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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】殺真菌剤混合物
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/78 20060101AFI20230912BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230912BHJP
   A01N 43/54 20060101ALI20230912BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20230912BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A01N43/78 A
A01P3/00
A01N43/54 D
A01N25/04 102
D21H27/30 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022522988
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2020078753
(87)【国際公開番号】W WO2021074133
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】19203469.2
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ヴァハトラー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン・ウーア
(72)【発明者】
【氏名】ローラント・シュトップ
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1759674(CN,A)
【文献】特表2009-519307(JP,A)
【文献】特表2008-514599(JP,A)
【文献】特表2008-546676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 43/78
A01P 3/00
A01N 43/54
A01N 25/04
D21H 27/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺生物剤のチアベンダゾール(TBZ)及びピリメタニル(PYM)を20:1~1.1:1の重量比で含む殺真菌剤混合物であって、殺生物性活性剤の全量を基準としたTBZ及びPYMの合計量は、99重量%超であり、殺生物性活性剤と水との合計は、前記混合物を基準として80~99重量%である、殺真菌剤混合物。
【請求項2】
前記殺生物性活性剤を1~60重量%の量で含有する水性懸濁液である、請求項1に記載の殺真菌剤混合物。
【請求項3】
前記殺生物性活性剤及び水と、
- 0.2~5重量%の少なくとも1種の分散剤、
- 0.05~5重量%の増粘剤、及び
- 0~1重量%の消泡剤と
を含有する、請求項1又は2に記載の殺真菌剤混合物。
【請求項4】
前記殺生物性活性剤の平均粒子サイズは、100μm未満である、請求項1~のいずれか一項に記載の殺真菌剤混合物。
【請求項5】
請求項1に記載の殺真菌剤混合物を製造するためのプロセスであって、殺生物剤TBZ及びPYMが混合される、プロセス。
【請求項6】
a)前記殺生物性活性剤のTBZ及びPYM並びに少なくとも1種の界面活性剤及び水と、任意選択的に湿潤剤、消泡剤及び缶内防腐剤とを混合するステップと、
b)a)における混合物を、それぞれのタンク又は他の適切な容器において均質化するステップと、
c)任意選択的に、b)における前記均質化された混合物をビーズミル内でさらに処理するステップと、
d)任意選択的に、前記摩砕ステップ前、中及び/又は後に増粘剤を添加するステップと
を含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項7】
石膏コア及び表面層を含むウォールボードであって、殺生物剤のTBZ及びPYMを20:1~1.1:1の重量比で含有し、殺生物性活性剤の全量を基準としたTBZ及びPYMの合計量は、99重量%超である、ウォールボード。
【請求項8】
前記表面層は、紙又はガラス繊維マットである、請求項に記載のウォールボード。
【請求項9】
前記ウォールボード中の殺生物性活性剤の合計量は、10ppm~3000ppmである、請求項又はに記載のウォールボード。
【請求項10】
前記殺生物性活性剤は、前記ウォールボードの前記石膏コア中に含まれる、請求項のいずれか一項に記載のウォールボード。
【請求項11】
前記殺生物性活性剤は、前記表面層中又は上に含まれる、請求項10のいずれか一項に記載のウォールボード。
【請求項12】
前記殺生物性活性剤は、前記石膏コア及び前記表面層中に含有される、請求項11のいずれか一項に記載のウォールボード。
【請求項13】
請求項12のいずれか一項に記載のウォールボードを製造するためのプロセスであって、前記ウォールボードは、前記ウォールボードの前記製造プロセス中及び/又はその後、請求項1に記載の殺真菌剤混合物を用いて処理される、プロセス。
【請求項14】
請求項1に記載の殺真菌剤混合物は、前記製造プロセス中、
a)前記石膏コアが形成される前の石膏スラリー、及び/又は
b)前記表面層が適用される前の前記ウォールボードの前記石膏コアの表面、及び/又は
c)表面層作製プロセス、及び/又は
d)前記表面層の表面
