバスバー3と、バスバー3を保持するバスバーホルダ301を備え、これらのバスバー3を介して複数の電池セル1を並列かつ直列に接続している。電池セル1は、充放電可能な二次電池である。電池モジュール100は、複数の電池セル1が並列に接続されて並列電池グループを構成すると共に、複数の並列電池グループが直列に接続されて、多数の電池セル1が並列かつ直列に接続される。
図1と
図2に示す電池モジュール100は、複数の電池セル1を積層して電池積層体10を形成しており、この電池積層体10を固定部品13で固定して、複数の電池セル1を積層状態に固定している。固定部品13は、積層している電池セル1の両端面に配置される一対のエンドプレート20と、このエンドプレート20に、端部を連結して積層状態の電池セル1を加圧状態に固定している締結部材15とを備えている。
【0022】
(電池セル1)
電池セル1は、幅広面である主面の外形を四角形とする角形電池であって、幅よりも厚さを薄くしている。さらに、電池セル1は、充放電できる二次電池であって、リチウムイオン二次電池としている。ただし、本発明は、電池セルを角形電池には特定せず、またリチウムイオン二次電池にも特定しない。電池セルには、充電できる全ての電池、たとえばリチウムイオン二次電池以外の非水系電解液二次電池やニッケル水素電池セルなども使用できる。
【0023】
図3に示すように電池セル1は、正負の電極板を積層している電極体を外装缶1aに収納して電解液を充填して気密に密閉したものである。外装缶1aは、底を閉塞する四角い筒状に成形したもので、上方の開口部を金属板の封口板1bで気密に閉塞している。外装缶1aは、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板を深絞り加工して製作される。封口板1bは、外装缶1aと同じように、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板で製作される。封口板1bは、外装缶1aの開口部に挿入され、封口板1bの外周と外装缶1aの内周との境界にレーザービームを照射して、封口板1bを外装缶1aにレーザー溶接して気密に固定している。
【0024】
(電極端子2)
電池セル1は、天面である封口板1bを端子面1Xとして、この端子面1Xの両端部に正負の電極端子2を固定している。正負の電極端子2は、
図3に示すように、絶縁材18を介して封口板1bに固定されており、内蔵する正負の電極板(図示せず)にそれぞれ接続されている。正負の電極端子2は、突出部2aの周囲に溶接面2bを設けている。溶接面2bは、封口板1bの表面と平行な平面状で、この溶接面2bの中央部に突出部2aを設けている。電極端子2は、突出部2aを円柱状としている。ただ、突出部は、必ずしも円柱状とする必要はなく、図示しないが、多角柱状又は楕円柱状とすることもできる。
【0025】
電池セル1の封口板1bに固定される正負の電極端子2の位置は、正極と負極が左右対称となる位置としている。これにより、電池セル1を左右反転させて積層し、隣接して接近する正極と負極の電極端子2をバスバー3で接続することで、隣接する電池セル1同士を直列に接続できるようにしている。
【0026】
(電池積層体10)
複数の電池セル1は、各電池セル1の厚さ方向が積層方向となるように積層されて電池積層体10を構成している。電池積層体10は、正負の電極端子2を設けている端子面1X、図にあっては封口板1bが同一平面となるように、複数の電池セル1を積層している。
【0027】
電池積層体10は、
図3に示すように、積層している電池セル1の間に絶縁スペーサ16を挟着している。図の絶縁スペーサ16は、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状またはシート状に製作されている。図に示す絶縁スペーサ16は、電池セル1の対向面とほぼ等しい大きさのプレート状としており、この絶縁スペーサ16を互いに隣接する電池セル1の間に積層して、隣接する電池セル1同士を絶縁している。なお、隣接する電池セル1間に配置されるスペーサとしては、電池セル1とスペーサの間に冷却気体の流路が形成される形状のスペーサを用いることもできる。また、電池セル1の表面を絶縁材で被覆することもできる。例えばPET樹脂等のシュリンクチューブで電池セルの電極部分を除く外装缶の表面を熱溶着させてもよい。この場合は、絶縁スペーサ16を省略してもよい。また、実施形態に係る電池モジュール100においては、複数の電池セルを多並列かつ多直列に接続するので、互いに直列に接続される電池セル同士の間には絶縁スペーサ16を挟着するが、互いに並列に接続される電池セル同士においては、隣接する外装缶同士に電圧差が生じないので、これ等の電池セルの間の絶縁スペーサを省略することもできる。
【0028】
さらに、
図3に示す電池モジュール100は、電池積層体10の両端面に端面スペーサ17を挟んでエンドプレート20を配置している。端面スペーサ17は、
図3に示すように、電池積層体10とエンドプレート20との間に配置されてエンドプレート20を電池積層体10から絶縁する。端面スペーサ17は、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状またはシート状に製作されている。図に示す端面スペーサ17は、角形の電池セル1の対向面全体をカバーできる大きさと形状として、電池積層体10の両端に配置された電池セル1とエンドプレート20との間に積層している。
【0029】
