(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】プシコース3-エピメラーゼミュータント、それを発現するための遺伝子工学菌、その固定化酵素及び固定化方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/61 20060101AFI20230913BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230913BHJP
C12N 9/90 20060101ALI20230913BHJP
C12N 11/06 20060101ALI20230913BHJP
C12N 11/08 20200101ALI20230913BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230913BHJP
C12P 19/02 20060101ALI20230913BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C12N15/61
C12N1/21
C12N9/90 ZNA
C12N11/06
C12N11/08
C12N15/63 Z
C12P19/02
C12P21/02 C
(21)【出願番号】P 2022506812
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(86)【国際出願番号】 CN2020136574
(87)【国際公開番号】W WO2021244005
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】202010496928.9
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010985171.X
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523311834
【氏名又は名称】ティアンゴン バイオテクノロジー(ティアンジン)カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】朱▲ユェ▼明
(72)【発明者】
【氏名】陳朋
(72)【発明者】
【氏名】孫媛霞
(72)【発明者】
【氏名】曽艶
(72)【発明者】
【氏名】楊建剛
(72)【発明者】
【氏名】門燕
(72)【発明者】
【氏名】馬延和
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-528925(JP,A)
【文献】特表2009-519019(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110438113(CN,A)
【文献】特開2014-140361(JP,A)
【文献】特表2018-533958(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103131721(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第03480318(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミュータントが
D-フルクトースのD-プシコースへのエピマー化を触媒する活性を有し、
前記ミュータントは、下記(i)~(iii)のいずれかを満たし、
(i)前記ミュータントのアミノ酸配列が、
配列番号1に対して、S36N、Y44A、D117H、F157Y、C165A、I196F、Q251T
およびI265Lの
うち少なくとも1つの
突然変異部
位を含む;
(ii)前記ミュータントのアミノ酸配列が
、配列番号1に対して、Y44A/F157Y、Y44A/I196F、D117H/I196F、F157Y/C165A、F157Y/Q251T、F157Y/I265L
およびI196F/Q251Tの何れか1種の突然変異部位の組合せを含
む;
(iii)前記ミュータントのアミノ酸配列が
、配列番号1に対して、F157Y/C165A/S36N、F157Y/C165A/Y44A、F157Y/C165A/D117H、F157Y/C165A/I196F、F157Y/C165A/Q251T
およびF157Y/C165A/I265Lの何れか1種の突然変異部位の組合せを含
む;
前記ミュータントのアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有する、ことを特徴とする、プシコース3-エピメラーゼミュータント。
【請求項2】
請求項1に記載のプシコース3-エピメラーゼミュータントをコードする核酸。
【請求項3】
請求項1に記載のプシコース3-エピメラーゼミュータントをコードする核酸を含
むことを特徴とする、プシコース3-エピメラーゼミュータントを発現するための遺伝子工学菌。
【請求項4】
前記核酸をベクターに連結して組換えベクターを得た後、更に宿主菌に導入して組換え菌株を得る工程、を含むことを特徴とする、請求項3に記載の遺伝子工学菌の構築方法。
【請求項5】
請求項3に記載の遺伝子工学菌のプシコース3-エピメラーゼミュータント製造における
使用。
【請求項6】
請求項3に記載の遺伝子工学菌を培養して、前記プシコース3-エピメラーゼミュータントをコードする核酸を発現させる工程、を
含むことを特徴とする、プシコース3-エピメラーゼミュータントの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のプシコース3-エピメラーゼミュータントをフルクトースに接触させて触媒反応を実施する工程、を
含むことを特徴とする、D-プシコースの製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載のプシコース3-エピメラーゼミュータントのカルボキシ基末端にリシンを大量に含有するラベルを加え
、当該ラベルがAKAKAKAKAKであることを特徴とする、プシコース3-エピメラーゼ。
【請求項9】
プシコース3-エピメラーゼが固定化樹脂と結合することで形成される固定化酵素であって
、
当該固定化酵素
において固定化されているプシコース3-エピメラーゼが、請求項
1または8に記載の酵素で
あることを特徴とする、プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素。
【請求項10】
(1)マクロポーラス樹脂をpH 7.5-8.0のリン酸カリウム緩衝液に
おいて活性化させる樹脂活性化工程と、
(2)
前記プシコース3-エピメラーゼを異種発現するための遺伝子工学菌の発酵により酵素液を製造し、遺伝子工学菌が大腸菌又は枯草菌である、酵素製造工程と、
(3)活性化された樹脂をプシコース3-エピメラーゼの酵素液に入れて固定化させ、固定化温度が20-40 ℃であり、固定化時間が12-24 hである、固定化工程と、
(4)0.2-0.5 %濃度のグルタルアルデヒド溶液を用いて固定化酵素を架橋し、洗浄及び水切りしてから、プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素を得る架橋工程と、を含むことを特徴とする、請求項
9に記載のプシコース3-エピメラーゼ固定化酵素の製造方法。
【請求項11】
(1)マクロポーラス樹脂を緩衝液に
おいて活性化させる樹脂活性化工程と、
(2)請求項3に記載のプシコース3-エピメラーゼミュータントを発現するための遺伝子工学菌の発酵により酵素液を製造する酵素製造工程と、
(3)活性化された樹脂をプシコース3-エピメラーゼミュータントの酵素液に入れて固定化させる固定化工程と、
(4)架橋剤を用いて固定化酵素を架橋し、プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素を得る架橋工程と、を含
むことを特徴とする、プシコース3-エピメラーゼミュータント固定化酵素の製造方法。
【請求項12】
請求項
9に記載のプシコース3-エピメラーゼ固定化酵素のプシコース製造における
使用。
【請求項13】
請求項
9に記載のプシコース3-エピメラーゼ固定化酵素をフルクトース又はフルクトース含有の原料に接触させて触媒反応を実施する工程、を含
