IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プラッサー ウント トイラー エクスポート フォン バーンバウマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7348277軌道を安定化させるための方法および装置
<>
  • 特許-軌道を安定化させるための方法および装置 図1
  • 特許-軌道を安定化させるための方法および装置 図2
  • 特許-軌道を安定化させるための方法および装置 図3
  • 特許-軌道を安定化させるための方法および装置 図4
  • 特許-軌道を安定化させるための方法および装置 図5
  • 特許-軌道を安定化させるための方法および装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】軌道を安定化させるための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 27/20 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
E01B27/20
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021522377
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019075961
(87)【国際公開番号】W WO2020083599
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】A331/2018
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】514318345
【氏名又は名称】プラッサー ウント トイラー エクスポート フォン バーンバウマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Plasser & Theurer, Export von Bahnbaumaschinen, Gesellschaft m.b.H.
【住所又は居所原語表記】Johannesgasse 3, A-1010 Wien, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト アントニー
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン アウアー
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ コプフ
(72)【発明者】
【氏名】クジシュトフ ヴィルチェク
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0211192(US,A1)
【文献】特開平09-003803(JP,A)
【文献】特開平08-002413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道バラスト(7)上に支持されたまくらぎ(6)と、前記まくらぎに取り付けられたレール(4)とを含む軌道(5)を、安定化ユニット(8)によって安定化させる方法であって、前記安定化ユニットは、前記レール(4)に沿って移動可能な機械フレーム(2)に接続されており、振動発生器(13)と、前記レール(4)に沿って転動可能なローラ(9,10)とを備えており、前記振動発生器(13)は特に、水平方向で、軌道長手方向に対して横方向に延びる振動(15)を発生させる、方法において、
1振動サイクルの間に、前記安定化ユニット(8)の振動距離(y DGS )に対しての、前記レール(4)に作用する力(F )の変化(21)と、前記まくらぎ(6)の振動距離(y )に対しての、前記軌道バラスト(7)に作用する力(F )の変化(21)とを、前記安定化ユニット(8)に配置されたセンサ(18,19,20)によって検出されたデータから求め、前記力(F ,F 変化から少なくとも1つの特性値を、評価装置(22)によって導出し、前記特性値により、安定化過程および/または前記軌道バラスト(7)の状態の評価を行うことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記特性値を、前記安定化ユニット(8)の駆動制御のためのパラメータとして規定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アクティブな前記振動発生器(13)において、互いに適合された位相位置と、予め規定された角周波数とを有する少なくとも2つの偏心質量体が回転する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
