(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】開閉体用液封ダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 13/10 20060101AFI20230913BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
F16F13/10 J
B60J5/10 D
(21)【出願番号】P 2020179014
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000177900
【氏名又は名称】山下ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲丸 祐一
(72)【発明者】
【氏名】高口 英之
(72)【発明者】
【氏名】黒田 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】松岡 英樹
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-125215(JP,U)
【文献】特開2011-102638(JP,A)
【文献】実開昭61-182434(JP,U)
【文献】特開2011-256889(JP,A)
【文献】特開2010-032023(JP,A)
【文献】特開2009-085252(JP,A)
【文献】特開2007-051768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 13/10
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開口部及び車両の開口部を覆う開閉体の一方に取り付けられる取付部と、他方の当接を受ける当接部とを有する開閉体用液封ダンパであって、
前記取付部と前記当接部とを連結する防振用のインシュレータと、
前記インシュレータを壁部の一部として作動液体が封入される主液室と、
前記主液室と仕切部材により区画され、壁部の一部がダイヤフラムで形成される副液室と、
前記仕切部材に形成され、前記主液室と前記副液室と連通するオリフィス通路と、を備え、
前記仕切部材は、凹状の内空部を有しており、
前記内空部に前記ダイヤフラムの一部が挿入されていることを特徴とする開閉体用液封ダンパ。
【請求項2】
前記内空部の内面には、前記オリフィス通路に連通する開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の開閉体用液封ダンパ。
【請求項3】
前記内空部の開口縁部は、テーパ状に面取りされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の開閉体用液封ダンパ。
【請求項4】
前記ダイヤフラムは、周壁部と、前記周壁部の中央部から立ち上がる立上部とを備えており、
前記周壁部は、他の部分よりも肉厚に形成された環状の固定部と、前記仕切部材に近い側となる前記固定部の軸方向の一端部から前記立上部に向けて延在する延在部と、を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の開閉体用液封ダンパ。
【請求項5】
前記仕切部材は、略円柱状を呈しており、
前記オリフィス通路は、
前記仕切部材の軸方向の一端側から他端側に向けて前記仕切部材の外周面を複数周回するように形成された断面凹状の溝であり、
前記溝は、前記仕切部材の軸方向の大きさに対する前記オリフィス通路の軸方向全体における溝幅の合計の割合が14%以上47%以下の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の開閉体用液封ダンパ。
【請求項6】
前記オリフィス通路の断面積の大きさは、前記オリフィス通路の全体に亘って略同じ大きさに形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の開閉体用液封ダンパ。
【請求項7】
前記主液室側となる前記仕切部材の一端部は、前記仕切部材の他の部分に比べて小径であり、
前記仕切部材の一端部の外周面にも前記オリフィス通路をなす断面凹状の溝が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の開閉体用液封ダンパ。
【請求項8】
前記取付部には、前記インシュレータが配置される側と反対側に延在して前記仕切部材を内包する外筒部が設けられており、
前記外筒部の一端部には、径方向内側に向けて縮径して前記仕切部材の一端部を保持する絞り部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の開閉体用液封ダンパ。