むことを特徴とする、D-プシコースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年6月3日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202010496928.9であり、発明名称が「プシコース3-エピメラーゼミュータント、当該ミュータントを発現するための遺伝子工学菌及び適用」である先行出願、並びに2020年9月18日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202010985171.Xであり、発明名称が「プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素、その固定化方法及び適用」である先行出願の優先権を主張する。上記2件の先行出願は、その全体が引用により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明はバイオ産業の技術分野に属し、具体的にプシコース3-エピメラーゼミュータントに関し、更にプシコース3-エピメラーゼを分泌発現するための遺伝子工学菌株及びその構築方法、並びに当該遺伝子工学菌株の発酵によりプシコース3-エピメラーゼ製剤を製造する適用に関し、また、当該ミュータントの固定化酵素、固定化酵素の製造方法、及び当該固定化酵素によりプシコースを製造する適用に関する。
【背景技術】
【0003】
D-プシコース(D-allulose)はD-フルクトース炭素-3位置のエピ異性体であり、甘味がスクロースの70 %であるが、カロリーが僅か0.2 cal/gであり、更に脂質代謝の改善、食後血糖の低下などの特殊生理機能を有し、食感及び特性がスクロースに近いため、スクロースの理想的な代用品である。関連報道によれば、プシコースはα-グルコシダーゼ、α-アミラーゼ、マルターゼ及びスクラーゼの弱い阻害剤であり、消化管におけるデンプン及び二糖から単糖への代謝を阻害することができると共に、腸管におけるタンパク輸送体により生体のグルコース吸収を阻害することができる。従って、プシコースは潜在的な血糖降下作用を有し、人の食後高血糖を防ぐことができる。プシコースは飲料水、ヨーグルト、アイスクリーム、ベーキング食品及びその他の高カロリー食品における低カロリー甘味剤として適用できる。米国食品医薬品局(FDA)によりD-プシコースがGRAS(Generally recognized as safe)に認証された後に、2019年4月16日にガイドライン案が更に発行され、食品メーカーが栄養成分表示ラベルの総糖質及び添加糖からプシコースの控除が認められることから、プシコースが注目を浴びている。
【0004】
プシコースは自然界における含有量が極少であり、機能性「希少糖」とも呼ばれている。現在、プシコースの製造方法は主に酵素変換法であり、即ち、プシコース3-エピメラーゼ又はタガトース3-エピメラーゼを利用し、フルクトースを基質として変換反応を実施してプシコースを得た。更なる検討につれて、プシコース3-エピメラーゼの幾つかの重要なプロティン構造は解析され、例えば、Agrobacterium tumefaciens由来のプシコース3-エピメラーゼ、Pseudomonas cichorii由来のタガトース3-エピメラーゼなどが挙げられる。研究者がこれらのプロティン構造により提供された重要な情報に基づき、活性及び安定性を向上させるように、幾つかのキー酵素を定向進化させることで、当該キー酵素が製造産業化の適用に適される。
【0005】
高効率的な酵素製造プロセスは、これらの酵素が製造産業化に確実に適用できるかを決定するためのもう1つの要因である。研究者は、大腸菌、枯草菌、コリネバクテリウムグルタミクムなどの宿主菌をオリジナル菌株として、プシコース3-エピメラーゼを異種発現するための遺伝子工学菌株を構築した。枯草菌は高効率的なタンパク質発現及び分泌機能を有するため、発酵によりこれらのキー酵素を製造するための理想的な宿主菌である。中国特許CN105602925Bでは、ルミノコッカス(Ruminococcus sp.)由来のD-プシコース3-エピメラーゼ(RDPE)が枯草菌において非典型的分泌経路を経由して細胞外に高効率的に分泌されることが、実証された。このようなRDPEの分泌特性により発酵による酵素製造のコストが大幅に削減されることで、最終製品であるプシコースの製造コストが削減される。中国特許CN105602879Bでは、RDPEを高効率的に分泌できる枯草菌の遺伝子工学菌株が構築された。しかしながら、触媒活性及び安定性が高く、発酵により製造しやすいプシコース3-エピメラーゼミュータントの開発が依然として必要とされる。
【0006】
また、固定化酵素により酵素の繰返し使用率及び使用周期が増加され、連続製造プロセスに適されるため、プシコース製造コストの更なる削減に繋がる重要要因の1つである。なお、固定化酵素は遊離酵素に比べて、酵素液におけるその他の成分の生成物への混入を回避することができるため、生成物の精製プロセスが更に簡略化される。CJ第一製糖工業株式会社の授権特許CN102869783B及びCN104160023Bでは、プシコース3-エピメラーゼを製造するための遺伝子工学菌株の固定化方法、及び当該固定化細胞によるプシコースの連続製造が開示された。この二つ特許では、アルギン酸カルシウム包埋方法により酵素製造用遺伝子工学菌を固定化させることで、固定化細胞の使用周期を延長したが、包埋による固定化の最大欠点が酵素又は細胞とベクターとの結合力が弱いことであるため、酵素又は細胞が漏洩する可能性がある。また、アルギン酸カルシウムマイクロバルーンは製造過程が複雑であり、硬度が弱いため、長期使用に向いていない。従って、産業化製造に適するプシコース3-エピメラーゼの固定化酵素プロセスの開発が依然として必要であり、固定化酵素の繰返し使用率及び使用周期を大幅に増加することで、プシコース製造コストを削減する。
【発明の概要】
【0007】
本発明はプシコース3-エピメラーゼミュータントを提供し、更にプシコース3-エピメラーゼを分泌発現するための遺伝子工学菌株及びその構築方法、並びに当該遺伝子工学菌株の発酵によりプシコース3-エピメラーゼ製剤を製造する適用に関する。また、本発明は更に前記プシコース3-エピメラーゼ(野生型酵素、そのミュータント又は修飾酵素)の固定化酵素、及び当該固定化酵素の製造方法を提供し、当該方法によりプシコース3-エピメラーゼの簡易的、高効率的且つ低コストの固定化が実現されることで、プシコース3-エピメラーゼミュータントの繰返し使用率及び使用周期が大幅に向上された。
【0008】
本発明は下記の技術案を採用した。
【0009】
第1様態において、本発明はプシコース3-エピメラーゼ(RDPE)ミュータントを提供し、前記ミュータントがD-フルクトースのエピ異性体であるD-プシコースに対する触媒活性を有し、そのアミノ酸配列が、配列番号1(SEQ ID NO.1)に対応するS36、Y44、D117、F157、C165、I196、Q251、I265の少なくとも1つの部位におけるアミノ酸残基の突然変異に含まれる。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記ミュータントのアミノ酸配列がS36、Y44、D117、F157、C165、I196、Q251、I265の何れか2つの部位におけるアミノ酸残基の突然変異を含む。一実施形態において、前記ミュータントのアミノ酸配列が上記2つの部位における突然変異を含むと共に、少なくとも1つの突然変異部位がF157、C165、Q251、I265の何れか1つであり、好ましくは、前記ミュータントのアミノ酸配列の1つの突然変異部位がF157部位であり、もう1つの突然変異部位がC165、Q251、I265の何れか1つである。他の一実施形態において、前記ミュータントのアミノ酸配列がY44/F157、Y44/I196、D117/I196、F157/C165A、F157/Q251、F157/I265、又はI196/Q251の何れかの2つの部位における突然変異を含む。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記ミュータントのアミノ酸配列がS36、Y44、D117、F157、C165、I196、Q251、I265の何れか3つの部位におけるアミノ酸残基の突然変異を含む。一実施形態において、前記ミュータントのアミノ酸配列がF157/C165部位における突然変異、及びS36、Y44、D117、I196、Q251、I265の何れか1つの部位における突然変異を含み、好ましくは、前記ミュータントのアミノ酸配列がF157/C165/I196部位における突然変異を含むか、或いは前記ミュータントがF157/C165/Q251部位における突然変異を含む。