(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】香味組成物、及び飲食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/20 20160101AFI20230912BHJP
A23L 27/26 20160101ALI20230912BHJP
A23L 13/40 20230101ALN20230912BHJP
A23J 3/00 20060101ALN20230912BHJP
A23J 3/16 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
A23L27/20 G
A23L27/26
A23L13/40
A23J3/00 502
A23J3/16 501
(21)【出願番号】P 2023035235
(22)【出願日】2023-03-08
【審査請求日】2023-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥野 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】浜本 一洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将来
(72)【発明者】
【氏名】魚住 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】富田 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 貴美子
(72)【発明者】
【氏名】太田 晶
(72)【発明者】
【氏名】志田 政憲
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105639583(CN,A)
【文献】Journal of Food Science,2012年,Vol.77,No.9,pp.C966-C974
【文献】3・9・2 ビーフフレーバー,特許庁公報 周知・慣用技術集(香料)第II部 食品用香料 ,pp.649-664,日本国特許庁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23D
A23J
C11B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロールを含有し、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量に対する2-アセチルピロールの含有量の質量比が0.001以上1000以下で
あり、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量が10ppm以下である、香味組成物。
【請求項2】
メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロールを含有し、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量に対する2-アセチルピロールの含有量の質量比が0.001以上1000以下で
あり、2-アセチルピロールの含有量が10ppm以下である、香味組成物。
【請求項3】
メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロールを含有し、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量に対する2-アセチルピロールの含有量の質量比が0.001以上1000以下で
あり、
さらに2-メチルブタナールを含有し、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量に対する2-メチルブタナールの含有量の質量比が0.1以上2000以下である、香味組成物。
【請求項4】
メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロールを含有し、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量に対する2-アセチルピロールの含有量の質量比が0.001以上1000以下で
あり、
さらに3-メチルブタナールを含有し、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量に対する3-メチルブタナールの含有量の質量比が0.1以上2000以下である、香味組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の香味組成物
を配合する工程を含む、飲食品
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向け、世界各国では真に持続可能な食料生産システムの開発に対する関心が高まっており、中でも注目されているのが、「代替肉」や「培養肉」である。ここ最近、フレキシタリアン、ベジタリアン、ビーガン等の多様なライフスタイルに対応した、植物由来の材料を原料とする代替肉や、各種調味料の市場が成長を続けている。
【0003】
特にビーガン市場の成長は著しく、動物性原料を用いずに畜肉感を付与することが強く望まれており、とりわけ畜肉感を付与した調味料は、風味や調理感を容易に付与することができるため、今後ますます需要が高まっていくと予想される。
【0004】
これらの代替肉等を含めた各種飲食品の嗜好性を高めるための調味料として、香味油が知られている。
香味油は、風味油とも呼ばれ、油脂に所望の風味(ネギ、ガーリック等)を付与したものがよく知られているが、十分な鶏皮を焼いた風味が付与されたものはこれまで得られていなかった。
【0005】
他方、動物性原料(畜肉、畜肉由来成分、動物性油脂、乳成分、卵等)を用いずに畜肉風味を付与する技術として、(A)ピロール類、(B)ピリジン類、(C)ピラジン類、(D)オキサゾール類、(E)オキサゾリン類、(F)アミン類、(G)チアゾール類、(H)チアゾリン類、(I)チアゾリジン類、(J)チオール類、(K)スルフィド類、(L)チオエーテル類、(M)含硫カルボン酸類、(N)キノキサリン類、及び(O)フラノン類、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の香料を含有することを特徴とするミート系フレーバー組成物(特許文献1)が提案されているが、鶏皮を焼いた風味を付与するまでには至っていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、鶏皮を焼いた風味を付与した香味組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の香気成分を複数組み合わせて含有させた組成物は鶏皮を焼いた風味を付与することができることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の香味組成物は、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロールを含有し、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量に対する2-アセチルピロールの含有量の質量比が0.001以上1000以下であることを特徴としている。