電池積層体10は、隣接する電池セル1の正負の電極端子2に金属製のバスバー3が接続されて、このバスバー3を介して複数の電池セル1が並列かつ直列に接続される。電池積層体10は、互いに並列に接続されて並列電池グループを構成する複数の電池セル1においては、端子面1Xの両端部に設けた正負の電極端子2が左右同じ向きとなるように積層され、互いに直列に接続される並列電池グループを構成する電池セル1同士においては、端子面1Xの両端部に設けた正負の電極端子2が左右逆向きとなるように複数の電池セル1が積層されている。ここで、
図3に示す実施形態1に係る電池モジュール100では、12個の電池セル1を厚さ方向に積層して電池積層体10としており、4個の電池セル1を並列に接続して並列電池グループとすると共に、3組の並列電池グループを直列に接続して12個の電池セル1を4並列3直列に接続している。したがって、
図3に示す電池積層体10は、並列電池グループを構成する4個の電池セル1を正負の電極端子2が左右同じ向きとなるように積層すると共に、同じ向きに積層された4個ずつの電池セル1からなる3組の並列電池グループを、正負の電極端子2が交互に左右逆向きとなるように積層している。ただ、本発明は、電池積層体を構成する電池セルの個数とその接続状態を特定しない。後述する他の実施形態も含めて、電池積層体を構成する電池セルの個数、及びその接続状態を種々に変更することもできる。
【0030】
実施形態に係る電池モジュール100は、複数の電池セル1が互いに積層される電池積層体10において、互いに隣接する複数の電池セル1の電極端子2同士をバスバー3で接続して、複数の電池セル1を並列かつ直列に接続する。
【0031】
(バスバーホルダ301)
電池モジュール100は、
図1~
図2に示すように電池積層体10とバスバー3との間にバスバーホルダ301を配置することで、複数のバスバー3を互いに絶縁し、かつ、電池セルの端子面とバスバー3とを絶縁しながら、複数のバスバー3を電池積層体10の上面の定位置に配置できる。このようなバスバーホルダ301として、例えば、複数のバスバー3が配置されるホルダー本体の内側を複数に区画して、各バスバー3が配置される区画室を有する構造とすることができる。このバスバーホルダ301は、例えば、プラスチック等の絶縁材で成形されて、複数のバスバー3を嵌合構造で定位置に配置することで、電位差のある電極端子間を絶縁しながら、複数のバスバー3を電池積層体10の上面の定位置に配置できる。なお、
図3以降においては電池セルとバスバー3の接続状態を判り易くするために、複数のバスバー3を定位置に配置するバスバーホルダ301の図示を省略している。
【0032】
(バスバー3)
バスバー3は、金属板を裁断、加工して所定の形状に製造される。バスバー3を構成する金属板には、電気抵抗が小さく、軽量である金属、例えばアルミニウム板や銅板、あるいはこれらの合金が使用できる。ただし、バスバー3の金属板は、電気抵抗が小さくて軽量である他の金属やこれらの合金も使用できる。
【0033】
(エンドプレート20)
エンドプレート20は、
図1~
図3に示すように、電池積層体10の両端に配置されると共に、電池積層体10の両側面に沿って配置される締結部材15を介して締結される。エンドプレート20は、電池積層体10の電池セル1の積層方向における両端であって、端面スペーサ17の外側に配置されて電池積層体10を両端から挟着している。
【0034】
エンドプレート20は、外形を四角形としており、電池積層体10の端面に対向して配置されている。
図1~
図3に示すエンドプレート20は、電池セル1の外形とほぼ等しい外形としている。ずなわち、図に示すエンドプレート20は、左右方向の幅を電池セル1の幅とほぼ等しくすると共に、上下方向の高さを電池セル1の高さとほぼ等しくしている。なお、本明細書において、上下方向とは図における上下方向とし、左右方向は、図における左右方向であって、電池の積層方向と直交する水平方向を意味するものとする。
【0035】
(締結部材15)
締結部材15は、
図1~
図3に示すように、電池積層体10の積層方向に延長されており、両端が電池積層体10の両端面に配置されたエンドプレート20に固定されて、このエンドプレート20を介して電池積層体10を積層方向に締結している。締結部材15は、電池積層体10の側面に沿う所定の幅と所定の厚さを有する金属板で、電池積層体10の両側面に対向して配置されている。この締結部材15には、鉄などの金属板、好ましくは、鋼板が使用できる。金属板からなる締結部材15は、プレス成形等により折曲加工されて所定の形状に形成される。
【0036】
締結部材15は、電池積層体10の側面に沿って配置される本体部40と、この本体部40の上下両端で折曲されて、電池積層体10の上下の端を被覆する折曲部44とを備えている。本体部40は、電池積層体10の側面のほぼ全体を被覆する大きさの矩形状としている。
図2に示す本体部40は、電池積層体10の側面のほぼ全面を隙間なく被覆している。ただ、本体部は、1以上の開口部を設けて、電池積層体の側面の一部を表出させることもできる。締結部材15は、長手方向の両端を一対のエンドプレート20に固定する。さらに、図に示す締結部材15は、本体部40の上端部に沿って、電池積層体10の上面及び下面を保持する折曲部44を備えている。折曲部44は、電池積層体10を構成する電池セル1の上面及び下面を保持して、各電池セル1の端子面1Xの位置が上下にずれるのを抑制している。
【0037】
