(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】紐固定構造及び靴用紐締めシステム
(51)【国際特許分類】
A43C 3/00 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
A43C3/00
(21)【出願番号】P 2020565038
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(86)【国際出願番号】 IT2019050027
(87)【国際公開番号】W WO2019155503
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】102018000002507
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520298662
【氏名又は名称】10 オットブレ エス. アール. エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】スピネリ、アンドレア
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0067211(US,A1)
【文献】国際公開第2016/171634(WO,A1)
【文献】特開昭47-031042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43C 1/00-3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐(4)が交差することができる複数の開口部を備えかつ前記紐が前記開口部を通って滑動することが防止される固定位置において前記紐を固定するための手段を備えた本体を含む紐固定構造であって、
前記手段はまた、前記紐が前記開口部内で滑動可能とするために前記紐の固定を解除するように構成され、
前記本体は、右側レバー(2d)及び左側レバー(2s)による2つの対向するレバー(2d,2s)がヒンジ結合されたフレーム(1)によって構成され、それらのレバーのそれぞれが前記フレーム(1)上で回転して上昇位置(A)及び下降位置(B)をそれぞれとることができ、
前記上昇位置(A)において、各レバー(2d,2s)が紐(4)による交差可能な対応空間(3d,3s)を残し、また前記レバー(2d,2s)が下降位置にある場合、空間は閉じられ、その結果、前記レバー(2d,2s)が上昇している場合、前記紐(4)は前記レバー(2d,2s)の各々と前記フレーム(1)との間を自由に滑動しかつその逆も同様であり、前記レバー(2d,2s)が下降している場合、前記紐(4)は自由に滑動せず、
前記レバー(2d,2s)の各々は、各レバー(2d,2s)内に空スペース(VS)を画定するように構成され、前記空スペース(VS)は前記紐(4)により交差が可能であるように構成され
、
前記レバー(2d,2s)が、前記フレームのそれぞれの縁部(12)を越えて突出する自由端部(20d,20s)を有し、
前記レバー(2d,2s)の各々が、中央体(22e)と、一方の側が前記中央体(22e)によって接合されかつ他方の側が前記自由端部(20d,20s)によって接合される2つのアーム(22f)とを有することを特徴とする紐固定構造。
【請求項2】
前記レバー(2d,2s)
の前記自由端部(20d,20s)が凹状
とされてなり、前記凹状
の自由端部の凹面が下方を向いていることを特徴とする請求項1記載の紐固定構造。
【請求項3】
前記アーム(22f)が前記フレーム(1)の外部にあり、前記中央体(22e)が前記フレーム(1)の内部にあることを特徴とする請求項
1記載の紐固定構造。
【請求項4】
前記レバー(2d,2s)の各々が中央体(22e)を有し、当該中央体は穿孔されかつ前記フレーム(1)の内部にあることを特徴とする請求項1記載の紐固定構造。
【請求項5】
前記レバー(2d,2s)はそれぞれのピン(22d)によって前記フレーム(1)にヒンジ止めされており、当該それぞれのピンは前記フレーム(1)の外部にある連結面(2x)によって互いに接合されていることを特徴とする請求項1記載の紐固定構造。
【請求項6】
前記レバー(2d,2s)は、前記フレーム(1)によって内側に提示される歯(1j)の前面に生じる歯(22j)を有することを特徴とする請求項1記載の紐固定構造。
【請求項7】
前記空スペース(VS)は、前記レバー(2d,2s)を前記フレーム(1)に接着する下降位置に位置決めすることを可能にするように構成されることを特徴とする請求項1記載の紐固定構造。