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記S36、Y44、D117、F157、C165、I196、Q251、I265の少なくとも1つの部位におけるアミノ酸残基の突然変異が、S36N、Y44A、D117H、F157Y、C165A、I196F、Q251T、I265Lの少なくとも1つの部位における残基の置換から選ばれる。一実施形態において、前記ミュータントのアミノ酸配列がF157Yにおける突然変異を含む。一実施形態において、前記ミュータントのアミノ酸配列がY44A/F157Y、Y44A/I196F、D117H/I196F、F157Y/C165A、F157Y/Q251T、F157Y/I265L、I196F/Q251Tの何れか1種の突然変異部位の組合せを含み、好ましくはF157Y/C165Aである。一実施形態において、前記ミュータントのアミノ酸配列がF157Y/C165A/S36N、F157Y/C165A/Y44A、F157Y/C165A/D117H、F157Y/C165A/I196F、F157Y/C165A/Q251T、F157Y/C165A/I265Lの何れか1種の突然変異部位の組合せを含み、好ましくはF157Y/C165A/I196F又はF157Y/C165A/Q251T部位における突然変異である。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記ミュータントは配列番号1に示されるアミノ酸配列と、70 %以上の相同性(ホモロジー)を有し、例えば80 %以上の相同性を有し、更に例えば90 %以上、95 %以上、98 %以上の相同性を有する。
【0014】
第2様態において、本発明は更に上記プシコース3-エピメラーゼミュータントをコードする核酸を提供する。
【0015】
第3様態において、本発明は更に上記プシコース3-エピメラーゼミュータントを発現するための遺伝子工学菌を提供し、前記遺伝子工学菌が前記プシコース3-エピメラーゼミュータントをコードする核酸を含む。
【0016】
本発明の実施形態によれば、前記遺伝子工学菌は、前記核酸をベクターに連結して組換えベクターを得た後、更に宿主菌に導入して得た組換え菌株である。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記宿主菌は、大腸菌、枯草菌、コリネバクテリウムグルタミクム、乳酸菌又は酵母の何れか1種であり、例えば、B. subtilis 168、WB600、WB800、WB800N、1A751、FZB24、SCK6などの枯草菌を選定してもよく、或いは、E. coli BL21(DE3)、BL21(DE3)pLysS、Rosetta(DE3)、EndoToxin-Free BL21(DE3)、BL21 trxB(DE3)、JM109などの大腸菌を選定してもよい。
【0018】
本発明の実施形態によれば、前記ベクターは、repB枯草菌レプリコンを持つベクター、例えば、pHP13-43、pHT43、pHT304、pMK3、pMK4、pHCMC04、pHCMC05、pMA5、pHY300PLK、pYH-P43の何れか1種を選定してもよい。好ましくは、前記ベクターは、構成的発現プロモーターP43が含まれる枯草菌発現ベクターpNWP43Nから選ばれる。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記核酸がリガーゼ又はPCR組換えの方法によりベクターに連結されることで組換えベクターが形成される。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記遺伝子工学菌がプシコース3-エピメラーゼミュータントを発現する。
【0021】
第4様態において、本発明は更に上記遺伝子工学菌の構築方法を提供し、前記構築方法が、前記核酸をベクターに連結して組換えベクターを得た後、更に宿主菌に導入して組換え菌株を得る工程、を含む。
【0022】
第5様態において、本発明は当該遺伝子工学菌のプシコース3-エピメラーゼミュータント製造における適用を提供する。
【0023】
第6様態において、本発明は更にプシコース3-エピメラーゼミュータントの製造方法を提供し、前記製造方法が、前記遺伝子工学菌を培養して、前記プシコース3-エピメラーゼミュータントをコードする核酸を発現させる工程、を含む。
【0024】
本発明の実施形態によれば、前記培養の温度は35-40 ℃であり、好ましくは37 ℃である;培養時間は24-72 hであり、好ましくは48 hである。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記培養は攪拌又は振動の下で行われ、例えば、攪拌回転数が100-1000 rpmであり、好ましくは300-500 rpmである。
【0026】
本発明の実施形態によれば、前記製造方法が、培養物からプシコース3-エピメラーゼミュータントを分離する工程を、更に含む。
【0027】
第7様態において、本発明は更に上記プシコース3-エピメラーゼミュータントのD-プシコース製造における適用を提供し、前記ミュータントはフルクトースを基質として触媒反応を実施する。
【0028】
第8様態において、本発明は更にD-プシコースの製造方法を提供し、前記製造方法は、前記プシコース3-エピメラーゼミュータントをフルクトースに接触させて触媒反応を実施する工程、を含む。
【0029】
本発明の実施形態によれば、前記触媒反応の温度が40-80 ℃であり、好ましくは、前記反応系において、フルクトースの質量体積濃度が20-80 %(w/v)であり、例えば50 %(w/v)である。
【0030】
一実施形態において、前記D-プシコースの製造方法は、培地にフルクトースを入れ、本発明に係る遺伝子工学菌を培養し、培養物からD-プシコースを分離する工程を、含む。
【0031】
他の好ましい一実施形態において、前記D-プシコースの製造方法は、本発明に係る遺伝子工学菌を培養し、前記プシコース3-エピメラーゼミュータントをコードする核酸を発現させる工程と、培養物からプシコース3-エピメラーゼミュータントを分離する工程と、フルクトースに分離により得られたプシコース3-エピメラーゼミュータントを入れ、触媒反応を実施して、D-プシコースを得る工程と、を含む。
【0032】
第9様態において、本発明は更にプシコース3-エピメラーゼ高活性ミュータントのスクリーニング方法を提供し、前記スクリーニング方法は、
(1)変異体ライブラリーを確立し、菌株の構築、培養、分離を実施する工程と、
(2)フルクトースを入れ、反応を実施する工程と、
(3)リビトールデヒドロゲナーゼ(KRDH)及びコエンザイムNADHを入れ、2回目反応を実施して、反応液を得る工程と、
(4)340 nmで反応液の吸光度変化を測定して、高触媒活性のミュータントを選択する工程と、を含む。
【0033】
工程(4)において、吸光度の低下傾向が高いほど、D-プシコースを多く発生し、ミュータントの触媒活性が高くなること、が示される。
【0034】
本発明のスクリーニング方法によれば、高速液体クロマトグラフィーにより反応液におけるD-プシコースの含有量を測定して、セカンダリスクリーニングを実施する工程を、更に含む。
【0035】
第10様態において、本発明は更に上記プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素を提供し、当該固定化酵素は、ルミノコッカス由来のプシコース3-エピメラーゼ、及び/又はそのミュータント、及び/又はその分子修飾のチモプロテイン(「修飾酵素」とも呼ばれる)が固定化樹脂と結合することで形成されるものである。
【0036】
本発明の実施形態によれば、前記プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素により固定される酵素は、ルミノコッカス由来のプシコース3-エピメラーゼ又はそのミュータントであり、当該酵素が配列番号1と少なくとも60 %、少なくとも70 %、少なくとも80 %、少なくとも85 %、少なくとも90 %、少なくとも95 %又は100 %の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0037】
