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特許7348393フィルムの延伸、密度、厚み、および空隙率のうちの少なくとも1つについてプロファイルを特定する、キャビティを含むフィルムの製造方法
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  • 特許-フィルムの延伸、密度、厚み、および空隙率のうちの少なくとも1つについてプロファイルを特定する、キャビティを含むフィルムの製造方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】フィルムの延伸、密度、厚み、および空隙率のうちの少なくとも1つについてプロファイルを特定する、キャビティを含むフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/02 20060101AFI20230912BHJP
   B29C 48/31 20190101ALI20230912BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20230912BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20230912BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20230912BHJP
   B29C 67/20 20060101ALI20230912BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
B29C55/02
B29C48/31
B29C48/08
B29C48/92
B29C44/00 E
B29C67/20 B
B29L7:00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022520499
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2020075143
(87)【国際公開番号】W WO2021063641
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】1910947
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】522130863
【氏名又は名称】アレフ・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ
【氏名又は名称原語表記】ALEPH SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100224627
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 稔
(72)【発明者】
【氏名】ガウダーン,ヤン
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-176167(JP,A)
【文献】特開平09-164582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C48/00
B29C55/00
B29C61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを含み、キャビテーション剤が分散されたポリマーからなるフィルム(F1,F2)を製造する方法であって、
押し出されたフィルムの特性を調整するための調整アクチュエータ(Act)が設けられた生産ライン上に前記ポリマーを押し出すステップと、
前記フィルムを延伸(Str1;Str2)するステップ(S30;S130)と、
前記フィルムのマッピング関数を確立することからなるステップ(S50a;S150a)と
を含み、
第1単位面積質量センサ(Capm.surf)が、延伸されていない前記フィルムの横方向単位面積質量プロファイルを計測し(S20;S120)、
第2単位面積質量センサ(Capm.surf)が、延伸(Str1;Str2)により延伸された前記フィルムの横方向単位面積質量プロファイルを計測し(S40;S140)、
コンピュータユニット(CALC)が、延伸された前記フィルムの前記マッピング関数を前記横方向単位面積質量プロファイルに基づいて計算し(S50a;S150a)、
前記コンピュータユニット(CALC)は、延伸された前記フィルムの延伸プロファイルを前記マッピング関数および前記横方向単位面積質量プロファイルに基づいて計算し(S50b;S150b)、
前記コンピュータユニット(CALC)は、前記延伸プロファイルと、前記フィルム中の前記キャビティの分布を考慮することを可能にする延伸された前記フィルム中のキャビテーション剤の質量濃度の横方向プロファイルとに基づいて、前記フィルムの特性である特性横方向プロファイルを計算し(S50f,S60B;S150f,S150B)、
前記調整アクチュエータは、前記特性横方向プロファイルに応じて制御される(FBK1,FBK2,FBK3,FBK4)、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記キャビテーション剤の前記質量濃度の前記横方向プロファイルを、延伸された前記フィルムの前記横方向単位面積質量プロファイルと、キャビテーション剤単位面積質量センサ(Caps.ag;Caps.oil)により測定されたキャビテーション剤の単位面積質量プロファイルとから推定する(S50c)、ことを特徴とする、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項3】
延伸されていない前記フィルム中のキャビテーション剤の単位面積質量プロファイルをキャビテーション剤単位面積質量センサ(Caps.ag;Caps.oil)により計測し、
延伸されていない前記フィルム中のキャビテーション剤の質量濃度の横方向プロファイルを、キャビテーション剤の前記単位面積質量プロファイルと、延伸されていない前記フィルムの単位面積質量プロファイルとから推定し、
延伸された前記フィルム中のキャビテーション剤の質量濃度の前記横方向プロファイルを、前記マッピング関数の適用により、延伸されていない前記フィルム中のキャビテーション剤の質量濃度の前記横方向プロファイルに置き換える、ことを特徴とする、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記キャビテーション剤の質量濃度の前記横方向プロファイルを前記フィルム中の前記キャビテーション剤の平均濃度に一致させる、ことを特徴とする、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記フィルムでは、2度の横方向単位質量プロファイルの測定の間に、キャビテーション剤が減少し、
第1キャビテーション剤単位面積質量センサ(Caps.oil)は、延伸されていない前記フィルム中の前記キャビテーション剤の横方向単位面積質量プロファイルを測定し(S120)、
第2キャビテーション剤単位面積質量センサ(Caps.oil)は、延伸された前記フィルム中の前記キャビテーション剤の横方向単位面積質量プロファイルを測定し(S140)、
前記コンピュータユニット(CALC)は、前記フィルムの前記横方向単位面積質量プロファイルからキャビテーション剤の前記横方向単位面積質量プロファイルを減算することで、前記ポリマー単独の前記フィルムの横方向単位面積質量プロファイルを計算し(S145)、
前記コンピュータユニット(CALC)は、前記ポリマー単独の前記フィルムの前記横方向単位面積質量プロファイルに基づいて前記マッピング関数を計算する(S150a)、ことを特徴とする、請求項1,3,4のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記フィルムを延伸(Str1)するステップは、第1領域(Z1)で実行され、その後、前記第1領域(Z1)の下流の第2領域(Z2)で前記フィルムからキャビテーション剤を抽出(Extr)するステップ(S135)が行われ、
