IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニアの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】抗菌療法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/31 20060101AFI20230912BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20230912BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230912BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C07K14/31
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/12
A61K9/14
A61K9/70 401
A61K35/74 A ZNA
A61K38/16
A61P17/00 101
A61P17/04
A61P17/06
A61P17/10
A61P29/00
A61P37/08
A61P43/00 121
C12N1/20 E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021187890
(22)【出願日】2021-11-18
(62)【分割の表示】P 2017557323の分割
【原出願日】2016-05-05
(65)【公開番号】P2022028833
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】62/300,274
(32)【優先日】2016-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/157,248
(32)【優先日】2015-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-125025
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-125026
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-125202
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-125203
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲辻 晃明
(72)【発明者】
【氏名】ガロ,リチャード,エル.
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】Biochemical Society Transactions,2012年,40,1528-1533
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications,2010年,399,133-138
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/31
C12N 1/20
A61K 35/74
A61K 38/16
A61K 9/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下に示すホゴシジン-α又はホゴシジン-βの二次構造を有するホゴシジンペプチド
【化1】
【請求項2】
請求項に記載のペプチドを含む、組成物。
【請求項3】
1以上の製薬上の賦形剤を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
プレバイオティック化合物、保護剤、湿潤剤、皮膚軟化剤、研磨剤、塩、界面活性剤又はそれらの組み合わせを含む、請求項又はに記載の組成物。
【請求項5】
前記ペプチドを産生する能力を有する細菌株を含み、前記細菌株が、スタフィロコッカス・ホミニス菌株A9(ATCC受託番号PTA-125203)を含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が局所製剤である、請求項2~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
皮膚、頭皮、及び/又は粘膜のディスバイオシスの障害を治療するためのものであり、かつ、前記皮膚、頭皮、又は粘膜のディスバイオシスの障害が黄色ブドウ球菌感染を含む、請求項2~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
記細菌株が、生存形態、凍結乾燥形態、フリーズドライ形態又は噴霧乾燥形態にて提供される、請求項2~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
カテリシジンペプチドをさらに含む、請求項2~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ペプチドが、1以上のD-アミノ酸又は非天然アミノ酸を含む、請求項2~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
対象における皮膚又は粘膜感染、アトピー性皮膚炎、乾癬、乳腺炎、座瘡、又は皮膚ディスバイオシスに関連する他の障害を治療する医薬の製造における、請求項2~10のいずれか1項に記載の組成物の使用であって、前記皮膚又は粘膜感染、アトピー性皮膚炎、乾癬、乳腺炎、座瘡、又は皮膚ディスバイオシスに関連する他の障害が黄色ブドウ球菌感染を含むものである、前記使用
【請求項12】
前記組成物が、対象の皮膚又は粘膜に有効量を適用するために製剤化される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
対象が哺乳動物、又はヒトである、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物が局所適用される、請求項11~13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記組成物が、クリーム、軟膏、噴霧剤、散剤、油剤、濃厚製剤又は湿布剤の形態である、請求項11~14のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それらの開示が参照により本明細書に組み込まれる、2015年5月5日に出願された米国仮出願第62/157,248号、及び2016年2月26日に出願された米国仮出願第62/300,274号からの、35 U.S.C.§119下での優先権を主張する。
【0002】
連邦支援研究開発に関する陳述
本発明は、助成金第R01AI083358号、助成金第AR067547号及び助成金第HHSN-272201000020C号による政府支援によりなされたものであり、それらの助成金は全て国立衛生研究所によって授与された。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
配列表の言及
本出願は、電子フォーマットの配列表とともに提出されている。配列表は、2016年5月4日に作成されたSequence_ST25.txtという名前のファイルとして提供され、サイズは45Kbである。配列表の電子フォーマットの情報は、その全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
発明の分野
本開示は、感染を治療し、並びに皮膚及び粘膜の微生物叢を調節して、ディスバイオシス(dysbiosis)に関連し又はディスバイオシスによって悪化する疾患又は障害を治療するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0005】
低分子のカチオン性抗菌ペプチド(AMP)は、先天性免疫系の天然に存在する抗生物質である。AMPは、動物及び植物に広く分布しており、最も古くからの宿主防御因子の1つである。それらの活性スペクトルには、グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌、並びに真菌及びある種の感染性因子が含まれる。従来の抗生物質に対する病原性微生物の耐性が高まるにつれて、研究者らは、これらの内因性抗生物質を様々な感染症に対する潜在的な供給源又は新たな治療法として検討している。
【0006】
アトピー性皮膚炎(AD)の患者は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(SA)による反復性皮膚感染及びそれらの皮膚微生物叢のディスバイオシスを有する。SAに対する感受性の増加は、異常な障壁機能、並びに抗菌ペプチド(AMP)、例えば、カテリシジン及びβ-デフェンシンの誘導の減少を含む、先天性免疫防御の低下に関連している。
【0007】
湿疹又はアトピー性湿疹とも呼ばれる、アトピー性皮膚炎の症状には:発疹を形成する乾燥皮膚;鱗状、腫れ、赤色の皮膚;顔面、又は膝、肘若しくは手首の内側の発疹;滲出する水膨れ;症状出現の反復後の皮膚色の変化;肥厚した、ひび割れした、乾燥した、鱗片状の皮膚、又はところどころガサついたような皮膚;引っかき傷に由来する、皮のむけた、過敏な、腫れた皮膚を伴う、特に夜間の重度の痒み(掻痒症)が含まれる。アトピー性皮膚炎(湿疹)の徴候及び症状は、人によって大きく異なり、さらに、特に、手、足、足首、手首、首、上胸、瞼上に、肘及び膝の曲がり部の内側に、また幼児においては、顔、頭皮、後頭部、耳、脚、足、腕、手及び臀部における、赤色から茶色がかった灰色の斑;掻くと液体が漏出してかさぶたになることがある小さな隆起を含み得る。アトピー性皮膚炎は、ほとんどの場合、5歳より前に始まり、青年期及び成人期にも持続する可能性がある。一部の人については、それは定期的に再燃し、その後、数年間であっても、一時は治る。アトピー性皮膚炎によって引き起こされる皮膚の変化は、黄色ブドウ球菌によるコロニー形成及び感染に対するこれらの患者の高い感受性を促進し得る。
【0008】
ディスバイオシスは、鼻、口、眼、泌尿生殖器、腸内フローラを含む皮膚又は粘膜のフローラ(細菌叢)における、黄色ブドウ球菌のような種が過剰になり他の種が過小になる不均衡を含む。一般に、健康なフローラにおいては、非病原性細菌が阻害剤を分泌し、又は単純に利用可能な全てのニッチを占有することができ、それにより、そうでなければ感染性状態を樹立し又は疾患若しくは疾患様状態、例えばアトピー性皮膚炎の発症を促進することができる病原体を、直接阻害し又は間接的に排除する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、皮膚のディスバイオシスに関連する障害を治療するための組成物及び方法を提供する。正常な皮膚のフローラにおける不均衡及び黄色ブドウ球菌などの皮膚病原体の過剰増殖に関連するこれらの障害は、他の状態の中でも、皮膚感染、アトピー性皮膚炎、及び乾癬をもたらす。本開示は、健康な皮膚のフローラの常有菌に由来する抗菌ペプチドを利用して健康な皮膚フローラを回復させることによって、又は健康な皮膚のフローラに由来するか若しくはフローラのディスバイオシスを有すると診断された患者の皮膚から培養された希少な生存フローラとしての菌株であって、皮膚上の病原性種若しくは疾患様の微生物不均衡と関連した種を死滅若しくはその増殖を阻害することができる菌株を含有するプロバイオティック組成物を直接投与することによって、これらの障害を治療するための組成物及び方法を提供する。
【0010】
具体的には、本開示は、1種以上のプロバイオティック細菌株、好ましくはスタフィロコッカス属の菌株、より好ましくはスタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)及び表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)の開示された菌株を含む、濃厚(thickened)局所組成物を提供する。これらの菌株は、本明細書に開示された方法によって、健常な皮膚のフローラから単離することができ、又はフローラのディスバイオシスを有すると診断された患者の皮膚から培養された、生存フローラとして単離することができ、そして、分泌されたペプチド配列、脂肪酸メチルエステルプロファイル、及び/又は本明細書に開示されている抗菌ペプチドコドン機構(antimicrobial peptide codon organization)によって同定され得る。本開示のプロバイオティック菌株は、生存形態、凍結乾燥形態、又は再構成可能な形態で提供され得る。さらに、本開示は、皮膚、頭皮又は粘膜への局所投与用に製剤化され得る、本明細書に記載される表皮ブドウ球菌及びスタフィロコッカス・ホミニスの菌株を含む組成物を提供する。本開示はさらに、プロバイオティック細菌株が、表皮ブドウ球菌株MO34、MO38、A11、AMT1、AMT5-C5及び/若しくはAMT5-G6、並びに/又はスタフィロコッカス・ホミニス菌株A9、C2、AMT2、AMT3、AMT4-C2、AMT4-G1及び/若しくはAMT4-D12のうちの1種以上を含む組成物を提供する。
【0011】
また、本開示の組成物は、馴化培養培地、又は本明細書に記載される菌株由来の単離された抗菌化合物、例えば、ホゴシジン(hogocidin)としてここで命名されたペプチドを含み得る。本開示は、異種的に発現された若しくは合成されたホゴシジン、ホゴシジン誘導体、又はホゴシジン様ペプチドの使用を意図する。本開示はまた、ホゴシジンペプチド、誘導体又はバリアント(variant)、及びカテリシジンペプチド、誘導体又はバリアントを含む組成物を提供する。さらに、本開示は、ペプチドが1つ以上のD-アミノ酸、1つ以上の非天然アミノ酸、及び/又は1つ以上の翻訳後修飾を含む、上記の実施形態のいずれかの組成物を提供する。本開示は、ペプチドが他のペプチドから実質的に精製されている、上記の実施形態のいずれかの組成物を提供する。本開示は、ペプチドが他のペプチドから部分的に精製されている、上記の実施形態のいずれかの組成物を提供する。本開示は、ペプチドが粗抽出物中に存在する組成物を提供する。本開示は、局所投与用の製剤で、上記の実施形態のいずれかの組成物を提供する。
【0012】
本開示は、製剤がローション、軟膏又は噴霧剤又はクリーム又は油性懸濁液を含むが、これらの形に限定されない、上記の実施形態のいずれかの組成物を提供する。
【0013】
本開示は、ホゴシジンペプチド、誘導体又はバリアントが、配列番号2、配列番号4、非天然アミノ酸を含む配列番号2若しくは4、D-アミノ酸を含む配列番号2若しくは4、又は融合構築物を含む配列番号2若しくは4から選択される配列を含む、上記の実施形態のいずれかの組成物を提供する。
【0014】
本開示はまた、微生物を有効量の本開示の組成物と接触させることを含む、微生物による感染の拡散を抑制し及び/又はそのリスクを低減するための方法を提供する。一実施形態では、接触はインビボ(in vivo)である。別の実施形態では、インビボでの接触は局所投与による。本開示はさらに、皮膚又は粘膜に、本明細書に開示されている組成物の有効量をそれを必要とする対象に適用することによって、皮膚若しくは粘膜の感染、アトピー性皮膚炎、乾癬、座瘡、又は皮膚のディスバイオシスに関連する他の障害を治療する方法を提供する。
【0015】
本開示は、アトピー性皮膚炎を有する対象又はそれを有することが疑われる対象を、本明細書に開示される1つ以上の細菌株を含む有効量のプロバイオティック組成物と接触させることを含む、アトピー性皮膚炎を治療する方法を提供する。
【0016】
本開示は、アトピー性皮膚炎を治療する方法であって、アトピー性皮膚炎を有する対象又はそれを有することが疑われる対象に、有効量のホゴシジンペプチド、誘導体又はバリアントを接触させることを含む方法を提供する。
【0017】
本開示は、ホゴシジン、ファーモシジン(firmocidin)、SH-ランチビオティックペプチド、SH-抗菌剤、SE-ランチビオティックペプチド、又はSE-抗菌剤を分泌する細菌株を含む組成物と患部を接触させることによって、アトピー性皮膚炎又は皮膚のディスバイオシスを治療する方法を提供し、ここで上記細菌株には、スタフィロコッカス・ホミニス菌株A9、スタフィロコッカス・ホミニス菌株C2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT3、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-C2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-G1、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-D12、表皮ブドウ球菌株AMT1、表皮ブドウ球菌株SE-A11、表皮ブドウ球菌株AMT5-C5、及び表皮ブドウ球菌株AMT5-G6などが含まれる。本開示は、カテリシジンペプチドをさらに含む上記の方法及び組成物を提供する。
【0018】
本開示は、1つ以上のプロバイオティクス細菌株の局所濃厚(thickened)製剤、並びに場合によりプロバイオティック化合物、保護剤、湿潤剤、皮膚軟化剤、研磨剤、塩及び/又は界面活性剤を含む組成物を提供する。ここで、上記1つ以上のプロバイオティック細菌株は、スタフィロコッカス属の1種以上の細菌株を含み、上記組成物は、皮膚、頭皮又は粘膜のディスバイオシスの障害の局所治療用に製剤化される。一実施形態において、1つ以上のプロバイオティック細菌株は、表皮ブドウ球菌、スタフィロコッカス・ホミニス、又は表皮ブドウ球菌とスタフィロコッカス・ホミニスの組み合わせを含む。さらなる実施形態において、1つ以上のプロバイオティック細菌株は、表皮ブドウ球菌株MO34、MO38、A11、AMT1、AMT5-C5及び/又はAMT5-G6を含む。別の実施形態において、1つ以上のプロバイオティック細菌株は、スタフィロコッカス・ホミニス菌株A9、C2、AMT2、AMT3、AMT4-C2、AMT4-G1及び/又はAMT4-D12を含む。さらに別の実施形態において、各プロバイオティック細菌株は、図11、12、13、14、15、16、17、18又は19のいずれかに示されるもののうちの1つに対応する脂肪酸メチルエステルプロフィールを示す。別の実施態様において、1つ以上のプロバイオティクス菌株は、配列番号2、4、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54及び55、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される配列を有するペプチドを産生し、ここで、このようなペプチドは、場合により翻訳後修飾される。別の実施形態において、1つ以上のプロバイオティック細菌株は、生存形態で提供される。さらに別の実施形態において、1つ以上のプロバイオティック細菌株は、凍結乾燥形態(lyophilized or freeze-dried form)又は噴霧乾燥形態で提供される。さらなる実施形態において、プロバイオティック細菌は、生存形態に再構成することができる。
【0019】
本開示はまた、ここで及び先行する段落において記載された有効量の組成物を皮膚又は粘膜に適用することによって、ヒト又は他の哺乳動物における皮膚若しくは粘膜感染、アトピー性皮膚炎、乾癬、乳腺炎、座瘡、又は皮膚のディスバイオシスに関連する他の障害を治療する方法を提供する。一実施態様において、組成物は局所的に適用される。さらなる実施形態において、組成物は、クリーム、軟膏(ointment/unguent)、噴霧剤、散剤、油剤、濃厚製剤又は湿布剤として製剤化される。
【0020】
