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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】接合部材
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/06 20060101AFI20230913BHJP
   F16B 2/12 20060101ALI20230913BHJP
   F16B 2/14 20060101ALI20230913BHJP
   E04B 1/24 20060101ALN20230913BHJP
   E04B 1/58 20060101ALN20230913BHJP
【FI】
F16B5/06 S
F16B2/12 B
F16B2/14 C
E04B1/24 Q
E04B1/58 506F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020038924
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021139463
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】有田 政樹
(72)【発明者】
【氏名】北岡 聡
(72)【発明者】
【氏名】木村 慧
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】平山 貴之
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-163314(JP,U)
【文献】特開2019-163639(JP,A)
【文献】特開2013-215860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00- 5/12
E04B 1/24
E04B 1/38- 1/61
F16B 2/00- 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1被接合部材の面と第2被接合部材の面との間に介挿される接合部材であって、
前記第1被接合部材の面に接触する第1後接触面、および前記第1後接触面に対して傾斜した第1前接触面を有する第1部材と、
前記第2被接合部材の面に接触する第2後接触面、前記第2後接触面に対して傾斜し前記第1前接触面に接触する第2前接触面、および少なくとも被接合部材の面の対向軸に沿った方向に延びる第1の部分を含む形状の貫通孔を有する第2部材と、
前記第1部材に固定され、前記第2部材の貫通孔に挿通される棒状部材と
を備える接合部材。
【請求項2】
前記棒状部材は、軸方向の少なくとも一部にねじ溝を有し、
前記棒状部材に螺合し、前記棒状部材の前記第1部材とは反対側から前記第2部材に向かって締め付けることが可能なナットをさらに備える、請求項1に記載の接合部材。
【請求項3】
前記第1被接合部材の面は、板状部分の端面であり、
前記第1部材は、前記板状部分を挿入することが可能な溝部をさらに有し、
前記第1後接触面は、前記溝部の底面を形成する、請求項1または請求項2に記載の接合部材。
【請求項4】
前記棒状部材は、軸方向の少なくとも一部にねじ溝を有し、前記第1部材に螺合することによって前記第1部材に固定され、前記第1部材を貫通して前記溝部の側面から突出する、請求項3に記載の接合部材。
【請求項5】
前記第2部材の貫通孔の形状は、前記第1の部分に交差する方向に延びた第2の部分をさらに含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の接合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばRC梁または壁と大梁との間、または大梁と小梁との間の梁端接合部は、一般的に剛接合またはピン接合として設計される。大梁と小梁との例でいうと、剛接合の場合には小梁のフランジを大梁に溶接またはボルト接合し、さらに小梁のウェブを大梁にボルト接合する。ピン接合の場合、小梁のウェブを大梁に取り付けたシアプレートにボルト接合し、小梁のフランジは大梁に接合しない。
【0003】
これに対して、非特許文献1には、水平力を負担しないグラビティフレームや、水平力が小さく逆対称曲げにならない場合のモーメントフレームなど、接合部のモーメントが逆転しない荷重条件下におけるコンタクトプレートを用いた接合が記載されている。コンタクトプレートは、被接触部材である鉄骨梁の下側フランジの小端面と支持部材との間の隙間に介挿され、鉄骨梁の圧縮側フランジの力を対向する支持部材に伝達する。
