(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】パターン印刷用レジスト組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/06 20060101AFI20230912BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20230912BHJP
B41M 1/12 20060101ALI20230912BHJP
H01L 31/0224 20060101ALI20230912BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H05K3/06 H
C09D11/101
B41M1/12
H01L31/04 260
H05K3/00 F
(21)【出願番号】P 2020527546
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2019025188
(87)【国際公開番号】W WO2020004396
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2018124046
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】玉井 仁
(72)【発明者】
【氏名】兼松 正典
(72)【発明者】
【氏名】岡本 紳平
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-87613(JP,A)
【文献】国際公開第2006/008995(WO,A1)
【文献】特開2005-57015(JP,A)
【文献】特開2009-102637(JP,A)
【文献】特開2006-343400(JP,A)
【文献】特開2009-244447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/12
C09D 11/101
H01L 31/0224
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー成分と、フィラー成分と、増粘剤成分と、多官能性(メタ)アクリレートとを含み、光開始剤を含まない、パターン印刷用レジスト組成物
であって、
前記多官能性(メタ)アクリレートの(メタ)アクリレート官能基数が少なくとも3以上である、レジスト組成物。
【請求項2】
前記多官能性(メタ)アクリレートが、パターン印刷用レジスト組成物100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下である、請求項
1に記載のパターン印刷用レジスト組成物。
【請求項3】
パターン印刷用レジスト組成物が、光触媒成分をさらに含むものである請求項1
又は2に記載のパターン印刷用レジスト組成物。
【請求項4】
前記光触媒成分として、光触媒活性を有する酸化チタンを含むものである、請求項
3に記載のパターン印刷用レジスト組成物。
【請求項5】
前記酸化チタンの平均粒径が1nm以上200nm以下である、請求項
4に記載のパターン印刷用レジスト組成物。
【請求項6】
前記酸化チタンが、パターン印刷用レジスト組成物総量100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下である、請求項
4又は5に記載のパターン印刷用レジスト組成物。
【請求項7】
半導体層を有する基板に、バインダー成分と、フィラー成分と、増粘剤成分と、多官能性(メタ)アクリレートとを含み、光開始剤を含まない、パターン印刷用レジスト組成物を用いてレジストパターンを印刷する印刷工程と、
前記半導体層の一部と前記レジストパターンの一部とをエッチングするエッチング工程と、
残存したレジストパターンを剥離する剥離工程と、
を含む太陽電池セルの製造方法
であって、
前記多官能性(メタ)アクリレートの(メタ)アクリレート官能基数が少なくとも3以上である、製造方法。
【請求項8】
前記印刷工程後前記エッチング工程に先立ち、あるいは前記エッチング工程において、少なくとも前記レジストパターンに、活性エネルギー線を照射する請求項
7に記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項9】
前記活性エネルギー線が紫外線又は電子線である請求項
8に記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項10】
前記パターン印刷用レジスト組成物が光触媒成分をさらに含むものである請求項
7~9のいずれか1つに記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項11】
前記エッチング工程において、活性エネルギー線の照射時又は照射後に、酸性水溶液、アルカリ性水溶液及び水からなる群から選択される1種以上と、前記半導体層及び/又は前記レジストパターンとを接触させる、請求項
8~10のいずれか1つに記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項12】
前記剥離工程において、アルカリ性水溶液又はアルコール含有水溶液と、前記半導体層及び/又は前記レジストパターンとを接触させる、請求項
7~11のいずれか1項に記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項13】
前記剥離工程、あるいは剥離工程後においても、活性エネルギー線を照射し、レジスト剥離痕を除去するものである請求項
10~12のいずれか1つに記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項14】
請求項
7~13のいずれか1項に記載の太陽電池セルの製造方法に
記載の工程を含む
、太陽電池
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン印刷用レジスト組成物及びパターン形成方法関し、特にレジスト組成物でのパターン形成時におけるパターン端部での成分の染み出しに起因するエッチングムラを改善するパターン印刷用レジスト組成物及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レジスト材料は、半導体、製版、プリント基板等の製造プロセスにおいて使用され、サンドブラスト、イオン注入、エッチングなどの処理を施す際、被処理物表面の一部を樹脂などで保護、処理をした後に保護膜を剥離することで、被処理物の所望の部分のみを処理するための材料であり、家電、工業用、車載、航空、宇宙用の電子部品、工業用ロボット、太陽電池等の製造には不可欠なものである。
【0003】
近年、回路の細線化、薄型化に伴い、エッチングレジストには高精細化が求められる様になって来ており、50μm以下の配線形成が可能なレジスト材料への要求が益々高まっている。回路の細線化には、レジスト材料の細線印刷性だけなく、導電性層エッチング液への耐性、エッチング後のレジスト層の易剥離性等の様々な要求特性がある。
【0004】
一般的に電子基板、太陽電池電極の電極形成の場合、導電層のエッチングには酸性のエッチング液を使用することが大半で、適用されるレジストは、アルカリ現像、剥離タイプレジストである。一方、露光、現像工程を経る感光性レジストと異なり、パターン印刷レジストの場合は、パターン形成後乾燥までの間、パターン端部から溶剤に溶解されたバインダー成分がエッチング対象部分の表面に染み出し、その後の乾燥工程で強固に固着して、エッチング時に対象表面を覆ったままとなり、エッチングムラを生じるという課題があった。基材上に二次元架橋構造を有するポリシロキサン及びフッ素化ポリシロキサンなどのような材料(あるいはこれらで疎水化表面処理された金属層)によって疎水性溶媒浸透防止層を一旦形成してその上部にレジストパターンを形成することで染み出しを防止しその後この溶媒浸透防止層有機物分解能のあるオゾンで除去するという方法があるが(特許文献1)、水中での処理が必要で処理が煩雑である上、除去能力が十分でないということで、必ずしも生産工程に適用されていない実情があった。また、パターン印刷レジスト自体の改善策として、染み出しの原因の1つである溶剤成分を減量しフェノール樹脂を主要樹脂成分とし、さらに増粘剤を含有してなるレジスト組成物も提案されているが(特許文献2)、レジストのレオロジーを損なう懸念があり、また溶剤を完全にゼロには出来ない以上、完全に染み出しを防止するには至っていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】JP2016-10965A