本開示はまた、ホゴシジンペプチド、誘導体若しくはバリアント、SH-ランチビオティックペプチド、SH-抗菌剤、SE-ランチビオティックペプチド、及び/又はSE抗菌剤のうちの1つ以上を含み;さらに、1つ以上の増粘剤、溶媒、乳化剤、又は薬学的に許容される担体若しくは賦形剤を含む組成物を提供する。一実施形態において、組成物は、カテリシジンペプチド、誘導体又はバリアントをさらに含む。なおさらに又は代替的な実施形態において、ホゴシジンペプチド、誘導体若しくはバリアント、SH-ランチビオティックペプチド及び/又はSE-ランチビオティックペプチドは、1つ以上のD-アミノ酸又は非天然アミノ酸を含む。なおさらなる実施形態において、ホゴシジンペプチド、SH-ランチビオティックペプチド、SH-抗菌剤、SE-ランチビオティックペプチド、又はSE抗菌剤は、インサイチュで、スタフィロコッカス・ホミニス菌株A9、スタフィロコッカス・ホミニス菌株C2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT3、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-C2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-G1、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-D12、表皮ブドウ球菌株AMT1、表皮ブドウ球菌株SE-A11、表皮ブドウ球菌株AMT5-C5、表皮ブドウ球菌株AMT5-G6及び表皮ブドウ球菌株MO34のうちの1つ以上によって産生される。上記のいずれかのさらに別の実施形態において、ペプチドは、局所投与用に製剤化される。なおさらなる実施形態において、製剤は、ローション、軟膏クリーム(ointment cream)、粉末、軟膏(unguent)、油剤、又は噴霧剤を含む。上記のいずれかの別の実施形態において、ホゴシジンペプチド、誘導体又はバリアントは、配列番号2若しくは配列番号4から選択される配列、又は抗菌活性を有するその活性断片(例えば、成熟形態)を含む。なお別の実施態様において、ホゴシジンペプチド、誘導体又はバリアント、SH-ランチビオティックペプチド、SH-抗菌剤、SE-ランチビオティックペプチド、SE抗菌剤、及びカテリシジンペプチド、誘導体又はバリアントの1つ以上は、スタフィロコッカス・ホミニス菌株A9、スタフィロコッカス・ホミニス菌株C2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT3、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-C2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-G1、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-D12、表皮ブドウ球菌株AMT1、表皮ブドウ球菌株SE-A11、表皮ブドウ球菌AMT5-C5、表皮ブドウ球菌株AMT5-G6、及び表皮ブドウ球菌株MO34の抽出物又は溶解物として提供される。
【0021】
本開示はまた、対象における皮膚若しくは粘膜感染、又はアトピー性皮膚炎を治療するための方法であって、対象をホゴシジンペプチド、誘導体又はバリアント、SH-ランチビオティックペプチド、SH-抗菌剤、SE-ランチビオティックペプチド、及び場合によりカテリシジンペプチド、誘導体又はバリアントのうちの1つ以上を含む有効量の組成物と接触させることを含む方法を提供する。一実施形態において、接触は、局所投与によるか、又は場合により、対象をSH-ランチビオティック又はバクテリオシン産生スタフィロコッカス・ホミニス菌株A9、C2、AMT2、AMT3、AMT4-C2、AMT4-G1、AMT4-D12及び表皮ブドウ球菌株AMT5-G6及びMO34の1つ以上と接触させることによるものである。
【0022】
本開示はまた、配列番号2若しくは4と少なくとも95%同一であるポリペプチド、又は抗菌活性を有するその生物学的に活性な断片をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを提供する。一実施形態において、ベクターは、配列番号2又は4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態において、ベクターは、配列番号2のアミノ酸約32~アミノ酸約61のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。さらなる実施形態において、ベクターは、配列番号4のアミノ酸約29~アミノ酸約66のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態において、ベクターは、配列番号1又は3と少なくとも95%同一であり、それぞれ配列番号2又は4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。上記の実施形態のさらに別の実施形態において、ベクターは配列番号1又は3の断片を含む。上記のいずれかのさらなる実施形態において、ベクターは発現ベクターである。
【0023】
本開示はまた、本開示の組換えベクターを発現するように遺伝子操作された宿主細胞を提供する。一実施形態において、宿主細胞は非病原性弱毒化宿主細胞である。
【0024】
本開示はまた、本開示の宿主細胞によって産生される組換えポリペプチドを提供する。別の実施形態において、組換えポリペプチドは、宿主細胞培養物から精製される。
【0025】
本開示はまた、開示された宿主細胞を含む組成物を提供する。
【0026】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下で明細書に記載されている。本発明の他の特徴、目的及び利点は、明細書及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A-B】図1A-D。スタフィロコッカスDNAと比較した培養可能なスタフィロコッカスの比率は、アトピー性皮膚炎の病変皮膚においてより高い。図1A:培養可能な総スタフィロコッカス属種は、アトピー性皮膚炎(AD)を有する49人の対象及びADを有しない30人の対象からの選択的マンニトール塩寒天プレート上でカウントされた。図1B:30人の非アトピー対象及び49人のアトピー性皮膚炎患者からの黄色ブドウ球菌の増殖に関するCFU結果を示す。
図1C-D】図1A-D。スタフィロコッカスDNAと比較した培養可能なスタフィロコッカスの比率は、アトピー性皮膚炎の病変皮膚においてより高い。図1C:全スタフィロコッカス属種DNAの存在量は、14人の非アトピー対象及び37人のアトピー対象からのDNAについて定量PCR(qPCR)によって決定された。相対CFU(rCFU)は、表皮ブドウ球菌(ATCC12228)の既知CFUの標準との比較により決定された。図1D:DNAによって決定されたスタフィロコッカスの相対存在量に対する、生存スタフィロコッカス属種CFUの比率は、それぞれ対応する皮膚部位で計算された。
図2図2A-C。アトピー性皮膚炎は、低頻度の抗菌活性を有するコアグラーゼ陰性スタフィロコッカスによってコロニー形成される。図2A:黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を有するコアグラーゼ陰性スタフィロコッカス(CoNS)は、個々の培養分離株のハイスループットアッセイによって決定され、黄色ブドウ球菌の増殖を阻害するコロニー合計の割合(%)が決定された。図2B:抗菌活性を有するCoNSの割合が、同一対象から1日目、7日目及び14日目に決定された。図2C:生存スタフィロコッカス属種のスタフィロコッカスDNAの存在量に対する比率は、図2Bと同じ対象から決定された。*P<0.05、****P<0.0001。11人のアトピー対象及び11人の非アトピー対象は、パネルB及びCにおける分析のために無作為的に選択された。
図3図3A-B。抗菌性コアグラーゼ陰性スタフィロコッカスは、黄色ブドウ球菌のコロニー形成の不在と相関する。図3A:各試料中の抗菌性CoNSの割合を、各対象から培養した黄色ブドウ球菌の存在量に対してプロットする。象限は、抗菌性CoNSの頻度(>50%又は<50%)及び生存している黄色ブドウ球菌(<1 CFU/cm2又は>1 CFU/cm2)の検出に基づいて分割されている。全対象に対する各象限における対象の割合(%)を示す。図3B:黄色ブドウ球菌培養陰性対象(白色)及び黄色ブドウ球菌培養陽性対象(黒塗り)における抗菌性CoNSの頻度を示す。データは、29人の非アトピー性対象、及びアトピー対象の41個の非病変部位又は40個の病変部位についての平均±SEである。
図4図4A-B。多様な細菌種が抗菌活性を有する。抗菌性又は非抗菌性CoNSの種は、抗菌活性を有する又は有しない無作為的に単離されたコロニーからの全長16S rRNAのDNA配列決定によって同定された。図4A:5人の非アトピー対象からの抗菌活性を有する同定されたCoNS種の割合。図4B:アトピー性皮膚炎を有する対象から単離された、抗菌性及び非抗菌性コロニーから同定されたCoNS種の割合。各個体から最大48個のCoNS単離体を配列決定した。各AD対象からの抗菌性CoNS(黒塗り)及び非抗菌性CoNS(白色)のコロニーの相対的な割合を円グラフで示す。
図5図5A-B。皮膚微生物叢内のコアグラーゼ陰性スタフィロコッカス株(SH-A9)からの抗菌ペプチドの同定。図5A:非アトピー性皮膚から単離された、スタフィロコッカス・ホミニスから精製された2つの抗菌ペプチド由来のアミノ酸配列、並びに推定モノ及びジスルフィド結合。ペプチドは、ホゴシジン-α(配列番号2、aa32-61)及びホゴシジン-β(配列番号4、aa29-66)(SH-ランチビオティックα及びβ)と名付けられる。ホゴシジン-α[3152.52(M+H)]及びホゴシジン-β[3548.04(M+H)]の仮想成熟形態の計算上の分子量は、観察された分子量[それぞれm/z3152.22及び3547.71(M+H)]と同一である。図5Bは、黄色ブドウ球菌に対するホゴシジン-α及びホゴシジン-βの抗菌活性の用量応答曲線を示す。ヒト皮膚(LL-37)によって産生された抗菌ペプチドとの同時インキュベーションは、相乗活性を示す。データは、三連アッセイの平均±SEを表す。矢印は、対照と比較して生存細菌の3-log減少として定義される、各AMPの最小阻害濃度(MIC)を示す。Dha: 2,3-ジデヒドロアラニン。Dhb: (Z)-2,3-ジデヒドロブチリン。
図6】非アトピー性皮膚、アトピー性皮膚の非病変部位及び病変部位における黄色ブドウ球菌DNAの存在量。14個及び37個のDNAの拭き取りを、それぞれ動員された30人の正常患者及び50人のアトピー性皮膚炎患者から得た。黄色ブドウ球菌DNAの存在量は、黄色ブドウ球菌特異的femA遺伝子を標的とする種特異的プライマーを用いたqPCRによって決定された。黄色ブドウ球菌DNAの相対CFU(rCFU)は、黄色ブドウ球菌(ATCC35556)の既知CFUとの比較によって決定された。生存細菌又は細菌DNAの密度は、拭き取られた領域中に標準化された。AD:アトピー性皮膚炎。
図7A図7A-B。非アトピー性皮膚から単離されたスタフィロコッカス・ホミニス(SH-A9)によって産生されたAMPの精製及び質量分析。スタフィロコッカス・ホミニスの代表的な抗菌性分離株の培養上清からCapcelPac C8カラムを用いたHPLCによりAMPを精製した(図7A)。5つの精製ステップの最終ステップを示す。挿入パネルは、黄色ブドウ球菌に対する放射拡散アッセイにおける各画分の抗菌活性を表す。抗菌活性を有する画分をMALDI-TOF-MSによって特徴付けた(図7B)。
図7B図7A-B。非アトピー性皮膚から単離されたスタフィロコッカス・ホミニス(SH-A9)によって産生されたAMPの精製及び質量分析。スタフィロコッカス・ホミニスの代表的な抗菌性分離株の培養上清からCapcelPac C8カラムを用いたHPLCによりAMPを精製した(図7A)。5つの精製ステップの最終ステップを示す。挿入パネルは、黄色ブドウ球菌に対する放射拡散アッセイにおける各画分の抗菌活性を表す。抗菌活性を有する画分をMALDI-TOF-MSによって特徴付けた(図7B)。
図8-1】ホゴシジン-β(SH-ランチビオティック-β)のゲノム誘導MALDI-TOF/TOF分析におけるアミノ酸損失の代表例。精製ホゴシジン-βのアミノ酸配列は、前駆体質量3547.7m/zのMS/MSフラグメンテーションスペクトルにおけるアミノ酸損失から得られた。Dha: 2,3-ジデヒドロアラニン。Dhb: (Z)-2,3-ジデヒドロブチリン。
図8-2】図8-1の続きである。
図9図9A-B。非アトピー性皮膚から単離されたスタフィロコッカス・ホミニス菌株(SH-A9)におけるホゴシジン前駆体及びランチビオティック生合成遺伝子をコードする遺伝子クラスターの構成。図9Aは、スタフィロコッカス・ホミニスSH-A9ゲノム上のランチビオティック前駆体(A1及びA2;SH-ランチビオティック-α及びβ)及び生合成遺伝子(C、T及びM)の順番を示す。図9Bは、仮想遺伝子、遺伝子座及び推定機能を列挙する。このスタフィロコッカス・ホミニス菌株は、複数コピーのランチビオティック関連遺伝子クラスターを含む。
図10】本開示において使用されるハイスループット法を示す。
図11A図11A-B。本開示において提供される方法によって同定された表皮ブドウ球菌株MO-34及びMO-38のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図11B図11A-B。本開示において提供される方法によって同定された表皮ブドウ球菌株MO-34及びMO-38のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図12A図12A-B。本開示において提供される方法によって同定されたスタフィロコッカス・ホミニス菌株A9及びC2のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図12B図12A-B。本開示において提供される方法によって同定されたスタフィロコッカス・ホミニス菌株A9及びC2のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図13A図13A-B。本開示において提供される方法によって同定された表皮ブドウ球菌株A11及びAMT1-A9のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図13B図13A-B。本開示において提供される方法によって同定された表皮ブドウ球菌株A11及びAMT1-A9のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図14A図14A-B。本開示において提供される方法によって同定されたスタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT2-A11及びAMT3-A12のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図14B図14A-B。本開示において提供される方法によって同定されたスタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT2-A11及びAMT3-A12のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図15A図15A-B本開示において提供される方法によって同定されたスタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-C2及びAMT4-G1のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図15B図15A-B本開示において提供される方法によって同定されたスタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-C2及びAMT4-G1のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図16A図16A-B。本開示において提供される方法によって同定されたスタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-D12及び表皮ブドウ球菌AMT5-C5のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図16B図16A-B。本開示において提供される方法によって同定されたスタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-D12及び表皮ブドウ球菌AMT5-C5のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図17A図17A-B。本開示において提供される方法によって同定された表皮ブドウ球菌株AMT5-G6、及びホゴシジンを産生しないスタフィロコッカス・ホミニス菌株C4のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図17B図17A-B。本開示において提供される方法によって同定された表皮ブドウ球菌株AMT5-G6、及びホゴシジンを産生しないスタフィロコッカス・ホミニス菌株C4のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図18A図18A-B。ホゴシジンを産生しないスタフィロコッカス・ホミニス菌株C5及びC6のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図18B図18A-B。ホゴシジンを産生しないスタフィロコッカス・ホミニス菌株C5及びC6のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図19図19A。SEランチビオティック及びSE抗菌剤を産生しない表皮ブドウ球菌株MO1のFAME分析の結果を示すクロマトグラム。
図20A-B】図20A-E。抗菌性CoNSの移植は、皮膚上の黄色ブドウ球菌の生存率を低下させる。図20A:ブタ皮膚上の黄色ブドウ球菌の生存に対するスタフィロコッカス・ホミニスの影響。ホゴシジンを産生する生存スタフィロコッカス・ホミニスA9(1×105 CFU/cm2)は、ブタ皮膚アッセイを用いて、UV殺傷され洗浄されたA9菌株、AMP活性を生じない生存スタフィロコッカス・ホミニスの菌株(C4、C5及びC6)、又はビヒクルクリームのみを含む対照と比較された。データは、5つの独立したアッセイの平均±s.e.mを表す。図20B:マウス皮膚上の黄色ブドウ球菌の生存に対する細菌移植の影響。黄色ブドウ球菌は、マウスの剃毛した背側皮膚上に1×105CFU/cm2で適用された。2時間後、対照(ビヒクルのみ)、活性スタフィロコッカス・ホミニス(A9)、又は不活性な菌株(C4、C5及びC6)を等濃度(1×105CFU/cm2)で適用された。CoNS又は対照の適用の20時間後の黄色ブドウ球菌の回復が示される。データは、6匹のマウスの平均±s.e.mを表す。不活性な菌株は効果を有しない。
図20C-D】図20A-E。抗菌性CoNSの移植は、皮膚上の黄色ブドウ球菌の生存率を低下させる。図20C:黄色ブドウ球菌がコロニー形成したAD対象におけるヒト自家微生物叢移植(AMT)についての作業の流れ。図20D:AMTに使用されるCoNSクローンの特徴付け。各クローンの抗菌クラスを全ゲノム配列決定により同定した。
図20E図20A-E。抗菌性CoNSの移植は、皮膚上の黄色ブドウ球菌の生存率を低下させる。図20E:ADを有する対象の皮膚上の黄色ブドウ球菌の生存に対する抗菌性CoNSの移植の影響。黄色ブドウ球菌の生存率は、移植前(基準)及び処置の24時間後に採取された拭き取りのコロニーカウントによって測定された。ビヒクル腕とAMT腕の間の黄色ブドウ球菌の差異は、黄色ブドウ球菌CFU Δ%として示される。
図21A図21A-C。自家微生物叢移植に使用される抗黄色ブドウ球菌菌株AMT1-A9(図21A)、AMT2-A12(図21B)、及びAMT3-A12(図21C)において同定された仮想抗菌遺伝子。活性なCoNSクローンの全ゲノム配列をmiSeqにより取得し、抗菌クラスを同定するためにRASTサーバー(rast.nmpdr.org)にて分析した。
図21B-C】図21A-C。自家微生物叢移植に使用される抗黄色ブドウ球菌菌株AMT1-A9(図21A)、AMT2-A12(図21B)、及びAMT3-A12(図21C)において同定された仮想抗菌遺伝子。活性なCoNSクローンの全ゲノム配列をmiSeqにより取得し、抗菌クラスを同定するためにRASTサーバー(rast.nmpdr.org)にて分析した。
図22A図22A-B。自家微生物叢移植に使用される抗黄色ブドウ球菌菌株AMT4-C2(図22A)及びAMT4-G1(図22B)において同定された仮想抗菌遺伝子。活性なCoNSクローンの全ゲノム配列をmiSeqにより取得し、抗菌クラスを同定するためにRASTサーバー(rast.nmpdr.org)にて分析した。
