(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ガス利用を最適化するための方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/14 20060101AFI20230912BHJP
C12P 7/06 20060101ALI20230912BHJP
C12P 7/04 20060101ALI20230912BHJP
C12P 7/54 20060101ALI20230912BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C12P7/14
C12P7/06
C12P7/04
C12P7/54
C12N1/00 S
(21)【出願番号】P 2021564235
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(86)【国際出願番号】 US2020037729
(87)【国際公開番号】W WO2021006995
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-10-28
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518403425
【氏名又は名称】ランザテク,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,アラン ハイミング
(72)【発明者】
【氏名】コンラッド,ロバート ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ベルナセク,セバスチャン ミカル
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,マイケル アンソニー
【審査官】馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0247171(US,A1)
【文献】国際公開第2019/051069(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0301934(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0143972(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/14
C12P 7/06
C12P 7/04
C12P 7/54
C12N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列発酵プロセスへのガスの流れを最適化するための方法であって、
a.少なくとも1つの工業的供給源に由来するガス流を、少なくとも1つの水素分離モジュールを使用して、水素が豊富な流れおよび水素が枯渇した流れに分離することと、
b.水素が豊富な流れおよび水素が枯渇した流れをそれぞれ第1の発酵プロセスおよび第2の発酵プロセスに並列で通過させることであって、前記第1の発酵プロセスおよび前記第2の発酵プロセスは並列で流れていることと、
c.第1の発酵生成物を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器を使用して、第1の発酵プロセスにおいて前記水素が豊富な流れの少なくとも一部を発酵させることと、
d.第2の発酵生成物を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器を含む第2の発酵プロセスにおいて、前記水素が枯渇した流れの少なくとも一部を発酵させることと、を含み、
前記第1の発酵生成物および
前記第2の発酵生成物は、異なる生成物であ
り、前記水素が豊富な流れはH
2
およびCOを、2:1から5:1のH
2
:CO比で含み、前記水素が枯渇した流れは、H
2
およびCOを0.05:1から2:1未満のH
2
:CO比で含む、方法。
【請求項2】
前記第1の発酵生成物が、エタノールであり、前記第2の発酵生成物が、2,3-ブタンジオールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水素分離モジュールが、圧力スイング吸着プロセスである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工業的供給源が、炭水化物発酵、ガス発酵、セメント製造、パルプおよび製紙、製鋼、石油精製および関連プロセス、石油化学生成、コークス生成、嫌気性または好気性消化、ガス化、天然ガス抽出、メタン改質、石油抽出、アルミニウム、銅、および/または鉄合金の生成および/または精製のための冶金プロセス、地質貯留層、ならびに触媒プロセスからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ガス流の少なくとも一部が、冶金プロセスからの高炉上部ガスからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の発酵プロセス内で生成されたベントガスの少なくとも一部は、前記水素が豊富な流れに再循環される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の発酵プロセス内で生成された前記ベントガスの少なくとも一部は、前記水素が豊富な流れに再循環される前に、圧力スイング吸着プロセスを通過する、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の発酵プロセス内で生成されたベントガスの少なくとも一部は、前記水素が枯渇した流れに再循環される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の発酵プロセス内で生成された前記ベントガスの少なくとも一部は、前記水素が枯渇した流れに再循環される前に、圧力スイング吸着プロセスを通過する、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記C1固定微生物が、モレラ(Moorella)、クロストリジウム(Clostridium)、ルミノコッカス(Ruminococcus)、アセトバクテリウム(Acetobacterium)、ユーバクテリウム(Eubacterium)、ブチリバクテリウム(Butyribacterium)、オキソバクター(Oxobacter)、メタノサルシナ(Methanosarcina)、およびデスルホトマキュラム(Desulfotomaculum)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記C1固定微生物が、クロストリジウムオートエタノゲヌム(Clostridium autoethanogenum)である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
直列発酵プロセスへのガスの流れを最適化するための方法であって、
a.少なくとも1つの工業的供給源に由来するガス流を、少なくとも1つの水素分離モジュールを使用して、水素が豊富な流れおよび水素が枯渇した流れに分離することと、
b.第1の発酵生成物を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器を使用して、第1の発酵プロセスにおいて前記水素が豊富な流れの少なくとも一部を発酵させることと、
c.第2の発酵生成物を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器を含む第2の発酵プロセスにおいて、前記水素が枯渇した流れの少なくとも一部を発酵させることと、を含み、
前記第1の発酵生成物の少なくとも一部が、前記第2の発酵プロセスに渡される、方法。
【請求項13】
前記第1の発酵生成物が、酢酸である、請求項1
2に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の発酵プロセスからの前記酢酸の少なくとも一部が、前記第2の発酵プロセスにおいてエタノールに変換される、請求項1
3に記載の方法。
【請求項15】
前記水素分離モジュールが、圧力スイング吸着プロセスである、請求項1
2に記載の方法。
【請求項16】
前記工業的供給源が、炭水化物発酵、ガス発酵、セメント製造、パルプおよび製紙、製鋼、石油精製および関連プロセス、石油化学生成、コークス生成、嫌気性または好気性消化、ガス化、天然ガス抽出、メタン改質、石油抽出、アルミニウム、銅、および/または鉄合金の生成および/または精製のための冶金プロセス、地質貯留層、ならびに触媒プロセスからなる群から選択される、請求項1
2に記載の方法。
【請求項17】
前記ガス流の少なくとも一部が、冶金プロセスからの高炉上部ガスからなる、請求項1
2に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の発酵プロセス内で生成されたベントガスの少なくとも一部は、前記水素が豊富な流れに再循環される、請求項1
2に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の発酵プロセス内で生成された前記ベントガスの少なくとも一部は、前記水素が豊富な流れに再循環される前に、圧力スイング吸着プロセスを通過する、請求項1
8に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の発酵プロセス内で生成されたベントガスの少なくとも一部は、前記水素が枯渇した流れに再循環される、請求項1
2に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の発酵プロセス内で生成された前記ベントガスの少なくとも一部は、前記水素が枯渇した流れに再循環される前に、圧力スイング吸着プロセスを通過する、請求項2
0に記載の方法。
【請求項22】
前記C1固定微生物が、モレラ(Moorella)、クロストリジウム(Clostridium)、ルミノコッカス(Ruminococcus)、アセトバクテリウム(Acetobacterium)、ユーバクテリウム(Eubacterium)、ブチリバクテリウム(Butyribacterium)、オキソバクター(Oxobacter)、メタノサルシナ(Methanosarcina)、およびデスルホトマキュラム(Desulfotomaculum)からなる群から選択される、請求項1
2に記載の方法。
【請求項23】
前記C1固定微生物が、クロストリジウムオートエタノゲヌム(Clostridium autoethanogenum)である、請求項1
2記載の方法。
【請求項24】
前記ガス流の少なくとも一部が、メタン改質プロセスに由来する、請求項1および1
2に記載の方法。
【請求項25】
前記メタン改質プロセスが、メタン含有ガスの少なくとも一部を、一酸化炭素および水素の少なくとも一部を含むガス流に変換する、請求項2
4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月11日に出願された米国仮特許出願第62/872,869号の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、発酵プロセスによってガスの利用を最適化するための方法に関する。具体的には、本発明は、特定の生成物の生成およびプロセスの全体的な炭素捕捉効率を最大化するために、ガス流内の様々な成分の制御された分離および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
二酸化炭素(CO2)は、人間の活動による世界の温室効果ガス排出の76%を占め、メタン(16%)、亜酸化窒素(6%)、およびフッ素化ガス(2%)が残りを占めている(米国環境保護庁)。温室効果ガス排出、特にCO2の削減は、地球温暖化の進行ならびにそれに伴う気候および天候の変化を止めるのに重要である。このようなガス排出の1つ以上の燃料または化学物質への変換は、排出を低減するための1つの潜在的な解決策である。