【文献】JP2004-260143A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、レジスト組成物でのパターン形成時におけるパターン端部での成分の染み出しに起因するエッチングムラを改善するパターン印刷用レジスト組成物及びパターン形成方法を得ることを目的とする。また、本発明は、レジスト組成物における溶剤減量による対応におけるように、レジストのレオロジーを損なうことなく、前記染み出しを劇的に少なくすると共に、僅かに染み出した部分についても、例えば、有毒なオゾン処理等の必要性が無く、除去出来るパターン印刷用レジスト組成物及びパターン形成方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ね、レジスト組成物の基本設計として、染み出し抑制方法として、溶剤減量だけに依存するのでは無く、レジスト組成物を用いてのパターン印刷後、紫外光(UV)等の活性エネルギー線の照射によって、前記印刷によってパターン展開されたレジストの流動を抑制するには十分である薄い皮膜をレジスト表面に形成するとの観点から、レジスト組成物に光開始剤を配することなく多官能性(メタ)アクリレートを配合するとの点に想到した。また、この点に加えて、印刷からUV露光までの僅かな時間で発生した染み出しについても、オゾン等の有害な成分を使用することなく、レジスト組成物中に配合した光触媒の光分解効果により除去することで、さらに優れたエッチング性能を維持することができるとの知見を得、本発明に到達したものである。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0008】
すなわち上記課題を解決する本発明の第一の観点は、バインダー成分と、フィラー成分と、増粘剤成分と、多官能性(メタ)アクリレートとを含み、光開始剤を含まない、パターン印刷用レジスト組成物である。
【0009】
また、前記第一の観点の一実施形態においては、前記多官能性(メタ)アクリレートの(メタ)アクリレート官能基数が少なくとも3以上である上記パターン印刷用レジスト組成物が示される。
【0010】
さらに前記第一の観点の一実施形態においては、前記多官能性(メタ)アクリレートが、パターン印刷用レジスト組成物100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下配合されたものである上記パターン印刷用レジスト組成物が示される。
【0011】
前記第一の観点の一実施形態においては、また、上記パターン印刷用レジスト組成物が、光触媒成分をさらに含むものである上記パターン印刷用レジスト組成物が示される。
【0012】
前記第一の観点の一実施形態においては、また、前記光触媒成分として、光触媒活性を有する酸化チタンを含むものである上記パターン印刷用レジスト組成物が示される。
【0013】
前記第一の観点の一実施形態においては、さらに前記酸化チタンの平均粒径が1nm以上200nm以下である上記パターン印刷用レジスト組成物が示される。
【0014】
前記第一の観点の一実施形態においては、また、前記酸化チタンが、パターン印刷用レジスト組成物総量100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下である上記パターン印刷用レジスト組成物が示される。
【0015】
上記課題を解決する本発明の別の観点は、半導体層を有する基板に、バインダー成分と、フィラー成分と、増粘剤成分と、多官能性(メタ)アクリレートとを含み、光開始剤を含まない、パターン印刷用レジスト組成物を用いてレジストパターンを印刷する印刷工程と、
前記半導体層の一部と前記レジストパターンの一部とをエッチングするエッチング工程と、
残存したレジストパターンを剥離する剥離工程と、
を含む太陽電池セルの製造方法である。
【0016】
上記別の観点の一実施形態においては、前記印刷工程後前記エッチング工程に先立ち、あるいは前記エッチング工程において、前記レジストパターンに、活性エネルギー線を照射する上記太陽電池セルの製造方法が示される。
【0017】
上記別の観点の一実施形態においては、さらに、活性エネルギー線が紫外線又は電子線である上記太陽電池セルの製造方法が示される。
【0018】
また、上記別の観点の一実施形態においては、前記パターン印刷用レジスト組成物が光触媒成分をさらに含むものである上記太陽電池セルの製造方法が示される。
【0019】
さらにまた、上記別の観点の一実施形態においては、前記エッチング工程において、活性エネルギー線の照射時又は照射後に、酸性水溶液、アルカル性水溶液及び水からなる群から選択される1種以上と、前記半導体層及び/又は前記レジストパターンとを接触させる上記太陽電池セルの製造方法が示される。
【0020】
上記別の観点の一実施形態においては、前記剥離工程において、アルカリ性水溶液又はアルコール含有水溶液と、前記半導体層及び/又は前記レジストパターンとを接触させる上記太陽電池セルの製造方法が示される。
【0021】
上記別の観点の一実施形態においては、また、前記剥離工程、あるいは剥離工程後においても、活性エネルギー線を照射し、レジスト剥離痕を除去するものである上記太陽電池セルの製造方法が示される。
【0022】
上記課題を解決する本発明のさらに別の観点は、上記した太陽電池セルの製造方法によって製造される太陽電池セルを含む太陽電池である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、パターン印刷用レジスト組成物中に、多官能性(メタ)アクリレートを配合するが、光開始剤は配さないものとすることによって、パターン形成時におけるパターン端部でのレジスト成分の染み出しを、レジストのレオロジーを損なうことなく、極めて効果的に抑制し、前記染み出しに起因するエッチングムラを抑制することができる。
【0024】
また、本発明の好ましい一実施態様によれば、パターン印刷用レジスト組成物中に、さらに光触媒活性を有する酸化チタン等の光触媒を配することによって、パターン形成時にパターン端部での僅かに染み出した部分についても、有毒なオゾン処理等の必要性が無く、水等に浸漬することで除去出来るため、さらに優れたエッチング性能が発揮されることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
[パターン印刷用レジスト組成物]
本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物は、バインダー成分と、フィラー成分と、増粘剤成分と、多官能性(メタ)アクリレートとを含み、光開始剤を含まないものである。
【0027】
上記したような組成を有することにより、本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物は、パターン印刷後において、活性エネルギー線照射により、印刷されたレジストパターンの表面部のみを硬化して皮膜を形成できるため、所定のパターン状に展開されたレジストの流動を抑制して、レジストパターン端部でのレジスト成分からの染み出しを少なくすることが可能となる。なお、本発明のパターン印刷用レジスト組成物には以下の点を特に考慮して設計した。
【0028】
すなわち、一般に、架橋剤成分である多官能性(メタ)アクリレートをレジスト組成物に添加する場合、反応のトリガーになる光開始剤等の開始剤成分を併用することが通例である。しかし、本発明に係るパターン印刷レジスト組成物に関しては、想定する印刷時のパターンの膜厚がサブミリ単位であることから、このような開始剤成分が存在すると活性エネルギー線照射によって、レジストパターン内部へも架橋が進行し、剥離性能を低下させることから、光開始剤は配合しない組成として、紫外光(UV)などの活性エネルギー線照射による多官能性(メタ)アクリレート成分の酸化架橋を利用し、パターン状に展開されたレジスト層の表面のみに薄い皮膜を形成して、所定パターンからのレジストの流動を抑制し、染み出しを防止するものとした。
【0029】
さらに、本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物の好ましい実施形態においては、組成物中に、光触媒活性を有する酸化チタンなどのような光触媒成分を配合する。本発明のパターン印刷用レジスト組成物のこの好ましい実施形態については、以下の点を特に考慮して設計した。
【0030】
すなわち、酸化チタン等の光触媒成分は、光の存在下有機物分解能を有することから、一般的に、有機系のバインダーを使用するコート剤、レジスト剤等の組成物中には使用しない。しかし、本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物に関しては、鋭意検討の結果、パターン印刷後において所定パターンに展開された本来的なレジストパターン部分の領域内において活性エネルギー線(特に、UV)を照射しても一定濃度のバインダーが存在することから、このような光触媒成分がレジスト組成物中に存在していても耐エッチャント性をはじめとする主要性能には影響せず、一方で、レジストパターン端部からの染み出し部の薄層領域では光触媒成分による有機物分解能が発揮され、当該染み出し部のみを好適に分解させるという視点を基に、当技術分野における従来の技術常識に反して光触媒成分をレジスト組成物中に添加するものである。
【0031】
以下、各成分について順次説明する。
[バインダー成分]
本発明のバインダー成分としては、レジスト剤に使用されるものであれば特に限定はない。具体的には例えば、アクリル系樹脂、フェノールホルムアルデヒド系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、パラビニルフェノール、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等の有機バインダーが挙げられ、これらを単独で、又は複数組み合わせて用いることができる。これらの樹脂のうち、レジストのレオロジー、耐エッチャント性、コストのバランスの点から、アクリル系樹脂、フェノールホルムアルデヒド系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂が好ましく、アクリル系樹脂、フェノールホルムアルデヒド系樹脂がより好ましい。
