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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】高強度鉄筋及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20230912BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20230912BHJP
   C21D 8/06 20060101ALI20230912BHJP
   B22D 11/00 20060101ALI20230912BHJP
   B22D 11/115 20060101ALI20230912BHJP
   B22D 11/124 20060101ALI20230912BHJP
   B22D 11/12 20060101ALI20230912BHJP
   C21C 7/072 20060101ALI20230912BHJP
   C21C 5/28 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C22C38/00 301Y
C22C38/58
C21D8/06 A
B22D11/00 A
B22D11/115 D
B22D11/124 N
B22D11/12 F
C21C7/072 Z
C21C5/28 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021570284
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 CN2019096977
(87)【国際公開番号】W WO2020232818
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】201910434471.6
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521514543
【氏名又は名称】インスティテュート オブ リサーチ オブ アイロン アンド スティール,ジィァンスー プロビンス/シャー-スティール カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF RESEARCH OF IRON & STEEL,JIANGSU PROVINCE/SHA-STEEL, CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Jinfeng Town, Zhangjiagang Suzhou,Jiangsu 215625, China
(73)【特許権者】
【識別番号】521514554
【氏名又は名称】ヂャンジャガン ホンチャン スティール プレート カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZHANGJIAGANG HONGCHANG STEEL PLATE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Jinfeng Town, Zhangjiagang Suzhou,Jiangsu 215625, China
(73)【特許権者】
【識別番号】521514565
【氏名又は名称】ジィァンスー シャガン グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU SHAGANG GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Jinfeng Town, Zhangjiagang Suzhou,Jiangsu 215625, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ユー
(72)【発明者】
【氏名】マー ハン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ ユン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ファンデェァ
【審査官】鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102703813(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103409683(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104451410(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102071357(CN,A)
【文献】特開2016-074936(JP,A)
【文献】特開2016-145415(JP,A)
【文献】特開平10-121200(JP,A)
【文献】特開昭58-087222(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0236696(US,A1)
【文献】特開昭62-142725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00 - 38/60
C21D 8/06
B22D 11/00
B22D 11/115
B22D 11/124
B22D 11/12
C21C 7/072