本発明の実施形態によれば、前記プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素により固定される酵素は、上記第1様態に係るプシコース3-エピメラーゼミュータント、又は上記第3様態に係る遺伝子工学菌により発現されるプシコース3-エピメラーゼミュータントである。
【0038】
本発明の実施形態によれば、前記プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素により固定されるプシコース3-エピメラーゼ又はそのミュータントは、当該酵素又はそのミュータントをコードする遺伝子を持つ遺伝子工学菌株の発酵により培養して得られたものである。そのうち、前記遺伝子工学菌株は、上記第3様態に係る前記プシコース3-エピメラーゼミュータントを発現するための遺伝子工学菌、或いはプシコース3-エピメラーゼをコードする遺伝子を持つ大腸菌遺伝子工学菌株又は枯草菌遺伝子工学菌株であってもよい。
【0039】
本発明の実施形態によれば、前記プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素のベクターは、酵素活性を阻害することなく、プシコース3-エピメラーゼと共有結合が形成できる弱アルカリ性マクロポーラス樹脂であり、当該マクロポーラス樹脂はエポキシ樹脂又はアミノ樹脂であってもよいが、この2種類に限定されるものではない。
【0040】
本発明の実施形態によれば、前記プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素により固定される酵素は、ルミノコッカス由来のプシコース3-エピメラーゼの修飾酵素であり、アルカリ性アミノ酸をより多く導入することで、酵素活性を変えることない前提に、酵素とベクターエポキシ基との共有結合を強化することで、固定化効果を強化して、固定化効率を向上させる。例えば、前記修飾酵素は、プシコース3-エピメラーゼのカルボキシ基末端にAKAKAKAKAKラベルを加えるために、リシンにおける遊離アミノ基と樹脂におけるエポキシ基との架橋により、固定化効率を大幅に向上させた。
【0041】
本発明の実施形態によれば、前記固定化樹脂は、マクロポーラス樹脂、例えば、マクロポーラスエポキシ樹脂又はマクロポーラスアミノ樹脂であってもよい。具体的な実例として、例えば、ES-1、ES-103、ES-108、ESR-1、ESR-2、ESQ-1、LX-1000HA、LX-1000EPN、LX-1000EPHAなどが挙げられる。
【0042】
第11様態において、本発明は更に前記プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素の製造方法を提供し、前記製造方法は、
(1)マクロポーラス樹脂をpH 7.5-8.0のリン酸カリウム緩衝液に置いて活性化させる樹脂活性化工程と、
(2)プシコース3-エピメラーゼ、及び/又はそのミュータント、及び/又は修飾酵素を異種発現するための遺伝子工学菌の発酵により酵素液を製造し、好ましくは、前記遺伝子工学菌が大腸菌又は枯草菌、或いは上記第3様態に係る遺伝子工学菌であってもよい、酵素製造工程と、
(3)活性化された樹脂をプシコース3-エピメラーゼ、及び/又はそのミュータント、及び/又は修飾酵素の酵素液に入れて固定化させ、好ましくは、固定化温度が20-40 ℃であり、固定化時間が12-24 hである、固定化工程と、
(4)0.2-0.5 %濃度のグルタルアルデヒド溶液を用いて固定化酵素を架橋し、洗浄及び水切りしてから、プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素を得る架橋工程と、を含む。
【0043】
本発明の実施形態によれば、工程(1)における樹脂は、マクロポーラス樹脂、例えば、マクロポーラスエポキシ樹脂又はマクロポーラスアミノ樹脂であってもよい。具体的な実例として、例えば、ES-1、ES-103、ES-108、ESR-1、ESR-2、ESQ-1、LX-1000HA、LX-1000EPN、LX-1000EPHAなどが挙げられる。
【0044】
第12様態において、本発明は更に上記プシコース3-エピメラーゼミュータント固定化酵素の製造方法を提供し、前記製造方法は、
(1)マクロポーラス樹脂を緩衝液に置いて活性化させる樹脂活性化工程と、
(2)上記プシコース3-エピメラーゼミュータントを発現するための遺伝子工学菌の発酵により酵素液を製造する酵素製造工程と、
(3)活性化された樹脂をプシコース3-エピメラーゼミュータントの酵素液に入れて固定化させる固定化工程と、
(4)架橋剤を用いて固定化酵素を架橋し、プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素を得る架橋工程と、を含む。
【0045】
本発明の実施形態によれば、工程(1)における樹脂は、マクロポーラス樹脂、例えば、マクロポーラスエポキシ樹脂又はマクロポーラスアミノ樹脂であってもよい。具体的な実例として、例えば、ES-1、ES-103、ES-108、ESR-1、ESR-2、ESQ-1、LX-1000HA、LX-1000EPN、LX-1000EPHAなどが挙げられる。
【0046】
本発明の実施形態によれば、工程(1)における緩衝液はリン酸カリウム緩衝液、例えば、pH 7.5-8.0のリン酸カリウム緩衝液であってもよい。
【0047】
本発明の実施形態によれば、工程(3)における固定化温度が20-40 ℃であってもよく、固定化時間が12-24 hであってもよい。
【0048】
本発明の実施形態によれば、工程(4)における架橋剤はグルタルアルデヒド、グリオキサールなどの架橋剤を含むが、これらに限定されない。例えば、0.2-0.5 %濃度のグルタルアルデヒド溶液を用いて固定化酵素を架橋してもよい。
【0049】
第13様態において、本発明は更に前記プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素のプシコース製造における具体的な適用を提供する。好ましくは、前記固定化酵素はフルクトースを基質として触媒反応を実施する。
【0050】
本発明の実施形態によれば、前記プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素によりフルクトースを変換してプシコースを生成することができ、原料におけるフルクトース濃度が20-75 %(w/v)であり、原料は、純フルクトース溶液、又はフルクトース含有のミックスシロップ(例えば、異性化糖)、又はフルクトース含有の植物抽出物(例えば、フルーツジュース)であってもよい。
【0051】
本発明の実施形態によれば、前記プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素によりフルクトースを変換してプシコースを生成する変換反応の温度は40-70 ℃であり、低温反応は固定化酵素の繰返し使用率又は使用周期を向上させることができるが、高温反応は反応変換率の向上に繋がる。
【0052】
本発明の実施形態によれば、前記プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素によりフルクトースを変換してプシコースを生成する反応系にMn2+又はCo2+イオンを入れ、イオン濃度が0.2-2.0 mMであり、金属イオンを入れることで、固定化酵素の繰返し使用率又は使用周期の向上に繋がる。
【0053】
本発明の実施形態によれば、前記プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素によりフルクトースを変換してプシコースを生成する変換方法は、バッチ反応及び連続反応のどちらを選択してもよい。
【0054】
第14様態において、本発明は更にD-プシコースの製造方法を提供し、前記製造方法は、前記プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素をフルクトース又はフルクトース含有の原料に接触させて触媒反応を実施する工程、を含む。
【0055】
本発明の実施形態によれば、前記フルクトース含有の原料におけるフルクトース濃度が20-75 %(w/v)であり、原料は、純フルクトース溶液、又はフルクトース含有のミックスシロップ(例えば、異性化糖)、又はフルクトース含有の植物抽出物(例えば、フルーツジュース)であってもよい。
【0056】
本発明の実施形態によれば、前記触媒反応の温度が40-70 ℃である。