【0032】
<アクリル系樹脂>
アクリル系樹脂を構成する単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルエステル等の(メタ)アクリロイル系モノマーが挙げられる。これらの単量体は単独若しくは2種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
また、本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物の一実施形態においては、バインダー樹脂として用いられるアクリル系樹脂が、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含む樹脂であることが好ましい。該構成単位を含むことによって、現像時の基板との密着性、耐メッキ液性が良好となる。
【0034】
エーテル結合を有する単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体等のラジカル重合性化合物を例示することができる。好ましくは、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。これらの単量体は単独若しくは2種以上組み合わせて使用できる。
【0035】
その他、以下の様なエチレン性不飽和二重結合を有した単量体を共重合することができる。例えば、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α-ブロモ(メタ)アクリル酸、α-クロル(メタ)アクリル酸、β-フリル(メタ)アクリル酸、β-スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸系単量体、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸系単量体、フマル酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0036】
なお、レジストに対しては必須ではないが、さらにカルボキシル基を有する単量体を共重合することで、アルカリ水溶液を用いてレジスト剥離が可能となる。
【0037】
カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基及びエステル結合を有する化合物等を例示することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。これらの単量体は単独若しくは2種以上組み合わせて使用できる。
【0038】
また、本発明においてアクリル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)によるポリスチレン換算の質量平均分子量(以下、「GPCによるポリスチレン換算の質量平均分子量」を単に「質量平均分子量」という。)は、230,000~600,000の範囲であることが好ましく、特に、240,000~500,000の範囲であることが望ましい。質量平均分子量が230,000以上であると、メッキに対する応力耐性に優れ、メッキ処理により得られる金属層が膨らみにくくメッキによる生成物の形状が良好となり、かつ、耐メッキ液性にも優れ、メッキ工程中やメッキ処理後の洗浄中のレジストに欠けやクラックが生じにくくなるため好ましい。また、質量平均分子量が600,000以下であるとレジスト未露光部の基板からの剥離性がよくなる傾向にあるため好ましい。
【0039】
<フェノールホルムアルデヒド樹脂>
フェノールホルムアルデヒド樹脂は、例えば、フェノール類とアルデヒドとを触媒存在下、ケトン系溶剤中で重合させて得られる。同樹脂は、酸性条件下で重合されるノボラック樹脂とアルカリ性条件下で重合されるレゾール樹脂とに分類されるが、より確実にレジスト性能を確保する観点からは、直鎖状構造を有するノボラック樹脂が好ましい。前記フェノールホルムアルデヒド樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
前記フェノール類としては、例えばフェノール;m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール等のクレゾール類;2,3-キシレノール、2,5-キシレノール、3,5-キシレノール、3,4-キシレノール等のキシレノール類;m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-エチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、2,3,5-トリエチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、3-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール等のアルキルフェノール類;p-メトキシフェノール、m-メトキシフェノール、p-エトキシフェノール、m-エトキシフェノール、p-プロポキシフェノール、m-プロポキシフェノール等のアルコキシフェノール類;o-イソプロペニルフェノール、p-イソプロペニルフェノール、2-メチル-4-イソプロペニルフェノール、2-エチル-4-イソプロペニルフェノール等のイソプロペニルフェノール類;フェニルフェノール等のアリールフェノール類;4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール等のポリヒドロキシフェノール類等を挙げることができる。これらの中でも、特にm-クレゾール、p-クレゾールが好ましい。前記フェノール類は単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
前記アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、フルフラール、フリルアクロレイン、ベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α-フェニルプロピルアルデヒド、β-フェニルプロピルアルデヒド、o-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、o-メチルベンズアルデヒド、m-メチルベンズアルデヒド、p-メチルベンズアルデヒド、o-クロロベンズアルデヒド、m-クロロベンズアルデヒド、p-クロロベンズアルデヒド、ケイ皮アルデヒド等が挙げられる。これらの中では、入手のしやすさからホルムアルデヒドが好ましい。前記アルデヒド類は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
前記ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。前記ケトン系溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
前記酸性条件下で用いられる前記酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。前記酸性触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
前記フェノールホルムアルデヒド樹脂の質量平均分子量は、好ましくは4000以上、好ましくは7000以上、より好ましくは9000以上、特に好ましくは10000以上である。また、前記フェノールホルムアルデヒド樹脂の質量平均分子量は、通常50000以下、好ましくは40000以下、より好ましくは30000以下である。
【0045】
前記フェノールホルムアルデヒド樹脂の質量平均分子量が4000以上であると、得られる組成物は、耐熱性や残膜率が低くなりにくく、解像度も良好となりやすく、また、質量平均分子量が50000以下であると、得られる組成物の感度が低くなりにくい。
【0046】
[フィラー成分]
本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物においては、レジストの耐エッチング液性、隠蔽性、耐水性等の性能を付与するためにフィラー(充填剤)成分を添加する。フィラー成分としては、有機系フィラーと無機フィラーのいずれを使用することも可能であるが、ハンドリング性、耐エッチング液性の点から無機フィラーが好ましい。特に限定されるわけではないが、具体的には例えば、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、含水ケイ酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、水酸化亜鉛、マイカ、雲母粉、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、中空ビーズ、ガラス繊維等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に限定されるわけではないが、本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物の一実施態様においては、含水ケイ酸マグネシウムをフィラー成分として用いることが好ましく例示できる。ここでフィラー(充填剤)としては、レジストに耐エッチング液性、隠蔽性、耐水性等の性能を付与する上で、特に限定されるわけではないが、その一次粒径(なお、形状が球形ないし略球形のものではなく、粒子の長径部と短径部とに差がある場合には、少なくとも長径部)が1μm以上のものである、代表的には1μm~50μm程度のものである、より好ましくは、5μm~20μm程度のものであることが、レジストに上記したような耐エッチング液性、隠蔽性、耐水性を付与するという増粘剤としての機能面から望まれる。