本発明の飲食品は、前記香味組成物を含有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鶏皮を焼いた風味を付与した香味組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の具体的な実施形態を説明する。
<香味組成物>
本発明の香味組成物は、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロールを含有する。
本発明の香味組成物の形態は特に限定されないが、油脂を含有する油脂組成物であることが好ましく、風味が付与された油脂である、風味油(香味油とも呼ばれる。)であることがより好ましい。また、本発明の香味組成物は、調味料であり得る。
【0011】
本発明者らは、種々の香気成分について検討した結果、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドとともに、2-アセチルピロールを配合することで、鶏皮を焼いた風味を付与できることが分かった。
【0012】
本発明において「鶏皮を焼いた風味」とは、鶏皮を直火で炙ったような風味を意味する。
このような風味の有無や程度は、実施例に示した方法で特定される。
【0013】
本発明の香味組成物は、良好な鶏臭さをも有し得る。
本発明において「鶏臭さ」とは、獣臭さと油臭さを連想する風味を意味する。
このような風味の有無や程度は、実施例に示した方法で特定される。
【0014】
本発明の香味組成物は、良好な畜肉感をも有し得る。
本発明において「畜肉感」とは、加熱(焼き、炒め、グリル)した肉類の風味を意味する。
このような風味の有無や程度は、実施例に示した方法で特定される。
【0015】
以下、本発明の香味組成物の詳細について説明する。
(メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド)
本発明の香味組成物は、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド(化学式:C6H8OS2、CAS番号:65505-17-1)を含有する。メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドは、2-メチル-3-(メチルジチオ)フラン等とも称される。
【0016】
本発明の香味組成物中のメチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量は、得ようとする風味の程度等に応じて調整できる。
本発明の香味組成物中のメチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量の下限値は、鶏皮を焼いた風味及び畜肉感を十分に付与する観点から、0.001ppb以上が好ましく、0.01ppb以上がより好ましく、0.1ppb以上がさらに好ましく、1ppb以上が特に好ましい。
本発明の香味組成物中のメチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量の上限値は、香味組成物の力価とコストの観点から、100ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、10ppm以下がさらに好ましく、1ppm以下が特に好ましい。
【0017】
本発明におけるメチル2-メチル-3-フリルジスルフィドは、合成品でもよく、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドをその一部に含む飲食品や抽出物等に由来するものであってもよい。
【0018】
香味組成物中のメチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量は、ガスクロマトグラフィーのSPME(固相マイクロ抽出)を用いて、標準添加法と呼ばれる以下の方法で特定する。
まず、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの濃度が0.01ppm、0.1ppm、0.5ppm、1ppm、10ppm、50ppmになるように試料(香味組成物)に添加することにより標準試料を作製する。これらを香味組成物と併せてガスクロマトグラフィーに供し、イオン質量160(分子イオン)のピーク面積をカウントし、検量線を作成する。また、リテンションタイムも記録する。得られた検量線より、香味組成物中のメチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量を特定する。
【0019】
(2-アセチルピロール)
本発明の香味組成物は、2-アセチルピロール(化学式:C6H7NO、CAS番号:1072-83-9)を含有する。2-アセチルピロールは、1-(1H-ピロール-2-イル)エタノン等とも称される。
【0020】
本発明の香味組成物中の2-アセチルピロールの含有量は、得ようとする風味の程度等に応じて調整できる。
本発明の香味組成物中の2-アセチルピロールの含有量の下限値は、鶏皮を焼いた風味及び畜肉感を十分に付与する観点から、0.01ppb以上が好ましく、0.1ppb以上がより好ましく、1ppb以上がさらに好ましく、10ppb以上が特に好ましく、100ppb以上が殊更好ましい。
本発明の香味組成物中の2-アセチルピロールの含有量の上限値は、香味組成物に焦げ臭が生じにくい観点から、100ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、10ppm以下がさらに好ましく、1ppm以下が特に好ましい。焦げ臭が生じると、鶏皮を焼いた風味及び畜肉感を感じにくい傾向にある。
【0021】
本発明における2-アセチルピロールは、合成品でもよく、2-アセチルピロールをその一部に含む飲食品や抽出物等に由来するものであってもよい。
【0022】
