(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】放熱シート及び放熱シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20230913BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230913BHJP
C01B 32/16 20170101ALI20230913BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
C01B32/16
H01L23/36 M
(21)【出願番号】P 2019220613
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 真一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大雄
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228563(JP,A)
【文献】特開2011-035403(JP,A)
【文献】特開2018-171809(JP,A)
【文献】特開2016-092334(JP,A)
【文献】特開2018-032764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B32/00 -32/991
H01L23/29
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列配置される複数の線状炭素材料を有する炭素材料層と、
前記線状炭素材料の端部と接する第1面を有し、厚さが
200nm~800nmである接着樹脂層と、
前記接着樹脂層の複数の面のうち前記第1面と反対側の第2面に接する離型シートと、
を備えた放熱シート。
【請求項2】
前記炭素材料層において、隣接する前記線状炭素材料間に空隙を有する
請求項1に記載の放熱シート。
【請求項3】
前記複数の線状炭素材料は、1×10
10本/cm
2以上の面密度で設けられた
請求項1又は2に記載の放熱シート。
【請求項4】
前記端部は、前記接着樹脂層に連続する埋設部に埋設された
請求項1から3のいずれか1項に記載の放熱シート。
【請求項5】
基板上に当該基板側を第1の端部とする複数の線状炭素材料を生成する工程と、
前記第1の端部の反対側となる第2の端部を転写部材に接触させることで前記複数の線状炭素材料を前記転写部材に転写する工程と、
前記転写部材に転写した前記複数の線状炭素材料の前記第1の端部のそれぞれを、第1の離型シートが配置された第2面を有する第1の接着樹脂の、前記第2面の反対側の第1面に接触させると共に、前記転写部材を前記第2の端部から除去して前記複数の線状炭素材料を前記第1の接着樹脂へ転写する工程と、
前記第1の端部が備える第1の端面と前記第1の接着樹脂の前記第2面である第1の接着面との距離を調整し、前記第1の端面と前記第1の接着面との間に厚さが200nm~800nmとなる第1の接着樹脂層を形成する工程と、
前記第2の端部のそれぞれを、第2の離型シートが配置された第3面を有する第2の接着樹脂の、前記第3面の反対側の第4面に接触させて配置する工程と、
前記第2の端部が備える第2の端面と前記第2の接着樹脂の前記第4面である第2の接着面との距離を調整し、前記第2の端面と前記第2の接着面との間に厚さが200nm~800nmとなる第2の接着樹脂層を形成する工程と、
を有する放熱シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱シート及び放熱シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱部位を有する他の部材に炭素材料からなる熱伝導材料層を転写するための転写シート(放熱シート)が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された転写シートは、剥離性フィルムからなる剥離層、第一の接着剤層、熱伝導材料層、第二の接着剤層がこの順で積層された構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、放熱シートは、半導体チップ等の発熱体とヒートスプレッダ等の放熱体との間で良好な熱伝導性を備えると共に、放熱体を発熱体に固定するための接着性を備えることが求められる。特許文献1に開示された転写シートは、良好な熱伝導性と接着性との両立の観点において、改善の余地があった。
【0005】