に添加される、請求項13に記載のウォールボードを製造するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺真菌剤混合物、その製造並びにかび、白かび及び真菌の増殖を抑制又は防止するためにそれを含有するウォールボードに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する真菌は、建築材料、例えばウォールボード上で増殖することが可能なものである。真菌は、広く存在する生物であり、それらが増殖する基材としては、建築材料が挙げられ、なぜなら、そのような材料は、真菌の増殖を支援する物質からできているか又はそれらに取り付けられるからである。真菌の増殖は、一般的に湿分を必要とし、それは、例えば、内部での水漏れ若しくは外部からの漏れ又は高湿度若しくは凝縮の起きる場所により建築材料上で起こり得る。真菌の増殖は、食料供給源も必要とし、それは、この場合、建築材料自体であり得るか、又は建築材料上に存在する埃若しくは他の栄養物質であり得る。
【0003】
建築材料、例えばウォールボード上で増殖することが可能な真菌は、ときに問題となっている。そのような真菌の明白な影響は、それらが増殖する材料の変色であり、多くの場合に不快臭を伴う。真菌は、材料の物理的破壊の原因ともなる。近年では、そのような真菌は、人の健康に関連して一層関心を呼ぶようにもなってきた。各種の健康問題は、そのような真菌が原因であるとされ、最も一般的であるのは、アレルギー反応及びいくつかの場合には人の感染症である。そのような建築材料上で増殖することが可能なある種の真菌は、発癌性であるとも考えられる。それらの真菌は、明らかに、人の健康に対する増大しつつある脅威と考えられ、かび及び白かびの増殖を防止することが重要である。
【0004】
真菌は、少なくとも部分的には、いわゆる「黒かび」、すなわち建築物に対する真菌の侵襲の原因である。ウォールボードは、特に黒かびの影響を受けやすく、それは、いくつかの地域では建築物における深刻な問題となり、また人の健康の問題の領域でも非難されてきた。真菌は、その上でそれらが増殖する材料を容易に変色させるため、居住建造物でも特に問題となる。
【0005】
(特許文献1)では、ワックスエマルションとしての、ベンゾイミダゾール、特にチアベンダゾール(TBZ)をベースとする防腐剤が、そのような微生物、特に真菌の攻撃又は増殖に抵抗性のあるウォールボードを調製するために提案されている。しかしながら、TBZを用いたそのような有用な処理でも、かび及び白かびの攻撃対象となる建築材料に添加することが可能である、微生物に対してより高い抵抗性を有する広域スペクトル抗微生物剤に対する一層増大する要求を満たさないであろうことが見出された。
【0006】
(特許文献2)では、殺生物剤のキャリヤーとしてのカチオン性ラテックスポリマーが開示されており、コーティングとしてウォールボード紙に塗布されるか、又はウォールボードの表面層のための紙を作製するための湿式最終プロセスで使用される。例として挙げられる活性剤は、テブコナゾール、プロピコナゾール又はピリチオン亜鉛のような活性剤である。しかしながら、そのようなラテックスポリマーの欠点は、それらが紙の表面を覆い、したがって、石膏コア中の水分含量が依然として高い、作られたばかりのウォールボードの乾燥プロセス中、水をそれ以上除去することが不可能となる。さらに、カチオン電荷を有するラテックスポリマーは、典型的には、アニオン性の助剤と結合することが困難である。
【0007】
(特許文献3)では、そのような微生物、特に真菌の攻撃又は増殖に抵抗性のあるそれぞれのウォールボードを調製するための、活性剤のアゾキシストロビン及びチアベンダゾールを含有する混合物が提案されている。しかしながら、そのような有用な処理でも、かび及び白かびの攻撃対象となる建築材料に添加することが可能である、微生物に対してより高い抵抗性を有する広域スペクトル抗微生物剤に対する一層増大する要求を満たさないであろうことが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第20060009535号明細書
【文献】国際公開第2008/024509号パンフレット
【文献】国際公開第2006/134347号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、ウォールボード上の微生物の攻撃又は増殖に抵抗するさらに改良された能力を有する殺真菌剤混合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
殺真菌剤混合物
驚くべきことに、殺生物剤のチアベンダゾール(TBZ)及びピリメタニル(PYM)を20:1~1.1:1、特に10:1~1.1:1、好ましくは5:1~1.1:1の重量比で含む殺真菌剤混合物であって、殺生物性活性剤の全量を基準としたTBZ及びPYMの合計量は、99重量%超である、殺真菌剤混合物は、特にウォールボードに適用されたとき、TBZ及びAZOのような公知の混合物と比較して改良された性質を示すことが見出された。
【0011】
抗微生物性活性剤
活性物質のチアベンダゾール(以下では「TBZ」とも呼ばれる)は、以下の式で表され、CAS番号148-79-8として既に公知であり、欧州特許第2499911号明細書では農業用途に又は米国特許出願公開第20060009535号明細書では石膏ボードに使用されている。
チアベンダゾールの式:
【化1】
【0012】
活性物質のピリメタニル(以下では「PYM」とも呼ばれる)は、以下の式で表され、CAS番号53112-28-0として既に公知である。
ピリメタニルの式:
【化2】
【発明を実施するための形態】
【0013】
混合物:
殺真菌剤混合物中の殺生物性活性剤の全量を基準としたTBZ及びPYMの合計量は、好ましくは、99.5重量%超、より好ましくは99.9重量%超である。殺生物性活性剤の合計量の残りの1重量%未満、特に0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満は、好ましくは、殺真菌剤混合物又は配合物自体のための防腐剤(缶内防腐剤とも呼ばれる)である。そのような防腐剤は、好ましくは、以下からなる群から選択される1種又は複数の活性剤である:N-メチル-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-N-メチル-イソチアゾリン-3-オン、ベンズイソチアゾリン-3-オン(ビット)、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール(ブロノポール)、2,2-ジブロモ-3-ニトリル-プロピオンアミド(DBNPA)、1,2-ジブロム-2,4-ジシアノブタン(DBDCB)又はホルムアルデヒド放出化合物、特に1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン(DMDMH)、テトラメチロール-アセチレン-ジウレア(TMAD)、エチレンジオキシジメタノール(EDDM)及び(ベンジルオキシ)メタノール。
