(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】HDAC6選択的阻害剤の結晶形及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 405/04 20060101AFI20230912BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230912BHJP
A61K 31/443 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C07D405/04 CSP
A61P35/00
A61K31/443
(21)【出願番号】P 2020573256
(86)(22)【出願日】2019-07-03
(86)【国際出願番号】 CN2019094602
(87)【国際公開番号】W WO2020007329
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】201810726102.X
(32)【優先日】2018-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519250338
【氏名又は名称】シーストーン・ファーマスーティカルズ・(スージョウ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CSTONE PHARMACEUTICALS (SUZHOU) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】BUILDING A1 E168, 218 XINGHU ST., SUZHOU INDUSTRIAL PARK, SUZHOU, JIANGSU 215123, CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】519250349
【氏名又は名称】シーストーン・ファーマスーティカルズ・(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CSTONE PHARMACEUTICALS (SHANGHAI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】ROOM 211‐20, 2F, BUILDING 1, 38 DEBAO ROAD, SHANGHAI PILOT FREE TRADE ZONE, SHANGHAI 200000, CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】519250350
【氏名又は名称】シーストーン・ファーマスーティカルズ
【氏名又は名称原語表記】CSTONE PHARMACEUTICALS
【住所又は居所原語表記】P.O. BOX 31119, GRAND PAVILION, HIBISCUS WAY, 802 WEST BAY ROAD, GRAND CAYMAN KY 1‐1205, CAYMAN ISLANDS, UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】郭 ▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】▲韋▼ 昌青
(72)【発明者】
【氏名】肖 ▲瑤▼
(72)【発明者】
【氏名】樊 莉莉
(72)【発明者】
【氏名】▲銭▼ 文▲遠▼
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0347732(US,A1)
【文献】特表2013-542994(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0168084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折スペクトルは以下の2θ角:11.53±0.2°、18.46±0.2°、23.60±0.2°において特徴的な回折ピークを有する、式(I)化合物のA結晶形。
【化1】
【請求項2】
粉末X線回折スペクトルは以下の2θ角:11.53±0.2°、13.21±0.2°、16.33±0.2°、17.42±0.2°、18.46±0.2°、21.43±0.2°、22.57±0.2°、23.60±0.2°において特徴的な回折ピークを有する、請求項1に記載のA結晶形。
【請求項3】