1つの側面では、本明細書開示の発明は、発熱体や放熱体への接着性と、発熱体と放熱体との間の熱伝導性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、放熱シートは、互いに並列配置される複数の線状炭素材料を有する炭素材料層と、前記線状炭素材料の端部と接する第1面を有し、厚さが1μm未満である接着樹脂層と、前記接着樹脂層の複数の面のうち前記第1面と反対側の第2面に接する離型シートと、を備える。
【0007】
他の態様では、放熱シートの製造方法は、基板上に当該基板側を第1の端部とする複数の線状炭素材料を生成する工程と、前記第1の端部の反対側となる第2の端部を転写部材に接触させることで前記複数の線状炭素材料を前記転写部材に転写する工程と、前記転写部材に転写した前記複数の線状炭素材料の前記第1の端部のそれぞれを、第1の離型シートが配置された第2面を有する第1の接着樹脂の、前記第2面の反対側の第1面に接触させると共に、前記転写部材を前記第2の端部から除去して前記複数の線状炭素材料を前記第1の接着樹脂へ転写する工程と、前記第2の端部のそれぞれを、第2の離型シートが配置された第3面を有する第2の接着樹脂の、前記第3面の反対側の第4面に接触させて配置する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本明細書開示の発明によれば、発熱体や放熱体への接着性と、発熱体と放熱体との間の熱伝導性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施形態の放熱シートの説明図である。
【
図2】
図2は線状炭素材料(CNT)の端部を拡大して示す説明図である。
【
図3】
図3は放熱シートにおける熱抵抗の接着樹脂層の厚さへの依存性を示すグラフである。
【
図4】
図4は第1の基板上に複数の線状炭素材料を生成する工程を示す説明図である。
【
図5】
図5は複数の線状炭素材料の第2の端部に転写部材を押し付ける様子を示す説明図である。
【
図6】
図6(A)及び
図6(B)は複数の線状炭素材料を前記転写部材に転写する工程を示す説明図である。
【
図7】
図7は第1の接着面に第1の離型シートを配置した第1の接着樹脂を第2の基板上に固定した状態を示す説明である。
【
図8】
図8は転写部材に転写した複数の線状炭素材料の第1の端部にそれぞれ形成された第1の端面を、第1の接着面に第1の離型シートを配置した第1の接着樹脂へ接触させた状態を示す説明図である。
【
図9】
図9は第2の基板をホットプレート上に搭載した状態を示す説明図である。
【
図10】
図10は転写部材を第2の端部から除去して複数の線状炭素材料を第1の接着樹脂へ転写する様子を示す説明図である。
【
図11】
図11は線状炭素材料の第2の端部に形成された第2の端面へ、第2の接着面に第2の離型シートを配置した第2の接着樹脂を接触させて配置する様子を示す説明図である。
【
図12】
図12は第2の基板をホットプレート上に搭載し、第1の離型シートと、第2の離型シートとの間を押圧する様子を示す説明図である。
【
図13】
図13は線状炭素材料の第1の端部が第1の接着樹脂内に入り込み、第2の端部が第2の接着樹脂内に入り込んだ様子を示す説明図である。
【
図14】
図14は第2の基板をホットプレート上に搭載し、第1の離型シートと、第2の離型シートとの間を押圧して第1の端面と第1の接着面との距離、第2の端面と第2の接着面との距離を調整する様子を示す説明図である。
【
図15】
図15は適温で第1の離型シートと、第2の離型シートとの間を押圧した場合の接着樹脂層を示す写真である。
【
図17】
図17は適温よりも低い温度で第1の離型シートと、第2の離型シートとの間を押圧した場合の接着樹脂層を示す写真である。
【
図19】
図19は適温よりも高い温度で第1の離型シートと、第2の離型シートとの間を押圧した場合の接着樹脂層を示す写真である。
【
図21】
図21は実施形態の放熱シートの使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。ただし、図面中、各部の寸法、比率等は、実際のものと完全に一致するようには図示されていない場合がある。また、図面によっては、説明の都合上、実際には存在する構成要素が省略されていたり、寸法が実際よりも誇張されて描かれていたりする場合がある。
【0011】
(実施形態)
まず、
図1から