発生器力(F)を、回転する質量、偏心率、および前記角周波数から決定する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
剛性特性を求めるために、第1の特性数として、前記変化(21)の傾きを導出する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
減衰特性を求めるために、第2の特性数として、前記変化(21)の湾曲を導出する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
対応する振動距離(yDGS,y)に関する、前記安定化ユニット(8)から前記軌道(5)に作用する力(F ,F)の少なくとも1つの変化(21)のために、1つの画定された面積(A,A)を、円積分によって、それぞれ1つの発生器ピリオドにわたって、動的に伝達される仕事として求める、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記評価装置(22)に、前記安定化ユニット(8)のモード質量(MDGS)を設定し、前記モード質量(MDGS)と前記安定化ユニット(8)の加速度との積を考慮することにより、前記レール(4)に作用する力(F)を決定する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記評価装置(22)に、特に前記レール(4)の振動する区分を含む、前記振動するまくらぎ(6)のモード質量(M)を設定し、前記モード質量(M)と前記まくらぎ(6)の加速度との積を考慮することにより、前記軌道バラスト(7)に作用する力(F)を決定する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記評価装置(22)に、前記安定化ユニット(8)の機械的モデルおよび振動させられる軌道区分の機械的モデルを格納し、該機械的モデルによって、土質力学的なパラメータを計算する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記安定化ユニット(8)が停止状態にある間に、前記振動距離(yDGS,y)に関する、前記力(F ,F)の前記変化(21)の検出を行う、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施するための装置(1)であって、機械フレーム(2)に取り付けられていて、振動発生器(13)と、レール(4)に沿って転動するローラ(9,10)とを含む安定化ユニット(8)を有している装置(1)において、
前記装置(1)に、振動距離(yDGS,y)にわたって、前記安定化ユニット(8)から前記軌道に作用する力(F ,F)の変化(21)を検出するためのセンサ(18,19,20)が配置されており、該センサ(18,19,20)の測定信号が評価装置(22)に供給され、該評価装置(22)は、前記変化(21)から導出された特性値を求めるように形成されていることを特徴とする、装置(1)。
【請求項13】
少なくとも1つの距離センサ(23)が配置されている、請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記評価装置(22)は、前記特性値に応じて前記安定化ユニット(8)を制御するための装置制御部に連結されている、請求項12または13記載の装置。
【請求項15】
前記評価装置(22)は記憶装置を含み、前記記憶装置には、前記安定化ユニット(8)および安定化すべき軌道(5)のモード質量(MDGS,M)が記憶されている、請求項12から14までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道バラスト上に支持されたまくらぎと、まくらぎに取り付けられたレールとを含む軌道を、安定化ユニットによって安定化させる方法であって、安定化ユニットは、レールに沿って移動可能な機械フレームに接続されており、振動発生器と、レールに沿って転動可能なローラとを備えており、振動発生器は特に、水平方向で、軌道長手方向に対して横方向に延びる振動を発生させる方法に関する。さらに本発明は、この方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動的な軌道安定化とも呼ばれる軌道の安定化は、バラスト床における軌道のこう上、補正、および突き固めの後に、持続可能な軌道状態を形成するために役立つ。この場合、安定化ユニットによって、水平方向の振動が発生させられ、軌道に伝達されて、軌道の振動により、軌道状態のより良好な持続性が得られるようにしている。これにより、軌道のこう上、補正、および突き固め後に生じるバラスト床における沈下が大幅に低減される。さらに、バラスト床における軌道の横方向の摺動に対する耐性が著しく高められる。安定化ユニットは通常、軌道建設機械に配置されており、動的な軌道安定化装置(DGS)と呼ばれる。対応する機械は、例えば欧州特許出願公開第0666371号明細書または独国特許出願公開第4102870号明細書から公知である。
