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  • 特許-自動車用のレーダセンサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】自動車用のレーダセンサ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/08 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
H01Q21/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022517204
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2020071221
(87)【国際公開番号】W WO2021052662
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】102019214164.1
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】クラール,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ショール,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】カーン,オサマ
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-111332(JP,A)
【文献】国際公開第2017/029898(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続線(14)に沿ってライン状にかつ等間隔で配置された複数のアンテナ要素(10,12)を有するアンテナ装置を備えた自動車用のレーダセンサであって、
隣接する2つのアンテナ要素(10,12)の間隔のそれぞれが、送信されるレーダ信号の平均波長λの半分に等しく、前記アンテナ装置が、隣接するアンテナ要素からなるトリプレットを少なくとも1つ有し、一方では前記トリプレットのうちの外側にある2つの前記アンテナ要素(10)と、他方では2つの前記アンテナ要素(10)の間にある前記アンテナ要素(12)とが、前記接続線(14)から互いに反対方向に延在しており、
前記アンテナ装置が1つまたは複数の対をなすアンテナ要素(12,18;10,20)を有しており、前記1つまたは複数の対の各々が、前記トリプレットのアンテナ要素(10,12)と前記トリプレットのアンテナ要素(10,20)以外の他のアンテナ要素(18,20)とで構成され、前記対の各々をなすアンテナ要素が、前記接続線(14)から互いに反対方向に延在し、かつ波長λの整数倍となる間隔をなすことで、前記他のアンテナ要素(18,20)における定常波の位相が、前記トリプレットの前記アンテナ要素(10,12)における定常波の位相に対して逆となる
ことを特徴とするレーダセンサ。
【請求項2】
前記接続線(14)の中央部にある前記アンテナ要素(10,12)が、前記接続線から互いに反対方向に交互に延在し、前記他のアンテナ要素(18,20)のうちの少なくとも1つが前記中央部の外側にある、請求項1に記載のレーダセンサ。
【請求項3】
少なくとも2つの前記他のアンテナ要素(18,20)が前記接続線(14)から互いに反対方向に延在している、請求項1または2に記載のレーダセンサ。
【請求項4】
記2つの前記他のアンテナ要素(18,20)がλ/2の距離だけ離間している、請求項3に記載のレーダセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続線に沿ってライン状にかつ等間隔で配置された複数のアンテナ要素を有するアンテナ装置を備えた自動車用のレーダセンサに関し、隣接する2つのアンテナ要素の間隔のそれぞれが、送信されるレーダ信号の平均波長λの半分に等しく、その装置が、隣接するアンテナ要素からなるトリプレット(3つ組)を少なくとも1つ有し、一方ではトリプレットのうちの外側にある2つのアンテナ要素と、他方では2つのアンテナ要素の間にあるアンテナ要素とが、接続線から互いに反対方向に延在しているというものである。
【背景技術】
【0002】
このタイプの従来のレーダセンサでは、アンテナ要素は、接続線の両側に交互に配置される。アンテナ要素からアンテナ要素までの間隔はλ/2に相当するので、供給される信号は、2つの隣接するアンテナ要素の位置で互いに逆位相となる。しかし、アンテナ要素は接続線の両側に配置されているので、すべてのアンテナ要素に関して正の振幅成分が生じる。
【0003】
アンテナ要素および接続線は、マイクロストリップライン技術で形成されてもよい。しかし、他のレーダセンサでは、アンテナ装置は、導波管アンテナまたはSIW(Substrate Integrated Waveguide:基板集積導波路)アンテナによって形成される場合もある。アンテナ要素がマイクロストリップライン技術で形成されているとき、個々のアンテナパッチの幅および長さを変えることにより、アンテナ装置の指向特性のサイドローブが大幅に抑制されるようにアンテナ要素の振幅成分を調整することができる。これは、送信アンテナでの放射出力についての受信アンテナの方向依存性の感度にも当てはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サイドローブの抑制が良好であっても、レーダセンサは、比較的不明瞭な境界をなす視野を有しているが、これは、指向角度に応じた出射出力および感度が視野の縁部でゆるやかに低下するからである。特定の用途では、これにより、視野の縁部における無関係な物体での反射による干渉信号などの望ましくない影響が生じる可能性がある。