粉末X線回折スペクトルは以下の2θ角:8.898°、11.118°、11.528°、12.652°、13.206°、13.761°、16.325°、17.415°、18.067°、18.464°、19.289°、20.697°、21.427°、22.572°、23.226°、23.599°、25.674°、26.619°、27.611°、29.090°、29.879°、31.852°、33.878°、35.252°及び36.122°において特徴的な回折ピークを有する、請求項2に記載のA結晶形。
【請求項4】
XRPDスペクトルは
以下の表に示す通りである、請求項3に記載のA結晶形。
【請求項5】
示差走査熱量曲線は135.55℃において吸熱ピークの開始点を有する、請求項1~4のいずれかに記載のA結晶形。
【請求項6】
熱重量分析曲線は135.40±3℃において重量が0.2115%減少する、請求項1~4のいずれかに記載のA結晶形。
【請求項7】
HDAC6関連疾患を治療するための医薬の製造における、請求項1~
6のいずれか1項に記載のA結晶形の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は以下の優先権を主張する:CN201810726102X、出願日:2018年07月04日である。
【0002】
(技術分野)
本発明は、式(I)で表される化合物のA結晶形、及びHDAC6関連疾患を治療するための医薬の製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
WHOの専門家は、2020年には世界の人口が80億人に達し、がんの発生は2000万人に達し、死亡者は1200万人に達すると予測している。がんは新世紀の人類の最大キラーとなり、人類の生存に最も深刻な脅威となる。工業化が進んでいる中国は、米国に次ぐ世界第二位のがん発生国となっており、そのがんの発病率と死亡率は明らかに上昇する傾向を示している。都市ではがんは全死因の第一位を占め、地方ではがんは全死因の第二位を占めている。中国でのがんの発病率と死亡率の急増につれ、がんに使用される全国の年間医療費はすでに1500億元を超えた。
【0004】
HDAC阻害剤は、さまざまながんに幅広く使用されており、さまざまな医薬と組み合わせて当該医薬の治療効果を高めることができ、十分に証明された抗腫瘍標的である。細胞核内では、ヒストンデアセチラーゼ(histone deacetylase、HDAC)とヒストンアセチルトランスフェラーゼ(histone acetyl trans-ferase、HAT)は遺伝子転写を共調節する。がん細胞では、HDACの過剰発現は脱アセチル化の増強につながり、それによってDNAとヒストン間の引力を増加させ、ヌクレオソームが非常にコンパクトになり、腫瘍阻害遺伝子の発現に不利になる。阻害剤(HDACi)は、ヒストンのアセチル化を増加させることにより、細胞のアポトーシス及び分化関連タンパク質の発現を調節し、細胞のアポトーシス及び分化を誘導し、新規の抗腫瘍薬になっている。それだけでなく、HDACは、例えば、アルツハイマー病(Alzheimer)、パーキンソン病(Parkinson)などの多くの代謝性疾患の調節にも関与し、HDACi阻害剤は動物及びヒトの試験で優れた効果を示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
合計18種のデアセチラーゼサブタイプの中で、HDAC6は細胞質内の唯一のデアセチラーゼサブタイプであり、他の17のHDACはすべて細胞核内に存在する。HDAC6はタンパク質を直接的に触媒しなく、チューブリン(tubulin)及び熱ショックタンパク質(Hsp90)を基質とし、それらを通じて細胞の輸送、接着及び移動を調節(即ち、遺伝子調節はしない)する。したがって、それは、遺伝子関連の生理機能に与える効果がより少なく、副作用もより少ないと信じられている。現在の臨床試験の結果は、HDAC6選択的阻害剤は安全で効果的(POC)であることを証明した。最初のHDAC6選択的阻害剤ACY-1215(Acetylon)の臨床研究は、選択的HDAC6阻害剤はより優れた安全性を有することを示し、したがって商業的見通しがより良い。
【0006】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の開示)
本発明は粉末X線回折スペクトルが以下の2θ角:11.53±0.2°、18.46±0.2°、23.60±0.2°において特徴的な回折ピークを有する、式(I)化合物のA結晶形を提供する。
【化2】
【0008】