【請求項9】
前記外筒部の内面には、前記仕切部材の外周面に密着する弾性部材が設けられており、
前記弾性部材が、前記オリフィス通路の壁部の一部をなすことを特徴とする請求項8に記載の開閉体用液封ダンパ。
【請求項10】
前記取付部には、前記インシュレータに向けて突出する突部が形成されており、
前記突部に前記インシュレータが接続されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の開閉体用液封ダンパ。
【請求項11】
前記インシュレータは、窒化ホウ素材からなることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の開閉体用液封ダンパ。
【請求項12】
前記当接部は、前記インシュレータに埋設されていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の開閉体用液封ダンパ。
【請求項13】
前記当接部は、前記インシュレータの成形時に前記インシュレータの軸方向両側から保持されることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の開閉体用液封ダンパ。
【請求項14】
前記仕切部材は、略円柱状を呈しており、
前記オリフィス通路は、前記仕切部材の軸に直交する平らな基準面に沿って周方向に延在する水平部と、前記水平部に連続して形成され前記水平部に対して傾斜する傾斜部と、を備えていることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の開閉体用液封ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体用液封ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、荷室が後部に設けられた自動車等の車両は、荷室の開口部にテールゲートが回動自在に設けられている。このような車両では、荷室の開口部とテールゲートとの対向部に開閉体用ダンパとしてテールゲートダンパを設け、このテールゲートダンパによりテールゲートを閉じたとき等に生じる衝撃を抑制している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のテールゲートダンパは、ゴム製の弾性部材により衝撃を抑制する簡単な構造であり、液封入式の構造のものはなかった。
液封入式の構造とするためには、インシュレータと、作動液体が封入される主液室と、主液室と仕切部材で区画される副液室とを設けるとともに、副液室の壁部の一部をダイヤフラムで覆う必要がある。また、仕切部材に対して主液室と副液室とを連通するオリフィス通路を設ける必要がある。
【0005】
しかしながら、テールゲートダンパは、後部荷室やテールゲートの限られたスペースに設置するものであるため、小型化を図る必要があり、上記のような構成を有する液封入式の構造とすることが難しかった。
特に、副液室の容積を確保しようとすると、仕切部材の側方にダイヤフラムが大きく突出してしまい、全体としてテールゲートダンパが型化してしまう。
【0006】
本発明は、前記した課題を解決し、新規な構造の開閉体用液封ダンパを提供するものであり、しかも、副液室の容積を確保しつつ、小型化を実現することができる開閉体用液封ダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、開閉体用液封ダンパであって、車両の開口部及び車両の開口部を覆う開閉体の一方に取り付けられる取付部と、他方の当接を受ける当接部とを有する。開閉体用液封ダンパは、前記取付部と前記当接部とを防振して連結するインシュレータと、前記インシュレータを壁部の一部として作動液体が封入される主液室と、前記主液室と仕切部材により区画され、壁部の一部がダイヤフラムで形成される副液室と、前記仕切部材に形成され、前記主液室と前記副液室と連通するオリフィス通路と、を備えている。前記仕切部材は、前記副液室の一部をなす凹状の内空部を有しており、前記内空部に前記ダイヤフラムの一部が挿入されている。
【0008】
本発明の開閉体用液封ダンパでは、副液室の一部をなす凹状の内空部にダイヤフラムの一部が挿入されているため、仕切部材の側方へのダイヤフラムの突出量を小さくすることができ、ひいては、副液室の容積を確保しつつ、小型化を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の開閉体用液封ダンパによれば、副液室の容積を確保しつつ、小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る開閉体用液封ダンパを示した斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る開閉体用液封ダンパを示した平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る開閉体用液封ダンパの
