(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】光重合プレポリマを得るためのシステム
(51)【国際特許分類】
C08F 2/01 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
C08F2/01
(21)【出願番号】P 2021564499
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(86)【国際出願番号】 US2020030553
(87)【国際公開番号】W WO2020223406
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-03-08
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521473077
【氏名又は名称】マイティ ビルディングス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】インダイク,デニス
(72)【発明者】
【氏名】トルーシン,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】トルーシナ,アナ
(72)【発明者】
【氏名】ダボフ,アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】スタロドゥプツェフ,ドミトリー
(72)【発明者】
【氏名】ソロニーツィン,スラヴァ
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-113723(JP,A)
【文献】特開2006-199862(JP,A)
【文献】国際公開第2011/162544(WO,A1)
【文献】特開2017-036506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合プレポリマを得るためのシステムであって、
初期重合化する未処理液体材料をロードするための未処理材料ローディングステーションと、
前記未処理材料ローディングステーション側のロード位置と、前記ロード位置とは反対側のアンロード位置とを有する閉ループコンベヤであって、前記閉ループコンベヤに固定され、順番に配置され、開放された上部を有する複数の材料受取トレイを搬送する閉ループコンベヤであって、前記材料受取トレイは、前記アンロード位置を通過し、移動方向を変え、前記材料受取トレイは上下反対の位置に反転される、閉ループコンベヤと、
前記材料受取トレイによって搬送される前記未処理液体材料を光初期重合のための光エネルギー量だけ照射するために前記材料受取トレイを通過させる位置における前記閉ループコンベヤの上方にある少なくとも1つの初期重合ステーションであって、前記材料受取トレイによって搬送される前記
未処理液体材料の少なくとも一部を、前記
未処理液体材料を完全硬化重合材料に変えないような所定の初期重合度で初期重合材料に変えるように構成される少なくとも1つの初期重合ステーションと、
前記アンロード位置の下方に位置する初期重合材料レシーバと
を備える、システム。
【請求項2】
前記初期重合ステーションの数は2である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記閉ループコンベヤは、周囲に前記閉ループコンベヤが案内されるプーリであって、そのうちの1つは駆動モータを備える駆動プーリであるプーリをさらに含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記初期重合材料レシーバは、前記初期重合材料の粘度を測定するための粘度計を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記粘度計及び前記駆動プーリの前記駆動モータとフィードバックラインを介してリンクされた中央処理演算装置をさらに備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記材料受取トレイは、前記
閉ループコンベヤが移動方向を変える前記閉ループコンベヤの前記アンロード位置を通過する程度に柔軟である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記
材料受取トレイは、反射コーティングで被覆される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの初期重合ステーションで変えられた前記初期重合材料は、30000から50000cPsの範囲の粘度を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記所定の初期重合度は、前記材料受取トレイによって搬送される前記
未処理液体材料を所定の時間の間、前記少なくとも1つの初期重合ステーションで照射に露光することにより達成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記材料受取トレイのそれぞれは、底と側壁とを有す