【0004】
フィッシャー-トロプシュプロセスなどの触媒プロセスを使用して、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、および/または水素(H2)を含むガスを、様々な燃料および化学物質に変換し得ることが長い間認識されている。しかしながら、最近、ガス発酵がそのようなガスの生物学的固定のための代替プラットフォームとして浮上している。特に、C1固定微生物は、CO2、CO、CH4、および/またはH2を含有するガスを、エタノールおよび2,3-ブタンジオールなどの生成物に変換することが示されている。
【0005】
このようなガスは、例えば、炭水化物発酵からのガス、セメント製造からのガス、パルプおよび製紙、製鋼、石油精製および関連プロセス、石油化学生成、コークス生成、嫌気性または好気性消化、ガス化(バイオマス、液体廃棄物流、固形廃棄物流、都市流、天然ガス、石炭および石油を含む化石資源を含むがこれらに限定されない供給源に由来する)、天然ガス抽出、メタン改質、石油抽出、アルミニウム、銅、および/または鉄合金の生成および/または精製のための冶金プロセス、地質学的貯留池、ならびに触媒プロセス(蒸気メタン改質、蒸気ナフサ改質、石油コークスのガス化、触媒再生-流動触媒分解、触媒再生-ナフサ改質、および乾式メタン改質を含むがこれらに限定されない蒸気供給源に由来する)を含む、工業的供給源に由来し得る。
【0006】
ガス発酵には、フィッシャー・トロプシュプロセスに比べて様々な利点がある。まず、フィッシャー・トロプシュでは、高温(150~350℃)、高圧(30bar)、およびコバルト、ルテニウム、および鉄などの不均一系触媒が利用される。それに比べて、ガス発酵は、37℃で行われ、大気圧で実施され得るので、フィッシャー・トロプシュプロセスに比べて大幅なエネルギーおよびコストの節約になる。さらに、フィッシャー・トロプシュプロセスでは、合成ガスにおける比較的固定されたH2:CO比(約2:1)が必要であるが、ガス発酵では、H2:CO比が変化する様々な範囲の基質を受容して利用することができる。
【0007】
ガス流の供給源および上流の工業的供給源の操作に応じて、H2:CO比は、大幅に変化し得る。ガス発酵は、様々なH2:CO比で多様な範囲の基質を受容し、利用することが可能であるが、特定の所望の生成物を生成するには、特定のガス組成が他の組成よりも理想的である場合がある。例えば、特定の生成物は、より低いH2:CO比を有するガス流から最適に生成され得る。
【0008】
しかしながら、所望の生成物が何であっても、ガス発酵プロセスの主な目的の1つは、プロセスによって達成される全体的な炭素捕捉を最大化することである。ガス流のH2:CO比に応じて、発酵プロセスは、副生成物として、発酵生成物を生成する過程でCO2を生成し得る。一酸化炭素の二酸化炭素への変換は、一酸化炭素が、理想的には二酸化炭素の代わりに1つ以上の燃料および/または化学物質に変換されるべきであるため、炭素捕捉効率の低減と見なされ得る。
【0009】
したがって、プロセスの全体的な炭素捕捉効率を最大化しながら、ガスが特定の生成物すべてを生成するために最適化されるように、ガスの組成の変更を可能にする方法の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、発酵プロセスによってガスの利用を最適化するための方法を提供する。具体的には、プロセスの全体的な炭素捕捉効率も最大化しながら、ガスが1つ以上の発酵プロセスにおいて特定の生成物を生成するために最適化されるように、本方法は、ガスの組成の変更を可能にする。特定の実施形態では、本発明は、2つの発酵プロセスを互いに並列で利用する。好ましくは、2つの発酵プロセスが利用される場合、ガス流は、少なくとも1つの分離モジュールを使用して、水素が豊富な流れおよび水素が枯渇した流れに分離される。水素が豊富な流れの少なくとも一部は、第1の発酵生成物を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも第1の反応器を使用して、第1の発酵プロセスにおいて発酵される。水素が枯渇した流れの少なくとも一部は、第2の発酵生成物を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも第2の反応器を使用する第2の発酵プロセスにおいて発酵される。特定の事例では、第1の発酵生成物および第2の発酵生成物は、異なる生成物である。例えば、一実施形態では、第1の発酵生成物は、エタノールであり、第2の発酵生成物は、2,3-ブタンデジオールである。
【0011】
特定の事例では、水素が豊富なガスのH2:CO比は、5:1、または5:1を超える。様々な実施形態では、水素が豊富なガスのH2:CO比は、2:1~5:1である。例えば、水素が豊富なガスのH2:CO比は、2:1~3:1、2.5:1~3.5:1、3:1~4:1、3.5:1~4.5:1、2:1~4:1、2.5:1~4.5:1、または2.5:1~5:1であり得る。好ましくは、水素が豊富なガスは、水素が枯渇したガスよりも高いH2:CO比を有する。
【0012】
好ましくは、第1の発酵プロセスは、水素が豊富なガスを利用して、エタノール、アセテート、モノエチレングリコール(MEG)、1,2-プロパンジオール、アセトン、イソプロパノール、ラクテート、1,3-ブタンジオール、2-ブタノール、2-ヒドロキシイソ酪酸、3-ヒドロキシブチレート、メチルエチルケトン(MEK)、イソプレンを含むテルペン、アジピン酸、1-ヘキサノール、および1-オクタノールからなる群から選択される少なくとも1つの発酵生成物を生成する。
【0013】
特定の事例では、水素が枯渇したガスのH2:CO比は、0.1:1、または0.1:1未満である。様々な実施形態では、水素が枯渇したガスのH2:CO比は、0.1:1~2:1である。例えば、水素が枯渇したガスのH2:CO比は、0.05:1~1.5:1、0.05:1~2:1、0.2:1~1.5:1、0.2:1~2:1、0.5:1~1.5:1、または0.5:1~2:1であり得る。好ましくは、水素が枯渇したガスは、水素が豊富なガスよりも低いH2:CO比を有する。
【0014】
好ましくは、第2の発酵プロセスは、水素が枯渇したガスを利用して、エタノール、アセテート、モノエチレングリコール(MEG)、1,2-プロパンジオール3-ヒドロキシプロピオネート、アセトン、イソプロパノール、ラクテート、1,3-ブタンジオール、2-ブタノール、2-ヒドロキシイソ酪酸、3-ヒドロキシブチレート、メチルエチルケトン(MEK)、イソアミルアルコール、イソプレンを含むテルペン、アジピン酸、1-ヘキサノール、1-オクタノール、およびコリスメート由来生成物からなる群から選択される少なくとも1つの発酵生成物を生成する。特定の事例では、水素が豊富な流れの代わりに水素が枯渇した流れを用いて、特定の生成物を生成することがより有利である。例えば、3-ヒドロキシプロピオネート、イソアミルアルコール、および/またはコリスメート由来生成物は、好ましくは、水素が豊富な流れの代わりに水素が枯渇した流れを使用して生成される。
【0015】
本発明が2つの発酵プロセスを利用する様々な事例では、ガスおよび液体栄養培地は、第1の発酵プロセスおよび第2の発酵プロセスの両方に並列で流れ得る。
【0016】
特定の事例では、水素分離モジュールは、少なくとも1つの圧力スイング吸着プロセスからなる。様々な実施形態では、水素分離モジュールとしては、圧力スイング吸着、温度スイング吸着、膜分離、またはCO、H2、および/またはCO2のうちの1つ以上の選択的除去によってガスの組成を調整するために使用される任意の他のガス分離技術からなる群から選択される少なくとも1つの分離技術を挙げることができる。好ましくは、水素分離モジュールは、水素の少なくとも75パーセント(75%)をガス流から分離して、水素が豊富な流れおよび水素が枯渇したガス流を生成することが可能である。特定の事例では、水素分離モジュールは、水素の少なくとも95パーセント(95%)をガス流から分離して、水素が豊富なガス流および水素が枯渇したガス流を生成する。様々な事例では、水素が豊富なガス流および水素が枯渇したガス流の両方は、ある程度の一酸化炭素および/または二酸化炭素を含有する。
【0017】
好ましくは、ガス流は、炭水化物発酵、ガス発酵、セメント製造、パルプおよび製紙、製鋼、石油精製および関連プロセス、石油化学生成、コークス生成、嫌気性または好気性消化、ガス化、天然ガス抽出、メタン改質、石油抽出、アルミニウム、銅、および/または鉄合金の生成および/または精製のための冶金プロセス、地質貯留層、ならびに触媒プロセスからなる群から選択される1つ以上の工業的供給源から供給される。特定の事例では、ガスの少なくとも一部は、メタン改質プロセスに由来する。このようなメタン改質プロセスは、好ましくは、メタン含有ガスの少なくとも一部を、一酸化炭素および水素の少なくとも一部を含むガス流に変換する。特定の実施形態では、メタンは、化石燃料生成施設、埋め立て地、および/または廃水処理施設から供給される。
【0018】
様々な実施形態では、ガス流の少なくとも一部は、冶金プロセスからの高炉上部ガスからなる。
【0019】
ガスの最適化はまた、好適なH2:CO比に到達するために、1つ以上の追加のガスの混合も含まれ得る。例えば、この追加のガスは、1つ以上の電気分解プロセス(水から水素を生成するための電気分解プロセスおよび/または二酸化炭素から一酸化炭素を生成するための電気分解プロセスの両方を含む)、工業的供給源、メタン改質プロセス、および/または発酵プロセスからのベントガスから供給され得る。しかしながら、様々な実施形態では、本発明は、1つ以上の追加のガスの混合を利用せず、代わりに、水素分離モジュールによるガス流からの成分の分離のみを利用する。
【0020】
特定の事例では、第1の発酵プロセス内で生成されたベントガスの少なくとも一部は、水素が豊富な流れに再循環される。
【0021】
特定の事例では、第2の発酵プロセス内で生成されたベントガスの少なくとも一部は、水素が枯渇した流れに再循環される。
【0022】
発酵プロセスからのベントガスと、工業的供給源からのガスとの理想的な混合を確実にするために、ベントガスの少なくとも一部は、少なくとも1つの水素分離モジュールに通過し得る。特定の事例では、第1の発酵プロセス内で生成されたベントガスの少なくとも一部は、水素が豊富な流れに再循環される前に、圧力スイング吸着プロセスを通過する。特定の事例では、第2の発酵プロセス内で生成されたベントガスの少なくとも一部は、水素が枯渇した流れに再循環される前に、圧力スイング吸着プロセスを通過する。
【0023】
好ましくは、発酵プロセスは、少なくとも1つのC1固定微生物を利用する。特定の事例では、第1の発酵プロセスおよび第2の発酵プロセスの両方は、同じ種のC1固定微生物を利用する。他の実施形態では、第1の発酵プロセスは、第2の発酵プロセスとは異なる種の微生物を利用する。好ましくは、発酵プロセス中に使用されるC1固定微生物は、Moorella、Clostridium、Ruminococcus、Acetobacterium、Eubacterium、Butyribacterium、Oxobacter、Methanosarcina、およびDesulfotomaculumからなる群から選択される。特定の事例では、第1の発酵プロセスおよび第2の発酵プロセスの両方は、Clostridium属からのC1固定微生物を利用する。第1の発酵プロセスおよび第2の発酵プロセスによって利用されるこのような微生物は、好ましくは、Clostridium autoethanogenumである。
【0024】