【0003】
国際公開第2008/009314号には、制御可能な動的衝撃力を伴う安定化ユニットが開示されている。しかしながら、ここでは、軌道のそれぞれのレール頭部に作用する振動しか測定可能ではなく、結果として発生する軌道のまくらぎの振動は測定可能ではない。
【0004】
オーストリア国特許出願公開第518373号明細書により、軌道バラスト床を含む軌道を安定化させる方法が公知であり、この方法では、軌道で生じた振動が、機械フレームに取り付けられたカメラによって捕捉される。得られた画像データから、さらに、結果として生じる軌きょうの振動振幅が導出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の根底にある課題は、改善された安定化挙動を備えた、特に安定化過程を最適に監視することができる冒頭で述べた形式の方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この課題は、請求項1および11の特徴によって解決される。本発明の好適な別の構成は従属請求項に記載されている。
【0007】
この場合、1振動サイクルの間に、振動距離に関する、安定化ユニットから軌道に作用する力の経過を、特に安定化ユニットに配置されたセンサによって検出し、この力の経過から、少なくとも1つの特性値を評価装置によって導出し、この特性値により、安定化過程および/または軌道バラスト床の状態の評価を行う。安定化の仕事過程は、軌道バラストの荷重・変形挙動と、その変化とを、現場で決定するための測定手順に加えられる。リアルタイムでの測定値の分析および少なくとも1つの特性値の生成により、軌道バラストの品質と軌道バラストの締固め状態とを、安定化過程中に既にオンラインで判断することができる。その結果、締固めと安定化される軌道状態とのプロセスパラメータを、継続的にこれに合わせて調整することができる。
【0008】
このようにして、軌道安定化装置と、処理される軌道とにおける、仕事に統合された測定による、締固め制御のための方法が存在している。動的に励起される安定化ユニットは、振動を軌きょうに、および軌きょうのバラスト床に伝達し、これによりバラスト床は締固められる。安定化ユニットとバラスト軌道とは、この場合、動的な相互作用システムを形成し、その運動状態は、軌道バラスト状態の特性に関する情報を与える。適切な分析により、このシステムは、バラスト締固めの締固め制御と最適化とのために利用される。
【0009】
プロセスに伴う締固め制御の利点は、実施される締固め作業の継続的な品質管理とその文書化である。これは、安定化の前にタンピングユニットによって行われる突き固め工程に関連して締固め全体を最適化するためにも役立つ。この場合、軌道の規定された目標位置に正確に到達するような軌道の沈下が、安定化ユニットによる軌道バラストの最適化された最終締固め後に生じる程度に、予め規定された過補正をもって、軌道のこう上が軌道突き固めの際に行われる。特に、タンピングユニットと、その後に使用される安定化ユニットとの両方を含むコンビネーション機械のもとで、このような利点は際立っている。
【0010】
締固め後の可能な限り均一なバラスト状態は、確かに望ましいが、軌きょうの沈下の大部分を制御して予測し、軌道状態が将来的に安定するように、最適な最終締固めの達成が最優先される。この場合、軌道バラストの十分で、とりわけ均一な耐荷重性は、鉄道運行における軌道状態の安定性にとって不可欠な基本的前提条件である。
【0011】
したがって、本発明の核心は、軌道安定化装置と鉄道軌道との動的な相互作用システムを分析し、個々の構成要素の動的な特性を特定することである。主な着眼点は、この場合、軌道バラストを説明する各システムパラメータの変化を追跡することにある。
【0012】
安定化ユニットによる軌道バラストの締固め中に、全てのプロセスパラメータ(走行速度、周波数、偏心率、荷重等)と、軌きょうの動的な特性(レールプロフィール、レール固定部、まくらぎ質量、およびまくらぎジオメトリ等)とが不変であるならば、振動特性の変化は一義的に、軌道バラストの変化に起因するとみなされる。本発明による測定およびその分析に基づき、プロセスパラメータまたは軌きょう特性の変化の作用も考慮することができ、または検知することができる。
【0013】
方法のさらなる構成では、特性値を、安定化ユニットの駆動制御のためのパラメータとして規定する。これにより達成される、安定化工程の自動化された適合により、バラスト床の変化した状態に迅速に反応することができる。例えば、バラスト床の品質の評価により、安定化のための設定値を、変化した荷重によって、または適合された振動周波数によって導出することができる。これにより、動的な励振の周波数、および処理される軌道に安定化ユニットによって垂直方向で加えられる静的な荷重の最適な選択が自動的に行われる。この場合、プロセスパラメータの自動的な制御が行われると、好適である。