【0047】
[増粘剤成分]
本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物に関しては、印刷時のパターン形成のため、チクソトロピー性が必要である。チクソトロピー性を付与するための増粘剤として特に限定はないが、具体例として、例えば、以下のような無機系材料及び有機系材料が挙げられ得る。
【0048】
無機系材料としては、例えば、タルク、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、乾式シリカ等のシリカ、クレー、ベントナイト等が挙げられる。
【0049】
有機系材料としては、例えば、アミドワックス、オレフィンワックス、ひまし油、水添ひまし油等が挙げられる。
【0050】
耐エッチング液性と増粘性のバランス等の観点で、無機系の増粘剤が好ましく、中でも溶融シリカ、無定形シリカ、乾式シリカ、クレー、ベントナイトがより好ましい。さらに、乾式シリカの1種である親水性フュームドシリカが特に好ましい。なお、ここで上記に例示するような増粘剤が粉体の形状を呈する場合には、特に限定されるわけではないが、その一次粒径が1μm未満のものである、いわゆるナノ粒子、代表的には20nm~<1000nm程度のものである、より好ましくは、50nm~500nm程度のものであることが、チクソトロピー性を付与するという増粘剤としての機能面から望まれる。
【0051】
[多官能性(メタ)アクリレート成分]
本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物に関しては、所定パターンに展開された後に、UV露光あるいは電子線照射といった活性エネルギー線照射時に、レジストパターン表面に極薄い皮膜を形成し、レジストパターン内では架橋を進行させないことが、剥離性能を低下させないために重要となる。そのため、重合開始剤を添加せず、多官能性(メタ)アクリレートのみを添加する。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」との表記は、周知のように「メタクリレート」と「アクリレート」との双方を含むことを意味するものである。
【0052】
多官能性(メタ)アクリレートとして特に限定はないが、具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2~15)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2~15)ジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(n=2~15)ジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジアクリレート、ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-ヒドロキシエチル-イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレ-ト、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、また、これらの多官能(メタ)アクリレートのアルキル変成(メタ)アクリレート、カプロラクトン変成(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変成(メタ)アクリレート又はプロピレンオキサイド変成(メタ)アクリレートや、上記以外の脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレート等があげられる。さらに、ビスフェノールA型ジエポキシと(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシポリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタントリ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、ジシクロメタンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロメタンジイソシアネートとポリテトラメチレングリコール(n=6~15)のウレタン化反応物に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート等のウレタンポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンとコハク酸と(メタ)アクリル酸を反応させたポリエステルポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンとコハク酸とエチレングリコールと(メタ)アクリル酸を反応させたポリエステルポリ(メタ)アクリレート等のポリエステルポリ(メタ)アクリレート、さらには、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変成トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレートは単独でもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0053】
なお、このような多官能性(メタ)アクリレートの有する(メタ)アクリレート官能基数としても、特に限定されるわけではないが、活性エネルギー線照射による反応性という観点から、少なくとも3つ以上、より好ましくは3~6、さらに好ましくは3~4の(メタ)アクリレート官能基を有することが望まれる。
【0054】
上記に例示した多官能中でも、活性エネルギー線としてのUV露光時の反応性と形成される皮膜の緻密のバランスの点でジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましく、皮膜が適度な柔軟性を持つ点でジペンタエリスリトール(メタ)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0055】
多官能性(メタ)アクリレートの添加量としては、パターン印刷用レジスト組成物100質量部に対して表面硬化性と皮膜の耐割れ性のバランスの点で0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、0.1質量部以上5質量部以下がより好ましい。
【0056】
[光触媒]
本発明に係るパターン形成用レジスト組成物の好ましい一実施形態においては、上述したように、パターン形成用レジスト組成物に光触媒成分を配合する。例えば、酸化チタンに代表される光触媒成分は、光の存在下有機物分解能を有することから、通常有機系バインダーを使用するコート剤、レジスト剤等の組成物中は使用しない。これに対し、本発明においては、パターン形成用レジスト組成物を用いて所定のレジストパターンを印刷した際に、レジストパターン本体には活性エネルギー線(特に、UV光)を照射しても一定濃度のバインダーが存在することから耐エッチャント性をはじめとする主要性能には影響せず、染み出し部の薄層のみを分解させるという視点を基に、通例に反してレジスト材料に所定量の光触媒を添加するものとしたものである。
【0057】
本発明に用いることのできる光触媒成分としては、パターン印刷後において、UV光あるいは電子線等の活性エネルギー線、特に、UV光を照射されることによって、染み出部の薄層で有機物を有意に分解できる光触媒活性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、リン酸銀(Ag3PO4)、酸化チタン(TiO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、セレン化カドミウム(CdSe)、タンタル酸カリウム(KTaO3)、硫化カドミウム(CdS)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化タングステン(WO3)等の公知の光触媒性物質のいずれを用いることも可能であるが、これらのうち好ましくは、その光触媒の高さから酸化チタンである。
【0058】
複数の金属を含む酸化物半導体からなる光触媒物質の場合、構成元素の塩を混合、融解して形成することができる。溶媒を除去する必要があるときは、焼成、乾燥を行えばよい。具体的には、所定の温度(例えば、300℃以上)で加熱すればよく、好ましくは酸素含有雰囲気で行う。この加熱処理により、光触媒物質は所定の結晶構造を有することができる。例えば、酸化チタン(TiO2)では、アナターゼ型やルチル-アナターゼ混合型を有し、低温相ではアナターゼ型が優先的に形成される。
