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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/60 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
B60N2/60
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019211683
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021079923
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】大久保 竜也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓真
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038427(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016137(WO,A1)
【文献】実開昭59-184237(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第03498529(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/58-60
A47C 31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの下面を覆うように張られるカバー部材と、
前記シートクッションを支持するために前記シートクッションの下部に取り付けられた脚部材と、を有し、
前記脚部材は、前記シートクッションに接続する支持部と、該支持部により前記シートクッションの下面と離間した状態で支持される下辺部とを備え、
前記カバー部材は、
前記シートクッションの下面を覆うと共に、前記脚部材の前記下辺部が通る挿通孔が形成された外側表皮と、
前記外側表皮より内側において、前記挿通孔を塞ぐように配置される内側表皮と、を備え、
少なくとも前記挿通孔の周囲において、前記内側表皮と前記外側表皮とにより前記シートクッションの下面を被覆する重ね合わせ部が形成されることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記内側表皮は、前記シートクッションの後端から前方に向けて延びるよう前記カバー部材に設けられ、
前記外側表皮は、前記シートクッションの前端から後方に向けて延びるよう前記カバー部材に設けられることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記内側表皮は、面ファスナにより前記外側表皮に対して固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記シートクッションは、該シートクッション内のクッションパッドを下方から支持するパンフレームを有し、
前記面ファスナは、下面視で前記パンフレームと重なるように配置される第一の面ファスナを含み、
該第一の面ファスナの幅は、前記パンフレームの幅と略同じ長さであることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第一の面ファスナは、前記内側表皮と前記外側表皮とを重ね合わせたとき、前記挿通孔の前後方向の近傍に位置するように配置されることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記面ファスナは、前記内側表皮の後端部と前記外側表皮の後端部との間に配置される第二の面ファスナを含み、該第二の面ファスナにより前記外側表皮の後端部が前記内側表皮の後端部に固定されることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記内側表皮は、前記内側表皮の幅が前記シートクッション内において左右側部に設けられたサイドフレームの離間距離よりも長くなるように形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記シートクッションは、該シートクッション内において左右側部に設けられたサイドフレームと、該サイドフレームの後端部に架け渡されたワイヤ部と、を有し、