本発明の幾つかの実施の態様において、前記A結晶形の粉末X線回折スペクトルは以下の2θ角:11.53±0.2°、13.21±0.2°、16.33±0.2°、17.42±0.2°、18.46±0.2°、21.43±0.2°、22.57±0.2°、23.60±0.2°において特徴的な回折ピークを有する。
【0009】
本発明の幾つかの実施の態様において、前記A結晶形の粉末X線回折スペクトルは以下の2θ角:8.898°、11.118°、11.528°、12.652°、13.206°、13.761°、16.325°、17.415°、18.067°、18.464°、19.289°、20.697°、21.427°、22.572°、23.226°、23.599°、25.674°、26.619°、27.611°、29.090°、29.879°、31.852°、33.878°、35.252°及び36.122°において特徴的な回折ピークを有する。
【0010】
本発明の幾つかの実施の態様において、前記A結晶形のXRPDスペクトルは
図1に示す通りである。
【0011】
本発明の幾つかの実施の態様において、前記A結晶形のXRPDスペクトル解析データは表1に示す通りである。
【0012】
【0013】
本発明の幾つかの実施の態様において、前記A結晶形の示差走査熱量曲線は135.55℃において吸熱ピークの開始点を有する。
【0014】
本発明の幾つかの実施の態様において、前記A結晶形のDSCスペクトルは
図2に示す通りである。
【0015】
本発明の幾つかの実施の態様において、前記A結晶形の熱重量分析曲線は135.40℃±3℃において重量が0.2115%減少する。
【0016】
本発明の幾つかの実施の態様において、前記A結晶形のTGAスペクトルは
図3に示す通りである。
【0017】
本発明は、さらに、HDAC6関連疾患を治療するための医薬の製造における前記A結晶形の使用を提供する。
【0018】
(発明の効果)
本発明の式(I)化合物のA結晶形は、安定であり、光、熱、湿度による影響が少なく、良好な生体内での薬効を有し、薬になる見通しがある。
【0019】
(定義と説明)
特に断りのない限り、本明細書に用いられる以下の用語と句は下記の意味を含む。一つの特定の句又は用語は、特に定義されていない場合、不確定か不明であると考えられるものではなく、一般的な意味で理解すべきである。本明細書に商品名が現れる場合、その対応する商品又はその活性成分を表すことが意図される。
【0020】
本発明の中間体化合物は、以下に挙げられる具体的な実施の態様、他の化学合成法と組み合わせた実施の態様、及び当業者に周知である等価の置き換え方式を含む、当業者に周知である複数の合成方法により調製することができる。好ましい実施の態様は、本発明の実施例が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明の具体的な実施の態様の化学反応は適当な溶剤において完成されるものであり、前記溶剤は本発明の化学変化及びその必要な試薬及び材料に適しなければならない。本発明の化合物を得るために、当業者は従来の実施の態様に基づき合成ステップ又は反応フローを変形又は選択する必要があることがある。
【0022】
以下に実施の形態により本発明を詳しく説明するが、これらの実施の形態は本発明を何らか制限するものではない。
【0023】
本発明に用いられる全ての溶剤は市販されるものであり、さらに精製することなく使用できる。
【0024】
本発明に用いられる全ての溶剤は市販で入手できる。本発明は下記の略語を用いる:EtOHはエタノールを表し;MeOHはメタノールを表し;TFAはトリフルオロ酢酸を表し;TsOHはp-トルエンスルホン酸を表し;mpは融点を表し;EtSO3Hはエタンスルホン酸を表し;MeSO3Hはメタンスルホン酸を表し;THFはテトラヒドロフランを表し;EtOAcは酢酸エチルを表す。
【0025】
本発明の粉末X線回折(X-ray powder diffractometer、XRPD)方法
計器型番:ブルカーD8 advance X線回折計
測定方法:約10~20mgの試料をXRPDの検出に用いる。
【0026】
詳細なXRPDパラメーターは下記の通りである。
X線管:Cu、kα、(λ=1.54056Å)
管電圧:40kV、管電流:40mA
発散スリット:0.60mm
センサスリット:10.50mm
散乱防止スリット:7.10mm
走査範囲:4~40deg
ステップ角:0.02deg
ステップ幅:0.12秒
試料パン回転数:15rpm
【0027】
本発明の示差走査熱量分析(Differential Scanning Calorimeter、DSC)方法
計器型番:TA Q2000示差走査熱量計