C21C 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋であって、化学組成は、質量%で、C:0.15~0.32%、Si+Mn:0.5~1.9%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.1~2.1%、V:0.02~0.8%で、Nb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siであり、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.56%であり、
化学組成は、質量%で、C:0.15~0.32%、Si+Mn:0.5~1.6%、Cr:0.3~0.6%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.3~2.0%、V:0.02~0.8%、Nb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siであり、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.56%であり、
前記鉄筋は、所定の微細組織を有し、且つ、所定の機械的特性を有し、
前記所定の微細組織は、フェライト、パーライト、ベイナイト及び析出相を含み、前記フェライトの体積百分率は、5~35%、サイズが2~15μm、前記パーライトの体積百分率は30~70%、前記ベイナイトの体積百分率は5~35%、サイズが5~25μmであり、
前記所定の機械的特性は、降伏強度≧600MPa、降伏比≦0.78、破断伸び≧25%、一様伸び≧15%、-20℃試験条件下での衝撃靭性≧160Jであることを特徴とする、鉄筋。
【請求項2】
鉄筋であって、化学組成は、質量%で、C:0.15~0.32%、Si+Mn:0.5~1.9%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.1~2.1%、V:0.02~0.8%で、Nb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siであり、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.56%であり、
化学組成は、質量%で、C:0.15~0.32%、Si+Mn:0.5~1.9%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.3~2.1%、V:0.02~0.8%、B:0.0008~0.002%、Nb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siであり、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.56%であり、
前記鉄筋は、所定の微細組織を有し、且つ、所定の機械的特性を有し、
前記所定の微細組織は、フェライト、パーライト、ベイナイト及び析出相を含み、前記フェライトの体積百分率は、5~35%、サイズが2~15μm、前記パーライトの体積百分率は30~70%、前記ベイナイトの体積百分率は5~35%、サイズが5~25μmであり、
前記所定の機械的特性は、降伏強度≧600MPa、降伏比≦0.78、破断伸び≧25%、一様伸び≧15%、-20℃試験条件下での衝撃靭性≧160Jであることを特徴とする、鉄筋。
【請求項3】
化学組成は、質量%で、C:0.15~0.32%、Si+Mn:0.5~1.9%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.1~2.1%、V:0.02~0.8%、B:0.0008~0.002%、NbとAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%、Ti:0.01~0.1%を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siであり、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.56%であることを特徴とする、請求項2に記載の鉄筋。
【請求項4】
断面直径が、14~18mmであり、質量%でC含有量が0.15~0.3%であり、炭素当量Ceqが0.40~0.52%であるか、又は
断面直径が、20~22mmであり、質量%でC含有量が0.15~0.3%であり、炭素当量Ceqが0.52~0.54%である、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の鉄筋。
【請求項5】
前記フェライトの体積百分率は、8~30%、サイズが3~12μm、前記パーライトの体積百分率は35~65%、前記ベイナイトの体積百分率は8~40%、サイズが6~22μmであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の鉄筋。
【請求項6】
前記フェライトの体積百分率は、10~25%、サイズが4~10μm、前記パーライトの体積百分率は40~60%、前記ベイナイトの体積百分率は15~35%、サイズが8~20μmであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の鉄筋。
【請求項7】
母材及びフラッシュバット溶接接合部を含み、引張試験における鉄筋の破断位置が母材部にあることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の鉄筋。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の鉄筋の製造方法であって、
電気炉又は転炉にて溶鋼を製錬する製錬工程と、
連続鋳造機で溶鋼から連続鋳造鋳片を作り、連続鋳造過程中の溶鋼過熱度は15~30℃である連続鋳造工程と、