【0014】
好ましい実施形態では、殺生物性活性剤の全量を基準としたTBZ及びPYMの合計量は、100重量%である。
【0015】
混合物中の殺生物性活性剤、好ましくはTBZ及びPYMの好ましい平均粒子サイズは、CIPAC MT 187(レーザー回折法)により測定して、100μm未満、好ましくは50μm未満、最も好ましくは30μm未満である。
【0016】
さらなる成分
本発明の殺真菌剤混合物は、好ましくは、1~60重量%、特に11~60重量%、より好ましくは20~60重量%、最も好ましくは30~50重量%の量で殺生物性活性剤を含有する水性懸濁液である。
【0017】
混合物は、20~60重量%の殺生物性活性剤含量を有する水ベースの懸濁液であることが好ましく、以下ではこれを「濃縮物」とも呼ぶ。
【0018】
殺生物性活性剤と水との合計は、好ましくは、80~99重量%、特に89~94重量%、より好ましくは89~94.5重量%である。
【0019】
殺真菌剤混合物は、(例えば、表面上での濡れ、保持率若しくは分布又は表面中への吸収或いはそれ自体の安定性を改良することにより)混合物の性質を改良するための1種又は複数の添加物を含み得る。以下で特定される添加物、好ましくは分散剤、消泡剤、湿潤剤、緩衝性物質及び増粘剤を使用し得、ここで、それぞれの場合に相互に独立して、それらが存在しない場合もある。
【0020】
界面活性剤は、好ましくは、2種の液体間、気体と液体との間又は液体と固体との間での表面張力(すなわち界面張力)を低下させる化合物と理解される。界面活性剤は、例えば、ノニオン性、アニオン性、カチオン性及び両性の界面活性剤であり得る。
【0021】
アニオン性界面活性剤は、例えば、以下である:アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル-アリールスルホン酸塩、アルキルコハク酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、N-アルコイルサルコシン酸塩、アシルタウリン酸塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルファ-オレフィンスルホン酸塩、特にアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、さらにアンモニウム及びトリエタノールアミン塩。アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸塩及びアルキルエーテルカルボン酸塩は、それぞれの場合において、1~10個のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド単位、好ましくは1~3個のエチレンオキシド単位を有することができる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、オレイルコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホコハク酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミンなどが好適である。
【0022】
ノニオン性界面活性剤は、例えば、以下である:アルキルアリールポリグリコールエーテル、例えばポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシル化イソオクチル-、オクチル-若しくはノニル-フェノール、アルキルフェノール又はトリブチルフェニルポリグリコールエーテル、トリスステリルフェニルエーテルエトキシレート、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えばエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル若しくはポリオキシプロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセテート、ソルビトールエステル又はエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドをベースとするブロックコポリマー。
【0023】
さらなる界面活性剤は、例えば、鎖長C10~C20の直鎖状脂肪族カルボン酸のナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩である。ヒドロキシオクタデカンスルホン酸ナトリウム、鎖長C10~C20のヒドロキシ脂肪酸のナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩並びにそれらの硫酸化若しくはアセチル化反応生成物、アルキル硫酸塩、さらにトリエタノールアミン塩、アルキル-(C10~C20)-スルホン酸塩、アルキル-(C10~C20)-アリールスルホン酸塩、ジメチルジアルキル-(C~C18)-塩化アンモニウム、アシル、アルキル、オレイル及びアルキルアリールオキシエチラート並びにそれらの硫酸化反応生成物、鎖長C~C18の脂肪族飽和一価アルコールとのスルホコハク酸のエステルのアルカリ金属塩、鎖長C10~C12の一価の脂肪族アルコールのポリエチレングリコールエーテルとのスルホコハク酸4-エステル(2ナトリウム塩)、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルとのスルホコハク酸4-エステル(2ナトリウム塩)、スルホコハク酸ビス-シクロヘキシルエステル(ナトリウム塩)、リグニノスルホン酸及びそれらのカルシウム、マグネシウム、ナトリウム及びアンモニウム塩、20個のエチレンオキシド基を有するポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸塩、樹脂酸、水素化及び脱水素化樹脂酸並びにそれらのアルカリ金属塩、ドデシル化ジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム並びに最小でも10重量%エチレンオキシド含量を有するエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーである。好ましくは、使用される界面活性剤は、以下である:ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、エトキシル化(3エチレンオキシド基);オレイルアルコールのポリエチレングリコール(4~20)エーテル及びノニルフェノールのポリエテンオキシド(4~14)エーテル。
【0024】
使用される消泡剤は、一般的に、表面活性溶液中にわずかに可溶性の界面活性物質である。好ましい消泡剤は、天然油脂、石油誘導体又はシリコーンオイル由来のものである。好ましい例は、鉱油、植物油又はホワイト油をベースとする、油ベースの消泡剤である。油ベース又は水ベースのエマルションとしてのシリコーンベースの消泡剤、シリコーンオイル、シリコーングリコール、ポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーン及び他の変性シリコーン流体である。同様に好ましいのは、オイル、水溶液又は水ベースのエマルションとしての、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールコポリマーをベースとする、EO/POベースの消泡剤である。
【0025】
湿潤剤としては、例えば、以下が挙げられる:芳香族スルホン酸、例えばリグニン-、フェノール-、ナフタレン-及びジブチルナフテレン-スルホン酸並びにさらに脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキル-及びアルキルアリールスルホン酸塩、アルキル、ラウリルエーテル及び脂肪族アルコール硫酸塩並びに硫酸塩化ヘキサ-、ヘプタ-及びオクタ-デカノール又は脂肪族アルコールグリコールエーテルの塩、スルホン酸塩化ナフタレン及びその誘導体とホルムアルデヒドとの縮合物、ナフタレン若しくはナフタレンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドとの縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシル化イソオクチル-、オクチル-若しくはノニル-フェノール、アルキルフェノール若しくはトリブチルフェニルポリグリコールエーテル、トリスステリルフェニルエーテルエトキシレート、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、脂肪族アルコールエチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシプロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセテート、ソルビタンエステル又はリグノサルファイト廃液。
【0026】
緩衝性物質、緩衝系又はpH調節剤、例えばリン酸塩、弱有機酸、例えばクエン酸又はホウ酸塩である。好ましい緩衝物質は、クエン酸、酢酸、リン酸一カリウム、アンモニア、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸、ホウ酸及びホウ酸塩である。
【0027】
増粘剤、例えば多糖類、キサンタンゴム、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸マグネシウム、ヘテロ多糖類、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム又はポリアクリル酸、好ましくはキサンタンゴムである。
【0028】
本発明の殺真菌剤混合物は、
殺生物性活性剤及び水と、
0.2~5重量%、好ましくは0.2~4重量%の少なくとも1種の分散剤、
0.05~5重量%、好ましくは0.05~1重量%の増粘剤、及び
0~1重量%、好ましくは0~0.5重量%の消泡剤と
を含有することが好ましい。
【0029】
本発明の殺真菌剤混合物は、好ましくは、1重量%未満のカチオン性ポリマーラテックス、特に1重量%未満のポリマーラテックスを含有する。同様に好ましいのは、5重量%未満、特に1重量%未満のワックスを含有する本発明の殺真菌剤混合物である。
【0030】
本発明の混合物は、CIPAC 192法に従って測定して、30 1/sで100~800mPasの動的粘度を有することが好ましい。
【0031】
本発明の殺真菌剤混合物は、有機溶媒をベースとし得、且つ/又は水をベースとし得る。有機溶媒は、取扱いがより容易であるという利点を有するが、特に建築物の屋内で使用する場合、水ベースの組成物が好ましく、なぜなら、大気汚染の可能性がより低く、且つ臭気が少ないからである。好適な水ベースの組成物の一例は、懸濁液、特に20~60重量%の殺生物性活性剤含量を有する懸濁液濃縮物である。
【0032】
一般的に、それらの組成物は、いくつかの配合タイプから選択することができる。
【0033】
好ましいのは、水和剤(WP)であり、これは、殺真菌剤を以下と混合することによって得ることができる:1種又は複数の固体の希釈剤又はキャリヤー、1種又は複数の湿潤剤及び好ましくは1種又は複数の分散剤並びに任意選択的に液体中に容易に分散させるための1種又は複数の懸濁剤。混合物は、その後、摩砕して細粉にすることが好ましい。同様の組成物を粒状化して、水分散性の粒状体(WG)とし得る。
【0034】
