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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】多段家禽ケージの転倒防止構造
(51)【国際特許分類】
   A01K 31/00 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
A01K31/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021572207
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2020002211
(87)【国際公開番号】W WO2021149207
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390030661
【氏名又は名称】株式会社ハイテム
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】小泉 均
(72)【発明者】
【氏名】椿井 康司
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-39012(JP,A)
【文献】特開2013-66411(JP,A)
【文献】実開昭56-97953(JP,U)
【文献】特開平11-75977(JP,A)
【文献】特開2002-325644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00- 3/00
A01K 31/00-31/24
A47B 97/00
A47F 5/00- 8/02
B65G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケージが水平な一方向へ列設されているケージ列が、支持フレームによって上下方向へ複数段に取り付けられている多段家禽ケージが、鶏舎内に設置されており、
前記支持フレームの上端、又は、前記支持フレームの上端から上方に延出している取付補助部材、に設けられている接合用孔部と、
該接合用孔部に一端が取り付けられて前記ケージ列と直交するように水平に延出しており、他端が鶏舎壁に固定されることなく該鶏舎壁に対面している長棒状の転倒防止部材と
を具備することを特徴とする多段家禽ケージの転倒防止構造。
【請求項2】
前記転倒防止部材は、
自身の長手方向へスライド可能に、前記接合用孔部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の多段家禽ケージの転倒防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏舎内に設置されている多段家禽ケージの転倒防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数のケージで多数羽の鶏を飼育する養鶏施設の鶏舎内には、複数のケージが水平方向に列設されているケージ列を、複数段に積み重ねた多段家禽ケージが設置されている。水平面においてケージ列の延びる方向を横方向、横方向と直交する方向を奥行方向とすると、多段家禽ケージは、奥行方向よりも横方向がかなり長く、上下方向にも長いものが多い。そのため、多段家禽ケージは、地震により設置面が振動すると、奥行方向へ転倒し易い。
【0003】
そこで、多段家禽ケージを鶏舎壁に固定することが考えられる。しかしながら、多段家禽ケージと鶏舎では固有振動数が異なっているため、地震により振動が作用したときの多段家禽ケージの揺れと鶏舎の揺れとが異なることとなる。これにより、多段家禽ケージを鶏舎壁に固定している部位に力が集中し、この部位が破損することによって多段家禽ケージが転倒してしまうおそれがある。
【0004】
このような問題に対して、本出願人は、多段家禽ケージにおける上下方向の中間の高さに設けられている中間デッキを、多段家禽ケージの転倒防止に利用する構造を提案している(特許文献1参照)。これは、中間デッキを架設するためのデッキ支持体の一端は鶏舎壁に固定する一方で、他端側は多段家禽ケージにおける鶏舎壁側フレームに設けた滑動支持部に、載置した状態としておくものである。
【0005】