る、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの初期重合ステーションは、初期重合される前記未処理液体材料の少なくとも一部をゼラチン状の初期重合材料に変えるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記未処理材料ローディングステーションと前記閉ループコンベヤとの間に位置する投入弁であって、初期重合する液体材料の投与量で前記材料受取トレイを充填するように構成される投入弁
をさらに備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記閉ループコンベアの前記アンロード位置の下方に位置する分離コンポーネントであって、前記材料受取トレイからすべての材料を受け取り、前記ゼラチン状の初期重合材料から液体材料を分離するように構成される分離コンポーネントと、
前記分離された液体材料を前記未処理材料ローディングステーションに戻すように構成される戻しパイプラインと
をさらに備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記ゼラチン状の初期重合材料を所定の寸法の小片に粉砕するために前記ゼラチン状の初期重合材料を受け入れるように構成されるシュレッダ
をさらに備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記シュレッダ内に設置され、前記ゼラチン状の初期重合材料の粘度を測定するように構成される粘度計
をさらに備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの初期重合ステーション及び前記粘度計と通信可能な中央処理演算装置であって、進行中の生成プロセス中に
前記所定の初期重合度まで初期重合
させる材料を
光エネルギーで照射するために、前記ゼラチン状の初期重合材料の測定粘度に基づいて前記少なくとも1つの初期重合ステーションの動作を制御するように構成される中央処理演算装置
をさらに備える、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合プレポリマを得るためのシステムに関し、より詳細には、建築材料の成分としての使用に適した光重合プレポリマを得るための上記システムに関するものである。特に、本発明は、建物又は壁、床、天井、外装材及び内装材、家具などの建物の構成要素、又はアウトドア又はインドア用品のような物を3D印刷プロセスにより製造するのに使用される材料の成分として使用するための光重合プレポリマの調製を意図したものである。
【先行技術の説明】
【0002】
過去十年間にわたって、三次元印刷(以下、3D印刷)が、製造業において大きな流行語となっており、建築部門のような分野においても浸透し始めてきている。建物の壁を印刷し、セメントを処理することができる現在の3Dプリンタの技術は、伝統的な建築手法及び建築製品の新しい形を作るのに役立ってきた。
【0003】
建築業界における3D印刷の歴史はまだ浅い。2004年にサウスカロライナ大学が3D印刷により壁を作製しようとした。これは当該技術が建築業界に最初に適用された例として広く認められている。2014年には、3D印刷を用いて建設された完全なカナルハウスがアムステルダムで完成した。2016年には、3D印刷された邸宅が中国で完成した。また、2016年には、ドバイ未来財団が3D印刷を使ってオフィスを建設し、これは、商業的建築部門における当該技術に対する大きなマイルストンとして考えられている。120フィート×40フィート×20フィートの大型3Dプリンタにより完全に機能する2,700平方フィートの建物が建設された。建設はたった17日しかかからなかった。
【0004】
建築における3D印刷の利点は、スピード、廃材減少、設計の自由度、及び人間による間違いの減少にある。建築における3D印刷の問題は、高いコスト、労働力不足、品質管理、及び適切な規制がないことにある。
【0005】
しかしながら、建築において3D印刷を使用することは、光重合により重合可能な出発材料をキュアリングする重合システムをはじめとして特許文献において既に言及されている。
【0006】
2016年7月19日にP. Xu氏等に対して発行された米国特許第9,394,441号は、三次元印刷システムに使用される建築材料を開示している。この材料は、キュアリング可能なオリゴマ材料と、反応成分と、1以上のウレタンワックスを含む非反応成分と、少なくとも1つの希釈材とからなる。この材料の反応成分は、キュアリング可能なオリゴマ材料及び/又は少なくとも1つの希釈材に含まれる化学部分と重合可能な少なくとも1つの化学部分である。反応成分は、建築材料内に結晶領域として存在している。
【0007】