なお、締結部材は、図示しないが、本体部と折曲部の内面に絶縁シートを配置して、この絶縁シートにより、電池積層体の電池セルと締結部材とを絶縁することができる。さらに、締結部材は、図示しないが、本体部の両端部の内面に緩衝材を配置して、エンドプレートの両側面を振動等の衝撃から保護することもできる。
【0038】
(オーバーラップ部21)
このエンドプレート20は、オーバーラップ部21を形成している。オーバーラップ部21は、電池積層体10の両側端面に位置する電池セル1の各側面をそれぞれ被覆する各締結部材15の少なくとも一部を覆うよう構成される。
図4の水平断面図の例では、締結部材15の端縁をオーバーラップ部21で覆っている。エンドプレート20は、左右の側面にそれぞれオーバーラップ部21を形成している。またオーバーラップ部21は、エンドプレート20の縦方向に沿って連続的に形成させている。
【0039】
オーバーラップ部21と締結部材15とは、溶接によって固定される。溶接は、好ましくはレーザ光を用いたスポット溶接にて、オーバーラップ部21の表面から、
図4においてSP1で示す位置を溶接して行う。さらに平面視におけるオーバーラップ部21同士の間隔は、電池積層体10の平面視における間隔とほぼ一致させている。このようにして、締結部材15を側面に配置した電池積層体10の外側を、エンドプレート20のオーバーラップ部21で覆う際の遊びを低減して、溶接時の浮き上がりを阻止し、溶接の信頼性を向上できる。
【0040】
このように溶接に加えて、オーバーラップ部21で締結部材15を挟み込むように構成したことで、電池積層体10の幅方向、すなわち電池セル1の積層層方向と交差する方向への応力に対しても電池積層体10を保護できる。すなわち従来の
図12の水平断面図に示す構成においては、溶接のみで締結部材を固定しているため、溶接部位に常時負荷がかかる状態となって、経年劣化等で破損してしまうと、電池セルの締結ができなくなってしまっていた。特に電池セルは、充放電を繰り返すことで膨張するため、電池セルの積層方向のみならず、積層方向と直交する幅方向(
図12において矢印で示す方向)にも応力が印加されて、締結部材を引き剥がす方向に応力を受けることとなる。また車載用の電池モジュールにおいては、振動や衝撃時の荷重も受ける。このため、締結部材が矢印の方向への応力に晒され続ける結果、劣化し破損する可能性があった。
【0041】
これに対して実施形態1に係る電池モジュール100によれば、
図4の水平断面図に示すように、溶接のみならずオーバーラップ部21でも締結部材15を保持しているため、電池積層体10の幅方向における応力に対し、溶接部位への負荷が相対的に低減されて、信頼性を向上させることができる。
【0042】
図1等の例では、オーバーラップ部21を、エンドプレート20の側面と同一平面状となるように形成している。ここでは、オーバーラップ部21をエンドプレート20と一体成形して、エンドプレート20の側面を延長して水平断面視が凹状となるように構成している。
【0043】
[実施形態2]
ただ本発明は、オーバーラップ部21をエンドプレート20と一体成形する構成に限らず、オーバーラップ部をエンドプレートと別部材としてもよい。このような例を実施形態2に係る電池モジュール200として、
図5の分解斜視図及び
図6の水平断面図に示す。このエンドプレート20Bは、プレート本体25と、このプレート本体25の左右にそれぞれ固定されるオーバーラップ部21Bとで構成されている。各オーバーラップ部21Bは、水平断面視をL字状に形成し、プレート本体25の側面とほぼ同じ大きさの直方体状のブロック部22と、このブロック部22の一面でエンドプレート20Bの側面を構成しつつ、この面を同一平面状としながら突出させて、締結部材15を被覆する被覆面23を形成している。このように、オーバーラップ部21Bを別部材として、プレート本体25の左右に固定する構成としたことで、エンドプレート20Bの端面を突出させたオーバーラップ部21Bをエンドプレート20Bに形成し易くなり、製造工程上有利となる。
【0044】
各オーバーラップ部21Bは、螺合によりプレート本体25の左右に固定される。このためブロック部22には、ブロックねじ穴24を開口している。さらにプレート本体25の左右の側面には、このブロックねじ穴24と対応させた位置にプレートねじ穴26を開口している。これによって、プレート本体25の左右にオーバーラップ部21Bをそれぞれ、ボルト27で螺合して強固に固定できる。またこの構成により、プレート本体25の左右に固定されるオーバーラップ部21B同士の間隔の調整を容易に行える。この結果、締結部材15の表面をオーバーラップ部21Bで覆う際に隙間が発生することを回避して、溶接の信頼性の向上やオーバーラップ部21Bにより締結部材15を押圧する構造の信頼性を向上できる利点も得られる。
【0045】
以上の電池モジュールは、車載用の電源として利用できる。電池モジュールを搭載する車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、車両を駆動する電力を得るために、上述した電池モジュールを直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電池モジュール1000を構築した例として説明する。
【0046】
(ハイブリッド車用電池モジュール)