特許文献1の技術によれば、地震により振動が作用した時に、多段家禽ケージの揺れと鶏舎の揺れとが異なっていても、デッキ支持体の他端側が滑動支持部に対して水平方向へ摺動するため、デッキ支持体のどこかに力が集中することはない。また、複数のデッキ支持体に跨って、中間デッキが架設されているため、デッキ支持体が摺動する際に、中間デッキ本体の重量によりデッキ支持体と滑動支持部との間に或る程度の摺動抵抗が発生する。そして、この摺動抵抗が固有振動数の違いにより生じている鶏舎に対する多段家禽ケージの振動を減衰させるため、地震が発生したときの多段家禽ケージの転倒を抑制することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明では、デッキ支持体の一端を滑動支持部に載置して水平方向へ摺動させているため、デッキ支持体と滑動支持部とが接している範囲よりも大きく揺れると、デッキ支持体が滑動支持部から外れてしまい、多段家禽ケージが転倒してしまう恐れがあった。また、特許文献1の構造は、中間デッキが設けられていない養鶏施設には適していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5663445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、鶏舎内に設置されている多段家禽ケージの地震による転倒を、より有効に防止できる多段家禽ケージの転倒防止構造の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる多段家禽ケージの転倒防止構造は、
「複数のケージが水平な一方向へ列設されているケージ列が、支持フレームによって上下方向へ複数段に取り付けられている多段家禽ケージが、鶏舎内に設置されており、
前記支持フレームの上端、又は、前記支持フレームの上端から上方に延出している取付補助部材、に設けられている接合用孔部と、
該接合用孔部に一端が取り付けられて前記ケージ列と直交するように水平に延出しており、他端が鶏舎壁に固定されることなく該鶏舎壁に対面している長棒状の転倒防止部材と
を具備する」ものである。
【0010】
ここで、転倒防止部材の「他端が鶏舎壁に固定されることなく鶏舎壁に対面している」とは、転倒防止部材の他端が鶏舎壁に圧接されることなく接触している状態、または、鶏舎壁との間に僅かの隙間をあけた状態で転倒防止部材の他端が鶏舎壁に沿っている状態を指している。
【0011】
また、「取付補助部材」としては、「支持フレームと鶏舎壁との間に位置して転倒防止部材と干渉するような干渉物(例えば、自動給餌装置、メンテナンス装置、資材の搬送装置)を、避けるように形成されているもの」、「支持フレームの上端に接合用孔部を設ける部位を確保できない時に、接合用孔部が設けられるように形成されているもの(例えば、後述する上端奥行部材を備えていない支持フレームの場合に、上端奥行部材に相当する部材)」、を例示することができる。
【0012】
本構成によれば、地震によって鶏舎壁に垂直な方向へ振動が作用した場合、多段家禽ケージが鶏舎壁へ向かって転倒しようとしても、転倒防止部材の先端が鶏舎壁に当接するため、多段家禽ケージが転倒することはない。特に、転倒防止部材を、多段家禽ケージの重心よりも高い支持フレームの上端側に取り付けているため、振動が大きくても多段家禽ケージの転倒を確実に防止することができる。
【0013】
一方、地震によって鶏舎壁の面方向へ振動が作用した場合、固有振動数の違いにより鶏舎の揺れと多段家禽ケージの揺れとが異なっていても、転倒防止部材の先端は壁面に固定されていないため、その先端が壁面に沿って摺動する。これにより、転倒防止部材や鶏舎壁のどこかに応力が集中することはなく、応力集中による破損が回避されている。
【0014】
以上のことから、鶏舎内に設置されている多段家禽ケージの地震の振動による転倒を、より有効に防止することができると共に、多段家禽ケージや鶏舎へのダメージを抑制して養鶏施設の耐震性を高めることができる。
【0015】
また、転倒防止部材の先端を鶏舎壁に固定していないため、鶏舎に対して取付工事をする必要はなく、既存の養鶏施設の多段家禽ケージにコストを抑えて導入することができる。また、転倒防止部材の一端を、支持フレームに取り付けている。そのため、中間デッキの有無に関わらず、多段家禽ケージが必ず有している支持フレームに転倒防止部材を取り付けて、耐震性を高めることができる。
【0016】
また、特許文献1の発明のように、デッキ支持体の一端を滑動支持部に載置して水平方向へ摺動させるようにしても、転倒防止部材により多段家禽ケージの転倒が防止されているため、デッキ支持体と滑動支持部とが接している範囲よりも大きく揺れることはなく、デッキ支持体が滑動支持部から外れることはない。