図22B図22A-B。自家微生物叢移植に使用される抗黄色ブドウ球菌菌株AMT4-C2(図22A)及びAMT4-G1(図22B)において同定された仮想抗菌遺伝子。活性なCoNSクローンの全ゲノム配列をmiSeqにより取得し、抗菌クラスを同定するためにRASTサーバー(rast.nmpdr.org)にて分析した。
図23図23A-C。自家微生物叢移植に使用される抗黄色ブドウ球菌菌株AMT4-D12(図23A),AMT5-C5(図23B)、及びAMT5-G6(図23C)において同定された仮想抗菌遺伝子。活性なCoNSクローンの全ゲノム配列をmiSeqにより取得し、抗菌クラスを同定するためにRASTサーバー(rast.nmpdr.org)にて分析した。
図24-1】図24は正常皮膚から単離された表皮ブドウ球菌A11株の培養上清から精製された抗菌ペプチドの用量依存的死滅曲線を示す。示された細菌種(1×105 CFU/mL)を、50%ミューラー-ヒントンブロス/50% PBS中の様々な濃度の精製された表皮ブドウ球菌A11抗菌ペプチド(配列番号55を含む)とともに37℃で24時間インキュベートした。プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)を嫌気性条件下で100% Reinforsed-Clostridial培地でインキュベートした。S. epiA11: 表皮ブドウ球菌A11株。S. epi12228: 表皮ブドウ球菌ATCC12228株。S. homA9: スタフィロコッカス・ホミニスA9株。S. aur113: 黄色ブドウ球菌113株。P.ac: プロピオニバクテリウム・アクネスATCC6919株;。E.coli: 大腸菌ATCC25922。P.aeruginosa: 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)ATCC14213。
図24-2】図24-1の続きである。
図24-3】図24-2の続きである。
図25A図25A-BはHPLCによる表皮ブドウ球菌(A11株)の臨床分離株の培養上清から精製された抗菌ペプチドに関するデータを示す(A)。活性画分(画分33-34)をMALDO-TOF質量により分析して、活性抗菌ペプチドの分子量を推定した(B)。観察された分子量は3484.90(m/z)であった。ペプチドのN末端配列決定は、配列番号55で提供される。
図25B図25A-BはHPLCによる表皮ブドウ球菌(A11株)の臨床分離株の培養上清から精製された抗菌ペプチドに関するデータを示す(A)。活性画分(画分33-34)をMALDO-TOF質量により分析して、活性抗菌ペプチドの分子量を推定した(B)。観察された分子量は3484.90(m/z)であった。ペプチドのN末端配列決定は、配列番号55で提供される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するように、単数形「1つの(a)」、「及び(and)」及び「その(the)」は、文脈が他に明確に指示していない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「プローブ(a probe)」への言及は、複数のそのような細胞を含み、「細胞」への言及は、当業者に公知である1つ以上の細胞及びその同等物などへの言及を含む。
【0029】
また、「又は(or)」の使用は、他に記載がない限り、「及び/又は(and/or)」を意味する。同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含む(including)」は互換的であり、限定することを意図しない。
【0030】
様々な実施形態の記載が用語「含む(comprising)」を使用する場合、当業者は、いくつかの特定の例において、「~から本質的になる」又は「~からなる」という語を使用して、ある実施形態が代替的に記載できることを理解するであろうことが更に理解される。
【0031】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示に属する当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。開示されている方法及び組成物の実施において、本明細書に記載されたものと同様の又は等価な任意の方法及び試薬を使用することができるが、例示的な方法及び材料をここで説明する。
【0032】
本明細書に記載された全ての刊行物は、本明細書の記載に関連して使用され得る刊行物において記載されている方法論を記載し、開示する目的で、参照により本明細書に完全に組み込まれる。本開示において明示的に定義されている用語と類似又は同一である、1つ以上の刊行物において示される任意の用語に関して、本開示において明示的に提供される用語の定義は全ての点において統制する。
【0033】
アトピー性皮膚炎は、表皮障壁の機能障害及び再発性皮膚炎症によって特徴付けられる一般的な慢性皮膚疾患である。この疾患の重症度は、皮膚微生物叢のディスバイオシス、並びに黄色ブドウ球菌によるコロニー形成及び感染に対するこれらの患者の高い感受性と関連している。
【0034】
アトピー性皮膚炎の病因の統一モデルは、免疫が上皮によって提供される機能に共依存するという認識で生じている。例えば、抗菌ペプチド(AMP)の産生は、侵入する病原体に対する直接的な殺菌活性を提供する。健康な皮膚において、カテリシジン及びβ-デフェンシンなどのAMPは、損傷後に増加する。しかしながら、アトピー性皮膚炎を有する患者の皮膚は、特定のAMPを産生する能力が低下しており、これは、これらのAMPによって死滅するはずの病原体である黄色ブドウ球菌による感染率の増加と関連している。さらに、黄色ブドウ球菌は、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させ、TH2リンパ球偏向(skewing)、AMPの減少、悪化したアレルギー反応、及び皮膚障壁の破壊などの免疫機能障害をもたらす。
【0035】
アトピー性皮膚炎を有する患者の以前の研究は、これらの患者に存在する細菌フローラが非アトピー対象の皮膚に見られる細菌と異なることを示している。アトピー性皮膚炎を有する患者の微生物叢は多様性が低く、典型的には、スタフィロコッカス種の存在量がより高い。特定の理論に束縛されるつもりはないが、皮膚微生物叢のディスバイオシスがこの疾患の病態生理に寄与し得るという仮説が立てられている。具体的には、微生物叢を通常含む微生物の多様な共同体は、皮膚の恒常性に寄与することが示唆されている。例えば、マウスにおいて、表皮ブドウ球菌は、損傷後の炎症を制御し、T細胞の発達に影響を与え、AMPの発現を誘導することができる。さらに、微生物叢は、宿主細胞によって産生されたAMPと相乗作用し得る、それ自身のAMPを産生することができる。従って、黄色ブドウ球菌によるコロニー形成の有害な作用に加えて、アトピー性皮膚炎における微生物叢のディスバイオシスは、それらの有益な機能の喪失によって疾患の一因となる可能性がある。
【0036】
既存の抗生物質療法は、常在微生物叢の恒常性に影響を及ぼす細菌を非特異的に死滅させる。不均衡な微生物叢は、アトピー性皮膚炎、酒さ及び尋常性座瘡などの皮膚の炎症性疾患の病因に寄与する。本開示は、表面を殺菌し、又は感染を治療するための組成物及び製剤を提供するが、非特異的な抗生物質の安全性リスクを提起しない。さらに、本開示は、プロバイオティックアプローチを提供し、ここで、健常な皮膚のフローラの特性を同時に回復させながら、必要な抗菌化合物をインサイチュで産生し得る生存スタフィロコッカス・ホミニス又は表皮ブドウ球菌菌株を対象に提供することができる。
【0037】
スタフィロコッカス・ホミニス(S.ホミニス)は、健康なヒト皮膚の微生物叢の主要な構成成分である。最近の研究は、表皮ブドウ球菌が、正常なヒト皮膚上で追加の抗菌化合物として機能する、「ファーモシジン」と呼ばれる、フェノール可溶性モジュリン(PSM)及び小分子抗生物質を産生することによって病原性感染を予防することによりヒト皮膚を保護することを示している(例えば、米国特許公開第2013/0331384A1号を参照されたい、この開示は参照により本明細書に組み込まれる)。さらに、表皮ブドウ球菌によって産生されるリポテイコ酸は、創傷修復の際の皮膚の炎症を抑制することによってヒト皮膚に恩恵をもたらす。本開示は、創傷治癒を支援し、感染を予防し、及び皮膚障壁機能を回復させるための、正常な皮膚のフローラを回復又は増強するために、生きている表皮ブドウ球菌及び/又はスタフィロコッカス・ホミニス細胞又は培養物の使用を提供する。
【0038】
微生物存在量を培養技術とDNA定量技術の両方によってアトピー対象及び非アトピー対象において直接的に評価する開示の方法において、DNA配列決定の限界は、生存可能な生物と死んだ生物を区別することができないということである。驚くべきことに、DNAの測定値と比較して、生存細菌を培養する相対的能力は、非アトピー性皮膚炎の患者とアトピー性皮膚炎の患者の間で大きく相違した。培養細菌のCFUと比較して約10倍多くの細菌DNAが、アトピー性病変の皮膚と比較して非アトピー皮膚において検出された。これらの知見は、アトピー性病変の皮膚よりも非アトピー皮膚上の細菌の生存率がより低いことを示した。
【0039】
非アトピー皮膚上の細菌のより低い生存率についての1つの説明は、より効果的な表面の抗菌活性である。LL-37並びにhBD-2及び-3などのAMPは、正常な対象の炎症を起こした皮膚よりもアトピー患者の炎症を起こした皮膚においてより低いレベルの発現を有するが、これらのAMP発現は炎症を起こしていない皮膚において低い。従って、炎症を起こしていない正常皮膚の細菌を死滅させる高い能力は、これらの宿主AMPの発現にはおそらく起因しない。非アトピー皮膚に観察される抗菌性CoNSの高頻度は、これらの常在細菌が病原体によるコロニー形成に抵抗するために重要であることを示す。これを支持するように、黄色ブドウ球菌のコロニー形成は、抗菌活性を有する低頻度のCoNS菌株を有する対象においてのみ検出された。バイオフィルム形成を阻害し得るCoNSはまた、鼻粘膜において観察され、黄色ブドウ球菌による鼻腔内コロニー形成を阻害した。アトピー性皮膚炎の患者の皮膚上に存在する細菌の共同体に由来する直接的な抗菌活性の欠如の観察は、これらの個体の先天性防御システムにおける以前は知られていなかった欠陥を規定する。
【0040】
30人の健康な対照対象及びアトピー性皮膚炎(AD)患者の50個の病変部位と非病変部位の皮膚拭き取り物から培養されたコアグラーゼ陰性スタフィロコッカス(CoNS)の7500個を超える個々の分離株における抗菌活性についてのハイスループットスクリーニングは、抗菌活性を有するいくつかのCoNS分離株を同定した。健康な対象は、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を有する高頻度のCoNS分離株を有し(75.26±6.59%)、一方、AD非病変皮膚及び病変皮膚から単離された細菌は活性が有意に低かった[それぞれ、22.83±5.10%、15.76±4.10%(p<0.0001)]。注目すべきことに、低頻度の抗菌性CoNS分離株を有する対象はまた、SAによってコロニー形成された。16S rRNA配列決定は、抗菌活性が表皮ブドウ球菌、スタフィロコッカス・ホミニス、スタフィロコッカス・ワーネリ(S. warneri)、及びスタフィロコッカス・カピティス(S. capitis)などのCoNSの多様な菌株において検出されたことを示した。分子量が3152.2Da及び3550.7Daである2つの原核生物AMPは、HPLC、MALDI-TOF-MS2によるタンパク質配列決定、及びゲノム配列決定を用いて同定された。さらに、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2016年3月29日に提出されたNakatsuji, T.ら(2016年)、Nature Medicine論文番号NMED-A78395Aに示されるように、エクスビボ(ex vivo)のモデルシステム、動物モデルに機能性CoNS分離株を適用し、ヒト対象における自家移植を通じて、CoNS株の適用が、感染した皮膚における黄色ブドウ球菌レベルの減少を生じさせることが示された。例えば、この抗菌性CoNS分離株を、SAがコロニー形成したマウス皮膚に適用することは、AD CoNS株を適用した場合に見られるSA生存率を90%超減少させるのに有効であった。これらの知見は、微生物叢がSAに対する防御の第一線であり、ADのディスバイオシスがSAコロニー形成と主要な機能的関連性を有することを示す。
【0041】
黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を生じるいくつかのCoNS種が同定された。表皮ブドウ球菌及びスタフィロコッカス・ワーネリのいくつかの実験室菌株は、他の細菌の増殖を阻害することができるランチビオティックを産生することが以前に記載されたが、これらは対象集団においては検出されなかった。さらに、それらの抗菌活性に基づいて単離されたいくつかのCoNS種は、以前には、抗菌機能を有するものとは疑われていなかった。これらをよりよく理解するために、黄色ブドウ球菌に対して強力な活性を有し、宿主AMP LL-37と高度に相乗作用を示したこれまでに知られていない2つのランチビオティックが同定された。これらのランチビオティックをコードする遺伝子は、非アトピー個体において一般的であった。この発見は、健康なヒト皮膚微生物叢の宿主防御機能のさらなる分析の可能性を示し、微生物叢の活性を予測するための遺伝的アプローチを提供し得る。メタゲノム配列決定及び微生物叢の機能的スクリーニングとの相関は、アトピー性皮膚炎及び他の皮膚疾患を有する患者の治療において大きな利点であり得る。
【0042】
本開示は、正常ヒト皮膚に存在する細菌の共同体が黄色ブドウ球菌に対して重要な遮蔽を提供するという証拠を提供する。再度、いかなる特定の理論に束縛されるつもりもないが、この微生物叢媒介型抗菌防御系における機能不全は、アトピー性皮膚炎における黄色ブドウ球菌による皮膚のコロニー形成及び疾患のさらなる悪化を可能にし得る。この観察は、皮膚の細菌療法の戦略が、薬学的に誘導された抗生物質を使用せずに黄色ブドウ球菌を抑制する方法として有用であり得ることを示す。この疾患の複雑な性質を考慮すると、アトピー性皮膚炎に対する理想的な治療アプローチは、内在性表皮障壁の修復と、微生物叢によって提供される免疫防御機能の最適化の両方を標的とすることを含むべきである。
【0043】
本開示はまた、スタフィロコッカス・ホミニスの臨床分離株の培養上清由来の新規な抗菌ペプチド(AMP)を記載する。これらのAMPは、本明細書において、ホゴシジン-α及びホゴシジン-βと称される。ホゴシジンは、黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して抗菌作用及び殺菌作用を発揮するが、表皮ブドウ球菌などの皮膚上の共生細菌の増殖を阻害しない。従って、本開示は、病原体に対して強力であるが選択的な活性を有する抗生物質、及びそれらがヒト皮膚微生物叢に通常認められる高い安全性プロファイル、並びにこれらの状態を治療するためのプロバイオティックアプローチを提供することを示す。
【0044】
用語「抗菌」とは、本明細書で使用するとき、ペプチドが微生物(例えば、細菌、真菌及び/又はウイルス)を破壊し、あるいはその成長若しくは増殖を阻害又は予防することを意味する。同様に、用語「抗ウイルス」とは、本明細書で使用するとき、ペプチドがウイルス若しくはウイルス感染細胞を破壊し、あるいはその成長若しくは増殖を阻害又は予防することを意味する。用語「抗腫瘍」とは、本明細書で使用するとき、ペプチドが腫瘍細胞を予防し、その増殖を阻害し、又は腫瘍細胞を破壊することを意味する。同様に、用語「抗真菌」とは、ペプチドが真菌を予防し、破壊し、又はその増殖を阻害することを意味する。
【0045】
本明細書で使用するとき、「プロバイオティック」とは、健康な皮膚又は粘膜のフローラの要素を補充又は置換するために、生存若しくは弱毒化された微生物培養物、又はこのような培養物の溶解物、凍結乾燥物若しくは抽出物を提供するプロセスを意味する。皮膚への送達のための弱毒化ベクターは、(a)ベクターを非病原性にし、(b)病原性を低減し、(c)複製欠陥性であり、又は(d)非抗原性であるように、遺伝的に改変されているウイルス又は細菌を含むことができる。他の弱毒化は、当該技術分野において公知である。弱毒化は、典型的には、(a)~(c)又は(d)の留意点が遂行されるように、遺伝子をノックアウトし、又は遺伝子コード配列若しくは発現調節エレメントを破壊することによって行われる。このような技術は当該技術分野において公知であり、このような弱毒化された細菌及びウイルスベクターが多数知られている。
【0046】
「ホゴシジン」は、2つの異なるドメイン:成熟ホゴシジンのN末端「プロ配列」ドメイン及びC末端ドメインから構成される。成熟ホゴシジン-αは、配列番号2のアミノ酸約32~アミノ酸約61の配列(例えば、配列番号2のアミノ酸約30、31、32又は33で始まり、配列番号2のアミノ酸約59、60又は61まで伸びる)を含む。ホゴシジンαのプレ-プロ形態は、約61アミノ酸長であり、成熟形態を提供する翻訳後プロセスであることは当業者には容易に明らかである。発現系及び生物に基づいて、成熟形態は、存在するプロテアーゼに応じてわずかに異なってプロセシングされ得る。さらに、ホゴシジンαのプレ-プロ形態は、本開示の方法、組成物及びキットにおいて使用され得ることもまた容易に明らかであり、投与前又は投与後に、プレ-プロ形態はインビトロ(in vitro)又はインビボ(in vivo)においてプロセシングされ得る。
【0047】
同様に、ホゴシジンβの成熟形態は、配列番号4のアミノ酸約29~アミノ酸約66の配列(例えば、配列番号4のアミノ酸約27、28、29又は30で始まり、配列番号4のアミノ酸約64、65又は66まで伸びる)を含む。ホゴシジンβのプレ-プロ形態は、約66アミノ酸長であり、成熟形態を提供する翻訳後プロセスであることは当業者には容易に明らかである。発現系及び生物に基づいて、成熟形態は、存在するプロテアーゼに応じてわずかに異なってプロセシングされ得る。さらに、ホゴシジンβのプレ-プロ形態は、本開示の方法、組成物及びキットにおいて使用され得ることもまた容易に明らかであり、投与前又は投与後に、プレ-プロ形態はインビトロ又はインビボにおいてプロセシングされ得る。
【0048】
配列番号2を含むポリペプチドは、典型的には、配列番号2のアミノ酸番号31の後で切断されるが、当業者は、使用される酵素、使用される発現系、及び/又はポリペプチドのタンパク質分解切断が生じる条件に応じて、切断部位は、配列番号2のアミノ酸番号31のいずれかの方向に1~3個のアミノ酸で変化し得ることを認識する。
【0049】
配列番号4を含むポリペプチドは、典型的には、配列番号4のアミノ酸番号28の後で切断されるが、しかしながら、当業者は、使用される酵素、使用される発現系、及び/又はポリペプチドのタンパク質分解切断が生じる条件に応じて、切断部位は、配列番号4のアミノ酸番号31のいずれかの方向に1~3個のアミノ酸で変化し得ることを認識する。
【0050】
遺伝暗号は当業者によってよく理解され、所望のポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを作製する上で日常的なものである。本開示はまた、本開示のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。例えば、本開示は、配列番号2及び4のポリペプチドをコードする配列番号1及び3を提供する。
【0051】
本明細書で使用するとき、用語「ホゴシジンペプチド」とは、約30~約50アミノ酸長であり、配列番号2若しくは4に記載の配列、又はその翻訳後修飾されたバージョン:
配列番号2のaa32からaa61まで-KCSWWNASCHLGNNGKICTVSHECAAGCNL(配列番号56)
配列番号4のaa29からaa66まで-ATPTITTSSATCGGIIVAASAAQCPTLACSSRCGKRKK(配列番号57)
を含むアミノ酸鎖を含むホゴシジンの成熟形態を意味する。
【0052】