【0057】
本発明の実施形態によれば、前記D-プシコースの製造方法は、反応系にMn2+又はCo2+イオンを入れ、イオン濃度が0.2-2.0 mMである工程、を含む。
【0058】
本発明の実施形態によれば、前記D-プシコースの製造方法は、バッチ反応及び連続反応のどちらであってもよい。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、プシコース3-エピメラーゼの触媒性能に基づき、ミュータントの高通過量スクリーニング方法が構築されると共に、幾つかのプシコース3-エピメラーゼのミュータントがスクリーニングによって特定され、当該ミュータントは野生型よりも酵素比活性、熱的安定性、異種発現レベルが顕著に向上される他に、大腸菌、枯草菌において高発現する。従って、本発明は更に当該酵素を分泌発現するための遺伝子工学菌を提供し、遺伝子工学菌発酵液におけるプシコース3-エピメラーゼの活性が1436 U/mLにも達し、D-プシコース製造過程に必要とするキー酵素の高効率的製造が実現され、プシコースの製造コストが顕著に削減されることから、幅広い適用見通しが示されている。
【0060】
また、本発明によれば、プシコース3-エピメラーゼ(そのミュータント又は修飾酵素を含む)の固定化方法が確立され、固定化酵素が得られ、当該固定化酵素は遊離酵素よりも熱的安定性が顕著に向上される。当該プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素を用いてフルクトース又はフルクトースが多く含まれる複数種の基質を原料としてプシコースを製造することができ、変換過程についてバッチ反応又は連続反応のどちらを実施してもよく、酵素の繰返し使用率又は使用周期が大幅に向上され、製造コストが削減されることから、幅広い適用見通しが示されている。本発明に係る固定化方法は、発酵後の粗酵素液をそのまま固定化に利用することで、発酵液からRDPE変異タンパク質を抽出する精製工程が不要となるため、コストが削減される他に、発酵の粗酵素液におけるタンパク質異物の含有量が少ないため、標的タンパク質の固定化効率が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】ミュータントの高通過量スクリーニング方策の模式図である。
【
図2】RDPEミュータントと野生型の変性温度(Tm)の測定結果を示す。
【
図3】RDPEミュータントと野生型の大腸菌における封入体の異種発現及び生成の量の比較結果を示す。
【
図4】RDPEミュータントF157Y/C165A/I196Fと野生型の異なる温度(30、40、50、60、70、80 ℃)における相対酵素活性の比較結果を示す。
【
図5】RDPEミュータントの枯草菌遺伝子工学菌株B-3-1における発現状況(M:タンパク分子量基準、1:18 h発酵上澄み、2:24 h発酵上澄み、3:30 h発酵上澄み、4:42 h発酵上澄み)を示す。
【
図6】ラベルを加えることでプシコース3-エピメラーゼ固定化酵素の熱的安定性が向上される結果を示す。
【
図7】プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素の繰返し使用率の結果を示す。
【
図8】実施例9に係る固定化酵素反応器の変換率の経時変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明に係るアミノ酸は、アルファベット1文字又は3文字からなるコードで表され、具体的に、A:Ala(アラニン)、R:Arg(アルギニン)、N:Asn(アスパラギナート)、D:Asp(アスパラギン酸)、C:Cys(システイン)、Q:Gln(グルタミン)、E:Glu(グルタミン酸)、G:Gly(グリシン)、H:His(ヒスチジン)、I:Ile(イソロイシン)、L:Leu(ロイシン)、K:Lys(リシン)、M:Met(メチオニン)、F:Phe(フェニルアラニン)、P:Pro(プロリン)、S:Ser(セリン)、T:Thr(トレオニン)、W:Trp(トリプトファン)、Y:Tyr(チロシン)、V:Val(バリン)である。
【0063】
本発明において、「相同性」は本分野通常の意味を有し、2つの核酸又はアミノ酸配列同士の「同一性」であり、その百分率はベストアライメント(best alignment)を実施した後に得た比較対象である2つの配列同士の同じヌクレオチド又はアミノ酸残基の統計的な百分率を示し、2つの配列同士の差異が配列全体にわたってランダムに分布されている。
【0064】
本発明において、前記変異体は、それらの特定残基における突然変異に基づいて説明され、その位置が野生型酵素配列配列番号1との対照又は酵素配列配列番号1の参照によって決定される。本発明の前後の文は、同様な機能を持つ残基にこれらの同様な突然変異がある何れかの変異体を更に関する。
【0065】
本発明において、用語「プライマー」と「プライマーチェーン」は互いに代用でき、初期の核酸断片であり、通常、標的核酸分子の全部又は一部のプライマー結合部位と相補するRNAオリゴヌクレオチド、DNAオリゴヌクレオチド又はキメラ配列である。プライマーチェーンは、天然の、合成の、又は修飾のヌクレオチドを含む。プライマー長さの下限は、核酸増幅反応の条件において安定的な二本鎖体を形成するのに必要とされる最短長さである。
【0066】
本発明において、用語「ミュータント」と「変異体」は互いに代用でき、「修飾」又は「突然変異」は互いに代用でき、これらの表現は、野生型タンパク質のアミノ酸、例えば、野生型配列配列番号1のルミノコッカス由来のプシコース3-エピメラーゼに対して、又はこれらの酵素に由来する前提で、1つ又はより多くの部位における変更、即ち、置換、挿入及び/又は欠失が含まれるが、その活性が依然として保持されること、を示す。ミュータントは本分野における既知の各種技術により得られる。野生型タンパク質をコードするDNA配列を修飾するための例示的な技術は、定方向突然変異誘発、ランダム変異誘発及び合成オリゴヌクレオチドの構築を含むが、これらに限定されない。更に、宿主菌において修飾により得られたDNA配列を発現させて、アミノ酸配列の置換、挿入及び/又は欠失が発生したミュータントを得た。本発明において、「前記ミュータントは…部位における突然変異を含む」という表現又は「前記ミュータントのアミノ酸配列は…部位における突然変異を含む」という表現は同じ意味を有し、当該変異タンパク質のアミノ酸配列の特定部位において置換、挿入及び/又は欠失が発生したことを示す。アミノ酸位置又は残基の用語「置換」について、特定位置におけるアミノ酸がその他のアミノ酸に取り替えられたことを示す。置換は保存的又は非保存的のどちらであってもよい。
【0067】
本明細書で使用される用語「に対応する」は当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。具体的に、「に対応する」は、2本の配列同士に対して相同性又は配列同一性対照を実施した結果、1本の配列の、もう1本の配列における特定位置に対応する位置のことを示す。従って、例えば、「配列番号1に示されるアミノ酸配列に対応する40番目のアミノ酸残基」を例として、配列番号1に示される何れか1つのアミノ酸配列の一末端に6×Hisラベルを加える場合、得られたミュータントの、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対応する40番目は、ミュータントの46番目である可能性がある。一実施形態において、突然変異部位が相同性対照ソフトにより決定され、例えば、配列と配列番号1とを比較すれば、特定突然変異部位X以外のその他の部位にも置換又は欠失が発生したが、相同性対照ソフトにより突然変異アミノ酸残基が配列番号1に対応するX部位と決定された場合、前記配列は、依然として配列番号1の配列に対応して、X部位に突然変異が発生したものである。
【0068】
具体的な実施形態において、前記相同性又は配列同一性は、90 %以上、好ましくは95 %以上、更に好ましくは98 %の相同性であってもよい。本明細書では、突然変異部位の位置番号及び当該部位のアミノ酸種類を用いて突然変異部位及びその置換を示し、例えば、S36Nは、配列番号1と対照する場合、配列番号1に対応する36番目のセリンがアスパラギナートにより置換されたことを示す。本発明において、「/」を用いて突然変異部位の組合せを示し、例えば、「Y44/F157」は、44番目のチロシン及び157番目のフェニルアラニンに突然変異が発生し、2つの突然変異部位を含み、ダブルミュータントであることを示す。類推すれば、「F157/C165/I196」は、それぞれ対応する3つの部位に突然変異が同時に発生し、トリプルミュータントであることを示す。
