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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】テンショナ
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/08 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
F16H7/08 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019130133
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021014889
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】榑松 勇二
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0298502(US,A1)
【文献】特開2016-102534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方側に開口したプランジャ収容穴を有するテンショナボディと、前記プランジャ収容穴に摺動可能に収容され後方側に開口したプランジャ穴を有する円筒状のプランジャと、前記テンショナボディ及び前記プランジャの間の空間を前方側の貯油室及び後方側の圧油室に区画し、前記圧油室へのオイルの流入を許容するとともに前記貯油室へのオイルの逆流を阻止するチェックバルブと、前記圧油室に伸縮自在に収納され前記プランジャをプランジャ突出方向に付勢するメイン付勢手段と、前記テンショナボディの外部から前記貯油室へオイルを供給するオイル供給路を備えたテンショナであって、
前記オイル供給路は、前記テンショナボディの外部から前記プランジャ収容穴の内周面まで貫通するテンショナボディ油供給孔と、前記プランジャの外周面から前記プランジャ穴の内周面まで貫通するプランジャ油供給孔と、前記プランジャ収容穴の内周面と前記プランジャの外周面との間に形成され前記テンショナボディ油供給孔と前記プランジャ油供給孔とを連通させるオイル供給空間とを備え、
前記オイル供給空間が、前記プランジャ収容穴の内周面に形成され前記テンショナボディ油供給孔に連通する前端側連通溝と、前記プランジャの外周面に形成され前記前端側連通溝と前記プランジャ油供給孔を連通させる後端側連通溝とから構成され、
前記プランジャが最後方に押し込まれた状態において、前記前端側連通溝は、前記後端側連通溝に対しプランジャ突出方向にオフセットされていることを特徴とするテンショナ。
【請求項2】
前記プランジャが最後方に押し込まれた状態において、前記前端側連通溝の後端位置と前記後端側連通溝の前端位置との間のプランジャ突出方向の長さをLa、前記前端側連通溝の後端位置と前記プランジャ油供給孔の開口縁の後端位置との間のプランジャ突出方向の長さをLb、前記後端側連通溝の前端位置と前記テンショナボディ油供給孔の開口縁の前端位置との間のプランジャ突出方向の長さをLcとしたとき、La<Lb、かつ、La<Lcの関係式を満足することを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【請求項3】
前記プランジャが最後方に押し込まれた状態において、前記後端側連通溝の前端位置と前記プランジャ収容穴の開口端位置との間のプランジャ突出方向の距離をH1、前記前端側連通溝の後端位置と前記プランジャの後端位置との間のプランジャ突出方向の距離をH2としたとき、H1=H2の関係式を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のテンショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンジンのタイミングシステム等において、伝動ベルトや伝動チェーンに適正な張力を付与するために用いられるテンショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、エンジンルーム内のクランク軸とカム軸の夫々に設けたスプロケット間に無端懸回したローラチェーン等の伝動チェーンを走行案内シューによって摺動案内を行うチェーンガイド機構において、張力を適正に保持するためにテンショナを用いることが慣用されている。
【0003】
このようなチェーンガイド機構に用いられる公知のテンショナとして、前方側に開口したプランジャ収容穴を有するテンショナボディと、プランジャ収容穴に摺動可能に収容され後方側に開口したプランジャ穴を有する円筒状のプランジャと、テンショナボディ及びプランジャの間の空間を前方側の貯油室及び後方側の圧油室に区画し、圧油室へのオイルの流入を許容するとともに貯油室へのオイルの逆流を阻止するチェックバルブと、圧油室に伸縮自在に収納されプランジャをプランジャ突出方向に付勢するメイン付勢手段と、テンショナボディの外部から貯油室へオイルを供給するオイル供給路を備えた構造のものが知られている(特許文献1、2等参照。)。
