(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】接着剤、加硫ゴム接着方法、及び、コンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
C09J 111/00 20060101AFI20230913BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230913BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230913BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230913BHJP
B65G 15/32 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C09J111/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J11/08
B65G15/32
(21)【出願番号】P 2019238667
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】松浦 果奈
(72)【発明者】
【氏名】印東 均
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210592(JP,A)
【文献】特開昭51-145537(JP,A)
【文献】特開昭48-049872(JP,A)
【文献】特開2012-111862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B65G 15/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレンゴムと、カーボンブラックと、粘着付与剤と、硫黄と、チウラム系化合物と、酢酸エステルと、を含有し、
前記粘着付与剤の含有量が、前記クロロプレンゴム100質量部に対して、5~40質量部であり、
前記硫黄の含有量が、前記クロロプレンゴム100質量部に対して、1~10質量部であり、
前記チウラム系化合物の含有量が、前記クロロプレンゴム100質量部に対して、0.1~1.3質量部である、接着剤。
【請求項2】
前記チウラム系化合物の含有量が、前記クロロプレンゴム100質量部に対して、0.2~0.5質量部である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
さらに、イソシアネートを含有する、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記粘着付与剤が、フェノール樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
前記カーボンブラックの含有量が、前記クロロプレンゴム100質量部に対して、3~20質量部である、請求項1~4のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の接着剤を用いて加硫ゴム同士を接着させる、加硫ゴム接着方法。
【請求項7】
請求項6に記載の加硫ゴム接着方法を用いて製造された、コンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤、加硫ゴム接着方法、及び、コンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンベヤベルト、ゴムクローラ、ゴム製大型ガスケットのような大型ゴム製品の多くは、被着体である加硫ゴム同士の接着(接合)の際に、接着界面に自然加硫型の接着剤(接着用ゴム)を挟み込む手法が用いられている。
この自然加硫型の接着剤は、いわゆる加硫型接着剤と違って、被着体である加硫ゴム等の接着の際に加硫の為の高温加熱が必要ではない利点があり、その組成中に溶剤を含有する点に特徴がある。このような接着剤としては、例えば、特許文献1に開示される接着剤が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようななか、本発明者らが特許文献1を参考に接着剤を調製し、その貯蔵安定性(長期保存後の塗布性、長期保存後の粘度)と接着性(初期の接着性、長期保存後の接着性)を評価したところ、両者のバランスは、今後さらに高まるであろう要求性能を考慮するとさらなる改善が望ましいことが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、貯蔵安定性及び接着性に優れる接着剤、上記接着剤を用いた加硫ゴム接着方法、並びに、上記加硫ゴム接着方法を用いて製造されたコンベヤベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、チウラム系化合物の含有量を所定の範囲にすることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) クロロプレンゴムと、カーボンブラックと、粘着付与剤と、硫黄と、チウラム系化合物と、酢酸エステルと、を含有し、
上記粘着付与剤の含有量が、上記クロロプレンゴム100質量部に対して、5~40質量部であり、
上記硫黄の含有量が、上記クロロプレンゴム100質量部に対して、1~10質量部であり、
上記チウラム系化合物の含有量が、上記クロロプレンゴム100質量部に対して、0.1~1.3質量部である、接着剤。
(2) 上記チウラム系化合物の含有量が、上記クロロプレンゴム100質量部に対して、0.2~0.5質量部である、上記(1)に記載の接着剤。