測定方法:試料(~1mg)をDSCアルミニウム坩堝に量り取って測定を行い、50ml/分 N2の条件で、10℃/分の昇温速度で、試料を30℃(室温)から300℃(又は350℃)まで加熱する。
【0028】
本発明の熱重量分析(Thermalgravimetric Analyzer、TGA)方法
計器型番:TA Q5000IR熱重量分析計
測定方法:試料(2~5mg)をTGA白金坩堝に量り取って測定を行い、25ml/分 N2の条件で、10℃/分の昇温速度で、試料を室温から350℃まで、又は重量が20%減少するまで加熱する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】A結晶形のCu-Kα線のXRPDスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の内容がよりよく分かるように、以下に具体的な実施の形態を参照しながらさらに説明するが、具体的な実施の態様は本発明の内容を制限するものではない。
【0031】
【0032】
工程1:
N2の保護下で、化合物1(1.712kg、8.90mol、1.0当量)、トルエン(17L)を順次にリアクターに添加し、ドライアイスエタノールバスでリアクター内の温度を-70℃に調整した。2.5Mのn-ブチルリチウム(3.92L、9.79mol、1.1当量)のn-ヘプタン溶液を蠕動ポンプでリアクターに滴下し、リアクターの温度が-70℃を超えないように滴下速度を制御した。添加完了後、続いて当該温度で1時間攪拌した。調製した化合物2(1.785kg、8.90mol、1.0当量)のトルエン(1.8L)溶液を蠕動ポンプで前記反応系に添加し、リアクターの温度が-50℃を超えないように添加速度を制御した。次に、ドライアイスエタノールバスを撤除して反応系を15~20℃に昇温させ、続いて14時間攪拌した。HPLCで反応が完了したことを検出した後、順次に飽和塩化アンモニウム水溶液(2L)と水(10L)を添加し、有機相を分離し、水相を酢酸エチル(3L×2)で抽出した。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を減圧濃縮して乾燥させた。得られた黒褐色のオイル状物をシリカゲルで濾過し(n-ヘプタン:酢酸エチルの比は5:1であった)、濾液を減圧濃縮して乾燥させ、化合物3を得た。1H NMR(400MHz、CDCl3):δ8.26~8.35(m、1H)、7.50~7.60(m、1H)、7.20~7.30(m、2H)、7.13(d、J=8.0Hz、1H)、6.80~6.95(m、2H)、3.94(t、J=6.8Hz、2H)、2.36~2.55(m、2H)、1.80~1.93(m、2H);MSESI計算値はC15H13ClFNO[M+H]+278であり、測定値は278であった。
【0033】
工程2:
化合物3(0.6kg、2.16mol、1.0当量)、酢酸パラジウム(0.022kg、0.098mol、0.05当量)、トリエチルアミン(0.6L、4.32mol、2.0当量)、1,3-ビスジフェニルホスフィンプロパン(0.089kg、0.216mol、0.1当量)及びメタノール(6L)を順次に10Lのオートクレーブリアクターに添加し、得られた混合物をアルゴンガスで3回置換した後、2MPaの一酸化炭素ガスを通過させ、100~105℃に昇温させ、24時間攪拌した。当該反応を4回並行して実行した。合わせた後、後処理した。合わせた反応液を濾過し、濾液を減圧濃縮して乾燥させた。次に、順次に酢酸エチル(10L)と水(5L)を添加し、攪拌し、静置して有機相を分離させ、水相を酢酸エチル(2L×2)で抽出した。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を減圧濃縮して乾燥させた。次に、シリカゲル(ジクロロメタン:酢酸エチルの比は5:1であった)で濾過し、濾液を減圧濃縮して乾燥させ、2.15kgの粗生成物を得た。当該固体を酢酸エチル(21L)に溶解させ、活性炭(430g)を添加して12時間還流させた。熱いうちに珪藻土で濾過し、ケーキを熱い酢酸エチル(2L×2)で洗浄した。合わせた濾液を減圧濃縮して乾燥させ、化合物4を得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ:8.79(d、J=1.6Hz、1H)、8.05(d、J=8.4Hz、1H)、7.85(dd、J=8.0、1.6Hz、1H)、7.30~7.45(m、2H)、6.90~7.05(m、2H)、4.00~4.10(m、2H)、3.98(s、3H)、2.43~2.70(m、2H)、1.85~2.05(m、2H);MSESI計算値はC17H16FNO3[M+H]+302であり、測定値は302であった。
