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特許7348291コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物及びその利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物及びその利用
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20230912BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230912BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230912BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J11/08
C09J7/38
E04G21/02 104
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021539244
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2020030146
(87)【国際公開番号】W WO2021029314
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2019148073
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】坂田 尚紀
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-021127(JP,A)
【文献】特開2000-281986(JP,A)
【文献】特開2012-067275(JP,A)
【文献】国際公開第2016/059979(WO,A1)
【文献】特開2019-172776(JP,A)
【文献】特開2019-123648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08F 20/28
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系ポリマーおよびラクタム系ポリマーを含有する、コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、下記一般式(1)
【化1】
(一般式(1)中、Xは炭素数2~4のアルキレン基であり、Yは炭素数1~10のアルキル基であり、nは1~10の整数である)
で表される、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位を含む、コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、さらに、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位、及び/又は、水酸基含有モノマー由来の構造単位を含む、請求項1に記載のコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物。
【請求項3】
架橋剤を含有する、請求項1又は2に記載のコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、水酸基含有モノマー由来の構造単位を含み、
前記(メタ)アクリル系ポリマーの全構造単位に占める前記水酸基含有モノマー由来の構造単位の割合が、0.01~5重量%である、請求項1~3の何れか1項に記載のコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位を含み、
前記(メタ)アクリル系ポリマーの全構造単位に占める前記カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位の割合が、0.1~10重量%である、請求項1~4の何れか1項に記載のコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物。
【請求項6】
(メタ)アクリル系ポリマーおよびラクタム系ポリマーを含有する粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、下記一般式(1)
【化2】
(一般式(1)中、Xは炭素数2~4のアルキレン基であり、Yは炭素数1~10のアルキル基であり、nは1~10の整数である)
で表される、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位と、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位と、水酸基含有モノマー由来の構造単位と、を含み、かつ、前記(メタ)アクリル系ポリマーの全構造単位に占める割合として、前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位の割合が50~99.5重量%であり、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位の割合が0.1~10重量%であり、水酸基含有モノマー由来の構造単位の割合が0.01~0.5重量%である、(メタ)アクリル系ポリマーである、粘着剤組成物。
【請求項7】
湿潤面用粘着剤組成物である、請求項に記載の粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造体は、打設後に適切量の水分を保つことにより、内部の水和反応が進行し、強度及び耐久性が向上する。かかるコンクリート構造物の製造方法として、型枠内にコンクリートを打設し、型枠から脱型後にコンクリート表面に養生シートを貼付けることにより、コンクリートを湿潤状態に保って養生する方法がある。養生シートにはコンクリート表面を覆うことにより水分の蒸発を防ぐ効果がある。この養生シートはコンクリートが濡れた状態で、コンクリート養生粘着テープを用いてコンクリート表面に固定する必要があるが、従来のコンクリート養生粘着テープでは濡れた面に対する粘着性が不足していた。また、養生後にシートを剥がす際に糊残りが生ずるといった問題を抱えていた。
【0003】
特許文献1では、(メタ)アクリル系樹脂に、ポリオール、ポリイソシアネート、及びシランカップリング剤を添加することによって、濡れたモルタル面に対する粘着力を高める検討がなされている。
【0004】
また、コンクリート養生粘着テープに関する技術ではないが、特許文献2には、濡れた皮膚に対して良好に接着されうる粘着テープとして、2-メトキシメチルアクリレートを配合したアクリル系共重合体を用いた粘着テープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国公開特許公報「特開2019-19290号」
【文献】日本国公開特許公報「特開2006-36911号」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コンクリート養生粘着テープに関する上述の従来技術は、シランカップリング剤添加後のポットライフの点で課題があり、実用のためには改善の余地がある。
【0007】
本発明の一態様は、湿潤状態のコンクリート表面に対する粘着性に優れるとともに、再剥離性に優れたコンクリート養生粘着テープ及び当該コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討した結果、所定のアクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位を含む(メタ)アクリル系ポリマーを含有するコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物により、湿潤状態のコンクリート表面に対する粘着性に優れるとともに、再剥離性に優れたコンクリート養生粘着テープを実現できることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、以下を包含する。
【0009】
(メタ)アクリル系ポリマーを含有する、コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、下記一般式(1)
【化1】
(一般式(1)中、Xは炭素数2~4のアルキレン基であり、Yは炭素数1~10のアルキル基であり、nは1~10の整数である)
で表される、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位を含む、コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、湿潤状態のコンクリート表面に対する粘着性に優れるとともに、再剥離性に優れたコンクリート養生粘着テープを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0012】