図2のIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る開閉体用液封ダンパの上部側を一部切り欠いて示した部分切断斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る開閉体用液封ダンパのインシュレータを前方斜め右上側から見た斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る開閉体用液封ダンパのインシュレータを後方斜め左上側から見た斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る開閉体用液封ダンパのインシュレータの右側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る開閉体用液封ダンパのインシュレータの後面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る開閉体用液封ダンパのインシュレータの平面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る開閉体用液封ダンパのインシュレータの下面である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る開閉体用液封ダンパの
図5のXI-XI線に沿う平断面図である。
【
図12】本発明の変形例に係る開閉体用液封ダンパの
図3に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において「前後」「左右」「上下」をいうときは、
図1示す方向を基準とする。以下の実施形態では、自動車等の車両に設けられるテールゲートに、開閉体用液封ダンパ1を取り付けた場合を例として説明するが、開閉体用液封ダンパの設置場所を限定する趣旨ではなく、その他の車両の開口部や車両の開口部を覆う開閉体、例えば、ボンネットやサイドドア等にも適用が可能である。
【0012】
図1,
図2に示すように、本実施形態の開閉体用液封ダンパ1は、取付部2と、当接部3と、インシュレータ4と、を備えている。また、開閉体用液封ダンパ1は、
図3に示すように、主液室5と、副液室6と、仕切部材7と、オリフィス通路8と、ダイヤフラム9と、を備えて構成されている。
【0013】
取付部2は、図示しない後部荷室の後部開口部を閉じるテールゲートに取り付けられる部位である。テールゲートに取り付けられた状態で取付部2の上面は、車両の前方を向いている。取付部2は、
図1,
図2に示すように、左右に延在するフランジ部21,21を備える。フランジ部21,21には、取付用のボルト孔21a,21aが形成されている。取付部2の中央部には、インシュレータ4に向けてフランジ部21,21よりも一段高く形成された突部21bが形成されている。突部21bの上面は平らであり、インシュレータ4の足部4dの下端部が接着されている。すなわち、取付部2は、インシュレータ4の台座となる突部21bと、突部21bの上面よりも一段下がった位置から側方に向かって張り出すフランジ部21とを備えている。足部4dは全体が比較的肉厚に形成されている(インシュレータ4の内面と外面との距離を大きくしている)。これにより、インシュレータ4の耐久性が向上している。
【0014】
取付部2の中央下部には、
図3に示すように、筒状の外筒部22がフランジ部21及び突部21bと一体に形成されている。外筒部22は、仕切部材7の全体を内包する部材である。外筒部22は、開閉体用液封ダンパ1のケース部材として機能している。外筒部22の内面には、インシュレータ4の延長部45が一体化されている。延長部45は、インシュレータ4の足部4dの全周から下方へ延在しており、仕切部材7の外周面を囲むとともに、外筒部22の内面を覆っている。延長部45は、取付部2にインシュレータ4を固着する際に一緒に形成される。
【0015】
外筒部22の一端部となる上端部には、径方向内側に向けて縮径された絞り部23が形成されている。絞り部23の内側には、仕切部材7の上端部72が保持されている。
【0016】
当接部3は、インシュレータ4の上部に一体的に設けられている。当接部3は、