このようなテンショナにあっては、貯油室内に一定量のオイルを漏出することなく残留させ、長時間停止後の起動直後であっても貯油室内に残留したオイルを圧油室に供給することで、プランジャのオイルによるダンピング力を維持しチェーンの振動を抑制し損傷を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-183767号公報
【文献】特開2016-089854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、テンショナにおいては、チェーンの張力変化を補償するために、プランジャのストローク量を充分に確保することが必要とされる。
上述のテンショナにおいて、オイル供給路は、テンショナボディ油供給孔と、プランジャ油供給孔と、プランジャ収容穴の内周面とプランジャの外周面との間に形成されテンショナボディ油供給孔とプランジャ油供給孔とを連通させるオイル供給空間とにより構成される。そして、オイル供給空間は、例えばプランジャの外周面及びプランジャ収容穴の内周面のいずれか一方にテンショナボディ油供給孔とプランジャ油供給孔とを連通させる連通溝を形成することによって構成されているが、いずれの場合であっても、プランジャのストローク量が制限され、実際上必要とされる充分な大きさのプランジャのストローク量を確保することが困難である、という問題がある。
【0006】
具体的に説明すると、図7(a)、(b)に示すように、テンショナボディ油供給孔114とプランジャ油供給孔122とを連通させるオイル供給空間106が、プランジャ220の外周面に形成された連通溝226によって構成されたテンショナ200においては、プランジャ220のプランジャ突出方向の移動により連通溝226の前端位置がプランジャ収容穴211の開口端位置を越えてプランジャ突出方向前方側に位置されると、プランジャ220の外周面とプランジャ収容穴211の内周面との間の隙間を通ってプランジャ収容穴211の開口からオイルが流出するおそれがある。
従って、テンショナボディ210の壁面によるシール限界は、プランジャ収容穴211の開口端位置から連通溝226の前端位置までのプランジャ突出方向の長さH1で決まり、圧油室102からのオイルの流出を回避するためには、図7(b)に示すように、プランジャ220が設定された最大ストローク量Smaxで突出した状態にあるとき、連通溝226の前端位置がプランジャ収容穴211の開口端位置を越えてプランジャ突出方向前方側に位置されることのないように連通溝226が形成されていることが必要とされる。図7(a)、(b)において、101は貯油室、130はチェックバルブ、140はメイン付勢手段である。
【0007】
一方、図8(a)、(b)に示すように、テンショナボディ油供給孔114とプランジャ油供給孔122とを連通させるオイル供給空間106が、テンショナボディ310におけるプランジャ収容穴311の内周面に形成された連通溝316によって構成されたテンショナ300においては、プランジャ320のプランジャ突出方向の移動によりプランジャ320の後端位置が連通溝316の後端位置を越えてプランジャ突出方向前方側に位置されると、圧油室102が連通溝316を介して直接的にテンショナボディ油供給孔114と連通し圧油室102のオイルが流出するおそれがある。
従って、テンショナボディ310の壁面によるシール限界は、プランジャ320の後端位置から連通溝316の後端位置までのプランジャ突出方向の長さH2で決まり、圧油室102からのオイルの流出を回避するためには、図8(b)に示すように、プランジャ320が設定された最大ストローク量Smaxで突出した状態にあるとき、プランジャ320の後端位置が連通溝316の後端位置を越えてプランジャ突出方向前方側に位置されることのないように連通溝316が形成されていることが必要とされる。
【0008】
このように、プランジャの外周面及びプランジャ収容穴の内周面のいずれか一方に連通溝を形成することによってオイル供給空間を構成する場合には、テンショナボディの壁面によるシール限界の観点から、プランジャのストローク量が制限され、実際上必要とされる充分な大きさのプランジャのストローク量を確保することが困難である、という問題があった。
そして、充分な大きさのプランジャのストローク量を確保するためには、テンショナ全長を大きくする必要があるが、テンショナの大型化、重量化につながり望ましくない。