米国特許第9,394,441号は、光重合によって重合材料をキュアリングすることを明確に教示していないが、そのようなキュアリング方法があると考えることができる。ある実施形態においては、好適な光開始剤は、アセトフェノン、便利なものとして2,2-ジアルコキシベンゾフェノン及び1-ヒドロキシフェニルケトン、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン又は2-ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン(=2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノン)をはじめとしてHeCdレーザ照射源とともに使用することができるものを含むと述べられている。
【0008】
さらに、ある実施形態においては、好適な光開始剤は、ベンジルジメチルケタールのようなベンジルケタールをはじめとしてArレーザ放射源とともに使用することができるものを含んでいる。ある実施形態においては、光開始剤は、a-ヒドロキシフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール又は2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド又はこれらの混合物を含んでいる。
【0009】
2005年8月9日にR. Burgess氏に対して発行された米国特許第6,927,018号は、光活性化建築材料を用いた三次元印刷に関するものである。この公報は、光活性化可能な建築材料を用いた方法、製品、及び製品を製造するためのシステムを開示している。当該方法は、光活性化可能な建築材料の層を予め選択された面に付与する工程と、複数の発光核を用いて所定の光強度で所定の距離で当該層をスキャンして、建築材料の重合を得るための所定の光開始プロセスにより光活性化可能な建築材料を光活性化する工程と、製品が製造されるまで、直前の層にそれぞれ層を付与する工程と建築材料を重合するために複数の発光核を用いて当該層をスキャンする工程とを繰り返す工程とを含む。提案されている3D印刷方法における建築要素の製品に好適な材料として本明細書で例示されている光活性化可能な建築材料は、Shipley社のMicroposit S1800シリーズのフォトレジストである。Shipley社のMicroposit S1800シリーズのフォトレジストは、広帯域露光に効果的なG線(0.436ミクロン)露光に最適化されており、高解像度プロセスパラメータを有している。例えば、Shipley社のMicroposit S1813は、12.3マイクロメートルの厚さを有し、重合(「印刷」)に150mJ/cm2を必要とし、G線(0.54NA)で重合され得る。
【0010】
しかしながら、様々な有機ポリマの能力にもかかわらず、3D印刷での使用に最適な特性を有する材料の成分として使用されるプレポリマの調製に好適な初期重合システム及び有機材料を見つける作業は依然として重要である。
【概要】
【0011】
本発明は、建物又は壁、床、天井、外装材及び内装材、家具などの建物の構成要素、又はアウトドア又はインドア用品のような物を3D印刷プロセスにより製造するのに好適な建築材料の成分として使用される光重合プレポリマを得るためのシステム及び方法に関するものである。
【0012】
システムは、前駆体ローディングステーションと初期重合材料レシーバとの間に架け渡された柔軟なベルトの形態の閉ループコンベヤを含む。初期重合材料レシーバから製品が建築3D印刷機にアンロードされる。コンベヤは、閉ループコンベヤのプーリの周囲を回ることができる複数の複数の柔軟なトレイを搬送する。プーリのうちの1つは駆動モータを備える駆動プーリである。トレイは、開放された上部を有し、前駆体の投与された部分を搬送する浅いトラフである。前駆体は、ローディングステーションからアンローディングステーションまでの途中で2つの光重合ステーションの光源の下を連続的に通過することにより光重合される。
【0013】
換言すれば、コンベヤ又は柔軟なベルトは、未処理材料(前駆体)ローディングステーション側のロード位置と、ロード位置とは反対側のアンロード位置とを有している。材料受取トレイは、上下反対の位置に、すなわち、トレイの開放された上部が下方を向く位置に反転される。
【0014】
それぞれのステーションは、所定の波長で動作し、トレイに充填される材料に所定の光エネルギー量を照射して材料を所望の粘度にプレキュアする複数の発光素子(LED)からなる。プロセスのパラメータ(粘度、照射量など)は、中央処理演算装置を介してセンサにより自動的に制御される。アンロードの前に、未硬化の液相がプレポリマから分離され、再利用のためにローディングステーションに戻される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、光重合プレポリマを得るための本発明のシステムの概略模式図である。
【
図2】
図2は、
図1のシステムにおいて使用されるトレイの立体図である。
【詳細な説明】
【0016】
