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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20230912BHJP
【FI】
G06Q50/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023042068
(22)【出願日】2023-03-16
【審査請求日】2023-03-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399009642
【氏名又は名称】JFE条鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100192924
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 裕充
(72)【発明者】
【氏名】小林 日登志
【審査官】速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-247954(JP,A)
【文献】特開2023-006881(JP,A)
【文献】特許第7201954(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介して1以上の収集端末と通信可能であり、
前記制御部によって、
前記収集端末から、製造された製品のロットごとの製造実績情報を取得することと、
二酸化炭素排出係数を示す情報を取得することと、
前記製造実績情報と前記二酸化炭素排出係数とから、ロットごとの二酸化炭素排出量を算出することと、
前記製造実績情報と算出された前記二酸化炭素排出量とをロット番号に関連付けて前記記憶部に記憶することと、
を含み、
前記製品は、1以上の部品を含む完成品であり、
部品ごとの二酸化炭素排出量から、前記完成品の二酸化炭素排出量を算出し、
算出された二酸化炭素排出量を示す情報を、前記完成品を発注したユーザのユーザ端末に、製品証明情報として送信することを含む、情報処理方法。
【請求項2】
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介して1以上の収集端末と通信可能であり、
前記制御部によって、
前記収集端末から、製造された製品のロットごとの製造実績情報を取得することと、
二酸化炭素排出係数を示す情報を取得することと、
前記製造実績情報と前記二酸化炭素排出係数とから、ロットごとの二酸化炭素排出量を算出することと、
前記製造実績情報と算出された前記二酸化炭素排出量とをロット番号に関連付けて前記記憶部に記憶することと、
を含み、
前記製品の発注において指定された二酸化炭素排出希望量と、前記製品の製造における二酸化炭素排出量とを比較することと、
前記二酸化炭素排出量が前記二酸化炭素排出希望量より大きいと判定すると、前記二酸化炭素排出量と前記二酸化炭素排出希望量との差に相当する二酸化炭素クレジットを前記記憶部から読み出して、ロット番号に関連付けて前記記憶部に記憶することと、
を含む情報処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理方法において、
前記情報処理装置はブロックチェーンネットワークのノードであり、
前記製造実績情報と前記二酸化炭素排出量とをブロックチェーンに登録することを含む、情報処理方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の情報処理方法において、
前記製造実績情報は実績製造時間を示す情報を含む、情報処理方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の情報処理方法において、
本年度の二酸化炭素排出係数が未確定であると判定すると、電力会社によって公開された目標値を前記本年度の二酸化炭素排出係数として取得することを含む、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造物の再生可能エネルギー認証を管理する管理システムが知られている(例えば特許文献1参照)。管理システムは、入力された再生可能エネルギーの供給率と再生可能エネルギーに由来する原材料及び部品の投入量とを用いて、製造される製造物に再生可能エネルギー認証を付与する数及び率を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-167067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の管理システムは、電気エネルギーの二酸化炭素排出量を算出することができない。電気エネルギーの二酸化炭素排出量は、発電プロセスの違いから発電事業者によって異なり、また、集計年度によっても異なる。このため、従来の管理システムは、製品による環境への潜在的影響を評価する点において改善の余地がある。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、製品による環境への潜在的影響を適切に評価することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る情報処理方法は、