連続鋳造鋳片を鉄筋に圧延し、加熱炉での連続鋳造鋳片の加熱温度は、1200~1250℃の範囲であり、在炉時間が60~120minの範囲、圧延開始温度が1000~1150℃の範囲、仕上圧延温度が850~950℃の範囲である温度制御圧延工程と、
冷却床で鉄筋を冷却し、冷却床に送り込む鉄筋温度は800~920℃の範囲である温度制御冷却工程と、
を含むことを特徴とする、鉄筋の製造方法。
【請求項9】
前記製錬工程は、アルゴンガス吹き込み精錬プロセスを含み、前記アルゴンガス吹き込み精錬プロセスにおいて、圧力0.4~0.6MPaのアルゴンガスを底吹きにして精錬後の溶鋼を穏やかに撹拌し、穏やかな撹拌時間は5分以上であることを特徴とする、請求項に記載の鉄筋の製造方法。
【請求項10】
連続鋳造過程で溶鋼を電磁撹拌し、電磁撹拌パラメータは、300A/4Hzで、末端部の電磁撹拌パラメータが480A/10Hzであることを特徴とする、請求項に記載の鉄筋の製造方法。
【請求項11】
前記連続鋳造工程において、連続鋳造鋳片の矯正温度≧850℃であることを特徴とする、請求項に記載の鉄筋の製造方法。
【請求項12】
前記温度制御冷却工程において、冷却床に送り込む鉄筋温度は、820~900℃の範囲であり、冷却床に送り込んだ後の冷却速度が2~5℃/sであることを特徴とする、請求項に記載の鉄筋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互引用】
【0001】
本願は、「高強度鉄筋及びその製造方法」と題し、2019年05月23日に出願された、中国特許出願番号第201910434471.6号の優先権を主張し、全ての内容も引用により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、鋼材の技術分野に関し、特に、高強度鉄筋及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
低品位鉄筋(普通鉄筋を含む)は、使用過程で鋼材の消費量を増やし、資源及びエネルギーの消費が生じ、環境負荷を増大させるだけではなく、顕著な降伏プラトーと低強度のため、降伏段階で引張力を増やせない場合より大きな塑性変形が発生し、建物の安全性に著しく影響を与える。重要保護工事等の構造安全レベルに関連する要件は、絶え間なく高まり、低品位鉄筋がこの要件を満たすことができなくなり、高強度鉄筋(例えば大変形に耐えられる鉄筋)が、時運に応じて現れている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、顕著な降伏プラトーがなく、かつ強度が高い高強度鉄筋及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的の一つを達成するため、本発明の一実施形態は、高強度鉄筋を提供する。高強度鉄筋の化学組成は、質量%で、C:0.15~0.32%、Si+Mn:0.5~1.9%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.1~2.1%、V:0.02~0.8%で、Nb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siであり、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.56%である。
【0006】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、前記高強度鉄筋の化学組成は、質量%で、C:0.15~0.29%、Si+Mn:0.5~1.8%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.1~2.0%、V:0.05~0.8%、Nb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siであり、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.54%である。
【0007】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、前記高強度鉄筋の化学組成は、質量%で、C:0.15~0.32%、Si+Mn:0.5~1.6%、Cr:0.3~0.6%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.3~2.0%、V:0.02~0.8%、Nb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siであり、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.56%である。
【0008】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、前記高強度鉄筋の化学組成は、質量%で、C:0.15~0.32%、Si+Mn:0.5~1.9%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.3~2.1%、V:0.02~0.8%、B:0.0008~0.002%、Nb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siであり、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.56%である。