前記内側表皮は、前記ワイヤ部に掛け止められる掛け止め部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記シートクッションは、該シートクッション内のクッションパッドを下方から支持するパンフレームを有し、
前記掛け止め部は、前記パンフレームよりも幅方向外側の位置で前記ワイヤ部に掛け止められるよう前記内側表皮に設けられることを特徴とする請求項8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記内側表皮は、前記外側表皮の裏面に縫い付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に、シートクッションの下面を覆うようにカバー部材が張られ、シートクッションを支持するための脚部材がシートクッションの下部に取り付けられている乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートの中には、シートクッションの下面(裏面)を覆うようにトリムカバー等のカバー部材が張られているシートがある。また、乗物用シートの構成としては、シートクッションを支持するためにシートクッションの下部に脚部材が取り付けられている構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の乗物用シート(車両用シート)では、シートクッションに対して回動可能な脚部材がシートクッションの下部に取り付けられている。そして、特許文献1に記載の乗物用シートでは、シートクッションに近付く向きに脚部材を回動させることでシートクッションに対して脚部材を折り畳むことが可能である。
【0003】
脚部材が取り付けられたシートクッションの下面を覆うようにカバー部材を張る場合には、脚部材とシートクッションの下面との間の隙間にカバー部材を通すことになる。
【0004】
より具体的に説明すると、特許文献1に記載の乗物用シートでは、シートクッションの下面において互いに隣り合う2つの領域のうち、一方の領域を覆うカバー部材の端部を上記の隙間に潜らせる。そして、当該隙間を通ったカバー部材の端部を、上記2つの領域のうちの他方の領域を覆うカバー部材の端部と接続させる。カバー部材の端部同士を接続する構成としては、一方のカバー部材の端部に係合部を設け、他方のカバー部材の端部に被係合部を設ける。つまり、係合部が設けられたカバー部材の端部を、脚部材とシートクッションの下面との間の隙間に潜らせて、被係合部に設けられたカバー部材の端部に近付け、最終的に係合部を被係合部に係合させることでカバー部材の端部同士が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-38427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のカバー部材は、シートクッションの下面を分割された複数の表皮ピースを用いて覆っているが、隣接する表皮ピースを接続する係合部及び被係合部としてトリムコードが使用されており、組立てに手間とコストがかかるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、脚部材とシートクッションの下面との間の隙間にカバー部材の一部分を潜らせてカバー部材を張る乗物用シートとして、より部品数が少ない簡便な構造によりカバー部材を取り付けることが可能な乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、シートクッションの下面を覆うように張られるカバー部材と、前記シートクッションを支持するために前記シートクッションの下部に取り付けられた脚部材と、を有し、前記脚部材は、前記シートクッションに接続する支持部と、該支持部により前記シートクッションの下面と離間した状態で支持される下辺部とを備え、前記カバー部材は、前記シートクッションの下面を覆うと共に、前記脚部材の前記下辺部が通る挿通孔が形成された外側表皮と、前記外側表皮より内側において、前記挿通孔を塞ぐように配置される内側表皮と、を備え、少なくとも前記挿通孔の周囲において、前記内側表皮と前記外側表皮とにより前記シートクッションの下面を被覆する重ね合わせ部が形成されることにより解決される。
【0009】
上記のように構成された本発明の乗物用シートでは、脚部材が通る挿通孔が形成された外側表皮と、外側表皮とシートクッションの下面との間に配置される内側表皮と、により、シートクッションの裏面を覆っている。そのため、より部品数が少ない簡便な構造によりカバー部材を取り付けることが可能となる。