【0004】
ところが、一般に、鉄骨梁の下側フランジの小端面と支持部材との間の隙間は、建方精度のばらつきなどによってその寸法が変動する。コンタクトプレートの厚みが隙間の寸法に対応していなければ力は伝達されないため、コンタクトプレートの厚みを可変にする必要がある。具体的には、特許文献1では、コンタクトプレートに相当する部材をくさび状にすることによって隙間の寸法変動に対応する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-282019号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】EUROPEAN COMMITTEE FOR STANDARDIZATION、「Eurocode 4: Design of Composite Steel and Concrete Structures Part 1-8: Design of joints」、2005年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術のようにコンタクトプレートに相当する部材をくさび状にした場合、鉄骨梁の下側フランジの小端面または支持部材の少なくともいずれかとの間の接触領域がフランジ板厚に対して狭幅になる。この場合、下側フランジの断面積に比べてメタルタッチ部の面積が小さくなるため、局所圧縮状態が発生し、作用する圧縮力に対して接触部分が塑性化したり、剛性および耐力が安定しないために設計が困難になったりする可能性がある。
【0008】
また、上記のようにくさび状の部材を用いる場合、接合構造を形成する鉄骨梁が支持部材に対して所定の位置に配置された後でなければ、下側フランジと支持部材との間にくさび状の部材を介挿することができない。一般に接合構造の施工箇所は高所であるため、くさび状の部材を施工箇所まで持ち運ぶ手間が煩雑である、くさび状の部材が施工中に落下したり、施工後に脱落したりする可能性がある、といった施工上の不便があった。
【0009】
そこで、本発明は、隙間の寸法が変動する部材間に安定して介挿することが可能でありつつ、施工上の不便を最小化することが可能な接合部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]
互いに対向する第1被接合部材の面と第2被接合部材の面との間に介挿される接合部材であって、
第1被接合部材の面に接触する第1後接触面、および第1後接触面に対して傾斜した第1前接触面を有する第1部材と、
第2被接合部材の面に接触する第2後接触面、第2後接触面に対して傾斜し第1前接触面に接触する第2前接触面、および少なくとも被接合部材の面の対向軸に沿った方向に延びる第1の部分を含む形状の貫通孔を有する第2部材と、
第1部材に固定され、第2部材の貫通孔に挿通される棒状部材と
を備える接合部材。
[2]
棒状部材は、軸方向の少なくとも一部にねじ溝を有し、
棒状部材に螺合し、棒状部材の第1部材とは反対側から第2部材に向かって締め付けることが可能なナットをさらに備える、[1]に記載の接合部材。
[3]
第1被接合部材の面は、板状部分の端面であり、
第1部材は、板状部分を挿入することが可能な溝部をさらに有し、
第1後接触面は、溝部の底面を形成する、[1]または[2]に記載の接合部材。
[4]
棒状部材は、軸方向の少なくとも一部にねじ溝を有し、第1部材に螺合することによって第1部材に固定され、第1部材を貫通して溝部の側面から突出する、[3]に記載の接合部材。
[5]
第2部材の貫通孔の形状は、第1の部分に交差する方向に延びた第2の部分をさらに含む、[1]から[4]のいずれか1項に記載の接合部材。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によれば、接合部材を隙間の寸法が変動する部材間に安定的に介挿することが可能でありつつ、施工上の不便を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る接合部材の斜視図である。
図2図1からボルトおよびナットを取り除いた図である。
図3図1に示した接合部材を含む接合構造の斜視図である。
図4】本発明の一実施形態における接合部材の設置手順の例を示す図である。
図5A】本発明の一実施形態における接合部材の設置手順の例を示す図である。
図5B】本発明の一実施形態における接合部材の設置手順の例を示す図である。
図5C】本発明の一実施形態における接合部材の設置手順の例を示す図である。
図6A】本発明の一実施形態における接合部材の設置手順の例を示す図である。
図6B】本発明の一実施形態における接合部材の設置手順の例を示す図である。