【0069】
本明細書において、「プシコース」と「D-プシコース」、「フルクトース」と「D-フルクトース」はそれぞれ同じ意味を有し、互いに代用できる。
【実施例】
【0070】
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案をより詳細に説明する。下記実施例は本発明を例示的に説明・解釈するものだけであり、本発明の請求範囲を限定するものではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づき実現された技術は本発明により請求される範囲内に含まれる。
【0071】
特に記載のない限り、以下の実施例で使用される原料及び試薬は、市販品であるか、又は公知の方法によって製造することができる。
【0072】
本分野で通常使用されるマクロポーラス樹脂は本発明に適用でき、実施例に係るマクロポーラス樹脂はマクロポーラスエポキシ樹脂又はマクロポーラスアミノ樹脂である。前記マクロポーラス樹脂は自社製造又は購入により入手してもよく、例えば、天津南開和成科技有限公司により購入するES-1、ES-103、ES-108、ESR-1、ESR-2、ESQ-1、又は西安藍暁公司により購入するLX-1000HA、LX-1000EPN、LX-1000EPHAの少なくとも1種であってもよい。実際の適用において、これらの樹脂に限定されず、他の会社により購入、又は自社製造してもよいが、上記樹脂と同じ又は似たような吸着能力を有すればよい。
【0073】
〔実施例1 ミュータントの高通過量スクリーニング方法の確立〕
まず、大腸菌発現RDPEは細胞内酵素であるため、菌細胞を破砕した。破砕上澄みを粗酵素液として、基質を入れて反応させた。効率を向上させるために、全細胞反応の方法により触媒反応を実施した。また、本発明の発明者は、RDPE遺伝子がE. coli BL21宿主細胞においてある程度のバックグラウンド発現を示し、IPTGを加えず、タンパク質発現量が酵素活性の測定条件に満たしたため、IPTG添加による誘導工程が省略できることを発見した。
【0074】
次に、RDPEによる触媒反応は、フルクトースとプシコースとの2種のケトース同士の可逆変換反応であり、高速液体クロマトグラフィーにより酵素活性を算出するが、測定時間がかかるため、高通過量スクリーニングに適しない。従って、全細胞変換反応液に、クレブシエラオキシトカ由来のリビトールデヒドロゲナーゼ(KRDH)及びコエンザイムNADHを入れて、2回目反応を実施した。KRDHがプシコースに対して還元力を有するが、フルクトースに対して還元力を有さない上に、反応中にNADHがNAD+に変換されるため、340 nmにおける反応液の吸光度変化を測定することで、1回目反応においてRDPEによる触媒作用によりフルクトースからプシコースへ変換されるプシコースの生成量が分かる。吸光度の低下傾向が高いほど、生成されるプシコースが多くなる。
【0075】
上記2点によれば、本発明は、ELISEによりRDPE変異体ライブラリーを高効率的にスクリーニングする方策を確立すると共に、反応方法、測定方法及び反応温度などの条件を最適化した結果、プシコース3-エピメラーゼ又はタガトース3-エピメラーゼのミュータントの高通過量スクリーニングが実現された。当該過程の模式図は
図1に示される。具体的な方法は下記の通りである。
【0076】
(1)変異体ライブラリーから転換体を選定して、96ウェルディープウェルプレートに接種し、培地が100 μg/mlペンブリティンを含有するLB培地であり、37 ℃、600 rpmで16 h培養した。
【0077】
(2)遠心分離により上澄みを除去し、100 mM pH 7.5リン酸カリウム緩衝液100 μlを入れ、菌細胞を再懸濁させて、更に1 %濃度のフルクトース溶液を入れ、50 ℃、300 rpmで1 h反応させた。
【0078】
(3)遠心分離を行い、上澄み100 μlを吸い取って、96ウェルプレートに入れた後に、10U KRDH及び2 mM NADHを含有する50 mM pH 7.5リン酸カリウム緩衝液100 μlを入れて、十分に混ぜた。
【0079】
(4)96ウェルプレートをマイクロプレートリーダーに置き、温度を30 ℃に設定して、340 nmにおいて動力学測定を行い、吸光度の低下が激しいほど、溶液におけるD-プシコースの含有量が高くなるため、RDPE酵素活性が高くなることは間接的に反映される。
【0080】
〔実施例2 部位特異的飽和突然変異及び組合せ突然変異によるRDPE酵素活性の向上〕
ルミノコッカス由来のプシコースエピメラーゼ(RDPE)、並びにGenbankデータベースにより報告されたプシコースエピメラーゼ及びタガトースエピメラーゼのアミノ酸配列に対して相同性対照分析を実施した。また、RDPEの構造を予測した。Swiss-Model、Phyre2、Discovery Studioなどのソフトを用いて当該酵素野生型タンパク質に対してホモロジーモデリングを実施すると共に、フルクトース分子を基質として分子ドッキングを実施することで、野生型酵素の触媒部位及び基質結合部位を予測し、これらの部位の近傍にあるアミノ酸残基の働きを分析して、RDPEミュータントのアミノ酸配列を設計した。上記分析により、配列番号1に対応するS36、G38、Y44、L110、D117、F122、F157、C165、D194、I196、L207、G215、V244、Q251、I265を突然変異部位として選定して飽和突然変異を実施し、単一部位飽和突然変異ライブラリーを確立した。
【0081】
その後、実施例1に係る高通過量スクリーニングの方策を用いて変異体ライブラリーの転換体に対してスクリーニングを実施し、スクリーニングにより3000余りの転換体から酵素活性が1.2倍向上された8つのミュータントを得て、シークエンシングを実施した。配列を分析した後に、それぞれのミュータント発現菌株を培養し、0.1 mM IPTGを入れて誘導してから、Niカラムによりミュータントタンパク質を精製し、更に酵素活性が向上されたミュータントに対して高速液体クロマトグラフィーによりセカンダリスクリーニングを実施した。具体的な方法は下記の通りである。
【0082】
8 %フルクトース(リン酸カリウム緩衝液、pH 8.0、1 mM Mn2+含有)を基質として、適正濃度のRDPE野生型及びミュータント純酵素を入れて、60 ℃で20 min反応させた。反応終了後、沸騰浴で5 min処理し、HPLCにより生成物D-プシコースの含有量を測定して、RDPE野生型及びミュータントの酵素比活性を算出した。結果は表1に示される。
【0083】
【0084】
上記8つの部位を2つ1組で組合せて、計28個のダブルミュータント発現菌株を構築した。ミュータントタンパク質を精製して、更にHPLCにより活性を測定した。その結果、21個のダブルミュータントは1回目のシングルミュータントよりも酵素活性が明らかに低下したが、残り7つのミュータントのうち、F157Y/C165Aは酵素活性が明らかに向上し、相対酵素活性が野生型の1.53倍である。具体的な結果は表2に示される。
【0085】
【0086】
酵素活性が最も向上されたダブルミュータントF157Y/C165Aを選定し、それぞれS36N、Y44A、D117H、I196F、Q251T、I265Lと組合せて、6つのトリプルミュータントを構築した。ミュータントタンパク質を精製して、更にHPLCにより活性を測定した。酵素活性は表3に示される。トリプルミュータントF157Y/C165A/S36Nは酵素活性が顕著に低下したが、F157Y/C165A/I196F及びF157Y/C165A/Q251Tは野生型より酵素活性が顕著に向上し、かつダブルミュータントF157Y/C165Aより酵素活性も明らかに向上した。
【0087】
【表3】
〔実施例3 部位特異的飽和突然変異及び組合せ突然変異によるRDPE安定性の向上〕