香味組成物中の2-アセチルピロールの含有量は、ガスクロマトグラフィーのSPME(固相マイクロ抽出)を用いて、標準添加法と呼ばれる以下の方法で特定する。
まず、2-アセチルピロールの濃度が0.01ppm、0.1ppm、0.5ppm、1ppm、10ppm、50ppmになるように試料(香味組成物)に添加することにより作製する。これらを香味組成物と併せてガスクロマトグラフィーに供し、イオン質量109.1(分子イオン)のピーク面積をカウントし、検量線を作成する。また、リテンションタイムも記録する。得られた検量線より、香味組成物中の2-アセチルピロールの含有量を特定する。
【0023】
(2-メチルブタナール)
本発明の香味組成物は、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロールに加えて、さらに2-メチルブタナール(化学式:C5H10O、CAS番号:96-17-3)を含有することが好ましい。2-メチルブタナールは、2-エチルプロピオンアルデヒド等とも称される。
【0024】
本発明において、2-メチルブタナールは、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロールによって得られる鶏皮を焼いた風味を損なわずに、さらに鶏臭さを向上させることができる。
【0025】
本発明の香味組成物中の2-メチルブタナールの含有量は、得ようとする風味の程度等に応じて調整できる。
本発明の香味組成物中の2-メチルブタナールの含有量の下限値は、十分な鶏臭さを得やすい観点から、0.1ppb以上が好ましく、1ppb以上がより好ましく、10ppb以上がさらに好ましく、100ppb以上が特に好ましい。
本発明の香味組成物中の2-メチルブタナールの含有量の上限値は、風味のバランスとコストの観点から、300ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましく、50ppm以下がさらに好ましく、10ppm以下が特に好ましい。
【0026】
本発明における2-メチルブタナールは、合成品でもよく、2-メチルブタナールをその一部に含む飲食品や抽出物等に由来するものであってもよい。
【0027】
香味組成物中の2-メチルブタナールの含有量は、ガスクロマトグラフィーのSPME(固相マイクロ抽出)を用いて、標準添加法と呼ばれる以下の方法で特定する。
まず、2-メチルブタナールの濃度が0.01ppm、0.1ppm、0.5ppm、1ppm、10ppm、50ppmになるように試料(香味組成物)に添加することにより標準試料を作製する。これらを香味組成物と併せてガスクロマトグラフィーに供し、イオン質量57(分子イオン)のピーク面積をカウントし、検量線を作成する。また、リテンションタイムも記録する。得られた検量線より、香味組成物中の2-メチルブタナールの含有量を特定する。
【0028】
(3-メチルブタナール)
本発明の香味組成物は、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロールに加えて、さらに3-メチルブタナール(化学式:C5H10O、CAS番号:590-86-3)を含有することが好ましい。3-メチルブタナールは、イソバレルアルデヒド等とも称される。
【0029】
本発明において、3-メチルブタナールは、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロールによって得られる鶏皮を焼いた風味を損なわずに、さらに鶏臭さを向上させることができる。
【0030】
本発明の香味組成物中の3-メチルブタナールの含有量は、得ようとする風味の程度等に応じて調整できる。
本発明の香味組成物中の3-メチルブタナールの含有量の下限値は、十分な鶏臭さを得やすい観点から、0.1ppb以上が好ましく、1ppb以上がより好ましく、10ppb以上がさらに好ましく、100ppb以上が特に好ましい。
本発明の香味組成物中の3-メチルブタナールの含有量の上限値は、風味のバランスとコストの観点から、300ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましく、50ppm以下がさらに好ましく、10ppm以下が特に好ましい。
【0031】
本発明における3-メチルブタナールは、合成品でもよく、3-メチルブタナールをその一部に含む飲食品や抽出物等に由来するものであってもよい。
【0032】
香味組成物中の3-メチルブタナールの含有量は、ガスクロマトグラフィーのSPME(固相マイクロ抽出)を用いて、標準添加法と呼ばれる以下の方法で特定する。
まず、3-メチルブタナールの濃度が0.01ppm、0.1ppm、0.5ppm、1ppm、10ppm、50ppmになるように試料(香味組成物)に添加することにより標準試料を作製する。これらを香味組成物と併せてガスクロマトグラフィーに供し、イオン質量44(分子イオン)のピーク面積をカウントし、検量線を作成する。また、リテンションタイムも記録する。得られた検量線より、香味組成物中の3-メチルブタナールの含有量を特定する。
【0033】
(5-ヒドロキシメチルフルフラール)
本発明の香味組成物は、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロールに加えて、さらに5-ヒドロキシメチルフルフラール(化学式:C6H6O3、CAS番号:67-47-0)を含有することが好ましい。5-ヒドロキシメチルフルフラールは、5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒド等とも称される。
【0034】
本発明において、5-ヒドロキシメチルフルフラールは、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロールによって得られる鶏皮を焼いた風味を損なわずに、さらに畜肉感を向上させることができる。
【0035】
本発明の香味組成物中の5-ヒドロキシメチルフルフラールの含有量は、得ようとする風味の程度等に応じて調整できる。
本発明の香味組成物中の5-ヒドロキシメチルフルフラールの含有量の下限値は、畜肉感を十分に付与する観点から、0.001ppb以上が好ましく、0.01ppb以上がより好ましく、0.1ppb以上がさらに好ましく、1ppb以上が特に好ましく、10ppb以上が殊更好ましい。
本発明の香味組成物中の5-ヒドロキシメチルフルフラールの含有量の上限値は、香味組成物に焦げ臭が生じにくい観点から、10ppm以下が好ましく、5ppm以下がより好ましく、1ppm以下がさらに好ましく、0.1ppm以下が特に好ましい。焦げ臭が生じると、鶏皮を焼いた風味及び畜肉感を感じにくい傾向にある。