図6C】本発明の一実施形態における接合部材の設置手順の例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態の変形例に係る接合構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る接合部材の斜視図である。図示された例において、接合部材10は、第1部材11と、第2部材12と、ボルト13と、ナット14とを含む。接合部材10は、互いに対向する2つの被接合部材の面の間に介挿される。被接合部材は、例えば後述する例のようにH形断面梁の下フランジや、H形断面梁に接合されるリブなどである。以下では、第1部材11および第2部材12が互いに対向する側をそれぞれの前側、第1部材11および第2部材12がそれぞれの被接合部材に対向する側をそれぞれの後側として、各部材の構成について説明する。
【0015】
第1部材11は、第1後接触面111と、第1後接触面111に対して傾斜した第1前接触面112とを有する。図示された例において、第1部材11の後側には後述するように被接合部材の板状部分を挿入することが可能な溝部113が形成され、第1後接触面111は溝部113の底面113Bを形成する。この場合、第1後接触面111は、溝部113に挿入された被接合部材の板状部分の端面に接触する。また、図示された例において、第1部材11には後述するボルト13が螺合する貫通ねじ孔114が形成される。
【0016】
第2部材12は、第2後接触面121と、第2後接触面121に対して傾斜し第1部材11の第1前接触面112に接触する第2前接触面122とを有する。接合部材10が被接合部材の互いに対向する面の間に介挿された状態において、被接合部材の面の対向軸(x軸として図示する)に対する第1前接触面112および第2前接触面122のそれぞれの傾斜角度θ,θは互いに補角の関係にある。また、第2部材12は、ボルト13が挿通される貫通孔124を有する。ボルト13が第1部材11に固定されるとともに第2部材12の貫通孔124に挿通されることによって、第1部材11と第2部材12とが互いに係合される。
【0017】
ここで、図1からボルト13およびナット14を取り除いた図2に示されるように、貫通孔124の形状は、被接合部材の面の対向軸に沿った方向(x軸方向)に延びた第1の部分124Aを含む。第1の部分124Aの長さは、ボルト13の軸径よりも大きい。これによって、貫通孔124および貫通ねじ孔114にボルト13を挿通して第1部材11が被接合部材に固定された後も、第2部材12をx軸の方向に移動させて第1前接触面112と第2前接触面122とを互いに摺動させ、図1に示す第1後接触面111から第2後接触面121までの距離Dを被接合部材の面の間の隙間の大きさに応じて調節することができる。
【0018】
なお、本明細書において、被接合部材の面の対向軸(x軸)は、互いに対向する2つの被接合部材の面の少なくとも一方に直交する軸として定義される。接合部材10では、第1後接触面111および第2後接触面121が、互いに対向する2つの被接合部材の面にそれぞれ一致する。後述する図3図7に示された例のように互いに対向する2つの被接合部材の面が互いに平行である場合、2つの被接合部材の面の両方に直交する対向軸が定義される。また、加工誤差や斜角の形成のために2つの被接合部材の面が平行ではない場合、2つの被接合部材の面のいずれか一方に直交する対向軸が定義される。この場合も、上述のように、対向軸に対する第1前接触面112および第2前接触面122のそれぞれの傾斜角度θ1,θ2は互いに補角の関係にある。また、貫通孔124の形状が対向軸に沿った方向に延びた第1の部分124Aを含むことによって、第2部材12を対向軸に沿った方向に移動させて第1前接触面112と第2前接触面122とを互いに摺動させることができる。ここで、例えば貫通孔124が形成される第2部材12の上面が対向軸に対して平行ではないような場合、貫通孔124の第1の部分124Aは対向軸に沿った方向にのみ延びるわけではないが、このような場合も第2部材12を対向軸に沿った方向を含む方向に移動させることによって、上記と同様の効果を得ることができる。
【0019】
さらに、本実施形態において、貫通孔124の形状は、第1の部分124Aに交差する方向に延びた第2の部分124Bをさらに含む。貫通孔124に挿通されたボルト13を第2の部分124Bに押し込むことによって、第1前接触面112と第2前接触面122との間の摺動が規制され、第1後接触面111から第2後接触面121までの距離Dが固定される。例えば、距離Dが最小になったときにボルト13が位置する第1の部分124Aの端部に第2の部分124Bが交差するようなL字形に貫通孔124を形成することによって、後述する例のように距離Dが最小の状態で第1部材11に第2部材12を固定することができる。