同様に好ましいのは、懸濁液濃縮物(SC)であり、これは、本発明による殺真菌剤の微粉化した不溶性の固体子状物質の水性又は非水性懸濁液を含み得る。SCは、本発明による殺真菌剤を適切な媒質中において任意選択的に1種又は複数の分散剤と共にボールミル又はビーズミル摩砕して、化合物の微細粒子懸濁液を作製することにより調製することができる。そのような懸濁液濃縮物の固形分含量は、好ましくは、20~60重量%の範囲である。組成物中に1種又は複数の湿潤剤が含まれ得る。代わりに、本発明による殺真菌剤をドライミル加工し、先に記述したような薬剤を含有する水に添加して、所望の最終製品を製造し得る。
【0035】
本発明の殺真菌性混合物は、相乗効果を有することが好ましい。
【0036】
プロセス:
本発明の別の主題は、殺真菌剤混合物を製造するためのプロセスにおいて、殺生物剤のTBZ及びPYMは、混合されることを特徴とするプロセスである。
【0037】
特に、水性懸濁液、好ましくは懸濁液濃縮物の形態の本発明の殺真菌剤混合物を調製するための方法は、
a)殺生物性活性剤のTBZ及びPYM並びに少なくとも1種の界面活性剤及び水と、任意選択的に湿潤剤、消泡剤及び/又は缶内防腐剤とを混合するステップと、
b)a)における混合物を、好ましくは高速スターラーにより、それぞれのタンク又は他適切な容器において特に剪断力、好ましくは高剪断力で均質化するステップと、
c)任意選択的に、b)におけるそのような均質化された混合物をビーズミル内でさらに処理して、好ましくは所望の粒子サイズにするステップと、
d)任意選択的に、摩砕ステップc)前、中及び/又は後に増粘剤を添加して、好ましくは必要に応じて粘度を調節するステップと
を含む。
【0038】
活性成分(TBZ及びPYM)の粒子サイズがすでに所望の範囲にある場合、追加の摩砕ステップc)は、不要であり、混合及び均質化によって全プロセスを実施することが可能である。
【0039】
ウォールボード:
本発明は、石膏コア及び表面層を含むウォールボードであって、殺生物剤のTBZ及びPYMを20:1~1.1:1、特に10:1~1.1:1、好ましくは5:1~1.1:1の重量比で含有し、殺生物性活性剤の全量を基準としたTBZ及びPYMの合計量は、99重量%超である、ウォールボードにも関する。
【0040】
そのようなウォールボードは、真菌による侵襲から効果的に保護され得る。
【0041】
本発明のウォールボードにおける殺生物剤の好ましい実施形態に関して、先に述べた殺真菌剤混合物についての特徴がこの場合にも当てはまるはずである。同じことは、最終的にウォールボード中に入るであろう、殺真菌剤混合物について述べた他の成分にも当てはまるはずである。
【0042】
本発明によるウォールボードは、ウォールボードの石膏コア中、又は表面層(特に紙である)中若しくは上、又は石膏コア及び表面層中のいずれかに殺生物性活性剤を含有する。
【0043】
ウォールボードは、一般的に、好ましくは0.5~5.5cmの厚みのフラットシートの形状であり、通常、石膏コアと表面層、特に紙又はガラス繊維マットとの複合材料である。ウォールボードは、表面層として紙を有することが好ましく、ここで、コアは、両面(前面及び背面)を紙で被覆される。紙は、一般的に、130~300g/m、好ましくは150~250g/mの重量を有する。
【0044】
ウォールボードは、通常、建築物の内部隔壁を作るための建築材料として使用される。建築物としては、居住建造物、例えば家屋及び集合住宅並びに商業建築物、例えば店舗、倉庫、ホテル及び工場など、さらに公共建築物、例えば大学が挙げられる。ウォールボードは、屋内の天井に使用される材料である天井ボードを含む。ウォールボードは、通常、木製若しくは金属製のフレームに固定されて内壁を形成するか、又は天井のたる木に固定されて屋内天井を形成する。
【0045】
ウォールボードは、例えば、比較的に軽量であり、容易に切断でき、且つペイント又は壁紙で容易に装飾できる表面を有するなど、多くの望ましい性質を有する。しかしながら、ウォールボードは、水に暴露された場合に特別な問題が生じるため、したがって、その使用は、建築物の内部領域に限定される。
【0046】
石膏コアは、水吸収性が極めて高く、濡れると、乾燥させるのに長期間がかかる。湿った石膏コアと、好ましくはコア中に含有されるデンプン及び紙に含有されるセルロースとが組み合わされると、表面層が紙をベースとする場合、真菌が増殖するために理想的な物質となる。事実上、湿った石膏は、真菌にとって都合のよい持続性のある水溜めを提供する一方、紙は、栄養源となる。屋内で使用する場合でも、ウォールボードは、例えば、水漏れのある内部配管若しくは建築物の外部からの雨漏れ又は継続的な高湿度若しくは凝縮水などが原因で水に暴露される可能性がある。そのような水漏れは、残念ながら、珍しいことではなく、その結果、ウォールボード上での真菌の増殖が永続的且つ広く一般的な問題となる。ウォールボードが濡れる別の理由は、十分でない貯蔵及び輸送である。
【0047】
ウォールボードは、慣例的には、焼成石膏及び任意選択的に他の成分の水性スラリーのコアを1種又は複数の表面層、例えばセルロースベースの紙又はガラスマット間に封入することにより製造される。表面層は、異なる物質を含み得る。1つの実施形態では、表面層は、パルプ繊維を含有する。この点では、表面層は、紙、例えば板紙を含み得る。1つの実施形態では、例えば、表面層は、リサイクルされたパルプ繊維、例えばリサイクルされた新聞紙から作られ得る。
【0048】
石膏コア
ウォールボードのコアを作製するために使用される石膏スラリーは、焼成石膏を単独又は各種の他の物質との組合せで含むことが好ましい。1つの実施形態では、例えば、コアは、充填剤物質、石鹸、分散剤及び同様の成分をさらに含み得る。
【0049】
石膏は、典型的には、石膏岩から天然に得られる。通常、石膏岩を摩砕して所望の細かさとしてから焼成にかける。焼成は、石膏岩を加熱して、水分を除去し、硫酸カルシウム半水化物を製造するように実施される。硫酸カルシウム半水化物は、水と混合すると硬化して、コア材料が形成される。
【0050】