【請求項8】
前記レバー(2d,2s)は、前記フレーム(1)に接着するように下降位置に位置決めされるように構成されることを特徴とする請求項1記載の紐固定構造。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項記載の紐固定構造(L)と、端部を有する靴紐(4)とを含み、
前記靴紐(4)は、前記端部に相互に磁気的に引っ掛け可能な部材(40)を備えることを特徴とする靴用紐締めシステム。
【請求項10】
前記部材が反対極の2つの磁石(40)によって形成されることを特徴とする請求項
9記載の靴用紐締めシステム。
【請求項11】
前記部材が前記靴紐(4)の端部に取り外し可能に適用されることを特徴とする、請求項
9記載の靴用紐締めシステム。
【請求項12】
前記磁気的に引っ掛け可能な部材(40)の表面のそれぞれが、2つの相互に連結可能な部分(41、42)からなる支持体によって前記靴紐(4)に適用されることを特徴とする請求項
9記載の靴用紐締めシステム。
【請求項13】
前記部分(41,42)は、互いにねじ止めされ、そして前記支持体を前記靴紐(4)に締め付けることを特徴とする請求項1
2記載の靴用紐締めシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴紐固定構造及び靴紐締めシステムに関する。
【0002】
より具体的には、本発明による靴紐固定構造は結び目又は蝶結びを作ることを必要とせず、紐を固定することを可能にし、従って、子供、高齢者、身体機能の低下した人々による使用に特に適しており、より一般的には紐締めシステムを有するどのような履物における使用にも適している。さらに、本発明による靴紐固定構造は製造が簡単であり、提供される利点に比べて特に経済的である。さらに、履物のための特に効果的な紐締めシステムを作り出すために、問題の紐固定構造に特別な紐を組み合わせることが可能である。
【0003】
特許文献1は、2つのレバーがヒンジ止めされかつそのレバー間にバネが設置されているフレーム内に形成されたチャネルを介して一本の紐の2つの部分が通されるバネ係止紐固定構造を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明による紐固定構造は、請求項1に示される特徴を有する。本発明の他の特徴は、従属クレームに記載されている。
【0006】
本発明のさらなる利点および特徴は、例示として提供される以下の記載及び添付の図面によって、当該技術分野のすべての技術者によってより良く理解されるのであろうが、限定的な意味で考慮されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明による紐固定構造の可能な実施形態を示す図面で、レバー(2d,2s)が下げられた状態での下からの斜視図である。
【
図2】本発明による紐固定構造の可能な実施形態を示す図面で、レバー(2d,2s)が下げられた状態での上からの平面図である。
【
図3】本発明による紐固定構造の可能な実施形態を示す図面で、レバー(2d,2s)が下げられた状態での側面図である。
【
図4】レバー(2d,2s)が下降位置にある状態での
図1~3の紐固定構造の側面図である。
【
図5】第1の使用段階における
図1~4の紐固定構造を示す説明図である。
【
図6】第2の使用段階における
図1~4の紐固定構造を示す説明図である。
【
図7】第3の使用段階における
図1~4の紐固定構造を示す説明図である。
【
図8】第4の使用段階における
図1~4の紐固定構造を示す説明図である。
【
図9】第5の使用段階における
図1~4の紐固定構造を示す説明図である。
【
図10】紐に適用可能な磁石の端部キャップを示す側面図である。
【
図11】紐に適用可能な磁石の端部キャップを示す分解斜視図である。
【
図12】前記端部キャップの詳細を示す斜視図である。
【
図13】本発明による紐固定構造の2つの構成要素の内の一方の構成要素を示す斜視説明図である。
【
図14】本発明による紐固定構造の2つの構成要素の内の他方の構成要素を示す斜視説明図である。
【
図15】本発明による紐固定構造のさらなる実施形態を示す側面説明図である。
【
図16】本発明による紐固定構造のさらなる実施形態の一部を断面にて示す側面説明図である。
【
図17】本発明による紐固定構造の別のさらなる実施形態を示す分解斜視説明図である。
【
図18】
