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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】留め具
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/10 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
F16B19/10 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022518100
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2021016863
(87)【国際公開番号】W WO2021221079
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2020079860
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 竜祐
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506982(JP,A)
【文献】特開2003-130020(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0048911(US,A1)
【文献】特開2016-217377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料で形成され、部品を取付部材の取付孔に取り付けるための留め具であって、
互いに対向する第1脚片および第2脚片と、
前記第1脚片および前記第2脚片の基端同士を連結する連結部と、を備え、
前記第1脚片は、
前記取付孔の縁に係止する係止部と、
前記部品に該留め具を抜け止めする爪部と、を有し、
前記爪部は、前記第1脚片の先端側から延出し、前記部品のボス部に形成された孔部に差し込まれ、
前記第2脚片は、前記部品のボス部に形成された孔部に差し込まれ、前記部品に該留め具を抜け止めする爪部を有さず、
前記第2脚片は、先端側から基端側に向かって延在するガイド面を含むガイド部を有することを特徴とする留め具。
【請求項2】
前記爪部は、
前記第1脚片の先端側から前記連結部に向かって延出する第1延出部と、
前記第1延出部から屈曲して前記第2脚片に向かって張り出し、前記孔部に差し込まれる第2延出部と、を有し、
前記第2延出部は、前記第1脚片および前記第2脚片の対向方向に対して傾斜し、基端側に向かって延出することを特徴とする請求項1に記載の留め具。
【請求項4】
前記ボス部を挟持可能な第1保持部および第2保持部をさらに備え、
前記第2脚片に形成された前記第2保持部の先端は、側面視にて前記ガイド面を延長した仮想線より前記第2脚片側の位置に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の留め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を取付部材に取り付けるための留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の内装トリムに操作パネルを取り付ける留め具が開示される。この留め具は、対向する一対の脚片と、一対の脚片を連結する連結部と、部品に係止する係止部とを備える。この係止部は、側面視にてL字状に形成され、係止部の先端部は一対の脚片の対向方向に平行に設けられる。取付部が一対の脚片の間に挿入されて、係止部の先端部が取付部に当たって撓み、取付部の取付孔に挿入されて係止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-217377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される技術では、脚片と係止部がともに連結部に連結されているため、個別に撓む。係止部は脚片より短く撓みづらいため、取付部に取り付ける際の変形がしづらく、取付作業が容易でないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、ボス部に容易に取り付けられる留め具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、金属材料で形成され、部品を取付部材の取付孔に取り付けるための留め具であって、互いに対向する第1脚片および第2脚片と、第1脚片および第2脚片の基端同士を連結する連結部と、を備える。第1脚片は、取付孔の縁に係止する係止部と、部品に該留め具を抜け止めする爪部と、を有する。爪部は、第1脚片の先端側から延出し、部品のボス部に形成された孔部に差し込まれる。第2脚片は、部品のボス部に形成された孔部に差し込まれ、部品に該留め具を抜け止めする爪部を有しない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ボス部に容易に取り付けられる留め具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】留め具の斜視図である。