【0009】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、前記高強度鉄筋の化学組成は、質量%で、C:0.15~0.32%、Si+Mn:0.5~1.9%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.1~2.1%、V:0.02~0.8%、B:0.0008~0.002%、NbとAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%、Ti:0.01~0.1%(Ti/N≧1.5)を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siであり、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.56%である。
【0010】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、前記高強度鉄筋の断面直径が、14~18mmであり、質量%でC含有量が0.15~0.3%であり、炭素当量Ceqが0.40~0.52%であるか、又は
前記高強度鉄筋の断面直径が、20~22mmであり、質量%でC含有量が0.15~0.3%であり、炭素当量Ceqが0.52~0.54%である。
【0011】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、前記高強度鉄筋の微細組織は、フェライト、パーライト、ベイナイト及び析出相を含む。
【0012】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、前記フェライトの体積百分率は、5~35%、サイズが2~15μm、前記パーライトの体積百分率は30~70%、前記ベイナイトの体積百分率は5~35%、サイズが5~25μm、前記析出相のサイズ≦100nm、体積分率≧2×105個/mm3である。
【0013】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、前記フェライトの体積百分率は、8~30%、サイズが3~12μm、前記パーライトの体積百分率は35~65%、前記ベイナイトの体積百分率は8~40%、サイズが6~22μm、前記析出相のサイズ≦80nm、体積分率≧5×105個/mm3である。
【0014】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、前記フェライトの体積百分率は、10~25%、サイズが4~10μm、前記パーライトの体積百分率は40~60%、前記ベイナイトの体積百分率は15~35%、サイズが8~20μm、前記析出相のサイズ≦60nm、体積分率≧8×105個/mm3である。
【0015】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、前記高強度鉄筋の引張試験の応力-ひずみ曲線において顕著な降伏プラトーがなく、降伏強度≧600MPa、降伏比≦0.78、破断伸び≧25%、一様伸び≧15%、-20℃における衝撃靭性≧160Jである。
【0016】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、前記高強度鉄筋は、母材及びフラッシュバット溶接接合部を含み、引張試験における前記高強度鉄筋の破断位置が母材部にある。
【0017】
上記目的の一つを達成するため、本発明の一実施形態は、前記高強度鉄筋の製造方法を提供する。前記製造方法は、次の工程を含む。
すなわち、電気炉又は転炉にて溶鋼を製錬する製錬工程、
連続鋳造機で溶鋼から連続鋳造鋳片を作り、連続鋳造過程中の溶鋼過熱度は15~30℃である連続鋳造工程、
連続鋳造鋳片を鉄筋に圧延し、加熱炉での連続鋳造鋳片の加熱温度は、1200~1250℃の範囲であり、在炉時間が60~120minの範囲、圧延開始温度が1000~1150℃の範囲、仕上圧延温度が850~950℃の範囲である温度制御圧延工程、
冷却床で鉄筋を冷却し、冷却床に送り込む鉄筋温度は800~920℃の範囲である温度制御冷却工程、である。
【0018】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、前記製錬工程は、アルゴンガス吹き込み精錬プロセスを含み、前記アルゴンガス吹き込み精錬プロセスにおいて、圧力0.4~0.6MPaのアルゴンガスを底吹きにして精錬後の溶鋼を穏やかに撹拌し、穏やかな撹拌時間は5分以上である。
【0019】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、連続鋳造過程で溶鋼を電磁撹拌し、電磁撹拌パラメータは、300A/4Hzで、末端部の電磁撹拌パラメータが480A/10Hzである。
【0020】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、前記連続鋳造工程において、連続鋳造鋳片の矯正温度≧850℃である。
【0021】
本発明の一実施形態の更なる改善形態として、前記温度制御冷却工程において、冷却床に送り込む鉄筋温度は、820~900℃の範囲であり、冷却床に送り込んだ後の冷却速度が2~5℃/sである。
【発明の効果】
【0022】
従来技術と比較すると、本発明の有利な効果としては、合理的なC、Si、Mn、Cr、Mo、Ni合金化設計を用い、Nb、V、Ti、Alのマイクロアロイング設計と組み合わせで、微細組織の微細化制御を実現する。引張試験の応力-ひずみ曲線において顕著な降伏プラトーがなく、降伏強度≧600Mpa、降伏比≦0.78であり、降伏強度に達した後、引き続き加工硬化及び均一な塑性変形が発生することで、外乱に対する建物の抵抗力を顕著に改善できる。かつ破断伸び≧25%、一様伸び≧15%であり、一様伸びは普通鉄筋と耐震補強用鉄筋より明らかに高く、建物の変形に対する耐性を大幅に向上させるのに役立つ。前記高強度鉄筋は、-20℃の試験条件において、衝撃靭性≧160Jであり、普通鉄筋と耐震補強用鉄筋より明らかに高く、前記高強度鉄筋の高靭性により、変形過程でより多くのエネルギーを吸収することで、建物の破壊に対する耐性を向上させ、次に前記高強度鉄筋の低炭素当量設計により、冷間曲げ、溶接等の加工応用の性能向上を確保する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