特定の実施形態では、本発明は、2つの発酵プロセスを互いに直列で利用する。好ましくは、2つの発酵プロセスが互いに直列で使用される場合、ガス流は、少なくとも1つの水素分離モジュールを使用して、水素が豊富な流れおよび水素が枯渇した流れに分離される。水素が豊富な流れの少なくとも一部は、第1の発酵生成物を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器を使用して、第1の発酵プロセスにおいて発酵される。水素が枯渇した流れの少なくとも一部は、第2の発酵生成物を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する第2の発酵プロセスにおいて発酵される。2つの発酵プロセスが互いに直列である場合、好ましくは、第1の発酵生成物の少なくとも一部が、第2の発酵プロセスに渡されて、第2の発酵生成物を生成する。
【0025】
特定の事例では、第1の発酵生成物は、酢酸である。好ましくは、発酵プロセスが直列である場合、第1の発酵プロセスからの酢酸の少なくとも一部は、第2の発酵プロセスにおいてエタノールに変換される。
【0026】
特定の実施形態では、本発明は、ベントガス流の少なくとも一部を再循環させて、発酵生成物を生成するためのガス流の組成を最適化する、1つの発酵プロセスを包含する。このような発酵プロセスは、好ましくは、発酵生成物およびベントガス流を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器を使用して、工業的供給源からのガス流の少なくとも一部を発酵させる。ベントガス流の少なくとも一部は、バイオリアクターに再循環され得、これは、場合によっては、培養物の潜在的な阻害を低減および/または軽減し得る。
【0027】
特定の事例では、ベントガスの少なくとも一部は、バイオリアクターに再循環される前に、圧力スイング吸着プロセスを通過する。
【0028】
圧力スイング吸着プロセスの使用は、好ましくは、二酸化炭素、無機炭化水素、タール、有機窒素、ならびに有機および無機硫黄からなる群から選択される少なくとも1つの成分を、ベントガス流から除去して、浄化されたベントガス流を作り出す。
【0029】
好ましくは、圧力スイング吸着プロセスは、二酸化炭素、無機炭化水素、タール、有機窒素、ならびに有機および無機硫黄からなる群から選択される少なくとも2つの成分の少なくとも一部を、ベントガス流から同時に除去して、浄化されたベントガス流を作り出す。
【0030】
様々な事例では、発酵プロセスに送られる全ガス流は、工業的供給源からのガス流と、浄化されたベントガスの少なくとも一部との組み合わせからなる。
【0031】
浄化されたベントガスは、好ましくは、工業的供給源からのガスの組成と比較した場合、より高い割合のメタンおよび窒素を含有する。
【0032】
浄化されたベントガスが発酵プロセスに再循環される特定の実施形態では、浄化されたベントガスの発酵プロセスのバイオリアクターへの再循環は、全ガス流中のメタンおよび窒素の全体的な組成を少なくとも15パーセント(15%)増加させる。特定の事例では、浄化されたベントガスの少なくとも一部のバイオリアクターへの再循環は、全ガス流中のメタンおよび窒素の全体的な組成を少なくとも50パーセント(50%)増加させる。特定の事例では、浄化されたベントガスの少なくとも一部のバイオリアクターへの再循環は、全ガス流中のメタンおよび窒素の全体的な組成を、10~20パーセント(10~20%)、15~30パーセント(15~30%)、25~35パーセント(25~35%)、30~45パーセント(30~45%)、または15~50パーセント(15~50%)増加させる。好ましくは、浄化されたベントガスの少なくとも一部のバイオリアクターへの再循環は、培養物の潜在的な阻害を低減および/または軽減する。
【0033】
様々な事例では、発酵プロセスは、全ガス流の少なくとも一部を利用して、1つ以上の燃料または化学物質を生成する。発酵プロセスによって生成される生成物のうちの少なくとも1つは、エタノール、アセテート、モノエチレングリコール(MEG)、1,2-プロパンジオール、1-プロパノール、3-ヒドロキシプロピオネート、アセトン、イソプロパノール、ラクテート、1,3-ブタンジオール、2-ブタノール、2-ヒドロキシイソ酪酸、3-ヒドロキシブチレート、メチルエチルケトン(MEK)、イソアミルアルコール、イソプレンを含むテルペン、アジピン酸、1-ヘキサノール、1-オクタノール、およびコリスメート由来生成物からなる群から選択され得る。
【0034】
1つ以上の発酵プロセスは、1つ以上の燃料または化学物質の生成の一部として、微生物バイオマスを生成する。1つ以上の発酵プロセスによって生成される微生物バイオマスの少なくとも一部は、単一細胞タンパク質(SCP)に変換され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、1つ以上の燃料または化学物質は、二次変換プロセスに送られ得る。様々な事例では、二次変換プロセスは、さらに、1つ以上の燃料または化学物質の少なくとも一部を、ディーゼル燃料、ジェット燃料、ガソリン、プロピレン、ナイロン6-6、ゴム、および/または樹脂の少なくとも1つの成分に変換する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一態様による、最適化されたガス流から別個の生成物を生成する並列発酵プロセスを示すプロセス統合図を示す。
【
図2】本発明の一態様による、最適化されたガス流の直列発酵プロセスへの流れを示すプロセス統合図を示す。
【
図3】本発明の一態様による、ガス貯蔵タンクおよび蒸気発生器、発電機、および/または供給原料乾燥プロセスと組み合わせた、発酵プロセスからの再循環されたベントガスの利用を示すプロセス統合図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明者らは、1つ以上の発酵プロセスに供給されるガスの組成を制御することによって、所望の生成物に対する選択性が改善され得ることを特定した。本発明者らは、組成を制御するための1つのメカニズムが、2つの発酵プロセスを互いに並行して利用することであることを見出した。
【0038】
定義
別段の定めがない限り、本明細書全体で使用される以下の用語は、以下のように定義される。
【0039】
「発酵」、「ガス発酵」などの用語は、ガス化によって生成された合成ガスなどの1つ以上の基質を受容し、1つ以上のC1固定微生物を利用して1つ以上の生成物を生成するプロセスとして解釈されるべきである。好ましくは、発酵プロセスは、1つ以上のバイオリアクターの使用を含む。発酵プロセスは、「バッチ」または「連続」のいずれかとして説明され得る。「バッチ発酵」は、バイオリアクターが微生物とともに原料、すなわち炭素源で満たされ、発酵が完了するまで生成物がバイオリアクター内に留まる発酵プロセスを説明するために使用される。「バッチ」プロセスでは、発酵が完了した後に、生成物を抽出し、次の「バッチ」が始まる前にバイオリアクターを洗浄する。「連続発酵」は、発酵プロセスがより長期間にわたって延長され、発酵中に生成物および/または代謝物が抽出される発酵プロセスを説明するために使用される。好ましくは、発酵プロセスは連続的である。
【0040】
文脈上別段の要求がない限り、本明細書で使用される場合、「発酵」、「発酵プロセス」、または「発酵反応」などの句は、ガス状基質の増殖期および生成物生合成期の両方を包含することを意図する。
【0041】
特定の実施形態では、発酵は、糖、デンプン、リグニン、セルロース、またはヘミセルロースなどの炭水化物基質の不在下で実施される。
【0042】
「効率を高める」、「効率が高められた」などの用語は、発酵プロセスに関して使用される場合、プロセスによって捕捉される炭素量を増加させること、1つ以上の望ましくない副生成物に変換される炭素量を減少させること、発酵に触媒作用を及ぼす微生物の増殖速度、高い生成物濃度における増殖および/または生成物生成速度のうちの1つ以上を増加させること、消費される基質の体積あたりに生成される所望の生成物の体積を増加させること、所望の生成物の生成速度または生成レベルを増加させること、発酵の他の副生成物と比較して生成される所望の生成物の相対的割合を増加させること、プロセスによって消費される水の量を減少させること、ならびにプロセスによって利用されるエネルギーの量を減少させることを含むが、これらに限定されない。
【0043】
特定の実施形態では、水素の存在は、発酵プロセスによるエタノール生成の改善された全体的な効率をもたらす。
【0044】
水素の存在下で発酵プロセスを操作することには、発酵プロセスによって生成されるCO2の量が低減されるというさらなる利点がある。例えば、最小限のH2を含むガス状基質は、一般に、以下の化学量論[6CO+3H2O→C2H5OH+4CO2]に従って、エタノールおよびCO2を生成するであろう。C1固定細菌によって利用される水素の量が増加すると、生成されるCO2の量は減少する[例えば、2CO+4H2→C2H5OH+H2O]。
【0045】
化学量論比が2:1(H2:CO)の場合、CO2の生成は完全に回避される。以下に示されるように、H2:COの化学量論比を変化させた場合、様々な量の炭素が十分に利用されず、エタノールに変換される代わりに、CO2が副生成物として変換される。
5CO+1H2+2H2O→1C2H5OH+3CO2(ΔG°=-204.80kJ/モル エタノール)
4CO+2H2+1H2O→1C2H5OH+2CO2(ΔG°=-184.70kJ/モル エタノール)
3CO+3H2→1C2H5OH+1CO2(ΔG°=-164.60kJ/モル エタノール)
【0046】
「流」とは、例えば、あるプロセスから別のプロセスへ、あるモジュールから別のモジュールへ、および/またはあるプロセスから炭素捕捉手段へ送ることが可能な任意の基質を指す。
【0047】
「水素が豊富な流れ」は、「水素が枯渇した流れ」よりも高い水素の相対比率を有するガス流である。様々な事例では、水素が豊富な流れは、少なくとも2:1のH2:CO化学量論比を有し、一方、水素が枯渇した流れは、2:1未満のH2:CO化学量論比を有する。
【0048】
「浄化されたガス」、「浄化された流」などの用語は、少なくとも1つの水素分離モジュールを通過したガス流を指す。
【0049】
「水素分離モジュール」としては、圧力スイング吸着、温度スイング吸着、膜分離、またはCO、H2、および/またはCO2のうちの1つ以上の選択的除去によってガスの組成を調整するために使用される任意の他のガス分離技術からなる群から選択される少なくとも1つの分離技術が挙げられる。好ましくは、水素分離モジュールは、少なくとも1つの圧力スイング吸着プロセスを含む。様々な事例では、水素分離モジュールは、二酸化炭素、無機炭化水素、タール、有機窒素、ならびに有機および無機硫黄からなる群から選択される少なくとも2つの成分を同時に除去するために使用される。
【0050】
本明細書で使用される場合、「炭素捕捉」という用語は、CO2および/またはCOを含むガス流からのCO2および/またはCOを含む炭素化合物の隔離し、
CO2および/もしくはCOを生成物に変換すること、または
CO2および/もしくはCOを長期貯蔵に好適な物質に変換すること、または
CO2および/もしくはCOを長期貯蔵に好適な物質中に閉じ込めること、または
これらのプロセスの組み合わせのいずれかを指す。
【0051】
「バイオリアクター」、「反応器」などの用語は、発酵プロセスに使用される可能性があるデバイスを含む。バイオリアクターは、連続撹拌槽反応器(CSTR)、固定化細胞反応器(ICR)、トリクルベッド反応器(TBR)、気泡塔、ガスリフト発酵槽、静的ミキサ、循環ループ反応器、中空糸膜バイオリアクター(HFM BR)などの膜反応器、または気液接触に好適な他の槽もしくは他のデバイスを含む、1つ以上の槽および/もしくは塔、または配管配置からなり得る。反応器は、好ましくは、COもしくはCO2もしくはH2またはそれらの混合物を含むガス状基質を受容するように適合される。発酵プロセスは、並列または直列のいずれかで、複数の反応器(段)を含み得る。例えば、発酵プロセスは、細菌が培養される第1の増殖反応器と、増殖反応器からの発酵ブロスが供給され得、発酵生成物の大部分が生成され得る第2の発酵反応器とを含み得る。
【0052】