(3) さらに、イソシアネートを含有する、上記(1)又は(2)に記載の接着剤。
(4) 上記粘着付与剤が、フェノール樹脂である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の接着剤。
(5) 上記カーボンブラックの含有量が、上記クロロプレンゴム100質量部に対して、3~20質量部である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の接着剤。
(6) 上記(1)~(5)のいずれかに記載の接着剤を用いて加硫ゴム同士を接着させる、加硫ゴム接着方法。
(7) 上記(6)に記載の加硫ゴム接着方法を用いて製造された、コンベヤベルト。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、貯蔵安定性及び接着性に優れる接着剤、上記接着剤を用いた加硫ゴム接着方法、並びに、上記加硫ゴム接着方法を用いて製造されたコンベヤベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の接着方法を用いたコンベヤベルトの接合形式の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の接着剤、本発明の加硫ゴム接着方法、及び、本発明のコンベヤベルトについて説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
【0011】
[接着剤]
本発明の接着剤は、クロロプレンゴムと、カーボンブラックと、粘着付与剤と、硫黄と、チウラム系化合物と、酢酸エステルと、を含有する。ここで、上記粘着付与剤の含有量は上記クロロプレンゴム100質量部に対して5~40質量部である。また、上記硫黄の含有量は上記クロロプレンゴム100質量部に対して1~10質量部である。また、上記チウラム系化合物の含有量は上記クロロプレンゴム100質量部に対して0.1~1.3質量部である。
【0012】
本発明の接着剤は、自然加硫型でも加熱加硫型でも構わないが、自然加硫型であるのが好ましい。
【0013】
以下、本発明の接着剤に含有される各成分について説明する。
【0014】
〔クロロプレンゴム〕
本発明の接着剤は、クロロプレンゴムを含有する。
クロロプレンゴムとしては、例えば、硫黄変性(G)タイプ、非硫黄変性(W)タイプ、高結晶タイプ等が例示され、公知の各種のクロロプレンゴムを用いることができる。
上記クロロプレンゴムとしては、市販品を用いることができ、具体的には、例えば、昭和電工社製のネオプレンGRT、ネオプレンWRT、デンカ製のデンカクロロプレンPM-40、S-41等が挙げられる。
【0015】
<分子量>
上記クロロプレンゴムの重量平均分子量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1万~150万であることが好ましく、5万~30万であることがより好ましい。
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0016】
上記クロロプレンゴムは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
〔カーボンブラック〕
本発明の接着剤は、カーボンブラックを含有する。
本発明の接着剤に含有されるカーボンブラックとしては、特に限定されないが、例えば、ISAF(Intermidiates Super Abrasion Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)等が挙げられる。
上記カーボンブラックの製造方法は特に制限されないが、オイルファーネス法、ランプブラック法、チャンネル法、ガスファーネス法、アセチレン分解法、サーマル法などが挙げられる。なかでも、サーマル法が好ましい。
【0018】
<窒素吸着比表面積>
カーボンブラックは、本発明の効果がより優れる理由から、窒素吸着比表面積(N2SA)が100m2/g以下が好ましく、50m2/g以下がより好ましく、20m2/g以下が更に好ましい。
ここで、上記窒素吸着比表面積は、カーボンブラックがゴム分子との吸着に利用できる表面積の代用特性であり、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」に従い測定した値である。
上記カーボンブラックのN2SAの下限値は特に制限されないが、通常、10m2/g以上である。
【0019】
<含有量>
本発明の接着剤において、カーボンブラックの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したクロロプレンゴム100質量部に対して、3~20質量部であることが好ましく、4~10質量部であることがより好ましい。上記の含有量とすることで、接着力がより優れる。
【0020】
上記カーボンブラックは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
〔粘着付与剤〕
本発明の接着剤は、粘着付与剤を含有する。
粘着付与剤としては、粘着付与樹脂が挙げられ、例えば、フェノール樹脂;ロジンエステル、水添ロジンエステル、不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル等のロジン系樹脂;クマロンインデン樹脂、水添クマロンインデン樹脂、フェノール変性クマロンインデン樹脂、エポキシ変性クマロンインデン樹脂等のクマロンインデン系樹脂;α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂;ポリテルペン樹脂、水添テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂;脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、芳香族変性脂肪族系石油樹脂等の石油系樹脂等が挙げられる。これらは単独で、または、2種類以上組み合わせて使用でき、本発明の効果がより優れる理由から、特にフェノール樹脂が好ましい。