石膏コア中に存在し得る他の成分は、以下の製造の部で説明され、なぜなら、そのような成分は、通常、それから石膏コアを形成する石膏スラリー中に既に添加されているからである。
【0051】
石膏コアは、典型的には、3.175mm超の厚みを有する。石膏コアの厚みは、好ましくは、9.5~51mm、特に19~32mm、好ましくは13~25mmであり得る。
【0052】
表面層としての紙
紙の面材は、一般的に、130g/m以上、特に150g/m以上、例えば170g/m以上の坪量であり得る。坪量は、一般的に、300g/m以下、例えば270g/m以下、例えば250g/m以下である。代替的な実施形態では、表面層の紙は、デンプン又はデンプン層を含み得る。別の実施形態では、デンプンを使用して、パルプを含有する表面層とコア材料とを接着させ得る。
【0053】
表面層として紙を使用する場合、紙は、単一層又は多層の面材として使用することができ、ここで、殺真菌剤は、いずれの紙の層中又は上にも含まれ得る。多層の面材の紙の中間又は外側の1~3層に殺生物剤を含ませることが好ましい。
【0054】
量/比率
本発明のウォールボードは、殺生物剤のTBZ及びPYMを20:1~1.1:1、特に10:1~1.1:1、好ましくは5:1~1.1:1の重量比で含有することが好ましく、ここで、殺生物性活性剤の全量を基準としたTBZ及びPYMの合計量は、合計量で99重量%超(コア及び紙において含む)、10~1000ppm、特に20~800ppmである。
【0055】
ウォールボードの石膏コアのみに当てはめて計算すると、ウォールボード中の活性剤の合計量は、10~1000ppm、好ましくは10~800ppm、さらにより好ましくは10~500ppmである。
【0056】
紙の面材のみに当てはめて計算すると、活性剤の合計量は、100~3000ppm、好ましくは200~2000ppmである。
【0057】
代わりに、ウォールボードの石膏コアのみに当てはめると、ウォールボード中の活性剤の合計量は、石膏/スタッコ(CaSO×0.5HO)を基準として10~1000ppm、好ましくは50~1000ppm、さらにより好ましくは80~1000ppm、特に150~1000ppm、好ましくは25~500ppmである。
【0058】
活性剤は、石膏コア中、表面層、特に紙中又はそれら両方の構成部品中に存在し得る。
【0059】
真菌/微生物
本発明による殺真菌性混合物は、一般的に、ネオサルトリア(Neosartorya)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、カエトミウム(Chaetomium)属又はペニシリウム(Penicillium)属のような、ウォールボードに対して有害であると一般に知られている生物を含むすべての種類の真菌及び酵母に対して広域な有効スペクトルを示す。
【0060】
ASTM G21試験、2009で試験した真菌では、本発明のウォールボードは、特に良好な性質を示し、ここで、以下の真菌についてまとめて試験する:アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、オーレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、カエトミウム・グロボスム(Chaetomium globosum)、グリオクラジウム・ビレンス(Gliocladium virens)及びペニシリウム・ピノフィリウム(Penicillium pinophilium)。
【0061】
限定するものではないが、本発明のウォールボードは、他の真菌に対してさらに保護され、特に関心がもたれるのは、以下である:アルテルナリア・アルテルナタ(Alternaria alternata)、アルテルナリア・テヌイシマ(Alternaria tenuissima)、アスペルギルス・ベルシコロル(Aspergillus versicolor)、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)、コニオフォラ・プテアナ(Coniophora puteana)、グロエオフィルム・トラベウム(Gloeophyllum trabeum)、メムニオネラ・エキナタ(Memnionella echinata)、ムコール・インディクス(Mucor indicus)、オリゴポルス・プラセンタ(Oligoporus placenta)、ペニシリウム・シトリヌム(Penicillium citrinum)、ペニシリウム・クリソゲヌム(Penicillium chrysogenum)、ペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)、スクレロホマ・フィチオフィラ(Sclerophoma phytiophila)及びウロクラジウム・カルタルム(Ulocladium chartarum)。
【0062】
ウォールボードを作製するためのプロセス
本発明は、本発明のウォールボードを作製するための方法をなおもさらに提供し、ここで、ウォールボードは、前記ウォールボードの製造プロセス中及び/又はその後、本発明の殺真菌剤混合物又はそれらの活性剤のTBZ及びPYMを個別に用いて且つ混合物中に含有されるか又は別途に添加される任意選択的なさらなる活性剤を用いて処理される。かびから保護されたウォールボードを達成するために、本発明の殺真菌剤混合物を以下に添加することが好ましい:
a)石膏ボードが形成される前の石膏スラリー、及び/又は
b)表面層、特に紙を適用する前のウォールボードの石膏コアの表面、及び/又は
c)表面層作製プロセス、特に紙作製プロセス、好ましくは紙パルプ、及び/又は
d)表面層、特に仕上げられた紙層の表面。
【0063】
本発明の殺真菌性混合物がウォールボードを保護するために使用される場合、ウォールボードは、それぞれの混合物の成分、特に消泡剤、増粘剤、湿潤剤、缶内防腐剤及び界面活性剤もそれらそれぞれの量で含有し得る。
【0064】