一実施形態において、本方法は、(a)配列番号2又は4のホゴシジンペプチドと少なくとも90%同一であり、かつ抗菌活性を有するペプチド;(b)翻訳後にプロセシングされた(a)の成熟形態;(c)約15~40アミノ酸長であり、かつ抗菌活性を有するホゴシジンペプチドの断片;(d)上記(a)~(c)を含み、抗菌活性を有する融合タンパク質;(e)1つ以上のアミノ酸がD-アミノ酸を含み、ペプチドが抗菌活性を有する(a)、(b)、(c)又は(d)のいずれかを含むペプチド;及び(f)上記のいずれかであって、抗菌ペプチドを有するレトロインベルソペプチド、を含むホゴシジン誘導体を提供する。いくつかのさらなる実施形態において、本方法は、ランチオニン若しくはメチルランチオニン残基を含むホゴシジン誘導体、又はそれらがランチオニン若しくはメチルランチオニン残基を含むように改変されたホゴシジン誘導体を提供する。類似体、誘導体、変形体又はバリアントは、それが抗菌活性を有する限り、類似体、誘導体、保存的変形体又はバリアントが由来するホゴシジンペプチドの活性と同一の活性を有する必要はない。別の実施形態において、本開示は、配列番号2又は4のポリペプチドと比較して、少なくとも1つの保存的アミノ酸の差異を含むホゴシジンポリペプチドを提供する。
【0053】
本開示はまた、N末端に配列番号55の配列を含むポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは抗菌活性を有し、観察された分子量は3484.90(m/z)であった。さらなる実施形態において、そのポリペプチドは、表皮ブドウ球菌A11によって産生される。
【0054】
本開示はまた、薬学的に許容される賦形剤を含み、実質的に純粋なホゴシジンペプチド又は誘導体を含む組成物を提供する。本開示はまた、1つ以上のホゴシジン又はファーモシジンを産生する細菌株を含むプロバイオティック製剤を含む組成物を提供する。
【0055】
用語「精製」とは、本明細書で使用するとき、他のタンパク質、脂質、及びポリヌクレオチド(例えば、インビボで産生されたペプチドが天然で結合している細胞成分)を実質的に含まないペプチドを意味する。典型的には、ペプチドは、少なくとも70重量%、80重量%、又は最も一般的には90重量%の純度である。以下により詳細に記載されるように、組成物は、カテリシジンペプチド又はその誘導体をさらに含み得る。
【0056】
「バリアント」は、参照の抗菌ペプチドの変化形態である抗菌ペプチド(例えば、本開示のホゴシジンペプチド)である。例えば、用語「バリアント」は、参照ペプチドの少なくとも1つのアミノ酸(例えば、約1~10アミノ酸)が別のアミノ酸で置換されている、本明細書に開示される方法によって産生される抗菌ペプチドを含む。用語「参照」ペプチドとは、バリアント、誘導体、類似体、又は保存的変形体が由来する、本開示の抗菌ペプチド(例えば、配列番号2及び4又はその成熟形態からなるポリペプチド)の任意のものを意味する。用語「誘導体」には、2つの抗菌性ホゴシジンペプチドのそれぞれの少なくとも一部を含むハイブリッドペプチドが含まれる。誘導体は、ペプチドの抗菌活性を完全に阻害することなしに、抗菌性ペプチドに1つ又は数個(例えば1~5個)のアミノ酸を付加することによって作製することができる。さらに、C末端誘導体、例えば、C末端メチルエステルを作製することができ、それも本開示に包含される。
【0057】
本開示はまた、本明細書に例示されるそのようなペプチドの保存的変形体であるペプチドを含む。用語「保存的変形体」は、本明細書で使用するとき、少なくとも1つのアミノ酸が、生物学的に、化学的に、又は構造的に類似した別の残基によって置換されているポリペプチドを示す。保存的変形体の例には、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、システイン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、ノルロイシン若しくはメチオニンなどの1つの疎水性残基による別の残基の置換、又は1つの極性残基による別の残基の置換、例えば、アルギニンによるリジンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換、又はグルタミンによるアスパラギンの置換などが挙げられる。互いに置換することができる中性親水性アミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、セリン、及びスレオニンが挙げられる。構造上保存的な変形体には、アラニンによるセリンの置換(及びその反対)、イソロイシンによるスレオニンの置換(及びその反対)、アルギニンによるリジンの置換(及びその反対)、並びにチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン及びヒスチジンのいずれかによるそのグループのいずれかの他のメンバーの置換が含まれる。用語「保存的変形体」はまた、非置換の親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を有するペプチドを包含し、典型的には、置換ポリペプチドに対して生じた抗体は非置換ポリペプチドにも特異的に結合する。
【0058】
本明細書で使用するとき、「SH-ランチビオティック」とは、場合により1つ以上のランチオニン又はメチルランチオニン部分を含有する、スタフィロコッカス・ホミニスによって産生された翻訳後修飾されたペプチドを含み、かつ1つ以上の非スタフィロコッカス・ホミニス種に対して抗菌活性を示す化合物を意味する。
【0059】
本明細書で使用するとき、「SH-抗菌剤」とは、場合により1つの非ランチビオティックペプチドを含み得る、スタフィロコッカス・ホミニスによって産生され又は分泌された非ランチビオティック化合物を含み、1つ以上の非スタフィロコッカス・ホミニス種に対して抗菌活性を示す化合物を意味する。
【0060】
本明細書で使用するとき、「SE-ランチビオティック」とは、場合により1つ以上のランチオニン又はメチルランチオニン部分を含有する、表皮ブドウ球菌によって産生された翻訳後修飾されたペプチドを含み、かつ1つ以上の非表皮ブドウ球菌種に対して抗菌活性を示す化合物を意味する。一実施形態において、そのペプチドは配列番号55の配列を含む。
【0061】
本明細書で使用するとき、「SE-抗菌剤」とは、場合により1つ以上の非ランチビオティックペプチドを含み得る、表皮ブドウ球菌によって産生され又は分泌された非ランチビオティック化合物を含み、1つ以上の非表皮ブドウ球菌種に対して抗菌活性を示す化合物を意味する。
【0062】
本開示のホゴシジンペプチドバリアントは、例えば、皮膚感染に対して増加した感受性を示すCRAMPノックアウトマウスなどの多数の動物モデルの1つを用いて、ランダムなペプチド又は目的とするペプチドの大きな集合物又はライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。ホゴシジンペプチドバリアントは、例えば、配列番号2及び4についてこのような配列に基づき様々な置換を有することによりアミノ酸配列で関連するペプチドの集団であり得る。
【0063】
ペプチドライブラリーには、例えば、ペプチド及びペプチド模倣分子を含む、タグ化された化学ライブラリーが含まれる。ペプチドライブラリーはまた、ファージディスプレイ技術によって生成されたものを含む。ファージディスプレイ技術は、ファージの表面上のペプチド分子の発現、並びにタンパク質リガンドをそれをコードする核酸と関連付ける又は関連付けることができる他の方法論を含む。発現されるペプチドの集団を多様化するためのベクター及び方法を含む、ファージディスプレイライブラリーを作製するための方法は、当該技術分野において公知である(例えば、Smith及びScott、Methods Enzymol、217巻:228-257頁(1993年);Scott及びSmith、Science 249巻:386-390(1990年);並びにHuse、WO91/07141及びWO91/07149を参照されたい)。これらの方法又は他の公知の方法を用いて、提示されたペプチドを切断して抗菌活性についてアッセイすることができるファージディスプレイライブラリーを作製することができる。所望であれば、ペプチド集団を活性についてアッセイすることができ、活性集団を分類することができ、集団から活性ペプチドを単離するためにアッセイが繰り返される。本開示において有用なペプチドを生成するための他の方法としては、例えば、配列番号2又は4に記載のホゴシジンペプチドのアミノ酸配列に基づく合理的設計及び突然変異誘発が挙げられる。
【0064】
ホゴシジンペプチドバリアントは、例えば、配列番号2若しくは4のホゴシジンペプチド(又はその成熟形態)の構造を模倣するが、抗微生物(antimicrobial)/抗細菌(antibacterial)活性を保持している、非アミノ酸化学構造であるペプチド模倣体であり得る。このような模倣体は、一般的に、ホゴシジンペプチド対応物中に見出される同じ空間配置において、サイズ、電荷又は疎水性などの類似した物理的特徴を示すものとして特徴付けられる。ペプチド模倣体の具体例は、1つ以上のアミノ酸間のアミド結合が、例えば、炭素-炭素結合又は当該技術分野において周知である他の結合によって置換された化合物である(例えば、Sawyer、Peptide Based Drug Design、ACS、Washington(1995年)を参照されたい)。
【0065】
本開示のホゴシジンペプチド、バリアント又はペプチド模倣体のアミノ酸は、特に記載しない限り、L-アミノ酸及びD-アミノ酸を含む、20種の天然に存在するアミノ酸から選択される。D-アミノ酸の使用は、タンパク質又はペプチドの寿命を延ばすのに特に有用である。D-アミノ酸を組み込んだポリペプチドは、タンパク質分解消化に耐性である。アミノ酸という用語はまた、アミノ酸類似体、通常はタンパク質に取り込まれない天然アミノ酸(ノルロイシンなど)を含む化学的に修飾されたアミノ酸、及びアミノ酸に特徴的である当該技術分野において公知の特性を有する化学的に合成された化合物を包含する、化合物(但しそれを、ペプチドの生物学的活性を保持するようにペプチド内で置換できる限りにおいて)を意味する。例えば、グルタミンは、抗微生物(antimicrobial)/抗細菌(antibacterial)活性を保持するようにホゴシジンペプチド、バリアントなどの活性断片内で置換できる限りにおいて、アスパラギンのアミノ酸類似体であり得る。アミノ酸及びアミノ酸類似体の他の例は、Gross and Meienhofer、The Peptides:Analysis, Synthesis, Biology、Academic Press, Inc.,、New York (1983年)に列挙されている。アミノ酸はまた、アミノ酸と実質的に同じ空間的配置の官能基を有するが、必ずしもアミノ酸に特徴的な「-アミノ」基と「-カルボキシル」基の両方を必ずしも有さない構造であるアミノ酸模倣体であってもよい。
【0066】
本開示のポリペプチド及びペプチドは、アルファ-アミノ基のt-BOC又はFMOC保護を含む方法などの一般的に使用される方法によって合成することができる。両方法は、ポリペプチド又はペプチドのC末端から開始する各ステップで単一のアミノ酸が追加される段階的な合成を伴う(Coliganら、Current Protocols in Immunology、Wiley Interscience、1991年、Unit 9を参照されたい)。本開示のポリペプチド及びペプチドは、Merrifield、J. Am. Chem. Soc.、85巻:2149頁、1962年及びStewart and Young、Solid Phase Peptides Synthesis、Freeman、San Francisco、1969年、27-62頁によって記載されたものなどの周知の固相ペプチド合成法によっても合成することができる。所望であれば、ペプチドは、固相エドマン分解によって定量することができる。
【0067】
合成機を用いて、ホゴシジンペプチド(すなわち、配列番号2又は4の成熟形態)は、翻訳後プロセシングの必要性を特に伴わずに作製することができる。
【0068】
本開示はまた、本開示のポリペプチド及びペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド(例えば、DNA、cDNA又はRNA)を含む。本明細書に記載されるポリペプチド及びペプチドの類似体、突然変異体、保存的変形体、及びバリアントをコードするポリヌクレオチドが含まれる。用語「単離された」とは、本明細書で使用するとき、インビボで産生されたポリヌクレオチドが天然で結合しているタンパク質、脂質及び他のポリヌクレオチドを実質的に含まないポリヌクレオチドを指す。典型的には、ポリヌクレオチドは、他の物質から少なくとも70%、80%、又は90%単離されており、インビトロでポリヌクレオチドを合成するための従来の方法をインビボ方法の代わりに使用することができる。
【0069】
本明細書で使用するとき、「ポリヌクレオチド」とは、別々の断片の形態、又はより大きな遺伝的構築物の成分としての、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドのポリマーを指す(例えば、本開示のペプチドをコードするポリヌクレオチドにプロモーターを作動可能に連結することによる)。多数の遺伝的構築物(例えば、プラスミド及び他の発現ベクター)は、当該技術分野において公知であり、無細胞系又は原核若しくは真核(例えば、酵母、昆虫又は哺乳動物)細胞において本開示のペプチドを製造するために使用できる。遺伝暗号の縮重を考慮に入れることにより、当業者は、本開示のペプチドをコードするポリヌクレオチドを容易に合成することができる。本開示のポリヌクレオチドは、従来の分子生物学的方法において容易に使用して、本開示のペプチドを製造することができる。
【0070】
本開示のホゴシジンペプチド、そのバリアントの誘導体をコードするDNAを「発現ベクター」に挿入することができる。用語「発現ベクター」とは、本開示のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むように遺伝子操作することができる、当該技術分野において公知であるプラスミド、ウイルス又は他のビヒクルなどの遺伝的構築物を意味する。このような発現ベクターは、典型的には、宿主細胞において挿入された遺伝子配列の転写を促進するプロモーター配列を含有するプラスミドである。発現ベクターは、典型的には、複製起点及びプロモーター、並びに形質転換細胞の表現型選択を可能にする遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子)を含有する。誘導性及び構成性プロモーターを含む様々なプロモーターが本開示において利用され得る。典型的には、発現ベクターは、宿主細胞と適合可能な種に由来するレプリコン部位及び調節配列を含有する。
【0071】
本開示のポリヌクレオチドによる宿主細胞の形質転換又はトランスフェクションは、当業者に周知である従来の技術を用いて行うことができる。例えば、宿主細胞が大腸菌である場合、DNA取り込みをすることができるコンピテント細胞は、当該技術分野において公知であるCaCl2、MgCl2又はRbCl法を用いて調製することができる。あるいは、エレクトロポレーション又はマイクロインジェクションなどの物理的手段を使用することができる。エレクトロポレーションは、高電圧の電気インパルスによって細胞内にポリヌクレオチドを移入することができる。さらに、当該技術分野において周知である方法を用いて、プロトプラスト融合によってポリヌクレオチドを宿主細胞に導入することができる。エレクトロポレーション及びリポフェクションなどの、真核細胞を形質転換するための適切な方法もまた公知である。
【0072】
本開示に包含される「宿主細胞」は、本開示のポリヌクレオチドが、本開示のホゴシジンペプチド、誘導体又はバリアントを発現するために使用され得る任意の細胞である。また、この用語には、宿主細胞の子孫が含まれる。有用な宿主細胞には、細菌細胞、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、植物細胞及び動物細胞が含まれる。例えば、宿主細胞は、哺乳動物細胞などの高等真核細胞、若しくは酵母細胞などの下等真核細胞であってよく、又は宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞であってもよい。構築物の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、又はエレクトロポレーション(Davis、L.、Dibner、M.、Battey、I.、Basic Methods in Molecular Biology(1986年))によって行うことができる。適切な宿主の代表例としては、酵母のような真菌細胞;ショウジョウバエS2及びスポドプテラSf9のような昆虫細胞;動物細胞、例えばCHO、COS又はBowesメラノーマ;植物細胞などが挙げられる。適切な宿主の選択は、本明細書の教示から当業者の範囲内であるとみなされる。一実施形態では、宿主細胞は、本開示のホゴシジンペプチド又は他の抗菌性ペプチドを発現又は過剰発現するように操作された皮膚の正常な細菌フローラに存在する細菌細胞を含むことができる。これらの操作された細菌細胞は、その後、それらが皮膚に適用されるようなプロバイオティックとして使用することができる。
【0073】
宿主細胞は、真核生物宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)であり得る。一実施形態において、宿主細胞は、細胞培養において増殖するように適合された哺乳動物の産生細胞である。産業上一般的に使用されるこのような細胞の例は、CHO、VERO、BHK、HeLa、CV1(Cosを含む;Cos-7)、MDCK、293、3T3、C127、骨髄腫細胞株(特にマウス)、PC12及びW138細胞である。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、いくつかの複合組換えタンパク質、例えば、サイトカイン、凝固因子、及び抗体の産生に広く使用されている(Braselら、Blood 88巻:2004-2012頁(1996年);Kaufmanら、J. Biol Chem 263巻:6352-6362頁(1988年);McKinnonら、J Mol Endocrinol 6巻:231-239頁(1991年); Woodら、J. Immunol 145巻:3011-3016頁(1990年))。ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)欠損突然変異細胞株(Urlaubら、Proc Natl Acad Sci USA 77巻:4216-4220頁(1980年))は、一般的に使用されているCHO宿主細胞株であり、これは、効率的なDHFR選択可能かつ増幅可能な遺伝子発現系により、これらの細胞において高レベルの組換えタンパク質発現が可能であるためである(Kaufman、Meth Enzymol 185巻:527-566頁(1990年))。加えて、これらの細胞は、付着性又は懸濁培養として操作し易く、比較的良好な遺伝的安定性を示す。CHO細胞及びそれらにおいて発現された組換えタンパク質は、広範に特徴付けられており、規制機関による臨床製造での使用が承認されている。
【0074】
本開示のポリペプチド及びペプチドをコードするポリヌクレオチドは、細胞(例えば、培養細胞)から単離することができ、又はインビトロで産生することができる。目的とするホゴシジンペプチドをコードするDNA配列は、1)ゲノムDNAからの二本鎖DNA配列の単離;2)目的とするホゴシジンペプチドをコードするようなポリヌクレオチドの化学的製造;又は3)ドナー細胞から単離されたmRNAの逆転写による二本鎖DNA配列のインビトロ合成(すなわち、cDNA作製)によって得ることができる。目的とするcDNA配列を単離するための標準的な手順の中には、高レベルの遺伝子発現を有するドナー細胞におけるmRNAの逆転写に由来するcDNAライブラリーを含むプラスミド又はファージの形成がある。ポリメラーゼ連鎖反応技術と組み合わせて使用すると、稀な遺伝子産物でさえクローニングすることができる。
【0075】