「発酵ブロス」または「ブロス」という用語は、栄養培地および培養物または1つ以上の微生物を含む成分の混合物を包含することを意図する。好ましくは、発酵プロセスは、発酵ブロスを利用して、ガス流を1つ以上の生成物に発酵させる。
【0053】
培養物は概して、微生物の増殖を可能にするのに十分な栄養素、ビタミン、および/または無機物を含有する水性培地中で維持される。好ましくは、水性培地は、最小嫌気性微生物増殖培地などの嫌気性微生物増殖培地である。
【0054】
「栄養培地(Nutrient media)」または「栄養培地(Nutrient medium)」は、細菌増殖培地を説明するために使用される。好ましくは、発酵プロセスは、バイオリアクターにおいて栄養培地を利用する。一般に、この用語は、培養微生物の増殖に適した栄養素および他の成分を含有する培地を指す。「栄養素」という用語は、微生物の代謝経路において利用され得る任意の物質を含む。例示的な栄養素としては、カリウム、ビタミン、微量金属、およびアミノ酸が挙げられる。
【0055】
本明細書で使用される「酸」という用語は、本明細書に記載の発酵ブロス中に存在する遊離酢酸と酢酸塩との混合物など、カルボン酸および関連するカルボン酸アニオンの両方を含む。発酵ブロス中の分子酸とカルボン酸との比は、系のpHに依存する。さらに、「アセテート」という用語は、酢酸塩単独、および本明細書に記載の発酵ブロス中に存在する酢酸塩と遊離酢酸との混合物などの分子または遊離酢酸と酢酸塩との混合物の両方を含む。
【0056】
「所望の組成」という用語は、例えばガス流などの物質中の成分の所望のレベルおよび種類を指すために使用される。より具体的には、ガスは、これが特定の成分(例えば、CO、H2、および/またはCO2)を含有する場合、および/または特定の成分を特定の割合で含有する場合、および/または特定の成分(例えば、微生物に有害な汚染物質)を含有しない場合、および/または特定の成分を特定の割合で含有しない場合、「所望の組成」を有すると考えられる。ガス流が所望の組成を有しているかどうかを決定する際に、複数の成分が考慮され得る。
【0057】
「微生物」は、顕微鏡生物、特に、細菌、古細菌、ウイルス、または真菌である。本発明の微生物は、一般に細菌である。本明細書で使用される場合、「微生物」という用語の列挙は、「細菌」を包含すると考えられるべきである。微生物という用語および細菌という用語は、本明細書を通じて互換的に使用されることに留意されたい。
【0058】
「親微生物」は、本発明の微生物を生成するために使用される微生物である。親微生物は、天然に存在する微生物(例えば、野生型微生物)、または以前に修飾された微生物(例えば、変異体または組換え微生物)であってもよい。本発明の微生物は、親微生物において発現または過剰発現しなかった1つ以上の酵素を発現または過剰発現するように修飾され得る。同様に、本発明の微生物は、親微生物が含有しなかった1つ以上の遺伝子を含有するように修飾され得る。本発明の微生物は、また、親微生物において発現された1つ以上の酵素を発現しないまたはより少ない量を発現させるように修飾され得る。一実施形態において、親微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、またはClostridium ragsdaleiである。好ましい実施形態では、親微生物は、2010年6月7日にドイツのD-38124 Braunschweig、
【0059】
に位置するDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)にブダペスト条約の条項下で2010年6月7日に寄託され、受託番号DSM23693を付与されたClostridium autoethanogenum LZ1561である。この株については、国際特許出願第PCT/NZ2011/000144号に記載されており、WO2012/015317として公開される。
【0060】
「から由来する」という用語は、核酸、タンパク質、または微生物が異なる(例えば、親または野生型)核酸、タンパク質、または微生物から修飾または適合されて、新しい核酸、タンパク質、または微生物を生成することを示す。そのような修飾または適合は、一般に、核酸または遺伝子の挿入、欠失、変異、または置換を含む。一般に、本発明の微生物は、親微生物から誘導される。一実施形態では、本発明の親微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、またはClostridium ragsdaleiから誘導される。好ましい実施形態では、本発明の微生物は、DSMZ受託番号DSM23693の下で寄託される、Clostridium autoethanogenum LZ1561から誘導される。
【0061】
「Wood-Ljungdahl」とは、例えば、Ragsdale,Biochim Biophys Acta,1784:1873-1898,2008に記載されている炭素固定のWood-Ljungdahl経路を指す。「Wood-Ljungdahl微生物」は、予想通り、Wood-Ljungdahl経路を含む微生物を指す。一般に、本発明の微生物は天然のWood-Ljungdahl経路を含有する。本明細書では、Wood-Ljungdahl経路は、天然の未修飾のWood-Ljungdahl経路であってもよく、またはCO、CO2、および/もしくはH2をアセチル-CoAに変換するように依然として機能する限り、ある程度の遺伝子修飾(例えば、過剰発現、異種発現、遺伝子欠損など)を有するWood-Ljungdahl経路であってもよい。
【0062】
「C1」は、1炭素分子、例えば、CO、CO2、CH4、またはCH3OHを指す。「C1酸素化物」は、少なくとも1つの酸素原子も含む1炭素分子、例えば、CO、CO2、またはCH3OHを指す。「C1炭素源」は、本発明の微生物のための部分的または唯一の炭素源として機能する1炭素分子を指す。例えば、C1炭素源は、CO、CO2、CH4、CH3OH、またはCH2O2のうちの1つ以上を含み得る。好ましくは、C1炭素源は、COおよびCO2のうちの一方または両方を含む。「C1固定微生物」は、C1炭素源から1つ以上の生成物を生成する能力を有する微生物である。一般に、本発明の微生物はC1固定細菌である。
【0063】
「嫌気性菌」は、増殖のために酸素を必要としない微生物である。嫌気性細菌は、酸素が特定の閾値を超えて存在する場合、負の反応を起こし得るか、もしくは死滅し得る。しかしながら、いくつかの嫌気性細菌は、低レベルの酸素(例えば、0.000001~5%の酸素)を許容可能である。一般に、本発明の微生物は嫌気性細菌である。
【0064】
「アセトゲン」は、エネルギー節約のため、ならびにアセテートなどのアセチル-CoAおよびアセチル-CoA由来生成物の合成のために、それらの主要機構として、Wood-Ljungdahl経路を使用する、偏性嫌気性細菌である(Ragsdale,Biochim Biophys Acta,1784:1873-1898,2008)。特に、アセトゲンは、Wood-Ljungdahl経路を、(1)CO2からのアセチル-CoAの還元合成のための機構、(2)末端電子受容、省エネルギープロセス、(3)細胞炭素の合成におけるCO2の固定(同化)のための機構として使用する(Drake,Acetogenic Prokaryotes,In:The Prokaryotes,3rd edition,p.354,New York,NY,2006)。天然に存在するすべてのアセトゲンは、C1固定、嫌気性、独立栄養性、および非メタン資化性である。一般に、本発明の微生物はアセトゲンである。
【0065】
「エタノロゲン(ethanologen)」は、エタノールを産生する、または産生することが可能である微生物である。一般に、本発明の微生物はエタノロゲンである。
【0066】
「独立栄養生物」は、有機炭素の不在下で増殖することが可能な微生物である。代わりに、独立栄養生物は、COおよび/またはCO2などの無機炭素源を使用する。一般に、本発明の微生物は独立栄養生物である。
【0067】
「カルボキシド栄養生物」は、炭素およびエネルギーの唯一の供給源としてCOを利用することが可能な微生物である。一般に、本発明の微生物はカルボキシド栄養生物である。
【0068】
「メタン資化性菌」は、炭素とエネルギーの唯一の供給源としてメタンを利用することが可能な微生物である。特定の実施形態では、本発明の微生物は、メタン資化性菌であるか、またはメタン資化性菌から誘導される。他の実施形態では、本発明の微生物はメタン資化性菌ではないか、メタン資化性菌から誘導されない。
【0069】
「基質」は、本発明の微生物のための炭素および/またはエネルギー源を指す。一般に、基質は、ガス状であり、C1炭素源、例えば、CO、CO2、および/またはCH4を含む。好ましくは、基質は、COまたはCO+CO2のC1炭素源を含む。基質は、H2またはN2などの他の非炭素成分をさらに含み得る。
【0070】
基質の組成は、反応の効率および/またはコストに著しい影響を及ぼし得る。例えば、酸素(O2)の存在は、嫌気性発酵プロセスの効率を低減させ得る。基質の組成に応じて、基質を処理、スクラブ、または濾過して、毒素、望ましくない成分、またはちり粒子等のいかなる望ましくない不純物も除去すること、および/または所望の成分の濃度を増加させることが望ましくあり得る。
【0071】
本発明の微生物は、1つ以上の生成物を生成するようにガスとともに培養され得る。例えば、本発明の微生物は、エタノール(WO2007/117157)、アセテート(WO2007/117157)、1-ブタノール(WO2008/115080、WO2012/053905、およびWO2017/0066498)、ブチレート(WO2008/115080)、2,3-ブタンジオール(WO2009/151342、およびWO2016/094334)、ラクテート(WO2011/112103)、ブテン(WO2012/024522)、ブタジエン(WO2012/024522)、メチルエチルケトン(MEK)(WO2012/024522、およびWO2013/185123)、エチレン(WO2012/026833)、アセトン(WO2012/115527)、イソプロパノール(WO2012/115527)、脂質(WO2013/036147)、3-ヒドロキシプロピオネート(3-HP)(WO2013/180581)、イソプレンを含むテルペン(WO2013/180584)、脂肪酸(WO2013/191567)、2-ブタノール(WO2013/185123)、1,2-プロパンジオール(WO2014/036152)、1-プロパノール(WO2014/0369152、およびWO2017/0066498)、1-ヘキサノール(WO2017/0066498)、1-オクタノール(WO2017/0066498)、コリスメート由来生成物(WO2016/191625)、3-ヒドロキシブチレート(WO2017/066498)、1,3-ブタンジオール(WO2017/0066498)、2-ヒドロキシイソブチレート、または2-ヒドロキシイソ酪酸(WO2017/0066498)、イソブチレン(WO2017/0066498)、アジピン酸(WO2017/0066498)、1,3ヘキサンジオール(WO2017/0066498)、3-メチル-2-ブタノール(WO2017/0066498)、2-ブテン-1-オール(WO2017/0066498)、イソバレレート(WO2017/0066498)、イソアミルアルコール(WO2017/0066498)、およびモノエチレングリコール(WO2019/126400)を生成し得るか、または生成するように操作され得る。特定の実施形態では、微生物バイオマス自体が生成物と見なされ得る。これらの生成物のうちの1つ以上は、さらに変換されて、ディーゼル、ジェット燃料、および/またはガソリンのうちの少なくとも1つの成分を生成し得る。加えて、微生物バイオマスは、さらに処理されて、単細胞タンパク質(SCP)の少なくとも一部を生成し得る。
【0072】