【0017】
本発明に係る多段家禽ケージの転倒防止構造は、上記の構成に加えて、
「前記転倒防止部材は、
自身の長手方向へスライド可能に、前記接合用孔部に取り付けられている」ものとすることができる。
【0018】
ところで、鶏舎内に設置されている多段家禽ケージは、養鶏施設の仕様や設置誤差等により、支持フレームから鶏舎壁までの距離が区々である。これに対して、本構成では、転倒防止部材を接合用孔部に対してスライドさせることにより、転倒防止部材において支持フレームから鶏舎壁に向かって突出している長さを調整することができるため、支持フレームから鶏舎壁までの距離が区々であっても、本構成の多段家禽ケージの転倒防止構造を確実に構築することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、鶏舎内に設置されている多段家禽ケージの地震による転倒を、より有効に防止できる多段家禽ケージの転倒防止構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明の第一実施形態である多段家禽ケージの転倒防止構造を使用した鶏舎の断面図である。
図2図2(a)は図1の多段家禽ケージの転倒防止構造における要部拡大図であり、図2(b)は図2(a)の斜視図であり、図2(c)は図2(b)の分解斜視図である。
図3図3は中間デッキが設けられている鶏舎に第一実施形態の多段家禽ケージの転倒防止構造を使用した場合の断面図である。
図4図4は第二実施形態の多段家禽ケージの転倒防止構造を使用した鶏舎の断面図である。
図5図5図4の多段家禽ケージの転倒防止構造における要部拡大図である。
図6図6(a)は図5をさらに拡大した多段家禽ケージの転倒防止構造における要部拡大図であり、図6(b)は図6(a)の分解斜視図である。
図7図7は中間デッキが設けられている鶏舎に第二実施形態の多段家禽ケージの転倒防止構造を使用した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態である多段家禽ケージの転倒防止構造(以下、単に「転倒防止構造」と称する)について、図面を用いて説明する。まず、第一実施形態の転倒防止構造について、図1及び図2を用いて説明する。
【0022】
多段家禽ケージ10は、鶏舎1内に設置されており、複数のケージ11が水平な一方向へ列設されているケージ列を、上下方向へ複数段に積み重ねたものである。以下では、水平面において、多段家禽ケージ10のケージ列の延びる方向を横方向と称し、横方向と直交する方向を奥行方向と称して説明する。図1では、紙面に垂直な方向が横方向であり、紙面における左右方向が奥行方向である。
【0023】
多段家禽ケージ10は、奥行方向よりも横方向及び上下方向が長い、直方体形状に形成されている。多段家禽ケージ10は、複数段のケージ列が取り付けられている支持フレーム12を有している。
【0024】
支持フレーム12は、上下方向に延びる複数の縦部材13と、奥行方向に延びる複数の上端奥行部材14と、横方向に延びる複数の横部材(図示は省略)と、を有している。支持フレーム12では、一対の縦部材13が奥行方向に間隔をあけて設けられており、その一対の縦部材13の上端同士が上端奥行部材14により繋がれている。そして、支持フレーム12では、一対の縦部材13と上端奥行部材14とからなる組が、横方向へ間隔をあけて複数設けられており、横方向に並んでいる複数の縦部材13が横部材によって繋がれている。
【0025】
上端奥行部材14は、図2(c)に示すように、水平で細長い平板の天板部14aと、天板部14aの一対の長辺からそれぞれ下方へ平行に延出している一対の側板部14bと、一対の側板部14bのそれぞれの下辺から互いに離反する方向へ延出している一対のフランジ部14cと、を有している。この上端奥行部材14は、ハット形鋼である。
【0026】
上端奥行部材14は、長手方向の両端が縦部材13よりも外方へ延出している。上端奥行部材14は、長手方向の両端部付近において、一対の側板部14bの間に縦部材13の上端を挿入させた状態で、縦部材13に取り付けられている。
【0027】
ここでは、四方を囲んでいる鶏舎壁2と、内部を仕切っている鶏舎壁2とを有し、奥行方向に隣接する鶏舎壁2の間の空間内に、多段家禽ケージ10が奥行方向へ間隔をあけて二つずつ設置されている場合を例示している。並設されている多段家禽ケージ10の数はこれに限定されず、内部を仕切っている鶏舎壁2のない鶏舎であってもよい。