前記第2キャビテーション剤単位面積質量センサ(Caps.oil)は、延伸された前記フィルム中キャビテーション剤の前記横方向単位面積質量プロファイルを、前記第1領域(Z1)の下流および前記第2領域(Z2)の上流で測定する、ことを特徴とする、請求項5に記載のフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記フィルムの特性である前記特性横方向プロファイルは、前記フィルムの横方向密度プロファイルである、ことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記コンピュータユニット(CALC)は、前記フィルム(F1;F2)の横方向厚みプロファイルを、前記フィルムの前記横方向密度プロファイルおよび延伸された前記フィルムの横方向単位面積質量プロファイルに基づいて、計算する(S60A,S160A)ことを特徴とする、請求項7に記載のフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記調整アクチュエータは、予想される厚みプロファイルに対する計算された前記厚みプロファイルの偏差に応答して制御される(FBK1,FBK3)、ことを特徴とする、請求項8に記載のフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記フィルムの特性である前記特性横方向プロファイルは、前記フィルムの横方向空隙率プロファイルであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記調整アクチュエータは、予想される空隙率プロファイルに対する計算された前記空隙率プロファイルの偏差に応答して制御される(FBK2,FBK4)ことを特徴とする、請求項10に記載のフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記フィルムが形成される間、前記フィルム(F2)の縁部(E1,E2)が切り取られて除去され、
前記コンピュータユニットは、前記フィルム(F2)のマッピング関数を、切り落とされた前記フィルムの前記縁部の横方向位置(X’min.cut,X’max.cut)に基づいて特定することを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1以上の延伸ステップ中にキャビティまたはボイドが生成されるフィルムの製造方法であって、フィルムの特徴を明らかにするステップを有する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料をベースとしたフィルムは、キャビテーション材料をポリマー材料に微細に混合すると、延伸により多孔質化することができる。
【0003】
縦方向、すなわちフィルムが進む方向に延伸されたフィルムは、その長さが長くなる。
【0004】
縦方向に延伸されたフィルムは、横方向に収縮し、したがって、その幅が狭くなる。
【0005】
横方向、すなわちフィルムが進む方向に交差する方向に延伸されたフィルムは、幅が広くなる。
【0006】
フィルムは、横方向および縦方向に順番にまたは同時に延伸されることが多い。
【0007】
キャビテーション剤は、米国特許出願公開第2006/0121259号明細書および国際公開第2010/059448号に開示されているように、ポリマー中に分散された材料である。ポリマー中では、キャビテーション剤の島が、延伸中に、その周囲の体積にキャビティまたはボイドを機械的に出現させる。
【0008】
製造方法全般、特に延伸ステップを最適化する目的で、延伸中のフィルムの変形と成分分布を考慮した特性評価技術が開発されている。
【0009】
例えば、米国特許第7813829号明細書では、まずフィルムが押し出された後かつ横方向の延伸の上流で、次に横方向の延伸の下流で、フィルムの厚みの特徴を明らかにすることを開示している。
【0010】
フィルムの生産ライン上でのフィルムの特徴を明らかにするための技術は、放射線または波の吸収を感知する原理のセンサに基づいており、物質の分布は当然報告される。
【0011】
フィルム製造時の物質の分布から、延伸前のフィルムにおける横方向位置と延伸後のフィルムにおける横方向位置とを対応させるマッピング関数を定義することができる。
【0012】
さらに、実装されたセンサによりフィルムの縁部の特徴を正確に明らかにすることが可能であれば、単位面積質量の測定値に基づいて、横方向の単位面積累積質量を表す曲線をプロットすることで、マッピング関数を定義することができる。
【0013】
図1Aは、延伸前および延伸後のフィルムのそれぞれの単位面積質量プロファイルC1、C2を示す。横方向位置XminおよびXmaxは、延伸前のフィルムの縁部に対応し、横方向位置X’minおよびX’maxは、延伸後のフィルムの縁部に対応する。
【0014】
図1Bは、延伸前および延伸後のフィルムのそれぞれについての、横方向に累積され正規化された単位面積質量に関する曲線C3、C4を示す。これらの曲線は、図1Aの曲線C1およびC2のそれぞれから得られる。
【0015】
この例では、マッピング関数は、累積および正規化された単位面積質量Y’を有する延伸後のフィルムの横方向位置X’と、累積および正規化された単位面積質量Yを有する延伸前のフィルムの横方向位置Xとの間の対応関係として定義される。ここで、Yは、Y’に等しい。
【0016】
キャビティのないフィルムでは、単位面積質量値(例えば、1平方メートル当たりのグラム数(g/m)で表される)をフィルムの密度(例えば、1立方メートル当たりのグラム数(g/m)で表される)で割ることによって、単位面積質量プロファイルある厚みプロファイルを直接推定することができる。
【0017】
マッピング関数を知ることと、延伸後のフィルムの厚みプロファイルの特徴を明らかにすることとの組み合わせにより、米国特許第5928580号明細書および米国特許第7813829号明細書に開示されているように、延伸後のフィルムの厚みを均一にするように、延伸の上流のフィルムの厚みプロファイルに作用する製造パラメータを調整することが可能になる。
【0018】
そのため、フィルムの厚みプロファイルの特徴を明らかにすることは、製造方法を監視および制御する上で避けられないステップである。
【0019】
しかしながら、ミクロ多孔質膜、通気性フィルム、または「真珠光沢」フィルムのようなキャビティを含むフィルムでは、厚みプロファイルは、単位面積質量プロファイルから十分に推定することができない。
【0020】
実際、β波、X線、または赤外線に基づくか、超音波に基づくかに関わらず、フィルムの単位面積質量を測定する技術は、物質の量の測定に依存しており、特徴を明らかにしようとするフィルムの厚みを直接提供するものではない。
【0021】
フィルムのある点での厚みは、その点での単位面積質量と密度の比によって与えられる。
【0022】
従来は、局所的な密度が不明であるため、厚みは一定であると仮定されている。
【0023】
しかし、実際には、多孔性フィルムでは、キャビティがフィルム中で均一に分布していない可能性があり、その場合、密度が一定であるという仮定はもはや成り立たず、厚みの特性評価には誤差が生じることになる。
【0024】
また、機械の知識および方法の知識から予測的に不均一な密度を推定したとしても、そのような推定は、経験則に過ぎず、新たな状況に適応することができず、予期しない変化に面したときに対応することができない。
【0025】
したがって、従来のキャビティを含むフィルムの特徴を明らかにする方法は、信頼性および正確性が不十分であり、形成されているフィルムの特性の予期しない変化に対応することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の目的は、フィルムの特性の監視を改善し、フィルムの特性プロファイル、特に延伸、密度、厚みおよび空隙率のうちの少なくとも1つのプロファイルの計測の精度を向上することにより、キャビティを含むフィルムの製造方法を改善することである。
【0027】
本発明に係る方法によれば、フィルム中において閉じたまたは貫通したキャビティまたはボイドの不均一な分布によって変化する密度を有し、多孔性を有するフィルムの特徴を確実に明らかにすることができる。
【0028】
この目的のために、本発明は、
キャビティを含み、キャビテーション剤が分散されたポリマーからなるフィルムを製造する方法であって、
前記方法は、
押し出されたフィルムの特性を調整するための調整アクチュエータが設けられた生産ライン上に前記ポリマーを押し出すステップと、
前記フィルムを延伸するステップと、
前記フィルムのマッピング関数を確立することからなるステップと
を含み、
第1の単位面積質量センサが、延伸されていない前記フィルムの横方向単位面積質量プロファイルを計測し、
第2の単位面積質量センサが、延伸することにより延伸された前記フィルムの横方向単位面積質量プロファイルを計測し、
コンピュータユニットが、延伸された前記フィルムの前記マッピング関数を前記横方向単位面積質量プロファイルに基づいて計算し、
前記コンピュータユニットは、延伸された前記フィルムの延伸プロファイルを前記マッピング関数および前記横方向単位面積質量プロファイルに基づいて計算し、
前記コンピュータユニットは、前記延伸プロファイルと、前記フィルム中の前記キャビティの分布を考慮することを可能にする延伸された前記フィルム中のキャビテーション剤の質量濃度の横方向プロファイルとに基づいた前記フィルムの特性である特性横方向プロファイルを計算し、
前記調整アクチュエータは、前記特性横方向プロファイルに応じて制御される、ことを特徴とする、方法を提供する。
【0029】