【0022】
上記フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂(熱可塑性樹脂)、レゾール型フェノール樹脂(自己架橋型樹脂)等が挙げられるが、本発明の効果がより優れる理由から、両者を併用して用いることが好ましい。ノボラック型フェノール樹脂(熱可塑性樹脂)とレゾール型フェノール樹脂(自己架橋型樹脂)を併用して用いる場合、その質量比は、本発明の効果がより優れる理由から、10:1~1:10とすることが好ましい。
フェノール樹脂としては、市販品を用いることができ、具体的には、例えば、日立化成工業株式会社製のヒタノール2501、田岡化学工業株式会社製のスミカノール620等が挙げられる。
【0023】
<含有量>
本発明の接着剤において、上記粘着付与剤の含有量は、上述したクロロプレンゴム100質量部に対して、5~40質量部である。上記粘着付与剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したクロロプレンゴム100質量部に対して、10~40質量部であることが好ましく、25~35質量部であることがより好ましい。
【0024】
上記粘着付与剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
〔硫黄〕
本発明の接着剤は、硫黄を含有する。
本発明の接着剤に含有される硫黄は特に制限されず、例えば、粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられる、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
<含有量>
本発明の接着剤において、上記硫黄の含有量は、上述したクロロプレンゴム100質量部に対して、1~10質量部である。上記硫黄の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したクロロプレンゴム100質量部に対して、2~8質量部であることが好ましい。
【0027】
〔チウラム系化合物〕
本発明の接着剤はチウラム系化合物を含有する。
上記チウラム系化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
<好適な態様>
チウラム系化合物は、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(T)で表される化合物であることが好ましい。
【0029】
【0030】
式(T)中、R1~R4は、それぞれ独立に、炭化水素基を表す。R1とR2は互いに結合して環を形成していてもよい。R3とR4は互いに結合して環を形成していてもよい。
式(T)中、xは、1~10の整数を表す。
【0031】
(R1~R4)
上述のとおり、式(T)中、R1~R4は、それぞれ独立に、炭化水素基を表す。
上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1~30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2~30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2~30)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素数6~18の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
上記炭化水素基は、本発明の効果がより優れる理由から、直鎖状の脂肪族炭化水素基(特に、炭素数1~5)であることが好ましい。
【0032】
(x)
上述のとおり、xは、1~10の整数を表す。
上記xは、本発明の効果がより優れる理由から、1~5の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましい。
【0033】
<具体例>
上記チウラム系化合物の具体例としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、テトラエチルチウラムジスルフィドが好ましい。
【0034】
<含有量>
本発明の組成物において、上記チウラム系化合物の含有量は、上述したクロロプレンゴム100質量部に対して、0.1~1.3質量部である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、0.2~0.5質量部であることが好ましい。
【0035】
<チウラム系化合物/硫黄>
本発明の組成物において、硫黄の含有量に対するチウラム系化合物の含有量(チウラム系化合物/硫黄)は、本発明の効果がより優れる理由から、1~100質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。
【0036】
<(硫黄+チウラム系化合物)/粘着付与剤>
本発明の組成物において、粘着付与剤の含有量に対する硫黄とチウラム系化合物の合計の含有量((硫黄+チウラム系化合物)/粘着付与剤)は、本発明の効果がより優れる理由から、1~20質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがより好ましい。