本発明のウォールボードを製造するとき、水和された石膏及び他の成分の水性スラリーを2つの表面層、好ましくは紙間に連続的に流し込む。石膏スラリーは、硫酸カルシウム半水化物、硫酸カルシウム硬石膏又はそれらの両方を含む任意の焼成石膏を使用して調製することができる。硫酸カルシウム半水化物は、少なくとも2種の結晶形、アルファ形及びベータ形を取り得る。ベータ又はアルファ硫酸カルシウム半水化物を使用し得る。
【0065】
石膏スラリーは、30~55重量%、好ましくは35~45重量%の水を含有することが好ましい。
【0066】
いくつかの実施形態では、最終製品の1つ又は複数の性質を変化させるために石膏スラリー中に添加物が含まれる。そのような添加物としては、デンプン、消泡剤、界面活性剤、分散剤、ナフタレンスルホン酸塩又はワックスエマルションが挙げられる。
【0067】
いくつかの実施形態では、トリメタリン酸塩化合物を石膏スラリーに添加して製品の強度を向上させ、硬化させた石膏の垂れを抑制することができる。トリメタリン酸塩化合物の濃度は、焼成石膏の重量を基準として約0.1パーセント~約2.0パーセントであり得る。トリメタリン酸塩の例としては、トリメタリン酸のナトリウム、カリウム又はリチウム塩が挙げられる。
【0068】
加えて、石膏スラリーは、任意選択的に、プレゼラチン化デンプン又は酸変性デンプンのようなデンプンを含み得る。プレゼラチン化デンプンを混在させることにより、硬化乾燥させた石膏の注型品の強度が増大し、(例えば、水対焼成石膏の比率を高めた場合のような)高水分条件下で紙が剥離するリスクが最小となる。プレゼラチン化デンプンは、硬化させた石膏組成物を形成するために使用される混合物に対して、硬化石膏スラリーの0.5~10重量パーセントの量で存在するように添加することができる。
【0069】
本発明は、殺真菌剤が、硬化させる前の石膏スラリーに適用される、上述の方法をなおもさらに提供する。
【0070】
本発明は、殺真菌剤がウォールボードの石膏コアの表面に適用される、上述の方法をなおもさらに提供する。
【0071】
本発明は、殺真菌剤がウォールボードの紙の面材中に含まれる、上述の方法をなおもさらに提供する。殺真菌剤は、以下を含む紙の製造プロセスの任意の段階で添加され得る:「ウェットエンド」(例えば、濃厚配合ゴム、希薄配合ゴム、マシンチェスト、ヘッドボックス)若しくは「ドライエンド」(例えば、浸漬法で紙が形成された後)又は当業者に公知の他の表面コーティング技術(例えば、サイズプレス、カレンダースタック、ウォーターボックス、スプレーバー、オフマシンコーター)。
【0072】
本発明は、殺真菌剤が、例えば、浸漬法又は他の表面コーティング技術(例えば、サイズプレス、カレンダースタック、ウォーターボックス、スプレーバー、オフマシンコーター)により、前記紙が形成された後に紙に適用される、上述の方法をなおもさらに提供する。
【0073】
本発明は、仕上げられた又は実質的に仕上げられたウォールボードが殺真菌剤を用いて処理される、上述の方法をならもさらに提供する。
【0074】
本発明は、ウォールボードが、前記ウォールボードの設置前に殺真菌剤を用いて処理される、上述の方法をなおもさらに提供する。
【0075】
本発明は、上述のいずれかの方法により得られるウォールボードをなおもさらに提供する。
【0076】
施用
本発明は、微生物の攻撃及び増殖に対してウォールボードを保護するための、本発明の殺真菌剤混合物の使用にも関する。保護は、先に記載したように実施することができる。
【0077】
本発明のなおもさらなる態様では、本発明の殺真菌剤混合物を用いて紙を処理することにより、前記紙上での真菌の増殖/侵襲を防止及び/又は処置するための方法が提供される。
【0078】
本発明のなおもさらなる態様では、本発明の殺真菌剤混合物を含有する紙製品が提供される。殺真菌剤混合物は、先に述べたような物質を先に述べたように適用することが可能であり、それらの殺真菌剤は、実施例で定義される量で適用され得る。本発明のなおもさらなる態様では、殺真菌剤混合物を用いて建築材料を処理することを含む、前記物質を真菌の増殖/侵襲から防止及び/又は処置するための方法も提供される。
【0079】
殺真菌剤混合物は、先に述べたように建築材料に適用することが可能であり、それらの殺真菌剤は、実施例で定義される量で適用され得る。
【0080】
ここで、以下の実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例
【0081】
以下の実施例は、本発明を説明するために提示され、本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0082】
実施例1:チアベンダゾール(TBZ)とピリメタニル(PYM)との混合物の相乗作用
相乗作用という用語は、複数の抗微生物物質を組み合わせた作用が評価される場合に使用される。2種の異なる活性剤を組み合わせたとき、いくつかの異なる効果が起こり得、それらは、通常、予見することが不可能であり、十分な試験を行うことによって求めなければならない。
- 相加作用
複数の抗微生物物質の組合せでの相加作用とは、組合せの効果が、それらの個々の成分の効果を合計したものに等しいものである。
- 相乗効果
複数の抗微生物物質の組合せでの相乗作用は、組合せの効果が個々の成分の相加作用を上回る場合に存在する。
- 拮抗効果
拮抗作用は、最も有効な個々の物質の効果と比較して、複数の抗微生物物質の組合せでの効果の低下が観察される場合に存在する。
【0083】
本発明による混合物で見出される相乗作用は、以下の数式によって求めることができる(F.C.Kull,P.C.Elisman,H.D.Sylwestrowicz,and P.K.Mayer,Appl.Microbiol.,9,538(1961)を参照されたい):
【数1】
式中、
=所定の効果(すなわち微生物が増殖しない)を達成する活性物質混合物中の成分Aの量であり、
=成分Aを単独で使用したときに微生物の増殖を抑制する成分Aの量であり、
=微生物の増殖を抑制する、活性物質混合物中の成分Bの量であり、
=成分Bを単独で使用したときに微生物の増殖を抑制する成分Bの量である。
【0084】