上述したように、キャビテーション剤が分散されたポリマーから形成されたフィルムが延伸されるとき、キャビテーション剤の島でキャビティまたはボイドが形成される。
【0030】
本発明の発明者らは、このようにして形成されたキャビティの体積がフィルムの延伸に比例するため、延伸の前後のフィルムの単位面積質量プロファイルに基づいて計算された延伸プロファイルによりフィルムの特徴が明らかになり、延伸プロファイルがフィルムの形成中に得られると判断した。
【0031】
フィルム中のキャビテーション剤の分布と組み合わせて、このようにして得られた延伸プロファイルは、キャビティの分布の指標であり、フィルム中のキャビティの不均一な密度の可能性を考慮してフィルムの特徴を明らかにすることを可能にする。
【0032】
特に、フィルムの延伸プロファイルにより、フィルムの密度プロファイル、フィルムの厚みプロファイル、およびフィルムの空隙率プロファイルを推定することが可能となる。これらのプロファイルのそれぞれは、フィルム中のキャビティの分布および大きさを考慮したものである。
【0033】
したがって、本発明の製造方法のプロファイルを特定することは、フィルムが横方向に延伸される領域の上流および下流の区域での単位面積質量の計測と、キャビテーション剤の分布に関する知識とに基づいて、事前に、またはライン上でその場で測定されることで行われる。
【0034】
横方向延伸プロファイルは、形成されているフィルム上で行われた単位面積質量の計測値に基づいて特定される。このため、延伸プロファイルは、単にフィルムの想定される均一性または過去に製造されたフィルムの事後的な測定に基づいてなされる推定ではなく、フィルムの現実の特性に基づく情報を提供する。
【0035】
縦方向の延伸、すなわち機械方向での延伸は、同じデータから計算されてもよい。
【0036】
また、本発明のフィルムの厚みを測定する方法は、形成されるフィルムのタイプと、使用する機械のタイプとに無関係であり、様々な製造環境に自動的に適合する。
【0037】
本発明に係る方法は、以下の特徴を有してもよい。
前記キャビテーション剤の前記質量濃度の前記横方向プロファイルを、延伸された前記フィルムの前記横方向単位面積質量プロファイルと、キャビテーション剤単位面積質量センサにより測定されたキャビテーション剤の単位面積質量プロファイルとから推定してもよい。
延伸されていない前記フィルム中のキャビテーション剤の単位面積質量プロファイルをキャビテーション剤単位面積質量センサにより計測してもよく、延伸されていない前記フィルム中のキャビテーション剤の質量濃度の横方向プロファイルを、キャビテーション剤の前記単位面積質量プロファイルと、延伸されていない前記フィルムの単位面積質量プロファイルとから推定してもよく、延伸された前記フィルム中のキャビテーション剤の質量濃度の前記横方向プロファイルを、前記マッピング関数の適用により、延伸されていない前記フィルム中のキャビテーション剤の質量濃度の前記横方向プロファイルに置き換えてもよい。
前記キャビテーション剤の質量濃度の前記横方向プロファイルを前記フィルム中の前記キャビテーション剤の平均濃度に一致させてもよい。
前記フィルムでは、2度の横方向単位質量プロファイルの測定の間に、キャビテーション剤が減少してもよく、第1のキャビテーション剤単位面積質量センサは、延伸されていない前記フィルム中の前記キャビテーション剤の横方向単位面積質量プロファイルを測定してもよく、第2のキャビテーション剤単位面積質量センサは、延伸された前記フィルム中の前記キャビテーション剤の横方向単位面積質量プロファイルを測定してもよく、前記コンピュータユニットは、前記フィルムの前記横方向単位面積質量プロファイルからキャビテーション剤の前記横方向単位面積質量プロファイルを減算することで、前記ポリマー単独の前記フィルムの横方向単位面積質量プロファイルを計算してもよく、前記コンピュータユニットは、前記ポリマー単独の前記フィルムの前記横方向単位面積質量プロファイルに基づいて前記マッピング関数を計算してもよい。
前記製造方法は、第1領域で前記フィルムを延伸する第1ステップと、前記第1領域の下流の第2領域で前記フィルムからキャビテーション剤を抽出する第2ステップとを含んでもよく、前記第2単位面積質量センサは、前記第1領域の下流かつ前記第2領域の上流で、延伸された前記フィルム中のキャビテーション剤の前記横方向単位面積質量プロファイルを測定することが可能である。
前記フィルムの特性である前記特性横方向プロファイルは、前記フィルムの横方向密度プロファイルであってもよい。
前記コンピュータユニットは、前記フィルムの横方向厚みプロファイルを、前記フィルムの前記横方向密度プロファイルおよび延伸された前記フィルムの横方向単位面積質量プロファイルに基づいて、計算してもよい。
前記調整アクチュエータは、予想される厚みプロファイルに対する計算された前記厚みプロファイルの偏差に応答して制御されてもよい。
前記フィルムの特性である前記特性横方向プロファイルは、前記フィルムの横方向空隙率プロファイルであってもよい。
前記調整アクチュエータは、予想される空隙率プロファイルに対する計算された前記空隙率プロファイルの偏差に応答して制御されてもよい。
前記フィルムが形成される間、前記フィルムの縁部が切り取られて除去されてもよく、前記コンピュータユニットは、前記フィルムのマッピング関数を、切り落とされた前記フィルムの前記縁部の横方向位置に基づいて特定してもよい。
【0038】
本発明は、本発明に係る製造方法を用いて得られたフィルムにまで及ぶ。
【0039】
非制限的な例として、添付の図面を参照して与えられる実施形態の以下の詳細な説明を読むことで、本発明は、よりよく理解され、他の利点も理解される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A】フィルムが延伸される前後の単位面積質量または「面積密度」の横方向プロファイルを示す図。
図1B図1Aおよび図1Bの累積プロファイルの曲線と、マッピング関数の定義を示す図。
図1C】生産ライン上での縦方向および横方向の延伸を含む方法を用いたフィルムの製造を示す図。
図2A図1Cのフィルムのマッピング関数を示す図。
図2B図2Aのマッピング関数から導かれる延伸プロファイルを示す図。
図3A図1Aのフィルムの密度、すなわち単位体積質量のプロファイルを示す図。
図3B図1Aのフィルムの空隙率のプロファイルを示す図。
図4図1Cのフィルムの製造方法を示す図。
図5】生産ライン上に複数の延伸ステップを含むミクロ多孔質膜の製造方法を示す図。
図6図5のミクロ多孔質膜の製造方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
この第1実施形態では、「真珠光沢」フィルムF1は、固体粒子のキャビテーション剤が分散された連続相のポリマーを押し出し、その結果として得られたフィルムを縦方向および横方向に同時にまたは連続して延伸することで得られる。
【0042】
キャビテーション剤は、例えば炭酸カルシウム粒子などの無機タイプであってもよく、例えばポリブチレンレテフタレート(PBT)などの有機タイプであってもよく、これらのキャビテーション剤のタイプは、例えばポリプロピレンなどのフィルムのベースポリマーと混和しない。
【0043】
真珠光沢フィルムでは、キャビテーション剤の粒子の周りにキャビティが形成されており、これによりフィルムに白色または真珠のような外観を与えるとともに、フィルムの密度を低下させる。
【0044】
フィルムF1は、まず、フィルムの厚みを設定するための調整アクチュエータActに設けられた押出ダイDを通って押し出され、図1Cに示すように生産ラインに沿った「機械」方向(流れ方向)MDに移動しながら、領域Z0での横方向延伸Str1を含む方法により生産される。
【0045】
横方向延伸Str1に付随して、フィルムに縦方向延伸が適用されてもよい。
【0046】
キャビティの体積は、フィルムの延伸の関数であり、少なくとも一次的にフィルムの延伸に比例し、これにより、延伸プロファイルを特定することにより、以下に詳細に述べるように、空隙率プロファイルおよび密度プロファイルを推定することができる。
【0047】
延伸プロファイルは、単位面積質量センサまたは「面積密度」センサを有するスキャナからの測定データから計算されてもよい。
【0048】
フィルムの厚みの特徴を明らかにするために、第1スキャナSCAN1および第2スキャナSCAN2が使用される。第1スキャナSCAN1および第2スキャナSCAN2のそれぞれは、単位面積質量センサCapm.surfをそれぞれ含む。第1スキャナSCAN1および第2スキャナSCAN2は、領域Z0の上流および下流のそれぞれにおいて横方向(幅方向)TDにおいて、フィルムをその全幅に渡って、走査するように構成されている。
【0049】
単位面積質量センサCapm.surfは、特徴を明らかにしようとするフィルムを通過するX線の透過率に基づいた方法で動作する。透過率は、フィルムの単位面積質量によって変化する。各センサは、X線をするためのX線放射ヘッドと、特徴を明らかにしようとするフィルムを通過したX線を検出するためのX線検出ヘッドとを備える。