【0036】
本発明における5-ヒドロキシメチルフルフラールは、合成品でもよく、5-ヒドロキシメチルフルフラールをその一部に含む飲食品や抽出物等に由来するものであってもよい。
【0037】
香味組成物中の5-ヒドロキシメチルフルフラールの含有量は、ガスクロマトグラフィーのSPME(固相マイクロ抽出)を用いて、標準添加法と呼ばれる以下の方法で特定する。
まず、5-ヒドロキシメチルフルフラールの濃度が0.01ppm、0.1ppm、0.5ppm、1ppm、10ppm、50ppmになるように試料(香味組成物)に添加することにより標準試料を作製する。これらを香味組成物と併せてガスクロマトグラフィーに供し、イオン質量97.0(分子イオン)のピーク面積をカウントし、検量線を作成する。また、リテンションタイムも記録する。得られた検量線より、香味組成物中の5-ヒドロキシメチルフルフラールの含有量を特定する。
【0038】
(各香気成分の比率)
本発明の香味組成物は、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロールを含有することを必須とし、それ以外の組成は特に限定されない。
本発明の香味組成物は、上記に加え、本発明の効果をより発揮しやすいという観点から、(i) 2-メチルブタナール、(ii) 3-メチルブタナール、及び(iii) 5-ヒドロキシメチルフルフラールからなる群から選択される1以上の成分を含んでいてもよい。本発明の香味組成物は、(i)、(ii)、(iii)のうち、好ましくはいずれか1種、より好ましくは2種、さらに好ましくは全てを含む。
【0039】
本発明の香味組成物における各成分の比率は、下記のうちのいずれか又は全てを満たしていてもよい。本発明の効果を発揮しやすいという観点から、各成分は下記のような比率が好ましい。
【0040】
メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量に対する2-アセチルピロールの含有量の質量比(2-アセチルピロール/メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド)の下限値は、0.001以上であり、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、1以上がさらに好ましく、3以上が特に好ましい。当該質量比(2-アセチルピロール/メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド)の上限値は、1000以下であり、500以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下がさらに好ましい。
【0041】
メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量に対する2-メチルブタナールの含有量の質量比(2-メチルブタナール/メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド)の下限値は、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1以上がさらに好ましく、10以上が特に好ましい。当該質量比(2-メチルブタナール/メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド)の上限値は、2000以下が好ましく、1000以下がより好ましく、500以下がさらに好ましく、200以下が特に好ましい。
【0042】
メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量に対する3-メチルブタナールの含有量の質量比(3-メチルブタナール/メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド)の下限値は、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1以上がさらに好ましく、10以上が特に好ましい。当該質量比(3-メチルブタナール/メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド)の上限値は、2000以下が好ましく、1000以下がより好ましく、500以下がさらに好ましく、200以下が特に好ましい。
【0043】
メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量に対する5-ヒドロキシメチルフルフラールの含有量の質量比(5-ヒドロキシメチルフルフラール/メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド)の下限値は、0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましく、0.1以上が特に好ましい。当該質量比(5-ヒドロキシメチルフルフラール/メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド)の上限値は、250以下が好ましく、200以下がより好ましく、100以下がさらに好ましく、50以下が特に好ましく、10以下が殊更好ましい。
【0044】
2-アセチルピロールの含有量に対する2-メチルブタナールの含有量の質量比(2-メチルブタナール/2-アセチルピロール)の下限値は、0.0005以上が好ましく、0.001以上がより好ましく、0.005以上がさらに好ましく、0.01以上が特に好ましい。当該質量比(2-メチルブタナール/2-アセチルピロール)の上限値は、500以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましい。
【0045】
2-アセチルピロールの含有量に対する3-メチルブタナールの含有量の質量比(3-メチルブタナール/2-アセチルピロール)の下限値は、0.0005以上が好ましく、0.001以上がより好ましく、0.005以上がさらに好ましく、0.01以上が特に好ましい。当該質量比(3-メチルブタナール/2-アセチルピロール)の上限値は、500以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましい。
【0046】
2-アセチルピロールの含有量に対する5-ヒドロキシメチルフルフラールの含有量の質量比(5-ヒドロキシメチルフルフラール/2-アセチルピロール)の下限値は、0.0005以上が好ましく、0.001以上がより好ましく、0.005以上がさらに好ましく、0.01以上が特に好ましい。当該質量比(5-ヒドロキシメチルフルフラール/2-アセチルピロール)の上限値は、10以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましく、0.1以下が特に好ましい。