本明細書において、「粘着性に優れる」とは、粘着製品を被着体に貼り付けたときの粘着力に優れることを意図する。粘着性は後述の実施例に記載された方法で評価される。また、本明細書において、「再剥離性に優れる」とは、粘着製品を被着体に貼り付けた状態で静置した後、粘着製品を被着体から再剥離しても、粘着剤層が被着体に残りにくいことを意図する。再剥離性は、後述の実施例に記載された方法で評価される。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」は、「メタアクリル」及び/又は「アクリル」、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味する。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意図する。また、本明細書において、「モノマー由来の構造単位」は、モノマーを重合して形成される構造であることが好ましいが、モノマーが重合されて形成される構造と同一構造であれば、モノマーを重合する方法以外の方法で形成されてもよい。
【0013】
〔1 コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物〕
本発明の一実施形態に係るコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物は、コンクリート養生粘着テープに使用される粘着剤組成物であり、所定の(メタ)アクリル系ポリマーを含有する。
【0014】
〔1.1 (メタ)アクリル系ポリマー〕
本発明の一実施形態に係るコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物に含有される(メタ)アクリル系ポリマーは、下記一般式(1)
【化2】
(一般式(1)中、Xは炭素数2~4のアルキレン基であり、Yは炭素数1~10のアルキル基であり、nは1~10の整数である)
で表される、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位を含む。
【0015】
前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位は、前記一般式(1)で表される構造を有していれば特に限定されるものではなく、例えば、下記一般式(2)
【化3】
(一般式(2)中、X、Y、及び、nは一般式(1)と同様)
で表される、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーを重合させることにより、前記(メタ)アクリル系ポリマーに導入することができる。
【0016】
前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位は、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーを重合して形成される構造であることが好ましいが、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーが重合されて形成される構造と同一構造であれば、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーを重合する方法以外の方法で形成されてもよい。
【0017】
一般式(1)中、Xは、炭素数2~4のアルキレン基であればよく、直鎖状のアルキレン基であってもよいし、分枝状のアルキレン基であってもよい。Xとしては、例えば、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、及び、ブタン-1,3-ジイル基を挙げることができる。より好ましくは、Xは、エチレン基、プロピレン基(プロパン-1,2-ジイル基)、トリメチレン基(プロパン-1,3-ジイル基)及びブチレン基(ブタン-1,3-ジイル基)である。
【0018】
一般式(1)中、Yは、炭素数1~10のアルキル基であれば特に限定されるものではなく、直鎖状のアルキル基であっても、分枝状のアルキル基であっても、環を含むアルキル基であってもよい。Yとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及び、デシル基を挙げることができる。より好ましくは、Yは、メチル基、エチル基、及びブチル基である。
【0019】
一般式(1)中、nは1~10の整数であれば特に限定されるものではないが、より好ましくは1~3の整数であり、さらに好ましくは1~2の整数である。また、nが2以上の整数である場合、-(X-O-)-に含まれる複数のXは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0020】
一般式(2)で表されるアクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-プロポキシエチルアクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、3-メトキシプロピルアクリレート、3-エトキシプロピルアクリレート、4-メトキシブチルアクリレート、4-エトキシブチルアクリレート、2-メトキシトリエチレングリコールアクリレート等を挙げることができる。中でも、前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルは、得られる粘着層の凝集力・粘着力・タック等の観点から、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレートであることがより好ましい。
【0022】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの全構造単位に占める前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位の割合は、特に限定されるものではないが、好ましくは50~99.5重量%であり、より好ましくは60~99.0重量%であり、さらに好ましくは65~98.5重量%であり、特に好ましくは70~98重量%である。前記(メタ)アクリル系ポリマーの全構造単位に占める前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位の割合が、50重量%以上であれば、親水性が高まるために、湿潤面への親和性が向上するため好ましい。また、前記割合が、99.5重量%以下であれば、適切量の官能基が架橋点として振る舞うため好ましい。
【0023】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、さらに、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位、及び/又は、水酸基含有モノマー由来の構造単位を含むことが好ましい。
【0024】
前記カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位は、例えば、カルボキシル基含有モノマーを重合させることにより、前記(メタ)アクリル系ポリマーに導入することができる。
【0025】
前記カルボキシル基含有モノマーとしては、カルボキシル基と重合性二重結合とを含むモノマーを好適に用いることができる。かかるモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられる。これらのカルボキシル基を含有するモノマーは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位を含む場合、前記(メタ)アクリル系ポリマーの全構造単位に占める前記カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位の割合は、これに限定されるものではないが、好ましくは0.1~10重量%であり、より好ましくは0.2~8重量%であり、さらに好ましくは0.3~7重量%であり、特に好ましくは0.5~5重量%である。前記(メタ)アクリル系ポリマーの全構造単位に占める前記カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位の割合が、0.1重量%以上であれば、粘着剤の凝集性が向上するため好ましい。また、前記割合が、10重量%以下であれば、被着体への濡れ性が向上するため好ましい。
【0027】
前記水酸基含有モノマー由来の構造単位は、例えば、水酸基含有モノマーを重合させることにより、前記(メタ)アクリル系ポリマーに導入することができる。