【0050】
代替的には、単位面積質量センサは、例えば、ベータ線または他の放射線の透過率または後方散乱に基づいてもよく、ベータ線または他の放射線を放射するためのベータ線等放射ヘッドと、特徴を明らかにしようとするフィルムを透過またはフィルムにより後方散乱されたベータ線または他の放射線を検出するためのベータ線等検出ヘッドとを備えてもよい。
【0051】
一般的には、電磁波、超音波、または粒子の透過または後方散乱により測定を行うことができる。
【0052】
後方散乱では、放射ヘッドおよび検出ヘッドは、フィルムに対して同じ側に位置しており、同一のハウジングまたは窪みに任意に組み込まれる。
【0053】
スキャナSCAN1とスキャナSCAN2との間では、フィルムの総質量流束は変化しない。
【0054】
フィルム中のキャビテーション剤の分布を数値化するために、スキャナSCAN1およびスキャナSCAN2のうちの少なくとも1つが、押し出されたフィルムに含まれるキャビテーション剤の単位面積質量を検出可能なセンサCaps.agを備えてもよい。
【0055】
センサCaps.agは、例えば、キャビテーション剤による赤外線の吸収に基づいてもよい。
【0056】
2つのスキャナSCAN1,SCAN2の間の質量保存の法則の適用を図1Cに示す。図1Cでは、横方向延伸Str1が施されるフィルム中での物質流束線が示されている。
【0057】
座標Xminで特定されるフィルムの縁部と第1スキャナSCAN1の任意の位置Xとの間の物質流束は、座標X’minで特定されるフィルムの縁部とスキャナSCAN2の対応する位置X’との間の物質流束と等しく、以下の式(1)で表される。ここで、vおよびv’は、それぞれ第1スキャナおよび第2スキャナでのフィルムの移動速度を表している。Ws(x)およびW’s(x’)は、第1スキャナおよび第2スキャナのそれぞれのレベルにおける横方向位置X,X’でのフィルムの単位面積質量プロファイル(一般的にはg/mで表される)を表している。
【0058】
【数1】
【0059】
フィルムの全幅について式(1)と等価な式(2)を書けば、式(1)は、速度とは無関係に書き直すことができる。
【0060】
【数2】
【0061】
式(1)を式(2)で割れば、式(3)が得られる。ここで、Ws.totは、単位面積当たりの質量の第1スキャナでのフィルムの全幅での積分であり、式(4)を用いた。W’s.totは、単位面積当たりの質量の第2スキャナでのフィルムの縁部を含む全幅での積分であり、式(5)を用いた。
【0062】
【数3】
【0063】
【数4】
【0064】
【数5】
【0065】
ここで、X’minおよびX’maxは、フィルムの縁部の位置であるため、既知であり、単位面積当たりの質量Ws(x),W’S(x’)は、スキャナにより測定される。
【0066】
式(3)は、第1スキャナSCAN1でのフィルム上の任意の横方向位置Xと、第2スキャナSCAN2でのそれに対応する位置X’との間の関係、つまりマッピング関数を、位置Xと位置X'との間の一義的な関係を定義することで、確立する。マッピング関数は、図2Aのグラフに示す曲線Mapにより図を用いて示される。図2Aのグラフでは、横軸は、第1スキャナSCAN1での横方向位置xを示しており、縦軸は、第2スキャナSCAN2での横方向位置x’を示している。
【0067】
横方向延伸後の任意の横方向位置x’における、第2スキャナでの横方向の伸びStretch'TD(x')は、マッピング関数の微分である式(6)で示される。
【0068】
【数6】
【0069】
延伸後の任意の横方向位置x'における、第2スキャナでの(縦方向および横方向の)合計の延伸Stretch'(x')は、式(7)で示される。ここで、xは、式(3)を解くことによりマッピング関数で求められるx'に対応する位置である。
【0070】
【数7】
【0071】
図2Bは、単位面積質量センサCapm.surfにより得られた単位面積質量の測定値と、コンピュータユニットCALCに実装された従来の数値計算手段による式(7)の処理とにより推定される、図1Cに示すフィルムの第2スキャナSCAN2での延伸Stretch'(x')のプロファイルを示す。
【0072】
横方向位置x'での延伸されたフィルムの密度プロファイルW'v(x')は、式(8)で表すことができる。
【0073】
【数8】
【0074】
W'pol(x')は、第2スキャナSCAN2でのポリマーの質量を示している。W'ag(x')は、第2スキャナSCAN2でのキャビテーション剤の質量を示している。Vol'pol(x')は、ポリマーの体積を示している。Vol'ag(x')は、第2スキャナSCAN2でのキャビテーション剤の体積を示している。Vol'cav(x')は、第2スキャナSCAN2での、フィルムの延伸後の横方向位置を代表する座標x'に位置するフィルムの基本体積で考えた場合のキャビティの体積を示している。
【0075】
式(8)は、式(9)の形式で書くこともできる。
【0076】
【数9】
【0077】
延伸されたフィルム中のキャビティの相対体積は、キャビテーション剤濃度C'ag(x')および座標x'での実際の伸びStretch'(x')に比例定数αで比例する。密度プロファイルは、式(10)の形式で表すことができる。
【0078】
【数10】
【0079】
αは、フィルムの平均特性、キャビテーション剤の粒子サイズ、およびポリマーとの相互作用の影響を表している。Stretch'(x')は、横方向位置x'に依存する。
【0080】
因数(Stretch'(x')-1)は、延伸されていないときまたはキャビティが形成されていないときStretch'(x')は1に等しいことから、上で与えた伸びの定義と整合するように導入される。
【0081】
式(10)は、式(11)の形式で書くこともできる。W'v.bulk(x')は、式(12)により定義され、横方向位置x'において延伸されていない、即ち伸びとキャビティを無視したときのフィルムの密度プロファイルに対応する。C'ag(x')は、フィルム中のキャビテーション剤の質量の濃度を表しており、式(13)で定義される。
【0082】
【数11】
【0083】
【数12】
【0084】
【数13】
【0085】
ここで、W's.ag(x')は、第2スキャナSCAN2でのキャビテーション剤の単位面積質量プロファイルであり、例えば、第2スキャナSCAN2に設けられたセンサCaps.agにより測定される。
【0086】
式(11)に基づいて、(a)スキャナSCAN1,SCAN2の間でのフィルムのマッピング関数と、(b)延伸プロファイルStretch'(x')と、(c)キャビテーション剤の質量の濃度のプロファイルC'ag(x')と、(d)延伸されていないフィルムの密度のプロファイルW'v.bulk(x')と、(e)定数αの値を特定することとで、横方向密度プロファイルW'v(x')を特定し、横方向密度プロファイルW'v(x')から、形成されるフィルムの横方向厚みプロファイルと空隙率プロファイルとを推定することが可能である。
【0087】
(a)および(b)に関して、マッピング関数およびフィルムの延伸プロファイルStretch'(x')は、式(3)から(7)の各式を用いて単位面積質量センサCapm.surfにより得られた単位面積質量から推定される。
【0088】
(c)に関して、フィルム中でのキャビテーション剤の濃度のプロファイルC'ag(x')は、式(13)により得られる。
【0089】
キャビテーション剤が不均一に分布している特定の状況において、質量濃度プロファイルC'ag(x')は、もはや位置に依存せず、濃度プロファイルは、フィルム中でのキャビテーション剤の平均濃度Cagと等しい一定の値で横ばいになり、キャビテーション剤の単位面積質量を検出するセンサの設置は、もはや必要なくなる。
【0090】
(d)に関して、値W'v.bulk(x')は、式(14)を用いて、ポリマーの密度、キャビテーション剤の密度、およびキャビテーション剤の濃度から特定される。ポリマーの密度およびキャビテーション剤の密度の両方は、当業者に知られている。
【0091】
【数14】
【0092】
ここで、Wv.polは、ポリマーの密度を示しており、Wv.agは、キャビテーション剤の密度を示しており、これらの密度は、当業者に知られた量である。
【0093】
(e)に関して、定数αは、式(11)を逆算し、式(13)を平均することで得られたキャビテーション剤の平均濃度Cagと、式(7)を平均することで得られた平均伸びStretch'と、式(14)を平均することで得られた延伸されていないフィルムの密度に対応する平均密度W'v.bulkと、実験室で測定された延伸されたフィルムの平均密度W'vとを用いて特定され、これらにより式(15)が導かれる。
【0094】
【数15】
【0095】