本発明は、光重合プレポリマを得るためのシステム、より詳細には、建築材料の成分としての使用に好適な光重合プレポリマを得るための上記システム及び方法に関するものである。特に、本発明は、建物又は壁、床などの建物の構成要素などを3D印刷プロセスにより製造する際に使用される材料の成分として使用するための光重合プレポリマの調製を意図したものである。
【0017】
本発明のシステム(以下、単に「システム」という)が、
図1に模式的に示されており、参照符号20が付されている。このシステムは、3D印刷により建物又は建物の部品を製造する際に他の成分と混ぜて使用される光重合有機材料の調製を意図している。システム20は、出発材料ローダから初期重合材料出力ステーションに移送される光重合可能材料の進路に設置された光源から出射される光の影響下で初期重合可能材料を照射することにより光硬化型光重合可能材料の連続的かつ効果的な初期重合を行うことを意図したものである。
【0018】
より具体的には、
図1に示されるように、システム20は、閉ループコンベヤ22、例えば、ロード位置、初期重合可能材料入力ステーション24から、ロード位置とは反対側のアンロード位置、すなわち初期重合材料出力ステーション26まで延びる柔軟なベルトの形態の移送ユニットを含んでいる。
【0019】
入力ステーションはタンク27を備えており、タンク27は、液体状態の光初期重合可能出発材料28と、液体媒体中に浮遊する固体PEG4000粉末とを含んでいる。
【0020】
閉ループコンベヤ22、すなわち柔軟なベルトは、プーリ30及び32の周囲に案内され、プーリ30及び32の一方、例えばプーリ30は駆動プーリであり、他方、すなわちプーリ32は従動プーリである。プーリ30は、ドライバ(図示せず)を介してモータ34により回転駆動される。コンベヤ22の上側移送部は矢印A(
図1)の方向に移動する。
【0021】
コンベヤ22の表面には、複数の初期重合トレイ(以下、「材料受取トレイ」という)36a,36b,...36n(
図1)が取り付けられている。トレイは、所定の距離で互いに離間していてもよく、あるいは、トラクタトラックのリンクとして互いに接続されていてもよい。
【0022】
材料受取トレイのうちの1つ、例えばトレイ36aの立体図である
図2からわかるように、トレイは矩形の浅いトラフであり、開放された上部と、側壁36a1,36a2,36a3,36a4と、底板38とを有している。材料受取トレイは、一例として矩形ボディとしてのみ示されており、トレイは正方形、六角形、又は他の好適な任意の形状であってもよいことは理解されよう。トレイ36a,36b,...36nは、コンベヤ22、すなわちベルトに固定され、プーリ34及び36の周りを通過しなければならないので、これらは、液体の光重合可能材料28に対して不活性であり、プーリの周囲をループすることが可能な例えばシリコーンのような柔軟な材料から形成される。光重合可能材料の硬化の効率を上げるために、側壁36a1,36a2,36a3,36a4及び底板38の内面は反射コーティングで被覆されている。
【0023】
換言すれば、コンベヤ22は、未処理材料ローディングステーション側のロード位置と、ロード位置とは反対側のアンロード位置とを有しており、材料受取トレイがアンロード位置を通過するときに、材料受取トレイは、上下反対の位置に、すなわちトレイの開放された上部が下方を向く位置に反転される。
【0024】
システム20の本質的な部分は、ローディング材料入力ステーション24から初期重合材料出力ステーション26の途中で材料受取トレイ36a,36b,...36nを通過させるための、コンベヤ22の上方に順番に配置された第1の初期重合ステーション38aと第2の初期重合ステーション38bとからなる固定初期重合チャンバ38である。材料受取トレイ36a,36b,...36nは、特に駆動プーリ30の駆動モータ34の動作速度をフィードバックライン42を介して制御する中央処理演算装置40の制御下において初期重合ステーション38a及び38bを連続的又は間欠的に通過する。
【0025】
2つの初期重合ステーション38a及び38bは、プロセスを中断させないために他方の代わりに使用される。これらのステーションのうち一方が故障すると、他方が動作し続け、プロセスが中断されない。光初期重合プロセスを2つに分けることにより、最終製品における粘度をより細かく選択することが可能になると考える理由もある。この意見は、光重合運動曲線は指数関数的な形態を有しているという事実に基づいている。両方のステーションの通常動作中は、その光エネルギー量は50%/50%として共有される。一方のステーションだけが動作している場合は、そのステーションに対する負荷が増加する。さらに、2段階の初期重合を用いることにより、初期重合プロセスをより上手く制御することができ、得られる製品の品質を向上することができる。
【0026】
材料受取トレイ36a,36b,...36nを満たす光重合可能材料は、入力ステーションタンク37から投入弁44を介してこれらのトレイに供給される。トレイに含まれる材料は、それぞれのステーション38a及び38b内の材料受取トレイ36a,36b,...36nの経路の真上に設置された光源46及び48から出射される光の影響を受けて光重合により初期重合化する。