【0047】
2-メチルブタナールの含有量に対する3-メチルブタナールの含有量の質量比(3-メチルブタナール/2-メチルブタナール)の下限値は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましく、0.5以上が特に好ましい。当該質量比(3-メチルブタナール/2-メチルブタナール)の上限値は、500以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましい。
【0048】
2-メチルブタナールの含有量に対する5-ヒドロキシメチルフルフラールの含有量の質量比(5-ヒドロキシメチルフルフラール/2-メチルブタナール)の下限値は、0.0001以上が好ましく、0.0005以上がより好ましく、0.001以上がさらに好ましく、0.005以上が特に好ましい。当該質量比(5-ヒドロキシメチルフルフラール/2-メチルブタナール)の上限値は、1以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.1以下がさらに好ましく、0.05以下が特に好ましい。
【0049】
3-メチルブタナールの含有量に対する5-ヒドロキシメチルフルフラールの含有量の質量比(5-ヒドロキシメチルフルフラール/3-メチルブタナール)の下限値は、0.0001以上が好ましく、0.0005以上がより好ましく、0.001以上がさらに好ましく、0.005以上が特に好ましい。当該質量比(5-ヒドロキシメチルフルフラール/3-メチルブタナール)の上限値は、1以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.1以下がさらに好ましく、0.05以下が特に好ましい。
【0050】
(その他の成分)
本発明において、香味組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、飲食品等に配合される公知の食品及び食品添加物等をその他の成分として配合できる。
本発明において、その他の成分は、特に限定されず、動物性原料(畜肉、畜肉由来成分、動物性油脂、乳成分、卵等)を配合してもよいが、本発明によれば、動物性原料が全く配合されていなくても畜肉感を有し得ることから、持続可能な食料生産システムに適応する観点では動物性原料はなるべく少ないことが好ましく、動物性原料が全く配合されていないことが特に好ましい。
【0051】
その他の成分として配合できる食品としては、例えば、油脂、糖類、穀類及びその加工品、野菜、果物、香辛料、酵母、酵母エキス、蛋白加水分解物、香味食用油(ねぎ油、ラー油、花椒油、オニオンオイル、ガーリックオイル、しょうがオイル、マッシュルームオイル、ポルチーニ茸オイル、トリュフオイル、メンマオイル、ワサビオイル、ゆずオイル、焦がししょうゆオイル等)、ヴァージンココナッツオイル、ヴァージンオリーブオイル、ヴァージンコーンオイル、燻製油等が挙げられる。
その他の成分として配合できる食品添加物としては、例えば、乳化剤、酸化防止剤、シリコーン、色素、香料、ビタミン類、pH調整剤等が挙げられる。
【0052】
本発明の香味組成物では、さらに油脂を含有することが好ましい。
油脂としては、通常、食用油脂が用いられる。このような油脂としては、植物性油脂、動物性油脂、合成油脂、加工油脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせた調合油として用いてもよい。
【0053】
植物性油脂としては、菜種油、ヤシ油、パーム油、ヒマワリ油、大豆油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、高オレイン酸ヒマワリ油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米ぬか油、小麦胚芽油、カカオ脂、パーム核油及び藻類油等が挙げられる。
【0054】
動物性油脂としては、魚油(マグロ、サバ、イワシ、カツオ、ニシン等に由来する油脂)、豚脂、牛脂、乳脂、羊脂、鶏油等が挙げられる。
【0055】
合成油脂としては、中鎖脂肪酸油、ジアシルグリセロール等が挙げられる。
【0056】
加工油脂としては、上記の油脂に対して所望の処理を施した油脂であってもよい。このような処理としては、分別(例えば分別乳脂低融点部、パームスーパーオレイン等の分別油)、硬化、エステル交換反応等が挙げられる。油脂に対しては、1又は2以上の処理を施してもよい。
【0057】
本発明の香味組成物は、前記したような香気成分が油脂に対して十分な風味を付与する観点から、油脂の融点は50℃以下が好ましい。その中でも常温(25℃)で液状の油脂を好ましく使用できる。
【0058】
本発明の香味組成物における油溶性成分の含有量としては、特に限定されないが、十分な流動性を有する観点から、香味組成物の全量を基準として、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。ここで油溶性成分とは、油脂と、油脂に溶解する成分のことである。
【0059】
上記のような食品及び食品添加物の種類や量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。このような食品及び食品添加物を本発明の香味組成物とともに配合することで、例えば、風味や色調の調整効果、酸化劣化の抑制効果、機能の向上効果等を発揮し得る。
【0060】
本発明の香味組成物に含まれる水分量は、日持ち向上の観点から、香味組成物の全量を基準として、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましく、0.50質量%以下が特に好ましい。なお、香味組成物に含まれる水分としては、香味組成物に配合する水だけでなく、香味組成物に配合する水以外の原料から移行される水分も含まれる。
なお、本発明における香味組成物の水分は、「基準油脂分析試験法2.1.3.4-2013 水分(カールフィッシャー法)」により測定することができる。
【0061】
本発明の効果を発揮しやすいという観点から、本発明の香味組成物は、上記2成分(メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロール)からなり、その他の成分を含まなくともよい。
【0062】
<香味組成物の製造方法>