【0014】
このようにして、仕事に統合された動的な締固め制御から得られる測定値は、安定化ユニットによる軌道バラストの最適な最終締固めに関する、検出されたバラスト特性に合わせた締固め工具の自動化された最適な調節のためのプロセスパラメータの自動的な制御のための基礎となる。
【0015】
本発明の好適な態様では、アクティブな振動発生器において、互いに適合された位相位置と、予め規定された角周波数とを有する、少なくとも2つの偏心質量体が回転する。これにより、変化した位相位置または変化した角周波数を設定することにより、軌道への振動の導入を簡単に適合させることができる。偏心質量体の調節により、生じる偏心率を無段階式に適合させることができる。
【0016】
この場合、好適には、発生器力を、回転する質量、偏心率、および角周波数から決定する。質量と偏心率とは既知であるので、発生器力を導出するためには、角周波数を継続的に検出すれば十分である。調節可能な偏心率を有する偏心質量体では、この値が、発生器力の決定にも影響を与える。
【0017】
第1の好適な特性数として、剛性特性を求めるために経過の傾きを導出する。仕事曲線図の仕事線のこの傾きは、荷重強度として、軌道バラストの耐荷重性についての情報を与える。この傾きは、バラスト安定化の過程で上昇し、締固めまたは安定化の証明として考慮される。この場合、例えば、最小二乗誤差の方法によって、検出された経過の線形回帰によって傾き全体を求めると好適である。
【0018】
経過の湾曲は、好適には、減衰特性を求めるための第2の特性数として導出される。例えば、軌道の共に振動する質量の減衰係数を決定することができる。軌道のばね定数、減衰係数、および共に振動する質量は、土質力学的法則性を介して、軌道バラストの剪断弾性係数に関連しており、これは逆算によって求められる。軌道バラストの剪断弾性係数は、バラスト強度を、ひいては軌道バラストの締固め状態を判断するための重要なパラメータの1つである。
【0019】
別の好適な特性数決定では、対応する振動距離に関する、安定化ユニットから軌道に作用する力の少なくとも1つの経過のために、1つの画定された面積を、円積分によって、それぞれ1つの発生器ピリオドにわたって、動的に伝達される仕事として求める。安定化ユニットからレールに伝達される仕事およびレールから軌道バラスト床に伝達される仕事について、単位時間ごとにそれぞれ仕事率が生じる。これらの仕事率の値は、互いに対応しており、安定化ユニットのモータ出力にも対応する。
【0020】
さらに、評価装置に、安定化ユニットのモード質量を設定し、このモード質量と安定化ユニットの加速度との積を考慮することにより、レールに作用する力を決定し、安定化ユニットの振動距離に関する、レールに作用する力の経過を求めると好適である。この場合、好適には、安定化ユニットの加速度は、振動距離の二次導関数として決定される。
【0021】
方法のさらなる改良形では、評価装置に、特にレールの振動する区分を含む、振動するまくらぎのモード質量を設定し、このモード質量とまくらぎの加速度との積を考慮することにより、軌道バラスト床に作用する力を決定し、まくらぎの振動距離に関する、軌道バラスト床に作用する力の経過を求める。この場合、まくらぎの振動は、機械フレームに配置された無接触式のセンサによって検出されると好適である。
【0022】
評価装置に、安定化ユニットの機械的モデルおよび振動させられる軌道区分の機械的モデルを格納し、このモデルによって、土質力学的なパラメータを計算すると、軌道状態に関する追加情報が得られる。センサによって検出される測定データによって、このようにして、振動させられるシステム構成要素の動的特性を推測することができる。
【0023】
方法のさらなる態様では、安定化ユニットが停止状態にある間に、振動距離に関する力の経過の検出を行う。特に、較正目的およびテスト目的で、安定化ユニットを含む軌道建設機械を、測定過程中に停止させると有利である。
【0024】
上述した方法を実施するための本発明による装置は、機械フレームに取り付けられていて、振動発生器と、レールに沿って転動するローラとを含む安定化ユニットを有しており、この装置には、振動距離に関して、安定化ユニットから軌道に作用する力の経過を検出するためのセンサが配置されており、センサの測定信号が評価装置に供給され、評価装置は、この経過から導出された特性値を求めるように形成されている。このようにして、ユニットの力・距離経過(仕事曲線図)を検出し、この経過から、状況を示す特性値を導出するために、安定化ユニットは、作動使用中に、付加的な測定装置として利用される。
【0025】
好適には、装置には少なくとも1つの距離センサが配置されている。これにより、軌道上の装置の位置を簡単に検出することができ、それぞれ導出された特性値に割り当てることができる。測定結果の対応する記録は、位置に関連しているので、処理される全区分に関する軌道の状態が文書化される。
【0026】