【0028】
前記水酸基含有モノマーとしては、水酸基と重合性二重結合とを含むモノマーを好適に用いることができる。かかるモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、及び、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸等のアルコール性水酸基を含有する架橋性モノマー;ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、及び、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー;等が挙げられる。これらの水酸基を含有するモノマーは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
中でも前記水酸基含有モノマーは、架橋剤との反応性の観点から、ヒドロキシアルキルのアルキルの炭素数が2~8のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類であることがより好ましい。
【0030】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、水酸基含有モノマー由来の構造単位を含む場合、前記(メタ)アクリル系ポリマーの全構造単位に占める前記水酸基含有モノマー由来の構造単位の割合は、これに限定されるものではないが、好ましくは0.01~5.0重量%であり、より好ましくは0.05~4.0重量%であり、さらに好ましくは0.07~3.0重量%であり、特に好ましくは0.1~2.0重量%である。前記(メタ)アクリル系ポリマーの全構造単位に占める前記水酸基含有モノマー由来の構造単位の割合が、0.01重量%以上であれば、架橋点として振る舞うため好ましい。また、前記割合が、5.0重量%以下であれば、粘着力が向上するため好ましい。
【0031】
或いは、前記(メタ)アクリル系ポリマーは、前記(メタ)アクリル系ポリマーの全構造単位に占める割合として、前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位の割合が50~99.5重量%であり、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位の割合が0.1~10重量%であり、水酸基含有モノマー由来の構造単位の割合が0.01~0.5重量%である、アクリル系ポリマーであり得る。
【0032】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他のモノマー由来の構造単位を含んでもよい。
【0033】
前記その他のモノマー由来の構造単位は、例えばその他のモノマーを重合して形成される構造であることが好ましいが、その他のモノマーが重合されて形成される構造と同一構造であれば、その他のモノマーを重合する方法以外の方法で形成されてもよい。
【0034】
前記その他のモノマーとしては、特に制限はなく、通常、(メタ)アクリル系粘着剤に使用されているモノマー、例えばアルキル(メタ)アクリル酸エステルを使用することができる。前記アルキル(メタ)アクリル酸エステルのアルキル基としては、炭素数1~20個のアルキル基が好ましい。また、アルキル基は、直鎖、分岐鎖、及び脂環式アルキル基のいずれであってもよい。
【0035】
アルキル(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリル酸エステルは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。前記(メタ)アクリル系ポリマーの全構造単位に占めるアルキル(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位の割合は、好ましくは45重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下である。
【0036】
また、前記その他のモノマーとしては、前記アルキル(メタ)アクリル酸エステル以外で、ビニル系化合物を使用することができる。前記ビニル系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族不飽和炭化水素化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の炭素数1~5のモノカルボン酸のビニルエステル;ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらのビニル系化合物は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。前記(メタ)アクリル系ポリマーの全構造単位に占める前記ビニル系化合物由来の構造単位の割合は、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。
【0037】
本発明の一実施形態において、前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは、10万~200万であり、より好ましくは、20万~150万である。重量平均分子量が10万以上であれば、形成塗膜の付着性の観点から好ましい。重量平均分子量が200万以下であれば、溶剤への分散を良好に行うことができるため好ましい。ここで、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン換算の分子量である。重量平均分子量としては、より具体的には、測定装置として、東ソー(株)製、品番:HLC-8220GPCを用い、分離カラムとして東ソー(株)製、品番:TSKgel Super HZM-Mを用い、標準ポリスチレン〔東ソー(株)製〕により換算した値とすることができる。
【0038】
上記の条件で測定することが妥当でないアクリル系ポリマーについては、例えば、上記条件に、適宜、最小限の変更を加えて重量平均分子量を測定してもよい。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、粘着剤組成物及びコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物の粘着性、タック性等の観点から、好ましくは-100℃~-10℃、より好ましくは-90℃~-20℃、更に好ましくは-80℃~-30℃であってもよい。
【0040】
アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、当該アクリル系ポリマーを構成する単量体成分に使用されている単量体(各単量体)の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
(式中、Tgは重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)、Wmは重合体を構成する単量体成分における単量体mの含有率(重量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す)
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度であってもよい。
【0041】
なお、特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度を求めてもよい。
【0042】
単独重合体のガラス転移温度は、例えば、アクリル酸の単独重合体では106℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、ω-カルボキシポリカプロラクトンアクリレート(東亜合成(株)製、商品名:アロニックス(登録商標)M-5300)の単独重合体では-41℃、2-エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では-70℃、n-ブチルアクリレートの単独重合体では-56℃、メチルアクリレートの単独重合体では10℃、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、エチルアクリレートの単独重合体では-24℃、n-ブチルアクリレートの単独重合体では-54℃、n-ブチルメタクリレートの単独重合体では-20℃、n-オクチルアクリレートの単独重合体では-80℃、イソオクチルアクリレートの単独重合体では-58℃、シクロへキシルアクリレートの単独重合体では16℃、シクロへキシルメタクリレートの単独重合体では83℃、イソボルニルメタクリレートの単独重合体では180℃、2-ヒドロキシエチルアクリレートの単独重合体では-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの単独重合体では85℃、4-ヒドロキシブチルアクリレートの単独重合体では-32℃である。