また、内側表皮により外側表皮に形成された挿通孔が塞がれると共に、挿通孔の周囲に内側表皮と外側表皮とによりシートクッションの下面を被覆する重ね合わせ部が形成される。そのため、脚部材の根元部分(シートクッションと支持部との接続部分の周囲)を隠すことができ、意匠性を向上させることが可能となる。
【0010】
また、上記の構成において、前記内側表皮は、前記シートクッションの後端から前方に向けて延びるよう前記カバー部材に設けられ、前記外側表皮は、前記シートクッションの前端から後方に向けて延びるよう前記カバー部材に設けられるとよい。
上記の構成では、外側表皮が後方に向けて延びることで内側表皮を覆うことにより、内側表皮と外側表皮により袋状部が形成され、その開口部が後方を向くようになる。そのため、乗員がシートクッションの下面前方側から内側表皮に接触することを抑制することができる。
【0011】
また、上記の構成において、前記内側表皮は、面ファスナにより前記外側表皮に対して固定されるとよい。
上記の構成により、内側表皮が外側表皮に対して移動することを容易に抑制することができ、また、内側表皮を外側表皮から取り外すことも容易にできる。
【0012】
また、上記の構成において、前記シートクッションは、前記シートクッション内のクッションパッドを下方から支持するパンフレームを有し、
前記面ファスナは、下面視で前記パンフレームと重なるように配置される第一の面ファスナを含み、該第一の面ファスナの幅は、前記パンフレームの幅と略同じ長さであるとよい。
第一の面ファスナがパンフレームと重なるように配置されることにより、外側表皮を内側表皮に取り付ける際、パンフレームに第一の面ファスナを押さえつけることで、確実に外側表皮と内側表皮とを貼り合わせることができる。
【0013】
また、上記の構成において、前記第一の面ファスナは、前記内側表皮と前記外側表皮とを重ね合わせたとき、前記挿通孔の前後方向の近傍に位置するように配置されるとよい。
上記の構成では、挿通孔の近傍で、内側表皮が外側表皮に対して移動することを抑制することができる。そのため、乗員から目につきやすい挿通孔周辺の意匠性を効果的に向上させることが可能である。
【0014】
また、上記の構成において、前記面ファスナは、前記内側表皮の後端部と前記外側表皮の後端部との間に配置される第二の面ファスナを含み、該第二の面ファスナにより前記外側表皮の後端部が前記内側表皮の後端部に固定されるとよい。
上記の構成では、外側表皮の後端部が内側表皮に固定されるため、内側表皮と外側表皮により形成された袋状部の開口部が容易に閉じられるようになる。
【0015】
また、上記の構成において、前記内側表皮は、前記内側表皮の幅が前記シートクッション内において左右側部に設けられたサイドフレームの離間距離よりも長くなるように形成されるとよい。
脚部材の根元付近では、脚部材が前後方向に回転できるよう、クッションパッドが凹んでいる場合がある。そのため、クッションパッドを内側表皮により端部まで覆うためには、クッションパッドの凹みのカーブの分だけ、シートクッションの左右側部に設けられたサイドフレームの離間距離より、内側表皮の幅方向の長さを大きくする必要がある。内側表皮の幅方向の長さを大きくすることにより、パッドの端部が露出することを抑制することが可能となる。
【0016】
また、上記の構成において、前記シートクッションは、該シートクッション内において左右側部に設けられたサイドフレームと、該サイドフレームの後端部に架け渡されたワイヤ部と、を有し、前記内側表皮は、前記ワイヤ部に掛け止められる掛け止め部を有するとよい。
上記の構成により、シートクッション内のサイドフレームを利用することにより、内側表皮をシートクッションの後端部に取り付けることが可能になる。
【0017】
また、上記の構成において、前記シートクッションは、該シートクッション内のクッションパッドを下方から支持するパンフレームを有し、前記掛け止め部は、前記パンフレームよりも幅方向外側の位置で前記ワイヤ部に掛け止められるよう前記内側表皮に設けられるとよい。
上記の構成により、パンフレームを避けて、掛け止め部をワイヤ部に取り付けることができる。
【0018】
また、上記の構成において、前記内側表皮は、前記外側表皮の裏面に縫い付けられるとよい。内側表皮が外側表皮に縫い付けられることで、確実に内側表皮を外側表皮に固定することができ、内側表皮の移動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の乗物用シートによれば、脚部材とシートクッションの下面との間の隙間を潜ることにより配置される内側表皮と、脚部材が通る挿通孔が形成された外側表皮とにより、シートクッションの裏面を覆っている。そのため、より部品数が少ない簡便な構造によりカバー部材を取り付けることが可能となる。