【0059】
さらに光触媒物質へ遷移金属(Pd、Pt、Cr、Ni、V、Mn、Fe、Ce、Mo、W等)をドーピングした物質を用いることも可能である。ドーピングすることにより、光触媒活性を向上させたり、可視光領域(波長400nm~800nm)の光により光触媒活性を起こすことができる。遷移金属は、広いバンドギャップを持つ活性な光触媒の禁制帯内に新しい準位を形成し、可視光領域まで光の吸収範囲を拡大しうる。
【0060】
[光触媒活性を有する酸化チタン成分(光触媒型酸化チタン)]
上記したように、本発明のパターン印刷用レジスト組成物の好ましい実施形態において配合され得る光触媒として、望ましいものは光触媒活性を有する酸化チタンであり、この触媒活性を有する酸化チタンは微粒子の形態であることが望ましい。このような微粒子の材料として用いる二酸化チタンとしては、結晶系がアナターゼ型でもルチル型であっても良い。これは、結晶系が異なっていても水和されて水酸基が生成するという化学的性質が同一であれば表面改質が可能なためである。強い光触媒能が所望であればアナターゼ型を、あるいは化粧料のように高屈折率等の性質が所望であればルチル型を、適宜好適に選択できる。
【0061】
また、同様な理由から、単一の酸化チタン粒子だけでなく、酸化チタンと磁性材とからなる複合二酸化チタン粒子も好適に使用される。さらに、その使用形態の自由度の観点から、微粒子の一次粒径は200nm以下であり、好ましくは、1nm以上200nm以下であり、さらには2nm以上200nm以下であることが望ましい。これは、粒径が200nmよりも大きくなると微粒子に作用する重力の効果も大きくなるため、より沈降しやすくなるためである。
【0062】
また、本発明のパターン印刷用レジスト組成物の調製において用いられ得る光触媒性酸化チタン微粒子としては、水系あるいはアルコール系溶媒に分散している分散液の形態であることが望ましい。さらにこのような分散液中での分散性を良好にするため粒子表面に有機官能基で処理することが好ましい、例えば表面をアミンにより処理することで、粒子間に電気的斥力が働くために凝集することなく、長期間にわたって安定に存在することによる。しかも、基本的にpHの変動や無機塩類の添加に対しても極めて安定である。
【0063】
本発明のパターン印刷用レジスト組成物の好ましい実施形態において配合され得る光触媒成分、特に光触媒活性を有する酸化チタン、の添加量としては、特に限定されるものではないが、パターン印刷用レジスト組成物100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、0.5質量部以上10質量部以下がより好ましい。このような範囲内の配合量であると、レジストパターン印刷後において、実質的にパターン端部からの染み出し部のみにおいて良好な分解性を発揮し、染み出し部の除去を容易とすることができる。
【0064】
<希釈溶剤>
希釈溶剤としては、本発明のパターン印刷用レジスト組成物の分散性が良好であり、印刷時に過度に乾燥することなく、加熱により迅速に乾燥し、レジストパターン中に気泡等に欠損を生じないものであれば特に限定はない。
【0065】
具体的には、例えば、シクロアルキルアルコール、シクロアルキルアセテート、アルキレングリコール、アルキレングリコールジアセテート、アルキレングリコールモノエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル、アルキレングリコールモノエーテルアセテート、ジアルキレングリコールモノエーテル、ジアルキレングリコールジアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、トリアルキレングリコールモノエーテル、トリアルキレングリコールモノエーテルアセテート、3-メトキシブタノール、3-メトキシブタノールアセテート、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールアセテート、テルペン系化合物とその誘導体等を挙げることができる。
【0066】
シクロアルキルアルコールとしては、例えば、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクチルアルコール、メチルシクロヘキシルアルコール、エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、i-プロピルシクロヘキシルアルコール、ブチルシクロヘキシルアルコール、i-ブチルシクロヘキシルアルコール、s-ブチルシクロヘキシルアルコール、t-ブチルシクロヘキシルアルコール、ペンチルシクロヘキシルアルコール等のC1~5アルキル基等の置換基を有していてもよい3員~15員のシクロアルキルアルコール等を挙げることができる。
【0067】
シクロアルキルアセテートとしては、例えば、シクロヘキシルアセテート、シクロペンチルアセテート、シクロオクチルアセテート、メチルシクロヘキシルアセテート、エチルシクロヘキシルアセテート、プロピルシクロヘキシルアセテート、i-プロピルシクロヘキシルアセテート、ブチルシクロヘキシルアセテート、i-ブチルシクロヘキシルアセテート、s-ブチルシクロヘキシルアセテート、t-ブチルシクロヘキシルアセテート、ペンチルシクロヘキシルアセテート等のC1~5アルキル基等の置換基を有していてもよい3員~15員のシクロアルキルアセテート等を挙げることができる。
【0068】
アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等を挙げることができる。
【0069】
アルキレングリコールジアセテートとしては、例えば、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3-プロパンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,5-ペンタンジオールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート等を挙げることができる。
【0070】
アルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル等のエチレングリコールモノC1~5アルキルエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノペンチルエーテル等のプロピレングリコールモノC1~5アルキルエーテル等を挙げることができる。
【0071】
アルキレングリコールジアルキルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジペンチルエーテル等のエチレングリコールC1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)C1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)エーテル(末端アルキル基対称);エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールメチルプロピルエーテル、エチレングリコールブチルメチルエーテル、エチレングリコールメチルペンチルエーテル、エチレングリコールエチルプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエチルエーテル、エチレングリコールエチルペンチルエーテル、エチレングリコールブチルプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルペンチルエーテル、エチレングリコールブチルペンチルエーテル等のエチレングリコールC1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)C1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)エーテル(末端アルキル基非対称);プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジペンチルエーテル等のプロピレングリコールC1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)C1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)エーテル(末端アルキル基対称);プロピレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルペンチルエーテル、プロピレングリコールエチルプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエチルエーテル、プロピレングリコールエチルペンチルエーテル、プロピレングリコールブチルプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルペンチルエーテル、プロピレングリコールブチルペンチルエーテル等のプロピレングリコールC1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)C1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)エーテル(末端アルキル基非対称)等を挙げることができる。