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介して1以上の収集端末と通信可能であり、
前記制御部によって、
前記収集端末から、製造された製品のロットごとの製造実績情報を取得することと、
二酸化炭素排出係数を示す情報を取得することと、
前記製造実績情報と前記二酸化炭素排出係数とから、ロットごとの二酸化炭素排出量を算出することと、
前記製造実績情報と算出された前記二酸化炭素排出量とをロット番号に関連付けて前記記憶部に記憶することと、
を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、製品による環境への潜在的影響を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の情報処理システムの概略図である。
図2】情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図3】収集端末の構成を示すブロック図である。
図4】ユーザ端末の構成を示すブロック図である。
図5】ロット情報DB(database)のデータ構造を示す図である。
図6】ロット情報の表示画面を示す図である。
図7】情報処理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態の情報処理システムSの概略図である。情報処理装置1は、ネットワークNWを介して1以上の収集端末2と互いに通信可能である。図1において収集端末2は4つ示されるが、代替例として収集端末2の数は任意である。情報処理装置1は、ネットワークNWを介して1以上のユーザ端末3と互いに通信可能である。図1においてユーザ端末3は3つ示されるが、ユーザ端末3の数は任意である。ネットワークNWは、例えば移動体通信網、インターネット又は固定通信網を含む。
【0010】
図1では説明の簡便のため、情報処理装置1は1つだけ示される。しかし、情報処理装置1の数はこれに限られない。例えば、情報処理装置1が実行する処理は、分散配置された複数の情報処理装置1によって実行されてよい。複数の情報処理装置1は、Webサーバ、AP(Application)サーバ、DB(Database)サーバ等を含んでよい。
【0011】
情報処理装置1は、クラウドコンピューティングシステム又はその他のコンピューティングシステムに属するサーバなどのコンピュータである。情報処理装置1は例えば、事業者専用の施設、又はデータセンタを含む共用の施設に設置されてよい。
【0012】
図2において、情報処理装置1の内部構成が詳細に説明される。情報処理装置1は、制御部11と通信部12と記憶部13とを含む。情報処理装置1の各構成要素は互いに通信可能に接続される。
【0013】
制御部11は例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)を含む1つ以上の汎用プロセッサを含む。制御部11は、特定の処理に特化した1つ以上の専用プロセッサを含んでよい。制御部11は、プロセッサを含む代わりに、1つ以上の専用回路を含んでもよい。専用回路は例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってよい。制御部11は、ECU(Electronic Control Unit)を含んでもよい。制御部11は通信部12を制御して、任意の情報を送信及び受信する。
【0014】
通信部12は、ネットワークNWに接続するための、1つ以上の有線又は無線LAN(Local Area Network)規格に対応する通信モジュールを含む。通信部12は、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、又は5G(5th Generation)を含む1つ以上の移動体通信規格に対応するモジュールを含んでよい。通信部12は、Bluetooth(登録商標)、AirDrop(登録商標)、IrDA、ZigBee(登録商標)、Felica(登録商標)、又はRFIDを含む1つ以上の近距離通信の規格又は仕様に対応する通信モジュール等を含んでよい。通信部12は、ネットワークNWを介して任意の情報を送信及び受信する。