【0037】
〔酢酸エステル〕
本発明の接着剤は、酢酸エステルを含有する。なお、酢酸エステルは環境負荷の小さい溶剤である。
ここで、酢酸エステルとは、酢酸とアルコールとから生ずるエステルであり、R-OCOCH3(Rは炭化水素基、好ましくは脂肪族炭化水素基)で表される。
本発明の接着剤に含有される酢酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、酢酸と炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数3~6)のアルコールから生じたものであることが好ましい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、酢酸と直鎖アルコールから生成されたものであることが好ましい。
酢酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸t-ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、酢酸エチル、及び、酢酸n-プロピルが好ましい。
【0038】
<含有量>
本発明の接着剤において、上記酢酸エステルの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したクロロプレンゴム100質量部に対して、100~500質量部であることが好ましく、150~300質量部であることがより好ましい。
【0039】
上記酢酸エステルは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
〔任意成分〕
本発明の接着剤は、上述した成分以外に、クロロプレンゴム以外のゴム、カーボンブラック以外の充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、タルク等)、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、軟化剤、難燃剤、加硫促進剤、加硫助剤(例えば、酸化マグネシウム、酸化亜鉛)、ワックス、帯電防止剤、加工助剤、イソシアネート、酢酸エステル以外の溶剤等を含有することができる。
【0041】
<クロロプレンゴム以外のゴム>
クロロプレンゴム以外のゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。
【0042】
<シリカ>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、シリカを含有するのが好ましい。
上記シリカの具体例としては、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。
上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
【0043】
(含有量)
本発明の組成物において、上記シリカの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したクロロプレンゴム100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、2~20質量部であることがより好ましい。
【0044】
<イソシアネート>
本発明の接着剤は、本発明の効果がより優れる理由から、さらにイソシアネートを含有するのが好ましい。本発明の接着剤がイソシアネートを含有する場合、イソシアネートのイソシアネート基(-NCO)とクロロプレンゴムが有する活性水素等とが反応し、結果として、より高い接着力を示すものと推測される。
イソシアネートは、イソシアネート基を有する化合物であれば特に制限されない。イソシアネートが有するイソシアネート基の数は特に制限されないが、接着力がさらに優れる理由から、2個以上であることが好ましい。
イソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(ジイソシアン酸イソホロン)などの脂環式イソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、ならびに、これらのイソシアネートのアダクト体、ビュレット体およびイソシアヌレート体、などを挙げることができる。
【0045】
(含有量)
本発明の組成物において、上記イソシアネートの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したクロロプレンゴム100質量部に対して、1~35質量部であることが好ましく、2~20質量部であることがより好ましい。
【0046】
上記イソシアネートは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0047】
<酢酸エステル以外の溶剤>
本発明の接着剤は、さらに、酢酸エステル以外の溶剤を含有していてもよい。そのような溶剤としては、例えば、トルエン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0048】
本発明の接着剤が酢酸エステル以外の溶剤を含有する場合、全溶剤中の上述した酢酸エステルの割合は、本発明の効果がより優れる理由から、10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0049】
〔接着剤の製造方法〕