図2図2(a)は、留め具の側面図であり、図2(b)は、留め具の正面図である。
図3】部品のボス部の斜視図である。
図4】部品および取付部材に取り付けた状態の留め具の側面図である。
図5】留め具のボス部への取付について説明するための図である。
図6】留め具の取付部材への取り付けについて説明するための図である。
図7】留め具の取付部材からの引き抜きについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、留め具10の斜視図である。また、図2(a)は、留め具10の側面図であり、図2(b)は、留め具10の正面図である。留め具10は、部品を取付部材に取り付けるために用いられる。部品は、窓を開閉するスイッチが設けられた操作パネルなどの車載部品やカバーなど意匠性のある飾り部品であってよい。また、取付部材は、トリムパネルや車体パネルなどであってよい。
【0010】
留め具10は金属材料で形成され、金属板材に対して切断加工およびプレス加工を施すことで形成される。金属材料で形成することで、樹脂材料で形成する場合より高い抜去力を持たせることができる。留め具10は、第1脚片20a、第2脚片20b、連結部22、第1保持部30aおよび第2保持部30bを備える。
【0011】
第1脚片20aおよび第2脚片20bは、互いに対向する。第1脚片20aおよび第2脚片20b(これらを区別しない場合、「脚片20」という)が向かい合う方向を対向方向という。第1脚片20aおよび第2脚片20bは、対向方向に撓み可能であり、互いに接近、離間するように撓むことができる。
【0012】
第1脚片20aの先端21aは自由端であり、第1脚片20aの基端21bは連結部22に連なる。連結部22は、第1脚片20aおよび第2脚片20bの基端21bを連結する。第1脚片20aは、爪部24および第1係止部28aを有し、第2脚片20bは、ガイド部26および第2係止部28bを有する。
【0013】
第1係止部28aは、第1脚片20aの中途にて対向方向外向きに屈曲するように形成され、第2係止部28bは、第2脚片20bの中途にて対向方向外向きに屈曲するように形成される。第1係止部28aおよび第2係止部28bは、対向方向外向きに延在する傾斜面を有し、その傾斜面が取付部材に形成された取付孔の裏縁に係止する。
【0014】
第1保持部30aおよび第2保持部30bは、脚片20の基端21b側から先端21a側に向かって延出し、互いに接近するように延出し、中途で屈曲して互いに離間するように延出する。第1保持部30aおよび第2保持部30bは、部品のボス部を挟持する。第1保持部30aは、第2保持部30bより延出方向の長さが短い。なお、第1保持部30aおよび第2保持部30bは、脚片20からではなく、連結部22から延出してもよい。
【0015】
爪部24は、第1脚片20aの先端側から延出し、第1脚片20aから延出する片持ち片として形成される。第1脚片20aと爪部24とは互いに連動して撓む。爪部24は、第1延出部24aおよび第2延出部24bを有する。第1延出部24aは、第1脚片20aの先端21a側から連結部22に向かって延出する。第2延出部24bは、第1延出部24aから屈曲して第2脚片20bに向かって張り出す。第1延出部24aを設けることで第2延出部24bのみで構成する場合と比べて、爪部24の全長を長くして撓みやすく構成できる。
【0016】
第2延出部24bは、脚片20の対向方向に対して傾斜し、連結部22に向かって、すなわち基端側に向かって延出する。すなわち、第2延出部24bは、対向方向に平行に延出するのではなく、少し連結部22側に垂れるように延出する。
【0017】
第2脚片20bは、部品のボス部の挿入をガイドするガイド部26を有する。ガイド部26は、第2脚片20bの先端21a側から基端21b側に向かって延在するガイド面26aを有する。ガイド面26aは、平面であって、第2脚片20bの先端21aから一様に延在してよい。
【0018】