また、内側表皮により外側表皮に形成された挿通孔が塞がれると共に、内側表皮と外側表皮とによりシートクッションの下面を被覆する重ね合わせ部が形成される。そのため、脚部材の根元部分(シートクッションと支持部との接続部分の周囲)を隠すことができ、意匠性を向上させることが可能となる。
また、外側表皮が後方側に向けて内側表皮を覆うことにより、内側表皮と外側表皮により袋状部が形成され、その開口部が後方を向くようになる。そのため、乗員がシートクッションの下面前方側から内側表皮に接触することを抑制することができる。
また、内側表皮を第一の面ファスナにより外側表皮に固定することで、内側表皮が外側表皮に対して移動することを容易に抑制することができ、また、内側表皮を外側表皮から取り外すことも容易にできる。
また、第一の面ファスナがパンフレームと重なるように配置されることにより、外側表皮を内側表皮に取り付ける際、パンフレームに第一の面ファスナを押さえつけことで、確実に外側表皮と内側表皮とを貼り合わせることができる。
また、第一の面ファスナを挿通孔の前後方向の近傍に位置するように配置することで、挿通孔の近傍で、内側表皮が外側表皮に対して移動することを抑制することができる。そのため、乗員から目につきやすい挿通孔周辺の意匠性を効果的に向上させることが可能である。
また、第二の面ファスナが、内側表皮の後端部と外側表皮の後端部との間に配置されることで、内側表皮と外側表皮により形成された袋状部の開口部が容易に閉じられるようになる。
また、内側表皮の幅を、左右側部に設けられたサイドフレームの離間距離よりも長くすることにより、脚部材の根元付近に形成されたクッションパッドの端部が露出することを抑制することができる。
また、内側表皮が、サイドフレームの後端部に架け渡されたワイヤ部に掛け止められる掛け止め部を有することで、内側表皮をシートクッションの後端部に取り付けることが可能になる。
また、パンフレームよりも幅方向外側の位置に掛け止め部を設けることで、パンフレームを避けて掛け止め部を取り付けることができる。
また、内側表皮が外側表皮に縫い付けられることで、確実に内側表皮を外側表皮に固定することができ、内側表皮の移動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る乗物用シートが着座可能状態にあるときの図である。
図2】本発明の一実施形態に係る乗物用シートがチップアップ状態にあるときの図である。
図3】シートクッションフレーム及びその周辺機器を示す斜視図である。
図4】シートクッションを下方から見た図であり、トリムカバー(カバー部材)の外側表皮及び内側表皮によりシートクッションの下面を覆う前の状態を示す図である。
図5】シートクッションを下方から見た図であり、トリムカバーの内側表皮を下面に敷いた状態を示す図である。
図6】シートクッションを下方から見た図であり、シートクッションの下面をトリムカバーにより覆った状態を示す図である。
図7図6のVII-VII線に沿った断面図である。
図8図6のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9】内側表皮を外側表皮に縫い付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0022】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、車両用シート以外の乗物用シート、例えば、船舶や航空機に搭載されるシートにも適用され得る。
【0023】
また、以下の説明において、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの幅方向であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
【0024】
なお、以下に説明するシート各部の形状、位置及び状態等については、特に断る場合を除き、車両用シートが着座可能状態(すなわち、シート各部が着座可能位置に配置された状態)にあるケースを想定して説明することとする。一例を挙げて説明すると、「シートクッションの下面」は、車両用シートが着座可能状態にあるときにシートクッションの下端に位置する面であり、乗員が着座している面(着座面)とは反対側の面(裏面)である。
【0025】
<<本実施形態に係る車両用シートの基本構成>>