タンパク質精製のための様々な当該技術分野において公知の方法のいずれかを使用して、本開示のペプチドを単離することができる。例えば、調製用クロマトグラフィー分離及び免疫学的分離(モノクローナル若しくはポリクローナル抗体を用いるものなど)を用いることができる。担体ペプチドは、本開示のペプチドを含む融合タンパク質の単離を容易にすることができる。精製タグは、本開示のホゴシジンペプチドに作動可能に連結することができる。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)により、グルタチオンアガロースアフィニティカラムを用いる精製を可能にする。黄色ブドウ球菌に由来するプロテインA又はZZドメインのいずれかをタグとして用いる場合、IgG-セファロースアフィニティカラムを用いる単一の工程で精製を達成することができる。緑膿菌外膜タンパク質FのN末端の半分であるpOprF-ペプチドは、外膜調製物において顕著なタンパク質種であるため、それを容易に精製することができる。所望であれば、融合ペプチドのホゴシジンペプチドと特異的に反応する(例えば、特異的に結合する)試薬を用いて、該融合ペプチドを精製することができる。例えば、ホゴシジンペプチドに特異的に結合するモノクローナル又はポリクローナル抗体を従来の精製方法において用いることができる。このような抗体を製造するための技術は、当該技術分野において周知である。
【0076】
本開示のホゴシジンペプチドに連結されたポリペプチドを含む融合構築物は、ペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端のいずれで連結されていてもよい。典型的には、ホゴシジンペプチドに連結されるポリペプチドは、ホゴシジンペプチドが中性又は陰性の正味電荷を有するように十分にアニオン性である。アニオン性ポリペプチドは、天然に存在するタンパク質に対応することができ、又は設計上完全に人工的であり得る。機能的には、ホゴシジンペプチドに連結されるポリペプチド(「担体ポリペプチド」)は、担体ポリペプチドがこのような目的に役立つことが示されている必要はないが、ホゴシジンペプチドを安定化させ、プロテアーゼから保護するのに役立つものであり得る。同様に、担体ポリペプチドは、融合ペプチドの輸送を促進し得る。利用可能な担体ポリペプチドの例としては、アニオン性プレ-プロペプチド及びアニオン性外膜ペプチドが含まれ得る。担体ポリペプチドの例には、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、黄色ブドウ球菌のプロテインA、プロテインAの2つの合成IgG結合ドメイン(ZZ)、緑膿菌の外膜タンパク質F、タンパク質導入ドメインなどが含まれる。本開示は、これらのポリペプチドの使用に限定されず、他の適切な担体ポリペプチドは、当業者に公知である。別の態様において、プロテアーゼ切断部位を含むリンカー部分は、本開示のホゴシジンペプチド又はバリアントに作動可能に連結され得る。例えば、リンカーは、融合タンパク質(例えば、ホゴシジンペプチド及び担体ポリペプチドを含む融合タンパク質)のドメイン間で作動可能であり得る。プロテアーゼ切断認識配列は、一般的に長さがほんのわずかなアミノ酸であるため、リンカー部分はGGGGS(配列番号6)などの柔軟性スペーサーアミノ酸配列内に認識配列を含むことができる。例えば、アデノウイルスエンドペプチダーゼの切断認識配列を含むリンカー部分は、配列GGGGGGSMFGGAKKRSGGGGGG(配列番号7)を有することができる。所望であれば、スペーサーDNA配列は、ホゴシジンペプチドからの担体ポリペプチドの切断のためのタンパク質認識部位をコードすることができる。このようなスペーサーDNA配列の例には、限定されないが、プロテアーゼ切断配列、例えば、第Xa因子プロテアーゼに関するプロテアーゼ切断配列、メチオニン、トリプトファン及びグルタミン酸コドン配列、並びにプレ-プロデフェンシン配列が含まれる。第Xa因子は、第Xa因子プロテアーゼ切断配列でのタンパク質分解切断に使用され、一方、臭化シアン処理による化学的切断はメチオニン又は関連残基でペプチドを放出する。さらに、融合産物は、トリプトファン(o-ヨードソ安息香酸により切断可能である)又はグルタミン酸(スタフィロコッカスプロテアーゼにより切断可能である)のコドンの挿入によって切断することができる。このようなスペーサーDNA配列の挿入は、機能的ホゴシジンペプチドの産生のための要件ではなく、このような配列は融合ペプチドの安定性を増強することができる。プレ-プロデフェンシン配列は負に荷電しているため、負に荷電したペプチドをコードする他のDNA配列もまたスペーサーDNA配列として使用して、融合ペプチドを安定化させることが本開示内に想定される。
【0077】
本開示はまた、細菌を阻害有効量の本開示のペプチドと接触させることによって、細菌の増殖を阻害する方法を提供する。用語「接触」は、ペプチドが細菌を阻害し、死滅させ、又は溶解することができるようにペプチドに細菌を曝露することを指す。本開示はまた、病原体又は望ましくない微生物の増殖を阻害又は防止するように、ペプチド又は抗菌分子を分泌する細菌を含むプロバイオティック製剤を対象に又は対象内に配置することを含む、皮膚疾患若しくは障害及び/又は細菌感染を阻害する方法を提供する。生物と本開示のホゴシジンペプチドとの接触は、例えば、ペプチドを細菌培養物に添加して、ペプチドに対する細菌の感受性を試験し、又は細菌で汚染された表面をペプチドと接触させることによりインビトロで行うことができる。あるいは、接触は、例えば、細菌感染に罹患している対象、又は感染しやすい対象にペプチドを投与することによって、インビボで行うことができる。さらに、接触は、ホゴシジンペプチド、又は細菌増殖の他のペプチド若しくは非ペプチド阻害剤を産生する細菌株を含むプロバイオティック製剤に細菌を曝露することによって行うことができる。インビボでの接触には、非経口と局所の両方が含まれる。「阻害」又は「阻害有効量」は、例えば、静菌効果又は殺菌効果を引き起こすのに十分なペプチドの量を指す。本開示のペプチドによって影響され得る細菌は、グラム陰性細菌とグラム陽性細菌の両方を含む。例えば、影響され得る細菌には、黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)(A群)、ストレプトコッカス属種(Streptococcus sp.)(ビリダンス群)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(B群)、ストレプトコッカス・ボビス(S. bovis)、ストレプトコッカス属種(嫌気性種)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、及びエンテロコッカス属種(Enterococcus sp.);グラム陰性球菌、例えば、淋菌、髄膜炎菌、及びブラナミラ・カタラーリス(Branhamella catarrhalis);グラム陽性桿菌、例えば、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、枯草菌(Bacillus subtilis)、プロピオニバクテリウム・アクネス(P. acnes)、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheriae)、及びジフテロイド(好気性及び嫌気性)であるコリネバクテリウム属種(Corynebacterium sp.)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター属種(Enterobacter species)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)及び他の属種、緑膿菌、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、サルモネラ菌、赤痢菌、セラチア属種(Serratia sp.)、並びにカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)が挙げられる。これらの細菌の1種以上による感染は、菌血症、肺炎、髄膜炎、骨髄炎、心内膜炎、副鼻腔炎、関節炎、尿路感染症、破傷風、壊疽、大腸炎、急性胃腸炎、膿痂疹、座瘡、尋常性座瘡、創傷感染症、先天性感染症、筋膜炎、気管支炎、並びに様々な膿瘍、院内感染、及び日和見感染などの疾患をもたらし得る。また、真菌生物は、本開示のホゴシジンペプチドによって影響され得、皮膚糸状菌(例えば、イヌ小胞子菌(Microsporum canis)及び他のミクロスポルム属種(Microsporum sp.);及び白癬菌属種(Trichophyton sp.)、例えば、トリコフィトン・ルブルム(T. rubrum)、及びトリコフィトン・メンタグロフィテス(T. mentagrophytes))、酵母(例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(C. Tropicalis)又は他のカンジダ属種)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、トルロプシス・グラブラタ(Torulopsis glabrata)、エピデルモフィトン・フロッコスム(Epidermophyton floccosum)、マラセジア・フルフル(Malassezia furfur)(ピティロスポロン・オルビクラレ(Pityropsporon orbiculare)、又はピティロスポロン・オバレ(P. ovale))、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ニドランス(Aspergillus nidulans)、及び他のアスペルギルス属種(Aspergillus sp.)、接合菌(Zygomycetes)(例えば、クモノスカビ(Rhizopus)、ケカビ(Mucor))、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitides)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、及びスポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)が挙げられる。細菌の増殖を阻害する方法はまた、1種以上の抗生物質と組み合わせたペプチドと細菌を接触させることを含み得る。
【0078】
本開示のペプチドは、細菌、ウイルス又は真菌の増殖を阻害するのに有効な量で、ヒト又は非ヒト動物を含む任意の宿主に投与することができる。従って、ペプチドは、抗菌剤、抗ウイルス剤及び/又は抗真菌剤として有用である。ペプチドを産生する細菌株は、プロバイオティック剤として有用である。
【0079】
当該技術分野において公知の種々の方法のいずれかを使用して、対象にペプチドを投与することができる。例えば、本開示のペプチドは、注射によって、又は経時的な漸次注入によって非経口的に投与することができる。ペプチドは、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、局所又は経皮的に投与することができる。別の実施形態において、本開示のホゴシジンペプチドは、局所投与用に(例えば、ローション、クリーム、噴霧剤、ゲル、油性懸濁液又は軟膏として)製剤化され得る。市販されている製剤の例としては、局所用のローション、クリーム、石けん、拭き取り用品、粉末、創傷を覆うガーゼパッドなどのデバイスなどが挙げられる。これは、毒性を低下させ、又は生物学的利用能若しくは安定性を増加させるために、リポソーム中に製剤化されてもよい。ペプチドを送達させるための他の方法には、マイクロスフェア若しくはプロテイノイド中へのペプチドのカプセル化、エアロゾル送達(例えば、肺への送達)、又は経皮送達(例えば、イオントフォレシス若しくは経皮エレクトロポレーションによる)を伴う経口的方法が含まれる。他の投与方法は、当業者に公知である。
【0080】
本開示のペプチドの非経口投与用の調製物は、滅菌水性又は非水性溶液、懸濁液及びエマルジョンを含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体の例としては、水、生理食塩水、及び緩衝化媒体、アルコール/水溶液、及びエマルジョン又は懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガー及び不揮発性油が挙げられる。静脈内ビヒクルには、流体及び栄養補充剤、電解質補充剤(リンガーデキストロースに基づくものなど)などが含まれる。また、防腐剤及び他の添加剤、例えば、他の抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどが含まれ得る。
【0081】
本開示は、治療有効量の本開示のペプチド又は皮膚プロバイオティックを、局所的な細菌又は真菌に関連した障害を有する対象若しくは有するリスクのある対象に接触又は投与することによって、このような障害を阻害する方法を提供する。用語「阻害」は、障害の徴候若しくは症状(例えば、発疹、痛みなど)を予防又は改善することを意味する。改善され得る疾患の徴候の例には、対象のTNF血中レベルの上昇、発熱、低血圧、好中球減少、白血球減少、血小板減少、播種性血管内凝固、成人呼吸窮迫症候群、ショック及び臓器不全が含まれる。本開示において治療することができる対象の例には、グラム陰性細菌感染、毒液中毒、又は肝不全に起因する内毒素血症などの毒素血症のリスクがあるヒト若しくは動物の対象、又はそれに罹患しているヒト若しくは動物の対象が含まれる。他の例には、皮膚炎を有する対象、並びに乳腺炎及び特にウシの乳房炎などの皮膚感染症を有する対象、あるいはグラム陽性細菌若しくはグラム陰性細菌又は真菌に感染に晒される傷害を有する対象が含まれる。候補患者の例には、大腸菌、ヘモフィルスインフルエンザB、髄膜炎菌、スタフィロコッカス(ブドウ球菌)、又は肺炎球菌による感染症を患う患者が含まれる。他の患者には、銃創、腎不全又は肝不全、外傷、火傷、免疫不全感染(例えば、HIV/SIV/FIV感染)、造血新生物、多発性骨髄腫、キャッスルマン病又は心筋粘液腫が含まれる。医学分野の当業者は、本開示に従って治療のための適切な対象を同定するために従来の基準を容易に採用することができる。
【0082】
用語「治療上有効な量」とは、疾患又は障害に罹患した対象の治療に関して本明細書で使用するとき、疾患又は障害の徴候又は症状を改善するのに十分な量のホゴシジンペプチドを意味する。例えば、治療上有効な量は、皮膚炎症の重症度の頻度を測定することによって、皮膚炎又は発疹の対象の症状を軽減させるのに十分な量として測定することができる。典型的には、対象は、疾患又は障害の症状を少なくとも50%、90%又は100%低下させるのに十分な量のホゴシジンペプチドで治療される。一般的に、ペプチドの最適投薬量は、患者の体重、細菌又は真菌の感染の種類、体重、性別及び症状の程度などの障害及び要因に依存する。それにもかかわらず、適切な投薬量は、当業者によって容易に決定され得る。典型的には、適切な投薬量は、0.5~40mgペプチド/kg体重、例えば、1~8mgペプチド/kg体重である。
【0083】
所望であれば、適切な療法レジメは、本開示のペプチド(複数可)又はプロバイオティック組成物の投与と1つ以上の追加の治療剤(例えば、TNFのインヒビター、抗生物質など)の投与を組み合わせることができる。ペプチド(複数可)、他の治療剤、及び/又は抗生物質(複数可)は、同時に投与することもできるが、順次投与することもできる。適切な抗生物質には、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン)、ベータ-ラクタム(例えば、ペニシリン及びセファロスポリン)、キノロン(例えば、シプロフロキサシン)及びノボビオシンが含まれる。一般的に、抗生物質は殺菌量で投与される。しかしながら、本ペプチドは、抗生物質活性を増加させる方法を提供する。典型的には、ホゴシジンペプチド及び抗生物質は、互いに48時間以内に投与される(例えば、2~8時間、又は同時に投与され得る)。「殺菌量」は、治療を受けている対象において細菌死滅血中濃度を達成するのに十分な量である。その従来の定義によれば、本明細書で使用する「抗生物質」とは、希釈溶液中で微生物の増殖を阻害し又は死滅させる化学物質である。また、この用語には、当該技術分野において公知の合成抗生物質(例えば、類似体)が包含される。
【0084】
本開示のペプチドは、例えば、微生物汚染又はウイルス汚染に影響を受けやすい物質の防腐剤又は滅菌剤として使用することができる。例えば、本ペプチドは、加工食品中の防腐剤として(例えば、サルモネラ、エルシニア、リステリア及び赤痢菌のような生物を阻害するために)使用することができる。所望であれば、本ペプチドは、リゾチームなどの抗菌食品添加物と組み合わせて使用することができる。また、本開示のペプチド及び/又はプロバイオティックは、例えば、シュードモナス若しくはストレプトコッカスを阻害するために、又は臭気を生成する微生物(例えば、ミクロコッカス)を死滅させるために、局所剤として使用することもできる。任意の所与の適用のための本開示のホゴシジンペプチドの最適量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0085】
また、本開示のホゴシジン及び/又はプロバイオティックは、創傷修復及び組織再生の促進に有用である。マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPS)は、様々な組織中のタンパク質を分解する炎症性酵素である。最近の科学的研究は、創傷床を浸す流体である慢性創傷滲出液中のプロテアーゼ(例えば、MMP)のレベルの上昇を示している。これらの過剰なプロテアーゼは、重要な細胞外マトリックスタンパク質の分解、及び創傷治癒プロセスに不可欠な重要な増殖因子の不活性化を引き起こす。これは、最適ではない治癒環境の一因となる可能性があり、それは創傷治癒の遅延をもたらす。
【0086】
本明細書において提供される組成物は、同時に、以下の他の抗菌剤とともに使用することができ、サルファ剤、例えば、スルファメチゾール、スルフィソキサゾール、スルファモノメトキシン、スルファメチゾール、サラゾスルファピリジン、スルファジアジン銀など;キノロン抗菌薬、例えば、ナリジクス酸、ピペミド酸三水和物、エノキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トシル酸トスフロキサシン、塩酸シプロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、スパルフロキサシン、フレロキサシンなど;抗結核薬、例えば、イソニアジド、エタンブトール(塩酸エタンブトール)、p-アミノサリチル酸(p-アミノサリチル酸カルシウム)、ピラジナミド、エチオナミド、プロチオナミド、リファンピシン、硫酸ストレプトマイシン、硫酸カナマイシン、サイクロセリンなど;抗抗酸菌薬、例えば、ジアフェニルスルホン、リファンピシンなど;抗ウイルス薬、例えば、イドクスウリジン、アシクロビル、ビダラビン、ガンシクロビルなど;抗HIV薬、例えば、ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、硫酸インジナビルエタノール付加物、リトナビルなど;抗スピロヘータ薬;抗生物質、例えば、テトラサイクリン塩酸塩、アンピシリン、ピペラシリン、ゲンタマイシン、ジベカシン、カネンドマイシン、リビドマイシン、トブラマイシン、アミカシン、フラジオマイシン、シソマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ロリテトラサイクリン、ドキシサイクリン、アンピシリン、ピペラシリン、チカルシリン、セファロチン、セファピリン、セファロリジン、セファクロル、セファレキシン、セフロキサジン、セファドロキシル、セファマンドール、セフォトアム、セフロキシム、セフォチアム、セフォチアムヘキセチル、セフロキシムアキセチル、セフジニル、セフジトレンピボキシル、セフタジジム、セフピラミド、セフスロジン、セフメノキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフピロメ、セフォゾプラン、セフェピム、セフスロジン、セフメノキシム、セフメタゾール、セフミノクス、セフォキシチン、セフブペラゾン、ラタモキセフ、フロモキセフ、セファゾリン、セフォタキシム、セフォペラゾン、セフチゾキシム、モキサラクタム、チエナマイシン、スルファゼシン、アズトレオナム又はそれらの塩、グリセオフルビン、ランカシジン-群などが挙げられる。
【0087】