【0027】
両方のステーション38a及び38bの光源46及び48は、5から5000Wtの範囲の合計光照射パワーを提供する。本発明の特定の一実施形態によれば、それぞれのステーションでは、LEDが矩形又は正方形状の平坦な行列状に配置されている。LEDは、405nm、440nmなどの様々な波長で動作し得る。光源46及び48に対する主な条件は、±5%の範囲の正確性を持ってトレイ内の材料に高い均一性で照射することである。それぞれの光源46及び48は、例えば500個のLEDを含み得る。この例は例示としてのみ提示されているものであって、最終的な結果は、初期重合可能材料に照射された合計光量により定義されることは理解されよう。光源46及び48は、交換可能であってもよく、同一の又は異なる波長で動作するものであってもよい。
【0028】
光重合可能な異なる前駆体は、異なる波長の光照射に対して異なる態様で反応し得ることが知られている。したがって、上述したように、光源46及び48は、交換可能であってもよく、異なる波長のLEDから構成されていてもよい。例えば、光源46及び48は、405nmの波長で、あるいは440nmの波長で動作してもよく、あるいは、これらのうち一方が405nmの波長で動作し、他方が440nmの波長で動作してもよい。これらの特定の波長は例示としてのみ提示されていることは理解されよう。
【0029】
得られるプレポリマを3D印刷において使用される他の成分と後で混合して使用するのに許容される最適なパラメータで最終製品を得るための最適光量は、露光時間と照射器のパワーを調整することにより得ることができる。換言すれば、光量Dは以下の式で表現することができる
D=W・texp
ここで、Wは初期重合可能材料が露光されたパワーであり、texpは露光時間である。このように、Dの値は、パワーW、露光時間texp又はこれら両方を変化させることにより調整可能である。
【0030】
光出射器の下に光重合可能材料が置かれる硬化時間及び出射される光パワーの強度、すなわち放射量は、(例えば、2秒から60秒の範囲内で)調整可能であり、使用される材料及び受け入れる初期重合材料の粘度に依存する。
【0031】
第2の露光ステーション38bを通過した後に得られる初期重合材料は、(均質化後における)粘度が30000から50000cPsの範囲のゼラチン状の物質である。実際には、この段階で得られる材料は、ゼラチン状の物質と液体とから構成される。粘度は、3D印刷機(図面では示されていない)のパイプラインを通って得られたプレポリマと混合されて調製される3D印刷材料の流動性を得るように選択される。
【0032】
初期重合材料出力ステーション26は、トレイが従動プーリ32の周囲を回るときに第2のステーション38bを通過した初期重合製品がトレイから落ちる分離器50を含んでいる。分離器の内部は、チラブルふるい50cにより2つの区画50a及び50bに分割されている。チラブルふるい50cは、初期重合材料の液相を区画50bに通し、ゼラチン状の相を区画50aに保持する。区画50aから、ゼラチン状の相は、漏斗51を通って初期重合材料レシーバに供給される。図示されている場合では、初期重合材料レシーバは、シュレッダ52のような粉砕器として示されている。シュレッダ52は、ツインシャフトワグナーシュレッダWTS500(オーストリア)などの従来からある工業的シュレッダである。シュレッダは、ゼラチン状の物質を例えば1~10mmの範囲の寸法の小片に分断する。
【0033】
破砕された初期重合最終生成物は、建物又は建物の部品を3D印刷するために必要とされる鉱物又は他の物質と混合される成分の1つであり、システムからアンロードされて最終プレポリマレシーバ54から3D印刷機(図示せず)に送られる。同時に、区画50bに溜まる初期重合材料の液相は、ポンプユニット56の動作によって戻しパイプライン58を通って初期重合可能材料入力ステーション24に戻る。最終プレポリマレシーバ54は、得られた破砕され均質化された初期重合物の粘度を3D印刷機にアンロードされる前に測定するオンライン粘度計60を備えている。粘度計の例としては、Fungilab(商標)アルファシリーズLモデル回転粘度計が挙げられ、アルファシリーズLモデル回転粘度計は、高速で正確な粘度計測が可能である。ブランド:Fungilab(商標)V100003。
【0034】
粘度計60は、フィードバックライン62を介して中央処理演算装置40にリンクされている。上述したように、中央処理演算装置40は、モータ34の回転速度、ひいてはコンベヤ22の直線速度、及び光出射器38a及び38bのパワー、ひいては光重合可能材料の放射量を制御及び調整し得る。
【0035】
3D印刷装置にアンロードされる破砕され均質化されたプレポリマの流動可能な最終的な量の粘度及び他の性能特性に影響を与える初期重合の程度は、光重合のプロセス中の材料の照射量に依存し、そのような量は、初期重合ステーション38a及び38bから出射される光のパワー及びコンベヤ22の速度により定義されることは理解できるであろう。システム20において、最終製品の粘度は、コンベヤの速度、第1のステーション38aでの露光時間、第2のステーションでの露光時間、コンテナ28内の出発材料の粘度、光重合可能材料の層の厚さなどの変数に依存するので、システムを安定モードの連続及び自動運転に設定する前に実験的にこれらのパラメータを選択するのが良いであろう。