「単細胞タンパク質」(SCP)は、タンパク質が豊富なヒトおよび/または動物用飼料に使用され得る微生物バイオマスを指し、多くの場合、大豆または魚粉などの従来のタンパク質補給源に取って代わる。単細胞タンパク質または他の生成物を生成するために、プロセスは、追加の分離、加工、または処理ステップを含み得る。例えば、本方法は、微生物バイオマスを滅菌すること、微生物バイオマスを遠心分離すること、および/または微生物バイオマスを乾燥させることを含み得る。特定の実施形態では、微生物バイオマスは、噴霧乾燥またはパドル乾燥を使用して乾燥される。核酸含有量の高い食事を摂取すると、核酸分解生成物の蓄積および/または胃腸障害が生じ得るため、本方法は、当技術分野で既知の任意の方法を使用して、微生物バイオマスの核酸含有量を低減させることも含み得る。単細胞タンパク質は、家畜やペットなどの動物への給餌に好適であり得る。特に、動物用飼料は、1頭以上の肉用牛、乳用牛、豚、羊、山羊、馬、ラバ、ロバ、鹿、バッファロー/バイソン、ラマ、アルパカ、トナカイ、ラクダ、バンテン、ガヤル、ヤク、鶏、七面鳥、アヒル、ガチョウ、ウズラ、ホロホロ鳥、ひなバト/ハト、魚、エビ、甲殻類、猫、犬、およびげっ歯類に給餌するのに好適であり得る。動物用飼料の組成は、異なる動物の栄養要件に合わせて調整され得る。さらに、プロセスは、微生物バイオマスを1つ以上の賦形剤と混合することまたは組み合わせることを含み得る。
【0073】
「賦形剤」は、動物用飼料の形態、特性、または栄養含有量を強化または変更するために、微生物バイオマスに添加され得る任意の物質を指し得る。例えば、賦形剤は、炭水化物、繊維、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラル、水、香料、甘味料、酸化防止剤、酵素、防腐剤、プロバイオティクス、または抗生物質のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、賦形剤は、干し草、わら、貯蔵生牧草、穀物、油もしくは脂肪、または他の植物材料であってもよい。賦形剤は、Chiba,Section 18:Diet Formulation and Common Feed Ingredients,Animal Nutrition Handbook,3rd revision,pages 575-633,2014に特定される、任意の飼料成分であってもよい。
【0074】
「選択性」は、微生物によって生成されるすべての発酵生成物の生成に対する所望の生成物の生成の比率を指す。本発明の微生物は、ある特定の選択性で、または最小の選択性で生成物を生成するように操作され得る。一実施形態では、所望の生成物は、本発明の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも約5%、10%、15%、20%、30%、50%、75%、または85%を占める。一実施形態において、所望の生成物は、本発明の微生物が少なくとも10%の所望の生成物への選択性を有するように、本発明の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも10%を占める。別の実施形態において、所望の生成物は、本発明の微生物が少なくとも30%の所望の生成物への選択性を有するように、本発明の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも30%を占める。
【0075】
発酵は、望ましくは、所望の生成物の生成に適切な条件下で実施されるべきである。典型的に、発酵は、嫌気性条件下で実施される。考慮すべき反応条件は、圧力(または分圧)、温度、ガス流速、液体流速、培地pH、培地酸化還元電位、撹拌速度(連続撹拌槽反応器を使用する場合)、接種レベル、液相中のガスが制限的にならないことを確実にするための最大ガス基質濃度、および生成物阻害を回避するための最大生成物濃度を含む。特に、基質の導入速度は、生成物がガス制限条件下での培養によって消費され得るため、液相中のガスの濃度が制限的にならないことを確実にするように制御されてもよい。
【0076】
上昇した圧力でバイオリアクターを操作することは、気相から液相へのガス物質移動の増加した速度を可能にする。したがって、概して、大気圧よりも高い圧力で発酵を実施することが好ましい。また、所定のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ保持時間がバイオリアクターの必要な体積を示すことから、加圧システムの使用によって、必要なバイオリアクターの体積、およびその結果として発酵設備の資本コストを大幅に削減することができる。これは、同様に、バイオリアクター中の液体体積を入力ガス流速で除算したものと定義される保持時間が、バイオリアクターが大気圧よりも上昇した圧力に維持されるときに短縮し得ることを意味する。最適反応条件は、使用される特定の微生物に部分的に依存する。しかしながら、一般的には、大気圧より高い圧力で発酵を行うことが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ所望の保持時間を達成することが同様にバイオリアクターの必要な容積を示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの容積、およびその結果として発酵装置の資本コストを大幅に削減することができる。
【0077】
所望の生成物を含有する発酵ブロスは、バイオリアクターから連続的に取り出されて、生成物の回収を実現し得る。所望の生成物は、例えば、分留、真空蒸留、抽出蒸留、蒸発、浸透気化、ガスストリッピング、相分離、および例えば、液-液抽出を含む抽出発酵を含む、当該技術分野において既知の方法または方法の組み合わせを利用し得る任意の好適な生成物回収プロセスを使用して、発酵ブロスから分離または精製され得る。特定の実施形態では、所望の生成物は、ブロスの一部をバイオリアクターから連続的に取り出し、微生物細胞をブロスから(濾過により簡便に)分離し、1つ以上の所望の生成物をブロスから回収することによって、発酵ブロスから回収される。アルコールおよび/またはアセトンは、例えば、蒸留によって回収され得る。酸は、例えば、活性炭上での吸着によって回収され得る。分離された微生物細胞をバイオリアクターに返送することができる。所望の生成物が取り出された後に残存している無細胞透過液もバイオリアクターに返送することができる。追加の栄養素を、無細胞透過液に添加して、バイオリアクターに返送する前に、培地を補充し得る。
【0078】
説明
本発明者らは、様々なガス流の使用法および組成を最適化することによって、発酵効率および全体的な炭素捕捉効率が改善され得ることを見出した。発酵プロセスによって使用されるガス流の組成を調整することによって、本発明者らは、特定の所望の生成物の生成を向上させ得ることを見出した。様々な事例では、本発明は、並列発酵プロセスへのガスの流れを最適化して、所望の生成物の生成物選択性を改善する。他の事例では、本発明は、直列発酵プロセスへのガスの流れを最適化して、所望の生成物の生成物選択性を改善する。様々な事例では、特定の発酵プロセスに送られるガスの組成は、ガスが特定の発酵生成物を生成するのに理想的であるように、特定のH2:CO比に最適化される。
【0079】
水素が枯渇したガスを使用することによって、発酵プロセスは、エタノール、アセテート、モノエチレングリコール(MEG)、1,2-プロパンジオール、3-ヒドロキシプロピオネート、アセトン、イソプロパノール、ラクテート、1,3-ブタンジオール、2-ブタノール、2-ヒドロキシイソ酪酸、3-ヒドロキシブチレート、メチルエチルケトン(MEK)、イソアミルアルコール、イソプレンを含むテルペン、アジピン酸、1-ヘキサノール、1-オクタノール、およびコリスメート由来生成物からなる群から選択される1つ以上の生成物を最適に生成し得る。特定の事例では、水素が豊富な流れの代わりに水素が枯渇した流れを用いて、特定の生成物を生成することがより有利である。3-ヒドロキシプロピオネート、イソアミルアルコール、および/またはコリスメート由来生成物などの生成物は、好ましくは、水素が豊富な流れの代わりに水素が枯渇した流れを使用して生成される。
【0080】
本発明者らは、少なくとも2つの発酵プロセスを並列または直列のいずれかで操作することによって、流入する供給ガスが、水素が豊富な流れおよび水素が枯渇した流れに分離され得、各々が、ガス発酵プロセスにおいて特定の生成物を生成するのに最適であることを見出した。加えて、少なくとも2つの発酵プロセスを直列で操作する場合、第1の発酵プロセスを最適化して、酢酸を生成し得、次いで、酢酸は、第2の発酵プロセスにおいて、エタノールに変換され得、その結果、より高いエタノールの全体的な生成がもたらされる。2つの発酵プロセスを使用し、各々が、水素が豊富なまたは水素が枯渇した異なる流れを受容するように作動することによって、二酸化炭素などの不要な副生成物を大量に生成する代わりに、ガスの実質的にすべてが、少なくとも1つの発酵プロセスによって利用されて、少なくとも1つの発酵製品を生成するため、全体的な炭素捕捉効率が改善され得る。
【0081】
流入する供給ガスの少なくとも一部は、ガス化プロセスから供給され得る。流入する供給ガスを発酵に利用することに加えて、特定の事例では、本発明者らは、発酵プロセスからのベントガスの少なくとも一部、および/またはガス化プロセスからの流入するガス流の少なくとも一部を、ガス化プロセスで使用される供給原料を乾燥させるために使用することが有益であることを見出した。ガス化プロセスからの流入するガス流および/または発酵プロセスからのベントガス流の少なくとも一部を利用して、ガス化プロセスのための供給原料を乾燥させることによって、ガス化プロセスの効率が改善され得る。具体的には、本発明者らは、ガス化プロセスにおいて使用される流入する都市固体廃棄物および/またはバイオマス供給原料を乾燥させるためのベントガスまたは流入するガスの使用が、ベントガスを電気または蒸気発生のために使用する場合と比較して、増加したエネルギー効率、より良好な合成ガスの品質、増加した生成物収益をもたらすことを見出した。本発明者らは、電気または蒸気発生のためのベントガスの使用によって、せいぜい、ベントガスエネルギーの60パーセント(60%)、電気から40パーセント(40%)、および蒸気から20パーセント(20%)が回収され得ることを見出した。対照的に、供給原料の乾燥のためのベントガスの使用によって、合成ガスの収率が改善され、ベントガスエネルギーの92パーセント(92%)が回収され得る。
【0082】
したがって、工業的供給源がガス化プロセスである場合、電気または蒸気を生成するよりも、乾燥にベントガスを使用する方がより経済的である。本発明者らは、ベントガスが、蒸気または電気発生に使用される代わりに、都市固体廃棄物(MSW)を乾燥させるために使用される場合、合成ガスの生成が増えることから引き起こされる生成物の価値が、それ以外の方法で生成された電気または蒸気の価値を超えることを見出した。予想収益の比較を、以下の表に示す。この比較は、発酵プロセスが、エタノールであると仮定することによって提供されるが、1つ以上の他の発酵生成物が生成される他の様々な事例では、乾燥のためにベントガスの少なくとも一部を使用することが、依然として有益であり得る。ガス化に使用されるベントガスの価値を示す以下のチャートは、41.7トン/時(TPH)ガス化装置、発酵ユニットを使用し、1000トン/日(TPD)供給原料、11MJ/kgの供給原料エネルギー密度を用いることに基づいて提供される。
【表1】
【表2】
【0083】
上記の表に示されているように、ベントガスが、蒸気および電気発生に使用される($10.8/GJ)代わりに、乾燥に使用される($20/GJ)場合、ベントガスの価値はより高くなる。したがって、1つ以上の実施形態では、ベントガスの少なくとも一部は、供給原料乾燥プロセスによって使用される。
【0084】
上記の利点は、以下に記載される
図1~3に示されるように、様々なガス流の使用法および組成を制御することによって、最も良好に達成される。
【0085】