本発明の香味組成物は、各成分を、撹拌機等を用いて適宜混合撹拌することで得られる。成分の混合順序等は特に限定されない。
【0063】
上記のとおり、上記香気成分(すなわち、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド、2-アセチルピロール、2-メチルブタナール、3-メチルブタナール、5-ヒドロキシメチルフルフラール)は、合成品や、各成分をその一部に含む飲食品や抽出物等として香味組成物に配合し得る。合成品としては、市販の試薬や香料等が挙げられる。
【0064】
また、上記香気成分としては、各々の該成分のうち一部、又は全てを含む食品及び/又は食品添加物を、該成分のうち一部、又は全てをそのまま含む香味組成物の原料として使用してもよい。このような食品及び/又は食品添加物としては、例えば、畜肉類、糖類、穀類、野菜(ネギ、タマネギ、セロリ、ニンジン等)、果物(バナナ、レモン、メロン、イチゴ、ココナッツ等)、しょうゆ、みそ、スパイス類(アニス、オールスパイス、キャラウェイ、クミン、クローブ、コリアンダー、シナモン、スターアニス、セージ、タイム、ナツメグ、バジル、パプリカ、ピメント、ピンクペッパー、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、メース、レモングラス、ローズヒップ、ローズマリー、ローレル等)、香味食用油(ねぎ油、ラー油、花椒油、オニオンオイル、ガーリックオイル、しょうがオイル、マッシュルームオイル、ポルチーニ茸オイル、トリュフオイル、メンマオイル、ワサビオイル、ゆずオイル、焦がししょうゆオイル等)、ヴァージンココナッツオイル、ヴァージンオリーブオイル、ヴァージンコーンオイル、燻液、燻製油、酵母、酵母エキス、蛋白加水分解物、ペプチド、アミノ酸、核酸、ビタミン類、ミネラル類等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
上記食品は、未加工の状態でそのまま使用してもよく、加工(加熱等)してから使用してもよい。例えば、上記食品を油脂中に添加後、加熱及びろ過等をすることで、本発明の香味組成物を得ることができる。
【0065】
<香味組成物の用途>
本発明の香味組成物の用途は特に限定されず、従来知られる風味油や動物性油脂の代替物等として使用したり、任意の調味料(従来知られる風味油等)と組み合わせて使用したりすることができる。
【0066】
本発明の香味組成物は、任意の飲食品に配合でき、該組成物を配合された飲食品等に対し、良好な畜肉感を付与できる。
したがって、本発明は、本発明の香味組成物を含む飲食品(好ましくは、肉代替食品)も包含する。
【0067】
本発明の香味組成物を配合し得る飲食品等としては、特に限定されないが、各種加熱調理食品(炒め物(チャーハン、ピラフ、焼きそば等)、焼き物(焼き鳥、つくね、そぼろ、焼肉、餃子、ハンバーグ、グラタン等)、茹で物(うどん、そば、ラーメン、パスタ等)、蒸し物(シューマイ、中華まん等)、フライ食品(コロッケ、から揚げ、天ぷら等)等)、サラダチキン、カレー、製菓、製パン、スープ(白湯スープ等)、ソース(パスタソース等)等が挙げられる。
また、本発明の香味組成物は、そのまま飲食品に使用することもできるが、香味組成物を各種形態の油脂(フライ油、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、食用油脂、香味食用油、水中油型乳化物(濃縮乳、ホイップクリーム、マヨネーズ等)、粉末油脂、ドレッシング等)に配合した後、飲食品の原料としても使用することができる。
【0068】
本発明により製造される香味組成物の飲食品への配合量としては、飲食品に畜肉感を十分に付与する観点から、飲食品の全量を基準として、0.10質量%以上が好ましく、0.50質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましく、3.0質量%以上が特に好ましく、5質量%以上が殊更好ましい。本発明により製造される香味組成物の飲食品への配合量の上限は特に限定されないが、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下が特に好ましく、20質量%以下が殊更好ましい。
【0069】
本発明によれば、上述のとおり、動物性原料が全く配合されていなくとも、良好な鶏皮を焼いた風味を付与することができる。
したがって、本発明によれば、例えば、肉代替食品に対して良好な鶏皮を焼いた風味を付与することができる。
さらに、本発明によれば、肉代替食品に対して良好な鶏皮を焼いた風味を付与し得るうえ、材料由来の臭い(大豆臭等)を抑制し得る。
【0070】
本発明において「肉代替食品」とは、植物性原料(豆類(大豆、エンドウ豆、ヒヨコマメ、ソラマメ等)、米、穀物等)を主原料として用いた任意の食品を包含する。
本発明における肉代替食品は、本発明の効果を発揮しやすいという観点から、動物性原料(畜肉、畜肉由来成分、動物性油脂、乳成分、卵等)を全く含まないものが好ましい。
【0071】
肉代替食品としては、豆腐ハンバーグ、植物蛋白加工食品(焼き鳥様食品、つくね様食品、そぼろ様食品、サラダチキン様食品、ハンバーグ様食品、シューマイ様食品、餃子様食品、中華まん様食品、フィレ肉様食品(焼肉、炒め物)、パスタソース、キーマカレー)等が挙げられる。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
<試験1:香味組成物の作製及び評価>
以下の方法で香味組成物を作製し、その風味を評価した。
【0074】
(香味組成物の作製)
表1A、1Bの「油脂」の項に示す油脂に対し、各成分を「香味組成物中の含有量」の項に示す濃度(単位:ppm)となるように混合及び撹拌し、実施例及び比較例の香味組成物を作製した。なお、実施例15,16,17の香味組成物は、菜種油に対して、酵母エキス、蛋白加水分解物、穀類加工品を添加後加熱し、固形分を除去したものであり、「香味組成物中の含有量」の項に示す濃度は、当該香味組成物をガスクロマトグラフィーのSPME(固相マイクロ抽出)を用いて特定した値を示している。
【0075】
表1A、1B中、「メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドに対する質量比」とは、各香味組成物中のメチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量に対する、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド以外で表1A、1Bに示す各香気成分の含有量の質量比(各香気成分/メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド)を示す。