【0015】
記憶部13は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせが含まれるが、これらに限られない。半導体メモリは、例えば、RAM又はROMである。RAMは、例えば、SRAM又はDRAMである。ROMは、例えば、EEPROMである。記憶部13は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部13は、制御部11によって分析又は処理された結果の情報を記憶してよい。記憶部13は、情報処理装置1の動作又は制御に関する各種情報等を記憶してよい。記憶部13は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び組み込みソフトウェア等を記憶してよい。記憶部13は情報処理装置1の外部に設けられて、情報処理装置1からアクセスされてよい。記憶部13は、ロット情報DBを含む。
【0016】
図1に示される収集端末2は、工場等の施設に設けられて、担当者によって操作される。収集端末2は、担当者の入力操作を受け付けて、施設で製造された製品の製造実績情報を収集する。ここでの製品は、自動車又はビル等を組み立てるための部品である。代替例として製品は完成品であってよい。収集端末2は、PCなどの汎用機器、又は専用機器であってよい。「PC」は、personal computerの略語である。代替例として収集端末2は、例えば、スマートフォン、携帯電話機、ウェアラブル機器、若しくはタブレットなどのモバイル機器であってよい。
【0017】
図3において収集端末2の内部構成が詳細に説明される。
【0018】
収集端末2は、制御部21と通信部22と記憶部23と撮像部24と表示部25と入力部26と出力部27とを含む。収集端末2の各構成要素は、互いに通信可能に接続される。
【0019】
制御部21と通信部22と記憶部23とのハードウェア構成についての説明は、制御部11と通信部12と記憶部13とのハードウェア構成についての説明と同一であってよい。ここでの説明は省略される。
【0020】
撮像部24はカメラを含み、画像を撮像する。画像は静止画又は動画のいずれであってもよい。撮像部24は、画像を生成し、生成した画像を記憶部23に記録してよい。撮像部24は任意である。
【0021】
表示部25は例えば、ディスプレイである。ディスプレイは、例えば、LCD又は有機ELディスプレイである。「LCD」は、liquid crystal displayの略語である。「EL」は、electro luminescenceの略語である。表示部25は、収集端末2に備えられる代わりに、外部の出力機器として収集端末2に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。「USB」は、Universal Serial Busの略語である。「HDMI(登録商標)」は、High-Definition Multimedia Interfaceの略語である。表示部25はタッチパネルであってよい。
【0022】
入力部26は例えば、マイク、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、又は、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーンである。入力部26は、収集端末2の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付ける。入力部26は、収集端末2に備えられる代わりに、外部の入力機器として収集端末2に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。
【0023】
出力部27は、情報を出力してユーザに通知する1つ以上の出力インタフェースを含む。例えば、出力部27に含まれる出力インタフェースは、情報を音声で出力するスピーカ等であるが、これらに限られない。
【0024】
図1に示されるユーザ端末3は、製品を発注したユーザによって操作される。ユーザは、例えば、製品をもとに自動車又はビル等を組み立てる企業の担当者である。ユーザ端末3は、ユーザの入力操作を受け付けて、製品のロット情報を情報処理装置1から取得する。
【0025】
図4においてユーザ端末3の内部構成が説明される。
【0026】
ユーザ端末3は、制御部31と通信部32と記憶部33と撮像部34と表示部35と入力部36と出力部37とを含む。ユーザ端末3の構成要素は、互いに通信可能に接続される。
【0027】