本発明の接着剤は、例えば、上述した溶剤以外の各成分をバンバリーミキサー、ニーダー等で混練して作製したゴム組成物を予め調製し、このゴム組成物を溶剤と混合することで製造できる。また、溶剤、粘着付与剤、イソシアネートおよび硫黄以外の各成分をバンバリーミキサー、ニーダー等で混練して作製した混合物を予め調製し、接着剤の使用時に、上記の混合物、粘着付与剤、イソシアネートおよび硫黄を溶剤と混合して製造する形態であってもよい。
【0050】
[被着体ゴム接着方法]
本発明の被着体ゴム接着方法は、上述した接着剤を少なくとも接着界面に使用して、被着体ゴム同士を接着させる接着方法である。接着方法は自然加硫でも加熱加硫でも構わないが、自然加硫であることが好ましい。
ここで、「接着界面に使用する」とは、被着体ゴムと被着体ゴムとの接着界面に接着剤を挟み込むことをいう。
本発明の接着剤を接着界面にする際、前もって接着界面にプライマーを塗布しておいてもよい。プライマーとしては従来公知のものを使用することができる。
本発明の被着体ゴム接着方法に用いられる被着体ゴムとしては、特に限定されないが、未加硫のもの(「未加硫ゴム」ともいう。)であっても、加硫したもの(「加硫ゴム」ともいう。)であってもよいが、加硫ゴムであるのが好ましい。なお、本発明の接着剤を用いて加硫ゴム同士を接着させる加硫ゴム接着方法を単に「本発明の接着方法」とも言う。
被着体ゴムのゴム成分の種類は特に制限されないが、上述したクロロプレンゴムや上述したクロロプレンゴム以外のゴム等が挙げられる。なかでも、ブタジエンゴム以外のゴムを主成分としたものが好ましい。
本発明の接着剤(特に自然加硫型である場合)は、ゴム製品同士(特に、長い形状のもの)のエンドレス加工が容易にできるため、コンベヤベルト同士の接着に用いることが好ましい。
コンベヤベルトとしては、例えば、抗張力材が埋設されているコートゴムの上下にカバーゴムが設けられた構造を有するもの等を挙げることができる。上記抗張力材としては、特に限定されないが、例えば、帆布、スチールコード等を挙げることができる。
【0051】
本発明の接着方法を用いたコンベヤベルトの接着形式としては、特に限定されず、例えば、コンベヤベルトの端部の厚みを進行方向に対して斜めに切断して接着するスカイバー方式;コンベヤベルトの端部のカバーゴム、コートゴム、抗張力材等の各層を階段状に剥離切断して接着するステップ方式;コンベヤベルトの端部を重ね合わせて接着するオーバーラップ方式;コンベヤベルトの端部をくさび型に切り込んで突き合わせ接着するフィンガー方式(電光型ジョイント方式または差し子方式)等を挙げることができる。上記コンベヤベルトの接着形式としては、更に、上記スカイバー方式、ステップ方式、オーバーラップ方式、フィンガー方式の改良型や融合型であってもよい。また、コンベヤベルトの端部の厚みを進行方向に対してくさび型に切り込んで突き合わせ接着する形式であってもよい。
本発明の接着方法を用いたコンベヤベルトの接合形式として、例えば、下記
図1に示す態様が挙げられる。
図1は、コンベヤベルトの端部のカバーゴム、コートゴム、抗張力材(図示せず)の各層を階段状に剥離切断して接着するステップ方式の一例を示している。
被着体ゴムとして、
図1(a)に示すように、端部領域4においてカバーゴム2a、2b、コートゴム3、抗張力材(図示せず)の各層が階段状に剥離切断されたコンベヤベルト1、並びに、端部領域4’においてカバーゴム2a’、2b’、コートゴム3’、抗張力材(図示せず)の各層が階段状に剥離切断されたコンベヤベルト1’を準備し、これを
図1(b)に示すように接着する。つまり、
図1に示すコンベヤベルトの接合形式では、カバーゴム同士(2aと2a’、2bと2b’)、コートゴム同士(3と3’)で接着する。
【0052】
本発明の接着方法を用いた接着処理としては、例えば、本発明の接着剤を被着体ゴムの接着界面に塗布して乾燥させた後、被着体ゴム同士を接着界面で貼り合わせて圧着し、0~35℃(好ましくは15~30℃、より好ましくは20~25℃)で3~72時間(好ましくは3~24時間、より好ましくは6~18時間)放置する方法(自然加硫)、及び、本発明の接着剤を被着体ゴムの接着界面に塗布して乾燥させた後、被着体ゴム同士を接着界面で貼り合わせて圧着し、高温(例えば、80~200℃)で加熱プレスする方法(加熱加硫)などが挙げられる。これにより、接着剤に含まれるクロロプレンおよび硫黄が、バフ等により表面処理された被着体ゴム表面の凸凹に入りこんで自然加硫または加熱加硫し、また、被着体ゴム中に接着剤中の成分と反応する官能基等が含まれている場合にはこの官能基と反応することにより、強固な接合を得ることができる。つまり、架橋効果と投錨効果により接着することができる。更に、加温や加圧をすることにより、架橋反応が加速され接着処理に要する時間を短縮することができる。
【0053】
[コンベヤベルト]
本発明のコンベヤベルトは、上述した本発明の接着方法により接着されてなるコンベヤベルトである。具体的には、例えば上述した各種の接着形式により、コンベヤベルトの一端と他のコンベヤベルトの一端とをその接着界面に本発明の接着剤を挟み込んで圧着することによって製造されるコンベヤベルトである。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
〔接着剤の調製〕
表1に記載の各成分のうち、粘着付与剤、硫黄、イソシアネート及び溶剤以外の各成分を密閉式混練機のニーダーで混練し、混合物を得た。次いで、表1に記載の溶剤に、上記混合物、並びに、表1に記載の粘着付与剤、硫黄及びイソシアネートを溶解させ、接着剤とした。
【0056】
〔評価〕
得られた各接着剤について以下の評価を行った。
【0057】
<塗布性>