【0034】
工程3:
窒素ガスパージ下、室温で化合物4(0.2kg、0.664mol、1.0当量)及び化合物5(0.134kg、0.664mol、1.0当量)のテトラヒドロフラン(2L)溶液を含有する5Lの三口フラスコに2Mのトリメチルアルミニウムトルエン溶液(0.66L、1.32mol、2.0当量)を滴下し、滴下加速を制御して内部温度を50℃を超えないようにし、滴下完了後、反応系を70℃で20分間加熱しながら攪拌した。反応完了後、反応液を減圧濃縮して乾燥させた。得られた黒褐色の粘稠ペースト状物を0℃、窒素ガスパージ下で黄褐色の固体になるまで2Mの水酸化ナトリウム水溶液でクエンチングさせた。当該反応及びクエンチング過程を並行して10回行った後合わせた。前記得られた黄褐色の固体にジクロロメタンとメタノールの混合溶液(体積比:10:1、20L)を添加し、懸濁液がゲルゼリーになるまで絶えず攪拌しながら2Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。このとき、無水硫酸ナトリウム(5kg)を反応系に添加し、続いて攪拌した。前記固体液体混合物を珪藻土で濾過し、濾液を収集し、濾液をジクロロメタン及びメタノールの混合溶液(体積比:10:1、5L×4)で繰り返して攪拌し、濾過し、合わせた濾液を減圧濃縮して乾燥させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン:酢酸エチル:ジクロロメタンの比は3:1:1であった)で精製して、化合物6を得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ:8.59(s、1H)、8.38(brs、1H)、8.15(d、J=8.0Hz、1H)、8.00(d、J=8.4Hz、2H)、8.70~8.90(m、1H)、7.37~7.45(m、4H)、6.94~7.05(m、2H)、4.71(d、J=6.4Hz、2H)、4.07(t、J=7.2Hz、2H)、3.91(s、3H)、2.45~2.65(m、2H)、1.90~2.05(m、2H);MSESI計算値はC25H23FN2O4[M+H]+435であり、測定値は435であった。
【0035】
工程4:
50Lのリアクターで、0℃下で、化合物6(2.1kg、4.83mol、1.0当量)のジクロロメタン(4L)及びメタノール(20L)溶液に50%のヒドロキシルアミン水溶液(8L)を添加し、内部温度が0℃になった時、2Mの水酸化ナトリウム水溶液(3L)を滴下し始め、内部温度をずっと当該温度に維持させた。滴下完了後、ゆっくりと6~13℃に上昇させ、続いて12時間攪拌した。反応完了後、減圧してほとんどの有機溶媒を除去した。氷水を添加して内部温度を0℃に冷却させ、絶えず攪拌しながら濃塩酸を添加してpHを7~8に調整し、析出した白色固体を濾過し、水(2L×3)で洗浄した。得られた固体を酢酸エチル(21L)及び水(10.5L)に分散させ、絶えず攪拌し、濃塩酸でpHを2~3に調整した。このとき、白色固体は有機相に溶解し、有機相を分離し、水相を酢酸エチル(5L×2)で抽出し、合わせた有機相を塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を減圧濃縮して乾燥させ、式(I)化合物を得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ:11.15(brs、1H)、10.22(brs、1H)、9.35(t、J=6.4Hz、1H)、8.72(d、J=1.5Hz、1H)、8.01~8.07(m、1H)、7.94~8.00(m、1H)、7.68(d、J=8.3Hz、2H)、7.49~7.56(m、2H)、7.34(d、J=8.3Hz、2H)、7.15(t、J=8.9Hz、2H)、4.51(d、J=6.3Hz、2H)、3.98(t、J=7.2Hz、2H)、2.62(t、J=7.2Hz、2H)、1.89(qd、J=7.2、5.1Hz、2H);MSESI計算値はC24H22FN3O4[M+H]+436であり、測定値は436であった。
【0036】
実施例2:式(I)化合物のA結晶形の調製
式(I)化合物(0.21kg)をEtOAc(2.1L)及び水(1L)と攪拌し、濃塩酸(8mL)を添加して固体を有機相に溶解させ、有機相を分離し、塩水(0.5L、洗浄後の塩水のpHは約6であった)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を減圧濃縮して乾燥させ、泡状の白色固体を得た。当該固体に予熱した酢酸エチル(2.1L)を添加して内部温度を45℃に維持させ、n-ヘプタン(0.588L)を滴下し始め、滴下完了後、内部温度をゆっくりと6~13℃まで冷却させ、続いて12時間攪拌した。濾過し、ケーキを収集して第一回の再結晶生成物を得た。当該工程を10回並行して実施し、合計1.5kgの白色固体生成物を得た。