背景技術で述べたように、低品位鉄筋(普通鉄筋や一部の耐震補強用鉄筋を含む)には、顕著な降伏プラトー及び低強度等の問題があるため、日増しに高まる安全レベルの要件を満たすことができない。本発明者らは、これを踏まえて顕著な降伏プラトーがなく、総合強度性能が良好な高強度鉄筋及びその製造方法を提供する。その優れた性能に基づいて、高強度鉄筋は、大変形に耐えられる鉄筋とも呼ばれる。
【0024】
具体的に本発明の一実施形態において、前記高強度鉄筋の化学組成は、質量%で、C:0.15~0.32%、Si+Mn:0.5~1.9%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.1~2.1%、V:0.02~0.8%、Nb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siであり、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.56%である。
【0025】
大量の試験データに基づいて、以下に前記高強度鉄筋内の各化学組成を詳細に説明する。
【0026】
C:鋼材内の重要な合金元素の一つとして、鉄筋の強度に直接影響を及ぼす。質量%でCが0.15%未満の場合、鉄筋の強度が大幅に下がり、質量%でCが0.32%を超える場合、鉄筋の炭素当量が増大し、鉄筋の低温靭性及び溶接性を大幅に損なう。炭素当量が0.56%以下の場合、鉄筋の強度及び溶接加工性能は、確保される。したがって、本実施形態において、質量%でCが0.15~0.32%に制御され、炭素当量はCeq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.56%を満たす。
【0027】
Si、Mn:鋼材にSi、Mnを添加すると、焼入れ性が向上し、鉄筋の微細組織内に一定割合のパーライト及びベイナイトを生成することができる。質量%でSi+Mnの合計が0.5%未満の場合、鉄筋は、ベイナイトを形成しにくく、強度も低くなる。質量%でSi+Mnの合計が1.9%を超える場合、鉄筋は容易にベイナイトが多すぎて、パーライトの割合が少なく、降伏比が高く、伸びが不足する。したがって、本実施形態において、質量%でSi+Mnの合計は、0.5~1.9%に制御され、かつMn=(2.5~3.5)Siであれば、前記高強度鉄筋の微細組織におけるパーライト及びベイナイトの割合がより優れる。
【0028】
Mn、Cr、Mo、Ni:鋼材内の重要な固溶強化元素として、適量の合金化により、焼入れ性を向上させることができ、パーライト及びベイナイトの形成に重要な役割を果たす。質量%でMn+Cr+Mo+Niの合計が1.1%未満の場合、鉄筋の焼入れ性が低く、パーライト及びベイナイトの形成に不利となる。質量%でMn+Cr+Mo+Niの合計が2.1%を超える場合、鉄筋の低温靭性が悪い。したがって、本実施形態において、質量%でMn+Cr+Mo+Niの合計は、1.1~2.1%に制御されると、前記高強度鉄筋はより優れた焼入れ性、低温靭性を有し、かつ微細組織におけるパーライト及びベイナイト組織性能もより優れる。
【0029】
V:適量を添加すると、本実施形態において質量%でVが0.02~0.8%に制御された時、前記高強度鉄筋の製造プロセス(例えば圧延工程)内でナノレベルのV(C、N)化合物を析出し、フェライトの核生成サイトが増加し、フェライトの結晶粒成長を抑制し、析出沈殿によって強度を上げ、且つ溶接熱影響部におけるオーステナイト結晶粒の成長を効果的に抑制し、靭性が向上するが、過量すると鋼の溶接割れ感受性の増加を招く。
【0030】
Nb、Ti、Al:鋼材にNb、Ti、Alを添加すると、一方で、前記高強度鉄筋の微細組織内のオーステナイト結晶粒が微細化され、パーライト及びベイナイトの変態を調整することに有利となり、結晶粒微細化強化及び第二相強化が共同で作用を発揮する。もう一方で、Nbは容易に粒界に偏析する傾向があるため、結晶内Vの窒化炭素の析出を促進させ、粗大化を効果的に防止する。したがって、本実施形態において、質量%でNb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種が0.01~0.3%に制御され、すなわち本実施形態において、前記高強度鉄筋内はNb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種を含有し、質量%でいずれか1種を0.01~0.3%に制御する。
【0031】
従来技術、特に低品位鉄筋と比較すると、合理的なC、Si、Mn、Cr、Mo、Ni合金化設計を用い、Nb、V、Ti、Alのマイクロアロイング設計と組み合わせで、微細組織の微細化制御を実現する。引張試験の応力-ひずみ曲線において顕著な降伏プラトーがなく、降伏強度≧600Mpa、降伏比≦0.78であり、降伏強度に達した後、引き続き加工硬化及び均一な塑性変形が発生することで、外乱に対する建物の抵抗力を顕著に改善できる。かつ破断伸び≧25%、一様伸び≧15%であり、一様伸びは普通鉄筋と耐震補強用鉄筋より明らかに高く、建物の変形に対する耐性を大幅に向上させるのに役立つ。前記高強度鉄筋は、-20℃の試験条件において、衝撃靭性≧160Jであり、普通鉄筋と耐震補強用鉄筋より明らかに高く、前記高強度鉄筋の高靭性により、変形過程でより多くのエネルギーを吸収することで、建物の破壊に対する耐性を向上させ、次に前記高強度鉄筋の低炭素当量設計により、冷間曲げ、溶接等の加工応用の性能向上を確保する。