【0043】
アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、当該アクリル系ポリマーを調製する際に用いられる原料モノマーの種類及びその量を適宜調整することによって容易に調節することができる。
【0044】
本発明の一実施形態に係るコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物に含まれる前記(メタ)アクリル系ポリマーの含有量は、コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物の全重量に対して、好ましくは20~80重量%であり、より好ましくは25~70重量%であり、さらに好ましくは30~60重量%である。
【0045】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの含有量が20重量%以上であれば、湿潤状態のコンクリート表面に対する粘着性に優れるとともに、再剥離性に優れたコンクリート養生粘着テープを実現することができる。
【0046】
((メタ)アクリル系ポリマーの製造方法)
(メタ)アクリル系ポリマーの製造方法としては、従来公知の重合方法によりモノマーを重合させる方法を採用することができ、その重合方法は特に限定されない。例えば、溶液重合法又はバルク重合法等を用いることができ、工業的には溶液重合法が好ましい。溶液重合法は、重合時の重合熱の除去が容易であり、且つ、操業性が良いからである。
【0047】
溶液重合法又はバルク重合法では、モノマー成分を一括仕込みで重合する方法、モノマーを滴下しながら重合する方法、一部を一括で仕込んでおき、残りのモノマーを滴下しながら重合する方法等、いずれも採用できる。
【0048】
重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等を含む過酸化物系重合開始剤、又はアゾビスイソブチロニトリル等を含むアゾ系重合開始剤等の公知のものを利用することができる。重合開始剤は、後添加前においては重合反応容器内のモノマーの重量に対して、0.01~1重量%となるように使用することが好ましい。
【0049】
溶液重合で用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類;シクロヘキサン等の脂環族炭化水素類;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられるが、上記重合反応を阻害しなければ、特に限定されない。これらの溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を便宜混合して用いてもよい。なお、溶媒の使用量は、適宜決定すればよい。
【0050】
なお、(メタ)アクリル系ポリマーの製造方法が溶液重合である場合、当該製法により得られる、前記溶媒及び(メタ)アクリル系ポリマーを含む混合物もまた、本発明の粘着剤組成物及びコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物として使用することができる。それゆえ、かかる粘着剤組成物及びコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物も、本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物及びコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物に含まれる。
【0051】
かかる粘着剤組成物及びコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物における、(メタ)アクリル系ポリマーの含有量は、粘着剤組成物全体又はコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物全体に対して、10重量%以上、好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上であってもよく、80重量%以下(例えば、70重量%以下、60重量%以下)であってもよい。
【0052】
反応温度及び反応時間等の反応条件は、例えば、モノマー成分の組成、重合方法、あるいは、得られる粘着剤組成物の要求特性、粘着剤の用途等に応じて便宜設定すればよく、特に限定されない。また、反応圧力も特に限定されるものではなく、常圧(大気圧)、減圧、加圧のいずれであってもよい。なお、重合反応は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが望ましい。
【0053】
〔1.2 その他成分〕
(1.2.1 架橋剤)
本発明の一実施形態に係るコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマーに加えてさらに架橋剤を含み得る。前記架橋剤としては、前記(メタ)アクリル系ポリマーに含まれるカルボキシル基、及び、水酸基から選択される少なくともいずれかと反応し得る化合物を好適に用いることができる。水酸基と反応し得る架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。カルボキシル基と反応し得る架橋剤としては、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。
【0054】
前記イソシアネート系架橋剤としては、多官能イソシアネート(ポリイソシアネート)がより好ましい。多官能イソシアネートとは、1分子当たりイソシアネート基を少なくとも2個含む化合物である。イソシアネート系架橋剤の好ましい一例としては、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等のジイソシアネート;アダクトポリイソシアネート化合物;ビュレットポリイソシアネート化合物;イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0055】
前記芳香族ジイソシアネートとしては、より具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等が挙げられる。
【0056】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、より具体的には、例えば、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0057】
前記脂環族ジイソシアネートとしては、より具体的には、例えば、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0058】
前記アダクトポリイソシアネート化合物としては、例えば、「スミジュールL」(住友バイエルウレタン社製);「コロネートL」、「コロネートHL」(いずれも日本ポリウレタン社製)等の市販品を挙げることができる。
【0059】
前記ビュレットポリイソシアネート化合物としては、より具体的には、例えば、「スミジュールN」(住友バイエルウレタン社製)等の市販品を挙げることができる。
【0060】
前記イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物としては、より具体的には、例えば、「デスモジュールIL」、「デスモジュールHL」(いずれもバイエルA.G.社製);「コロネートEH」、「コロネートHX」(いずれも日本ポリウレタン工業社製);「タケネートD110N」、「タケネートD120N」(いずれも三井化学社製)等の市販品を挙げることができる。
【0061】
これらは、単独で使用し得るほか、2種類以上を併用することもできる。また、これらの化合物のイソシアネート基を、活性水素を有するマスク剤と反応させて不活性化した、いわゆるブロックイソシアネートも使用可能である。
【0062】
前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン等が挙げられる。
【0063】
市販の前記エポキシ系架橋剤としては、デナコール EX-832(ナガセ化成工業(株)製)、デナコール EX-841(ナガセ化成工業(株)製)、テトラッドC(三菱瓦斯化学(株)製)、テトラッドX(三菱瓦斯化学(株)製)等を好適に用いることができる。
【0064】
前記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、カドミウム、ニッケル、コバルト、銅、カルシウム、バリウム、チタン、マンガン、鉄、鉛、ジルコニウム、クロム、錫等の金属に、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、サリチル酸メチル等が配位した金属キレート化合物等が挙げられる。