図3に示すように、略全体がインシュレータ4に埋設されており、かつインシュレータ4に加硫接着されている。当接部3は、例えば、硬質ゴム等により形成されている。
当接部3は、断面形状が逆台形状を呈しており、上面が平坦な座面3aとなっている。当接部3には、テールゲートを閉じた際の外力が座面3aの法線方向に入力される。
このような当接部3は、加硫時に、図示しない上側の治具及び下側の治具により上下方向から保持されてインシュレータ4の所定位置に固定される。インシュレータ4の上端周縁部には、
図1,
図2,
図4に示すように、四つのスリット4aが形成されている。スリット4aは、前記上側の治具の図示しない爪部の跡であり、爪部は加硫時に当接部3を受け止める役割をなす。各スリット4a内には、当接部3の座面3aの一部が露出している。
一方、インシュレータ4において、当接部3の下側には、
図3に示すように、保持孔4bが形成されている。保持孔4bは、前記下側の治具の円柱状の保持部の跡である。保持孔4bの内側には当接部3の下面が露出している。
なお、当接部3が埋め込まれていることにより、作動液体が流動し易くなる。これは、当接部3を埋め込むことで押し下げられる作動液体が多くなるからである。押し下げられる作動液体が多くなることで、液封性能が向上する。
【0017】
インシュレータ4は、取付部2と当接部3とを連結する防振用の弾性部材である。インシュレータ4は、例えば、耐摩耗性に優れた窒化ホウ素材から形成されている。インシュレータ4は、略円錐台形断面を備えており、主液室5の壁部の一部をなす凹部4cを備えている。凹部4cは、仕切部材7に向けて開放されており、仕切部材7で仕切られることにより、主液室5となる空間が形成されている。主液室5の内部には、非圧縮性の作動液体が封入されている。インシュレータ4の足部4dは、取付部2の突部2bに固着されている。
主液室5は、仕切部材7により、軸方向下方に形成された副液室6と区画されている。主液室5は、仕切部材7の外周面に形成されたオリフィス通路8を介して副液室6と連通している。
【0018】
仕切部材7は、
図5~
図8に示すように、略円柱状を呈している。仕切部材7の上端部72は、仕切部材7の他の部分に比べて小径である。仕切部材7の外周面には、周方向に連続する断面凹状の溝からなるオリフィス通路8が形成されている。オリフィス通路8は、仕切部材7の軸方向の上端側から下端側に向けて仕切部材7の外周面を複数周回している。オリフィス通路8は、仕切部材7の前記した上端部72にも設けられている。
【0019】
オリフィス通路8は、仕切部材7の軸に直交する平らな基準面(不図示)に沿って周方向に延在する水平部81と、水平部81に連続して形成され水平部81に対して下方向に傾斜する傾斜部82と、を備えている。各水平部81は、仕切部材7の軸方向に所定の間隔を空けて形成されている。上下に隣接する水平部81,81同士は、傾斜部82を介して連通している。
【0020】
本実施形態のオリフィス通路8は、仕切部材7の外周面を約3周半周回している。なお、オリフィス通路8の周回数は、例えば、2周以上6周以下に設定されることが好ましい。オリフィス通路8の周回数を例えばこの範囲に設定することで、テールゲートの防振に必要な所望のばね定数や共振特性を容易に得ることができる。
また、本実施形態のオリフィス通路8は、
図7に示すように、仕切部材7の軸方向の大きさL1に対する、オリフィス通路8の軸方向全体における溝幅(流路幅)の合計の割合が、例えば、14%以上47%以下の範囲に設定されることが好ましい。オリフィス通路8の軸方向全体における大きさの割合を、例えばこの範囲に設定することで、テールゲートの防振に必要な所望のばね定数や共振特性を容易に得ることができる。
具体的に本実施形態では、テールゲートの防振に適した30Hz前後の周波数帯に減衰特性をもたせている。
なお、オリフィス通路8の溝幅を広げるように構成した場合には、開閉体用液封ダンパ1のばね定数を低下させることができる。
【0021】
このような、水平部81及び傾斜部82の断面積の大きさは、通路の全体に亘って略同じ大きさに形成されている。これにより、所望のばね定数や共振特性を得易い構造となっている。
【0022】
仕切部材7の外周面は、外筒部22の内面に一体に設けられた延長部45に密着している。この密着により、オリフィス通路8が閉じられている。なお、仕切部材7の上端部72は、絞り部23の内側において延長部45に密着している。この密着により、仕切部材7の上端部72に形成されているオリフィス通路8も閉じられている。
【0023】
仕切部材7は、主液室5の壁部の一部をなす略円形状の上面71を有している。この上面71には、オリフィス通路8の一端に連通する開口部83が形成されている。開口部83は、
図5,