各接着剤について下記基準で塗布性を評価した(初期)。また、調製してから40℃恒温室で9ヵ月経過した各接着剤についても同様に塗布性を評価した(9ヵ月後)。結果を表1に示す。
◎:刷毛塗りが極めて容易。
○:刷毛塗りが可能。
×:粘度が高く刷毛塗りが困難。
【0058】
<粘度>
各接着剤について粘度を測定し、下記基準で評価した(初期)。また、調製してから40℃恒温室で9ヵ月経過した各接着剤についても同様に粘度を測定し、同様に評価した(9ヵ月後)。結果を表1に示す。
なお、粘度は、B型粘度計を用いて、電動機によりスピンドル(又はローター)を試料中に一定回転数12rpmで回転させ、その粘性抵抗トルクをスプリングバランスによって測定した。本測定では、LV-04(64)のBHスピンドルを使用した。
◎:粘度が5千mPa・s以下、1千mPa・s以上
○:粘度が1万mPa・s以下、5千mPa・s超
×:粘度が1万mPa・s超
【0059】
9ヵ月経過後の塗布性及び粘度の両方が○又は◎である場合、貯蔵安定性に優れると言える。
【0060】
<接着性>
各接着剤を用いて、被着体ゴム同士の接着を行った。
具体的には、後述する被着体ゴム(6インチ×4インチ四方、厚さ2mmの加硫済みシート)の表面をサンドペーパー、ワイヤブラシ等でバフがけした後、その接着面となる箇所に接着剤を刷毛で均一に塗布し、23℃で表面の粘着がなくなるまで乾燥させた。次いで、再度刷毛で接着剤を均一に塗布し、粘着がなくなる前に被着体ゴム同士を貼り合せて圧着し、サンプルの上に質量10kgの重りをのせ、23℃で24時間放置した。上記の工程を経て得られた接着後の被着体ゴムを切断し、幅25mmの試験片とした(自然加硫)。得られた試験片を用いて、室温(23℃)、剥離速度50mm/分の条件で剥離試験を行い、接着力(N/mm)を測定し、下記基準で評価した(初期)。
また、調製してから40℃恒温室で9ヵ月経過した各接着剤についても同様に塗布性を評価した(9ヵ月後)。
結果を表1に示す。初期及び9ヵ月経過後いずれにおいても、また、いずれの被着体ゴムにおいても、○又は◎である場合、接着性に優れると言える。
◎:接着力が4N/mm超
○:接着力が1N/mm超、4N/mm以下
×:接着力が1N/mm以下
【0061】
【0062】
<各成分の詳細>
表1中、各成分の詳細は以下のとおりである。
・クロロプレンゴム:昭和電工社製、商品名「ショウプレンAD」
・シリカ:エボニック デグサ ジャパン社製、商品名「カープレックス 1120」
・カーボンブラック:新日化カーボン社製、商品名「ニテロン#20Y」(窒素吸着比表面積(N
2SA):19m
2/g)
・粘着付与剤:日立化成工業社製、商品名「ヒタノール2192-50」(レゾール型フェノール樹脂)/住友ベークライト社製、商品名「スミライトレジンPR-12603」(ノボラック型フェノール樹脂)=2/1(質量比)
・硫黄:細井化学工業社製、商品名「微粉硫黄」
・チウラム系化合物:大内振興化学工業社製、商品名「ノクセラー TET」(テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD))
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・酸化マグネシウム:協和化学工業社製、商品名「キョーワマグ150」(酸化マグネシウム)
・イソシアネート:トリフェニルメタン-4,4′,4′′-トリイソシアネート(下記構造)
【化2】
・トルエン:トルエン
・n-ヘキサン:n-ヘキサン
・酢酸エチル:酢酸エチル
・酢酸n-プロピル:酢酸n-プロピル
【0063】
<被着体ゴム>
上述した被着体ゴムとしては、コンベヤベルトのカバーゴムとして汎用されている2種のベルト(耐摩ベルト、耐油ベルト)を用いた。各ベルトの主な成分および加硫系を下記表2に示す。なお、本実施例では、
図1に示すようなコンベヤベルトのエンドレス接合方法を想定している。つまり、本実施例でいう「被着体ゴム同士の接着」とは、同質の加硫ゴム同士の接着(例えば、耐摩ゴムと耐摩ゴムとの接着)を意味する。
また、表2中のポリマー欄において、「NR」は天然ゴム、「NBR」はニトリルゴム、「SBR」はスチレンブタジエンゴムを意味する。
また、カーボンブラック欄において、「ISAF」は「Intermidiates Super Abrasion Furnace」、「HAF」は「High Abrasion Furnace」を意味する。
また、加硫系欄(加硫成分欄)において、「CZ」はスルフェンアミド系加硫促進剤(大内新興化学工業社製 商品名「ノクセラーCZ-G」)、「D」はグアニジン系加硫促進剤(三新化学工業社製 商品名「サンセラーD-G」)を意味する。
カーボンブラック欄、オイル/可塑剤欄、および、加硫系欄における「phr」は、ポリマー100質量部に対する質量部を表す。
【0064】
【0065】
表1から分かるように、各成分を所定量含有する実施例1~10は、優れた貯蔵安定性及び優れた接着性を示した。一方、チウラム系化合物を含有しない比較例1、チウラム系化合物を含有するが所定量を超える比較例2、硫黄の含有量が所定量に満たない比較例3、硫黄の含有量が所定量を超える比較例4、粘着付与剤の含有量が所定量に満たない比較例5、及び、粘着付与剤の含有量が所定量を超える比較例6は、貯蔵安定性及び接着性の少なくとも一方が不十分であった。
【0066】
実施例1と実施例2との対比(チウラム系化合物の含有量のみが異なる態様同士の対比)から、「チウラム系化合物/硫黄」が20質量%以上である実施例2は、接着性(9ヵ月経過後)により優れていた。
【符号の説明】
【0067】
1、1’ コンベヤベルト
2a、2b、2a’、2b’ カバーゴム
3、3’ コートゴム
4、4’ 端部領域