図3を参照して、実施形態の放熱シート100について説明する。放熱シート100は、放熱シート本体1と、放熱シート本体1の一面側に設けられた第1の離型シート6と、放熱シート本体1の他面側に設けられた第2の離型シート7を備えている。放熱シート100は、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)など、発熱する電子部品に代表される発熱体31(
図21参照)と、ヒートスプレッダに代表される放熱体32(
図21参照)との間に配置され、両者を接合するとともに、両者間の熱伝導を行う。放熱シート100の使用方法については、後に説明する。
【0012】
放熱シート本体1は、炭素材料層としてのカーボンナノチューブ層(以下、「CNT層」という)2を備える。CNT層2は、複数の線状炭素材料としてのカーボンナノチューブ(以下、「CNT」という)3が集まり、シート状となることで形成されている。複数のCNT3は、概ね、同一方向に延びていることから、これがシート状に平面的に広がることでCNT層を形成することができる。CNT3は、単層であっても、多層であってもよい。CNT3の面密度は、1×1010本/cm2以上とされている。これは、放熱性及び電気伝導性を考慮したものである。具体的に、CNT3の面密度、すなわち、CNT3の本数が、放熱及び電気伝導のパス量に依存し、CNT3の本数が多くなれば、それだけ、放熱性及び電気伝導性が優位となる。本実施形態の放熱シート100の用途は、発熱体31と放熱体32との間の熱伝導であるが、CNT3の面密度を、1×1010本/cm2以上とすることで、この用途に見合った特性を備えることができる。
【0013】
なお、各図では、CNT3同士の間隔が概ね一定に描かれているが、実際には、CNT3はランダムに成長するため、隣接するCNT3との距離は、一定ではない。
【0014】
各CNT3の長さが概ねCNT層2の厚さtcとなる。厚さtcは、放熱シート100の用途に応じて適宜設定することができるが、概ね100μm~500μmの範囲で設定することができる。
【0015】
CNT層2において、隣接するCNT3間に空隙8が形成されている。これにより、CNT層2の収縮性が向上する。すなわち、CNT層2は、温度の上昇と下降が繰り返される冷熱サイクルに起因する放熱シート1の膨張や収縮に追随し易くなる。
【0016】
線状であるCNT3は、第1の端部3aと、これとは反対側に位置する第2の端部3bを有している。第1の端部3aには、第1の端面3a1が形成されており、第2の端部3bには、第2の端面3b1が形成されている。
【0017】
図2を参照すると、第1の端部3a側には、第1の接着樹脂4が設けられている。第1の接着樹脂4は、エポキシ樹脂である。第1の接着樹脂4には、第1の接着樹脂層4aと、これと連続する埋設部4bが含まれる。第1の接着樹脂層4aは、第1面とこの第1面の反対側の第2面を有する。第1面は、各CNT3を保持する第1保持面4a1であり、埋設部4bは、第1保持面4a1に設けられている。第1保持面4a1には、各CNT3の第1の端部3a(第1の端面3a1)が接し、第1の端部3aの周囲に埋設部4bが設けられ、第1の端部3aが埋設される。これにより、各CNT3が第1の接着樹脂4に保持され、各CNT3と第1の接着樹脂4とが強固に一体とされている。第1の接着樹脂層4aの第2面は、第1の接着面4a2である。第1の接着面4a2は、埋設部4bと反対側に位置しており、放熱シート100が販売状態にあるときなど、放熱シート100が未使用状態であるとき、第1の接着面4a2は、第1の離型シート6が貼付された状態とされる。第1の離型シート6は、フィルム状の部材であり、放熱シート100の使用状態において剥がされ、第1の接着面4a2が、発熱体31又は放熱体32に接着される(
図21参照)。
【0018】
図2を参照すると、第2の端部3b側には、第2の接着樹脂5が設けられている。第2の接着樹脂5は、第1の接着樹脂4と同様にエポキシ樹脂である。第2の接着樹脂5には、第2の接着樹脂層5aと、これと連続する埋設部5bが含まれる。第2の接着樹脂層5aは、第3面とこの第3面の反対側の第4面を有する。第4面は、各CNT3を保持する第2保持面5a1であり、埋設部5bは、第2保持面5a1に設けられている。第2保持面5a1には、各CNT3の第2の端部3b(第2の端面3b1)が接し、第2の端部3bの周囲に埋設部5bが設けられ、第2の端部3bが埋設される。これにより、各CNT3が第2の接着樹脂5に保持され、各CNT3と第2の接着樹脂5とが強固に一体とされている。第2の接着樹脂層5aの第3面は、第2の接着面5a2である。第2の接着面5a2は、埋設部5bと反対側に位置しており、放熱シート100が販売状態にあるときなど、放熱シート100が未使用状態であるとき、第2の接着面5a2は、第2の離型シート7が貼付された状態とされる。第2の離型シート7は、フィルム状の部材であり、放熱シート100の使用状態において剥がされ、第2の接着面5a2が、発熱体31又は放熱体32に接着される(