図1は、本発明の一態様による、最適化されたガス流141、142から別個の生成物171、1001を生成する並列発酵プロセス1、2を示すプロセス統合図を示す。様々な事例では、各発酵プロセス1、2は、直列の少なくとも2つのバイオリアクター160、170および190、1000からなり得る。好ましくは、発酵プロセス1、2は、各発酵プロセス1、2が、工業的供給源110から最適化されたガス流141、142の少なくとも一部を受容することが可能であるように、少なくとも1つの工業的供給源110と統合される。好ましくは、工業的供給源110からのガス流111は、少なくとも1つの水素分離モジュール140を使用して、水素が豊富な流れ141および水素が枯渇した流れ142に分離される。水素が豊富な流れ141の少なくとも一部は、第1の発酵生成物171を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器160を使用して、第1の発酵プロセス1において発酵される。様々な事例では、第1の発酵プロセス1は、2つ以上の反応器160、170からなる。水素が枯渇した流れ142の少なくとも一部は、第2の発酵生成物1001を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器190を使用する第2の発酵プロセス2において発酵される。様々な事例では、第2の発酵プロセス2は、2つ以上の反応器190、1000からなる。好ましくは、第1の発酵プロセス1によって生成される第1の発酵生成物171および第2の発酵プロセス2によって生成される第2の発酵生成物1001は、異なる生成物である。様々な事例では、第1の発酵生成物171は、エタノールであり、第2の発酵生成物1001は、2,3-ブタンデジオールである。特定の実施形態では、液体栄養培地およびプロセス水163、193は、第1の発酵プロセス1および第2の発酵プロセス2に並列で流れる。
【0086】
特定の事例では、工業的供給源110は、炭水化物発酵、ガス発酵、セメント製造、パルプおよび製紙、製鋼、石油精製および関連プロセス、石油化学生成、コークス生成、嫌気性または好気性消化、ガス化、天然ガス抽出、メタン改質、石油抽出、アルミニウム、銅、および/または鉄合金の生成および/または精製のための冶金プロセス、地質貯留層、ならびに触媒プロセスからなる群から選択される。様々な事例では、ガス流111の少なくとも一部は、冶金プロセス110からの高炉上部ガスからなる。様々な事例では、ガス流111の少なくとも一部は、メタン改質プロセス110に由来する。メタン改質プロセスは、好ましくは、メタン含有ガスの少なくとも一部を、一酸化炭素および水素の少なくとも一部を含むガス流111に変換する。
【0087】
特定の事例では、水素分離モジュール140は、圧力スイング吸着プロセスである。好ましくは、水素分離モジュール140は、発酵プロセス1、2の上流に提供されて、工業的供給源110からの流入ガス111から、水素が豊富な流れ141および水素が枯渇した流れ142を生成する。特定の事例では、流入するガス111は、1つ以上の圧縮機130に送られて、流入するガス流111の圧力を上昇させ、加圧された流入するガス流131を生成する。水素分離モジュール140として圧力スイング吸着プロセスを利用する場合、水素が豊富な流れ141は、水素が枯渇した流れ142と比較して、増加した圧力で水素分離モジュール140を出る。したがって、水素分離モジュール140として圧力スイング吸着プロセスを利用する場合、水素が枯渇した流れ142は、好ましくは、1つ以上の圧縮機150に送られて、第2の発酵プロセス2に送られる前に、加圧された水素が枯渇した流れ151を生成する。
【0088】
好ましくは、第1の発酵プロセス1が、複数のバイオリアクター160、170からなる場合、水素が豊富な流れ141は、バイオリアクター160、170に並列で送られ、発酵ブロス161は、第1のバイオリアクター160から第2のバイオリアクター170に直列で送られる。
【0089】
好ましくは、第2の発酵プロセスが、複数のバイオリアクター190、1000からなる場合、加圧された水素が枯渇した流れ151であり得る水素が枯渇した流れ142は、バイオリアクター190、1000に並列で送られ、発酵ブロス191は、第1のバイオリアクター190から第2のバイオリアクター1000に直列で送られる。
【0090】
第1の発酵プロセス1から生成物171を回収するために、1つ以上の生成物回収プロセス180が使用され得る。特定の事例では、生成物回収プロセス180は、精製された生成物流181を生成することが可能である。
【0091】
第2の発酵プロセス2から生成物1001を回収するために、1つ以上の生成物回収プロセス1100が使用され得る。特定の事例では、生成物回収プロセス1100は、精製された生成物流1101を生成することが可能である。
【0092】
本発明は、様々な生成物171、1001の生成を向上させるために、発酵プロセス1、2によって使用されるガスの組成を調整することが可能である。発酵プロセス1、2によって使用されるガスの組成を最適化する1つの方法は、バイオリアクター160、170、190、1000において生成されるベントガス162、172、192、1002の少なくとも一部を利用することである。特定の事例では、第1の発酵プロセス1内で生成されたベントガス162、172の少なくとも一部は、水素が豊富な流れ141に再循環される。ベントガス162、172の少なくとも一部は、水素分離モジュール140の上流で再循環され、水素分離モジュール140に再循環され、かつ/または水素分離モジュール140の下流で再循環されて、第1の発酵プロセス1によって使用されるガスの組成を最適化し得る。特定の事例では、第2の発酵プロセス2内で生成されたベントガス192、1002の少なくとも一部は、水素が枯渇した流れ151に再循環される。ベントガス192、1002の少なくとも一部は、水素分離モジュール140の上流で再循環され、水素分離モジュール140に再循環され、かつ/または水素分離モジュール140の下流で再循環されて、第2の発酵プロセス2によって使用されるガスの組成を最適化し得る。
【0093】
様々な事例では、水素が豊富な流れ141は、水素が豊富な流れ141における最小一酸化炭素要件を満たすために、加圧された流入するガス流131であり得る流入するガス流111の少なくとも一部を、水素が豊富な流れ141と混合することによって最適化される。
【0094】
工業的供給源110からの流入するガス流111が、発酵プロセス1、2が利用し得る量を超える場合、流入するガス流111の少なくとも一部は、蒸気ボイラー、コージェネレーションユニット、および/または供給原料乾燥プロセス120によって使用され得る。供給原料乾燥プロセス120における流入するガス流111の少なくとも一部の使用は、流入するガス流110が特に希薄であり、電気への変換の不十分な効率を有する場合に特に有用である。様々な事例では、工業用供給源110が、1つ以上のガス化プロセスを含む場合、発酵プロセス1、2が利用し得るガス量を超えているかどうかに関わらず、流入するガス111の少なくとも一部は、供給原料乾燥プロセス120によって使用される。
【0095】
好ましくは、発酵プロセス1、2は、連続的に作動し得る。発酵プロセス1、2が連続的に作動し得ることを確実にするために、バイオリアクター160、170、190、1000は、好ましくは、実行可能な微生物の最適な割合を含むべきである。特定の事例では、一酸化炭素が豊富なガス(別名、水素が枯渇したガス142として既知である)の使用は、水素が豊富なガス141の使用と比較して、発酵プロセスによって生成される微生物バイオマスの相対的割合を増加させる。水素が豊富なガス141を利用する第1の発酵プロセス1内で培養物を維持するために、微生物バイオマスを含むブリードストリーム1003の少なくとも一部は、第2の発酵プロセス2のバイオリアクター190、1000から、第1の発酵プロセス1のバイオリアクター160、170に送られ得る。好ましくは、第2の発酵プロセス2のバイオリアクター190、1000からの微生物バイオマスの少なくとも一部は、実行可能である。特定の事例では、第2の発酵プロセス2からのブリード流1003の使用は、連続的に完了する。
【0096】
様々な事例では、発酵プロセス1、2は、1つ以上のC1固定微生物を利用して、C1含有ガスを発酵させ、1つ以上の発酵生成物171、1001を生成する。発酵プロセスによって使用されるC1固定微生物は、好ましくは、Moorella、Clostridium、Ruminococcus、Acetobacterium、Eubacterium、Butyribacterium、Oxobacter、Methanosarcina、およびDesulfotomaculumからなる群から選択される。好ましくは、発酵プロセス1、2によって使用されるC1固定微生物は、Clostridium autoethanogenumである。
【0097】
図2は、本発明の一態様による、最適化されたガス流241、242の直列発酵プロセス1、2への流れを示すプロセス統合図を示す。様々な事例では、各発酵プロセス1、2は、直列の少なくとも2つのバイオリアクター260、270および280、290からなり得る。好ましくは、発酵プロセス1、2は、各発酵プロセス1、2が、工業的供給源210から最適化されたガス流241、242の少なくとも一部を受容することが可能であるように、少なくとも1つの工業的供給源210と統合される。好ましくは、工業的供給源210からのガス流211は、少なくとも1つの水素分離モジュール240を使用して、水素が豊富な流れ241および水素が枯渇した流れ242に分離される。水素が豊富な流れ241の少なくとも一部は、第1の発酵生成物271を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器260を使用して、第1の発酵プロセス1において発酵される。様々な事例では、第1の発酵プロセス1は、2つ以上の反応器260、270からなる。水素が枯渇した流れ242の少なくとも一部は、第2の発酵生成物291を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器280を使用する第2の発酵プロセス2において発酵される。様々な事例では、第2の発酵プロセス2は、2つ以上の反応器280、290からなる。好ましくは、第1の発酵プロセス1によって生成される第1の発酵生成物271および第2の発酵プロセス2によって生成される第2の発酵生成物291は、異なる生成物である。様々な事例では、第1の発酵生成物271は、酢酸であり、第2の発酵生成物291は、エタノールである。好ましくは、第1の発酵プロセス1からの酢酸271の少なくとも一部は、第2の発酵プロセス2に渡されて、酢酸271の少なくとも一部をエタノール291に変換する。特定の実施形態では、液体栄養培地およびプロセス水263、283は、第1の発酵プロセス1および第2の発酵プロセス2に並列で流れる。
【0098】
特定の事例では、工業的供給源210は、炭水化物発酵、ガス発酵、セメント製造、パルプおよび製紙、製鋼、石油精製および関連プロセス、石油化学生成、コークス生成、嫌気性または好気性消化、ガス化、天然ガス抽出、メタン改質、石油抽出、アルミニウム、銅、および/または鉄合金の生成および/または精製のための冶金プロセス、地質貯留層、ならびに触媒プロセスからなる群から選択される。様々な事例では、ガス流211の少なくとも一部は、冶金プロセス210からの高炉上部ガスからなる。様々な事例では、ガス流211の少なくとも一部は、メタン改質プロセス210に由来する。メタン改質プロセス210は、好ましくは、メタン含有ガスの少なくとも一部を、一酸化炭素および水素の少なくとも一部を含むガス流211に変換する。
【0099】