【0009】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、テンショナボディのサイズを変更することなく、充分な大きさのプランジャのストローク量を確保することができ、小型化、軽量化を図ることのできるテンショナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るテンショナは、前方側に開口したプランジャ収容穴を有するテンショナボディと、前記プランジャ収容穴に摺動可能に収容され後方側に開口したプランジャ穴を有する円筒状のプランジャと、前記テンショナボディ及び前記プランジャの間の空間を前方側の貯油室及び後方側の圧油室に区画し、前記圧油室へのオイルの流入を許容するとともに前記貯油室へのオイルの逆流を阻止するチェックバルブと、前記圧油室に伸縮自在に収納され前記プランジャをプランジャ突出方向に付勢するメイン付勢手段と、前記テンショナボディの外部から前記貯油室へオイルを供給するオイル供給路を備えたテンショナであって、前記オイル供給路は、前記テンショナボディの外部から前記プランジャ収容穴の内周面まで貫通するテンショナボディ油供給孔と、前記プランジャの外周面から前記プランジャ穴の内周面まで貫通するプランジャ油供給孔と、前記プランジャ収容穴の内周面と前記プランジャの外周面との間に形成され前記テンショナボディ油供給孔と前記プランジャ油供給孔とを連通させるオイル供給空間とを備え、前記オイル供給空間が、前記プランジャ収容穴の内周面に形成され前記テンショナボディ油供給孔に連通する前端側連通溝と、前記プランジャの外周面に形成され前記前端側連通溝と前記プランジャ油供給孔を連通させる後端側連通溝とから構成され、前記プランジャが最後方に押し込まれた状態において、前記前端側連通溝は、前記後端側連通溝に対しプランジャ突出方向にオフセットされていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
本請求項1に係るテンショナによれば、オイルの外部への流出を防止するためのテンショナボディの壁面によるシール限界が緩和されるので、テンショナボディのサイズを変更することなく、充分な大きさのプランジャのストローク量を確保することができる。このため、チェーンの張力変化を確実に補償することができ、しかもテンショナの小型化・軽量化が可能となり、スペース効率が良好となるとともに燃費向上に貢献することができる。
【0012】
本請求項2及び本請求項3に係る構成によれば、プランジャのストローク量を可及的に大きくすることができるので、チェーンの張力変化を確実に補償することができ、しかも、オイル供給路の設計自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るテンショナの使用態様を示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係るテンショナの構成を概略的に示す断面図である。
図3図1に示すテンショナにおけるテンショナボディの構成を概略的に示す断面図である。
図4図1に示すテンショナにおけるプランジャの構成を概略的に示す断面図である。
図5図1に示すテンショナにおける要部構成を概略的に示す拡大断面図である。
図6図1に示すテンショナにおけるプランジャが最大設定ストローク量で突出した状態を概略的に示す図である。
図7】従来のテンショナの一例における要部構成を概略的に示す図であって、(a)プランジャが最後方まで押し込まれた状態を示す図、(b)プランジャが最大設定ストローク量で突出した状態を示す図である。
図8】従来のテンショナの他の例における要部構成を概略的に示す図であって、(a)プランジャが最後方まで押し込まれた状態を示す図、(b)プランジャが最大設定ストローク量で突出した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態に係るテンショナについて、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のテンショナ100は、自動車エンジンのタイミングシステム等に用いられるチェーン伝動装置に組み込まれ、複数のスプロケットS1~S3に掛け回された伝動チェーンCHの弛み側にテンショナレバーGを介して適正な張力を付与し、走行時に生じる振動を抑止するために用いられるものである。
【0016】
図2に示すように、テンショナ100は、前方側に開口したプランジャ収容穴111を有するテンショナボディ110と、プランジャ収容穴111に摺動可能に収容され後方側に開口したプランジャ穴121を有する円筒状のプランジャ120と、テンショナボディ110及びプランジャ120の間の空間を前方側の貯油室101及び後方側の圧油室102に区画し、圧油室102へのオイルの流入を許容するとともに貯油室101へのオイルの逆流を阻止するチェックバルブ130と、圧油室102に伸縮自在に収納されプランジャ120をプランジャ突出方向に付勢するメイン付勢手段140と、テンショナボディ110の外部から貯油室101へオイルを供給するオイル供給路105を備えている。
【0017】
テンショナボディ110は、例えばアルミニウム合金等の金属や合成樹脂等により形成され、図3に示すように、プランジャ収容穴111を有した柱状の本体部112と、本体部112と一体に形成されエンジンブロック等に固定するための取付部113を有する。取付部113は、ボルト等が挿通される取付孔113aを有する。
テンショナボディ110には、テンショナボディ110の外部からプランジャ収容穴111の内周面まで貫通するテンショナボディ油供給孔114が形成されている。
【0018】
プランジャ120は、鉄等の金属からなり有底の円筒状に形成されている。