【0028】
本実施形態の転倒防止構造は、支持フレーム12の上端に設けられている接合用孔部20と、接合用孔部20に一端が取り付けられてケージ列と直交するように水平に延出しており、他端が鶏舎壁2に固定されることなく鶏舎壁2に対面している長棒状の転倒防止部材30と、を備えている。また、転倒防止構造は、鶏舎1内において、奥行方向へ隣接して設置されている多段家禽ケージ10のそれぞれの支持フレーム12の上端同士を連結している連結部材40を、備えている。転倒防止部材30及び連結部材40は、横方向へ間隔をあけて複数が設けられている。
【0029】
接合用孔部20は、上端奥行部材14において縦部材13より鶏舎壁2に向かって延出している部分に設けられている。この接合用孔部20は、一対の側板部14bをそれぞれ貫通している円形孔であり、奥行方向に離隔して複数が設けられている。
【0030】
転倒防止部材30は、図2(b)等に示すように、細長い長方形の平板である上板部30aと、上板部30aの一対の長辺からそれぞれ同一方向に延出している一対の脚板部30bと、を有している。一対の脚板部30bの間隔は、上端奥行部材14における一対の側板部14bの間隔よりも広い。転倒防止部材30は、上板部30a及び一対の脚板部30bにおける長手方向の一方の端部に、平板状の当て板30cが取付けられている。当て板30cの面は、転倒防止部材30の長手方向に垂直な方向へ延出している。この転倒防止部材30は、C形鋼である。
【0031】
転倒防止部材30は、長手方向における当て板30cとは反対側の端部側に、一対の脚板部30bをそれぞれ貫通していると共に、長手方向へ延出している長孔30dを、有している。長孔30dは、隣接している接合用孔部20間の距離よりも長い。
【0032】
連結部材40は、詳細な図示は省略するが、転倒防止部材30の一端から当て板30cを取り外し、両端部の双方に、長孔30dと同様の構成である連結用の長孔が設けられている構成に相当する。
【0033】
次に、転倒防止部材30及び連結部材40を使用した転倒防止構造の構築について説明する。まず、転倒防止部材30を、当て板30cを設けている端部が鶏舎壁2へ向くようにして、その長手方向を奥行方向に向ける。そして、転倒防止部材30の一対の脚板部30bの間に、下方から上端奥行部材14の天板部14aと一対の側板部14bとを挿入させる。その後、転倒防止部材30が鶏舎壁2へ向かうようにスライドさせ、転倒防止部材30の当て板30cを鶏舎壁2に圧接することなく接触させる。なお、当て板30cと鶏舎壁2との間には、僅かな空隙(例えば、0.1mm~50mm)を存在させてもよい。
【0034】
転倒防止部材30のスライドにより長孔30dが接合用孔部20に一致したら、ボルト3を、一方の脚板部30bの外側から長孔30d及び接合用孔部20を挿通させ、その先端を反対側の脚板部30bから外方へ突出させた後に、ボルト3の先端にワッシャ4及びナット5を挿入させて締付ける。これにより、転倒防止部材30が多段家禽ケージ10に取り付けられた状態となる。
【0035】
一方、連結部材40は、その長手方向を奥行方向へ向けた状態で、長手方向の両端を、隣接している多段家禽ケージ10のそれぞれの上端奥行部材14に上方から被せる。そして、ボルト及びナットを使用して連結部材40の両端をそれぞれ上端奥行部材14に締結させることにより、隣接している多段家禽ケージ10の支持フレーム12の上端同士が連結された状態となる。
【0036】
上記のようにして、転倒防止部材30及び連結部材40を取り付けることで、転倒防止構造を構築することができる。
【0037】
この本実施形態によれば、地震によって鶏舎壁2に垂直な方向(ここでは、奥行方向)へ振動が作用した場合、多段家禽ケージ10が鶏舎壁2へ向かって転倒しようとしても、転倒防止部材30の先端が鶏舎壁2に当接するため、多段家禽ケージ10が鶏舎壁2へ向かって転倒することはない。また、転倒防止部材30の端部には平板状の当て板30cが設けられており、鶏舎壁2との当接が面と面との当接となるため、転倒防止部材30が鶏舎壁2に食い込むことが防止されている。
【0038】
また、本実施形態によれば、隣接している多段家禽ケージ10のそれぞれの支持フレーム12の上端同士を連結部材40により連結している。従って、地震により奥行方向の振動が作用して、多段家禽ケージ10が鶏舎壁2とは反対の方向、つまり、隣接している多段家禽ケージ10へ向かって転倒しようとしても、連結部材40によって連結されている相手側の多段家禽ケージ10に取り付けられている転倒防止部材30により、転倒が防止されている。