図21参照)。
【0019】
第1の接着樹脂層4aの厚さSは、1μm未満とされている。ここで、第1の接着樹脂層4aは必ず存在するものであるので、厚さSが0μmとなることはない。第1の接着樹脂層4aの厚さSが0μmとなった状態は、第1の端面3a1が第1の接着面4a2に露出した状態となることを意味する。第1の接着面4a2に第1の端面3a1が露出した状態となると接着性に影響が及ぶ。このため、第1の接着面4a2に第1の端面3a1が露出することは望ましくない。そこで、本実施形態では、第1の接着樹脂層4aの厚さSが0μmとならないようにされている。
【0020】
その一方で、第1の接着樹脂層4aの厚さSは、熱伝導性を向上させる観点から、できるだけ薄い方がよい。ここで、
図3を参照して、放熱シート100における熱抵抗の接着樹脂層の厚さへの依存性について説明する。
図3を参照すると、接着樹脂層の厚さが大きくなるほど、熱抵抗が大きくなることが分かる。従って、接着樹脂層の厚さSは、できるだけ小さいことが望ましい。そこで、本実施形態では、厚さSを1μm未満としている。なお、接着樹脂層の厚さSは、可能な限り小さくすることが望ましく、200nm~800nmの範囲で設定することが望ましい。なお、接着樹脂層の厚さSは、CNTの端面と接着樹脂層の接着面との距離と言い換えることもできる。
【0021】
第2の接着樹脂層5aの厚さSも同様に1μmであり、厚さSが0μmとならないようにされている。第2の接着樹脂層5aに求められる性質は、第1の接着樹脂層4aと同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0022】
本実施形態では、CNT3を用いたCNT層2を備える。CNT3は、非常に高い熱伝導度(1500~3000W/m・K)を有するだけでなく、柔軟性や耐熱性に優れた材料であり、放熱材料に適した性質を備えている。本実施形態では、このようなCNT3を採用すると共に、第1の接着樹脂層4aや第2の接着樹脂層5aの厚さSを1μm未満としていることから高い熱伝導性を実現している。また、CNT3の第1の端面3a1が第1の接着面4a2に露出することがなく、同様に第2の端面3b1が第2の接着面5a2に露出することがないため、それぞれの接着面における接着性が確保されている。
【0023】
つぎに、
図4から
図14を参照して、実施形態の放熱シート100の製造方法の一例について説明する。
【0024】
まず、
図4に示すように、第1の基板10上に複数のCNT3を生成する。CNT3は、第1の基板10側が第1の端部3aであり、その反対側が第2の端部3bとなる。本実施形態では、第1の基板10として、シリコン基板を用いている。第1の基板10としては、シリコン基板などの半導体基板、アルミナ(サファイア)基板、MgO(Magnesium Oxide)基板、ガラス基板、ステンレス基板などの金属基板及び、ステンレスホイル、アルミホイルなどを用いることができる。また、これら基板上に薄膜が形成されたものでもよい。例えば、シリコン基板上に膜厚300nm程度のシリコン酸化膜が形成されたものを用いることができる。第1の基板10はCNT3の形成後に剥離されるものである。この目的のもと、第1の基板10は、CNT3の形成温度において、変質しないこと、少なくとも、CNT3の第1の端部3aに接する面が、CNT3から容易に剥離できる材料によって構成されていることが望ましい。または、第1の基板10は、CNT3に対して選択的にエッチングできる材料によって構成されていてもよい。
【0025】
このような第1の基板10に対し、スパッタ法により、膜厚1.0nmのAl(アルミニウム)膜を形成し、続けて膜厚2.5nmのFe(鉄)膜を形成し、Al膜を下地としたFeよりなる触媒金属膜を形成する。なお、スパッタ法以外の方法を採用してもよいし、膜厚も、2.5mmに限定されるものではない。また、触媒金属としては、Feのほか、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Au(金)、Ag(銀)、Pt(白金)又はこれらのうち少なくとも一の材料を含む合金を用いてもよい。触媒として、金属膜以外に微分型静電分級器(Differential Mobility Analyzer;DMA)等を用い、あらかじめサイズを制御して作製した金属微粒子を用いてもよい。この場合も金属種については薄膜と同様でよい。