【0037】
第一回の再結晶生成物(0.25kg)をEtOAc(2.5L)及び水(1.25L)と攪拌し、濃塩酸(8mL)を添加して固体を有機相に溶解させ、有機相を分離し、水(0.6L×2)及び塩水(0.6L、洗浄後の塩水のpHは約6であった)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を減圧濃縮して乾燥させ、泡状の白色固体を得た。当該固体に予熱した酢酸エチル(2.5L)を添加して内部温度を45℃に維持させ、n-ヘプタン(0.7L)を滴下し始め、滴下完了後、内部温度をゆっくりと6~13℃まで冷却させ、続いて12時間攪拌した。濾過し、ケーキを収集して第二回の再結晶生成物を得た。当該工程を6回並行して実施し、合計1.05kgの生成物(白色固体)を得た。
【0038】
第二回の再結晶生成物(1.05kg)とEtOAc(0.7L)及び水(1.4L)を5℃下で一緒に24時間攪拌した。濾過し、ケーキを水(105mL×2)で洗浄し、吸引乾燥させた後、最下層に五酸化リンを置いた真空乾燥箱で30℃で24時間ドライさせ、白色の固体を得た。XRPDでその結晶形状態を検出し、式(I)化合物のA結晶形を得た。
【0039】
実験例3:式(I)化合物のA結晶形の固体安定性の試験
「原薬と製剤の安定性試験の指導原則」(中国薬局方2015版四部通則9001)に準じ、式(I)化合物のA結晶形の高温(60℃、開口)、高湿(室温/相対湿度92.5%、開口)、高温高湿(40℃、75%RH;60℃、75%RH)及び強い光照射(総照度1.2×106Lux?hr/近紫外線200w?hr/m2、密閉)の条件における安定性を考察する。
【0040】
15mgの式(I)化合物のA結晶形を秤量し、ガラス製試料ボトルの底に置き、薄層に広げた。高温及び高湿の条件に置かれた試料をアルミホイルで瓶入り口を密封し、アルミホイルを刺して小さな穴を開けて、試料が環境の空気と十分に接触できることを確保し;強い光照射の条件下に置かれた試料は、スクリューキャップで密閉させた。異なる条件下に置かれた試料を5日目、10日目サンプリングして検出(XRPD)し、検出結果を0日目の初期検出結果と比較し、試験結果は表2の通りであった。
【0041】
【0042】
結論:式(I)化合物のA結晶形は高温、高湿、高温高湿、強い光照射の条件で良好な安定性を有した。
【0043】
実験例1:式(I)化合物のA結晶形のMM.1S異種移植(CDX)モデルにおける生体内薬物有効性の研究
実験材料:
CB-17SCIDマウス、メス、6~8週齢、体重は約17~21gで、マウスを特殊な病原体がない環境で、且つ、単独の通風ケージに置いた(各ケージに4匹ずつ)。すべてのケージは、下地を敷いて水を置き、使用前に消毒した。すべての動物は自由に標準認証された商業実験室の飲食を得ることができた。北京Vital River Laboratory Animal Co.,LTDから購入された合計64匹のマウスを研究に使用した。各マウスは右側の背部に0.2mL 5×106個のMM.1S細胞を皮下移植し、腫瘍の生長に使用した。平均腫瘍体積が約100~150mm3に達した時点で実験を開始した。
【0044】
実験方法:
ヒト多発性骨髄腫細胞MM.1Sを皮下移植した異種移植(CDX)CB-17SCIDマウスにおける生体内選択実験を行った。式(I)化合物のA結晶形を、5%のジメチルスルホキシドと95%10%のヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの混合溶液で製剤に配合、経口投与用の方法で連続して5日間の経口投与し、2日間停止した。イキサゾミブは毎週の第一日目と第四日目に各一回投与した。腫瘍体積は週2回ノギスで測定し、体積はmm3で計量し、以下の式:V=0.5a×b2で計算し、ここで、a及びbはそれぞれ腫瘍の長径及び短径であった。抗腫瘍効果は化合物で処理した動物の平均腫瘍増加体積を未処理動物の平均腫瘍増加体積で割ることによって決めた。
実験結果:表3に示す通りであった。
【0045】
【0046】
実験結論:
式(I)化合物のA結晶形(75mg/kg)とイキサゾミブ(4mg/kg)の併用投与群は、ブランク群、式(I)化合物のA結晶形(75mg/kg)の単一投与群、イキサゾミブ(4mg/kg)の単一投与と比較して非常に優れた併用薬効果を有し、マウスは良好な耐性を示した。