【0005】
自動車に関する自律走行システムの場合、一般にセンサ構成に対する要求が高まっており、1台の車両に搭載されるレーダセンサの数が増えることがよくある。ここで、バンパの部品やバンパに取り付けられたエンブレムなどの、センサ周辺の車両構造によって信号が妨害されないように、車両におけるレーダセンサに適したそれらの取付け位置を定めることはますます難しくなっている。レーダセンサの視野の不明瞭な境界により、そのような干渉源に対する感度が増えてしまうのである。
【0006】
上記により、本発明の課題は、より明瞭な境界をなす視野を有するレーダセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、アンテナ装置が、少なくとも1つの対をなすアンテナ要素を有し、当該少なくとも1つの対をなすアンテナ要素が、接続線から反対方向に延在し、かつ波長λの整数倍となる間隔をなすことで、当該少なくとも1つの対をなすアンテナ要素のうちの一方が、トリプレットのアンテナ要素に対して負の振幅成分をもつことによって、上記課題は解決される。
【0008】
これら2つのアンテナ要素に供給される信号は同じ位相となるので、アンテナ要素を互いに反対側へ配置することにより、負の振幅成分が生じる。そのような負の振幅成分を実現できることにより、ビームフォーミングのためのさらなる自由度が提供される。
【0009】
明瞭な境界をなす視野が望まれると、指向特性すなわちアンテナ利得の角度依存性を表す曲線はほぼ矩形になる。アンテナ利得は、0°方向付近の限定された角度範囲内ではほぼ一定であり、視野領域の縁部で急激に低下するのである。原則として、アンテナアレイの指向特性と振幅成分との関係は、フーリエ変換によって与えられる。矩形関数のフーリエ変換は振動挙動を呈するので、振幅成分には正の係数に加えて負の係数も生じる。そのような負の振幅成分は、本発明によるアンテナ装置によって表すことができるので、近似的に矩形の指向特性を実現することができる。
【0010】
これは、送信アンテナについても、アンテナ要素が送信と受信の両方を行うモノスタティックアンテナ概念についても、さらには単なる受信アンテナについても、適用可能である。単なる受信アンテナの場合には接続線が受信線となり、他の場合には供給線となる。
【0011】
本発明の有利な形態は、従属請求項に記載されている。
【0012】
以下、図面に基づいて例示的実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるレーダセンサのアンテナ装置を示す図である。
図2】2つの異なるアンテナ装置に関する指向特性を示す図である。
図3】従来のレーダセンサおよび本発明によるレーダセンサの指向特性の理想的なグラフを示す図である。
図4】自動車でのレーダセンサの設置状況に関する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、本発明に係るレーダセンサにおけるアンテナ装置に関する例が示されている。この例では、アンテナ装置は、マイクロストリップライン技術で基板(図示せず)上に形成され、複数のアンテナ要素10,12を含み、アンテナ要素10,12は、少なくともアンテナ装置の中央領域で、ライン状に延在する接続線14の両側に交互に配置されている。接続線14を介して、アンテナ要素10,12にマイクロ波エネルギーが連続的に供給される。
【0015】
図示される例では、図1における接続線14の左端が信号源(図示せず)に接続されている。この信号源から出力された信号は、図1における接続線の右端で反射され、これにより接続線に定常波16が生じ、このことは図面に破線で示されている。この波の波長λは、送信すべきレーダ信号の周波数によって決定される。実際には、レーダ信号の周波数は、主に特定の周波数帯域内で変調される。アンテナ装置は、この周波数帯域の中心に相当する周波数に合わせて設計される。接続線14の一方の側にあるアンテナ要素10と、接続線の反対側にある次のアンテナ要素12との間隔は、それぞれ波長λの半分に相当する。
【0016】
アンテナ要素10,12は、それぞれ定常波16の腹の位置にある。λ/2の間隔により、一方の側でのアンテナ要素10の位置での信号は、その反対側でのアンテナ要素12の位置での信号に対して逆位相となる。しかし、アンテナ要素10,12は、接続線14から互いに反対方向に延在しているので、振動双極子モーメントとなり、よって放射されるレーダ波は同じ位相となる。したがって、アンテナ要素10,12の振幅成分を表す係数は同じ符号を有する。例えば、アンテナ要素10,12についてすべての振幅成分が正である。図面では、これは、アンテナ要素10,12のパターンが定常波16の波形を大まかに反映していることからわかる。
【0017】