装置のさらなる改良形では、評価装置は、特性値に応じて安定化ユニットを制御するための装置制御部に連結されている。したがって、軌道における条件が変化すると、処理される軌道全体にわたって均一な締固め品質を保証するために、安定化過程は自動的に適合される。
【0027】
安定化ユニットによって発生した力を決定するために、好適には、評価装置は記憶装置を含み、記憶装置には、安定化ユニットおよび安定化すべき軌道のモード質量が記憶されている。鉄道事業者は通常、仕事領域に設置されたまくらぎおよびレールのデータを知っている。場合によっては、必要なデータを検出するために予め測定走行が行われる。このために、装置は、例えば、レールおよびまくらぎを検出するためのレーザスキャナを備えている。
【0028】
以下に本発明を、例として添付の図面を参照して説明する。図面は概略図で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】安定化ユニットを備えた軌道建設機械を示す図である。
図2】軌道の横断面を安定化ユニットと共に示す図である。
図3】軌道の平面図を安定化ユニットと共に示す図である。
図4】軌道の横断面を安定化ユニットによる動的な力の導入と共に示す図である。
図5】仕事曲線図を示す図である。
図6】安定化ユニットとバラスト軌道との動的な相互作用を説明する動的モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に示した装置1は、軌道建設機械(動的軌道安定化装置DGS)として形成されていて、レール台車3上に支持されて軌道5のレール4上を走行可能な機械フレーム2を備えている。レール4はまくらぎ6に取り付けられていて、まくらぎと共に軌きょうを形成しており、この軌きょうは軌道バラスト7上に支持されている。機械フレーム2には、好適には2つの安定化ユニット8が可動に接続されており、これにより互いに逆方向の振動が軌道5に伝達される。シンプルな構成では、1つだけの安定化ユニット8が設けられている。
【0031】
安定化ユニット8は、軌きょうを保持するためのフランジ付きローラ9とクランプローラ10とを含む。具体的には、レール4の保持は、クランプ機構11によりクランプローラ10を介して行われる。この場合、好適には、フランジ付きローラ9は、ロックされるテレスコピック軸12によって内側からレール4に対して押し付けられている。安定化ユニット8は軌きょうを局所的に振動させ、軌きょうはこの振動を軌道バラスト7に伝達する。振動により、粒子は粒子構造内で可動になり、摺動することができ、より密度の高い堆積物となる。微粒子の割合をほとんど含まない新しい軌道バラスト7では、バラスト7は流れて、これにより締固め効果がさらに強化される。軌道バラスト7の締固めにより、バラストの支持性と強度とが高まり、締固めに伴う沈下が、制御されて行われる。
【0032】
図2には、鉄道盛り土の横断面が、軌道5に作用する安定化ユニット8と共に示されている。図3には、対応する平面図が示されている。安定化ユニット8は、振動発生器13(補正振動器)によって、水平方向で、軌道軸線14に対して横方向に動的に振動させられる。クランプローラ10とフランジ付きローラ9とを介して、この水平方向の振動15がレール4に伝達され、レール固定部16を介してまくらぎ6に伝達される。各まくらぎ6は、このように発生した振動を、場合によってはまくらぎパッド17を介して、締固められるべき軌道バラスト7へと伝達する。
【0033】
例示的な構成では、振動発生器13は、互いに適合された位相位置を有する回転する複数の偏心質量体(アンバランス体)を含んでいる。好適には、これらの偏心質量体は反対方向に回転し、この場合、偏心力は垂直方向で互いに相殺し合い、水平方向で強化される。各位相位置の変更または偏心率の変更により、偏心質量体の作用を調節することができる。有効偏心率の大きさ、動的な励振の周波数および位相位置を計算するために、回転する偏心質量体の位置を継続的に測定技術的に、検出する。代替的な振動発生器13では、動的な励振の計算は、相応の適切な形式で行われる。
【0034】
本発明によれば、安定化ユニット8に配置されたセンサ18,19,20によって、1振動サイクルの間に、振動距離yDGS,y(水平方向摺動)にわたって、安定化ユニット8から軌道5に作用する力F,F,Fの経過21が検出される。図2の装置では、センサ18は、安定化ユニット8の運動を測定し、センサ19は、振動発生器13の回転する偏心質量体の位置を測定している。例えば、加速度センサ18によって、まずは加速度
【数1】
が求められ、それぞれ積分により、安定化ユニット8の、ひいてはレール頭部の振動速度
【数2】
と振動距離yDGSとが求められる。
【0035】
好適には、無接触式のセンサ20によって、安定化ユニット8の作用方向でのまくらぎ6の移動状態が求められる。無接触式のセンサは、例えば、振動させられるまくらぎ6に向けられた、自動化された画像評価を行うカメラである。このようにして、各まくらぎ6の摺動または振動距離yが検出される。