【0072】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノペンチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノC1~5アルキルエーテルアセテート;プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノペンチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノC1~5アルキルエーテルアセテート等を挙げることができる(異性体を含む)。
【0073】
ジアルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル等のジエチレングリコールモノC1~5アルキルエーテル;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル等のジプロピレングリコールモノC1~5アルキルエーテル等を挙げることができる(異性体を含む)。
【0074】
ジアルキレングリコールジアルキルエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジペンチルエーテル等のジエチレングリコールC1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)C1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)エーテル(末端アルキル基対称);ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールブチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルペンチルエーテル、ジエチレングリコールブチルペンチルエーテル等のジエチレングリコールC1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)C1~5アルキルエーテル(直鎖又は分岐鎖)(末端アルキル基非対称);ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジペンチルエーテル等のジプロピレングリコールC1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)C1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)エーテル(末端アルキル基対称);ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルペンチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルペンチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルペンチルエーテルなどのジプロピレングリコールC1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)C1~5アルキル(直鎖又は分岐鎖)エーテル(末端アルキル基非対称)等を挙げることができる(異性体を含む)。
【0075】
ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノペンチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールモノC1~5アルキルエーテルアセテート;ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテルアセテート等のジプロピレングリコールモノC1~5アルキルエーテルアセテート等を挙げることができる(異性体を含む)。
【0076】
トリアルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル等のトリエチレングリコールモノC1~5アルキルエーテル;トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテル等のトリプロピレングリコールモノC1~5アルキルエーテル等を挙げることができる(異性体を含む)。
【0077】
トリアルキレングリコールモノエーテルアセテートとしては、例えば、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノペンチルエーテルアセテート等のトリエチレングリコールモノC1~5アルキルエーテルアセテート;トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテルアセテート等のトリプロピレングリコールモノC1~5アルキルエーテルアセテート等を挙げることができる(異性体を含む)。
【0078】
テルペン系化合物とその誘導体としては、例えば、ターピネオール、ターピネオールアセテート、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、リモネン、メンタン、メントール等を挙げることができる。
【0079】
本発明のパターン印刷用レジスト組成物における希釈剤の添加量としては、パターン印刷用レジスト組成物100質量部に対して表面硬化性と皮膜の耐割れ性のバランスの点で0.1質量部以上30質量部以上が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましい。なお、光触媒活性を有する酸化チタン等の光触媒成分をパターン印刷用レジスト組成物中に配合する実施形態において、前記したように光触媒性酸化チタン微粒子が水系あるいはアルコール系溶媒に分散している分散液の形態である場合には、当該分散液の分散媒を、パターン印刷用レジスト組成物における希釈剤としてないしは希釈剤の一部として用いることが可能である。
【0080】
<レベリング剤>
パターン印刷用レジスト組成物には、硬化した際の表面凹凸の調整のために、レベリング剤が添加されても構わない。あるいは、レベリング剤は、パターン印刷用レジスト組成物を被着体にコートする際に、塗膜の平滑性を確保し、折損を防止するために添加してもよい。
【0081】
一般的に、フッ素系、シリコーン系、アクリル系、エーテル系、又はエステル系のレベリング剤が挙げられ、本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物には、これらの何れも使用できる。
【0082】
<消泡剤>
パターン印刷用レジスト組成物には、スクリーン印刷等で発生する気泡の発生を防止ずる目的で、消泡剤が添加されてもよい。好ましい例としては、アクリル系、シリコーン系フッ素系の消泡剤が挙げられる。
【0083】
<接着性付与剤>
パターン印刷用レジスト組成物には、基材への接着性を向上させるために、接着性付与剤が添加されても構わない。
【0084】
接着性付与剤としては、架橋性シリル基含有化合物、極性基を有するビニル系単量体が好ましく、さらにはシランカップリング剤、酸性基含有ビニル系単量体が好ましい。
【0085】
シランカップリング剤としては、例えば、分子中にエポキシ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、カルバメート基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、ハロゲン基、(メタ)アクリル基等の、炭素原子及び水素原子以外の原子を有する有機基と、架橋性シリル基を併せ持つシランカップリング剤を用いることができる。
【0086】
<可塑剤>
パターン印刷用レジスト組成物には、粘度、スランプ性、又は、硬化した場合の硬度、引張り強度、若しくは伸び等機械特性の調整のために、可塑剤が添加されても構わない。
【0087】
可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、
ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル化合物;
ビス(2-エチルヘキシル)-1,4-ベンゼンジカルボキシレート(例えば、EASTMAN168(EASTMAN CHEMICAL製))等のテレフタル酸エステル化合物;
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(例えば、Hexamoll DINCH(BASF製))等の非フタル酸エステル化合物;
アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジイソデシル、アセチルクエン酸トリブチル等の脂肪族多価カルボン酸エステル化合物;
オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル等の不飽和脂肪酸エステル化合物;
アルキルスルホン酸フェニルエステル(例えば、Mesamoll(LANXESS製));
トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル化合物;