【0039】
また、本実施形態によれば、転倒防止部材30を長孔30dにより奥行方向へスライド可能に取り付けているため、ボルト3及びナット5による締付け力を適宜設定することで、地震により奥行方向へ大きな揺れが作用した時に、接合用孔部20及びボルト3に対して転倒防止部材30が長孔30dの長さ分だけスライド可能とすることができる。これにより、大きな揺れが生じたときに転倒防止部材30の当て板30cが鶏舎壁2に強く当たることを防止することができる。加えて、転倒防止部材30がスライドすることで発生する摺動抵抗により、奥行方向の揺れを減衰させることができ、免振効果をより高めることができる。
【0040】
更に、本実施形態によれば、転倒防止部材30を、多段家禽ケージ10の重心よりも高い多段家禽ケージ10における支持フレーム12の上端に取り付けているため、振動が大きくても多段家禽ケージ10の転倒を確実に防止できる。
【0041】
また、本実施形態によれば、地震によって鶏舎壁2の面方向(ここでは、横方向及び上下方向)へ振動が作用した場合、固有振動数の違いにより鶏舎1の揺れと多段家禽ケージ10の揺れとが異なっていても、転倒防止部材30の先端は壁面に固定されていないため、その先端が壁面に沿って摺動する。これにより、転倒防止部材30や鶏舎壁2のどこかに応力が集中することはなく、応力集中による破損が回避されている。
【0042】
従って、本実施形態の転倒防止構造によれば、鶏舎1内に設置されている多段家禽ケージ10の地震の振動による転倒をより有効に防止することができると共に、多段家禽ケージ10や鶏舎1へのダメージを抑制して養鶏施設の耐震性を高めることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、転倒防止部材30の先端を鶏舎壁2に固定していないため、鶏舎1に対して転倒防止部材30の取付工事をする必要はなく、コストを抑えて導入することができる。また、転倒防止部材30の一端を、支持フレーム12に取り付けている。そのため、中間デッキ50の有無に関わらず、多段家禽ケージ10が必ず有している支持フレーム12に転倒防止部材30を取り付けて、耐震性を高めることができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、転倒防止部材30を、接合用孔部20に対してスライド可能に取り付けているため、支持フレーム12から鶏舎壁2までの距離が区々であっても、転倒防止部材30を接合用孔部20に対してスライドさせることにより、転倒防止部材30において支持フレーム12から鶏舎壁2に向かって突出している長さを調整することができ、先端の当て板30cを鶏舎壁2に対面させて本実施形態の転倒防止構造を確実に構築することができる。
【0045】
本実施形態の転倒防止構造は、図3に示すような、中間デッキ50が設けられている鶏舎1にも使用することができる。中間デッキ50とは、上段側のケージ列に対して、給餌、清掃、鶏のチェック、等を行う作業員のために設けられるものであり、通常は、多段家禽ケージ10における高さ方向の中間に設けられる。本実施形態の転倒防止構造は、多段家禽ケージ10の上端部に設けられるものであるため、中間デッキ50の有無を問わない。
【0046】
従って、例えば、中間デッキ50が架設されているデッキ支持体51の一端を、支持フレーム12の中間奥行部材15に載置して水平方向へ摺動させるようにしても、転倒防止部材30により多段家禽ケージ10の転倒が防止されているため、デッキ支持体51と中間奥行部材15とが接している範囲よりも大きく揺れることはなく、デッキ支持体51が中間奥行部材15から外れることはない。
【0047】
続いて、第二実施形態の転倒防止構造について、図4乃至図6を参照して説明する。第二実施形態の転倒防止構造は、第一実施形態と同様に転倒防止部材を取り付けようとすると干渉してしまう自動給餌装置を使用している、多段家禽ケージ10の転倒を防止するためのものである。例えば、自動給餌装置として、給餌トラフ6の底部を摺動するチェーンフィーダを使用している場合は、第一実施形態の転倒防止構造を適用できるのに対し、自動給餌装置を給餌トラフ6の上方で移動させ、ホッパ7を介して給餌トラフ6に餌を供給する場合は、第二実施形態の転倒防止構造を使用する。第一実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、説明は省略する。
【0048】