ユーザ端末3の制御部31と通信部32と記憶部33と撮像部34と表示部35と入力部36と出力部37とのハードウェア構成についての説明は、収集端末2の制御部21と通信部22と記憶部23と撮像部24と表示部25と入力部26と出力部27とのハードウェア構成についての説明と同一であってよい。ここでの説明は省略される。
【0028】
以下、図5以降を参照して、本実施形態での情報処理方法が詳細に説明される。本実施形態では、収集端末2が設けられた施設において任意の製品が製造される。製品は例えば次のうちいずれかの鋼材製品であってよい。
・異形棒鋼
・線材
・平鋼
・形鋼
・H形鋼
・角鋼
・丸鋼
・厚板
・熱延板
・薄板
【0029】
鋼材製品は電気炉で製造される。電気炉は、電極に高電圧をかけて電気アークを発生させる。電気炉は、アーク熱で例えば鉄スクラップを溶解する。溶解によって生成された溶鋼は、成分調整、鋳造及び圧延等の過程を経た後、鋼材製品へ加工される。
【0030】
収集端末2の制御部21は、ロット番号ごとの製造実績情報の入力を、入力部26を介して受け付ける。製造実績情報はミルシート情報とエネルギー情報とを含む。エネルギー情報はミルシート情報に含まれてもよい。ミルシート情報は例えば次のうち少なくとも1つを含む。
・ロット番号
・実績製造時間
・製造日時
・製品規格
・製品重量
・製品サイズ
・製品本数
・製品の化学成分(例:C,Si,Mn,P,S,Cu,Sn,Cr,Mo,Ni,Al,B,Ti,Nb)
・製品強度
【0031】
エネルギー情報は例えば次のうち少なくとも1つを含む。
・製造における非化石エネルギー使用量
・製造における化石エネルギー使用量
【0032】
制御部21は、製造実績情報を情報処理装置1に送信する。図5に示されるように情報処理装置1の制御部11は、製品のロットごとの製造実績情報を取得して、ロット番号に関連付けて記憶部13に記憶する。
【0033】
本実施形態の電気炉で使用される電力の少なくとも一部は、再生可能エネルギー等の非化石電源から発電された、二酸化炭素を排出しない電力であってよい。ここでの再生可能エネルギーとは、次に掲げるエネルギー源をいう。
一 太陽光
二 風力
三 水力
四 地熱
五 バイオマス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるもの(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品を除く。)をいう。)
六 上記一乃至五のエネルギー源のほか、原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品以外のエネルギー源のうち、電気のエネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの
【0034】
非化石電源には、再生可能エネルギーだけでなく、例えば原子力も含まれる。非化石電源から発電された電気には次の2つが含まれる。
1.電気そのものが有する価値(kWh価値等)
2.非化石としての価値
本実施形態では、上記2つの価値のうち「2.非化石としての価値」を、非化石価値と称する。電気炉では、非化石価値で定義された電力が使用される。ここでの非化石価値は、日本国の「エネルギー供給構造高度化法」上の非化石電源比率の算定時に非化石電源として計上される価値である。非化石価値は、定められた目標値を達成するために、新規の電力小売事業者によって購入される価値である。
【0035】
非化石価値によって定義された電力は、例えば次の3つの手段のうち少なくとも1つを利用して入手及び証明可能である。
(1)非化石証書
(2)グリーン電力証書
(3)Jクレジット
【0036】
非化石証書とは、再生可能エネルギーで発電された電気の環境価値を証書のかたちにしたものである。
【0037】
グリーン電力証書とは、再生可能エネルギーで発電された電力の環境価値の証書である。グリーン電力証書にはシリアルナンバーが付されるので、唯一無二である。グリーン電力証書には、発電電力量と発電期間と発電方法と証書の発行日との情報が含まれる。グリーン電力証書には更に、認証機関名と証書発行事業者名との情報が含まれる。
【0038】
Jクレジットとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減量と吸収量とを「クレジット」として国が認証する制度である。
【0039】
追加例として又は代替例として、非化石価値で定義された電力は、次の手段によっても入手及び証明可能である。
(4)自社が保有する太陽光発電設備を用いた発電
【0040】