RDPEシングルミュータント、ダブルミュータント及びトリプルミュータントから相対酵素活性150 %以上のミュータント(I196F、F157Y/C165A、F157Y/I265L、F157Y/C165A/I196F、F157Y/C165A/Q251T)を選択して、熱的安定性を測定した。具体的な測定方法は下記の通りである。60 ℃においてRDPEミュータントを30、60、120、240 min熱処理してから、フルクトースを基質として酵素活性を測定した。熱処理していない各ミュータント酵素活性を100 %と定義して、熱処理後の残留酵素活性を算出した。結果は表4に示される。選定された5つのミュータントは野生型より熱的安定性がある程度に向上し、トリプルミュータントF157Y/C165A/I196Fは熱的安定性が最も顕著に向上した。
【0088】
【0089】
更に示差走査熱量法により野生型RDPE及び酵素活性と安定性が最も顕著に向上されたトリプルミュータントF157Y/C165A/I196Fのタンパク質変性温度(Tm)を測定した。結果は
図2に示される。結果によれば、野生型RDPEはTm値が69.3 ℃であるが、トリプルミュータントF157Y/C165A/I196Fはタンパク質変性温度が79.9 ℃である。Tmが顕著に向上されたことは、突然変異RDPEの熱的安定性が野生型より顕著に増強されたことを意味する。
【0090】
〔実施例4 部位特異的変異によるRDPEの大腸菌における可溶性発現レベルの向上〕
上記実施例に係るRDPEミュータントの発現が全て大腸菌E. coli BL21において行われた。初期実験でRDPE野生型の大腸菌における発現により封入体が形成されるため、発現誘導は低温低回転数(20 ℃、100 rpm)で行われた。実験によれば、異なる部位における突然変異が当該タンパク質の封入体の生成量に明らかに影響を与えた。S36N、F157Y、Y44A/F157Y、F157Y/C165A、F157Y/I265L、F157Y/C165A/I196F、F157Y/C165A/Q251Tミュータントは野生型より封入体の生成量が低下したが、その他のミュータントは野生型より生成量が向上した。封入体の生成量を定量するために、超音波破砕後の懸濁液を水で適切に希釈させてから、600 nmにおいて吸光度を測定した。RDPE野生型の600 nmにおける吸光度を1とし、各ミュータントの吸光度相対値を算出して、濁度を、封入体の生成量を評価するための定量指標とする。
図3は封入体の生成量が減少した各ミュータントの吸光度相対値を示す。トリプルミュータントF157Y/C165A/I196Fが大腸菌において発現する場合、封入体の生成量が顕著に低下したため、可溶性タンパク質のレベルが向上した。更に当該ミュータントの発現誘導温度を25 ℃に上昇させてみたが、封入体の生成量が依然として少ない。封入体が減少することで、活性を有する可溶様態であるタンパク質発現がより多くなり、大腸菌の発酵によるRDPE酵素の製造効率及び産出量が向上されることから、良好な適用見通しを有する。
【0091】
〔実施例5 部位特異的変異によるRDPEの枯草菌における分泌発現レベルの向上〕
RDPEが枯草菌において分泌発現することができるため、更にミュータントF157Y/C165A、F157Y/I265L、F157Y/C165A/I196F、F157Y/C165A/Q251Tの枯草菌における分泌発現レベルを分析した。pMA5をベクターとし、B. subtilis 168を宿主菌とし、RDPE野生型及びミュータントの発現遺伝子工学菌株B-0、B-1、B-2、B-3、B-4を構築し、SR培地で48 h培養して、発酵液に分泌されたRDPEの酵素活性を測定した。結果は表5に示される。選択されたRDPEミュータントは野生型より枯草菌における分泌発現量が顕著に向上した。
【0092】
【0093】
〔実施例6 部位特異的変異によるRDPE最適反応温度及びフルクトース変換率の向上〕
RDPE野生型及びミュータントF157Y/C165A/I196Fの異なる温度(30、40、50、60、70、80 ℃)における酵素活性を測定し、最高酵素活性を100 %とし、相対酵素活性を算出して、温度の酵素活性に対する影響を検討した。
図4に示される。ミュータントF157Y/C165A/I196Fは最適温度が60 ℃から70 ℃に上昇し、かつ80 ℃においても65 %以上の相対酵素活性を有するが、野生型は80 ℃において相対酵素活性が僅か約30 %程度である。
【0094】
50 %濃度のフルクトースを基質とし、フルクトース1 gにつき酵素20 UでRDPE野生型及びミュータントF157Y/C165A、F157Y/I265L、F157Y/C165A/I196F、F157Y/C165A/Q251Tを入れ、それぞれ60 ℃、70 ℃、80 ℃において変換反応を行い、平衡変換率を測定した。結果は表6に示される。結果によれば、野生型RDPEは熱的安定性が悪いため、温度上昇につれて変換率が低下するが、測定された4つのミュータントは野生型より熱的安定性が明らかに向上するため、温度上昇につれて変換率が徐々に向上し、最高約33 %程度に達することから、良好な産業化適用見通しを有する。
【0095】
【0096】
〔実施例7 枯草菌分泌遺伝子工学菌株の構築〕
RDPEミュータントF157Y/C165A/I196Fの枯草菌における分泌発現量を更に向上させるために、構成的発現プロモーターP43を含有する枯草菌発現ベクターpNWP43Nを用いて、枯草菌168を宿主菌とし、RDPEミュータントF157Y/C165A/I196Fの発現遺伝子工学菌株B-3-1を構築した。具体的な方法は下記の通りである。PCRによりRDPEミュータントF157Y/C165A/I196Fの遺伝子フラグメントを増幅させて、ダイジェストによりベクターに連結される。連結生成物をB. subtilis 168コンピテンスに入れて十分に混ぜ、37 ℃、200 rpmで1.5 h回復させ、混合液をすべて取り、クロラムフェニコール(25 μg/mL)を含有するLBプレートに塗布し、コロニーPCRにより検証して、枯草菌分泌遺伝子工学菌株B-3-1を得た。
【0097】
〔実施例8 枯草菌の発酵による酵素製造〕
遺伝子工学菌株B-3-1を5L規模の発酵シリンダーにより発酵させ、発酵条件を最適化し、SR培地を用いて、37 ℃、300 rpm条件で48 h培養し、発酵液におけるRDPE活性を測定し、結果が1436 U/mLとなった。当該結果によれば、本発明に係るミュータントプラスミドの安定性が大幅に向上されることで、異種タンパク質RDPEの分泌発現量が向上された。また、SDS-PAGEにより培地に分泌されたRDPEミュータントを測定した結果(
図5)、標的タンパク質が発酵培地に大量に分泌発現され、かつ宿主タンパク質異物が少ない。
【0098】
〔実施例9 プシコース3-エピメラーゼの固定化方法〕
200 g樹脂(ES-1、ES-103、ES-108、ESR-1、ESR-2又はESQ-1)を量って、2 L PBS緩衝液(リン酸水素二カリウム22.8 g、リン酸二水素カリウム2.75 g、1000 mLに定容し、約pH 7.5)に入れて活性化させ、適切に約2 h攪拌した後に、濾過により活性化樹脂を得た。
【0099】
プシコース3-エピメラーゼがルミノコッカスに由来し、当該酵素アミノ酸配列が配列番号1に示される。枯草菌B-0の発酵により細胞外酵素を製造し、発酵液を遠心分離して得られた上澄みが粗酵素液である。プシコース3-エピメラーゼを取り、粗酵素液を得て、適量の活性化樹脂を入れ、室温で一晩攪拌して、固定化させた。その後、0.4 %濃度のグルタルアルデヒド溶液を用いて固定化酵素を架橋し、洗浄及び水切りしてから、プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素を得た。異なる樹脂を用いてプシコース3-エピメラーゼを固定化させた。その固定化酵素活性は表7に示される。結果によれば、天津南開和成科技有限公司の異なるタイプのマクロポーラス樹脂を用いてプシコース3-エピメラーゼを良好に固定化させることができ、エポキシ樹脂ES-108の固定化酵素の酵素活性が最も高い。
【0100】
【0101】
〔実施例10 プシコース3-エピメラーゼの固定化効率及び熱的安定性の向上〕
プシコース3-エピメラーゼの固定化効率を更に向上させ、酵素と樹脂ベクターとの結合力を強化させるために、プシコース3-エピメラーゼのカルボキシ基末端にAKAKAKAKAKラベルを加えた(即ち、修飾酵素)。ラベルにおけるアルカリ性アミノ酸(リシン)側鎖にあるアミノ基により酵素と樹脂におけるエポキシ基との結合部位が増加されることで、固定化効率が向上された。実験結果によれば、ラベルを加えていないプシコース3-エピメラーゼとES-108樹脂との固定化効率は74.7 %であるが、AKAKAKAKAKラベルを加えたプシコース3-エピメラーゼとES-108樹脂との固定化効率は100 %である。実験結果によれば、ラベルを加えたプシコース3-エピメラーゼの酵素比活性が明らかな変化を示していない。