本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS)の基本構成について、図1図3を参照しながら説明する。図1及び図2は、車両用シートSの側面図であり、図1は、着座可能状態にあるときの図、図2は、後述するチップアップ状態にあるときの図である。図3は、シートクッションフレーム1及びその周辺機器を示す斜視図である。
【0026】
車両用シートSは、車両の後部座席として利用される。車両用シートSは、図1及び図2に示すようにシートクッションS1及びシートバックS2を有する。シートクッションS1は、シートバックS2に対して、シート幅方向(左右方向)に沿う軸を中心として回動することが可能である。また、シートバックS2はレール部材21により車体フロアFに対して前後方向にスライド可能に取り付けられている(図3参照)。
【0027】
また、車両用シートSは、図1等に示すように、シートクッションS1の下部に脚部材10を備えている。脚部材10は、金属パイプを略U字状に折り曲げることで構成されており、シートクッションS1の下部に取り付けられている。そして、脚部材10は、図1に示すように、車両用シートSが着座可能状態にあるときにシートクッションS1を下方から支持している。このとき、脚部材10は、車体フロアFに固定された略C字状の板ばねからなる脚保持部材20に保持されている。
【0028】
車両用シートSは、通常時は図1に図示の着座可能状態にあるが、非使用時には図2に図示のチップアップ状態に移行することが可能である。チップアップ状態とは、図2に示すように、シートバックS2が起立姿勢にあるときにシートクッションS1をシートバックS2に向けて、矢印A方向に跳ね上げることで至る状態である。
【0029】
車両用シートSをチップアップ状態に移行させるには、脚保持部材20に保持された脚部材10を脚保持部材20から外し、シートクッションS1をシートバックS2に近付けるように後方(矢印A方向)に回動させることになる。このとき、脚部材10は、シートクッションS1と一体的に回動する。また、脚部材10は、シートクッションS1に対して、シート幅方向に沿う軸を中心として回動することが可能な状態で取り付けられている。これにより、チップアップ状態にあるときに、図2に示すように、脚部材10を矢印B方向に回動させて脚部材10をシートクッションS1に対して折り畳むことが可能となる。
【0030】
なお、以下では、脚部材10がシートクッションS1に対して折り畳まれている状態を、「収納状態」と呼ぶこととし、脚部材10がシートクッションS1に対して起立している状態を、「展開状態」と呼ぶこととする。脚部材10は、シートクッションS1が着座可能な位置にあるときに展開状態にあると、シートクッションS1を下方から支持する。一方で、脚部材10は、収納状態にあるとき、シートクッションS1の下面と隣り合うように折り畳まれている。
【0031】
<<シートクッション及び脚部材の構成>>
次に、シートクッションS1及び脚部材10の構成について、前述の図1から図3と共に、図4から図8を参照しながら説明する。図4は、シートクッションS1を下方から見た図であり、シートクッションS1の下面を、トリムカバー30(カバー部材)により覆う前の状態を示す図である。なお、図4に示す脚部材10は、シートクッションS1に対して起立し、展開した状態となっている。図5は、シートクッションS1を下方からみた図であり、トリムカバー30の内側表皮32をシートクッションS1の下面に敷いた状態を示す図である。図6は、シートクッションS1を下方から見た図であり、シートクッションS1の下面をトリムカバー30の外側表皮34により覆った状態を示す図である。図7は、図6のVII-VII線に沿った断面を示す図である。図8は、図6のVIII-VIII線に沿った断面を示す図である。
【0032】
シートクッションS1は、図3に図示のシートクッションフレーム1にクッションパッド28を載せ、その表面をトリムカバー30により覆うことで構成されている。トリムカバー30は、カバー部材に相当し、表皮、布、フィルムやシート等により構成され、所定のテンションが掛かるように張られた状態でクッションパッド28を覆うよう取り付けられる。また、本実施形態では、トリムカバー30がシートクッションS1の下面を覆うように張られている。
【0033】
トリムカバー30を張る際には、トリムカバー30の端部を所定箇所に引っ掛けることになるが、本実施形態では、図4に示すように、まず、シートクッションS1の下面以外の部分を覆うようにトリムカバー30をかぶせ、その後、下面を覆うように設けられた内側表皮32及び外側表皮34を順にかぶせ、線ファスナ36を閉じることにより取り付けるという構成になっている。なお、トリムカバー30の構成については、後に詳述する。