「2-アセチルピロールに対する質量比」とは、各香味組成物中の2-アセチルピロール含有量に対する、2-アセチルピロール以外で表1A、1Bに示す各香気成分の含有量の質量比(各香気成分/2-アセチルピロール)を示す。
「2-メチルブタナールに対する質量比」とは、各香味組成物中の2-メチルブタナール含有量に対する、2-メチルブタナール以外で表1A、1Bに示す各香気成分の含有量の質量比(各香気成分/2-メチルブタナール)を示す。
「3-メチルブタナールに対する質量比」とは、各香味組成物中の3-メチルブタナール含有量に対する、3-メチルブタナール以外で表1A、1Bに示す各香気成分の含有量の質量比(各香気成分/3-メチルブタナール)を示す。
「5-ヒドロキシメチルフルフラールに対する質量比」とは、各香味組成物中の5-ヒドロキシメチルフルフラールの含有量に対する、5-ヒドロキシメチルフルフラール以外で表1A、1Bに示す各香気成分の含有量の質量比(各香気成分/5-ヒドロキシメチルフルフラール)を示す。
【0076】
(香味組成物の評価)
得られた香味組成物を用いて、鶏皮を焼いた風味、鶏臭さ、及び畜肉感のそれぞれについて、以下に基づき官能評価を行った。その結果を表1A、1B中の「評価」の項に示す。
【0077】
なお、官能評価は、下記のように選抜されたパネルによって行った。
パネル候補に対し、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された12名をパネルとして選抜した。
また、評価を実施するにあたり、パネル全体で討議し、各評価項目の特性に対してすり合わせを行って、各パネルが共通認識を持つようにした。また、官能評価におけるパネルの偏りを排除し、評価の精度を高めるために、サンプルの試験区番号や内容はパネルに知らせず、ランダムに提示した。
【0078】
[官能評価]
表1A、1Bに記載の香味組成物についてパネル12名で官能評価を行い、喫食時の「鶏皮を焼いた風味」、「鶏臭さ」、「畜肉感」の強度を、各項目において比較例1より強く感じる人数として求め、以下の基準で評価した。なお、〇以上を合格とし、×は発明の課題を解決しないと判断した。その結果を表1A、1B中の「評価」の項に示す。
【0079】
(評価基準)鶏皮を焼いた風味
◎++:12名中、10名以上が強く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が強く感じると回答した。
◎:12名中、8名が強く感じると回答した。
○:12名中、7名が強く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が強く感じると回答した。
【0080】
(評価基準)鶏臭さ
◎++:12名中、10名以上が強く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が強く感じると回答した。
◎:12名中、8名が強く感じると回答した。
○:12名中、7名が強く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が強く感じると回答した。
【0081】
(評価基準)畜肉感
◎+++:12名中、11名以上が強く感じると回答した。
◎++:12名中、10名が強く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が強く感じると回答した。
◎:12名中、8名が強く感じると回答した。
○:12名中、7名が強く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が強く感じると回答した。
【0082】
【0083】
【0084】
<試験2:鶏つくねの作製及び評価>
以下の手順で鶏つくねを作製した。使用した鶏つくね用香味組成物の配合を表2に示す。
1.実施例15、比較例1、比較例2の内いずれかの香味組成物20質量%、菜種油30質量%、及びパーム分別軟質部(ヨウ素価56)50質量%を混合し、鶏つくね用香味組成物を調製する。
2.粉末状大豆蛋白20g、メチルセルロース7g、食塩2g、菜種油16gを混合し、そこに氷水155gを加えて、カッターミキサーで十分に攪拌し、大豆カードを作製する。
3.粉末状大豆蛋白12g、水20g、醤油4g、生姜2gを混合することで粉末状大豆蛋白を水で戻す。
4.玉ねぎ(冷凍ダイスカット)24g、加工澱粉6gを混合する。
5.パン粉8g、塩0.8g、黒コショウ0.2gを混合する。
6.5に3,4を混合する。
7.6に1を16g混合する。
8.7に2を107g加え、粘りが出るまでよく捏ね合わせて生地を作製した。
9.生地を50gずつに成形し、195℃に設定したコンベクションオーブンで15分焼成した。焼成後、半分にカットしたものを試験に供した。
【0085】
[官能評価]
作製した鶏つくねについてパネル12名で官能評価を行い、喫食時の「鶏皮を焼いた風味」、「鶏臭さ」、「畜肉感」、「大豆臭のマスキング」の強度を、各項目において比較例3より強く感じる(大豆臭のマスキングにおいては、大豆臭を弱く感じる)人数として求め、以下の基準で評価した。その結果を表2中の「評価」の項に示す。
【0086】
(評価基準)鶏皮を焼いた風味
◎++:12名中、10名以上が強く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が強く感じると回答した。
◎:12名中、8名が強く感じると回答した。
○:12名中、7名が強く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が強く感じると回答した。
【0087】
(評価基準)鶏臭さ
◎++:12名中、10名以上が強く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が強く感じると回答した。
◎:12名中、8名が強く感じると回答した。
○:12名中、7名が強く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が強く感じると回答した。
【0088】
(評価基準)畜肉感
◎+++:12名中、11名以上が強く感じると回答した。
◎++:12名中、10名が強く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が強く感じると回答した。
◎:12名中、8名が強く感じると回答した。
○:12名中、7名が強く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が強く感じると回答した。