【0065】
前記オキサゾリン系架橋剤としては、分子中に少なくとも2つ以上のオキサゾリン基を有している化合物であれば特に限定されない。例えば、2,2′-ビス(2-オキサゾリン)、2,2′-エチレン-ビス(4,4′-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2′-p-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)、ビス(2-オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド等のオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマー等が挙げられる。これらの1種類又は2種類以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いのし易さからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
【0066】
オキサゾリン基含有ポリマーは、一般に2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。オキサゾリン基含有ポリマーには、必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法としては、特に限定されず、公知の重合方法を採用することができる。
【0067】
前記オキサゾリン系架橋剤の市販品としては、日本触媒社製のエポクロス(登録商標)シリーズが挙げられ、例えば、水溶性タイプの「WS-500」、「WS-700」;エマルションタイプの「K-1010E」、「K-1020E」、「K-1030E」、「K-2010E」、「K-2020E」、「K-2030E」等が挙げられる。
【0068】
前記カルボジイミド系架橋剤は、分子中に少なくとも2つ以上のカルボジイミド基を有している化合物であれば特に限定されない。例えば、p-フェニレン-ビス(2,6-キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン-1,4-ビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等のカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。これらの1種類又は2種類以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱い易さから、ポリカルボジイミドが好ましい。
【0069】
ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライト(登録商標)シリーズが挙げられる。具体的な商品としては、例えば、水溶性タイプの「SV-02」、「V-02」、「V-02-L2」、「V-04」;エマルションタイプの「E-01」、「E-02」;有機溶液タイプの「V-01」、「V-03」、「V-07」、「V-09」;無溶剤タイプの「V-05」等が挙げられる。
【0070】
本発明の一実施形態に係るコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物は、前述の架橋剤を、1種類又は2種類以上含み得る。
【0071】
本発明の一実施形態に係るコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物に含まれる、前記架橋剤の含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマーに対して好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.3~3重量%である。上記架橋剤の含有量が上記アクリル系ポリマーに対して0.01重量%以上であれば、アクリル系ポリマーが十分に架橋される。また、5重量%以下であれば、所望される以上に架橋反応が進むことによる粘着性の低下を回避することができる。
【0072】
(1.2.2 ラクタム系ポリマー)
本発明の一実施形態に係るコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物は、ラクタム系ポリマーを含有していてもよい。
【0073】
本発明の一実施形態において、前記ラクタム系ポリマーは、少なくともラクタム系モノマー由来の構造単位を含んでいればよい。ラクタム系モノマー由来の構造単位は、ラクタム系モノマーを含有する単量体成分を重合させることにより、前記ラクタム系ポリマーに導入することができる。
【0074】
前記ラクタム系モノマーとしては、例えば、N-ビニルラクタム(例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム)等のビニルラクタム系モノマーが挙げられる。
【0075】
代表的なラクタム系モノマーは、N-ビニルピロリドンである。ラクタム系モノマー由来の構造単位が、N-ビニルピロリドン由来の構造単位を含む場合、ラクタム系モノマー由来の構造単位に占めるN-ビニルピロリドン由来の構造単位の割合は、例えば10重量%以上(例えば、15~100重量%)、好ましくは20重量%以上、25重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、60重量%以上であってもよく、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、100重量%(実質的にN-ビニルピロリドンのみ)であってもよい。
【0076】
前記ラクタム系ポリマーの全構造単位に占める前記ラクタム系モノマー由来の構造単位の割合は、これに限定されるものではないが、例えば、10重量%以上(例えば、15~100重量%)、より好ましくは20重量%以上、25重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上であり、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、100重量%(実質的にラクタム系モノマーのみ)であってもよい。
【0077】
本発明の一実施形態において、前記ラクタム系ポリマーは、親水性(親水性ラクタム系ポリマー)であってもよく、吸水性(吸水性材料として用いられるラクタム系ポリマー)であってもよい。このような親水性又は吸水性のラクタム系ポリマーにおいては、単量体成分は、親水性のラクタム系モノマーを含むことが好ましく、23℃の雰囲気下で水に対し容易に溶解するラクタム系モノマーを含むことがより好ましい(水溶性ラクタム系ポリマーであることが好ましい)。例えば、前記ラクタム系ポリマーの全構造単位に占める前記親水性ラクタム系モノマー由来の構造単位の割合は、上記割合(例えば、50重量%以上等)であってもよい。
【0078】
また、本発明の一実施形態において、前記ラクタム系ポリマーの全構造単位に占めるN-ビニルピロリドン由来の構造単位の割合は、好ましくは50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上であり、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、100重量%(実質的にN-ビニルピロリドンのみ)であってもよい。
【0079】
本発明の一実施形態において、前記ラクタム系ポリマーは、前記ラクタム系モノマー由来の構造単位に加えて、前記ラクタム系モノマー由来の構造単位以外の他のモノマー由来の構造単位を含んでいてもよい。
【0080】
前記他のモノマーとしては、例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマーのモノマーとして例示したモノマー等が挙げられる。
【0081】
また、本発明の一実施形態において、前記ラクタム系ポリマーは、例えば、酸基(カルボキシル基等)、イソシアネート基、オキサゾリン基、オキサゾリジン基、ヒドラジノ基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基等の官能基を有するモノマー由来の構造単位を含んでいてもよい。ラクタム系ポリマーが、このような官能基を有するモノマー由来の構造単位を有することにより、架橋剤の種類(架橋剤が有する官能基との組み合わせ)や前記(メタ)アクリル系ポリマーが有する官能基の種類等によっては、効率よく架橋構造を形成しやすい。
【0082】
また、前記官能基は、少なくとも架橋剤が有する官能基と反応(架橋反応)し得る官能基であってもよい。
【0083】