2つのアンテナ要素10とこれらの間のアンテナ要素12とがトリプレット(3つ組)を形成しており、ここで、外側のアンテナ要素10は接続線から一方向に延在し、中央のアンテナ要素12は反対方向に延在する。同じことが、2つのアンテナ要素12とこれらの間のアンテナ要素10とからなるトリプレットにも該当する。図1に示されるアンテナ装置は、その中央領域にそのようなトリプレットを複数備えている。
【0018】
しかし、本発明によれば、そのパターンは、アンテナ装置の端部の領域で崩れる。端部の領域にはアンテナ要素18があり、アンテナ要素18は、接続線14に対してアンテナ要素10と同じ側にあるが、その反対側にあるアンテナ要素12からのそれぞれの距離が波長λの整数倍となる。同様にアンテナ要素20が存在し、アンテナ要素20は、アンテナ要素12と同じ側にあるが、その反対側にあるアンテナ要素10からの距離が同様にλの整数倍である。これらのアンテナ要素18,20に関する振幅成分は負であり、このことは、図面においては、それらのアンテナ要素18,20が接続線14から延在している方向が、定常波16の波形の向きと反対であることからわかる。この連続して正ではない振幅成分により、かなり矩形の指向特性が実現される。
【0019】
図示されている例では、負の振幅成分をもつアンテナ要素18,20は、アンテナ装置の両端にあり、λ/2に相当する相互間隔をなす。
【0020】
さらに図1で見られるように、アンテナ要素10,12,18,20は、異なる長さおよび幅を有する。長さおよび幅がこのように変化することにより指向特性のサイドローブが大幅に抑制されるように、公知の手法で振幅成分が変調される。
【0021】
上述したアンテナ装置は、送信アンテナだけでなく、アンテナ要素10,12,18,20が送信と受信の両方を行うモノスタティックなアンテナ概念、および単なる受信アンテナにも適用可能である。
【0022】
図2において、異なるアンテナ装置の指向特性に関する例が示されている。図2に実線で描かれている曲線22は、図1に示されるアンテナ装置に関する指向特性を示す。ここで、指向特性は、レーダ放射波が出射または受信される角度θに応じたアンテナ利得(dB単位)で与えられており、0°の方向は、図1の紙面に垂直な、接続線14に垂直な方向である。比較のために、破線で示されている曲線24は、両側に交互に位置するアンテナ要素10,12のパターンがアンテナ装置の全長にわたって続く従来のアンテナ装置の指向特性を示すものである。従来のアンテナ装置に関する曲線24は、0°で明らかな最大値を有し、比較的小さな角度でさえ両側で低下していることが明確にわかる。一方、本発明によるアンテナ装置に関する曲線22では、最大値はより平坦である。0°では、アンテナ利得は、曲線24の場合よりも少し小さいが、最大約±10°の角度範囲内でほぼ一定のままである。一方、さらに大きな角度では、曲線22は比較的急に低下し、ここで曲線24はかなりゆるやかに低下する。±30°に近い角度のサイドローブは、両方の曲線でほぼ等しく良好に抑制されている。
【0023】
本発明によるアンテナ装置に関する曲線22は、従来のアンテナ装置に関する曲線24よりも所望の矩形にかなり近い。
【0024】
図3には、本発明によるアンテナ装置を用いたレーダセンサ(曲線26)と、従来のレーダセンサ(曲線28)とに関するレンジRの角度依存性が理想的に示されている。本発明によるレーダセンサは、コアゾーンIIにおいてほぼ一定のレンジを有するが、エッジゾーンIおよびIIIへの遷移時にレンジは急峻に低減する。実際には、コアゾーンIIの幅は、車両操作に関する角度範囲をカバーするように選択される。エッジゾーンIおよびIIIからのレーダエコーはほとんど受信されないので、これらのエッジゾーンからの干渉信号はほぼ除外され、それによりレーダ信号の分析および解釈が容易になる。より多くの車両がレーダセンサを搭載することが進展する中で、さらなる利点として、対向車のレーダセンサに対する干渉信号の発生が少なくなるということがある。
【0025】
一方、従来のレーダセンサ(曲線28)では、エッジゾーンIおよびIIIでもレンジが比較的広く、それに対応して干渉信号の量もより多くなる。
【0026】
本発明によるアンテナ装置では、送信動作時にエッジゾーンIおよびIIIは照射されず、そのぶん利用可能になったエネルギーは、コアゾーンIIでより高い一定の感度を実現するために使用される。0°方向では、本発明によるこのレーダセンサのレンジは、従来のセンサのレンジよりもいくぶん小さいが、このような非常に狭い角度範囲に限定されるレンジの低減は、容易に甘受することができる。
【0027】
本発明によるアンテナ装置のさらなる利点およびこれにより実現される指向特性が図4に示されている。ここでは、レーダセンサ30が、自動車の他の2つの構成要素32の間に位置するように当該自動車に組み込まれた組み込み状況が示されている。これらの他の構成要素32は、入射するレーダエコーの一部を反射し、比較的大きな角度でレーダセンサ30へ偏向させる反射面を形成している。このようにして反射されたレーダ信号34は、望ましくない干渉信号を生成する。しかし、本発明によるレーダセンサでは、これらの反射信号34はエッジゾーンIおよびIIIにあり、これらのエッジゾーンでは感度がゼロであるか、または非常に小さいので、干渉信号は自動的に除外される。このようにして、特に多数のレーダセンサを自動車に組み込む場合、レーダセンサの位置決めに関するより大きな設計上の自由度が実現される。
図1
図2
図3
図4