特定の事例では、水素分離モジュール240は、圧力スイング吸着プロセスである。好ましくは、水素分離モジュール240は、発酵プロセス1、2の上流に提供されて、工業的供給源210からの流入ガス211から、水素が豊富な流れ241および水素が枯渇した流れ242を生成する。特定の事例では、流入するガス211は、1つ以上の圧縮機230に送られて、流入するガス流211の圧力を上昇させ、加圧された流入するガス流231を生成する。水素分離モジュール240として圧力スイング吸着プロセスを利用する場合、水素が豊富な流れ241は、水素が枯渇した流れ242と比較して、増加した圧力で水素分離モジュール240を出る。したがって、水素分離モジュール240として圧力スイング吸着プロセスを利用する場合、水素が枯渇した流れ242は、好ましくは、1つ以上の圧縮機250に送られて、第2の発酵プロセス2に送られる前に、加圧された水素が枯渇した流れ251を生成する。
【0100】
好ましくは、第1の発酵プロセス1が、複数のバイオリアクター260、270からなる場合、水素が豊富な流れ241は、バイオリアクター260、270に並列で送られ、発酵ブロス261は、第1のバイオリアクター260から第2のバイオリアクター270に直列で送られる。
【0101】
好ましくは、第2の発酵プロセスが、複数のバイオリアクター280、290からなる場合、加圧された水素が枯渇した流れ251であり得る水素が枯渇した流れ242は、バイオリアクター280、290に並列で送られ、発酵ブロス281は、第1のバイオリアクター280から第2のバイオリアクター290に直列で送られる。
【0102】
第1の発酵プロセス1の生成物が、第2の発酵プロセス2に送られて、最終生成物291を生成する場合、1つ以上の生成物回収プロセス2000を使用して、精製された生成物流2001を回収し得る。
【0103】
本発明は、様々な生成物271、291の生成を向上させるために、発酵プロセス1、2によって使用されるガスの組成を調整することが可能である。発酵プロセス1、2によって使用されるガスの組成を最適化する1つの方法は、バイオリアクター260、270、280、290において生成されるベントガス262、272、282、292の少なくとも一部を利用することである。特定の事例では、第1の発酵プロセス1内で生成されたベントガス262、272の少なくとも一部は、水素が豊富な流れ241に再循環される。ベントガス262、272の少なくとも一部は、水素分離モジュール240の上流で再循環され、水素分離モジュール240に再循環され、かつ/または水素分離モジュール240の下流で再循環されて、第1の発酵プロセス1によって使用されるガスの組成を最適化し得る。特定の事例では、第2の発酵プロセス2内で生成されたベントガス282、292の少なくとも一部は、水素が枯渇した流れ251に再循環される。ベントガス282、292の少なくとも一部は、水素分離モジュール240の上流で再循環され、水素分離モジュール240に再循環され、かつ/または水素分離モジュール240の下流で再循環されて、第2の発酵プロセス2によって使用されるガスの組成を最適化し得る。
【0104】
様々な事例では、水素が豊富な流れ241は、水素が豊富な流れ241における最小一酸化炭素要件を満たすために、加圧された流入するガス流231であり得る流入するガス流211の少なくとも一部を、水素が豊富な流れ241と混合することによって最適化される。
【0105】
工業的供給源210からの流入するガス流211が、発酵プロセス1、2が利用し得る量を超える場合、流入するガス流211の少なくとも一部は、蒸気ボイラー、コージェネレーションユニット、および/または供給原料乾燥プロセス220によって使用され得る。供給原料乾燥プロセス220における流入するガス流211の少なくとも一部の使用は、流入するガス流210が特に希薄であり、電気への変換の不十分な効率を有する場合に特に有用である。様々な事例では、工業用供給源210が、1つ以上のガス化プロセスを含む場合、発酵プロセス1、2で利用し得るガス量を超えているかどうかに関わらず、流入するガス211の少なくとも一部は、供給原料乾燥プロセス220によって使用される。
【0106】
好ましくは、発酵プロセス1、2は、連続的に作動し得る。発酵プロセス1、2が連続的に作動し得ることを確実にするために、バイオリアクター260、270、280、290は、好ましくは、実行可能な微生物の最適な割合を含むべきである。特定の事例では、一酸化炭素が豊富なガス(別名、水素が枯渇したガス242として既知である)の使用は、水素が豊富なガス241の使用と比較して、発酵プロセスによって生成される微生物バイオマスの相対的割合を増加させる。水素が豊富なガス241を利用する第1の発酵プロセス1内で培養物を維持するために、微生物バイオマスを含むブリードストリーム293の少なくとも一部は、第2の発酵プロセス2のバイオリアクター280、290から、第1の発酵プロセス1のバイオリアクター260、270に送られ得る。好ましくは、第2の発酵プロセス2のバイオリアクター280、290からの微生物バイオマスの少なくとも一部は、実行可能である。特定の事例では、第2の発酵プロセス2からのブリード流293の使用は、連続的に完了する。
【0107】
様々な事例では、発酵プロセス1、2は、1つ以上のC1固定微生物を利用して、C1含有ガスを発酵させ、1つ以上の発酵生成物271、291を生成する。発酵プロセスによって使用されるC1固定微生物は、好ましくは、Moorella、Clostridium、Ruminococcus、Acetobacterium、Eubacterium、Butyribacterium、Oxobacter、Methanosarcina、およびDesulfotomaculumからなる群から選択される。好ましくは、発酵プロセス1、2によって使用されるC1固定微生物は、Clostridium autoethanogenumである。
【0108】
図3は、本発明の一態様による、ガス貯蔵タンク380および蒸気発生器、発電機、および/または供給原料乾燥プロセス320と組み合わせた、発酵プロセスからの再循環されたベントガス352、362の利用を示すプロセス統合図を示す。特定の事例では、ベントガス352、362の少なくとも一部のバイオリアクター350、360への再循環は、バイオリアクター350、360内の培養物の潜在的な阻害を低減および/または軽減する。様々な事例では、ベントガス352、362の少なくとも一部は、利用される前に、ガス貯蔵タンク380に送られる。好ましくは、利用される場合、貯蔵タンク380からのベントガス352、362の少なくとも一部は、圧力スイング吸着プロセス340の上流381、圧力スイング吸着プロセス340の中382、または圧力スイング吸着プロセス340の下流383に送られ得る。特定の事例では、ベントガス352、362の少なくとも一部は、バイオリアクター350、360に再循環されることに加えて、またはその代わりに、蒸気発生器、発電機、および/または供給原料乾燥プロセス320に送られる。
【0109】
好ましくは、ベントガス352、362の少なくとも一部は、バイオリアクター350、360に再循環される前に、圧力スイング吸着プロセス340を通過する。様々な事例では、ベントガス352、262の少なくとも一部は、圧力スイング吸着プロセス340に渡される前に、ガス貯蔵タンク380に送られる。圧力スイング吸着プロセス340は、ガス流311から様々な成分を除去するのに特に有用であることが見出され、ガス流311は、圧縮機330を通過する場合、加圧された331、および/またはベントガス流352、362であり得る。圧力スイング吸着プロセス340は、二酸化炭素、無機炭化水素、タール、有機窒素、ならびに有機および無機硫黄からなる群から選択される少なくとも1つの成分の少なくとも一部を、ガス流311および/またはガス流352、362から除去して、浄化されたベントガス341を生成することが見出された。様々な事例では、圧力スイング吸着プロセス340は、二酸化炭素、無機炭化水素、タール、有機窒素、ならびに有機および無機硫黄からなる群から選択される少なくとも2つの成分を、ガス流311および/またはベントガス流352、362から同時に除去することが見出された。
【0110】
特定の事例では、ベントガス352、362の少なくとも一部のバイオリアクター350、360への再循環は、全ガス流341中のメタンおよび窒素の全体的な組成を少なくとも15パーセント(15%)増加させる。
【0111】
様々な事例では、ベントガス352、362の少なくとも一部のバイオリアクター350、360への再循環は、全ガス流341中のメタンおよび窒素の全体的な組成を少なくとも50パーセント(50%)増加させる。
【0112】
メタンおよび窒素などの不活性ガスの割合を増加させると、ガス流中の一酸化炭素組成が高すぎる場合に見られ得る培養物の阻害を軽減するのに役立つことが見出された。
【0113】
発酵プロセスは、好ましくは、工業的供給源310からのガス流311からの生成物361を生成するように最適化される。複数の直列のバイオリアクター350、360を含む場合、水素が豊富なまたは水素が枯渇したもののいずれかであり得るガス流331は、好ましくは並列で送られ、液体栄養培地およびプロセス水353は、好ましくは、第1のバイオリアクター350に送られ、発酵ブロス351は、好ましくは、第1のバイオリアクター350から第2のバイオリアクター360に送られる。好ましくは、発酵プロセスによって生成される生成物361は、1つ以上の生成物回収プロセス370を使用して分離されて、精製された生成物流371を生成する。
【0114】
流入するガス流311の少なくとも一部は、工業的供給源310からのガス流311が、発酵プロセスが利用し得る量を超える場合、蒸気ボイラー、コージェネレーションユニット、および/または供給原料乾燥プロセス320によって使用され得る。しかしながら、様々な事例では、ガスが発酵プロセスで利用し得るガス量を超えているかどうかに関わらず、流入するガス311の少なくとも一部は、供給原料乾燥プロセス320によって使用される。供給原料乾燥プロセス320によるガス流311の少なくとも一部の使用は、ガス化プロセスのための乾燥供給原料321を生成するために特に有用である。ガス化プロセスのために供給原料321を乾燥させることは、ガス化プロセス310の効率を増加させることが見出された。
【0115】
本明細書に列挙される公表文献、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献があたかも参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、かつその全体が本明細書中に記載された場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書におけるいかなる先行技術への言及も、その先行技術がいかなる国の努力傾注分野において共通の一般知識の一部をなすという認識ではなく、かつそのように解釈されるべきではない。
【0116】
本発明を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「1つの(aおよびan)」および「その(the)」という用語ならびに同様の指示語の使用は、本明細書中に他に指示がない限り、または文脈と明らかに相反することがない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるものとする。「含む」、「有する」、「含む」、および「含有する」という用語は、特に断りのない限り、非限定的な用語(例えば、「を含むがこれらに限定されることはない」を意味する)と解釈されるものとする。「から本質的になる」という用語は、組成物、プロセス、または方法の範囲を、特定の材料、またはステップ、または組成物、プロセスもしくは方法の基本的および新規の特性に実質的に影響しないものに限定する。代替語(例えば、「または」)の使用は、代替語の一方、両方、またはこれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。
【0117】