代替例として、電気炉で使用される電力は、非化石価値で定義された電力ではなく、ゼロエミ価値で定義された電力であってよい。ここでのゼロエミ価値とは、日本国の「地球温暖化対策の推進に関する法律」(以下、温対法)上の二酸化炭素排出係数がゼロである価値である。具体的にはゼロエミ価値は、電気の小売事業者が調整後排出係数の算定時に、調達した非化石証書の電力量に「全国平均係数」を乗じることで算出した二酸化炭素排出量を実二酸化炭素排出量から減算することができる価値である。製造業等の電力購入者が温対法に基づいて二酸化炭素排出量を国に報告する際には、ゼロエミ価値を持つ電力の二酸化炭素排出係数はゼロとなる。例えば、ゼロエミ価値で定義された電力は、既存の電力販売会社が水力等の再生可能エネルギー又は原子力で発電した電力であってよい。ゼロエミ価値で定義された電力は、次の手段によって入手及び証明可能である。
(5)電力小売との契約(例:東京電力エナジーパートナー(登録商標)社によって提供される「アクアプレミアム」(登録商標)及び「アクアエナジー100」)
【0041】
上記で例示された手段(1)乃至(5)のそれぞれにつき、電気炉で使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証書等の情報は、唯一無二の証明情報として証明書発行事業者又は認証機関等から取得される。上記の手段(1)乃至(5)は一例であり、電気炉で使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する他の任意の手段によって代替可能である。
【0042】
本実施形態において、電気炉で使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることの証明方法には、上記(1)乃至(5)のいずれかによって証明情報を入手して証明する方法がある。証明情報は、オークションにおいて又は仲介業者から購入されてよい。証明情報は、情報処理装置1の記憶部13に記憶される。
【0043】
追加例として証明情報は、任意のメーカーによって証明された非化石残渣情報を含んでよい。
【0044】
図5に示されるように情報処理装置1の制御部11は、ロットごとに、ロット番号に関連付けて製造実績情報と証明情報とを記憶部13に記憶する。
【0045】
制御部11は、収集端末2等の任意の端末から二酸化炭素排出係数を示す情報を取得する。二酸化炭素排出係数は、製造に使用されるエネルギーごとに設定される。例えば本年度の二酸化炭素排出係数は、本年度の終了後に公開される場合がある。この場合に制御部11は、本年度の二酸化炭素排出係数が未確定であると判定し、電力会社によって公開された目標値を本年度の二酸化炭素排出係数として暫定的に取得してよい。制御部11は、本年度の二酸化炭素排出係数を次の手順により取得可能である。
手順1.前年度の二酸化炭素排出係数と非化石電力比率とから、前年度ベースでの非化石電力の使用可能量を推定し、本年度の製造での予定電力計画へ推定結果を反映する。代替例として二酸化炭素排出係数又は非化石電力比率には、任意の自治体又は電力会社によって公開されるエネルギー環境計画書に記載の、本年度の目標値が採用されてよい。
手順2.顧客からの要望に応じて、本年度の非化石電力を充当する。
手順3.本年度の二酸化炭素排出係数の確定値が公開されたとき、非化石電力の充当分と、非化石電力以外の残りの電力の充当分との実績に確定値を反映する。
【0046】
図5に示されるように制御部11は、二酸化炭素排出係数をロットごとに記憶する。
【0047】
情報処理装置1の制御部11は、ロットごとに、製造実績情報と二酸化炭素排出係数とから二酸化炭素排出量を算出する。ここでの製造実績情報は実績製造時間を示す情報と、製造に使用されたエネルギーを示すエネルギー情報とを含む。実績製造時間とエネルギー情報と二酸化炭素排出係数と二酸化炭素排出量とのそれぞれの単位は次の通りである。
・実績製造時間:h
・エネルギー情報:kW
・二酸化炭素排出係数:kg/kWh
・二酸化炭素排出量:kg
図5に示されるように制御部11は、ロット番号に関連付けて、算出された二酸化炭素排出量を記憶する。
【0048】
追加例として又は代替例として、ロットの製造において使用された電力の全量が非化石電力由来である場合には、制御部11は、二酸化炭素排出係数をゼロとして算出する。制御部11は、使用された電力に化石電力由来のものと非化石電力由来のものとが混合していると判定すると、各電力会社が発表する当年度の二酸化炭素排出係数の確定値を使用する。確定値の公表前である場合には、制御部11は、二酸化炭素排出係数の計画値を使用し、二酸化炭素排出係数の確定後に、記憶部13において計画値を確定値に置き換える。
【0049】