【0032】
一般的に言えば、前記高強度鉄筋は、従来技術の低品位鉄筋と比較すると、微細組織の微細化、顕著な降伏プラトーがなく、降伏強度が高く、降伏比が低く、破断伸びが高く、一様伸びが高く、-20℃の試験条件下での衝撃靭性が高く、溶接性が良好等の利点を持ち、総合性能がより優れ、重要保護工事の安全性を大幅に向上させることに役立ち、重要保護工事等の重要な構築物により適し、自然災害、外部破壊に対抗する建物の安全レベルを顕著にアップでき、同時に鉄筋の消費量を減らし、応用分野も幅広く、市場競争力が強い。
【0033】
好ましい実施形態において、前記高強度鉄筋の化学組成は、質量%でC:0.15~0.29%、Si+Mn:0.5~1.8%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.1~2.0%、V:0.05~0.8%、Nb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siであり、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.54%である。
【0034】
すなわち、質量%でCを0.15~0.29%、質量%でSi+Mnの合計を0.5~1.8%、質量%でMn+Cr+Mo+Niの合計を1.1~2.0%に最適化させ、かつ炭素当量Ceqを0.54%以下に制御することで、一様伸び及び-20℃試験条件下での衝撃靭性を更に向上させることに有利になる。
【0035】
別の好ましい実施形態において、前記高強度鉄筋の化学組成は、質量%でC:0.15~0.32%、Si+Mn:0.5~1.6%、Cr:0.3~0.6%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.3~2.0%、V:0.02~0.8%、Nb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siであり、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.56%である。
【0036】
すなわち、質量%でSi+Mnの合計を0.5~1.6%、質量%でMn+Cr+Mo+Niの合計を1.3~2.0%に最適化させ、かつ質量%でCrを0.3~0.6%に制御することで、前記高強度鉄筋の強度を効果的に高めることができ、かつCrの過剰添加により鉄筋の伸び及び溶接割れ感受性を著しく低下させることはない。
【0037】
更なる好ましい実施形態において、前記高強度鉄筋の化学組成は、質量%でC:0.15~0.32%、Si+Mn:0.5~1.9%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.3~2.1%、V:0.02~0.8%、B:0.0008~0.002%、Nb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siである、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.56%である。
【0038】
すなわち、質量%でMn+Cr+Mo+Niの合計を1.3~2.1%に最適化させ、質量%でBを0.0008~0.002%に制御し、微量のBを添加することにより、固溶のB元素はオーステナイト粒界に偏析しやすくなり、オーステナイト粒界エネルギーを低減し、オーステナイト粒界での初析・共析フェライトの形成を抑制でき、結晶粒内のフェライトの核生成を促進し、鉄筋の靭性を改善するが、過量のB元素は鉄筋の強度を大幅に向上させると同時に、割れ感受性も大幅に増加することにつながる。
【0039】
かつ上記「更なる好ましい実施形態」において、Nb、Ti及びAlの組成をNb及びAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%、Ti:0.01~0.1%、Ti/N≧1.5にさらに最適化させると、添加されるB元素の収率を確保でき、特に、溶鋼内のN含有量が高い傾向になった時、NがBと結合しやすいので、質量%でTiを0.01~0.1%に制御し、Ti/N≧1.5にさせることで、B元素の収率が低すぎるのを防ぐことができる。
【0040】
さらに、本発明において、前記高強度鉄筋は、ねじ節鉄筋であり、断面直径が14~18mm、質量%でC含有量が0.15~0.3%、炭素当量Ceqが0.40~0.52%であるか、又は断面直径が、20~22mm、質量%でC含有量が0.15~0.3%、炭素当量Ceqが0.52~0.54%であるので、一様伸び、衝撃靭性及び溶接性の向上に有利となる。
【0041】
さらに、本発明の一実施形態において、前記高強度鉄筋の微細組織は、フェライト、パーライト、ベイナイト及び析出相を含む。
【0042】
具体的に一実施形態において、前記フェライトの体積百分率は、5~35%、サイズが2~15μm、前記パーライトの体積百分率は30~70%、前記ベイナイトの体積百分率は5~35%、サイズが~25μm、前記析出相のサイズ≦100nm、体積分率≧2×105個/mm3である。
【0043】
大量の試験データに基づいて、以下に前記高強度鉄筋微細組織の各組織を詳細に説明する。
【0044】
フェライト:塑性と靭性が良好で、加圧力を受けて誘発する過程でひずみ硬化により強度を高めることができる。フェライトの体積百分率が5%未満の場合、鉄筋の塑性が悪化し、フェライトの体積百分率が35%を超える場合、加圧力を受ける過程で先に塑性変形が発生し、容易に顕著な降伏プラトーが生じることから局所的な変形が発生して全体的な伸びにも影響を及ぼす。フェライトのサイズが2μm未満の場合、製造の難易度が大きくなり、サイズが15μmを超える場合、降伏強度が低くなることで、局所的な変形が発生することで塑性も下がる。