フィルムの必須の特性であり、フィルムの合計体積に対するキャビティの体積の割合として定義され、式(16)で表される延伸後のフィルムの空隙率P'(x')を導入することが可能である。
【0096】
【数16】
【0097】
延伸後のフィルムの空隙率P'(x')は、上で定義した表記法で、式(9)および(10)から、式(17)により導き出すこともできる。
【0098】
【数17】
【0099】
フィルムの厚みプロファイルT'(x')は、式(18)を用いて単純に計算できる。ここで、W's(x')は、第2スキャナSCAN2による測定値から直接得られるフィルムの単位面積質量を表している。W'v(x')は、第2スキャナでのフィルムの横方向密度プロファイルを表しており、延伸領域の両側に位置する2つのスキャナによる測定値から推定される。より詳細には、上述したように、W'v(x')は、経験的にではなく、従来の方法とは異なり、単位面積質量の測定位置からフィルムの局所的な伸びを特定するステップを経由することにより、推定される。
【0100】
【数18】
【0101】
フィルムの製造には、厚みプロファイルT'(x')および空隙率プロファイルP'(x')の少なくとも一方を、図4に示す方法10を用いて特定するステップを含む。方法10をフィルムが進むにつれて、フィルムのセグメントの処理を追うことで説明する。
【0102】
実際には、方法10は、2つのスキャナの間でフィルムを搬送する時間を考慮して、連続的に実行される方法である。
【0103】
ステップS10では、ポリマーと、ポリマーに混ぜられたキャビテーション剤とがダイDを通って押し出されて、機械方向MDに搬送される延伸されていないフィルムを形成する。
【0104】
ステップS20では、第1スキャナSCAN1に設けられ、監視制御ユニットC/Cにより制御された第1単位面積質量センサCapm.surfがフィルム上を走査し、フィルムが延伸される前のフィルムの第1横方向単位面積質量プロファイルWs(x')を測定し、フィルムの第1単位面積質量プロファイルの代表データをコンピュータメモリMEMに格納する。コンピュータメモリMEMに格納された代表データの内容は、コンピュータユニットCALCからアクセス可能である。
【0105】
ステップS30では、フィルムは、機械方向MDと、機械方向MDと実質的に直交する横方向TDとにおいて順次または同時に延伸される。
【0106】
ステップS40では、第2スキャナSCAN2に設けられ監視制御ユニットC/Cにより制御された第2単位面積質量センサCapm.surfおよびキャビテーション剤の単位面積質量を検出するためのセンサCaps.agは、フィルム上を走査し、フィルムの第2横方向単位面積質量プロファイルW's(x')と、延伸後のフィルム中のキャビテーション剤の横方向単位面積質量プロファイルW's.ag(x')とをそれぞれ測定し、これらのプロファイルの代表データをコンピュータメモリMEMに格納する。
【0107】
ステップS50では、延伸ステップS30の後に、第1横方向単位面積質量プロファイルWs(x)および第2単位面積質量プロファイルW's(x')に基づいて、コンピュータメモリMEMに格納された横方向プロファイルと、製造に用いられる材料に関するパラメータ(ポリマーの密度Wv.pol、キャビテーション剤の密度Wv.ag、および延伸されたフィルムの平均密度Wv)と、問題となっているフィルム全体としての特性に関するパラメータとをコンピュータユニットCALCで処理することによって式(11)を解くことで、フィルムの横方向密度プロファイルW'v(x')が特定される。第1横方向単位面積質量プロファイルWs(x)および第2単位面積質量プロファイルW's(x')は、ステップS20およびステップS40のそれぞれにおいて測定される。前記パラメータは、既知であるか、従来の方法により測定可能であり、コンピュータメモリMEMに格納されて、コンピュータユニットCALCからアクセス可能である。
【0108】
ステップS50は、ステップS20およびS40の間に単位面積質量センサCapm.surfにより測定された単位面積質量プロファイルWs(x),W's(x')と、コンピュータユニットCALCを用いた式(3)の解とに基づいてマッピング関数を表すテーブルを特定するためのサブステップS50aを含む。テーブルは、コンピュータメモリMEMに記録される。
【0109】
ステップS50は、コンピュータユニットCALCと、コンピュータメモリMEMに格納された横方向プロファイルのデータとを用いて、式(11)の右辺の個々の要素を特定するサブステップS50b、S50c、S50d、およびS50eをさらに含む。ステップS50は、横方向密度プロファイルW'v(x')を適切に計算するサブステップS50fをさらに含む。
【0110】
サブステップS50bは、単位面積質量センサCapm.surfによる単位面積質量測定値Ws(x)およびW's(x')と、ステップS50aで特定されたマッピング関数と、コンピュータユニットCALCを用いた式(7)の解とから延伸プロファイルStretch'(x')を特定することからなる。
【0111】
任意で、サブステップS50bは、式(6)に基づいて、横方向延伸プロファイルStretch'TD(x')を計算することを含んでもよい。
【0112】
サブステップS50cは、ステップS40で単位面積質量センサにより取得された測定値に式(13)を適用することで、キャビテーション剤の濃度プロファイルC'ag(x')を特定することからなる。
【0113】
サブステップS50dは、コンピュータユニットCALCを用いて、サブステップS50cにおいて特定された濃度プロファイルC'ag(x')を用いて式(14)を解くことによって、前述のように延伸されていないフィルムの密度プロファイルW'v.bulk(x')を特定することからなる。
【0114】
サブステップS50eは、前述のように、ステップS50bで特定された延伸プロファイルStretch'(x')、ステップS50cで特定された濃度プロファイルC'ag(x')、および延伸されていないフィルムの密度プロファイルW'v.buld(x')が導入された式(15)に基づいて比例定数αを特定することからなる。密度プロファイルW'v.buld(x')は、コンピュータユニットCALCを用いてステップS50dで得られる。
【0115】
サブステップS50fは、コンピュータユニットCALCを用いて式(11)で定義される横方向密度プロファイルW'v(x')を特定するために、サブステップS50bから50eで特定された個々の要素を用いることからなる。
【0116】
図3Aは、図1Cのフィルムの密度プロファイルW'v(x')を示す。フィルムの縁部には、図2Bに示されるように、延伸されていない部分があり、その密度は、延伸されておらず、したがってキャビティを有しないフィルムの密度に等しい。
【0117】
ステップS60Aでは、ステップS10からステップS50の結果、フィルムの単位面積質量プロファイルW's(x')および第2スキャナでのフィルムの密度プロファイルW'v(x')が既知であるため、コンピュータユニットCALCを用いて式(18)を解くことによって、厚みの横方向プロファイルT'(x')が特定される。
【0118】
この厚みプロファイルT'(x')は、延伸されたフィルムの特性であり、フィルムの製造方法についての情報源を表す。厚みプロファイルT'(x')は、図4に示されるように、予想厚みプロファイルに対するプロファイルT'(x')の偏差に応答して、当業者によってなされる調整によって手動で、または実際にはフィルムを形成するための設備にコンピュータユニットCALCを接続するフィードバック制御ループによって自動的に、フィルムを形成するための設備の設定の調整FBK1を行うことにより方法自体に作用するように使用されてもよい。
【0119】
例えば、フィルムを形成するポリマーの押し出しは、従来の方法で、ダイDの固定リップと調整可能リップとの間での押し出しにより行われ、押し出されたフィルムの厚みは、ダイのアクチュエータActにより制御可能であり、アクチュエータActは、調整可能リップに沿って分布しており、アクチュエータActの動作は、フィルムの厚みの横方向プロファイルの測定に応答して個々に調整可能であってもよい。
【0120】
特に、フィルムの単位面積質量プロファイルから特定されたフィルムのマッピングにより、フィルムの厚みプロファイルの関数として、調整が必要なアクチュエータを推定することができる。
【0121】
したがって、本発明は、フィルムの厚みプロファイルを監視および制御するためのフィードバックループの要素として上述した厚みプロファイルの計測方法を含むフィルムの製造方法であり、製造方法を連続的に監視するという利点を有する。
【0122】
さらに、ステップS60Bでは、必要な情報がステップS10からS40およびS50b、S50c、S50eの結果として既知であるため、コンピュータユニットCALCを用いて式(17)を解くことで、空隙率の横方向プロファイルP'(x')が特定される。
【0123】