プランジャ120のプランジャ穴121は、図4に示すように、後方側の大径穴121aと、大径穴121aの前方側に段差部121cを介して連続する前方側の小径穴121bとを有している。大径穴121a及び小径穴121bは同軸状に形成されている。
また、プランジャ120には、その外周面から貯油室101を画成する小径穴121bの内周面まで貫通するプランジャ油供給孔122が形成されている。
【0019】
チェックバルブ130は、プランジャ穴121の大径穴121a内において段差部121cの端面に密着するよう配置されたボールシート131と、ボールシート131に密着可能に着座するチェックボール132と、チェックボール132の前方に配置されチェックボール132の移動を規制するリテーナ133とから構成されている。
チェックバルブ130の各構成部材は、金属や合成樹脂等から形成されている。
チェックバルブ130の具体的構成については、圧油室102へのオイルの流入を許容するとともに貯油室101へのオイルの逆流を阻止するものであれば、如何なるものでもよく、例えば、チェックボール132をボールシート131側に向けて付勢するスプリングをチェックボール132とリテーナ133との間に配置してもよい。
【0020】
メイン付勢手段140は、例えば丸線がコイル状に巻回されてなるコイルバネによって構成されている。
メイン付勢手段140は、前端をリテーナ133のフランジ部に当接させるとともに後端をプランジャ収容穴111の底部に当接させた状態で、コイル軸がプランジャ120の中心軸に沿って延びるように圧油室102内に配置されている。また、これにより、メイン付勢手段140は、プランジャ120を前方側に向けて付勢するとともに、チェックバルブ130のリテーナ133及びボールシート131を段差部121cに押し付けて、チェックバルブ130を大径穴121a内で固定している。
【0021】
オイル供給路105は、図5にも示すように、テンショナボディ油供給孔114と、プランジャ油供給孔122と、プランジャ収容穴111の内周面とプランジャ120の外周面との間に形成されテンショナボディ油供給孔114とプランジャ油供給孔122とを連通させるオイル供給空間106とから構成されている。
而して、本実施形態のテンショナ100においてはテンショナボディ110におけるプランジャ収容穴111の内周面にテンショナボディ油供給孔114に連通する前端側連通溝115が形成されるとともに、プランジャ120の外周面にプランジャ油供給孔122に連通する後端側連通溝125が形成されており、オイル供給空間106がプランジャ120の径方向において互いにオフセットされた状態で設けられた前端側連通溝115及び後端側連通溝125により構成されている。
【0022】
前端側連通溝115は、プランジャ収容穴111の開口端面より離れた位置からプランジャ突出方向後方側に延びるよう、プランジャ収容穴111の内周面の全周にわたって形成されている。
後端側連通溝125は、小径穴121bを画成する周壁の後端側部分において、プランジャ突出方向前方側に延びるよう、プランジャ120の外周面の全周にわたって形成されている。
【0023】
本実施形態のテンショナ100においては、図5に示すように、プランジャ120が最後方に押し込まれた状態において、前端側連通溝115の後端位置と後端側連通溝125の前端位置との間のプランジャ突出方向の長さをLa、前端側連通溝115の後端位置とプランジャ油供給孔122の開口縁の後端位置との間のプランジャ突出方向の長さLb、後端側連通溝125の前端位置とテンショナボディ油供給孔114の開口縁の前端位置との間のプランジャ突出方向の長さをLcとしたとき、La<Lb、かつ、La<Lcの関係式を満足するよう、前端側連通溝115及び後端側連通溝125が形成されていることが好ましい。
このような構成とされていることにより、オイル供給空間106がプランジャ収容穴111の内周面に形成された連通溝のみにより構成されたテンショナ、あるいは、オイル供給空間106がプランジャ120の外周面に形成された連通溝のみにより構成されたテンショナに比して、プランジャ120のストローク量を大きく設定することができる。
【0024】
また、プランジャ120が最後方に押し込まれた状態において、後端側連通溝125の前端位置とプランジャ収容穴111の開口端位置との間のプランジャ突出方向の距離をH1、前端側連通溝115の後端位置とプランジャ120の後端位置との間のプランジャ突出方向の距離をH2としたとき、前端側連通溝115及び後端側連通溝125が、H1=H2の関係式を満足するように形成されていることが好ましい。このような構成とされることにより、プランジャ120のストローク量を可及的に大きく設定することができる。
【0025】
而して、本実施形態のテンショナ100においては、テンショナボディ油供給孔114とプランジャ油供給孔122とを連通させるオイル供給空間106がプランジャ120の径方向において互いにオフセットされた状態で設けられた前端側連通溝115及び後端側連通溝125により構成されていることにより、オイルの外部への流出を防止するためのテンショナボディ110の壁面によるシール限界を緩和することができる。