また、これら触媒金属の下地膜として、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、V(バナジウム)、TaN(窒化タンタル)、TiSix(チタンシリサイド)、Al、Al2O3(酸化アルミニウム)、TiOx(酸化チタン)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Cu(銅)、Au(金)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、TiN(チタンナイトライド)よりなる膜又はこれらのうち少なくとも一の材料を含む合金からなる膜を形成してもよい。例えば、Fe(2.5nm)/Al(10nm)の積層構造、Co(2.6nm)/TiN(5nm)の積層構造等を適用することができる。金属微粒子を用いる場合は、例えばCo(平均直径3.8nm)/TiN(5nm)の積層構造を適用することができる。
【0026】
次いで、基板上に、例えばホットフィラメントCVD法により、触媒金属膜を触媒として、CNT3を成長させる。CNT3の成長条件は、例えば、原料ガスとしてアセチレン・アルゴンの混合ガス(分圧比1:9)を用い、成膜室内の総ガス圧を1kPa、ホットフィラメント温度を1000℃、成長時間を20分とする。これにより、層数が3~6層(平均4層程度)、直径が4~8nm(平均6nm)、長さが80μm(成長レート:4μm/min)の多層のCNT3を成長させることができる。なお、CNT3は、熱CVD法やリモートプラズマCVD法などの他の成膜方法により形成してもよい。また、成長するCNT3は、単層でもよい。また、炭素原料としては、アセチレンのほか、メタン、エチレン等の炭化水素類や、エタノール、メタノール等のアルコール類などを用いてもよい。
【0027】
このようにして、第1の基板10において触媒金属膜が形成された領域上に、第1の基板10の表面に対して概ね垂直に配向した複数のカーボンナノチューブが形成される。なお、上記の成長条件とすることで、CNT3の面密度を1×1010本/cm2程度とすることができた。また、隣接するCNT3間に空隙8が形成された。
【0028】
第1の基板10から離れた部分が第2の端部3bとなり、その先端部分が第2の端面3b1となる。なお、第2のCNT3の成長メカニズムに起因して、CNT3の先端部は横方向に交じり合うことがあるが、この場合、第1の基板10から最も離れた部分を第2の端面3b1とする。
【0029】
つぎに、
図5を参照すると、第1の基板10上に成長したCNT3の第2の端部3bがそれぞれ有する第2の端面3b1に転写部材11を接触させ、矢示12のように、第1の基板10の方向へ押圧する。本実施形態における転写部材11は、シリコンゴムシートであるが、転写部材は、CNT3を転写できるものであれば、天然ゴム、合成ゴムなど、他の素材を用いてもよい。
【0030】
転写部材11をCNT3に押し付けた後、
図6(A)において、矢示13のように転写部材11を剥がすと、
図6(B)に示すように、CNT3が転写部材11に転写される。
【0031】
つぎに、
図7を参照すると、第2の基板14上にエポキシ樹脂である第1の接着樹脂4が設置されている。第2の基板14は、シリコン基板である。第1の接着樹脂4の第1の接着面4a2には、第1の離型シート6が配置されている。第1の接着樹脂4は、第1の離型シート6を第2の基板14と接触させ、第1の接着樹脂4がその上側に位置するように配置されている。第1の接着樹脂4は、耐熱テープ15で第2の基板14上に固定されている。
【0032】
つぎに、
図8を参照すると、転写部材11に転写したCNT3を第1の接着樹脂4上に配置し、矢示16のように、第2の基板14側へ押圧する。これにより、第1の端部3aがそれぞれ備える第1の端面3a1を第1の接着樹脂4に密着させる。
【0033】
その後、
図9に示すように、第2の基板14をホットプレート17上に搭載する。そして、ホットプレート17によって第2の基板14を温める。第2の基板14が温められると、第1の接着樹脂4が軟化する。ここで、ホットプレート17は、第1の接着樹脂4が軟化し、低粘度状態となるように温度調整される。第1の接着樹脂4が軟化し、低粘度状態となると、第1の接着樹脂4の粘着性が増す。この状態で、矢示18のように、転写部材11を第2の基板14側へ押圧すると、CNT3の第1の端部3aが第1の接着樹脂4に保持される。
【0034】
ホットプレート17の熱は、第1の接着樹脂4及びCNT3を通じて転写部材11にも伝えられる。これにより、転写部材11が軟化し、転写部材11をCNT3の第2の端部3bから除去できるようになる。そこで、