【0045】
パーライト:強度は、高く、主に破壊強度を向上させるために用いられるが、同時に塑性と靭性が劣る。パーライトの体積百分率が30%未満の場合、鉄筋強度も低くなり、パーライトの体積百分率が70%を超える場合、鉄筋の塑性及び靭性に影響を与える。
【0046】
ベイナイト:強度は、フェライトとパーライトの間にあり、塑性及び靭性もフェライトとパーライトの間にあり、主な作用はフェライトとパーライトの変形を協調し、塑性変形を連続的かつ均一に進めさせることができることである。ベイナイトの体積百分率が5%未満の場合、効果が明らかではない。ベイナイトの体積百分率が35%を超える場合、鉄筋の破壊強度に影響を及ぼす。ベイナイトのサイズは、強度を決定し、サイズが5μm未満の場合、強度が高くなりすぎて制御が困難になる。サイズが25μmを超える場合、塑性変形の均一性に影響を及ぼすことから全体的な塑性の悪化を招く。
【0047】
析出相:一方でフェライトを強化でき、他方で変形によって発生した転位と相互作用し合い、降伏プラトーを消去できるため、連続かつ均一な塑性変形過程を実現する。析出相のサイズ及び体積分率は、転位との相互作用を決定することからひずみ強化挙動及び強化効果に影響を及ぼす。サイズが100nmを超える場合、析出相の強化効果が弱まる。体積分率が2×105個/mm3未満の場合、強化効果が明らかではないと同時に、転位との相互作用が不均一になり、塑性変形が不均一になりやすくなることから塑性にも影響を及ぼす。したがって、体積分率は、2×105個/mm3以上でなければならない。
【0048】
別の好ましい実施形態において、前記フェライトの体積百分率は、8~30%、サイズが3~12μm、前記パーライトの体積百分率は35~65%、前記ベイナイトの体積百分率は8~40%、サイズが6~22μm、前記析出相のサイズ≦80nm、体積分率≧5×105個/mm3であり、前記高強度鉄筋の総合的な機械的性質をさらに向上させることができる。
【0049】
更なる改善形態として、前記フェライトの体積百分率は、10~25%、サイズが4~10μm、前記パーライトの体積百分率は40~60%、前記ベイナイトの体積百分率は15~35%、サイズが8~20μm、前記析出相のサイズ≦60nm、体積分率≧8×105個/mm3であることから前記高強度鉄筋の総合的な機械的性質をさらに向上させることができる。
【0050】
なお、本発明において、前記高強度鉄筋は、母材及びフラッシュバット溶接接合部を含み、引張試験における前記高強度鉄筋の破断位置が母材部にある。すなわち、前記高強度鉄筋は、低炭素当量設計を用い、フラッシュバット溶接技術で溶接接合され、冷間曲げ、溶接等の加工応用性能向上を確保し、引張試験における破断位置が前記母材部にある。
【0051】
また、本発明は、前記高強度鉄筋の製造方法も提供する。前記製造方法は、製錬、鋳造、温度制御圧延及び温度制御冷却の工程を順次実施して、前記高強度鉄筋を製造する。以下に前記製造方法の各工程を具体的に説明する。
【0052】
(1)製錬工程:電気炉又は転炉にて溶鋼を製錬することで、溶鋼の品質及び化学組成の精度を確保できる。
【0053】
(2)連続鋳造工程:連続鋳造機で溶鋼から連続鋳造鋳片を作り、連続鋳造過程中の溶鋼過熱度は15~30℃である。
【0054】
実験的研究により、溶鋼過熱度が30℃より高い場合、ブレイクアウト、表面割れ、偏析及び緩み等の問題が生じ、溶鋼過熱度が15℃未満の場合、溶鋼内の不純物が増加しやすくなると共に連続鋳造鋳片の表面に冷間溶接点が増える傾向にあることが分かっている。溶鋼過熱度を15~30℃に制御することで、これらの問題を避けることができる。
【0055】
(3)温度制御圧延工程:連続鋳造鋳片を鉄筋に圧延し、熱間圧延工程を用いることが好ましく、加熱炉での連続鋳造鋳片の加熱温度は、1200~1250℃の範囲であり、在炉時間が60~120minの範囲、圧延開始温度が1000~1150℃の範囲、仕上圧延温度が850~950℃の範囲である。
【0056】
実験的研究により、加熱炉での連続鋳造鋳片の加熱温度が1250℃より高く、在炉時間が120minを超えると、元のオーステナイトの結晶粒の粗大化傾向を招き、加熱炉での連続鋳造鋳片の加熱温度が1200℃より低く、在炉時間が60min未満の場合、合金元素の均質化に不利となり、かつNb元素を含有している時、Nb元素の溶解及び析出強化にも不利となることが分かっている。
【0057】
なお、実験的研究により、圧延開始温度を1000~1150℃に制御し、仕上圧延温度を850~950℃に制御することで、結晶粒のサイズの制御に役立つことが分かっている。
【0058】
(4)温度制御冷却工程:冷却床で鉄筋を冷却し、鉄筋の冷却床温度は800~920℃の範囲である。
【0059】
実験的研究により、冷却床に送り込む鉄筋温度が920℃より高い場合、微細組織内のフェライトの割合が多すぎて、鉄筋の強度に影響を及ぼすこと、そして、冷却床に送り込む鉄筋温度が800℃より低い場合、微細組織内にベイナイトが多く現れて、鉄筋の伸び及び衝撃靭性を大幅に低下することが分かっっている。
【0060】
一般的に言えば、本発明の一実施形態は、前記製造方法を介して、本発明の前記高強度鉄筋を製造でき、前に述べたように、前記高強度鉄筋は、顕著な降伏プラトーがなく、降伏強度≧600Mpa、降伏比≦0.78、破断伸び≧25%、一様伸び≧15%、-20℃の試験条件下での衝撃靭性≧160Jであり、化学組成は質量%でC:0.15~0.32%、Si+Mn:0.5~1.9%、Mn+Cr+Mo+Ni:1.1~2.1%、V:0.02~0.8%、Nb、Ti及びAlのうちの少なくとも1種:0.01~0.3%を含有し、残部がFe及び不可避不純物であり、ここで、Mn=(2.5~3.5)Siであり、炭素当量Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15≦0.56%である。