トリメリット酸エステル化合物;
塩素化パラフィン;
アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油;
プロセスオイル;
エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤等
が挙げられる。
【0088】
[パターン印刷用レジスト組成物の製造方法]
本発明に係るパターン印刷レジスト組成物は、一般的には、バインダー、多官能性(メタ)アクリレート、増粘剤、フィラー、光触媒型酸化チタン等の光触媒成分の順に混合、攪拌して製造され得る。その際、バインダー、多官能性(メタ)アクリレート、増粘剤を添加後、十分に攪拌、一度混練、さらにフィラー、光触媒型酸化チタンを添加、混合、最終的に混練することでチクソトロピー性の付与されたパターン印刷用レジスト組成物を効果的に得ることが出来る。
【0089】
混錬に使用する装置としては、三本ロール、プラネタリーミキサー、遊星式攪拌脱泡装置等の攪拌脱泡装置が挙げられる。なお、装置は複数種を組み合わせて使用することが出来る。
【0090】
なお、混錬する場合、混錬時の発熱により、溶剤成分が揮発しないように留意する。混錬時の温度は、増粘剤追加と添加する充填剤の混錬にとのバランスの観点から、0℃以上80℃以下であることが好ましく、5℃以上60℃以下であることがさらに好ましく、10℃以上50℃以下であることがより好ましい。
【0091】
また、バインダー、増粘剤、フィラーが予め混合されたパターン印刷レジスト組成物に多官能性(メタ)アクリレート、光触媒型酸化チタン等の光触媒成分を混合、混練して本発明のパターン印刷レジスト組成物を得ることも可能である。その際混練方法は上記と同様の方法である。
【0092】
[本パターン印刷用レジスト組成物の特性]
以上のような本パターン印刷用レジスト組成物は、上述したように、例えば、電極フィルム、電極基盤又は太陽電池といった装置の導電層のエッチング、パターニングに使用され得る。例えば、FPDであれば、ITO(Indium Tin Oxide)フィルム、ポリイミド製のFPC(Flexible Printed Circuits)の回路形成(エッチング)用に使用されることが可能である。また、太陽電池であれば、本パターン印刷用レジスト組成物は、シリコン基板上の集電極の下の光電子発生、移動層、特に、裏面電極型太陽電池では、シリコン基板の一方の主面のみに、アモルファス層パターンを形成するのに使用されることが可能である。
【0093】
[太陽電池セルの製造方法]
本発明に係る太陽電池セルの製造方法は、半導体層を有する基板に、本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物、特に望ましくはバインダー成分と、フィラー成分と、増粘剤成分と、多官能性(メタ)アクリレートとに加えて光触媒成分をさらに有するが、光開始剤は含まない、本発明の好ましい実施形態に係るパターン印刷用レジスト組成物を用いて、レジストパターンを印刷する印刷工程と、レジストパターンに活性エネルギー線を照射する工程と、乾燥する工程と、前記半導体層の一部と前記レジストパターンの一部とをエッチングするエッチング工程と、残存したレジストパターンを剥離する剥離工程とを含む。
【0094】
このような工程を含む本発明に係る太陽電池セルの製造方法によれば、レジストパターンからの染み出しが少なく、染み出し部分を簡便な活性エネルギー線照射により分解し、対象領域の優れたエッチング性を維持できる。
【0095】
さらに本発明に係る太陽電池セルの製造方法においては、前記印刷工程後前記エッチング工程に先立ち、あるいは前記エッチング工程において、少なくとも前記レジストパターンに、UV光又は電子線等の活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線の照射によって、本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物中に配合された多官能性(メタ)アクリレート成分の酸化架橋により、パターン状に展開されたレジスト層の表面のみに薄い皮膜を形成して、所定パターンからのレジストの流動を抑制し、染み出しを防止する。
【0096】
また、本発明に係る太陽電池セルの製造方法においては、前記エッチング工程において、活性エネルギー線の照射時又は照射後に、酸性水溶液、アルカリ性水溶液及び水からなる群から選択される1種以上と、前記半導体層及び/又は前記レジストパターンとを接触させる。この処理により、レジストパターン端部においてわずかに染み出した染み出し部分を容易に除去できる。なお、接触させる酸性水溶液、アルカリ性水溶液又は水としては、本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物において用いられたバインダー成分の種類にも左右されるが、一例を挙げれば、例えば、前記アルカリ性水溶液のpHは、8.0~13.5程度、前記酸水溶液のpHは、1.0~6.0程度とすることができる。また水としては、蒸留水、脱イオン水、限外濾過水、純水、超純水等が用いられ得るが、好ましくは純水ないしは超純水として分類されるものである。なお、本明細書において述べるところの純水とは、特段に限定されるものではないが、例えば、加熱後に逆浸透膜を通したり、真空タンクなどの脱気装置や高純度の窒素ガスで曝気する脱酸素工程を経て、溶存酸素を0.1mg/L程度まで低減し、次いで熱交換器による冷却を行い、紫外線やオゾンにより、微量の有機物を酸化分解し、これを高度に精製洗浄されたイオン交換樹脂を通し、イオン化された有機物を除去し、さらに中空糸膜の限外ろ過膜を通し、紫外線で低分子化しきれなかった有機物や微粒子・生菌を捕捉するといった工程を経たものである。
【0097】
さらに本発明に係る太陽電池セルの製造方法においては、特に限定されるわけではないが、前記剥離工程において、アルカリ性水溶液又はアルコール含有水溶液と、前記半導体層及び/又は前記レジストパターンとを接触させる。本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物において用いられたバインダー成分の種類にも左右されるが、このような溶液と接触させることによって、エッチング処理後に残存するレジスト層を、容易に剥離除去できる。前記アルカリ水溶液のpHは、8.0~13.0でよく、8.5~12.0でもよい。前記アルコール含有水溶液中のアルコールとしては、例えば、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、n-オクタノール、2-エチル-ヘキシルアルコール、n-デカノール、1-(2-メトキシ-2-メトキシエトキシ)-2-プロパノール、3-メトキシー3-メチルブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0098】
[太陽電池]
本発明に係る太陽電池は、本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物又は本発明に係る回路パターンの製造方法を用いて得られる回路パターンを備える。上述の通り、この回路パターン上には残渣が残りにくいため、この回路パターンからは電極性能が高い太陽電池電極を得やすい。その結果、本発明に係る太陽電池は、高い変換効率を発揮しやすい。
【0099】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0100】
以上述べたように本発明に係るパターン印刷用レジスト組成物は、「バインダー成分と、フィラー成分と、増粘剤成分と、多官能性(メタ)アクリレートとを含み、光開始剤を含まない」パターン印刷用レジスト組成物であり、また、好ましい一実施形態においてはさらに「光触媒成分を含有する」パターン印刷用レジスト組成物であって、本願明細書における上述の説明及び以下の実施例において述べる各特性は、以下の測定方法によって、それぞれ分析することができる。
【0101】
<パターン印刷用レジスト組成物の性能評価>
以下の方法によって、本発明のパターン印刷用レジスト組成物の性能を評価する。
【0102】
(粘度)
粘度はJISZ8803に記載のB型粘度計を用いて測定する。特に本導電性ペースト組成物は高粘度であることから、HBタイプ(英弘精機製)で測定できる。ローターとしてプリンドルSC4-14を用いて25±1℃範囲で測定を行った粘度が、本明細書において規定する粘度である。
【0103】
(印刷性)
L/S=400/600μm、乳剤厚=20μmのスクリーン印刷版、スクリーン印刷機を用いてスキージ圧=0.20MPa、速度=100mm/分でアモルファス層を製膜したシリコンウェハー上に所定のパターンに印刷した際の、かすれ、パターンの広がり、パターンの厚みにより印刷性を調べた。なお、評価は、次の以下の評価基準に基づき評価する。
【0104】
○:かすれなし。パターン広がり幅50μm以下、厚みは設定値に対して±3μm以下で、スクリーン印刷でき、印刷性に問題なし。
△:かすれなし。パターン広がり50μm超過幅70μm以下、厚みは設定値に対して±5μm以下で、スクリーン印刷にやや問題がある。
×:かすれあり。パターン広がり幅70μm超過。厚みは設定値に対して±5μm以超過の何れかで、スクリーン印刷が不良である。
【0105】