【0034】
脚部材10は、図4に示すように、根元部がシートクッションフレーム1に対して回動可能に支持された左右の支持部12L、12Rと、左右の支持部12L、12Rの自由端部(回転支持される側とは反対側の端部)を連結し水平方向(シート幅方向)に延びる下辺部11と、を有する。脚部材10は、全体として概ねU字状に形成されている。
支持部12Lは、下辺部11のシート幅方向一端部に接続されており、下辺部11に対して略直交している。支持部12Lは、下辺部11のシート幅方向他端部に接続されており、下辺部11に対して斜め方向に延出し、図3に示すように途中で屈曲している。しかしながら、右側の支持部12Rは、左側の支持部12Lのように直線状に形成されてもよい。
【0035】
下辺部11は、車両用シートSが着座可能な状態であって脚部材10が展開状態にあるときに、脚保持部材20によって保持される(すなわち、C字状の脚保持部材20の内側に嵌まり込む)部分である。本実施形態において、下辺部11は、シートクッションS1の横幅(シート幅方向における長さ)に比較して短くなっている。
【0036】
脚部材10は、左右の回転保持部(ブラケット)を介して、シートクッションフレーム1に回動可能に支持される。脚部材10は、シートクッションS1の底面に向けて、シートクッションS1の後方側に回動して折り畳み可能である。脚部材10は、展開状態で、シートクッションS1の底面に対して略垂直に延びるようになり(図1、3参照)、収納状態で、シートクッションS1の下面に近接又は当接する(図2参照)。つまり、脚部材10は、シートクッションS1に対して相対的に回動することが可能な構成となっている。
【0037】
なお、シートクッションフレーム1を構成する各部材の構成材料としては、荷重を受けたときに大きく変形しないよう十分な剛性をもつ材料、例えば、鋼材やアルミニウム合金等の金属材料が挙げられる。シートクッションフレーム1を構成する各部材同士の接合手段は溶接であるが、接合手段としては、ボルト、接着剤による接合を併用してもよい。
【0038】
脚部材10は、展開状態にあるときにはシートクッションS1の下面に対して略垂直に延びるようになる。展開状態において下辺部11は、シートクッションS1の下面と離間していて、シートクッションS1との間に空間Vが設けられた状態となる。
【0039】
上記の空間Vには、図5に示すようにトリムカバー30の内側表皮32が通り、内側表皮32をその空間Vを潜らせることにより、内側表皮32は、展開状態にある下辺部11に対向するシートクッションS1の下面の一部を覆い、後述する外側表皮34の挿通孔35を塞ぐように配置される。
【0040】
<<トリムカバー30の詳細構成>>
次に、トリムカバー30の詳細構成について、上述の図4図6を参照しながら説明する。以下の説明中、「クッション前後方向」とは、シートクッションS1の前端から後端に向かう方向であり、車両用シートSが着座可能状態にあるときには前後方向と一致し、車両用シートSがチップアップ状態にあるときには上下方向と略一致する。また、クッション前後方向において、「前方」とは、シートクッションS1の自由端が位置する方を意味する。
【0041】
なお、以下では、脚部材10が展開状態にあるケースを前提としてトリムカバー30の構成を説明することとする。
【0042】
シートクッションS1を覆うトリムカバー30は、シートクッションS1(より詳細にはクッションパッド28)の上面及び周囲側面を覆うカバー本体31と、図4図6に示すように、脚部材10の下辺部11が通る挿通孔35が形成された外側表皮34と、外側表皮34より内側において、空間Vを潜り少なくとも挿通孔35を塞ぐよう配置される内側表皮32と、を備える。
【0043】
トリムカバー30は、シートクッションフレーム1にクッションパッド28を取り付けた後、カバー本体31がクッションパッド28の上面及び周囲側面を覆うように取り付けられる。外側表皮34は、カバー本体31の前端部と一方の側部とが縫い付けられている。
【0044】
図4に示す状態では、シートクッションフレーム1のパンフレーム24と、シートクッションS1内において左右側部に設けられたサイドフレーム22と、左右のサイドフレーム22の後端部に架け渡されたワイヤ部26とが露出している。
【0045】