【0061】
さらに、前記製錬工程において、転炉にて溶鋼を製錬することが好ましい。具体的な実施形態において、目標化学組成に従い、転炉出鋼前に取鍋底部に金属ニッケル板を加えて合金化し、出鋼の1/3になった時からフェロシリコン合金、シリコマンガン合金、低炭素フェロクロム、フェロモリブデンの順に脱酸及び合金化を完了し、ここでフェロシリコン合金、シリコマンガン合金の添加量は、実際に使用する合金組成及び残部のSi、Mn含有量に基づき適切に調整し、白色スラグを3分間精錬した後、フェロモリブデン、フェロチタン、アルミニウム線の少なくとも1つを供給し、バナジウム-窒素合金を供給してマイクロアロイングを実施する。
【0062】
好ましくは、前記製錬工程は、アルゴンガス吹き込み精錬プロセスをさらに含み、前記アルゴンガス吹き込み精錬プロセスにおいて、圧力0.4~0.6MPaのアルゴンガスを底吹きにして精錬後の溶鋼を穏やかに撹拌し、穏やかな撹拌時間は5分以上である。このようにして精錬中に溶鋼の脱酸及び合金化を完了させることができ、アルゴンガスを吹き込んで穏やかに撹拌することによって、溶鋼中の合金元素の均一性をさらに向上させることができる。
【0063】
さらに、前記連続鋳造工程において、前記連続鋳造機は、晶析装置と、晶析装置内に設けられた撹拌装置と、を備え、連続鋳造過程で溶鋼を電磁撹拌し、電磁撹拌パラメータが300A/4Hzで、末端部の電磁撹拌パラメータが480A/10Hzである。電磁撹拌パラメータを300A/4Hzに設定することにより、偏析の程度を低減し、核生成サイトを増やすことができ、かつ末端部の電磁撹拌を480A/10Hzに設定することにより、中心部の等軸晶域の範囲を拡大し、緩み及び引け巣を減少させることもできる。
【0064】
好ましくは、前記連続鋳造工程において、連続鋳造鋳片の矯正温度が850℃以上である。実験的研究により、矯正温度が850℃より低い場合、連続鋳造鋳片を矯正した時、連続鋳造鋳片の変形抵抗が大きくなりすぎて、連続鋳造鋳片の表面品質に悪影響を与え、連続鋳造鋳片の矯正温度が850℃以下であれば、連続鋳造鋳片の表面品質を保証できることが分かっっている。
【0065】
さらに、前記温度制御冷却工程において、冷却床に送り込む鉄筋温度を820~900℃に最適化し、冷却床に送り込んだ後の冷却速度が2~5℃/sである。冷却床に送り込む温度及び冷却速度を最適化することにより、微細組織をより最適化させ、鉄筋の強度、伸び及び衝撃靭性等の性能を確保できる。
【0066】
前に述べたように、本発明は、多数の実験的研究に基づいて得られたもので、以下に具体的な試験例を通じて更に説明していく。うち、試験例は、シリアル番号1~22の22つの実施例及びシリアル番号23~27の5つの比較例が含まれ、具体的な製造方法は次の通りである。
【0067】
(1)製錬工程
表1に示す製錬炉にて溶鋼を製錬する。
【0068】
目標化学組成に従い、溶鋼に脱酸及び合金化を施し、具体的には、転炉出鋼前に取鍋底部に金属ニッケル板を加えて合金化し、出鋼の1/3になった時からフェロシリコン合金、シリコマンガン合金、低炭素フェロクロム、フェロモリブデンの順に脱酸及び合金化を完了し、ここでフェロシリコン合金、シリコマンガン合金の添加量は、実際に使用する合金組成及び残部のSi、Mn含有量に基づき適切に調整し、白色スラグを3分間精錬した後、フェロモリブデン、フェロチタン、アルミニウム線の少なくとも1つを表1に従って供給し、バナジウム-窒素合金を供給してマイクロアロイングを実施し、当該プロセスにフェロボロン合金の供給の有無を表1に従って制御した。
【0069】
その後、表1に従い、アルゴンガスを底吹きにして精錬された溶鋼を穏やかに撹拌した。
【表1】
【0070】
(2)連続鋳造工程:連続鋳造機で溶鋼から表2に示す規格の連続鋳造鋳片を作り、連続鋳造過程中の溶鋼過熱度を表2に従って制御した。連続鋳造過程で溶鋼を電磁撹拌し、電磁撹拌パラメータは、300A/4Hzで、末端部の電磁撹拌パラメータが480A/10Hzであり、連続鋳造鋳片の矯正温度を表2に示すように制御した。
【表2】
【0071】
(3)温度制御圧延工程:ねじ節鉄筋圧延機で連続鋳造鋳片を表3に示す規格の鉄筋に圧延し、加熱炉での連続鋳造鋳片の加熱温度、在炉時間、圧延開始温度、仕上圧延温度を表3に従って制御した。
【表3】
【0072】
(4)温度制御冷却工程:鉄筋を冷却するため、表4に従って冷却床に送り込む鉄筋温度及び冷却速度を制御した。
【表4】
【0073】
上記製造方法により、製造された鉄筋の化学組成、微細組織、引張性能について各々測定及び試験を行った。その結果を表5、表6、表7に示す。製造された鉄筋をフラッシュバット溶接技術で溶接し、溶接された鉄筋サンプルに対し引張性能試験を実施した。その結果を表8に示す。
【表5】

【表6】
【0074】
表6において、Fはフェライト、Pはパーライト、Bはベイナイトを表す。
【表7】

【表8】
【0075】
表7から分かるように、本発明の一実施形態に記載の高強度鉄筋によれば、実施例1~22には、顕著な降伏プラトーがなく、鉄筋の降伏強度≧600MPa、降伏比≦0.78、一様伸び≧15%、-20℃試験条件下での衝撃靭性≧160Jであり、比較例23~27の従来の鉄筋性能よりも高い。表7から分かるように、本発明の一実施形態に記載の高強度鉄筋によれば、実施例1~22の溶接性能に優れ、溶接後の降伏強度≧600MPa、降伏比≦0.78、一様伸び≧15%、-20℃試験条件下での衝撃靭性≧160Jであった。