【0036】
好適には、軌道建設機械におけるオンライン評価のために、センサ信号が、またはセンサ18,19,20によって検出されたデータが供給される評価装置22が配置されている。評価装置は例えば、記憶装置を備えた工業用コンピュータである。記憶装置には、装置1および処理される軌道5の構造データと動的なモデルとが格納されている。評価装置22には、仕事曲線図を作成し、評価するソフトウェアが備えられている。さらに、評価装置22には距離センサ23の測定結果が供給され、これにより個々の振動サイクルの仕事曲線図が、軌道5における各位置に割り当てられる。別の実施形態では、評価装置22は中央に配置されており、軌道建設機械と中央との間でデータ伝達が行われるようになっている。
【0037】
図4について、本発明による測定に基づき構築される力・摺動関係(仕事曲線図)が説明される。振動発生器13による安定化ユニット8の励振の力Fは、有効偏心率(偏心質量体m×偏心率e)と、発生器角周波数ωの二乗とに、発生器角周波数ωと時間tの積の正弦をかけたものである。すなわち、
【数3】
振幅および位相位置が測定により既知である。測定技術的に求められた位相位置は、別の位相位置の基準として用いられ、したがって、計算においてゼロに設定される。
【0038】
測定は、通常、移動する安定化ユニット8の仕事中にプロセス的に統合されて行われるが、較正目的およびテスト目的で、固定個所で締固め工程に追従するために、静止状態で行われてもよい。
【0039】
安定化ユニット8の水平方向の摺動yDGSと、対応する位相位置を含むその導関数とは、測定により既知である。安定化ユニット8の質量MDGSと、励振されるまくらぎ6のモード質量Mとは、構造に基づき既知である。レール頭部の質量は、安定化ユニット8のモード質量MDGSに加算することができ、レール脚部の質量は、励振されるまくらぎ6のモード質量Mに加算することができる。
【0040】
構成要素の各慣性力を発生器力Fから差し引くと、まくらぎ6への発生器力Fと、軌道バラスト7への発生器力Fとを決定できる。すなわち、
【数4】
【数5】
【0041】
これらの力F,F,Fと、対応する振動または作用方向での摺動yDGS,yとの間の関係により、図5に示した仕事曲線図が得られる。この図は、剛性特性(線の傾き)と減衰特性(湾曲)、ならびに1発生器サイクルにつきこのシステムにもたらされる仕事(取り囲まれた面AおよびA)についての情報を与えている。
【数6】
【数7】
力F,F,Fの振幅比
【数8】
と、システムにおける振動距離yDGS,yの振幅比
【数9】
も読み取ることができる。
【0042】
測定とその分析とから求められた振幅と位相位置とによって、システム構成要素の動的な特性を特定するために、図6に示された機械的モデルが用いられる。この場合、機械的なモデル化のために関連するシステム要素は直列に接続されている。
【0043】
測定技術的に既知の動的な発生器力Fは、摺動yDGSを行う安定化ユニット8のモード質量MDGSに作用する。安定化ユニット8は、レール4とレール固定部16とを介して、まくらぎ6(モード質量Mと摺動y)に接続されている。この場合、レール4とレール固定部16の撓みは、ケルビン・フォークト・エレメント(ばねkとダンパcとが並列に配置されている)によりモデル化されている。
【0044】
まくらぎ6は、軌道バラスト7上に位置しており、軌道バラストは、摩擦エレメントrとして、場合によっては共に振動する質量Mと共にケルビン・フォークト・エレメント(ばねkとダンパcとが並列に配置されている)によりモデル化されている。摩擦エレメントrは、この場合、動的な横方向の摺動に対する耐性を表す。
【0045】
ばね定数k、減衰係数c、および共に振動する質量Mは、土質力学的法則性を介して、軌道バラスト7の剪断弾性係数Gに関連しており、これは逆算によって求められる。軌道バラスト7の剪断弾性係数Gは、仕事曲線図(図5)からの情報以外で、バラスト強度を、ひいては軌道バラスト7の締固め状態を判断するための最も重要なパラメータの1つである。これは、プロセスに伴う測定(図2)に基づき、機械的モデル(図6)を利用した逆算によって継続的に求められる。
【0046】
1つの軌道タンピングマシンにおいて相前後して2つ以上の安定化ユニット8が仕事をする場合には、上述した測定原理を、これら各安定化ユニット8に適用することができる。互いに独立して求められた結果を互いに関連付けて、これにより軌道バラスト状態、締固め、耐荷重性の開発、沈下経過等に関する追加情報を提供可能であり、利用可能である。したがって、複数の安定化ユニット8が相前後して配置されていると、そして、安定化ユニット8に配属されたセンサ18,19,20の測定信号が1つの共通の評価装置22に供給されると、好適である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6