図9に示すように、上面71の外縁部から中央部に亘って水平方向に開口形成されており、中央部を頂点とする平面視で略三角形状を呈している。開口部83には、仕切部材7の上端部72に形成されたオリフィス通路8の水平部81が連通している。
【0024】
仕切部材7の下部内側には、副液室6の一部をなす凹状の内空部76が形成されている。内空部76には、
図11に示すように、オリフィス通路8の他端に連通する開口部84が形成されている。他端の開口部84は、仕切部材7の外縁部から内空部76の内面に亘って開口形成されており、内空部76側を頂点とする平面視で略三角形状を呈している。
内空部76の開口縁部75は、
図3に示すように、テーパ状に面取りされている。
【0025】
ダイヤフラム9は、断面凹形状の支持部材95を介して仕切部材7の下方に取り付けられている。ダイヤフラム9は、例えば、天然ゴムで形成されている。ダイヤフラム9は、断面略ハット状を呈しており、周壁部91と、周壁部91の中央部から立ち上がる立上部92とを備えている。
【0026】
周壁部91は、他の部分よりも肉厚に形成され支持部材95の内側面に固定される環状の固定部91aと、固定部91aから立上部92に向けて延在する延在部91bと、を備えている。延在部91bは、固定部91aの上下方向の中央部から径方向内側に向けて延在しており、支持部材95の底部開口部95aから仕切部材7側にオフセットされた位置に形成されている。これにより、立上部92も、支持部材95の底部開口部95aから仕切部材7側にオフセットされた位置から上方に立ち上がっている。
【0027】
立上部92は、断面略台形状を呈している。立上部92の上部は、内空部76の開口を通じて内空部76内に挿入されている。立上部92の外面と内空部76の内面との間には所定の間隙が形成されている。これにより、ダイヤフラム9が内空部76の内面に接触し難くなっている。なお、図示はしないが、内空部76に開口している下側の開口部84の径方向内側には、立上部92が位置している。
このようなダイヤフラム9には、支持部材95の底部開口部95aを通じて大気圧が作用している。
【0028】
支持部材95は、
図3に示すように、側壁部95bの上端部が仕切部材7の下端面に当接し、また、側壁部95bの外周面が弾性部材96を介して外筒部22の下部内面に当接することで、外筒部22の内側に保持されている。また、支持部材95は、径方向内側に絞り加工された外筒部22の下端部22aにより、下方への抜け止めが防止されている。
【0029】
以上のような開閉体用液封ダンパ1において、テールゲートを閉じると、当接部3が車両の後部開口部の対向部に当接して、振動が入力される。入力された振動は、まず、インシュレータ4の弾性変形により吸収される。本実施形態では、インシュレータ4の足部を肉厚に形成しているので、入力された振動に対してバネ特性及び耐久性が向上している。
【0030】
大きな振動が入力された場合には、インシュレータ4の弾性変形が増して主液室5の容積が変化し、主液室5の作動液体の液圧が変化する。これにより、仕切部材7の上面71の開口部83を通じてオリフィス通路8内に作動液体が流入し、オリフィス通路8内に液柱共振が生じることで、振動が減衰される。
【0031】
以上説明した本実施形態の開閉体用液封ダンパ1では、仕切部材7の凹状の内空部76にダイヤフラム9の一部が挿入されているので、副液室6の容積を確保しつつ、小型化を実現することができる。
【0032】
また、仕切部材7の内空部76にオリフィス通路8に連通する開口部84が形成されているので、副液室6に作動液体がスムーズに流入する。したがって、減衰特性に優れる開閉体用液封ダンパ1が得られる。
【0033】
また、内空部76の開口縁部75がテーパ状に面取りされているので、ダイヤフラム9の立上部92が開口縁部75に接触し難く、ダイヤフラム9の耐摩耗性が向上する。
【0034】
また、ダイヤフラム9は、断面ハット状を呈しており、環状の固定部91aの軸方向の中央部から立上部92に向けて周壁部91が延在している。そして、ダイヤフラム9の耐久性を向上させるとともにテールゲートダンパ1の小型化を実現するために、副液室6の中にダイヤフラム9を入れている。これにより、ダイヤフラム9の膜面を広くすることができるので、ダイヤフラム9の耐久性が向上する。
【0035】
また、オリフィス通路8は、仕切部材7の軸方向の上端から下端に向けて仕切部材7の外周面を複数周回するように形成された断面凹状の溝であるので、オリフィス通路8が仕切部材7の外周面に露出し、形成が簡単である。また、金型を利用して仕切部材7を成形する場合に金型を抜く作業が容易である。したがって、仕切部材7の生産性に優れる。
また、オリフィス通路8の全長を長く形成することができるので、減衰させる振動の周波数を低下させることができる。