図3Bは、図1Cに示すフィルムの空隙率プロファイルP'(x')を示す。フィルムの縁部における空隙率は、非常に低く、フィルムの縁部は、延伸されておらず、したがって、キャビティを有しないか、または少数のキャビティしか有しない。
【0124】
空隙率プロファイルP'(x')は、フィルムの製造方法についての情報源である。空隙率プロファイルP'(x')は、図4に示されるように、予想空隙率プロファイルに対するプロファイルP'(x')の偏差に応答して、当業者によってなされる調整によって手動で、または実際にはフィルムを形成するための設備にコンピュータユニットCALCを接続するフィードバック制御ループによって自動的に、フィルムを形成するための設備の設定の調整FBK2を行うことにより方法自体に作用するように使用されてもよい。
【0125】
調整方法は、望ましい空隙率プロファイルが得られるように横方向ストレッチStretch'TD(x')を調節するように、フィルムの横方向空隙率プロファイルの測定値に応答して、生産ラインに含まれる延伸装置の横方向温度領域の温度を調整するためのアクチュエータを制御することからなる。
【0126】
したがって、本発明のフィルムの製造方法は、フィルムの空隙率プロファイルを監視および制御するためのフィードバックループの要素として上述した空隙率プロファイルを計測する方法を含み、製造方法を連続的に監視するという利点を有する。
【0127】
当業者がアクセス可能な上述の方法における変形例のうち、第2スキャナSCAN2でのキャビテーション剤プロファイルW's.ag(x')が、第1スキャナSCAN1でのキャビテーション剤プロファイルWs.ag(x)の測定からマッピング関数を用いて推定可能であるということに言及することができる。
【0128】
他の変形例では、フィルムを生産するための生産ラインには横方向延伸ステップがなく、縦方向延伸ステップのみである。
【0129】
しかしながら、機械方向における延伸により、フィルムが横方向に収縮し、したがって、延伸プロファイルの値が1より小さくなる。
【0130】
上記で定義された式は、引き続き同じように適用されるが、この変形例での唯一の違いは、調整FBK2が関係のないことである。
【0131】
(本発明の方法の第2実施形態の説明)
この第2実施形態は、第1実施形態の特定のケースであり、問題となるフィルムの性質およびスキャナSCAN1,SCAN2の間でフィルムに適用される処理によってキャビテーション剤がフィルムから部分的にまたは全体的に取り除かれている。
【0132】
したがって、第1実施形態で用いられた2つのスキャナの間の質量流束が保存されるという仮定は無効になり、方法と計算において質量の損失を考慮する必要がある。
【0133】
よって、製造方法に適用されるアプローチと、使用される装置の種類と、特に単位面積質量センサおよびアクチュエータとについては、第1実施形態を参照することができる。
【0134】
例として、この第2実施形態では、問題となるフィルムは、ポリマー溶液の押し出しにより連続的に生産されるフィルムF2から生産することができるミクロ多孔質のポリマー膜であり、このフィルムは、図5に示すように、生産ラインに沿って「機械」方向MDに移動する。
【0135】
ミクロ多孔質膜の特定用途としては、バッテリセルの正極と負極とを物理的に分離する機能を提供しながら、電荷キャリアが膜の孔を通って負極から正極に移動できる膜の製造が挙げられる。
【0136】
この第2実施形態では、ポリマー樹脂とキャビテーション剤として使用される油とを有するポリマー溶液から作製されたミクロ多孔質膜について、延伸プロファイル、空隙率プロファイル、密度プロファイル、および厚みプロファイルがどのように特定されるかを説明する。
【0137】
国際公開第2008/016174号および米国特許第8841032号明細書において説明されるように、ポリマー樹脂は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィンであってもよく、キャビテーション剤は、灯油(パラフィンオイル)であってもよい。
【0138】
フィルムは、第1領域Z1で第1方法ステップを受け、このステップの間に延伸Str1により延伸され、油含有物でキャビティが形成される。このキャビティは、その後、ミクロ多孔質膜に孔を付与する。
【0139】
延伸Str1は、縦方向延伸と横方向延伸とを同時に行う。
【0140】
第1ステップの間、一般的には、フィルムの油の一部が失われる。
【0141】
第2方法ステップ、すなわち領域Z1の下流の領域Z2において油を抽出するステップExtrの間、第1延伸Str1により延伸されたフィルムは、孔に含まれるオイルを溶解する溶媒の溶液槽を通過し、その後、溶媒と油の混合物を抽出する機構により、孔から油が出される。
【0142】
この第2方法ステップの間、特に混合物を抽出する間、フィルムは、収縮Retrを受ける。
【0143】
任意に、領域Z2の下流の領域Z3における第3方法ステップの間に実施される第2延伸ステップStr2は、混合物の抽出の間に起こるフィルムの収縮を矯正することを意図する。
【0144】
第1実施形態と同様に、キャビティの体積は、フィルムの延伸の関数であり、少なくとも一次でフィルムの延伸に比例するため、延伸プロファイルを特定することにより、以下に詳細に述べるように、フィルムについての空隙率プロファイル、密度プロファイル、および厚みプロファイルを推定することができる。
【0145】
逆に、この第2実施形態は、単位面積質量の2つの測定の間の処理領域において、キャビテーション剤(本例では油)が可能な限り完全にフィルムから除去されるという点で、第1実施形態と異なる。
【0146】
したがって、問題となっている処理領域の前のフィルムの位置と処理領域の後のフィルムの位置との間でのマッピング関数を確立することを可能にする質量流束の保存は、もはや単位面積総質量には適用できず、ポリマー単独の質量に適用される。
【0147】
したがって、単位面積総質量プロファイルWs(x)およびW's(x')がポリマーの単位面積質量プロファイルWs.pol(x)およびW's.pol(x')に置き換えられる場合には、式(1)から(7)は、有効なままである。
【0148】
この実施形態では、第1領域Z1の上流および第2領域Z2の下流にそれぞれ設けられたスキャナSCAN1,SCAN2は、第1実施形態のスキャナSCAN1,SCAN2と同じ機能を果たし、領域Z1,Z2は、第1実施形態の領域Z0の機能を果たす。
【0149】
単位面積質量センサCapm.surfは、第1スキャナSCAN1および第2スキャナSCAN2のそれぞれで単位面積総質量プロファイルWs(x)およびW's(x')を測定し、感知した全ての物質(ポリマーに加え、そのほとんどが第1スキャナと第2スキャナとの間で除去される油を含む)に感度を有する。
【0150】
したがって、これらのセンサは、押し出されたフィルムを形成するポリマーの単位面積質量だけではなく、全体としてのフィルムの構成要素の単位面積質量を測定する。
【0151】
フィルムの油の損失を定量化するために、第1スキャナSCAN1は、押し出されたフィルムに含有される油のみの単位面積質量プロファイルWs.oil(x)の検出が可能なセンサCaps.oilを有してもよく、第2スキャナSCAN2は、延伸ステップおよび抽出ステップの後で、特にフィルムの縁部での油残存物の第2スキャナSCAN2での単位面積質量プロファイルW's.oil(x')を測定するための別のセンサCaps.oilを任意に有してもよい。
【0152】
第1スキャナSCAN1および第2スキャナSCAN2でのポリマーの単位面積質量プロファイルWs.pol(x)およびW's.pol(x')は、式(19)および式(20)をそれぞれ用いて、単位面積総質量プロファイルと対応する油の単位面積質量プロファイルWs.oil(x)およびW's.oil(x')との間の引き算によりそれぞれ得られる。
【0153】
【数19】
【0154】
【数20】
【0155】
代替的に同等の方法で、スキャナSCAN1およびスキャナSCAN2のうちのいずれか一方は、押し出されたフィルム中に含有されるポリマー単独の単位面積質量を検出可能な1個以上のセンサを備えてもよい。
【0156】
油の単位面積質量を検出するためのセンサCaps.oilおよびフィルムに含まれるポリマーのみを検出するセンサは、例えば、油による赤外線の吸収とポリマーによる赤外線の吸収とをそれぞれ検出することに基づいてもよい。
【0157】
これらの式に基づいて、マッピング関数は、同じ表記X、Xmin、X'、およびX'minを用いて第1実施形態と類似の方法で式(21)により定義される。ここで、Ws.pol.totおよびW's.pol.totは、第1スキャナおよび第2スキャナでのフィルムの全幅における単位面積質量プロファイルWs.pol(x)およびW's.pol(x')の積分をそれぞれ表している。
【0158】
【数21】
【0159】
延伸の表現を得るために、式(7)をこの第2実施形態に適用すると、式(22)が得られる。