爪部24の第2延出部24bは、ガイド部26に向かって張り出す。第2延出部24bおよびガイド部26は、先端21aから基端21bの方向において重なる領域を有し、向かい合うように設けられる。爪部24およびガイド部26は、第1脚片20aおよび第2脚片20bをくり抜いて形成される。
【0019】
第1脚片20aおよび第2脚片20bの隙間は、部品のボス部が挿入される経路となり、第2延出部24bの先端部およびガイド部26の最短間隔Cは、ボス部が通ることが可能な長さに設定される。
【0020】
図3は、部品12のボス部34の斜視図である。部品12は、パネル32およびボス部34を有する。パネル32は、表面に露出する操作パネルであってよい。パネル32の裏面から垂下するように複数のボス部34が設けられる。
【0021】
ボス部34は、ボス本体35、孔部36、テーパ部38および側壁部40を有する。ボス本体35は、平板状に形成される。孔部36は、ボス本体35の略中央位置に貫通して形成される。テーパ部38は、ボス本体35の先端を細くするように形成される。側壁部40は、ボス本体35の両側に一対形成される。側壁部40は、留め具10が幅方向に移動することを規制する。
【0022】
図4は、部品12および取付部材14に取り付けた状態の留め具10の側面図である。留め具10は、部品12のボス部34に取り付けられ、次に、取付部材14の取付孔14aに取り付けられる。留め具10は、ボス部34から取り外すことはないが、部品12のパネル32が故障した場合には、取付孔14aから引き抜けるようになっている。部品12が所定以上の力で取付部材14から離れる方向に持ち上げられると、留め具10は、一対の脚片20を接近させる操作を必要とせずに取付孔14aから引き抜かれる。
【0023】
第1保持部30aおよび第2保持部30bは、ボス部34のボス本体35を挟持する。これにより、部品12に留め具10を取り付けた状態で搬送しても、留め具10の取付姿勢を安定させることができる。
【0024】
爪部24の第2延出部24bは、孔部36に差し込まれて、部品12に留め具10を抜け止めする。爪部24の先端は、孔部36の中心位置より第2脚片20b側に位置し、爪部24が孔部36に十分に入り込む。これにより、留め具10がボス部34から外れないように取り付けられる。
【0025】
第1係止部28aおよび第2係止部28bは、取付部材14の取付孔14aの裏縁に係止する。これにより、留め具10が取付部材14に固定される。なお、第1脚片20aおよび第2脚片20bが接近するように撓むと、第1係止部28aおよび第2係止部28bの係止が解除される。そのため、部品12を取り替える際には、留め具10を取付孔14aから引く抜くことができる。
【0026】
図5は、留め具10のボス部34への取付について説明するための図である。図5には留め具10がボス部34へ取り付けられる途中の状態が示される。作業者は、第1脚片20aおよび第2脚片20bの間にボス部34のテーパ部38を位置合わせし、連結部22を押す。これにより、ボス部34が第1脚片20aおよび第2脚片20bの間に挿入される。ボス部34は、第1脚片20aおよび第2脚片20bの間に挿入されると、爪部24に当たってガイド部26側に寄せられ、ガイド面26aに案内させることになる。ガイド部26によって、ボス本体35の側面はガイド面26aに面接触するようになる。
【0027】
第1脚片20aに爪部24が形成される一方で、第2脚片20bには爪部が形成されない。これにより、ボス部34を第1脚片20aおよび第2脚片20bの間に挿入する際に、両方に爪部を設けた場合と比べて、挿入力が高くなることを抑えることができる。また、ガイド部26が第2脚片20bに形成されることで、ボス部34を連結部22に向かって案内しやすい。
【0028】
第2保持部30bの先端42は、側面視にてガイド面26aを延長した仮想線Fより第1脚片20aから離れた位置、つまり第2脚片20b側の位置に設けられる。すなわち、第2保持部30bの先端42が、仮想線Fより脚片20から遠い位置(図中右側)に位置する。これにより、ボス部34の先端が、挿入時に第2保持部30bの先端42に引っかからないように構成でき、ボス部34をスムーズに取り付けできる。なお、第2保持部30bの先端42は、ガイド面26aを延長した仮想面より第2脚片20b側の位置に設けられる。
【0029】
図2(a)に示す第2延出部24bおよびガイド部26の最短間隔Cは、ボス部34の厚さTの80パーセント以上で、100パーセント未満の距離に設定される。ボス部34の厚さTは、先端側のテーパ部38を除いた部分の板の厚さをいい、また側壁部40も含まない孔部36周りの板厚をいう。なお、第2延出部24bおよびガイド部26の最短間隔Cは、第1脚片20aおよび第2脚片20bに外力が加わっていない自由状態での間隔をいう。