【0089】
(評価基準)大豆臭のマスキング
◎++:12名中、10名以上が大豆臭を弱く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が大豆臭を弱く感じると回答した。
◎:12名中、8名が大豆臭を弱く感じると回答した。
○:12名中、7名が大豆臭を弱く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が大豆臭を弱く感じると回答した。
【0090】
【0091】
<試験3:大豆そぼろの作製及び評価>
実施例16、比較例1、比較例2の内いずれかの香味組成物20質量%、及び菜種油35質量%、パーム油45質量%を混合し、大豆そぼろ用香味組成物を調製した。
お湯で戻した粒状大豆たん白50gを大豆そぼろ用香味組成物7gとともに中火で1分炒めた。次いで酒5g、醤油5g、みりん5gを加えてさらに4分炒め、試験に供した。
【0092】
[官能評価]
作製した大豆そぼろについてパネル12名で官能評価を行い、喫食時の「鶏皮を焼いた風味」、「鶏臭さ」、「畜肉感」、「大豆臭のマスキング」の強度を、各項目において比較例5より強く感じる(大豆臭のマスキングにおいては、大豆臭を弱く感じる)人数として求め、以下の基準で評価した。その結果を表3中の「評価」の項に示す。
【0093】
(評価基準)鶏皮を焼いた風味
◎++:12名中、10名以上が強く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が強く感じると回答した。
◎:12名中、8名が強く感じると回答した。
○:12名中、7名が強く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が強く感じると回答した。
【0094】
(評価基準)鶏臭さ
◎++:12名中、10名以上が強く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が強く感じると回答した。
◎:12名中、8名が強く感じると回答した。
○:12名中、7名が強く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が強く感じると回答した。
【0095】
(評価基準)畜肉感
◎+++:12名中、11名以上が強く感じると回答した。
◎++:12名中、10名が強く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が強く感じると回答した。
◎:12名中、8名が強く感じると回答した。
○:12名中、7名が強く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が強く感じると回答した。
【0096】
(評価基準)大豆臭のマスキング
◎++:12名中、10名以上が大豆臭を弱く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が大豆臭を弱く感じると回答した。
◎:12名中、8名が大豆臭を弱く感じると回答した。
○:12名中、7名が大豆臭を弱く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が大豆臭を弱く感じると回答した。
【0097】
【0098】
<試験4:大豆ミート焼き鳥の作製及び評価>
実施例15、実施例16、実施例17、比較例1、比較例2の内いずれかの香味組成物30質量%、及び菜種油45質量%、パーム分別軟質部のエステル交換油脂(ヨウ素価56)25質量%を混合し、大豆ミート焼き鳥用香味組成物を調製した。
大豆ミート焼き鳥用香味組成物2.5gをフライパンで加熱し、お湯で戻した粒状大豆たん白(大豆ミート)を串に刺してフライパンで両面加熱した。次いで、醤油3.2g、水飴2.2g、みりん1.7g、酒1.2gを混合したたれ8.3gを刷毛で大豆ミートに塗りながら焼き、たれにとろみがつくまで煮詰め、試験に供した。
【0099】
[官能評価]
作製した大豆ミート焼き鳥についてパネル12名で官能評価を行い、喫食時の「鶏皮を焼いた風味」、「鶏臭さ」、「畜肉感」、「大豆臭のマスキング」の強度を、各項目において比較例7より強く感じる(大豆臭のマスキングにおいては、大豆臭を弱く感じる)人数として求め、以下の基準で評価した。その結果を表4中の「評価」の項に示す。
【0100】
(評価基準)鶏皮を焼いた風味
◎++:12名中、10名以上が強く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が強く感じると回答した。
◎:12名中、8名が強く感じると回答した。
○:12名中、7名が強く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が強く感じると回答した。
【0101】
(評価基準)鶏臭さ
◎++:12名中、10名以上が強く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が強く感じると回答した。
◎:12名中、8名が強く感じると回答した。
○:12名中、7名が強く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が強く感じると回答した。
【0102】
(評価基準)畜肉感
◎+++:12名中、11名以上が強く感じると回答した。
◎++:12名中、10名が強く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が強く感じると回答した。
◎:12名中、8名が強く感じると回答した。
○:12名中、7名が強く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が強く感じると回答した。
【0103】
(評価基準)大豆臭のマスキング
◎++:12名中、10名以上が大豆臭を弱く感じると回答した。
◎+:12名中、9名が大豆臭を弱く感じると回答した。
◎:12名中、8名が大豆臭を弱く感じると回答した。
○:12名中、7名が大豆臭を弱く感じると回答した。
×:12名中、6名以下が大豆臭を弱く感じると回答した。
【0104】
【要約】
【課題】鶏皮を焼いた風味を付与した香味組成物を提供する。
【解決手段】本発明の香味組成物は、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド及び2-アセチルピロールを含有し、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィドの含有量に対する2-アセチルピロールの含有量の質量比が0.001以上1000以下である。
【選択図】なし