ある混合物について、Q/Q+Q/Qの合計が1に等しいとき、加成性が示唆され、それが1未満である場合、相乗作用が起き、及び値が1超である場合、拮抗作用が示唆される。
【0085】
チアベンダゾールとピリメタニルとの混合物の相乗作用
抗微生物効果及び活性成分混合物の相乗作用を求めるために、活性物質及びそれらの組合せのそれぞれの最小発育阻止濃度(MIC)を求めた。所定の抗微生物性化合物又は混合物の最小発育阻止濃度は、規定されたインビトロ条件下で所定の微生物(例えば、細菌、糸状菌、酵母)の増殖を抑制する最低濃度(mg/mL(ppm)の単位で表わされる)である。微生物の増殖は、規定された栄養寒天を含むペトリ皿の上で観察する。真菌の場合、実施例のための試験設計に従った典型的な菌株は、表1a)及び1b)に示したような種であるであろう。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
表1a)及び1b)に見られるように、TBZとPYMとを組み合わせることにより、真菌の種及び比率に依存して、顕著な相乗的性能効果(相乗指数が1未満であることにより示される)を達成することができる。
【0089】
実施例2:石膏ボード有効性試験(コアの保護)
試験対象の本発明実施例及び比較例の殺真菌剤混合物を以下のように作製した。
【0090】
それぞれの活性剤を水並びに1重量%の分散剤トリスチリルフェノールエトキシレート(Soprophor(登録商標)S25の形態)、増粘剤としての0.1重量%のキサンタンゴム及び1重量%の湿潤剤のノニオン性EO/PO-コポリマー(Pluronic 127Fの形態)と共にそれぞれの重量比(表2を参照されたく、ここで、重量%は、全混合物を基準としたものである)で混合し、高速ミキサー(IKA Ultra Turrax Labor Dispergator)を用いて均質化して、CIPAC 192法に従って測定した粘度が500~600mPasであり、及びCIPAC 187法に従って測定した殺生物剤の粒子サイズが30μm未満である水性懸濁液を得た。
【0091】
下記の抗真菌性化合物及びそれぞれの配合物を使用した。
- チアベンダゾール(TBZ)
- ピリメタニル(PYM)
- 比較例:唯一の活性剤としてのチアベンダゾール;混合物としてのチアベンダゾール/アゾキシストロビン(AZO)
【0092】
本発明の混合物の抗真菌性能を確かめるために、上で調製した各種の混合物の試験をした。石膏ボード中で直接試験することにより、評価のための現実的且つ実際的なデータが得られる。そのようなデータを得るために、石膏ボードを実験室において作製した。この目的のために、ボード製造のために以下に示される典型的なスラリーレシピを使用する。
【0093】
石膏ボードの試料の調製
石膏ボードの配合:
スラリー成分:
石膏/プラスター(CaSO×0.5HO) 9500g
水道水 5700g
デンプン 285g
【0094】
乾燥成分と湿潤成分とを共に混合することにより、石膏スラリーを形成する。次いで、スラリーを混合して、均一な粘稠度とする。次いで、先に調製したような殺真菌剤混合物を水分含有石膏スラリーのそれぞれに添加し、完全に混合することにより組み入れる(活性剤の合計量(単位、ppm)については、表2を参照されたい)。石膏コアを挟み込むために未処理の坪量約180g/mを有する板紙(真菌なし)を使用し、板を組み立ててから、ハンドシートを乾燥させる。
【0095】
石膏ボード試料の防かび性は、試験法ASTM G21-09に従って評価した。この方法に従い、上述のようにして作製し、適切なサイズに切断した石膏ボードを寒天プレートの上に置き、真菌の胞子を用い、最大4週間の所定の期間をかけて表面を腐敗させる。石膏/プラスター(CaSO×0.5HO)を基準としたそれぞれの活性剤の合計量(単位、ppm)は、表に見ることができる。
【0096】
それぞれの真菌について胞子懸濁液を作製する(胞子濃度、約10/mL)。ASTM G21に含まれる生物としては、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(ATCC 9642)、オーレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)(ATCC 15233)カエトミウム・グロボスム(Chaetomium globosum)(ATCC 6205)、グリオクラジウム・ビレンス(Gliocladium virens)(ATCC 6459)及びペニシリウム・ピノフィリウム(Penicillium pinophilium)(ATCC 11797)(純粋培養としてではあるが、混合接種物としても)が挙げられるが、しかしながら、加えて又は代わりに、石膏ボード中で増殖することが可能であることが知られている任意の他の真菌種を使用し得る。寒天プレート内の増殖培地としては、ミネラル寒天(ASTM G21、2009による)を使用した。接種する前に石膏ボードのハンドシートを切断して、約5×5cmの小片とする。
【0097】
この試験では、それぞれの濃度レベルについて3個の試験片を使用する。それぞれの試料を別々のペトリ皿に入れてから、真菌混合物を用いて播種する。次いで、試料を28~30℃で28日間培養する。接種後約10日目に試料の事前チェックを行い得る。それらの処理の有効度は、真菌の増殖の抑制についての0~4の評価システムを使用して評価され得る。
【0098】
【表3】
【0099】
結果:ASTM G21の試験法の要件に従った28~30℃で4週間の試験後に記録した結果を表2にまとめる。
【0100】
【表4】
【0101】
表2の解釈:
対照試料(石膏コアに殺真菌剤無し)は、真菌の重度の増殖を示す。TBZ単独を用いた比較試験は、試験した濃度範囲では、真菌の増殖を抑制するには不十分である。国際公開第2006/134347号パンフレットによれば、真菌による崩壊に対してウォールボードを保護するために高い適合性を有する、TBZとアゾキシストロビン(AZO)との混合物が開示されている。本発明のTBZ/PYM混合物と比較すると、TBZ/AZO組成物の効果が低く、新規な組合せの有益性が示されている。