本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、範囲内に入る各別個の値を個々に言及する簡略法としての機能を果たすことを単に意図し、各別個の値は、あたかも本明細書に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。例えば、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲、整数範囲、サイズ範囲、または厚さ範囲は、別段の指示がない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合、その分数(整数の10分の1および100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0118】
本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに相反することがない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる例または例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良く解明することを単に意図し、別段、特許請求されない限り、本発明の範囲を制限しない。本明細書におけるいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠ないかなる非特許請求要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0119】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載される。それらの好ましい実施形態の変化形態は、上記の説明を読むことによって当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてそのような変化形を採用することを予想し、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許可された通り、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題のすべての修正物および均等物を含む。さらに、好ましい実施形態のすべての考えられる変化形における上記の要素のあらゆる組み合わせは、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈と明らかに相反することがない限り、本発明によって包含される。
本発明は次の実施態様を含む。
[請求項1]
並列発酵プロセスへのガスの流れを最適化するための方法であって、
a.少なくとも1つの工業的供給源に由来するガス流を、少なくとも1つの水素分離モジュールを使用して、水素が豊富な流れおよび水素が枯渇した流れに分離することと、
b.第1の発酵生成物を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器を使用して、第1の発酵プロセスにおいて前記水素が豊富な流れの少なくとも一部を発酵させることと、
c.第2の発酵生成物を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器を含む第2の発酵プロセスにおいて、前記水素が枯渇した流れの少なくとも一部を発酵させることと、を含み、
前記第1の発酵生成物および第2の発酵生成物は、異なる生成物である、方法。
[請求項2]
前記第1の発酵生成物が、エタノールであり、前記第2の発酵生成物が、2,3-ブタンジオールである、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
前記液体栄養培地が、前記第1の発酵プロセスおよび前記第2の発酵プロセスに並列に流れる、請求項1に記載の方法。
[請求項4]
前記水素分離モジュールが、圧力スイング吸着プロセスである、請求項1に記載の方法。
[請求項5]
前記工業的供給源が、炭水化物発酵、ガス発酵、セメント製造、パルプおよび製紙、製鋼、石油精製および関連プロセス、石油化学生成、コークス生成、嫌気性または好気性消化、ガス化、天然ガス抽出、メタン改質、石油抽出、アルミニウム、銅、および/または鉄合金の生成および/または精製のための冶金プロセス、地質貯留層、ならびに触媒プロセスからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
[請求項6]
前記ガス流の少なくとも一部が、冶金プロセスからの高炉上部ガスからなる、請求項1に記載の方法。
[請求項7]
前記第1の発酵プロセス内で生成されたベントガスの少なくとも一部は、前記水素が豊富な流れに再循環される、請求項1に記載の方法。
[請求項8]
前記第1の発酵プロセス内で生成された前記ベントガスの少なくとも一部は、前記水素が豊富な流れに再循環される前に、圧力スイング吸着プロセスを通過する、請求項7に記載の方法。
[請求項9]
前記第2の発酵プロセス内で生成されたベントガスの少なくとも一部は、前記水素が枯渇した流れに再循環される、請求項1に記載の方法。
[請求項10]
前記第2の発酵プロセス内で生成された前記ベントガスの少なくとも一部は、前記水素が枯渇した流れに再循環される前に、圧力スイング吸着プロセスを通過する、請求項9に記載の方法。
[請求項11]
前記C1固定微生物が、Moorella、Clostridium、Ruminococcus、Acetobacterium、Eubacterium、Butyribacterium、Oxobacter、Methanosarcina、およびDesulfotomaculumからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
[請求項12]
前記C1固定微生物が、Clostridium autoethanogenumである、請求項1記載の方法。
[請求項13]
直列発酵プロセスへのガスの流れを最適化するための方法であって、
a.少なくとも1つの工業的供給源に由来するガス流を、少なくとも1つの水素分離モジュールを使用して、水素が豊富な流れおよび水素が枯渇した流れに分離することと、
b.第1の発酵生成物を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器を使用して、第1の発酵プロセスにおいて前記水素が豊富な流れの少なくとも一部を発酵させることと、
c.第2の発酵生成物を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器を含む第2の発酵プロセスにおいて、前記水素が枯渇した流れの少なくとも一部を発酵させることと、を含み、
前記第1の発酵生成物の少なくとも一部が、前記第2の発酵プロセスに渡される、方法。
[請求項14]
前記第1の発酵生成物が、酢酸である、請求項13に記載の方法。
[請求項15]
前記第1の発酵プロセスからの前記酢酸の少なくとも一部が、前記第2の発酵プロセスにおいてエタノールに変換される、請求項14に記載の方法。
[請求項16]
前記水素分離モジュールが、圧力スイング吸着プロセスである、請求項13に記載の方法。
[請求項17]
前記工業的供給源が、炭水化物発酵、ガス発酵、セメント製造、パルプおよび製紙、製鋼、石油精製および関連プロセス、石油化学生成、コークス生成、嫌気性または好気性消化、ガス化、天然ガス抽出、メタン改質、石油抽出、アルミニウム、銅、および/または鉄合金の生成および/または精製のための冶金プロセス、地質貯留層、ならびに触媒プロセスからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
[請求項18]
前記ガス流の少なくとも一部が、冶金プロセスからの高炉上部ガスからなる、請求項13に記載の方法。
[請求項19]
前記第1の発酵プロセス内で生成されたベントガスの少なくとも一部は、前記水素が豊富な流れに再循環される、請求項13に記載の方法。
[請求項20]
前記第1の発酵プロセス内で生成された前記ベントガスの少なくとも一部は、前記水素が豊富な流れに再循環される前に、圧力スイング吸着プロセスを通過する、請求項19に記載の方法。
[請求項21]
前記第2の発酵プロセス内で生成されたベントガスの少なくとも一部は、前記水素が枯渇した流れに再循環される、請求項13に記載の方法。
[請求項22]
前記第2の発酵プロセス内で生成された前記ベントガスの少なくとも一部は、前記水素が枯渇した流れに再循環される前に、圧力スイング吸着プロセスを通過する、請求項21に記載の方法。
[請求項23]
前記C1固定微生物が、Moorella、Clostridium、Ruminococcus、Acetobacterium、Eubacterium、Butyribacterium、Oxobacter、Methanosarcina、およびDesulfotomaculumからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
[請求項24]
前記C1固定微生物が、Clostridium autoethanogenumである、請求項13記載の方法。
[請求項25]
前記ガス流の少なくとも一部が、メタン改質プロセスに由来する、請求項1および13に記載の方法。
[請求項26]
前記メタン改質プロセスが、メタン含有ガスの少なくとも一部を、一酸化炭素および水素の少なくとも一部を含むガス流に変換する、請求項25に記載の方法。
[請求項27]
発酵プロセスへのガス流を最適化するための方法であって、
a.発酵生成物およびベントガス流を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器を使用して、工業的供給源からのガス流の少なくとも一部を発酵させることと、
b.前記ベントガス流の少なくとも一部を、バイオリアクターに再循環させることと、を含み、
前記ベントガス流の少なくとも一部の前記バイオリアクターへの前記再循環が、前記培養物の潜在的な阻害を低減および/または軽減する、方法。
[請求項28]
前記ベントガスの少なくとも一部が、前記バイオリアクターに再循環される前に、圧力スイング吸着プロセスを通過する、請求項27に記載の方法。
[請求項29]
前記圧力スイング吸着プロセスが、二酸化炭素、無機炭化水素、タール、有機窒素、ならびに有機および無機硫黄からなる群から選択される少なくとも1つの成分の少なくとも一部を、前記ベントガス流から除去する、請求項28に記載の方法。
[請求項30]
前記圧力スイング吸着プロセスが、二酸化炭素、無機炭化水素、タール、有機窒素、ならびに有機および無機硫黄からなる群から選択される少なくとも2つの成分の少なくとも一部を、前記ベントガス流から同時に除去する、請求項28に記載の方法。
[請求項31]
発酵プロセスへのガス流を最適化するための方法であって、
a.発酵生成物およびベントガス流を生成するために、1つ以上のC1固定微生物の培養物を含有する液体栄養培地を含む少なくとも1つの反応器を使用して、工業的供給源からのガス流の少なくとも一部を発酵させることと、
b.二酸化炭素、無機炭化水素、タール、有機窒素、ならびに有機および無機硫黄からなる群から選択される少なくとも1つの成分の少なくとも一部を、圧力スイング吸着プロセスを使用して、前記ベントガスから除去して、浄化されたベントガスを生成することと、
c.前記浄化されたベントガス流の少なくとも一部を、バイオリアクターに再循環させることと、を含む、方法。
[請求項32]
前記ガス流の少なくとも一部が、冶金プロセスからの高炉上部ガスからなる、請求項31に記載の方法。
[請求項33]
前記発酵プロセスへの全ガス流が、前記工業的供給源からの前記ガス流と、前記浄化されたベントガスの少なくとも一部との組み合わせからなる、請求項31に記載の方法。
[請求項34]
前記浄化されたベントガスの少なくとも一部の前記バイオリアクターへの前記再循環が、前記全ガス流中のメタンおよび窒素の全体的な組成を少なくとも15パーセント増加させる、請求項33に記載の方法。
[請求項35]
前記浄化されたベントガスの少なくとも一部の前記バイオリアクターへの前記再循環が、前記全ガス流中のメタンおよび窒素の全体的な組成を少なくとも50パーセント増加させる、請求項33に記載の方法。