【0036】
あるいは、それぞれのトレイにおける材料層の必要とされる厚さは、平行単色光ビームが吸収媒体中を伝搬するときの減衰を決定するブーゲ-ランバートの法則に基づく計算により予め決めることができる。
【0037】
換言すると、光重合ステーション38a及び38bの照明器から出射された光は、構成要素の光吸収係数がわかると、層の深さ方向に指数関数的に減少するので、トレイ内の材料層の厚さを評価することができる。
【0038】
入力ステーション24に供給される供給原材料28は、表1に示される成分からなる液体混合物である。材料28の粘度は5から15cPsの範囲にあり、濃度は1.0から1.2kg/lの範囲にある。
【0039】
生成された初期重合材料は、30000から50000cPsの範囲の粘度を有するゼラチン状の均質物質である。この材料は、向上した接着性、環境に対する耐性、低い収縮特性、及び短い固化時間を有する。これらの特性の組み合わせにより、従来の初期重合材料を用いた場合よりも短い時間で所望の3D印刷結果を実現することが可能となる。
【0040】
表1.システムにおいて使用される光重合可能出発材料の特性
【表1】
【0041】
a)当該技術分野において知られている方法で投入弁44を介して制御された所定量で液体光重合可能材料がそれぞれの可動トレイに導入される。充填ステーションでは、中央処理演算装置40からコンベヤモータ34に送信されたコマンドによりそれぞれのトレイが停止する。
【0042】
b)充填動作が完了すると、コンベヤベルトが動いてトレイが第1の初期重合ステーション38aの光源46の真下の位置に揃うまで移動する。
【0043】
c)第1の初期重合ステーション38aでは、第1の所望の初期重合度まで光重合可能材料の初期重合を行う所定の放射量に材料が曝される。
【0044】
d)第1のステーションでの予備硬化の後、コンベヤベルト22が動いて、予備硬化後の材料を含むトレイを第2のステーション38bの光源に揃える。
【0045】
e)ステージ46上で予備硬化された材料は、その後、最終硬化され、所望の初期重合度が実現される。
【0046】
f)工程a)からe)が連続的に行われ、プーリ30及び32を回る無限ループ経路の途中でトレイがコンベヤの端に到達し、プーリ32の周りを回ることにより方向を変えると、トレイから最終的なゼラチン状の初期重合材料が分離器50の区画50aに落ちる。得られた材料は、未硬化の液相を含むことがある。
【0047】
g)分離器50では、未硬化の液相が分離器50の区画50bに流れ込み、ポンプユニット56の動作によりパイプライン58を介してタンク24に戻る。
【0048】
f)分離された均質な初期重合材料は、30000から50000cPsの所定の粘度と30から40℃の範囲の温度で得られ、分離器50の区画50aから漏斗51を介して粉砕器又はシュレッダ52に供給され、シュレッダからプレポリマレシーバ54に供給される。プレポリマレシーバ54では、プレポリマの粘度がオンライン粘度計60により制御される。
【0049】
g)完成プレポリマは、レシーバ54から3D印刷機(図示せず)のミキサに矢印Bの方向にアンロードされる。
【0050】
適用例1
80リットルのトリエチレングリコールジメタクリレートCH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)3COC(CH3)=CH2(TEGDMA)、40gのフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド(PPO-初期重合開始剤)及び40gのポリエチレングリコールH(OCH2CH2)nOH(PEG)から光初期重合に好適な初期重合可能混合物が調製された。混合物は、含有物を除去するために濾過され、投入弁44を介してトラフ36aに注ぎ込まれた。トラフ充填時間は50秒であった。その後、充填されたトラフは第1の初期重合ステーション38aに送られた。第1の初期重合ステーションは、最大発光エネルギーが45Wである500個のLEDを含んでいた。これらのLEDのうち約90%(40W)のみが初期重合可能混合物を照射するために使用された。照射時間は27秒であった。第1の初期重合で前処理された混合物が第2の初期重合ステーション38bに移送された。第2の初期重合ステーション38bは、合計発光エネルギーが45Wの500個のLEDを含んでいた。これらのLEDのうち約90%(40W)のみが初期重合可能混合物を照射するために使用された。照射時間は27秒であった。このように、それぞれのステーションでの照射量は40W×27秒=約1080J、すなわち1.08kJであり、合計照射量は2.16kJであった。完成した初期重合材料は、ふるい50c及びシュレッダ52を介した濾過の後、建築3Dプリンタ(図示せず)にアンロードされ、その粘度は39500cpsであった。この場合において、最終製品の粘度が所定の範囲内であったため、この製品は、建築3D印刷において使用するのに好適であった。