【0160】
【数22】
【0161】
第1実施形態と類似の方法では、キャビティの体積が延伸前の油濃度に比例することを考慮することができる。
【0162】
しかしながら、油は可能な限り除去されているため、第2スキャナSCAN2での油の濃度を測定しても、キャビティの分布を計算するために必要な情報は得られない。
【0163】
逆に、前記情報は、第1スキャナSCAN1で測定された油の濃度と、式(21)を用いたマッピング関数とから得られる。
【0164】
式(23)は、延伸前のスキャナSCAN1での油濃度プロファイルCoil(x)を表している。マッピング関数(21)により、油の存在および油の抽出ステップが行われる領域Z2の上流での延伸Str1により生成されるキャビティのサイトの分布についての分布プロファイルC'site(x')を式(24)で表現することができる。
【0165】
【数23】
【0166】
【数24】
【0167】
この量は、第1実施形態でのC'ag(x')に相当する部分を担っている。
【0168】
式(11)は、キャビティを有するが残存油を有しないフィルムの密度プロファイルを表現する式(25)に書き換えることできる。したがって、W'v.bulk(x')が既知の値であるポリマーの密度Wv.polに置き換えられる。
【0169】
【数25】
【0170】
この状況では、比例定数αは、第1実施形態の式(15)と等価な式(26)により表現される。ここで、キャビティサイトの平均濃度C'siteは、式(24)を平均することにより特定される。平均伸びStretch'は、式(22)を平均することにより得られる。延伸されたフィルムの平均密度W'vは、実験室で測定される。
【0171】
【数26】
【0172】
第1実施形態と類似の方法では、第2スキャナSCAN2での密度プロファイルT'(x')および空隙率プロファイルP'(x')は、それぞれ式(27)および式(28)で表される。
【0173】
【数27】
【0174】
【数28】
【0175】
図5は、第2領域Z2の下流の第3方法領域Z3を示しており、第2スキャナSCAN2を通過した後かつ第2延伸Str2の前において、フィルムF2の縁部E1,E2を切断することで除去するステップが示されている。
【0176】
図5は、フィルムの第3領域Z3の下流において、切断されたフィルムを全幅に渡って横方向TDで走査するように構成された第3単位面積質量センサCapm.surfを有する第3スキャナSCAN3示している。
【0177】
第2スキャナの下流において、刃物(図示せず)がフィルムの外縁部E1,E2を切断し、除去する。座標X'min.cutおよびX'max.cutで識別される切断されたフィルムの縁部は、フィルムの縮小された幅に相当する。
【0178】
フィルムの縁部が切断され除去されるため、フィルムの質量流束の保存は、位置X'min.cutと位置X'max.cutとの間にある領域にのみ関係し、式(1)は式(29)に変換される。ここで、X''min、v''、W''s(x'')、およびX''は、それぞれ第3スキャナSCAN3での、フィルムの第1縁部の横方向位置、フィルムの移動速度、単位面積質量プロファイル、およびフィルム上での任意の横方向位置をそれぞれ表している。式中のその他の要素は、上記で定義されている。
【0179】
【数29】
【0180】
切断の後かつ延伸Str2の前でのフィルムの全幅での単位面積質量の積分W's.cutは、式(30)で表される。
【0181】
【数30】
【0182】
第3スキャナでのフィルムの全幅での単位面積質量の積分W''s.totは、式(31)で与えられる。ここで、X''maxは、第3スキャナSCAN3でのフィルムの第2縁部の横方向位置を示している。
【0183】
【数31】
【0184】
第2スキャナSCAN2と第3スキャナSCAN3との間においてマッピング関数を定義することを可能にする式は、式(32)により式(3)から推定することができる。
【0185】
【数32】
【0186】
式(32)により定義されたマッピング関数により、第3スキャナSCAN3での任意の横方向位置x''を、収縮Retrの後の第2スキャナSCAN2での横方向位置x'に対応させることが可能になり、したがって、第3スキャナでの空隙率プロファイルP''(x'')を第2スキャナでの空隙率プロファイルに基づいて定義することが可能になる。
【0187】
新たなキャビティが形成されないため、既存のキャビティとフィルム全体とが同じように変形するため、局所的な空隙率は変化せず、式(33)が得られる。ここで、P''(x'')は、第3スキャナでの横方向位置x''におけるフィルムの空隙率プロファイルである。
【0188】
【数33】
【0189】
空隙率と同様に、局所的な密度は、第一次近似で変化しないため、式(34)により表される。ここで、W''v(x'')は、第3スキャナでの密度プロファイルである。
【0190】
【数34】
【0191】
第3スキャナでの厚みプロファイルT''(x'')は、式(35)を用いて密度プロファイルから推定される。
【0192】
【数35】
【0193】
説明の都合上、延伸領域Z3での溶媒の損失はゼロまたは無視できると考えるが、第1延伸領域Z1で提案したものと類似の方法で、前記損失を考慮に入れることも当然可能である。
【0194】
第3スキャナでのフィルムの厚みプロファイルを特定する方法は、第2スキャナでの厚みプロファイルを特定する方法と同様であるが、切断の後かつ第2延伸Str2の前でのフィルムの縁部の座標X'min.cutおよびX'max.cutを、コンピュータユニットCALCによる使用のために、コンピュータメモリMEMに格納するステップを更に含む。
【0195】
フィルム縁部の切断は、上述の方法により(例えば第1実施形態と組み合わせて、または第2実施形態の領域Z1およびZ2のいずれか一方でのフィルムF2の処理と組み合わせて)当業者であればどのようなものでも考慮され得る。
【0196】
フィルムの製造は、厚みプロファイルT''(x'')を特定するステップを含み、図6に示される方法100に従う。方法100は、移動するフィルムのセグメントの処理にしたがって説明される。
【0197】
実際には、方法100は、異なるスキャナの間でフィルムを搬送する時間を考慮して、連続的に実行される方法である。
【0198】
ステップS110では、ポリマーと、ポリマーに混ぜられた油とがダイDを通って押し出されて、機械方向MDに搬送される延伸されていないフィルムを形成する。
【0199】
ステップS120では、第1スキャナSCAN1に設けられ、監視制御ユニットC/Cにより制御される第1単位面積総質量センサCapm.surfおよび油単位面積質量センサCaps.oilがフィルム上を走査し、フィルムの延伸Str1の前のフィルムの第1横方向単位面積総質量プロファイルWs(x)およびフィルムの油の第1油単位面積質量プロファイルWs.oil(x)をそれぞれ測定し、これらの第1プロファイルの代表データをコンピュータメモリMEMに格納する。
【0200】
ステップS130では、フィルムは、機械方向MDと実質的に直交する横方向TDに延伸され、ステップS135では、油が可能な限り完全にフィルムから抽出される。
【0201】
ステップS130に続くステップS140では、第2スキャナSCAN2に設けられ監視制御ユニットC/Cにより制御される第2単位面積総質量センサCapm.surfおよび油単位面積質量センサセンサCaps.oilとは、フィルム上を走査し、フィルムの延伸Str1の後のフィルムの第2横方向単位面積総質量プロファイルW's(x')および第2油横方向単位面積質量プロファイルW's.oil(x')とをそれぞれ測定し、これらのプロファイルの代表データをコンピュータメモリMEMに格納する。
【0202】
ステップS145では、コンピュータユニットCALCは、(1)フィルムの第1単位面積総質量プロファイルWs(x)から第1油単位面積質量プロファイルWs.oil(x)を引くことで第1スキャナSCAN1でのポリマーのみの横方向単位面積質量プロファイルWs.pol(x)を計算し、(2)フィルムの第2単位面積総質量プロファイルW's(x')からフィルム中の油の第2油単位面積質量プロファイルW's.oil(x')を引くことで第2スキャナSCAN2でのポリマーのみの横方向単位面積質量プロファイルW's.pol(x')を計算する。これらのプロファイルは、コンピュータメモリMEMに格納されている。
【0203】
ステップS150では、コンピュータユニットCALCは、ステップS120およびS140でそれぞれ測定された第1単位面積総質量プロファイルWs(x)および第2単位面積総質量プロファイルW's(x')に基づいて、コンピュータメモリMEMに格納された横方向プロファイルと、製造に用いられる材料およびフィルム全体の特性に関するパラメータとをコンピュータユニットCALCにより処理することによって式(25)を解くことで、延伸Str1のステップS130の後のフィルムの横方向密度プロファイルW'v(x')を計算する。前記パラメータは、既知であるか、従来の方法により測定可能であり、コンピュータメモリMEMに格納されて、コンピュータユニットCALCからアクセス可能である。