図7は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車に電池モジュールを搭載する例を示す。この図に示す電池モジュールを搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電池モジュール1000と、電池モジュール1000の電池を充電する発電機94とを備えている。電池モジュール1000は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電池モジュール1000の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電池モジュール1000から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電池モジュール1000の電池を充電する。なお、車両HVは、
図7に示すように、電池モジュール1000を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電池モジュール1000を充電できる。
【0047】
(電気自動車用電池モジュール)
また、
図8は、モータのみで走行する電気自動車に電池モジュールを搭載する例を示す。この図に示す電池モジュールを搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電池モジュール1000と、この電池モジュール1000の電池を充電する発電機94とを備えている。電池モジュール100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電池モジュール1000から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電池モジュール1000の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電池モジュール1000を充電できる。
【0048】
(蓄電システム)
さらに、本発明は、電池モジュールの用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電池モジュールは、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電システムの電源として使用することもできる。
図9は、電池モジュール1000の電池を太陽電池で充電して蓄電する蓄電システムを示す。この図に示す蓄電システムは、図に示すように、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で、電池モジュール100の電池を充電する。さらに、この蓄電システムは、電池モジュール100に蓄電した電力を、DC/ACインバータ85を介して負荷83に供給する。
【0049】
さらに、電池モジュールは、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電システムの電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電池モジュールは、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電池モジュールは、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電池モジュールは、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0050】
以上のような蓄電システムは、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電池モジュール、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電池モジュール、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る電池モジュールの冷却方法、冷却プログラム、コンピュータで読み取り可能な記録媒体及び記憶した機器、電池モジュール並びにこれを備える車両は、ハイブリッド車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源として好適に利用できる。例えばEV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電池モジュールが挙げられる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電池モジュール、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電池モジュール、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0052】
100、200、1000…電池モジュール、1…電池セル、1X…端子面、1a…外装缶、1b…封口板、2…電極端子、2a…突出部、2b…溶接面、3…バスバー、10…電池積層体、13…固定部品、15…締結部材、16…絶縁スペーサ、17…端面スペーサ、18…絶縁材、20、20B…エンドプレート、21、21B…オーバーラップ部、22…ブロック部、23…被覆面、24…ブロックねじ穴、25…プレート本体、26…プレートねじ穴、27…ボルト、40…本体部、44…折曲部、81…建物、82…太陽電池、83…負荷、85…DC/ACインバータ、91…車両本体、93…モータ、94…発電機、95…DC/ACインバータ、96…エンジン、97…車輪、98…充電プラグ、301…バスバーホルダ、900…蓄電装置、901…蓄電素子、915…バインドバー、920…エンドプレート、SP1…溶接位置、HV…車両、EV…車両