【0030】
最短間隔Cを厚さTの100パーセント未満の距離にすることで、少なくとも第1脚片20aおよび第2脚片20bを撓ませなければボス本体35を通過しないため、爪部24を外れにくくできる。また、最短間隔Cを厚さTの80パーセント以上の距離にすることで、ボス部34への挿入力を抑えることができる。なお、ボス部34への挿入力を抑えるため、より好ましくは最短間隔Cを厚さTの90パーセント以上の距離に設定してよい。
【0031】
図6は、留め具10の取付部材14への取り付けについて説明するための図である。留め具10は、部品12のボス部34に取り付けられた状態で、取付部材14の取付孔14aに挿入される。
【0032】
このとき、ボス部34の先端が連結部22に当たり、脚片20の先端21aは、パネル32の裏面に当たらないように留め具10の長さが設定されている。これにより、ボス部34と留め具10が一体になって取付孔14aに押し込まれるため、挿入しやすい。
【0033】
一対の脚片20は、取付孔14aの内面に当たって互いに接近するように撓む。このとき、第2延出部24bが孔部36に押し込まれるが、第2延出部24bが孔部36に当接しないように設けられる。つまり、ボス部34の先端が連結部22に当たった状態で、第2延出部24bの先端が孔部36に接触しないように、第2延出部24bの形状が設定される。また、脚片20の内面がボス本体35の側面に当接しないように設けられる。これにより、一対の脚片20が接近する際に、第2延出部24bが孔部36の内面に摺動して、脚片20の接近に抗する摩擦を発生しないようにできるとともに、脚片20の内面がボス本体35の側面に当接して、一対の脚片20の接近を制限しないようにでき、取付孔14aへの挿入力を抑えることができる。
【0034】
図7は、留め具10の取付部材14からの引き抜きについて説明するための図である。図4に示すボス部34を取付孔14aから上方に引き抜くと、図7(a)に示す第2延出部24bの先端が孔部36の内面に当接し、第2延出部24bが引き抜き荷重を受けて、留め具10がボス部34とともに引き抜かれる。ボス部34が持ち上げられるため、ボス部34の先端は連結部22から離れる。
【0035】
第1係止部28aおよび第2係止部28bは、取付孔14aの裏縁に当たって対向方向内向きの力を受け、第1脚片20aおよび第2脚片20bは、互いに接近するように撓む。これにより、爪部24が孔部36の中にさらに入り込むように移動する。このように、爪部24が孔部36に差し込まれて抜け止めをしていても、爪部24は、第1脚片20aとともに移動可能である。その際、第2延出部24bが孔部36の内面に摺動するので、脚片20の接近に抗する摩擦を発生させ、高い抜去力を得ることができる。
【0036】
ボス部34がさらに上方に持ち上げられると、孔部36の内面が第2延出部24bの先端を上方に押し上げ、第2延出部24bの先端が持ち上がるようになり、第2延出部24bが孔部36の内面に面接触するように爪部24が変形する。これは、第2延出部24bが、脚片20の対向方向に対して傾斜し、脚片20の基端側に向かって延出するように垂下しているため、ボス部34の引き抜きに連動して変形することが可能だからである。これにより、第2延出部24bの先端が孔部36の内面に食い込んで爪部24が移動できなくなって、第1脚片20aが第2脚片20bに接近する撓みが制限されることを回避できる。そのため、第2延出部24bの先端が孔部36の内面に食い込んだ状態で、ボス部34を強引に持ち上げてボス部34や爪部24が損傷することを抑えられる。
【0037】
第1脚片20aおよび第2脚片20bが爪部24の変形によりスムーズに接近して、第1係止部28aおよび第2係止部28bが取付孔14aを通りすぎると、ボス部34および留め具10が取付孔14aから引き抜くことができる。
【0038】
本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、部品を取付部材に取り付けるための留め具に関する。
【符号の説明】
【0040】
10 留め具、 12 部品、 14 取付部材、 14a 取付孔、 20a 第1脚片、 20b 第2脚片、 21a 先端、 21b 基端、 22 連結部、 24 爪部、 24a 第1延出部、 24b 第2延出部、 26 ガイド部、 26a ガイド面、 28a 第1係止部、 28b 第2係止部、 30a 第1保持部、 30b 第2保持部、 32 パネル、 34 ボス部、 35 ボス本体、 36 孔部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7