(レジストパターン端部からの染み出しの状態)
テクスチャー付きシリコンウェハーにp層(正孔輸送層)を製膜したセル上にライン幅450μm、ライン間スペースと100μm、厚み40μmでレジストをスクリーン印刷し、120℃×30分で乾燥させる。次いで、パターン全面にUV露光(積算光量=1830mJ/cm2、露光装置:ライトハンマーL-6(ヘレウス(株)製))後、純水に5分間浸漬する。なお、一部の試料については、UV露光後純水に浸漬前に、光学顕微鏡でレジストパターンの端部を観察し、溶剤に溶解したバインダー成分が染み出して形成された透明な皮膜の幅(UV露光後の染出幅)を測定する。また、残りの試料については、浸漬の所定時間経過後に純水より取り出し、自然乾燥後、光学顕微鏡でレジストパターンの端部を観察し、溶剤に溶解したバインダー成分が染み出して形成された透明な皮膜の幅(UV露光、水浸漬処理後の染出幅)を測定する。
【0106】
(耐オゾン・フッ酸性)
テクスチャー付きシリコンウェハーにp層(正孔輸送層)を製膜したセル上にライン幅450μm、ライン間スペースと100μm、厚み40μmでレジストをスクリーン印刷し、120℃×30分で乾燥させて、レジストパターンを形成する。そのセルをオゾン40ppm、フッ酸7質量%のエッチング槽に10分間浸漬し、走査型電子顕微鏡(SEM)によりp層の状態を確認し、耐オゾン・フッ酸性を以下の評価基準に基づき評価する。
【0107】
良好:p層のライン幅が400μm以上450μm以下
可:p層のライン幅が350μm以上400μm未満
不良:p層のライン幅が350μm未満
【0108】
(レジスト剥離性)
上記のオゾンフッ酸処理を行ったセルを0.4質量%の水酸化カリウム、1.0質量%のホウ砂を溶解した水溶液に揺動(遥動幅=3cm、速度=60rpm)を伴い、2分間浸漬して、レジスト剥離の状態を光学顕微鏡で観察する。
【実施例】
【0109】
以下、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
<パターン印刷用レジスト組成物組成(表1参照)>
【0110】
[実施例1]
ブレンド専用の容器(φ89×φ98×94mm、内容量470cc、ポリプロピレン製)に、バインダー成分としてフォレット(商標名)ZAH-110(綜研化学(株)製、アクリル系バインダー、不揮発成分=35質量%、カルボン酸官能基量=96mgKOH/g、溶剤成分=プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、粘度=300mPa・s):64g、多官能性(メタ)アクリレートとしてライトアクリレートTMP-A(共栄社化学(株)製、トリメチロールプロパントリアクリレート)3g、増粘剤として、AEROSIL#300(親水性フュームドシリカ、エボニックジャパン(株)製):1gを添加して、薬匙で手攪拌後、専用の攪拌・脱泡装置(品番:泡取り錬太郎ARV-310、(株)シンキー社製)を用いて混合物にせん断を掛けて攪拌した。その後、含水ケイ酸マグネシウム(和光純薬(株)製)15g、光触媒型酸化チタンとしてTKD-701(テイカ(株)製、アナターゼ型結晶、一次粒径=6nm、固形分17%IPAスラリー)17gを添加して上記の同様にして、混合、攪拌・脱泡を行いパターン印刷用レジスト組成物を得た。得られたパターン印刷用レジスト組成物に関して、上述した測定方法により、粘度、印刷性、レジストパターン端部からの染み出しの状態、耐オゾン・フッ酸性、及びレジスト剥離性の特性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0111】
[実施例2]
実施例1の光触媒型酸化チタンをTKD-702(テイカ(株)製、アナターゼ型結晶、一次粒径=6nm、固形分16%IPAスラリー)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、パターン印刷用レジスト組成物を得、同様の特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0112】
[実施例3]
実施例1の光触媒型酸化チタンをSTS-01(石原産業(株)製、アナターゼ型結晶、一次粒径=7nm、固形分30%水系ゾル)10g、含水ケイ酸マグネシウムを22gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、パターン印刷用レジスト組成物を得、同様の特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0113】
[実施例4]
実施例1の光触媒型酸化チタンをSTS-02(石原産業(株)製、アナターゼ型結晶、一次粒径=7nm、固形分30%水系ゾル)10g、含水ケイ酸マグネシウムを22gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、パターン印刷用レジスト組成物を得、同様の特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0114】
[実施例5]
実施例1のTKD-701をSTS-01に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、パターン印刷レジスト組成物を得、同様の特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0115】
[実施例6]
実施例5のSTS-01をSTS-02に変更した以外は、実施例5と同様の方法で、パターン印刷レジスト組成物を得、同様の特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0116】
[実施例7]
実施例1のライトアクリレートTMP-Aに替えてPE-3A(共栄社化学(株)製、ペンタエリスリトールトリアクリレート)3g添加した以外は、実施例1と同様の方法で、パターン印刷レジスト組成物を得、同様の特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0117】
[実施例8]
実施例3のライトアクリレートTMP-Aに替えてPE-3A(共栄社化学(株)製、ペンタエリスリトールトリアクリレート)3g添加した以外は、実施例3と同様の方法で、パターン印刷レジスト組成物を得、同様の特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0118】
[実施例9]
実施例1のTKD-701を添加せず、ZAH-100を81gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、パターン印刷レジスト組成物を得、同様の特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0119】
[比較例1]
実施例1のTMP-A及びTKD-701を添加せず、ZAH-110を74g、含水ケイ酸マグネシウムを22gに変更した以外は、実施例1と同様の方法でパターン印刷レジスト用組成物を得、同様の特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0120】
[比較例2]
ZAH-110を63.8gに変更、IRGACURE_TPO(BASFジャパン(株)製、2,4、6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド)0.2g添加した以外は、実施例1と同様の方法でパターン印刷レジスト組成物を得、同様の特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0121】
(印刷性)
実施例1~8、比較例1、2のパターン印刷レジスト組成物は良好なスクリーン印刷を示した。
【0122】
(染み出し防止性)
レジスト端部の透明な薄膜の幅は、比較例1が200μmであったのに対して、実施例1~8においてはパターン印刷後においても150μm以下であり染み出し抑制効果が良好であり、さらに水浸漬によって50μm以内とより良好な程度に除去可能であり、染み出し抑制効果が良好であった。
【0123】
(耐エッチング液性)
太陽電池セルのアモルファス等のエッチング液である、5.5%フッ酸/40ppmに対する耐エッチング液性は、比較例1、2と実施例1~8間で差は無く、非常に良好な結果であった。
【0124】
(レジスト剥離性)
4%KOH+8%KBO3のアルカリ水溶液でのレジストパターンの剥離性評価では、実施例1~8、比較例1では浸漬10分間でレジストの剥離が完了しており、良好な結果であったのに対して、光開始剤を添加した比較例2では、レジストパターンの硬化が進み、剥離液に10分間浸漬してもレジストパターンの形状には全く変化が無く、剥離性が低下していることが分かった。
【0125】
【0126】
[総評]
バインダーと、フィラーと、増粘剤と、多官能性(メタ)アクリレートと、平均粒径が1nm以上200nm以下である光触媒活性を有する酸化チタンとを含み、光開始剤を含まない、パターン印刷用レジスト組成物では、レジストの基本性能である印刷性、耐エッチング液性、レジスト剥離性は良好に維持したまま、染み出し抑制効果が格段に向上している。また、光開始剤を添加して比較例2では、剥離性の低下を起こしており、敢えて光開始剤を添加しない実施例の利点が発揮されている。