追加例として制御部11は、ロットごとに算出された二酸化炭素排出量[kg]を相殺又は低減することができる。具体的には制御部11は、算出された二酸化炭素排出量と、製品の発注において指定された二酸化炭素排出希望量とを比較する。制御部11は、二酸化炭素排出量が二酸化炭素排出希望量よりも大きいと判定すると、二酸化炭素排出量と二酸化炭素排出希望量との差に相当する二酸化炭素クレジットを記憶部13から読み出す。制御部11は、読み出された二酸化炭素クレジットを、記憶部13においてロット番号に関連付けて記憶することができる。
【0050】
記憶部13のロット情報DBにおいてロット番号に関連付けて記憶された情報(例えば製造実績情報、証明情報、二酸化炭素排出係数を示す情報、及び二酸化炭素排出量を示す情報)はロット情報と称される。ロット情報は、DPP(Digital Product Passport:デジタルプロダクトパスポート)情報と称されてもよい。製品には、ロット情報へのハイパーリンクを含む二次元コードが塗料で印字されてよいし、二次元コードのシールが添付されてよい。代替例として二次元コードは、メカニカル刻印、レーザ刻印等の手法で製品にマーキングされてよい。二次元コードは、紙面又は電子のロット証明書に記載されてよい。
【0051】
ユーザ端末3のユーザは、製品(ここでは1以上の部品)から自動車等の完成品を組み立てる組立工場の担当者である。ユーザ端末3のユーザは、部品ごとのロット情報を閲覧するために、ユーザ端末3を用いて部品ごとの二次元コードを読み取る。ユーザ端末3は二次元コードに含まれるハイパーリンクにアクセスし、情報処理装置1からロット情報を取得する。図6に示されるように、ユーザ端末3の制御部31は、取得されたロット情報を表示部35に表示する。図6においてはロット情報としてロット番号と二酸化炭素排出係数とが示される。追加例として又は代替例として、表示部35にはロット情報として次の情報の少なくとも1つが表示されてよい。
・ロット番号
・実績製造時間
・製造日時
・製品規格
・製品重量
・製品サイズ
・製品本数
・製品の化学成分(例:C,Si,Mn,P,S,Cu,Sn,Cr,Mo,Ni,Al,B,Ti,Nb)
・製品強度
・非化石エネルギー使用量
・化石エネルギー使用量
・二酸化炭素排出量(Jクレジット相殺前)
・Jクレジット番号
・二酸化炭素排出量(Jクレジット相殺後)
ユーザ端末3のユーザは、部品ごとの二酸化炭素排出量を算出(例えば合算)することで、完成品単位の確定された二酸化炭素排出量を把握することができる。算出処理は、制御部11によって実行されてよい。この場合、制御部11は、算出された二酸化炭素排出量を示す情報を、完成品を発注したユーザのユーザ端末3に、製品証明情報として送信する。
【0052】
追加例として又は代替例として情報処理装置1は、分散台帳(Hyperledger)型のブロックチェーンネットワークのノードであってよい。ブロックチェーンネットワークは、インターネットに接続されたパブリックなネットワークであってよいし、プライベートなネットワークであってもよい。制御部11は、ロット情報をブロックチェーンに登録する。ロット情報は、レコードごとに、ブロックチェーンの1つのブロックに記憶されてよい。
【0053】
図7を参照して、情報処理装置1の制御部11による情報処理方法が説明される。
【0054】
ステップS1にて制御部11は、任意のタイミングで収集端末2から、製造された製品のロットごとの製造実績情報を取得する。制御部11は、二酸化炭素排出係数を示す情報を取得する。ステップS2にて制御部11は、製造実績情報と二酸化炭素排出係数とから、ロットごとの二酸化炭素排出量を算出する。ステップS3にて制御部11は、製造実績情報と算出された二酸化炭素排出量とをロット番号に関連付けて記憶部13に記憶する。ステップS4にて制御部11は、製造実績情報と二酸化炭素排出量とを含むロット情報を作成し、ユーザ端末3に送信する。
【0055】
以上述べたように本実施形態によれば、情報処理装置1の制御部11は、収集端末2から、製造された製品のロットごとの製造実績情報を取得することと、二酸化炭素排出係数を示す情報を取得することと、製造実績情報と前記二酸化炭素排出係数とから、ロットごとの二酸化炭素排出量を算出することと、製造実績情報と算出された二酸化炭素排出量とをロット番号に関連付けて記憶部13に記憶することと、を含む動作を実行する。この構成により情報処理装置1は、ロットごとの二酸化炭素排出量を把握することができるので、製品による環境への潜在的影響を適切に評価することができる。また情報処理装置1は、二酸化炭素排出係数を一定の固定値とすることなく、時間経過とともに変化する二酸化炭素排出係数に対応することができる。
【0056】