図17に示した紐固定構造の組み立て状態を示す斜視説明図である。
【
図19】
図18に示した紐固定構造の一部を断面にて示す側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
その本質的な構造に変形され、添付図面の図面を参照して、本発明による紐固定構造(L)は、中央開口部(10)を有するフレーム(1)から構成されている。フレーム(1)上には右レバー(2d)及び左レバー(2s)による2つの対向するレバー(2d,2s)がヒンジ結合されており、上記レバーの各々は上昇位置(A)及び下降位置(B)をそれぞれとるように前記フレーム(1)に対して回転することができる。上記上昇位置(A)では、紐(4)は自由に滑動し、一方、上記レバー(2d,2s)が上記下降位置にあるとき、上記紐(4)は固定される。換言すれば、上記レバー(2d,2s)が持ち上げられると、上記紐(4)は、上記レバー(2d,2s)の各々と上記フレーム(1)との間を自由に滑動する。逆に、上記レバー(2d,2s)が下げられると、上記紐(4)はブロックされ、即ち、自由に滑動することができない。
【0009】
図13に示す実施形態に従って、前記フレーム(1)は上方及び下方の両方が完全に開放されている中央開口部(10)を有し、かつその下面に対応する2つの座(11d,11s)を有し、当該座は前記各レバー(2d,2s)によって提示される相対的なヒンジピンを収容するのに適している。
図14において、この図面では簡略化のためにレバー(2d)のみを表しているが、符号(22d)は前記フレーム(1)の前記座(11d)に位置決めされることが想定される前記レバー(2d)のピンを示している。前記ピン(22d)は中央体(22e)から両側に突出し、かつ前記レバーが前記フレーム(1)に適用される場合に、前記フレーム(1)の外側にある2つのアーム(22f)の間に横方向に展開される。その代わりに、前記レバーが後者に適用される場合に、前記中央体(22e)はフレーム(1)の内側にある。他のレバー(2s)も同様の構造である。
【0010】
使用者による前記レバー(2d,2s)の持ち上げを容易にするために、当該レバーは、前記フレーム(1)のそれぞれの縁部(12)を越えて突出する、当該フレーム(1)にヒンジ止めされた端部に対向する自由端部(20d,20s)を提示するような形状に形成されることが可能である。前記レバー(2d,2s)の前記自由端部(20d,20s)は、下方を向いている凹部を有する凹状である、即ち紐固定構造が使用される靴の上部(5)に向いているのが好ましい。
【0011】
前述の中央体(22e)をより弾性的にするために、
図16に例示的に示すように、ドリル加工することができる。
図16において、各中央体(22e)の穴は、符号“22h”によって示されている。この実施形態においては、穴(22h)は、図面に示すように、各中央体(22e)に対して横方向に配向されている。このような穴(22h)は、質量を減少させ、中央体(22e)のより小さい剛性、即ち、当該中央体のより大きい弾性を達成する。これは、非常に太い紐が使用される場合に特に有用である。例えば、前記穴(22h)は前記レバー(2d,2s)の成形段階中に形成され、この成形段階では、
図15に概略的に示すように、横方向アーム(22f)にも対応する穴(22k)が設けられる。
【0012】
図16には、特に、前記レバー(2d,2s)の前記中央体(22e)に形成された対向する歯(22j,1j)と、前記中央体に面するフレーム(1)の内側とが図示されている。しかしながら、前記歯(22j,1j)は、添付図面の他の図に示される紐固定構造上にも見える。前記歯(22j,1j)の存在は、さらに前記レバー(2d,2s)と前記フレーム(1)の間の紐のグリップとブロックに有利に作用する。
【0013】
紐(4)は、前記靴の上部(5)に特別に設けられた鳩目または穴(50)に通される。次いで、紐(4)の各端部(4h)は、前記フレーム(1)の前記歯部(1j)とそれぞれの持ち上げられたレバー(2d,2s)の歯部(22j)との間の空間を通される。このようにして、紐(4)によって紐固定構造は靴に関連付けられる。これらの手順は、
図5~
図7に概略的に示されている。
【0014】
本発明によれば、前記レバー(2d、2s)は、紐がそれらを通ることを可能にする構造を有することができる。
図14に示すように、各レバー(2d,2s)は、中央体(22e)と自由端部(20d,20s)との間に空スペース(VS)を有する。
図2、
図14及び