【0204】
ステップS150は、ステップS145で得られたポリマー単独の横方向単位面積質量プロファイルWs.pol(x)およびW's.pol(x')と、コンピュータユニットCALCを用いた式(21)の解とに基づいて、マッピング関数を表すテーブルを特定するためのサブステップS150aを含む。
【0205】
ステップS150は、コンピュータユニットCALCと、コンピュータメモリMEMに格納された横方向プロファイルのデータとを用いて、式(25)の右辺の個々の要素を特定するサブステップS150a、S150b、S150c、S150dおよびS150eをさらに含む。ステップS150は、横方向密度プロファイルW'v(x')を適切に計算するサブステップS150fをさらに含む。
【0206】
サブステップS150bは、ステップS145で得られたポリマー単独の横方向単位面積質量プロファイルと、ステップS150aで特定されたマッピング関数と、コンピュータユニットCALCを用いた式(22)の解とから延伸プロファイルStretch'(x')を特定することからなる。
【0207】
サブステップS150cは、ステップS120で単位面積質量センサにより取得された測定値に式(23)を適用することで、フィルムに生成されたキャビティのサイトの分布についての分布プロファイルC'site(x')を特定することからなる。
【0208】
この実施形態では、ポリマーの密度Wv.polが既知の量であるため、第1実施形態の方法のステップS50は、計算上等価なものがない。
【0209】
第2実施形態のステップS150dは、コンピュータユニットCALCがコンピュータメモリMEMに格納されているポリマーの密度Wv.polの値を取り出すことからなる。
【0210】
サブステップS150eは、ステップS150bおよびS150のそれぞれで確立されたプロファイルの平均値Stretch'およびC'siteが導入された式(26)と、フィルムの密度についての値W'vに基づいて比例定数αを特定することからなる。W'vの値は、ポリマーの密度Wv.polが既知である場合にコンピュータユニットCALCを用いて実験室で測定することにより得られる。
【0211】
サブステップS150fは、コンピュータユニットCALCを用いて式(25)により横方向密度プロファイルW'v(x')を特定するために、サブステップS150b、S150c、およびS150eで特定された個々の要素を用いることからなる。
【0212】
ステップS160Aでは、ステップS110からステップS150の結果、第2スキャナでのフィルムの単位面積質量W's.pol(x')およびフィルムの密度W'v(x')が既知であるため、コンピュータユニットCALCを用いて式(29)を解くことによって、横方向厚みプロファイルT'(x')が特定される。
【0213】
また、ステップS160Bでは、必要な情報がステップS110からS150の結果として既知であるため、コンピュータユニットCALCを用いて式(28)を解くことで、空隙率の横方向プロファイルP'(x')が特定される。
【0214】
第1実施形態における第2スキャナSCAN2での厚みプロファイルT'(x')および空隙率プロファイルP'(x')と同じ方法で、第2実施形態の厚みプロファイルT'(x')および空隙率プロファイルP'(x')は、図6に示すように、予想プロファイルからのプロファイルの偏差に応答して、フィルムを形成するための設備の設定の調整FBK1およびFBK2を行うことにより製造方法に作用するように使用されてもよい。
【0215】
ステップS170では、フィルムの縁部が切断され、切断刃の位置が既知であるため、切断後のフィルムの新しい縁部の位置が監視制御ユニットC/CによりメモリMEMに記録される。
【0216】
ステップS180では、フィルムの第2延伸Str2が領域Z3で実行される。
【0217】
ステップS190では、第3スキャナSCAN3に設けられ監視制御ユニットC/Cにより制御される第3単位面積総質量センサCapm.surfは、ステップS120およびS140での方法と類似の方法を用いて、フィルム上を走査し、第2延伸Str2の後のフィルムの第3横方向単位面積総質量プロファイルW''s(x'')を測定し、フィルムの第3単位面積質量の代表データをコンピュータメモリMEMに格納する。
【0218】
ステップS200では、ステップS140およびステップS190でそれぞれ計測された第2横方向単位面積質量プロファイルW's(x')および第3横方向単位面積質量プロファイルW''s(x'')に基づいて、コンピュータユニットCALCを用いた式(32)の解に基づいて、マッピング関数を表すテーブルを特定する。
【0219】
ステップS210では、ステップS150で特定された第2スキャナでの密度プロファイルW'v(x')と、ステップS200で特定されたマッピング関数を表すテーブルに基づいて、コンピュータユニットCALCによる処理を用いて式(34)を解くことで、延伸Str2のステップS180の後のフィルムの横方向密度プロファイルW''v(x'')が特定される。
【0220】
ステップS220では、ステップS160Bで特定された第2スキャナでの空隙率プロファイルP'(x')に基づいて、ステップS200で特定されたマッピング関数に基づいて、コンピュータユニットCALCによる処理を用いて式(33)を解くことで、第3スキャナでのフィルムの横方向空隙率プロファイルP''(x'')が特定される。
【0221】
ステップS230では、第3スキャナでのフィルムの単位面積質量W''s(x'')およびフィルムの密度W''v(x'')がそれぞれステップS190およびS210の結果既知であるため、コンピュータユニットCALCを用いて式(35)を解くことで、横方向厚みプロファイルT''(x'')が特定される。
【0222】
第2スキャナSCAN2での厚みプロファイルT'(x')および空隙率プロファイルP'(x')と同じ方法で、図6に示すように、厚みプロファイルT''(x'')および空隙率プロファイルP''(x'')は、予想厚みプロファイルおよび予想空隙率プロファイルに対するこれらのプロファイルの偏差に応答して、フィルムを形成するための設備の設定の調整FBK3およびFBK4を行うことにより、方法自体に作用するように使用されてもよい。
【0223】
任意に簡略された方法で、特定の状況では、押し出されたフィルム中のオイルの質量含有量Coilが横方向位置に依存しないと考えることからなる近似を行うことができ、これにより、式(19)を式(36)に置き換えることができる。
【0224】
【数36】
【0225】
同様に、領域Z2での抽出ステップの後の残留油含有量は、ゼロと考えることができ、これにより、W's.pol(x')をW's(x')に置き換えることができる。
【0226】
したがって、第2実施形態の変形例として、密度、厚み、および空隙率がセンサCaps.oilを用いることなく得られる変形例が得られる。
【0227】
また、任意には、第1延伸Str1および第1延伸Str1中の油の損失の特徴を明らかにするために、単位面積総質量センサCapm.surfおよび油単位面積質量センサCaps.oilを有する第4スキャナSCAN2’が領域Z1とZ2との間に配置されてもよい。
【0228】
第4スキャナを使用することで、以下の利点が得られる。
【0229】
スキャナSCAN1とSCAN2’との間で式(21)から(28)のセットを適用することで、領域Z2から抽出する方法が領域Z1での方法に続く時間の経過を追加する限り、空隙率プロファイルと厚みプロファイルの第一近似をより迅速に計算することが可能である。
【0230】
これにより、スキャナSCAN2またはスキャナSCAN3の結果が使われる場合より、方法に対するフィードバックを迅速に行うことが可能になる。
【0231】
また、スキャナSCAN2’により、領域Z1での方法の間の油の損失を特定することが可能になり、延伸Str1の量の特徴を明らかにすることが可能になる。
【0232】
この実施形態では、キャビテーション剤は油であるが、本発明は、その材料に限定されない。
【0233】
油以外のキャビテーション剤が使用された場合、当業者は、適合する単位面積質量センサを使用する。
【0234】
上述した実施形態は、一般に「真珠光沢」フィルムと呼ばれるフィルムのカテゴリおよび、バッテリセパレータフィルムまたは「BSFs」に適用されるが、本発明は、例えば、通気性膜または燃料電池膜のような任意の他のタイプの多孔性膜に適用することもできる。
【0235】
当然、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲を超えることなく変更することができる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6