また本実施形態によれば、製品は、1以上の部品を含む完成品である。制御部11の動作は、部品ごとの二酸化炭素排出量から、完成品の二酸化炭素排出量を算出し、算出された二酸化炭素排出量を示す情報を、完成品を発注したユーザのユーザ端末3に、製品証明情報として送信することを含む。この構成により情報処理装置1は、発注ユーザが、製品による環境への潜在的影響を適切に評価することを支援することができる。
【0057】
また本実施形態によれば、制御部11の動作は、製品の発注において指定された二酸化炭素排出希望量と、製品の製造における二酸化炭素排出量とを比較することと、二酸化炭素排出量が二酸化炭素排出希望量より大きいと判定すると、二酸化炭素排出量と二酸化炭素排出希望量との差に相当する二酸化炭素クレジットを記憶部13から読み出して、ロット番号に関連付けて記憶部13に記憶することと、を含む。この構成により情報処理装置1は、サーキュラーエコノミーにおける、企業等によるロットごとの二酸化炭素の削減行動又は相殺行動を支援することができる。
【0058】
また本実施形態によれば、情報処理装置1はブロックチェーンネットワークのノードであり、制御部11の動作は、製造実績情報と二酸化炭素排出量とをブロックチェーンに登録することを含む。この構成により登録情報が分散して全てのノードで共有される。すなわち中央管理者が不要である。このため、情報処理装置1により次の効果が奏される。
・改ざんが困難
・単一障害点が無いため、システムダウンが無い
・他者システムとのデータ共有が容易
よって情報処理装置1は、安全性が高く、低コストであるシステムを実現することができる。更に、ブロックチェーンにおいて全てのデータが記録されるので、トレーサビリティが確保される。
【0059】
また本実施形態によれば、製造実績情報は実績製造時間を示す情報を含む。この構成により情報処理装置1は、二酸化炭素排出量の算出精度を高めることができる。
【0060】
また本実施形態によれば、制御部11の動作は、本年度の二酸化炭素排出係数が未確定であると判定すると、電力会社によって公開された目標値を本年度の二酸化炭素排出係数として取得することを含む。この構成により情報処理装置1は、本年度の二酸化炭素排出係数が未確定であっても、二酸化炭素排出量を算出することができる。
【0061】
本開示が諸図面及び実施例に基づき説明されるが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び改変を行ってもよいことに注意されたい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。例えば、各手段又は各ステップに含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0062】
例えば、上記の実施形態において、情報処理装置1、収集端末2及びユーザ端末3の機能又は処理の全部又は一部を実行するプログラムは、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読取り可能な記録媒体は、非一時的なコンピュータ読取可能な媒体を含み、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記録したDVD(Digital Versatile Disc)又はCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記録媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行われる。またプログラムの流通は、プログラムを任意のサーバのストレージに格納しておき、任意のサーバから他のコンピュータにプログラムを送信することにより行ってもよい。またプログラムはプログラムプロダクトとして提供されてもよい。本開示は、プロセッサが実行可能なプログラムとしても実現可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 情報処理装置
【要約】
【課題】製品による環境への潜在的影響を適切に評価する。
【解決手段】情報処理装置1による情報処理方法であって、情報処理装置1は、制御部と通信部と記憶部とを含み、通信部を介して1以上の収集端末2と通信可能であり、制御部によって、収集端末2から、製造された製品のロットごとの製造実績情報を取得することと、二酸化炭素排出係数を示す情報を取得することと、製造実績情報と二酸化炭素排出係数とから、ロットごとの二酸化炭素排出量を算出することと、製造実績情報と算出された二酸化炭素排出量とをロット番号に関連付けて記憶部に記憶することと、を含む、情報処理方法。
【選択図】図1
図1
図2
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図5
図6
図7