図16の実施形態に見られるように、前記中央体(22e)に前記歯(22j)が設けられる場合、前記空スペース(VS)は、前記歯(22j)と前記自由端部(20d、20s)との間に位置する。前記空スペースには、前記紐が通される。前記空スペース(VS)は、
図1、
図2、
図3、
図15及び
図16に例示されるように、前記レバー(2d,2s)を前記フレームに接着する下降位置に位置決めすることを可能にし、前記紐(4)はこの空スペースを通る。
【0015】
図17~
図19に例示された実施形態を参照して、前記レバー(2d,2s)は、前記中央体(22e)を前記自由前面(20d,20s)と接合する連続面(20p)によって形成された上部を有する。前述の実施形態のように、各レバー(2d,2s)の前記中央体(22e)は、紐固定構造の組み立てられた構成において、それぞれの内側部に対応して、前記フレーム(1)によって提示される歯(1j)の前方に、位置する歯(22j)を有するのが好ましい。前記歯(1j,22j)は、必ずしも存在する必要はなく、そして前記フレーム(1)及び前記レバー(2d,2s)の双方に必ずしも形成される必要はない。
【0016】
各レバー(2d,2s)は、対応する横ピン(22d)によって前記フレーム(1)にヒンジ止めされている。前記2本のピン(22d)は、前記レバー(2d,2s)の対応する穴(2m)に嵌め込まれ、そして紐固定構造の組み立て時に前記フレーム(1)の外側に位置する連結表面(22x)によって接合される。前記表面(22x)側の反対側では、前記表面(22x)が載っている側と反対側の前記フレーム(1)側の特別な座(1y)に前記2本のピン(22d)が嵌合する。前記ピン(22d)は、また、前記フレーム(1)の側面にある前記座(1y)とは反対側の2つの穴(1z)に挿入される。この実施形態においても、前記レバー(2d,2s)の前記中央体(22e)は軽量化空間(22h)を有している。本発明による紐固定構造のこの構造形態は、特に組立てを単純化する。
【0017】
前記紐(4)をブロックするには、当該紐の2つの左右の紐部分が外側に引かれる、即ち、一方の紐部分が右側に引かれ、他方の紐部分が左側に引かれ、従って、前記フレーム(1)の上部(5)への滑動を決定する。所望の牽引力に達すると、前記2つのレバー(2d,2s)が下げられ、そして結び目を作る必要なく、前記紐がブロックされる。この紐固定の後、所望であれば、蝶結びを作ることによって前記紐を結ぶことが依然として可能である。
【0018】
前記紐固定構造(L)から突出する前記紐(4)の部分が下方に揺動できることを避けるために、
図9に示すように、前記紐の端部が互いに磁気的に結合されることを可能にする反対の極を有する磁石(40)が前記紐(4)の両端に設けられるのが好ましい。
図9に示す実施形態においては、前記紐(4)の2つの端部が使用者の足首の後ろで一緒に引っ掛けられている。
【0019】
例えば、それぞれの磁石(40)は2つの部分からなる支持体(41,42)によって前記紐(4)と関連付けることが可能で、上記支持体の第1部分部材(41)はその前縁に雌ねじ(410)を設けた貫通孔(411)を有するブッシュであり、そして第2部分部材(42)は可撓性の小さいウィング(420)からなるシャンクと、前側に磁石(40)を収容しかつ後側に第1部分部材(41)のねじ山と相補的なねじ山(431)を有するヘッド(430)とを有している。前記紐の各端部(4h)は、第2部分部材(42)の対応するステム(420)に達するまで対応するブッシュ(41)を通して挿入され、その後、前記各端部はブッシュにねじ込まれ、前記磁石(40)を前記紐(4)の端部(4h)に固定する。
【0020】
図10において、
図11及び
図12は、磁石(40)の支持体の前記第1及び第2部分部材(41,42)を示している。
図6は、前記紐(4)の端部への磁石(40)の関連付けの状態を示す。前記部分部材(41,42)の外面はそれらの使用を容易にするために、滑らかである代わりに、ローレット加工されるか、またはいずれにしても機械加工を行うことが可能である。
【0021】
反対極の2つの磁石の代わりに、磁気効果による前記紐の2つの端部の相互結合を可能にするために、前記紐の一方の端部に1つの磁石(40)のみを使用し、同一の紐の他方の端部に金属材料のボタンを使用することが可能であることが確認されている。
【0022】
実際問題として、採用される解決策の概念の範囲を離れることなく、従って、本特許によって付与される保護の範囲内において、記載されかつ図示された個々の構成要素に関して均等の態様で、実行の詳細は依然として変化することが可能である。