ヒトにおいて、α-デフェンシン、β-デフェンシン、及びカテリシジンを含むいくつかのクラスの公知の抗菌ペプチド(AMP)が存在する。カテリシジンは、いくつかの哺乳動物種において見出される。カテリシジンの産生は、上皮創傷又は感染チャレンジに応答して誘導され、又は特定の細菌病原体、例えば、シゲラ・ディゼンテリエ(Shigella dysenteriae)の病原性機構によって抑制される。カテリシジンの発現も、特定の慢性炎症性障害において示差的に影響される。乾癬において、カテリシジンレベルは上昇し、二次感染は稀であるが、一方、アトピー性皮膚炎において、カテリシジン発現は欠損し、細菌性又はウイルス性の重複感染が一般的である。カテリシジンの治療上の利点が実験的に証明されており、局所投与後の皮膚創傷における細菌コロニー形成の減少、及びウイルス遺伝子導入を介したカテリシジン過剰発現による肺細菌クリアランスの改善が挙げられる。本開示のホゴシジンペプチドは、カテリシジンとの相乗効果を示す。従って、いくつかの実施形態において、製剤、組成物及び方法は、ホゴシジンとカテリシジンの両方を含む。いくつかの実施形態において、局所製剤(例えば、ローション、軟膏又はエアロゾル噴霧剤)は、カテリシジンとホゴシジンペプチド(又はそれらの誘導体)の両方を含むことができる。
【0088】
カテリシジンタンパク質は、N末端の「カテリン様」又は「プロ配列」ドメイン、及び成熟AMPのC末端ドメインの2つの異なるドメインから構成される。カテリシジンのC末端ドメインは、最古の哺乳動物AMPに含まれ、強力であり、迅速であり、広範囲の殺傷活性を示した。用語「カテリン様」とは、システインプロテアーゼ阻害剤のシスタチンスーパーファミリーと類似性を有するブタ好中球から単離された12kDaのタンパク質であるカテリンとのN末端配列の類似性に由来する。
【0089】
カテリシジンは、好中球及び骨髄性骨髄細胞及び大部分の上皮源において発現され、創傷液中に存在するため、哺乳動物の皮膚において最初に発見されたAMPであった。好中球において、カテリシジンは全長の前駆体として合成され、それらが貯蔵される二次顆粒へと標的化される。刺激すると、完全長のカテリシジンタンパク質はタンパク質分解的にプロセシングされ、カテリン様ドメインからのC末端ペプチドの殺菌活性を開放する。
【0090】
ヒトカテリシジンのC末端37アミノ酸(LL-37)が特徴付けられている。LL-37は、もともとFALL39と呼ばれ、このドメインの最初の4つのN末端アミノ酸及び残基の総数(すなわち39個)について命名された。LL-37は、両親媒性アルファヘリックスを含むことが予測されるペプチドであり、システインを欠失し、そのことにより、以前に単離されたデフェンシンファミリーのヒトペプチド抗生物質であってそれぞれ3つのジスルフィド架橋を含む他の全ての抗生物質と異なっている。完全長ヒトカテリシジン(全長LL-37と呼ばれることもある)は、カテリン様前駆体タンパク質及びC末端LL-37ペプチドを含み、従って170アミノ酸(配列番号5)を含む。
【0091】
配列番号5を含むポリペプチドは、多数の異なるドメインを有する。例えば、配列番号5の約1から約29~31までに記載される配列を含む単一ドメインが存在する。単一ドメインは、典型的には、配列番号5のアミノ酸番号30の後で切断されるが、当業者は、使用される酵素、使用される発現系、及び/又はポリペプチドのタンパク質分解切断が生じる条件に応じて、切断部位が、配列番号5のアミノ酸番号30からいずれかの方向に1~3個のアミノ酸で変動し得ることを認識するであろう。別のドメインは、カテリン様ドメインと呼ばれるN末端ドメインを含む。カテリン様ドメインは、配列番号5のアミノ酸約29(例えば、29~31)からアミノ酸約128(例えば、128~131)までを含む。配列番号5のさらに別のドメインは、LL-37と呼ばれるC末端ドメインを含む。LL-37ドメインは、配列番号5のアミノ酸約128(例えば、128~134)からアミノ酸170までを含む。LL-37は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む。
MKTQRNGHSLGRWSLVLLLLGLVMPLAIIAQVLSYKEAVLRAIDGINQRSSDANLYRLLDLDPRPTMDGDPDTPKPVSFTVKETVCPRTTQQSPEDCDFKKDGLVKRCMGTVTLNQARGSFDISCDKDNKRFALLGDFFRKSKEKIGKEFKRIVQRIDDFLRNLVPRTES (配列番号5)
【0092】
カチオン性ヒト抗菌ペプチドが細菌及び真菌を死滅させる機構は、一般的に、微生物細胞膜への該ペプチドの結合を介して行われ、その結合後、膜のプロトン勾配及び完全性が失われる。
【0093】
ホゴシジンと組み合わせたビタミンD3(又はその類似体)(及びいくつかの実施態様においてはカテリシジンを併用)は、全身感染、特に肺炎、敗血症及びTB(結核)を治療するために全身投与することができる。それはまた、感染性皮膚障害を治療するために局所的に適用することができる。これは、抗生物質との併用療法において使用され、又はHIV陽性個体などの免疫抑制状態の患者を治療するために使用され得る。免疫刺激アプローチと組み合わせて、それは癌に治療的に対処することができる。
【0094】
本開示の組成物及び方法はまた、抗菌化合物又は抗菌化合物を分泌する生物の投与、又は皮膚の健康を支援する生物を含むプロバイオティック組成物の投与によって、皮膚のディスバイオシスの障害を治療することを含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、第2の活性剤(例えば、抗生物質、ビタミンD3、カテリシジンなど)を含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、プロバイオティック生物を含む。さらなる実施形態において、プロバイオティック生物は細菌である。さらなる実施形態において、細菌は、正常な皮膚のフローラの成分を含む。さらなる実施形態において、細菌はスタフィロコッカス・ホミニスの菌株を含む。他の実施形態において、細菌は表皮ブドウ球菌の菌株を含む。他の実施形態において、プロバイオティック生物は菌株の混合物を含む。いくつかの実施形態において、菌株の混合物は、スタフィロコッカス・ホミニスの複数の菌株を含む。他の実施形態において、菌株の混合物は表皮ブドウ球菌の複数の菌株を含む。他の実施形態において、菌株の混合物は、スタフィロコッカス・ホミニスの1つ以上の菌株及び表皮ブドウ球菌の1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、スタフィロコッカス・ホミニス及び/又は表皮ブドウ球菌に加えて、1つ以上の菌株を含む。いくつかのさらなる実施形態において、追加の菌株は、スタフィロコッカス属、ラクトバチルス属又はラクトコッカス属由来の1つ以上の菌株を含む。例えば、具体的な製剤は、スタフィロコッカス・ホミニス又は表皮ブドウ球菌を含んでもよく、特に、スタフィロコッカス・ホミニス株A9、スタフィロコッカス・ホミニス株C2、スタフィロコッカス・ホミニス株AMT2、スタフィロコッカス・ホミニス株AMT3、スタフィロコッカス・ホミニス株AMT4-C2、スタフィロコッカス・ホミニス株AMT4-G1、スタフィロコッカス・ホミニス株AMT4-D12、表皮ブドウ球菌株AMT1、表皮ブドウ球菌株SE-A11、表皮ブドウ球菌株AMT5-C5、及び/又は表皮ブドウ球菌株AMT5-G6を含んでもよい。このような製剤は、典型的には、対象の皮膚に適用した場合に103~106CFU/cm2の最終密度を提供するのに十分な量の細菌細胞を含む。このような製剤は、約104~約107CFU/g、あるいは10~約105CFU/g、あるいは約105~約109CFU/gの濃度を含み得る。このような製剤は、スタフィロコッカス・ホミニス及び/又は表皮ブドウ球菌の複数の菌株を含むことができ、さらに、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・アシドフィルス、及び/又は正常で健康な皮膚又は粘膜のフローラの一部を形成する当該技術分野において公知であるような他のこのような種若しくは菌株を含むことができる。いくつかの実施形態において、上記のスタフィロコッカス・ホミニス菌株は、製剤中に100%の細菌細胞を含む。いくつかのさらなる実施形態において、スタフィロコッカス・ホミニスは、所与の製剤中に90~100%、85~95%、70~80%、75~85%、60~70%、65~75%、50~60%、55~65%、40~50%、45~55%、30~40%、35~45%、20~30%、25~35%、10~20%、15~20%、1~10%、5~15%、又は1%未満の細菌細胞を含み、ここで、コロニー形成単位の残りは、表皮ブドウ球菌、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・アシドフィルス、及び/又は正常であり、健康な皮膚又は粘膜のフローラの一部を形成する、当該技術分野において公知であるような他のこのような菌株によって与えられる。いくつかの実施形態において、上記の表皮ブドウ球菌株は、製剤中に100%の細菌細胞を含む。いくつかのさらなる実施形態において、表皮ブドウ球菌は、所与の製剤中に90~100%、85~95%、70~80%、75~85%、60~70%、65~75%、50~60%、55~65%、40~50%、45~55%、30~40%、35~45%、20~30%、25~35%、10~20%、15~20%、1~10%、5~15%、又は1%未満の細菌細胞を含み、ここで、コロニー形成単位の残りは、スタフィロコッカス・ホミニス、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・アシドフィルス、及び/又は正常で健康な皮膚又は粘膜のフローラの一部を形成する当該技術分野において公知であるような他のこのような菌株によって与えられる。いくつかの実施形態において、スタフィロコッカス・ホミニス又は表皮ブドウ球菌以外の細菌は、製剤中に約50%以下の細菌細胞を含む。いくつかの実施形態において、上記細菌は、所与の製剤内に50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、又は1%未満の細菌細胞を含む。いくつかの実施形態において、スタフィロコッカス・ホミニス又は表皮ブドウ球菌以外の細菌は、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・アシドフィルス、及び/又は正常で健康な皮膚又は粘膜のフローラの一部を形成する当該技術分野において公知であるような他のこのような菌株を含み得る。いくつかの実施形態において、製剤は、上記に列挙した菌株のうち約60%のスタフィロコッカス・ホミニス及び上記に列挙した菌株のうち約40%の表皮ブドウ球菌を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、上記に列挙した菌株のうち約50%のスタフィロコッカス・ホミニス及び上記に列挙した菌株のうち約50%の表皮ブドウ球菌を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、上記に列挙した菌株のうちスタフィロコッカス・ホミニスを約40%及び上記に列挙した菌株のうち表皮ブドウ球菌を約60%含む。いくつかの実施形態において、製剤は、上記に列挙した菌株のうちスタフィロコッカス・ホミニスを約70%及び表皮ブドウ球菌を約30%含む。いくつかの実施形態において、製剤は、上記に列挙した菌株のうちスタフィロコッカス・ホミニスを約30%及び上記に列挙した菌株のうち表皮ブドウ球菌を約70%含む。いくつかの実施形態において、製剤は、上記に列挙した菌株のうちスタフィロコッカス・ホミニスを約80%及び上記に列挙した菌株のうち表皮ブドウ球菌を約20%含む。いくつかの実施形態において、製剤は、上記に列挙した菌株のうちスタフィロコッカス・ホミニスを約20%及び上記に列挙した菌株のうち表皮ブドウ球菌を約80%含む。いくつかの実施形態において、製剤は、上記に列挙した菌株のうちスタフィロコッカス・ホミニスを約90%及び上記に列挙した菌株のうち表皮ブドウ球菌を約10%含む。いくつかの実施形態において、製剤は、上記に列挙した菌株のうちスタフィロコッカス・ホミニスを約90%超及び上記に列挙した菌株のうち表皮ブドウ球菌を約10%未満で含む。いくつかの実施形態において、製剤は、上記に列挙した菌株のうちスタフィロコッカス・ホミニスを約10%未満及び上記に列挙した菌株のうち表皮ブドウ球菌を約90%超で含む。
【0096】
本明細書で使用するとき、自家移植とは、投与前に菌株が培養されるか否かにかかわらず、同対象での一部位から別の部位又は同部位への細菌株の移植を意味する。いくつかの実施形態において、対象から得られた細菌株を、培養で増殖し、次に、対象に戻して移植する。
【0097】
本明細書で使用するとき、同種異系移植とは、1つの対象から別の対象への細菌株の移植を指し、又は対象自身の身体上若しくは身体内から採取されたものではない細菌株を含む組成物の対象への投与を意味する。
【0098】
このような回収は、本明細書に記載される細菌株の1つが存在する組織を拭き取り、擦り取り、拭い取り、切り取り、及び除去することにより;場合により寒天プレートから単一コロニーを増殖及び単離し、又はさもなければ当該技術分野において公知の方法を用いることにより;場合により、当該技術分野において公知である方法に従って、液体若しくは固体培養において、単離された細菌又は未処理の拭き取ったもの、拭い取ったもの、擦り取ったもの、組織若しくは他の単離物の増殖培養物を増殖させることにより;場合により、遠心分離、ろ過、重力沈降、掻き取り、又は当該技術分野において公知である他の手段によって該増殖培養物から細菌を回収することにより;増粘剤、担体又は賦形剤を用いて細菌又は粗単離物を製剤化することにより;及び移植が必要であると決定された領域において該製剤を対象に接触させることにより、行うことができる。
【0099】
本明細書で使用するとき、プレバイオティック化合物は、多糖、加水分解物、塩、薬草抽出物、又はプロバイオティック菌株と組み合わせて使用する場合に関連するその菌株の増殖を促進するのに十分な任意の他の化合物、例えば、約40%(w/w)未満の濃度の酵母加水分解物、約10%(w/w)未満の濃度の微結晶セルロース、及び/又は約10%(w/w)未満の濃度のスクロースを含む。皮膚細菌での使用に適合させることができるプレバイオティックの他の例には、イヌリン、グルコオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラクトスクロース、ポリデキストロース、大豆オリゴ糖及びキシロオリゴ糖、並びにそれぞれがその全体において参照により本明細書に組み込まれるGibson, G.R.及びRoberfroid, M,(Eds.) Handbook of Prebiotics, CRC press (2008年); Roberfroid, M., J. Nutr. 137巻(3):830S-837頁(2007年)並びにSlavin, J. Nutrients 5巻(4):1417-1435頁(2013年)に開示されているものが挙げられる。
【0100】
いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に記載されるプロバイオティック及び/又はプレバイオティック組成物を対象に接触させることを含む。いくつかの実施形態において、このような接触は自家移植を含む。いくつかの実施形態において、このような接触は同種異系移植を含み、ここで、皮膚又は粘膜のフローラの要素は、それを必要とする第1の対象に第2の対象(ドナー)から移植される。例えば、いくつかの実施形態において、第2の対象から上記で開示された細菌株を同定及び単離し、細菌増殖を促すことが当該技術分野において公知であるような条件下で適切な培地中で増殖し、続いて、細菌細胞を回収し、回収された細胞を所定の製剤と本開示による所定の濃度で混合し、そして第1の対象の患部へその混合物を適用する。いくつかの実施形態において、このような組成物は、標準化された製剤、例えば、成分の濃度が固定され対象ごとに変化しない製剤を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、各対象のために独立して開発され、その開発は、以下に限定されないが、対象自身の皮膚又は粘膜のフローラの組成;対象の疾患状態及び治療歴;対象の状態の性質及び重症度;皮膚又は粘膜の同時感染の性質及び重症度;対象の身体内の全身性抗生物質を含む他の抗菌性化合物の存在;並びに、当業者に公知であり又は当業者に容易に明らかであるような他の基準などの基準に基づいて、行われる。
【0101】
いくつかの実施形態において、組成物は、クリーム、軟膏(ointment)、油性懸濁液又は軟膏(unguent)を含み、ここで、上記のプロバイオティック細菌は、以下に又はNakatsuji, T.ら(2016年), Nature Medicine Submitted Manuscript No. NMED-A78395A, 2016年3月29日提出に記載される保湿剤又はエマルジョン内に組み込まれる。いくつかの実施形態において、組成物は、パッチ又は湿布を含み、ここで、細菌は、適切な賦形剤と組み合わされ、布地、ゲルマトリックス又はポリマーシートに組み込まれる。局所投与用の適切な賦形剤及び担体は、当該技術分野において公知であり、増粘剤、乳化剤、脂肪酸、多糖、ポリオール、並びにポリマー及びコポリマーを含み、限定されないが、アルギン酸塩、微結晶セルロース、ポリ乳酸、乳酸グリコール酸共重合体、ペトロラタム、及び当該技術分野において公知である多数の他のものが挙げられる。
【0102】
いくつかの実施形態において、組成物は、細菌培養培地、馴化細菌培養培地、及び/又は細菌培養物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、細菌培養培地の濾液又は上清を含む。いくつかの実施形態において、組成物は凍結乾燥培養培地を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、細菌培養培地の濾液又は上清から作製された凍結乾燥された馴化培養培地を含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、対象の皮膚の健康を支援することを含む。さらなる実施形態において、この方法は、皮膚のディスバイオシス及びそれに由来する障害の治療を提供することを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、皮膚の細菌感染の治療を提供することを含む。いくつかの実施形態において、治療は、皮膚のディスバイオシス、細菌感染、乳腺炎、熱傷又は他の創傷、アトピー性皮膚炎、乾癬、又は他の慢性皮膚状態を有する対象を同定するステップ;及び治療を必要とする状態の部位に本明細書に開示されるプロバイオティック組成物を投与するステップを含む。所与の製剤(軟膏、ゲル、パッチなど)の適切な投与様式の決定は、皮膚感染を治療する当業者によって行うことができる。いくつかのさらなる実施形態において、プロバイオティック組成物は、定期的な時間間隔で再適用される。いくつかの実施形態において、プロバイオティクス組成物は3日ごとに再適用される。いくつかの実施形態において、プロバイオティック組成物は2日ごとに再適用される。いくつかの実施形態において、プロバイオティック組成物は2日ごとに再適用される。いくつかの実施形態において、プロバイオティック組成物は毎日再適用される。いくつかの実施形態において、プロバイオティック組成物は1日に2回以上再適用される。いくつかの実施形態において、プロバイオティック組成物は毎週再適用される。いくつかの実施形態では、プロバイオティック組成物は1回のみ適用される。
【0104】
いくつかの実施形態において、この方法は、メチシリン又はオキサシリン耐性の黄色ブドウ球菌を含む黄色ブドウ球菌の感染の治療を提供することを含む。いくつかのさらなる実施形態において、本方法は、黄色ブドウ球菌感染を診断するステップ;並びに本明細書に開示されるプロバイオティック及び/又はプレバイオティック組成物を感染部位に適用するステップを含み、ここで、このような組成物は、抗菌化合物の産生により、又は皮膚若しくは粘膜生物相内の資源をめぐる競争により、又は他の手段により、黄色ブドウ球菌を死滅させ又は増殖を阻害することができる。所与の製剤(軟膏、ゲル、パッチなど)の適切な投与様式の決定は、皮膚感染を治療する当業者によって行うことができる。いくつかのさらなる実施形態において、プロバイオティック組成物は、定期的な時間間隔(例えば、毎日、2日毎、3日毎、毎週など)で再適用される。他の実施形態において、同様の又は同一のステップを適用して、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染、あるいはシュードモナス属、スタフィロコッカス属、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、連鎖球菌属(Streptococcus)若しくはビブリオ属(Vibrio)の細菌又は特徴付けられていない病原体に由来する感染の治療を提供することは当業者に明らかである。いくつかの実施形態において、この方法は、未知又は特徴付けられていない病原体による感染の治療を提供することを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、複数菌感染の治療を提供することを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、このような治療を火傷又は創傷に与えることを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、慢性皮膚状態の治療を提供することを含む。いくつかの実施形態において、そのような状態は、アトピー性皮膚炎、乾癬、又は他の慢性皮膚状態である。