第二実施形態の転倒防止構造は、支持フレーム12の上端から上方に延出している取付補助部材35に設けられている接合用孔部20と、接合用孔部20に一端が取り付けられてケージ列と直交するように水平に延出しており、他端が鶏舎壁2に固定されることなく鶏舎壁2に対面している長棒状の転倒防止部材30と、を備えている。
【0049】
取付補助部材35は、上下方向に延びる一対の脚部35aと、一対の脚部35aの上端同士を繋いでいる長棒状の棹部35bと、を有している。一対の脚部35aは、下端が上端奥行部材14を外した支持フレーム12における奥行方向へ離隔している一対の縦部材13の上端にそれぞれ取り付けられており、上端がホッパ7よりも上方へ延出している。棹部35bは、長手方向の両端が脚部35aよりも外方へ延出している。
【0050】
取付補助部材35は、一対の脚部35aと棹部35bとが、溶接やボルト・ナット等により組付けられている。取付補助部材35の一対の脚部35aと棹部35bは、一辺の長さが転倒防止部材30の一対の脚板部30bの間隔よりも短い、角形鋼管である。取付補助部材35は、一対の脚部35aの下端を、縦部材13の上端に嵌めて、取り付けるようにしてもよい。
【0051】
接合用孔部20は、棹部35bにおいて脚部35aより鶏舎壁2に向かって延出している部分に設けられている。接合用孔部20は、第一実施形態と同様に、棹部35bを横方向へ貫通している円形孔であり、奥行方向に離隔して複数が設けられている。
【0052】
第二実施形態の転倒防止構造を構築する際には、転倒防止部材30の当て板30cを、鶏舎壁2に対面させると共に、反対側の端部を棹部35bに上方から被せる。そして、長孔30d及び接合用孔部20を通したボルト3に、ワッシャ4及びナット5を挿入して締付けることにより、取付補助部材35に転倒防止部材30を取り付ける。
【0053】
また、連結部材40は、その長手方向の両端を、隣接している多段家禽ケージ10のそれぞれの取付補助部材35の棹部35bに上方から被せ、ボルト及びナットを使用して締結する。これにより、第二実施形態の転倒防止構造を構築することができる。
【0054】
第二実施形態の転倒防止構造によれば、取付補助部材35を上方に延出させているため、給餌トラフ6の上方で横方向に移動する自動給餌装置が使用されている場合でも、転倒防止部材30とホッパ7及び自動給餌装置が干渉することはなく、多段家禽ケージ10の転倒をより有効に防止することができる。
【0055】
第二実施形態の転倒防止構造は、図7に示すように、給餌トラフ6の上方で横方向へ移動する自動給餌装置が設けられていると共に、中間デッキ50が設けられている鶏舎1にも適用することができる。第二本実施形態の転倒防止構造は、多段家禽ケージ10から上方に延出している取付補助部材35に設けられるものであるため、中間デッキ50の有無を問わない。
【0056】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0057】
例えば、上記の実施形態では、支持フレーム12の上端奥行部材14に接合用孔部20を設けたものを示したが、これに限定するものではなく、支持フレーム12の縦部材13や横部材に接合用孔部20を設けてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、転倒防止部材30を、上端奥行部材14や取付補助部材35の棹部35bに上方から被せて取り付けるものを示したが、これに限定するものではなく、転倒防止部材30を、上端奥行部材14におけるハット形状の内部や、棹部35bにおける角形管状の内部、に挿入して取り付けるようにしてもよい。
【0059】
更に、上記の実施形態では、転倒防止部材30としてC形状のものを示したが、これに限定するものではなく、角形管状のものを使用しても良い。転倒防止部材30を角形管状として上端奥行部材14に取り付ける場合は、ハット形状の内部に挿入する。或いは、上端奥行部材をC形状または角形管状とし、その外部または内部に転倒防止部材を嵌め合わせる。なお、上端奥行部材を角形管状とする場合、縦部材の上端に載置させた状態で上端奥行部材を縦部材に取り付ける。
【0060】
また、上記の実施形態では、支持フレーム12、転倒防止部材30、取付補助部材35、及び連結部材40、等を鋼材を使用したものを示したが、これに限定するものではなく、アルミニウム合金からなる形材を使用してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7