また、オリフィス通路8の流路高さ(流路幅)を一定にできるので、作動液体がオリフィス通路8を流れるときの抵抗(流路壁面との間で生じる抵抗)を小さくすることができる。
【0036】
主液室5に面するオリフィス通路8の開口部83が、仕切部材7の上面71の外縁部から中央部に亘って開口形成されているので、開口部83の大きさを確保しつつ、小型化を実現することができる。
【0037】
また、オリフィス通路8の断面積の大きさは、オリフィス通路8の全体に亘って略同じ大きさであるので、作動液体がオリフィス通路8を流れるときの抵抗(流路壁面との間で生じる抵抗)を小さくすることができる。
【0038】
また、仕切部材7の上部は、仕切部材7の他の部分に比べて小径であるので、その分、開閉体用液封ダンパ1の小型化を図ることができる。
また、小径とされた仕切部材7の上部にもオリフィス通路8が形成されているので、小型化を図りつつ、オリフィス通路8の全長を拡大することができる。これにより、減衰性能の向上を図ることができる。
【0039】
また、外筒部22に形成された絞り部23により、小径とされた仕切部材7の上部を保持できるので、外筒部22に対する仕切部材7の保持性を高めることができる。
【0040】
また、取付部2には、インシュレータ4の足部4dが固着される突部2bが形成されているので、平らな面にインシュレータ4の足部4dを固着する場合に比べて、足部4dの密着性が高まる。これにより、止水性が向上するとともにインシュレータ4の耐久性、ひいては開閉体用液封ダンパ1全体の耐久性が向上する。
【0041】
また、窒化ホウ素材からなるインシュレータ4を用いているので、開閉体用液封ダンパ1の耐摩耗性や耐久性が向上する。
【0042】
また、外筒部22の内面に仕切部材7を組み付けることで、仕切部材7の外周面に延長部(弾性部材)45が密着してオリフィス通路8が形成される。したがって、別途、特別な手段を用いることなくオリフィス通路8を容易に形成することができる。
【0043】
また、当接部3は、インシュレータ4に埋設されているので、脱落するおそれがなく、当接部3としての機能を長期間に渡って得ることができる。また、当接部3が埋設されていることで押し下げられる作動液体が多くなり、作動液体が流動し易くなる。これにより、液封性能が向上する。
【0044】
また、当接部3は、インシュレータ4の成形時にインシュレータ4の軸方向両側から保持されるので、成形時にインシュレータ4内で当接部3が移動したり脱落したりすることが防止される。したがって生産性に優れる。
【0045】
また、オリフィス通路8は、周方向に延在する水平部81と、水平部81に対して下方向に傾斜する傾斜部82と、を備えている。これにより、仕切部材7の外周面にスペース効率よくオリフィス通路8を形成することができる。したがって、テールゲートの防振に必要な所望のばね定数や共振特性を容易に得ることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、
図12に示すように、当接部3Aをインシュレータ4のみで構成してもよい。このように構成することによって、前記実施形態のような当接部として機能する部材をインシュレータ4に埋設する必要がなくなり、その分、コストを低減できるとともに、生産性が向上する。
【0047】
また、仕切部材7は、円柱形状のものを示したが、平断面が楕円形状のものを用いてもよい。このように構成した場合にも前記実施形態で説明した作用効果と同様の作用効果が得られる。この場合、当接部も閉断面が楕円形状となるように構成してもよい。
【0048】
また、オリフィス通路8は、断面凹形状の溝により構成したが、これに限られることはなく、断面湾曲形状、断面半円形状、断面三角形状、断面多角形状等、種々の断面形状のものを採用することができる。また、オリフィス通路8は、水平部81と傾斜部82を交互に連ねる形態としたが、傾斜部を主体として螺旋状に形成してもよい。
【0049】
また、オリフィス通路8の開口部83,84は、平面視で略三角形状のものを示したが、これに限られることはなく、面在方向に開口面積が大きく形成されたものであれば種々の形状のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 開閉体用液封ダンパ
2 取付部
2b 突部
3 当接部
4 インシュレータ
5 主液室
6 副液室
7 仕切部材
8 オリフィス通路
9 ダイヤフラム
22 外筒部
23 絞り部
45 延長部(オリフィス通路のいち部をなす弾性部材)
71 上面(略円形状の面)
72 仕切部材の上端部(仕切部材の一端部)
83 一端の開口部
84 他端の開口部