図10に示すように、転写部材11を矢示19のように除去すると、複数のCNT3を第1の接着樹脂4へ転写することができる。
【0035】
つぎに、
図11を参照すると、CNT3の第2の端部3bにそれぞれ形成された第2の端面3b1に、第2の接着面5a2に第2の離型シート7が配置された第2の接着樹脂5が配置される。
【0036】
そして、
図12に示すように、第2の基板14をホットプレート17上で、温める。このときの温度は、
図8~
図10で第2の基板14を温めたときの温度と同じ温度としている。ホットプレート17の熱は、第1の接着樹脂4及びCNT3を通じて第2の接着樹脂5にも伝えられる。これにより、第2の接着樹脂5が軟化する。第2の接着樹脂5が軟化し、低粘度状態となると、第2の接着樹脂5の粘着性が増す。この状態で、矢示20のように、第2の接着樹脂5を第2の基板14側へ押圧すると、CNT3の第2の端部3bが第2の接着樹脂5に保持される。
【0037】
ついで、
図13に示すように、一旦、第2の基板14を、ホットプレート17から取り出し、冷却する。このとき、CNT3の第1の端部3aは第1の接着樹脂4に保持され、CNT3の第2の端部3bは第2の接着樹脂5に保持された状態となっている。
【0038】
その後、
図14に示すように、再び、第2の基板14をホットプレート17上に搭載し、第2の基板14を温める。ホットプレート17の熱は、第1の接着樹脂4、第2の接着樹脂5にも伝えられるが、第1の接着樹脂4と第2の接着樹脂5の温度は、
図8~
図10や、
図12、
図13で第2の基板14を温めたときよりも高い温度とする。
【0039】
このように、第1の接着樹脂4を調整しながら、第1の端面3a1と第1の接着面4a2との距離を調整し、第1の端面3a1と第1の接着面4a2との間に第1の接着樹脂層4aを形成する。また、第2の接着樹脂5の温度を調整しながら、第2の端面3b1と第2の接着面5a2との距離を調整し、第2の端面3b1と第2の接着面5a2との間に第2の接着樹脂層5aを形成する。
【0040】
ここで、第1の接着樹脂4と第2の接着樹脂5の温度を調整するのは、第1の端面3a1と第1の接着面4a2との距離や第2の端面3b1と第2の接着面5a2との距離が温度と相関性を有するためである。
【0041】
図15及び
図16を参照すると、第2の接着樹脂5を適温に温めた状態とし、
図14における矢示21のように押圧すると、厚さSが1μm未満の第2の接着樹脂層5aが形成される。また、これに伴って、毛細管現象により、CNT3間に第2の接着樹脂が入り込み、第2の接着樹脂層5aと連続する埋設部5bが形成され、CNT3の第2の端部3bが埋設部5bに埋設され、固定される。このように、厚さSを1μm未満とすることができるのは、第2の接着樹脂5が適温に温められて適度に軟化し低粘度になることから、CNT3の第2の端部3bが軟化した第2の接着樹脂5に適度に刺し込まれるためであると考えられる。
【0042】
なお、説明の都合上、
図15及び
図16では、第2の接着樹脂5について示しているが、第1の接着樹脂4においても同様の現象が生じ、第1の接着樹脂層4aが形成されるとともに、埋設部4bが形成される。埋設部4bには、第1の端部3aが埋設され、固定される。
【0043】
これに対し、
図17及び
図18を参照すると、第2の接着樹脂5を適温よりも低い温度に温めた状態とし、
図14における矢示21のように押圧すると、厚さSが1μm以上となる。これは、第2の接着樹脂5の温度が低いと、第2の接着樹脂5が軟化し難く、押圧してもCNT3の第2の端部3bが第2の接着樹脂5の適切な位置まで刺し込まれないためであると考えられる。第1の接着樹脂4においても同様である。
【0044】
一方、
図19及び
図20を参照すると、第2の接着樹脂5を適温よりも高い温度に温めた状態とし、
図14における矢示21のように押圧すると、第2の端面3b1側の凝集が発生し第2の接着面に隙間が出来る。すなわち、接着面の厚さSは0に近づく。この結果、第2の接着樹脂層5aが適切に形成されなくなる。このように第2の接着面5a2に第2の端面3b1が露出すると、第2の接着面5a2の接着性が損なわれる可能性がある。第1の接着樹脂4においても同様である。
【0045】
このように、第1の接着樹脂4、第2の接着樹脂5の温度を調節しながらT両者間を押圧することで、いずれも厚さSが1μm未満である第1の接着樹脂層4aと第2の接着樹脂層5aを形成することができる。第1の接着樹脂層4aと第2の接着樹脂層5aの厚さSを1μm未満とすることで、放熱シート100の良好な熱伝達性を実現することができる。
【0046】