また、前記官能基は、アクリル系ポリマーが有する官能基と反応(架橋反応)し得る官能基であってもよい。
【0084】
前記官能基を有するモノマーの具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。
【0085】
前記ラクタム系ポリマーが、前記ラクタム系モノマー由来の構造単位に加えて、前記ラクタム系モノマー由来の構造単位以外の他のモノマー由来の構造単位を含む場合、前記ラクタム系ポリマーの全構造単位に占める前記他のモノマー由来の構造単位の割合は、50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは、40重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、8重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下である。
【0086】
前記ラクタム系ポリマーが共重合体である場合、共重合体の構造は特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0087】
前記ラクタム系ポリマーの重量平均分子量は、例えば、300以上、500以上の範囲から選択してもよく、1000以上、好ましくは2000以上、さらに好ましくは3000以上であってもよく、5000以上、1万以上、2万以上、3万以上、5万以上、8万以上であってもよい。
【0088】
前記ラクタム系ポリマーの重量平均分子量の上限値は、特に限定されず、例えば、300万、250万、200万、150万、130万、110万、100万、90万、80万、70万、60万、50万、40万、30万、20万等であってもよい。
【0089】
このような重量平均分子量であれば、適度な粘度(ひいては良好な塗工性)、(メタ)アクリル系ポリマーとの相溶性等の点で有利である。
【0090】
前記ラクタム系ポリマーは、市販品を使用してもよく、合成したもの使用してもよい。前記ラクタム系ポリマーの合成方法としても、特に限定されず、慣用の方法により、前記単量体成分を重合すればよい。重合においては、慣用の重合開始剤及び連鎖移動剤等を使用してもよい。その他、重合条件(溶媒の種類や量、温度、雰囲気、時間等)は、適宜選択できる。
【0091】
本発明の一実施形態に係るコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物に含まれる、前記ラクタム系ポリマーの含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマーの量に対して、例えば、0.1重量%以上程度の範囲から選択してもよく、0.2重量%以上、0.25重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、0.35重量%以上、さらに好ましくは0.4重量%以上、0.45重量%以上であってもよく、0.5重量%以上、0.55重量%以上、0.6重量%以上、0.65重量%以上、0.7重量%以上、0.75重量%以上、0.8重量%以上、0.85重量%以上、0.9重量%以上、0.95重量%以上、1重量%以上、1.05重量%以上、1.1重量%以上、1.15重量%以上、1.2重量%以上、1.25重量%以上、1.3重量%以上、1.35重量%以上、1.4重量%以上、1.5重量%以上、1.6重量%以上、1.7重量%以上、1.8重量%以上、1.9重量%以上であってもよく、2重量%以上、例えば、2.5重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上であってもよい。前記アクリル系ポリマーの量に対する、ラクタム系ポリマーの含有量の上限値は、特に限定されないが、例えば、99重量%、95重量%、90重量%、85重量%、80重量%、75重量%、70重量%、65重量%、60重量%、55重量%、50重量%、45重量%、40重量%、35重量%、30重量%、28重量%、25重量%、22重量%、20重量%、18重量%、16重量%等であってもよい。
【0092】
前記ラクタム系ポリマーの含有量が、前記(メタ)アクリル系ポリマーの量に対して、0.1重量%以上であれば、かかるコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物から得られるコンクリート養生粘着テープの、湿潤状態のコンクリート表面に対する粘着性をさらに向上させることができるため好ましい。また、前記ラクタム系ポリマーの含有量が、前記(メタ)アクリル系ポリマーの量に対して、99重量%以下であれば、被着体への濡れ性が向上するため好ましい。
【0093】
(1.2.3 有機溶剤)
本発明の一実施形態に係るコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物は、有機溶剤を含有していてもよい。
【0094】
前記有機溶剤の沸点(常圧ないし大気圧における沸点)は、特に限定されないが、粘着剤層を形成するという観点からは、比較的低沸点、例えば180℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは130℃以下であってもよい。
【0095】
前記有機溶剤は、前記ラクタム系ポリマーを溶解可能な有機溶剤(有機溶剤Aということがある)を含んでいてもよい。有機溶剤Aは、前記ラクタム系ポリマーの種類にもよるが、親水性又は水溶性の溶剤であってもよい。有機溶剤Aの水に対する溶解度(20℃)は、例えば、10g/100g以上、好ましくは20g/100g以上、さらに好ましくは50g/100g以上であってもよく、水と混和(任意に混和)する溶媒(水に対する良溶媒)であってもよい。
【0096】
前記有機溶剤は、前記(メタ)アクリル系ポリマーを溶解可能な有機溶剤(有機溶剤Bということがある)を含んでいてもよい。有機溶剤Bは、(メタ)アクリル系ポリマーの種類にもよるが、疎水性の溶剤であってもよい。有機溶剤Bは、水に対する溶解度(20℃)が、例えば、10g/100g以下、又は、例えば、10g/100g未満の溶媒であってもよく、水に対して実質的に溶解しない溶媒(水に対する貧溶媒)であってもよい。
【0097】
有機溶剤Bは、有機溶剤Aと共通する溶剤、すなわち、前記ラクタム系ポリマー及び前記(メタ)アクリル系ポリマーの双方を溶解可能な有機溶剤であってもよいが、通常、ラクタム系ポリマーを溶解しない(又は溶解しがたい)溶媒(又はラクタム系ポリマーに対する貧溶媒)であり得る。
【0098】
有機溶剤Bは、有機溶剤Aに対して溶解可能(有機溶剤Aに対する良溶媒)であってもよい。このような有機溶剤BとAとを組み合わせることで、(メタ)アクリル系ポリマー(例えば、疎水性の(メタ)アクリル系ポリマー)とラクタム系ポリマー(例えば、親水性のラクタム系ポリマー)を効率よく均一に混合しやすく、粘着剤層におけるこれらの相溶(さらには透明性)を効率よく実現しやすい。
【0099】
有機溶剤Aとしては、ラクタム系ポリマーの種類等にもよるが、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等)、ハロゲン系溶剤(例えば、クロロホルム等)、アミド類[例えば、鎖状アミド(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド)、環状アミド(又はラクタム、例えば、2-ピロリドン等)]等が挙げられる。また、有機溶剤Bとしては、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーの種類等にもよるが、例えば、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、脂肪族エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)等が挙げられる。有機溶剤A及び有機溶剤Bは、それぞれ、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。本発明では、上記のように有機溶剤の種類(さらにはその組み合わせや、組成物における各成分の存在形態)を選択することにより、効率よく湿潤面に対する粘着性を発揮しやすい。
【0100】
本発明の一実施形態に係るコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物では、少なくとも前記ラクタム系ポリマー、より好ましくは前記ラクタム系ポリマー及び前記(メタ)アクリル系ポリマーが、溶媒に溶解していることが好ましい。溶解状態で前記ラクタム系ポリマー(さらには前記(メタ)アクリル系ポリマー)を存在させることにより、優れた塗工性、及び湿潤状態のコンクリート表面に対する粘着性を発揮しやすい。
【0101】