【0026】
すなわち、図7(a)に示されるように、オイル供給空間106がプランジャ120の外周面に形成された連通溝226のみにより構成されたテンショナ200であれば、プランジャ220が最後方まで押し込まれた状態においてテンショナボディ油供給孔114とプランジャ油供給孔122とを連通させるよう連通溝226を形成することが必要とされる。
然るに、本実施形態のテンショナ100においては、プランジャ120の外周面には、テンショナボディ油供給孔114に連通する前端側連通溝115とプランジャ油供給孔122とを連通させるよう後端側連通溝125を形成しさえすれば、図6に示すように、テンショナボディ110の壁面によるシール性を確保することができてオイルの外部への流出を防止することが可能となる。従って、プランジャ収容穴111の開口端位置から後端側連通溝125の前端位置までのプランジャ突出方向の距離H1をオイル供給空間106がプランジャ120の外周面に形成された連通溝226のみにより構成されたテンショナ200に比して大きく設定することができ、結果として、プランジャ120の最大設定ストローク量Smaxを大きくすることができる。
【0027】
また、図8(a)に示されるように、オイル供給空間106がプランジャ収容穴111の内周面に形成された連通溝316のみにより構成されたテンショナ300であれば、プランジャ320が最後方まで押し込まれた状態においてテンショナボディ油供給孔114とプランジャ油供給孔122とを連通させるよう連通溝316を形成することが必要とされる。
然るに、本実施形態のテンショナ100においては、プランジャ収容穴111の内周面には、プランジャ油供給孔122に連通する後端側連通溝125とテンショナボディ油供給孔114とを連通させるよう前端側連通溝115を形成しさえすれば、図6に示すように、テンショナボディ110の壁面によるシール性を確保することができてオイルの外部への流出を防止することが可能となる。従って、プランジャ120の後端位置から前端側連通溝115の後端位置までのプランジャ突出方向の距離H2をオイル供給空間106がプランジャ収容穴111の内周面に形成された連通溝316のみにより構成されたテンショナ300に比して大きく設定することができ、結果として、プランジャ120の最大設定ストローク量Smaxを大きくすることができる。
【0028】
従って、本実施形態のテンショナ100によれば、テンショナボディ110のサイズを変更することなく、充分な大きさのプランジャ120のストローク量を確保することができる。このため、チェーンの張力変化を確実に補償することができ、しかも、テンショナ100の小型化、軽量化が可能となり、スペース効率が良好となるとともに燃費向上に貢献することができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0030】
例えば、上述した実施形態では、テンショナが自動車エンジン用のタイミングシステムに組み込まれるものとして説明したが、テンショナの具体的用途はこれに限定されない。
また、上述した実施形態では、テンショナがテンショナレバーを介して伝動チェーンに張力を付与するものとして説明したが、プランジャの先端で直接的に伝動チェーンの摺動案内を行い、伝動チェーンに張力を付与するようにしてもよい。
さらに、伝動チェーンによる伝動機構に限らず、ベルト、ロープ等の類似の伝動機構に適用されてもよく、長尺物に張力を付与することが求められる用途であれば、種々の産業分野において利用可能である。
また、上述した実施形態では、プランジャを収容するハウジングが、エンジンブロック等に取り付けられる所謂テンショナボディであるものとして説明したが、ハウジングの具体的態様は、上記に限定されず、テンショナボディに形成されたボディ穴内に挿入される円筒状の所謂スリーブであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
100,200,300 ・・・ テンショナ
101 ・・・ 貯油室
102 ・・・ 圧油室
105 ・・・ オイル供給路
106 ・・・ オイル供給空間
110,210,310 ・・・ テンショナボディ
111,211,311 ・・・ プランジャ収容穴
112 ・・・ 本体部
113 ・・・ 取付部
113a ・・・ 取付孔
114 ・・・ テンショナボディ油供給孔
115 ・・・ 前端側連通溝
316 ・・・ 連通溝
120,220,320 ・・・ プランジャ
121 ・・・ プランジャ穴
121a ・・・ 大径穴
121b ・・・ 小径穴
121c ・・・ 段差部
122 ・・・ プランジャ油供給孔
125 ・・・ 後端側連通溝
226 ・・・ 連通溝
130 ・・・ チェックバルブ
131 ・・・ ボールシート
132 ・・・ チェックボール
133 ・・・ リテーナ
140 ・・・ メイン付勢手段
CH ・・・ 伝動チェーン
G ・・・ テンショナレバー
S1~S3 ・・・ スプロケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8