【0105】
以下の実施例は、本開示を説明することが意図されており本開示を限定しない。それらは、使用され得るものの典型的なものであるが、当業者に知られている他の手順を代替的に使用してもよい。
【実施例
【0106】
[実施例1]
CoNS株及び抗菌ペプチドの単離。
アトピー性皮膚炎を有する大人の患者及び年齢が一致した非アトピー対象を動員した。人口統計学的データを表1に示す。ヒト対象を伴う全ての実験は、施設によって承認されたIRBプロトコールに従って実施された。
【0107】
【表1】
【0108】
細菌の存在量の測定。生存している表面細菌及び細菌DNAの回収は、肘前窩の病変皮膚の予め測定された領域(約3×10cm)及び病変部位から少なくとも2cm離れた上腕の非病変皮膚から行った。同一の皮膚部位で非アトピー対象から同様の回収物を得た。生存細菌を回収するためのトリプシン大豆ブロス(TSB)又は細菌DNAを回収するためのTris-EDTA緩衝液で予め湿らせた綿棒で皮膚を擦った。生存細菌試料を、卵黄を含むマンニトール塩寒天上に接種して、コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス(CoNS)を識別した。総ゲノムDNAをQIAamp DNAマイクロキット(Qiagen)で抽出し、DNA存在量を種特異的又は属特異的なプライマーを用いた定量的リアルタイムPCR(qPCR)によって決定した。動員された50人の患者のうち、アトピー性皮膚炎を有する1人の対象では、生存スタフィロコッカス及びスタフィロコッカスDNAは検出されなかった。従って、データは49人のAD対象について報告されている。
【0109】
細菌DNAの定量。細菌DNAを回収するために、0.1%のTritonX-100及び0.05%のTween-20(w/v)を含有するTris-EDTA緩衝液で予め湿らせた綿棒を用いて、細菌培養に使用したものと同様の予め測定した領域を擦った。細菌細胞をプロテイナーゼK、続いて、精製アクロモペプチダーゼ(Wako Chemical)及びReady-Lyse(登録商標)(Epicenter Inc.)によって溶解した。総ゲノムDNAをQIAamp DNAマイクロキット(Qiagen)で精製し、50μLの溶出緩衝液で溶出した。細菌DNAの存在量は、種特異的又は属特異的なプライマーを用いた定量的リアルタイムPCR(qPCR)によって決定した(表2)。スタフィロコッカス属種(Staphylococcus spp.)DNAの相対CFU(rCFU)を決定するために、表皮ブドウ球菌(ATCC12228)の既知CFUに由来する標準から抽出したゲノムDNAを用いて標準曲線を作成した。すべてのプライマー対の特異性を融解曲線分析及び標準曲線との比較によって確認した。
【0110】
【表2】
【0111】
抗菌活性についてのスクリーニング。各皮膚部位からのCoNS単離物の最大84個の個々のコロニーを無作為に採取し、TSBを含む96ウェルクラスターチューブに移した。また、各プレートは、陰性対照としての表皮ブドウ球菌の非抗菌性株(ATCC1457)、陽性対照としてのスタフィロコッカス・ホミニスの既知の抗菌性株(下記参照)、及び細菌を含まないブランクウェルを含んだ。CoNSは、振とうしながら37℃で一晩培養された。増殖をOD600で評価した。細菌を遠心分離により除去した後、0.22μmメンブレンで濾過滅菌した。各コロニーから放出された抗菌活性は、黄色ブドウ球菌(ATCC35556)の1×104コロニー形成単位(CFU)と混合することによって評価された。抗菌性株は、黄色ブドウ球菌の22時間後の増殖を、陰性対照に見られる増殖の50%未満(I50)に抑制した株として定義された。不十分なCoNSコロニーは、動員した対象の一部から増殖した。従って、29人の非アトピー対象、及びアトピー対象の41個の非病変部位と40個の病変部位についてのデータが報告されている。全てのCoNS分離株は、種同定のために凍結保存された。全長16S rRNA遺伝子をユニバーサル16Sプライマーである27-F及び1525-Rを用いて48個の代表的なコロニーから増幅した。アンプリコンをサンガー法により両末端から配列決定した。
【0112】
スタフィロコッカス・ホミニスによって産生されたAMPの精製。健常な対象から単離された代表的な抗菌性スタフィロコッカス・ホミニス菌株由来の滅菌馴化培地を用いて、アトピー上に少量で存在する、正常な皮膚上の抗菌活性を有する分子をさらに同定した。活性物を硫酸アンモニウム(70%飽和)により沈殿させ、H2Oに溶解し、Sep-Pakカートリッジ(Waters Co)に適用した。活性画分をH2O中の30%アセトニトリルで溶出し、HiTrap(登録商標)SP(GE Healthcare Life Sciences)分離に供し、活性物を125mM NaClで溶出した。第三段階のHPLC精製は、0.1%(v/v)TFA中の5%~50%のアセトニトリルの線形勾配で0.8mL/分にてCapCel Pak C8(5μm、300Å、4.6×250mm)(Shiseido Co.)を用いて行われた。
【0113】
スタフィロコッカス・ホミニスによって産生されたAMPの同定。非アトピー対象から単離された代表的な抗菌性スタフィロコッカス・ホミニス菌株の滅菌馴化培地から抗菌活性物を精製した。精製された活性分子の二次構造は、MALDI-TOF/TOF、エドマン末端配列決定、及びゲノム配列決定によって決定された。
【0114】
質量分析。スタフィロコッカス・ホミニス由来のHPLC精製されたAMPのマススペクトルは、フレックスコントロール(flexcontrol)ソフトウェア(Bruker Daltonics)によって制御されたMALDI-TOF/TOF Bruker Autoflex(商標)Speed機器(Bruker Daltonics)を使用して記録された。50%アセトニトリル(ACN)及び0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)に溶解したマトリックス(CHCA)10mg/mL(Sigma-Aldrich)としてのシアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸を用いて、陽イオンリフレクトロンモードで質量分析を行った。フルスキャンマススペクトルは、質量範囲1000~4000m/zの陽イオンリフレクトロンモードで得られた。各マススペクトルは、レーザー強度が全レーザー強度の約65%に設定され、検出器ゲインが8×4GS/s(Bruker Flex Controlソフトウェア内で選択される)にて強化された750回の平均レーザーショットの結果である。手動で選択したイオンm/z 3547のMALDI-MS/MSスペクトルは、ウィンドウ範囲が5Daであり、TOF/TOF衝突誘起解離を使用して取得された。各MS/MSスペクトルは、レーザー強度がソフトウェア内で選択された約60%に設定され、検出器ゲインは10×4GS/sにて強化された1000個の平均化されたレーザーショットの結果である。得られたマススペクトルを、フレックス分析ソフトウェア(Bruker Daltonics)を用いて分析した。スペクトルをPepMix内部標準溶液に対して較正した。
【0115】
N末端タンパク質配列決定。精製されたホゴシジン-α(画分30、図7A)のN末端アミノ酸配列は、Procise(登録商標)494HTタンパク質配列システム(Applied Biosystems)での15サイクルのエドマン分解によって分析された。予想される成熟形態のホゴシジン-αを図5Aに示す。
【0116】
MALDI-TOF/TOF分析によるタンパク質配列決定。スタフィロコッカス・ホミニス由来のホゴシジン-βのN末端領域(画分32、図8)は修飾アミノ酸を含むため、エドマン分解によって配列を得ることができなかった。従って、このAMPの全タンパク質配列は、ゲノム誘導MALDI-TOF/TOF分析に基づいて得られた。スタフィロコッカス・ホミニスのヌクレオチド配列の分析は、二次代謝産物生合成遺伝子クラスターを同定するために、抗生物質及び二次代謝産物分析シェル-AntiSMASHプラットフォームで実施された。AntiSMASHの結果は、遺伝子座2050~2250に潜在的な候補を有するランチペプチドについて1つの遺伝子クラスターを提供した(図9A)。合成及び修飾に関与する遺伝子のNCBI BlastP分析は、クラス2ランチペプチドと高い相同性を示す。配列ATPTITTSSATCGGIIVAASAAQCPTLACSSRCGKRKK(配列番号4のアミノ酸[aa]29~66)を有するコアペプチドは、タイプ2ランチビオティックに共通するGG切断部位でリーダーペプチドから切断された。ゲノムマイニングとMS/MSフラグメンテーションを組み合わせることにより、成熟形態のホゴシジン-βが予測された(図5A)。
【0117】
ゲノム配列決定。スタフィロコッカス・ホミニス由来のAMPのタンパク質配列は、既存のゲノムデータベースに見出されたいずれの分子とも一致しなかったため、スタフィロコッカス・ホミニスの抗菌性株の全ゲノム配列決定が行われた。ゲノムDNAをUltraClean(登録商標)微生物DNA単離キット(MO Bio)を用いて精製した。全ゲノムDNAシークエンシングライブラリーは、供給業者のプロトコールに従ってNextera-XT DNA試料調製キット(Illumina)を用いて構築された。最終ライブラリーは、Illumina MiSeq(商標)にて対の末端配列決定(300×300)によって配列決定された。配列決定された読み取りは、長さ21、33、55、77、及び127のkマーであるSPAdes 2.5.1を使用して新たに組み立てられ、「注意深く」するためのフラグがついていた。生成された足場の全てについて、translate Whole Genome Multi Chromosome.pl([http://]proteomics.ucsd.edu/Downloads/)を用いて6フレームの翻訳を行った。次に、質量分析によって同定されたペプチド断片との一致についてこの出力に問合せ(クエリー)が行われた。
【0118】
抗菌アッセイ。黄色ブドウ球菌(ATCC35556)株を用いて放射拡散アッセイを行い、精製画分の抗菌活性を試験した。簡単に述べると、融解したTSB寒天(10mL)を黄色ブドウ球菌(1×106CFU)と混合し、10cmのペトリ皿に注いだ。2~4μLの試験試料を寒天プレートに打ち抜いた小さなウェルに適用した。プレートを37℃で一晩インキュベートして、細菌の目に見える増殖を可能にした。抗菌活性は、ウェル周囲の透明帯(細菌増殖なし)によって示された。ホゴシジンの抗菌活性は、黄色ブドウ球菌(1×105CFU/mL)を、PBS中の半分濃度Muller-Hintonブロス(MHB)への精製ホゴシジンの2倍段階希釈液とともに37℃で24時間インキュベートすることによって評価された。インキュベーション後、生存細菌の数は、TSB寒天プレート上に細菌の10倍段階希釈物を広げた後にCFUをカウントすることによって測定された。MBCは、24時間のインキュベーション後に生存細菌の3log減少(99.9%)として決定された。
【0119】
統計分析。対応のあるt検定を用いて、アトピー対象内で病変試料を非病変試料と比較し、独立したt検定を用いて非アトピー試料をアトピー試料と比較した。抗菌性CoNSの頻度と、生存しているスタフィロコッカスのスタフィロコッカスDNAに対する経時的な比率との縦方向混合モデルもまた適合した。各モデルは、病変タイプ、来院、及びそれらの相互作用期間を固定効果として含み、一方、複数の時点で同じ対象から得られた試料間の相関を説明するために複合対称構造を使用した。抗菌性CoNSの頻度は、二峰性分布を説明するために、累積ロジットリンク及び分類されたパーセンテージ(≦20、21~79、≧80)の多項分布を使用した。統計分析は、SAS(バージョン9.3)ソフトウェアを用いて行った。
【0120】
スタフィロコッカスの生存がアトピー性皮膚炎において増加する。培養可能な/生存しているスタフィロコッカス属種の存在量と培養不能な/死滅のスタフィロコッカス属種の存在量の間の関係を評価するために、手動コロニーカウントと属特異的な16SリボソームDNAのqPCRの両方によって細菌密度を測定した。以前の報告と一致して、アトピー性皮膚炎の患者の前腕における病変皮膚由来の総スタフィロコッカス属種及び黄色ブドウ球菌は、これらの患者又は非アトピー対象の非病変皮膚由来のものよりも多く培養することができた(図1A及び1B)。DNA存在量の測定は同様の傾向を示した(図1C及び6)。しかしながら、これら2つの独立した技術の結果は、アトピー性病変皮膚と非アトピー性皮膚の間で有意に異なっていた。アトピー性皮膚炎の対象の病変皮膚において、培養及びDNAベースの結果は類似していた(図1D)。対照的に、非アトピー性皮膚において、DNA存在量に基づく培養CFUの相対的CFUに対する比率は約0.1であり、これは、非アトピー対象の皮膚上の細菌の生存率が低いことを示唆している。
【0121】
皮膚微生物叢の抗菌活性。30人の非アトピー対象(2029コロニー)及び50人のアトピー対象(5695コロニー)由来の生存CoNSを単離して、黄色ブドウ球菌の生存にそれらが及ぼす影響を特徴付けた。非アトピー対象から単離された大部分のCoNSクローン(75.26±35.49%)は、黄色ブドウ球菌の増殖を阻害することが観察された(図2A)。対照的に、アトピー性皮膚に見られるCoNSのごく一部が、この活性を有した[22.83±32.64%(非病変)及び15.76±25.92%(病変)]。各集団から単離されたCoNSの抗菌機能のこの差異は、2週間の反復拭き取りの後に見られるように、経時的に安定して再現性があった(図2B)。培養可能なスタフィロコッカスの総スタフィロコッカスDNAに対する比率増加はまた、このコホートにおいて2週間にわたって安定していた(図2C)。これらのデータは、アトピー性皮膚炎を有する患者の皮膚はCoNS細菌の増殖を支持するが、非アトピー性皮膚において見られるものとは抗菌機能が異なる菌株の生存を可能にすることを示す。
【0122】
図1に示されるように、非アトピー対象の3%のみが黄色ブドウ球菌培養陽性(>1 CFU/cm2)であり、一方、アトピー対象の57%は黄色ブドウ球菌について培養陽性であった。CoNSから検出される抗菌活性が黄色ブドウ球菌の生存と関連しているかどうかを決定するために、生存黄色ブドウ球菌の測定値に対する抗菌性CoNSの頻度を比較した(図3A)。驚くべきことに、生存している黄色ブドウ球菌を有する全ての患者は、抗菌性CoNSの頻度が低かった。さらに、この頻度は、黄色ブドウ球菌陰性群よりも、黄色ブドウ球菌培養陽性群(>1 CFU/cm2)において低かった(図3B)。これらのデータは、抗菌性CoNSが黄色ブドウ球菌のコロニー形成に対して防御性であることを示す。
【0123】
皮膚上の抗菌性細菌種の同定。抗菌活性を有するCoNS種をさらに同定するため、全長の16S rRNA遺伝子配列決定用に細菌コロニーのランダムなサブセットを選択した。非アトピー性皮膚において、抗菌性CoNSの優勢種は、表皮ブドウ球菌又はスタフィロコッカス・ホミニスであった(図4A)。アトピー対象において、抗菌性CoNSメンバーには、スタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)、スタフィロコッカス・ワーネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)、表皮ブドウ球菌及びスタフィロコッカス・ホミニスが含まれた。しかしながら、ほとんどの対象において、抗菌機能及び非抗菌機能を有することが見出されたグループ内で同様の種が同定された(図4B)。これらの観察は、抗菌活性が種レベルで予測できないことを示している。機能的に不活性なCoNS株の過剰増殖が、アトピー性皮膚炎の患者において生じると考えられる。
【0124】
微生物叢によって産生される抗菌活性を有するペプチド。CoNS株において検出された抗菌活性を何が担っているのかを決定するために、遺伝的及び生化学的アプローチを用いた。バクテリオシンは、いくつかのCoNS種によって産生される一群のAMPである。しかしながら、公知のバクテリオシンepiA、pepA、eciA及びelkAをコードするDNAは、PCRによって非アトピー性皮膚(n=14)において検出されなかった(表2、プライマー配列)。従って、非アトピー対象から単離された抗菌性スタフィロコッカス・ホミニスの代表的コロニーからの活性源を精製及び同定するための実験を行った。逆相クロマトグラフィーは、抗菌活性に関連する2つの独立したピーク(3152.2及び3547.7Da)を示した(図7)。3152.2DaペプチドのN末端アミノ酸配列決定はKCSWWNAAであった。3547.7Daペプチドの全配列は、ゲノム誘導MALDI-TOF/TOF分析によって得られた(図8)。このスタフィロコッカス・ホミニス菌株のゲノム配列に対する質量及びアミノ酸配列のアラインメントは、これらの新規なAMPがlanM、lanC及びlanTホモログの遺伝子クラスター内にコードされ(図9)、ランチビオティックとしての同一性と一致することを示した。これらのAMPは以前に知られていなかったため、それらは、「保護」を意味する日本語の「ホゴ」からホゴシジン-α(3152.2Da)及び-β(3547.7Da)と命名された。これらの新たに記載されたAMPは、14人の非アトピー個体の50%において、PCRによって容易に検出可能であった。成熟ホゴシジン-α及びホゴシジン-βの予測された二次構造を図5Aに示す。黄色ブドウ球菌に対する精製ホゴシジン-α及び-βの最小殺菌濃度(>99.9%死滅)は、それぞれ0.625μM及び1.25μMであり(図5B)、活性はヒト皮膚上で産生される従来のAMPよりも強力であった。重要なことに、各ホゴシジンペプチドとヒト皮膚カテリシジンAMP LL-37の同時インキュベーションは、黄色ブドウ球菌に対して強力な相乗的抗菌活性を示し(図5B)、これは、微生物叢由来のAMPが宿主の先天性免疫防御能を増強して黄色ブドウ球菌に抵抗することを示す。
【0125】
[実施例2]
細菌株のFAME分析。細菌細胞抽出物の鹸化及びメチル化された試料中に存在する脂肪酸メチルエステルの相対存在量によって表すことができる全細菌細胞(主に細胞膜)の脂質組成は、各菌株にきわめてほぼ固有であるため、同定された菌株を脂肪酸メチルエステル(FAME)分析に供した。細菌株を標準的な技術に従って培養し、回収した。細胞を鹸化及びメチル化に供し、その後、ガスクロマトグラフィー用の移動相溶媒中に抽出した。試料をロードし、機器製造者の指示書に従って実施した。得られたクロマトグラムを図11~19に示す。
【0126】
[実施例3]
共生細菌は黄色ブドウ球菌によるコロニー形成から皮膚を保護する。AMPを産生する共生CoNSと、黄色ブドウ球菌によるコロニー形成との間の関係を明らかにし、これらの菌株によって産生される活性ペプチドを同定した後、これらの細菌の存在が黄色ブドウ球菌によるコロニー形成を減少させるかどうかについて試験する実験を行った。臨床的CoNS単離物は、所定量の黄色ブドウ球菌が最初に適用された、消毒したブタ皮膚の表面に適用された。黄色ブドウ球菌の生存率の有意な低下が、正常ヒト皮膚上の細菌密度の推定値(1×105CFU/cm2)と一致する密度でスタフィロコッカス・ホミニスA9の単回適用後に見られた(図20A)。適用前に死滅させ、洗われたスタフィロコッカス・ホミニスA9の適用、又は培養において抗菌活性を示さなかった他のスタフィロコッカス・ホミニス菌株の使用は、黄色ブドウ球菌の生存に影響を及ぼさなかった。同様に、所定量の黄色ブドウ球菌が適用されたマウスの背中への活性スタフィロコッカス・ホミニスの単回適用は、皮膚上の黄色ブドウ球菌の生存を減少させた(図20B)。対照的に、同様の密度での不活性株の適用は黄色ブドウ球菌を阻害しなかった。