前記有機溶剤が、有機溶剤Bと有機溶剤Aとを含む場合、これらの割合は、有機溶剤B/有機溶剤A(重量比)=99.9/0.1~1/99(例えば、99.5/0.5~5/95)、好ましくは99/1~10/90(例えば、98.5/1.5~15/85)、さらに好ましくは98/2~20/80(例えば、97.5/2.5~25/75)、特に97/3~30/70(例えば、96.5/3.5~40/60)程度であってもよく、99/1~50/50、99/1~55/45、98/2~60/40、97/3~65/35、96/4~70/30(例えば、95/5~80/20)等であってもよい。
【0102】
本発明の一実施形態に係るコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物には、前記有機溶剤等の揮発成分が含まれ得るが、かかる揮発成分を除いた不揮発成分の含有量は、コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物の全重量に対して、好ましくは20~80重量%であり、より好ましくは25~70重量%であり、さらに好ましくは30~60重量%である。
【0103】
(1.2.4 上記以外のその他の成分)
本発明の一実施形態に係るコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物は、さらに、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、粘着剤に通常使用されるその他の成分を含んでいてもよい。かかるその他の成分としては、充填剤、顔料、希釈剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、粘度調整剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤、消泡剤、剥離調整剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種類又は2種以上組み合わせて使用可能である。これらの添加剤の含有量は、所望する物性が得られるように、その成分の種類及び使用用途等に応じて適宜設定すればよい。
【0104】
〔1.3 コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマーを含み、これを前記(メタ)アクリル系ポリマー以外のその他の成分から選択されるいずれかと混合することにより製造することができる。
【0105】
混合する方法としては、特に限定されるものではないが、各成分が均一に分散していることが望ましい。
【0106】
ここで、前述の各成分を混合する順序は特に限定されるものではなくどのような順であってもよい。前記(メタ)アクリル系ポリマー、前記ラクタム系ポリマー及び前記有機溶剤Aを、必要に応じて、前記有機溶剤B及び前記その他の成分から選択されるいずれかと混合する場合は、前記ラクタム系ポリマーを予め前記有機溶剤Aに溶解した後に、他の成分と混合することが好ましい。前記ラクタム系ポリマーを予め前記有機溶剤Aに溶解することにより、(メタ)アクリル系ポリマーとラクタム系ポリマーとを比較的均一に混合(相溶)させることができる。
【0107】
〔2 粘着剤層、粘着製品〕
本発明の一実施形態に係る粘着製品は、本発明の一実施形態に係るコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物を塗布乾燥してなる粘着剤層を含む。当該粘着製品としては、例えば、粘着シート、粘着ラベル、粘着テープ、両面テープ等が挙げられる。このような粘着製品は、基材レスで、又は基材に粘着剤の層を形成することにより製造される。より具体的には、例えば、コンクリート表面に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及び不織布等の養生シートを固定化するためのコンクリート養生用粘着テープ、又は、コンクリートを保護するマスキングテープ(コンクリート用養生テープ)等が粘着製品として挙げられる。
【0108】
前記基材としては、上質紙、クラフト紙、クレープ紙、グラシン紙等の従来公知の紙類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、セロファン等のプラスチック;織布、不織布等の繊維製品等を利用できる。前記基材の形状は、例えば、フィルム状、シート状、テープ状、板状、発泡体等が挙げられるが、特に限定されるものではない。前記基材の片面に前記コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物を公知の方法で塗布することによって、粘着製品を得ることができる。また、紙、合成紙、プラスチックフィルム等のシート状物に離型剤が塗布されている離型紙等に前記コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物を塗布することにより、基材レス(単層構造)の粘着製品が得られ、基材レスの両面テープとして使用することができる。また、前記基材の両面に同種又は異種の前記コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物を塗布して、両面テープとしてもよい。
【0109】
前記コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物を基材に塗布する方法は、特に限定されず、ロールコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピング法等の公知の方法を採用することができる。この場合、コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物を基材に直接塗布する方法、離型紙等に粘着剤組成物を塗布した後、この塗布物を基材上に転写する方法等いずれも採用可能である。
【0110】
前記コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物を塗布した後、乾燥させることにより、基材上に粘着剤層が形成される。乾燥温度は、特に限定されないが、架橋剤が含まれる場合には、加熱乾燥時に架橋反応が進行するので、架橋剤の種類に応じて架橋反応が速やかに進行する温度で乾燥することが好ましい。なお、用途によっては、コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物を被着体に直接、塗布してもよい。
【0111】
前記乾燥時における乾燥温度としては、特に限定されるものではないが、組成物中の溶媒が十分揮発する温度であることが好ましい。
【0112】
前記基材上に形成された粘着剤層の表面には、例えば、離型紙を貼着してもよい。離型紙は剥離紙とも称される。これにより、粘着剤層の表面を好適に保護及び保存することができる。剥離紙は、粘着製品を使用する際に、コンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物の表面から引き剥がされる。なお、シート状又はテープ状等の基材の片面に粘着剤面が形成されている場合は、この基材の背面に公知の離型剤を塗布して離型剤層を形成することが好ましい。これにより、粘着剤層を内側にして、粘着シート(テープ)をロール状に巻けば、粘着剤層は、基材背面の離型剤層と当接することとなるので、粘着剤層の表面が保護及び保存される。
【0113】
本明細書において、コンクリート養生粘着テープとは、コンクリート表面の養生に使用される粘着テープをいう。コンクリート養生粘着テープの代表的な例としては、例えば、コンクリート表面を養生シートで覆うことにより、コンクリート表面を湿潤状態に保って養生する方法において、養生シートをコンクリート表面に固定するために使用される粘着テープ(コンクリート養生用粘着テープ)を挙げることができる。或いは、他の例としては、例えば道路をアスファルトで舗装する工事を行うとき等に、コンクリート製の縁石などを保護する目的で使用される粘着テープ(コンクリート保護用粘着テープ)も、本発明のコンクリート養生粘着テープに含まれる。しかし、コンクリート養生粘着テープは、これに限定されるものではなく、コンクリート養生に使用される粘着テープであればどのような物でもよい。
【実施例
【0114】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「部」は「重量部」を意味する。
【0115】
〔測定方法〕
実施例1~9、並びに、比較例1及び2で得られた粘着テープの、乾燥コンクリート表面及び湿潤コンクリート表面に対する粘着性、並びに、乾燥コンクリート表面及び湿潤コンクリート表面に対する再剥離性を以下の方法によって評価した。
【0116】
(1)乾燥コンクリート表面に対する粘着性の評価方法