【0051】
比較例1
80リットルのトリエチレングリコールジメタクリレートCH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)3COC(CH3)=CH2(TEGDMA)、40gのフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド(PPO-初期重合開始剤)及び40gのポリエチレングリコールH(OCH2CH2)nOH(PEG)から光初期重合に好適な初期重合可能混合物が調製された。混合物は、固体PEG4000の残余を除去するために濾過され、投入弁44を介してトラフ36aに注ぎ込まれた。トラフ充填時間は50秒であった。その後、充填されたトラフは第1の初期重合ステーション38aに送られた。第1の初期重合ステーションは、合計発光エネルギーが45Wである500個のLEDを含んでいた。これらのLEDのうち約90%(40W)のみが初期重合可能混合物を照射するために使用された。照射時間は27秒であった。第1の初期重合で前処理された混合物が第2の初期重合ステーション38bに移送された。第2の初期重合ステーション38bは、合計発光エネルギーが45Wの500個のLEDを含んでいた。これらのLEDのうち約90%(40W)のみが初期重合可能混合物を照射するために使用された。照射時間は25秒であった。このように、それぞれのステーションでの照射量は40W×25秒=約1000J、すなわち1kJであり、合計照射量は2kJであった。完成した初期重合材料は、ふるい50c及びシュレッダ52を介した濾過の後、建築3Dプリンタ(図示せず)にアンロードされ、その粘度は29000cpsであった。この場合において、最終製品の粘度が所定の範囲を超えていたため、この製品は、建築3D印刷において使用するには不適であった。
【0052】
比較例2
80リットルのトリエチレングリコールジメタクリレートCH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)3COC(CH3)=CH2(TEGDMA)、40gのフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド(PPO-初期重合開始剤)及び40gのポリエチレングリコールH(OCH2CH2)nOH(PEG)から光初期重合に好適な初期重合可能混合物が調製された。混合物は、固体PEG4000の残余を除去するために濾過され、投入弁44を介してトラフ36aに注ぎ込まれた。トラフ充填時間は50秒であった。その後、充填されたトラフは第1の初期重合ステーション38aに送られた。第1の初期重合ステーションは、合計発光エネルギーが45Wである500個のLEDを含んでいた。これらのLEDのうち約90%(40W)のみが初期重合可能混合物を照射するために使用された。照射時間は29秒であった。第1の初期重合で前処理された混合物が第2の初期重合ステーション38bに移送された。第2の初期重合ステーション38bは、合計発光エネルギーが45Wの500個のLEDを含んでいた。これらのLEDのうち約90%(40W)のみが初期重合可能混合物を照射するために使用された。照射時間は29秒であった。このように、それぞれのステーションでの照射量は40W×29秒=約1160Jであり、合計照射量は2.32kJであった。完成した初期重合材料は、ふるい50c及びシュレッダ52を介した濾過の後、建築3Dプリンタ(図示せず)にアンロードされ、その粘度は53200cpsであった。この場合において、最終製品の粘度が所定の範囲を超えていたため、この製品は、建築3D印刷において使用するには不適であった。
【0053】
このように、最適な照射量を選択することが、それぞれ80リットル、40g、及び40gの割合で調製されたTEGDMA、PRO、及びPEGからなる混合物の初期重合に関して非常に重要なファクタであることが分かる。TEGDMA、PPO、及びPEGを含む初期重合可能材料に対して、また、所定の割合でのこれらの成分に対してこのような結果が得られたものであることは理解できよう。
【0054】
特定の実施例及び図面を参照して本発明を説明した。これらの例及び図面は、本発明の適用範囲を制限するものと解釈すべきではなく、添付した特許請求の範囲の制限内において任意の変更及び改良が可能であることは理解されよう。例えば、上記で示されたものとは異なる波長を有するLED以外の光源を用いることができる。トレイは、
図2に示されるものとは異なる形状を有していてもよい。2つよりも多くの初期重合ステーションを用いることができる。元の光重合可能成分の要素は、表及び実施例において示されているものとは異なるものであってもよい。トレイは必ずしも柔軟なものでなくてもよい。トレイに前駆体材料の投与量をロードするための投入弁に代えて脈動ポンプを用いることができる。