カバー本体31の後端部と外側表皮34とは接合されておらず、図4の状態から折り返して外側表皮34と重ね合わせられる内側表皮32が取り付けられている。脚部材10を展開状態にし、内側表皮32を、空間Vを潜って通すことで、図5に示すように、内側表皮32がシートクッションS1の下面に配置される。
【0046】
外側表皮34は、カバー本体31の他方の側部とは線ファスナ36により接合可能となっている。線ファスナ36を閉じることにより、シートクッションS1の下面を覆うことができる。
外側表皮34には、脚部材10を挿通可能なよう、シート幅方向に延びる長孔である挿通孔35が形成されており、外側表皮34が下面を覆ったとき、挿通孔35から脚部材10が外出するようになっている(図6図8参照)。
【0047】
取り付けた後、外側表皮34に形成された挿通孔35は、内側表皮32により塞がり、少なくとも挿通孔35の周囲において、内側表皮32と外側表皮34とによりシートクッションS1の下面を被覆する重ね合わせ部40が形成されるようになる(図6参照)。
【0048】
内側表皮32を、空間Vを潜らせて配置し、内側表皮32の外側に外側表皮34を配置することで、従来の構成より部品数が少なく簡便な構造で、下面に脚部材10が取り付けられたシートクッションS1にトリムカバー30を取り付けることが可能になる。
また、内側表皮32により外側表皮34に形成された挿通孔35が塞がれると共に、内側表皮32と外側表皮34とによりシートクッションS1の下面を被覆する重ね合わせ部40が形成されるため、脚部材10の根元部分、とくにシートクッションフレーム1と支持部12R、12Lとの接続部分の周囲を隠すことができ意匠性が向上する。
【0049】
内側表皮32は、シートクッションS1の後端部から前方に向けて、より具体的にはトリムカバー30のカバー本体31の後端部から前方に向けて延びるよう設けられている。一方、外側表皮34は、シートクッションS1の前端部から後方に向けて、より具体的にはトリムカバー30のカバー本体31の前端部から後方に向けて延びるようトリムカバー30に設けられている。外側表皮34が後方に向けて延びて内側表皮32を覆うことにより、内側表皮32と外側表皮34により袋状部が形成される。シートクッションS1が着座可能状態であるとき、袋状部の開口部は後方を向くことから、シートクッションS1に着座する乗員がシートクッションS1の下面前方から内側表皮32に接触することが抑制される。また、シートクッションS1がチップアップした状態でも、開口部が下を向くため塵や埃の侵入が抑制される。
【0050】
内側表皮32をシートクッションS1に配置したときの外面には、複数の面ファスナ38(第一の面ファスナ38a、38b、第二の面ファスナ38c、以下まとめて述べる場合は面ファスナ38と称する)が配置されている。面ファスナ38により、内側表皮32が外側表皮34に固定するよう構成される。より詳細に述べると面ファスナ38のフック面が内側表皮32の外面に取り付けられ、フック面の位置に対応するようループ面が外側表皮34に内面に取り付けられる。外側表皮34の内面全体をループ面としてもよい。また、内側表皮32に外面に面ファスナ38のループ面を配置し、外側表皮34の内面にフック面を取り付けてもよい。面ファスナ38により内側表皮32を外側表皮34に固定することで、内側表皮32が外側表皮34に対して移動することを容易に抑制することができる。また、面ファスナ38を用いることにより、内側表皮32を外側表皮34から容易に取り外すことができる。
【0051】
複数の面ファスナ38のうち、第一の面ファスナ38a、38bは、下面視でパンフレーム24と重なるように配置されている。また、第一の面ファスナ38a、38bの幅L1はパンフレーム24の幅L0と略同じ大きさになるよう形成される(図5参照)。第一の面ファスナ38a、38bがパンフレーム24と重なるように配置されることにより、外側表皮34を内側表皮32に取り付ける際、パンフレーム24により内側表皮32が支持されるため内側表皮32が内側に撓まず、外側表皮34を押さえつけることにより確実に外側表皮34と内側表皮32とを貼り合わせることができる。
【0052】
また、第一の面ファスナ38a、38bは、外側表皮34を内側表皮32に重ね合わせたとき、挿通孔35の前後方向の近傍に位置するよう配置されている。このように配置することで、挿通孔35の近傍で、内側表皮32が外側表皮34に対して移動することを抑制することができ、チップアップした際、特に乗員から目につきやすい挿通孔35の周辺の意匠性を効果的に向上させることができる。
【0053】