図14に示す工程を実行した後、耐熱テープ15を外せば、
図1に示す、本実施形態の放熱シート100を得ることができる。
【0047】
図21を参照して、実施形態の放熱シート100の使用状態について説明する。放熱シート100を使用するときは、第1の離型シート6と第2の離型シート7を外し、放熱シート本体1を発熱体31と放熱体32との間に配置し、両者を接着する。ユーザーは、例えば、第1の離型シート6と第2の離型シート7のうち、その一方を剥がして、放熱体32に仮接着し、他方の離型シートを剥がして発熱体31と合わせ込み、熱圧着実装すれば完了となる。これにより、放熱体32を発熱体31に固定することができる。また、熱圧着実装後の接着樹脂層の厚さSは、30nm以下になっていることが好ましい。このように、本実施形態によれば、放熱体32を実装する作業が容易であり、ハンドリング性にも優れ、切断可能であることから被着体のサイズ、形状にも対応を可能とし、且つ要求される熱伝導性、ヒートサイクルへの追随性、耐熱性を満たすことができる。
【0048】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0049】
なお、以上の実施形態の説明に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
互いに並列配置される複数の線状炭素材料を有する炭素材料層と、
前記線状炭素材料の端部と接する第1面を有し、厚さが1μm未満である接着樹脂層と、
前記接着樹脂層の複数の面のうち前記第1面と反対側の第2面に接する離型シートと、
を備えた放熱シート。
(付記2)
前記接着樹脂層の厚さは、200nm~800nmである付記1に記載の放熱シート。
(付記3)
前記炭素材料層において、隣接する前記線状炭素材料間に空隙を有する付記1又は2に記載の放熱シート。
(付記4)
前記複数の線状炭素材料は、1×1010本/cm2以上の面密度で設けられた付記1から3のいずれか1項に記載の放熱シート。
(付記5)
前記端部は、前記接着樹脂層に連続する埋設部に埋設された付記1から4のいずれか1項に記載の放熱シート。
(付記6)
基板上に当該基板側を第1の端部とする複数の線状炭素材料を生成する工程と、
前記第1の端部の反対側となる第2の端部を転写部材に接触させることで前記複数の線状炭素材料を前記転写部材に転写する工程と、
前記転写部材に転写した前記複数の線状炭素材料の前記第1の端部のそれぞれを、第1の離型シートが配置された第2面を有する第1の接着樹脂の、前記第2面の反対側の第1面に接触させると共に、前記転写部材を前記第2の端部から除去して前記複数の線状炭素材料を前記第1の接着樹脂へ転写する工程と、
前記第2の端部のそれぞれを、第2の離型シートが配置された第3面を有する第2の接着樹脂の、前記第3面の反対側の第4面に接触させて配置する工程と、
を有する放熱シートの製造方法。
(付記7)
接着樹脂層の厚さは、200nm~800nmである付記6に記載の放熱シートの製造方法。
(付記8)
隣接する前記線状炭素材料間に空隙を形成する付記6又は7に記載の放熱シートの製造方法。
(付記9)
前記複数の線状炭素材料は、1×1010本/cm2以上の密度で設ける付記6から8のいずれか1項に記載の放熱シートの製造方法。
(付記10)
前記第1の端部は、前記第1の接着樹脂が備える埋設部に埋設され、前記第2の端部は、前記第2の接着樹脂が備える埋設部に埋設された付記6から9のいずれか1項に記載の放熱シートの製造方法。
(付記11)
前記第1の端部が備える第1の端面と前記第1の接着面との距離を調整し、前記第1の端面と前記第1の接着面との間に第1の接着樹脂層を形成する工程と、前記第2の端部が備える第2の端面と前記第2の接着面との距離を調整し、前記第2の端面と前記第2の接着面との間に第2の接着樹脂層を形成する工程は、いずれも、前記第1の接着樹脂と前記第2の接着樹脂の温度を調整しながら行う付記6から10のいずれか1項に記載の放熱シートの製造方法。
【符号の説明】
【0050】
1 放熱シート本体
2 カーボンナノチューブ(CNT)層
3 カーボンナノチューブ(CNT)
3a 第1の端部
3a1 第1の端面
3b 第2の端部
3b1 第2の端面
4 第1の接着樹脂
4a 第1の接着樹脂層
4a2 第1の接着面
4b 埋設部
5 第2の接着樹脂
5a 第2の接着樹脂層
5a2 第2の接着面
5b 埋設部
6 第1の離型シート
7 第2の離型シート
8 空隙
10 第1の基板
11 転写部材(シリコンゴム)
14 第2の基板
15 耐熱テープ
17 ホットプレート
31 発熱体
32 放熱体
100 放熱シート