【0127】
最後に、ヒトにおいて黄色ブドウ球菌を阻害する、機能的にスクリーニングされ単離された共生細菌の能力を直接試験するために、ADを有する対象の皮膚へのこれらの細菌の適用の影響を試験する実験を行った。先に示したように、抗菌活性を有する菌株は、これらの対象のCoNS共同体全体において稀であったが、十分なコロニーがスクリーニングされれば同定することができた。黄色ブドウ球菌培養陽性であった5人のAD患者を動員して、この研究に参加させた。抗菌活性を有するCoNSクローンを同定し、対象への計画された再適用のために増やした(自家移植)。選択された各クローンを配列決定し、ランチビオティック関連遺伝子のクラスターを5つの表皮ブドウ球菌又はスタフィロコッカス・ホミニス菌株において同定し、コリシンV遺伝子を表皮ブドウ球菌株2種及びスタフィロコッカス・ホミニス菌株1種に見出した(図21~23)。二重盲検法で、ビヒクルクリーム単独、又はクリームに製剤化された細菌を各腕の皮膚に1回適用し、次に、24時間後に黄色ブドウ球菌を測定した。選択された菌株は、1×105 CFU/cm2の総最終濃度まで適用され、これは、ヒト正常皮膚上の細菌の存在量の先の評価と同様の密度であった。これらの機能的に規定された自家由来のCoNS株(複数可)の単回適用は、基準と比較して、24時間以内に黄色ブドウ球菌CFUを有意に減少させた(図20E)。
【0128】
[実施例4]
ex vivoでのブタ皮膚及びマウスへの抗菌性CoNSの移植。凍結ブタ皮膚シートをLoretta Tomlin Animal Technologies(Livermore、CA)から入手し、3%クロロキシレノールを用いて外科用ブラシで消毒した。皮膚シートを2.5cm×2.5cmに切断し、滅菌PBSで20回超すすぎ、クロロキシレノール残留物を除去した。細菌適用の少なくとも24時間前に、ランダムに選択されたC57BL6雌性6週齢マウスの背中の皮膚を剃毛し、脱毛クリームで処理し、水ですすいだ。剃毛した皮膚をアルコールスワブで2回洗浄して、もともとコロニー形成していた細菌を除去した。生存動物の実験を含むすべての実験は、実験動物のケア及び使用ガイドラインの承認に従った。
【0129】
黄色ブドウ球菌(ATCC35556)(1×105 CFU/cm2)をブタ皮膚(2.5×2.5cm)又はマウスの背側皮膚(2×2cm)上に経皮的にチャレンジした。Sh-ランチビオティック(ホゴシジン)を産生する、非AD対象から単離されたスタフィロコッカス・ホミニスA9株、又は培養中に抗菌活性を生じなかった、AD対象の病変皮膚から単離されたスタフィロコッカス・ホミニス菌株は、1×107CFU/gで、細菌の生存率に影響を及ぼさないことが確認された皮膚保湿剤中に製剤化された。その後、抗黄色ブドウ球菌活性を有するスタフィロコッカス・ホミニスA9株、UV殺菌されたスタフィロコッカス・ホミニスA9、スタフィロコッカス・ホミニスの不活性株C4、C5及びC6のいずれか(1×105 CFU/10μL)、又はビヒクルを、次いでブタ皮膚又はマウスの背側皮膚の表面に20時間適用した(図20A及び20B)。精製ランチビオティック(0.5nmol)、スタフィロコッカス・ホミニスA9の馴化培地(50μL)を、消毒したブタ皮膚の表面に適用した。ブタ皮膚を6ウェルプレート中で30℃にてインキュベートした。上記のように皮膚表面から、TSBで予め湿らせたCatch-All Swabを用いて生存細菌を回収した。細菌を1mLのTSB中にボルテックススワブヘッドによって激しく懸濁させた。細菌懸濁液の10倍段階希釈物を、黄色ブドウ球菌の選択的カウントのための卵黄亜テルル酸含有Baird-Parker寒天上に広げた。黄色ブドウ球菌(ハローを有する大きな黒色コロニー)は、選択的寒天プレート上でスタフィロコッカス・ホミニス(ハローを有しない小さな灰色コロニー)と区別された。
【0130】
[実施例5]
自家微生物叢移植。AD患者への自家微生物叢移植(AMT)のアプローチは、米国食品医薬品局(FDA)によって正式に承認されており、このプロトコールは治験新薬申請(IND)として申請されている(UCSD承認番号15786)。スクリーニングの来院時に、両肘前窩の病変部位に対して黄色ブドウ球菌保菌者であるAD患者をスクリーニングした。一方、皮膚の細菌を、AD患者の上腕の非病変皮膚から拭き取ることによって取得し、黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を生じさせるCoNS株をスクリーニングした。抗菌性CoNS分離株の種は、全長16S rRNA遺伝子のサンガー配列決定によって同定された。患者が移植療法を受けた2回目の来院まで、CoNS分離株のグリセロールストックを-80℃で保存した。各CoNS株をTSB中で一晩個別に増やした。各CoNS株は、細菌の生存率に影響を与えないことが確認された皮膚保湿剤中に1×107 CFU/gで製剤化された。抗菌活性を有する表皮ブドウ球菌又はスタフィロコッカス・ホミニスの単一の菌株のみが3人の患者から単離された。これらの場合において、CoNSの単一株が製剤化された。3つ及び2つの抗菌性スタフィロコッカス・ホミニス又は表皮ブドウ球菌の菌株が2人のAD患者から単離された(図20D)。これらの場合において、各CoNSの等しいCFUが107 CFU/gの総濃度で製剤化された。2回目の来院で、関連する領域を測定し、両前腕の病変部位上に生存している黄色ブドウ球菌の基準CFUを上記のように定量した。一方の腕を10mg/cm2でAMT製剤を用いて処置し、1×105 CFU/cm2のCoNSを得た。他方の腕は、同量の保湿剤で処置しただけであった。全ての処置を二重盲検法で行い、全ての結果を分析した後には盲検化しなかった。対象は、入浴、シャワー、運動、又は腕へのいかなる外用製品の適用も避け、次回の来院まで他方の腕に適用されたCoNSの交差汚染を避けるために、清潔な長袖のシャツを身に着けた。3回目の来院時に、関与領域における黄色ブドウ球菌CFUを測定した。ビヒクル腕とAMT腕の間の黄色ブドウ球菌の生存率の差異は、[AMT(χ時間)-ビヒクル(χ時間)]/AMT(基準)として計算され、黄色ブドウ球菌CFU Δ%(χ=0時間又は24時間)を得た(図20E)。
【0131】
統計分析。全ての実験について、少なくとも3つ以上の生物学的複製が使用され、これらは図の凡例に示される。全てのマウス実験について、処置群あたり少なくとも6匹のマウスを使用した。従って、報告された差異について、使用された試料サイズは、信頼性について十分な効力を与えた。AD対象内で病変試料を非病変試料を比較するために対応のあるt検定(両側検定)を使用し、非AD試料とAD試料を比較するために独立したt検定(両側検定)を使用した。Sh-抗生物質-α(%)を有するCoNSなどの非正規分布変数に関して、AD試料に対する非AD試料についてのWilcoxon-Mann-Whitney検定、及びAD対象内での非病変試料に対する病変試料についてのWilcoxon符号順位検定のようなノンパラメトリックアプローチを使用した。抗菌性CoNSの頻度と、生存スタフィロコッカスのスタフィロコッカスDNAに対する経時的な比率との縦方向混合モデルもまた適合した。各モデルは、病変タイプ、来院、及びそれらの相互作用期間を固定効果として含み、一方、複数の時点で同じ対象から得られた試料間の相関を説明するために複合対称構造を使用した。抗菌性CoNSの頻度は、二峰性分布を説明するために、累積ロジットリンク及び分類されたパーセンテージ(≦20、21~79、≧80)の多項分布を使用した。統計分析は、SAS(バージョン9.3)ソフトウェア及びRソフトウェア(バージョン3.1.1)を用いて行った。
【0132】
[実施例6]
同種異系移植。SH-A9、SH-C2、SE-A11、AMT1、AMT2、AMT3、AMT4-C2、AMT4-G1、AMT4-D12、AMT5-C5、AMT5-G6及び/又はSE-MO34菌株の105 CFU/gは、細菌生存率に影響を与えないことが確認されている皮膚保湿剤中に製剤化される。治療対象は、アトピー性皮膚炎及び/又は活性な黄色ブドウ球菌感染の存在に基づいて同定される。対象は、3日間、入浴、シャワー、運動、又は患部へのいかなる外用製品の適用も避けるように指示される。適合した患者は、7日間後、処置領域における黄色ブドウ球菌レベルの有意な減少を示す(回収可能な黄色ブドウ球菌コロニーカウントにおいて3log又はそれ以上の減少)。適合した患者は、初期治療後、少なくとも14日間継続している黄色ブドウ球菌感染及び/又はアトピー性皮膚炎の症状の臨床的に観察可能な減少を示す。
【0133】
[実施例6]
表皮ブドウ球菌によって産生されたAMPの精製。代表的な抗菌性表皮ブドウ球菌A11株由来の滅菌馴化培地を用いて、正常な皮膚上の抗菌活性を有する分子をさらに同定し、これはアトピーにおいて存在量が低かった。活性物を硫酸アンモニウム(70%飽和)により沈殿させ、H2Oに溶解し、Sep-Pakカートリッジ(Waters Co)に適用した。活性画分をH2O中の40%アセトニトリルで溶出し、HiTrap(登録商標)SP(GE Healthcare Life Sciences)分離に供し、活性物を500mM NaClで溶出した。第三段階のHPLC精製は、0.1%(v/v)TFA中の5%~50%のアセトニトリルの線形勾配で0.8mL/分にてCapCel Pak C8(5μm、300Å、4.6×250mm)(Shiseido Co.)を用いて行われた。
【0134】
表皮ブドウ球菌によって産生されたAMPの同定。非アトピー対象から単離された代表的な抗菌性表皮ブドウ球菌A11株の滅菌馴化培地から抗菌活性物を精製した。精製された活性分子の特徴は、MALDI-TOF/TOF及びエドマン末端配列決定によって決定された。
【0135】
質量分析。表皮ブドウ球菌A11由来のHPLC精製したAMPのマススペクトルは、フレックスコントロールソフトウェア(Bruker Daltonics)によって制御されたMALDI-TOF/TOF Bruker Autoflex(商標)Speed機器(Bruker Daltonics)を使用して記録された。50%アセトニトリル(ACN)及び0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)に溶解したマトリックス(CHCA)10mg/mL(Sigma-Aldrich)としてのシアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸を用いて、陽イオンリフレクトロンモードで質量分析を行った。フルスキャンマススペクトルは、質量範囲1000~6000m/zの陽イオンリフレクトロンモードで得られた。各マススペクトルは、レーザー強度が全レーザー強度の約65%に設定され、検出器ゲインが8×4GS/s(Bruker Flex Controlソフトウェア内で選択される)で強化された750回の平均レーザーショットの結果である。得られたマススペクトルを、フレックス分析ソフトウェア(Bruker Daltonics)を用いて分析した。スペクトルをPepMix内部標準溶液に対して較正した。
【0136】
N末端タンパク質配列決定。精製物(分画33~34、図25A)のN末端アミノ酸配列は、Procise(登録商標)494HTタンパク質配列システム(Applied Biosystems)での15サイクルのエドマン分解によって分析された。N末端配列は、配列番号55で与えられる。
【0137】
本発明の多数の実施形態について説明してきた。それにもかかわらず、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ得ることが理解される。従って、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にある。
本開示は下記の実施形態を包含する。
[1] 1種以上のプロバイオティック細菌株の局所濃厚製剤、並びに場合によりプレバイオティック化合物、保護剤、湿潤剤、皮膚軟化剤、研磨剤、塩及び/又は界面活性剤を含む組成物であって、
前記1種以上のプロバイオティック細菌株は、スタフィロコッカス属の1種以上の細菌株を含み;及び
前記組成物は、皮膚、頭皮、又は粘膜のディスバイオシスの障害の局所治療用に製剤化されている、組成物。
[2] 前記1種以上のプロバイオティック細菌株が、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、又は表皮ブドウ球菌とスタフィロコッカス・ホミニスの組み合わせを含む、実施形態1に記載の組成物。
[3] 前記1種以上のプロバイオティック細菌株が、表皮ブドウ球菌株MO34、MO38、A11、AMT1、AMT5-C5及び/又はAMT5-G6を含む、実施形態2に記載の組成物。
[4] 前記1種以上のプロバイオティック細菌株が、スタフィロコッカス・ホミニス菌株A9、C2、AMT2、AMT3、AMT4-C2、AMT4-G1及び/又はAMT4-D12を含む、実施形態2に記載の組成物。
[5] 各プロバイオティック細菌株が、図11図12図13図14図15図16図17図18、又は図19のいずれかに示されるものの1つに対応する脂肪酸メチルエステルプロファイルを示す、実施形態2に記載の組成物。
[6] 前記1種以上のプロバイオティック細菌株が、配列番号2、4、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54及び55、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される配列を有するペプチドを産生し、このようなペプチドは、場合により翻訳後修飾されている、実施形態2に記載の組成物。
[7] 前記1種以上のプロバイオティック細菌株が生存形態で提供される、実施形態1に記載の組成物。
[8] 前記1種以上のプロバイオティック細菌株が、凍結乾燥形態又は噴霧乾燥形態で提供される、実施形態1に記載の組成物。
[9] 前記プロバイオティック細菌を生存形態に再構成することができる、実施形態8に記載の組成物。
[10] 有効量の実施形態1~9のいずれかに記載の組成物をそれを必要とする対象に対し皮膚又は粘膜に適用することによって、ヒト若しくは他の哺乳動物における皮膚又は粘膜感染、アトピー性皮膚炎、乾癬、乳腺炎、座瘡、又は皮膚ディスバイオシスに関連する他の障害を治療する方法。
[11] 前記組成物が局所的に適用される、実施形態10に記載の方法。
[12] 前記組成物が、クリーム、軟膏、噴霧剤、散剤、油剤、濃厚製剤又は湿布剤として製剤化されている、実施形態10に記載の方法。
[13] ホゴシジンペプチド、誘導体若しくはバリアント、SH-ランチビオティックペプチド、SH-抗菌剤、SE-ランチビオティックペプチド、及び/又はSE抗菌剤のうちの1つ以上を含み;1つ以上の増粘剤、溶媒、乳化剤、又は薬学的に許容される担体若しくは賦形剤をさらに含む組成物。
[14] カテリシジンペプチド、誘導体又はバリアントをさらに含む、実施形態13に記載の組成物。
[15] 前記ペプチドが、1つ以上のD-アミノ酸又は非天然アミノ酸を含む、実施形態13又は14に記載の組成物。
[16] 前記ホゴシジンペプチド、SH-ランチビオティックペプチド、SH-抗菌剤、SE-ランチビオティックペプチド、又はSE抗菌剤が、インサイチュで、スタフィロコッカス・ホミニス菌株A9、スタフィロコッカス・ホミニス菌株C2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT3、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-C2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-G1、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-D12、表皮ブドウ球菌株AMT1、表皮ブドウ球菌株SE-A11、表皮ブドウ球菌株AMT5-C5、表皮ブドウ球菌株AMT5-G6及び表皮ブドウ球菌株MO34のうちの1つ以上によって産生される、実施形態13に記載の組成物。
[17] 前記ペプチドが局所投与用に製剤化されている、実施形態13、14又は15に記載の組成物。
[18] 前記製剤が、ローション、軟膏クリーム、粉末、軟膏、油剤又は噴霧剤を含む、実施形態17に記載の組成物。
[19] 前記ホゴシジンペプチド、誘導体又はバリアントが、配列番号2又は配列番号4から選択される配列を含む、実施形態13に記載の組成物。
[20] ホゴシジンペプチド、誘導体又はバリアント、SH-ランチビオティックペプチド、SH-抗菌剤、SE-ランチビオティックペプチド、SE抗菌剤、及びカテリシジンペプチド、誘導体又はバリアントのうちの1つ以上が、スタフィロコッカス・ホミニス菌株A9、スタフィロコッカス・ホミニス菌株C2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT3、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-C2、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-G1、スタフィロコッカス・ホミニス菌株AMT4-D12、表皮ブドウ球菌株AMT1、表皮ブドウ球菌株SE-A11、表皮ブドウ球菌株AMT5-C5、表皮ブドウ球菌株AMT5-G6及び表皮ブドウ球菌株MO34の抽出物又は溶解物として提供される、実施形態13に記載の組成物。
[21] 対象をホゴシジンペプチド、誘導体又はバリアント、SH-ランチビオティックペプチド、SH-抗菌剤、SE-ランチビオティックペプチド、及び場合によりカテリシジンペプチド、誘導体又はバリアントのうちの1つ以上を含む有効量の組成物と接触させることを含む、対象における皮膚若しくは粘膜感染又はアトピー性皮膚炎を治療するための方法。
[22] 前記接触が、局所投与による、又は場合により、前記対象をSH-ランチビオティック又はバクテリオシン産生スタフィロコッカス・ホミニス菌株A9、C2、AMT2、AMT3、AMT4-C2、AMT4-G1、AMT4-D12及び表皮ブドウ球菌株AMT5-G6及びMO34のうち1つ以上と接触させることによるものである、実施形態21に記載の方法。
[23] 配列番号2若しくは4と少なくとも95%同一であるポリペプチド、又は抗菌活性を有するその生物学的に活性な断片をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
[24] 前記ベクターが、配列番号2又は4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、実施形態23に記載の組換えベクター。
[25] 前記ベクターが、配列番号2のアミノ酸約32~アミノ酸約61のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、実施形態23に記載の組換えベクター。
[26] 前記ベクターが、配列番号4のアミノ酸約29~アミノ酸約66のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、実施形態23に記載の組換えベクター。
[27] 前記ベクターが、配列番号1又は3と少なくとも95%同一であり、それぞれ配列番号2又は4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、実施形態23に記載の組換えベクター。
[28] 前記ベクターが配列番号1又は3の断片を含む、実施形態25又は26に記載の組換えベクター。
[29] 実施形態23~28のいずれかに記載の組換えベクターを発現するように遺伝子操作された宿主細胞。
[30] 前記宿主細胞が、非病原性弱毒化宿主細胞である、実施形態29に記載の宿主細胞。
[31] 実施形態29に記載の宿主細胞によって産生された組換えポリペプチド。
[32] 実施形態29に記載の宿主細胞を含む組成物。
[33] 実施形態30に記載の宿主細胞を含む組成物。
[34] 実施形態31に記載のポリペプチドを含む組成物。
図1A-B】
図1C-D】
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19
図20A-B】
図20C-D】
図20E
図21A
図21B-C】
図22A
図22B
図23
図24-1】
図24-2】
図24-3】
図25A
図25B
【配列表】
0007348255000001.app