また、内側表皮32を外側表皮34に取り付ける複数の面ファスナ38のうち、第二の面ファスナ38cは、図6に示すように、内側表皮32の後端部と外側表皮34の後端部との間に配置される。言い換えれば、第二の面ファスナ38cは外側表皮34を内側表皮32に重ね合わせたときに、内側表皮32の外面において後端側の側部と、外側表皮34の内面において後端側の側部との間に配置される。上述したように、本実施形態において外側表皮34はシートクッションS1の前端から後方に向けて延びることにより内側表皮32を覆っている。そのため、内側表皮32と外側表皮34により袋状部が形成されるが、その袋状部の開口部を、第二の面ファスナ38cを用いて閉じることができる。
【0054】
図6に示すように、シートクッションS1内にはシートクッションフレーム1があり、シートクッションフレーム1の左右にサイドフレーム22が設けられている。シートクッションフレーム1は、左右のサイドフレーム22の後端部に架け渡されたワイヤ部26が設けられている。図4及び図5に示すように、トリムカバー30の内側表皮32の内面に、ワイヤ部26に掛け止めることが可能な掛け止め部37が配置されている。掛け止め部37は、その先端の断面がJ字状に形成されていて、掛け止め部37の先端をワイヤ部26に掛けることにより固定することができる。
【0055】
また、本実施形態では、二つの掛け止め部37が、シートの幅方向に所定距離離れて設けられている。より具体的には、二つの掛け止め部37は、パンフレーム24よりもシートの幅方向外側の位置に配置される。
掛け止め部37を設けることにより、シートクッションS1内のサイドフレーム22を利用して内側表皮32をシートクッションフレーム1の後端部に取り付けることができる。
また、二つの掛け止め部37をパンフレーム24の幅よりも離れて内側表皮の外面に配置することにより、掛け止め部37を、パンフレーム24を避けてワイヤ部26に取り付けることができる。
なお、掛け止め部37は樹脂製又は金属製でもよい。本実施形態では二つの掛け止め部37を設けているが、掛け止め部37は二つ以上あってもよく、左右それぞれに二つの掛け止め部37を設けてより強固に内側表皮32をワイヤ部26に固定できるようにしてもよい。
【0056】
内側シートの幅方向の長さW1について図4及び図8を用いて説明する。シートクッションS1は、その下面にサイドフレーム22を介して脚部材10が設けられている。そのため、図8に示すように、クッションパッド28には、脚部材10の根元を避けるよう凹部29が形成されている。クッションパッド28に凹部29が形成されることから、クッションパッド28の表面は凹部29のカーブにより全体的に下方に突出する緩やかな突部となる。そのため、内側表皮32の幅W1を、クッションパッド28を覆うためにサイドフレーム22の離間距離W0よりも長くしておくことにより、内側表皮32を脚部材10の空間Vに潜り込ませても、クッションパッド28を端部まで覆うことができ、それによりクッションパッド28の端部が露出することを抑制することができる。
【0057】
図4から図8に示すシートクッションS1では、内側表皮32を外側表皮34に固定するために面ファスナ38を用いていたが、これは一例であり、他の手段を用いて内側表皮32を外側表皮34に固定してもよい。例えば図9に示すミシン目39のように、挿通孔35の前後で内側表皮32が外側表皮34に縫い付けられてもよい。内側表皮32を外側表皮34に縫い付けることにより、確実に内側表皮32を外側表皮34に固定することができ、内側表皮32の移動を抑制することができる。
また、内側表皮32と外側表皮34とにより形成される袋状部の開口部を閉じるために、第二の面ファスナ38cを用いていたが、これは一例であり、開口部を縫い付けて閉じてもよく、また、開口部周辺に線ファスナを設けて開口部を閉じるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
S 車両用シート(乗物用シート)
S1 シートクッション
S2 シートバック
V 空間
F 車体フロア
1 シートクッションフレーム
10 脚部材
11 下辺部
12L、12R 支持部
20 脚保持部材
21 レール部材
22 サイドフレーム
24 パンフレーム
26 ワイヤ部
28 クッションパッド
29 凹部
30 トリムカバー(カバー部材)
31 カバー本体
32 内側表皮
34 外側表皮
35 挿通孔
36 線ファスナ
37 掛け止め部
38 面ファスナ
38a、38b 第一の面ファスナ
38c 第二の面ファスナ
39 ミシン目
40 重ね合わせ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9