粘着テープを長さ50mm、幅25mmの長方形に裁断することにより、長方形型の粘着テープを作製した。被着体としては、JIS規格K5600対応のモルタル板を用意した。モルタル板としては粒度150のサンドペーパーで表面を研磨したものを用いた。前記長方形型の粘着テープの剥離紙を剥離して、モルタル面上に、粘着面がモルタル面と接するように前記長方形型の粘着テープを置き、質量が2kgのロールを、モルタル面上の前記長方形型の粘着テープの上で往復させることにより、前記長方形型の粘着テープをモルタル面上に貼り付けた。室温(約23℃)で25分間静置した後、剥離角度180°、剥離速度300mm/minで、前記長方形型の粘着テープを剥離したときの剥離力(粘着力)を測定し、乾燥コンクリート表面に対する粘着性を評価した。
【0117】
(2)湿潤コンクリート表面に対する粘着性の評価方法
前記(1)と同様のモルタル板を水中に24時間浸漬したあとに取り出し、モルタル板の表面の水を布で軽く1往復ふき取り、湿潤状態の被着体とした。その後、前記(1)と同様にして測定を行い、湿潤コンクリート表面に対する粘着性を評価した。
【0118】
(3)乾燥コンクリート表面及び湿潤コンクリート表面に対する再剥離性の評価
前記(1)及び(2)において、それぞれ、乾燥コンクリート表面及び湿潤コンクリート表面に対する剥離力の測定の後、目視により剥離後のモルタル表面の糊残りの状態を観察し、以下に示す基準により評価した。
○:糊残り無し
×:貼り跡の一部もしくは全面に糊残り有り
〔実施例1〕
冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗及び撹拌機を備えた反応容器内に酢酸エチル150部(重量部、以下同じ)、アクリル酸-2-メトキシエチル(AME)94.9部、アクリル酸(AA)5.0部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.1部を仕込んだ(表1の組成1)。その後、この反応容器内にアゾ系重合開始剤(日本ファインケム社製、商品名:ABN-E)0.1部を添加し、窒素ガス雰囲気中にて80℃で6時間反応させることにより、重量平均分子量が60万のアクリル系ポリマーを得た。その後得られたアクリル系ポリマーを含む反応混合物を室温まで冷却し、粘着剤組成物Aを得た。粘着剤組成物A100部に対してテトラッドC(三菱ガス化学株式会社製)0.021部(アクリル系ポリマー固形分に対して0.0525重量%)を添加することにより、粘着剤組成物Bを得た。アプリケーターを用いて前記粘着剤組成物Bを剥離紙(サンエー化研株式会社製、商品名:K-80HS)に塗布し、次いで80℃の温度で3分間乾燥させた。これにより、剥離紙上に厚さが25μmである粘着剤層を形成させた。この粘着剤層上にPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム基材(厚さ:25μm)を貼り合わせた。その後、40℃で72時間エージングを行い、片面が接着面である粘着テープを得た。
【0119】
〔実施例2、3〕
架橋剤の種類及び量を表2に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様の反応及び操作を行い、アクリル系ポリマー、粘着剤組成物及び粘着テープを得た。
【0120】
〔実施例4〕
実施例1で得られた、粘着剤組成物A100部に対して、ポリビニルピロリドン(PVP, K-30 日本触媒社製)のメタノール溶液を20部(PVPとして4部、PVPとしてアクリル系ポリマー固形分に対して10重量%)とテトラッドC(三菱ガス化学株式会社製)を表2に記載のとおりに添加することにより、粘着剤組成物Bを得た。得られた粘着剤組成物Bを使用して実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0121】
〔実施例5〕
実施例1で得られた、粘着剤組成物A100部に対して、ポリビニルピロリドン(PVP, K-30 日本触媒社製)のイソプロピルアルコール溶液を20部(PVPとして4部、PVPとしてアクリル系ポリマー固形分に対して10重量%)とテトラッドC(三菱ガス化学株式会社製)を表2に記載のとおりに添加することにより、粘着剤組成物Bを得た。得られた粘着剤組成物Bを使用して実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0122】
〔比較例1〕
モノマー組成を表1に示す組成2に変更した以外は、実施例1と同様の反応及び操作を行い、アクリル系ポリマー、粘着剤組成物及び粘着テープを得た。
【0123】
〔比較例2〕
モノマー組成を表1に示す組成3に変更した以外は、実施例1と同様の反応及び操作を行い、アクリル系ポリマー、粘着剤組成物及び粘着テープを得た。
【0124】
【表1】
【0125】
表1中の略称はそれぞれ以下の化合物を示す。
BA:ブチルアクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
AME:2-メトキシエチルアクリレート
VAC:酢酸ビニル
AA:アクリル酸
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
【0126】
【表2】
【0127】
表2中の略称はそれぞれ以下の化合物を示す。
PVP:ポリビニルピロリドン
MeOH:メタノール
IPA:イソプロピルアルコール
また、表2中、架橋剤の量は、粘着剤組成物A100部に対して添加した量、PVPの量は、粘着剤組成物A100部中の固形分に対して添加した量である。
【0128】
実施例1~5より、一般式(1)で表される、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位と、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位と、水酸基含有モノマー由来の構造単位とを含む(メタ)アクリル系ポリマーを含有するコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物から得られる粘着テープは、乾燥状態及び湿潤状態のコンクリート表面に対する粘着性に優れるとともに、再剥離性に優れることがわかる。
【0129】
また、実施例1と実施例4との比較、及び、実施例2と実施例5との比較より、(メタ)アクリル系ポリマーに加えてラクタム系ポリマーを含有するコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物から得られる粘着テープは、ラクタム系ポリマーを含有しない場合と比べて、湿潤状態のコンクリート表面に対する粘着性が向上していることがわかる。
【0130】
〔実施例6~9〕
モノマー組成を表3に記載のとおりに変更し、架橋剤の種類及び量を表4に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の反応及び操作を行い、アクリル系ポリマー、粘着剤組成物及び粘着テープを得た。
【0131】
【表3】
【0132】
表3中の略称はそれぞれ以下の化合物を示す。
MTG-A:メトキシ-トリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学株式会社製)
MAA:メタクリル酸
NVP:N-ビニルピロリドン
【0133】
【表4】
【0134】
実施例1~9と比較例1、2との結果より、上記一般式(1)で表される、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位を含む(メタ)アクリル系ポリマーを含有するコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物から得られる粘着テープは、当該アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位を含まない場合と比較して、乾燥状態及び湿潤状態のコンクリート表面に対する粘着性に優れるとともに、再剥離性に優れることがわかる。
【0135】
実施例1~5の結果と同様に、実施例6~9の結果から、上記一般式(1)で表される、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位と、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位と、水酸基含有モノマー由来の構造単位とを含む(メタ)アクリル系ポリマーを含有するコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物から得られる粘着テープは、乾燥状態及び湿潤状態のコンクリート表面に対する粘着性に優れるとともに、再剥離性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、コンクリート養生用の粘着製品に利用することができる。