【0102】
ラベルを加えた及び加えていないプシコース3-エピメラーゼの固定化酵素の60 ℃における熱的安定性を更に測定した。具体的な方法は下記の通りである。固定化酵素を取り、60 ℃において一定時間で保温してから、フルクトース溶液を入れて、酵素活性を測定し、保温していない固定化酵素の酵素活性を100 %とし、保温後の固定化酵素の残留酵素活性を算出した。結果は
図6に示される。ラベルを加えたプシコース3-エピメラーゼ固定化酵素はラベルを加えていない固定化酵素より熱的安定性が顕著に向上され、60 ℃において6 h保温した後に依然として90 %以上の活性を有する。固定化酵素の半減期を算出した。ラベルを加えた固定化酵素の60 ℃における半減期は47.9 hであるが、ラベルを加えていない固定化酵素の60 ℃における半減期は僅か14.4 hである。これにより、ラベルを加えることで、固定化酵素の熱的安定性の顕著な向上に繋がる。ラベルを加えたプシコース3-エピメラーゼ固定化酵素の適用について検討し、バッチ反応及び連続反応における効果を測定した。
【0103】
〔実施例11 プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素の繰返し使用率〕
バッチ反応により固定化酵素の繰返し使用回数を測定し、50 %(w/v)フルクトース溶液を基質とし、実施例10に係るカルボキシ基末端にAKAKAKAKAKラベルを加えた修飾酵素固定化酵素を入れて、酵素添加量10 %(w/w)、反応温度55 ℃で2 h反応させた後に、サンプリングして変換率を測定した。その後、濾過により固定化酵素を得て、新しく調製した50 %(w/v)フルクトース溶液に入れて、2回目反応を実施し、2 h反応させた後、サンプリングして変換率を測定した。50回以上反応させるように、上記工程を繰り返す。結果は
図7に示される。現在の酵素添加量ではプシコース3-エピメラーゼ固定化酵素による触媒作用により2 h以内に当該エピメリ化反応を平衡になるようにすることができ、変換率が約30 %である。また、反応系にMn
2+を入れることで、プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素の安定性が大幅に向上される。50回繰り返して反応させた後、フルクトースからプシコースへの変換率が28-29 %になる。
【0104】
〔実施例12 プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素の繰返し使用率〕
当該実施例は、反応変換率が更に向上され、反応時間が短縮されるように、実施例11を基に調整した。
【0105】
バッチ反応により固定化酵素の繰返し使用回数を測定し、50 %(w/v)フルクトース溶液を基質とし、実施例10に係るカルボキシ基末端にAKAKAKAKAKラベルを加えた修飾酵素固定化酵素を入れて、酵素添加量10 %(w/w)、反応温度60 ℃で1 h反応させた後に、サンプリングして変換率を測定した。その他の工程は実施例11と同様である。結果によれば、現在の酵素添加量ではプシコース3-エピメラーゼ固定化酵素による触媒作用により1 h以内に当該エピメリ化反応を平衡になるようにすることができ、変換率が30 %を超える。50回繰り返して反応させた後、フルクトースからプシコースへの変換率が30-31 %になる。
【0106】
〔実施例13 プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素の繰返し使用率〕
当該実施例は、酵素添加量が削減され、固定化酵素繰返し使用率が向上されることで、コストが削減されるように、実施例11を基に調整した。
【0107】
バッチ反応により固定化酵素の繰返し使用回数を測定し、50 %(w/v)フルクトース溶液を基質とし、実施例10に係るカルボキシ基末端にAKAKAKAKAKラベルを加えた修飾酵素固定化酵素を入れて、酵素添加量5 %(w/w)、反応温度50 ℃で4 h反応させた後に、サンプリングして変換率を測定した。その他の工程は実施例11と同様である。結果によれば、現在の酵素添加量ではプシコース3-エピメラーゼ固定化酵素による触媒作用により4 h以内に当該エピメリ化反応を平衡になるようにすることができる。固定化酵素の繰返し反応回数が80回であり、フルクトースからプシコースへの変換率が27-28 %になる。
【0108】
〔実施例14 プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素の繰返し使用率〕
当該実施例は、反応温度が低下されることで、固定化酵素繰返し使用率が更に向上され、反応エネルギー消耗量が削減されるように、実施例13を基に調整した。
【0109】
バッチ反応により固定化酵素の繰返し使用回数を測定し、50 %(w/v)フルクトース溶液を基質とし、実施例10に係るカルボキシ基末端にAKAKAKAKAKラベルを加えた修飾酵素固定化酵素を入れて、酵素添加量5 %(w/w)、反応温度40 ℃で4 h反応させた後に、サンプリングして変換率を測定した。その他の工程は実施例13と同様である。結果によれば、現在の酵素添加量ではプシコース3-エピメラーゼ固定化酵素による触媒作用により4 h以内に当該エピメリ化反応を平衡になるようにすることができる。固定化酵素の繰返し反応回数が100回であり、フルクトースからプシコースへの変換率が26-27 %になる。
【0110】
〔実施例15 プシコース3-エピメラーゼ固定化酵素反応器によるプシコースの連続製造〕
実施例10に係るカルボキシ基末端にAKAKAKAKAKラベルを加えた修飾酵素固定化酵素が保温ジャケット付きのカラム(φ26×200)に充填されることで、固定化酵素反応器とする。反応条件及びパラメータを最適化した結果、保温ジャケットの温度が50 ℃に制御され、70 %(w/v)フルクトース溶液(1 mM Mn2+含有)が2.5 ml/minの流速で当該固定化反応器を通過する場合、反応器流出液におけるプシコースとフルクトースの比率が基本的に平衡になる。平衡変換率が28-29 %であり、当該固定化反応器の半減期が100日以上である。
【0111】
〔実施例16 RDPE突然変異酵素の固定化〕
適切な固定化樹脂を選定し、実施例7で構築された枯草菌分泌遺伝子工学菌株B-3-1の発酵により製造されたRDPEミュータント粗酵素液をそのまま固定化させた。
【0112】
200 g樹脂(LX-1000HA、LX-1000EPN又はLX-1000EPHA)を量って、2 L PBS緩衝液(リン酸水素二カリウム22.8 g及びリン酸二水素カリウム2.75 g、1000 mLに定容し、約pH 7.5)に入れて活性化させ、適切に約2 h攪拌した後に、濾過により活性化樹脂を得た。その後、活性化樹脂を10 %(w/v)の添加量でRDPE突然変異酵素製造用の枯草菌分泌遺伝子工学菌株B-3-1の発酵粗酵素液に入れて、室温で一晩攪拌して、固定化させ、濾過により固定化酵素と上澄み廃液を分離した。上澄み廃液におけるDPE活性を測定した結果、廃液におけるDPE活性がほとんど検出できないことから、遊離RDPEがこれらの3種樹脂に完全に固定化され、固定化効率が100 %である(対照組は、固定化樹脂を入れていない発酵粗酵素液を室温で一晩静置した結果、DPE活性がほとんど変わらない)。最終的に、0.4 %濃度のグルタルアルデヒド溶液を用いて固定化酵素を架橋し、洗浄及び水切りしてから、固定化酵素を得た。
【0113】
LX-1000EPHA固定化RDPE突然変異酵素の固定化酵素が保温ジャケット付きのカラム(φ26×200)に充填されることで、固定化酵素反応器とする。当該固定化反応器によりプシコースを製造した。反応温度が55 ℃に制御され、500 g/Lフルクトース溶液(1 mM Mn
2+含有)が240 ml/hの流速で当該固定化反応器を通過し、定期的にサンプリングして、反応後流出液におけるプシコースの変換率を測定した。結果は
図8に示される。プシコースの最大変換率が30 %以上であり、当該固定化反応器の半減期が約125日である。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の主旨及び原理から逸脱しない限り、行われたいかなる修正、同等置換及び改良などは全て本発明の請求範囲内に含まれるべきである。
【配列表】