【0020】
ボルト13は、第1部材11に固定され、第2部材12の貫通孔124に挿通される棒状部材の例である。本実施形態において、ボルト13は頭部131を除く全長にわたってねじ溝を有し、貫通ねじ孔114に螺合することによって第1部材11に固定される。また、ナット14がボルト13に螺合し、第1部材11とは反対側から第2部材12に向かって締め付けることが可能なように配置される。第1部材11と第2部材12との間でボルト13に螺合する追加のナットが配置され、ナット14との間で第2部材12を挟み込むダブルナットを形成してもよい。ナット14を配置することによって、後述する例のように適切な距離Dを設定した状態で第1部材11と第2部材12との位置関係を固定することができる。
【0021】
さらに、本実施形態では、ボルト13が第1部材11の貫通ねじ孔114を貫通して溝部113の側面113Sから突出する。これによって、溝部113に被接合部材の板状部分が挿入された場合、ボルト13の端部を被接合部材の板状部分の板面に接触させ、対向する溝部113の側面との間で板状部分を締め付けることができる。これによって、溝部113に被接合部材の板状部分を挿入したときに、第1部材11が板状部分から脱落することをより確実に防止できる。
【0022】
なお、他の実施形態において、ボルト13は必ずしも第1部材11を貫通しなくてもよい。例えば、ボルト13が配置されるのとは反対側(図1では下側)の溝部113の側面から突出するボルトが別途配置されてもよい。あるいは、被接合部材の板状部分の厚さが一定であり、溝部113が板状部分の厚さに対応する幅で形成されている場合、ボルト13による締め付けがなくても第1部材11は板状部分から脱落しない。逆にいえば、ボルトによって溝部113に挿入された板状部分を締め付けられる構成にすることによって、溝部113に挿入される板状部分の厚さが一定でなく、板状部分の厚さと溝部113の幅とが対応しない場合にも、第1部材11が板状部分から脱落することを防止できる。
【0023】
また、さらに他の実施形態において、ボルト13は第1部材に螺合によって固定されなくてもよい。例えば、ボルト13は第1部材11に溶接されてもよい。この場合、ボルト13の第1部材11側の部分にはねじ溝が形成されなくてもよい。また、ナット14が設けられない場合は、ボルト13の中間部分にねじ溝が形成されなくてもよい。この場合、ボルト13ではなくねじ溝を有さない棒状部材が配置される。棒状部材の場合、ボルト13のような頭部131は設けられなくてもよい。また、ボルト13の場合も、例えば頭なしボルトを用いることによって頭部131を設けなくてもよい。
【0024】
図3は、図1に示した接合部材を含む接合構造の斜視図である。図示された例において、接合構造は、小梁2とリブ31との間に形成される。小梁2は、上フランジ21、ウェブ22および下フランジ23を含むH形断面梁である。リブ31は、上フランジ41、ウェブ42および下フランジ43を有するH形断面梁である大梁4に、フィンプレート32とともに溶接される。接合部材10は、小梁2の下フランジ23を第1被接合部材、リブ31を第2被接合部材として、互いに対向する下フランジ23の端面23Eとリブ31の端面31Eとの間に介挿される。
【0025】
上記のような接合構造において、小梁2は、ウェブ22の端部でフィンプレート32に接合される。ウェブ22とフィンプレート32との接合は、例えばボルト33を用いた接合であってもよいし、溶接であってもよい。ウェブ22とフィンプレート32との接合によって、小梁2の軸方向の圧縮力および引張力、ならびにせん断力が伝達される。小梁2は、下フランジ23の端面23Eで接合部材10を介してリブ31の端面31Eに接触する。下フランジ23の端面23Eとリブ31の端面31Eとの接触によって、小梁2の軸方向の圧縮力が大梁4に伝達される。
【0026】
本実施形態では、接合部材10を適切に配置して、第1部材11の第1後接触面111が下フランジ23の端面23Eに接触し、第2部材12の第2後接触面121がリブ31の端面31Eに接触し、かつ第1前接触面112と第2前接触面122とが互いに接触した状態を維持することによって、圧縮力を効果的に伝達することができる。
【0027】
図4から図6Cは、本発明の一実施形態における接合部材の設置手順の例を示す図である。まず、図4に示された例では、第2部材12の貫通孔124に挿通されたボルト13が、第2の部分124Bに押し込まれている。上述のように、本実施形態では貫通孔124が第1の部分124Aと第2の部分124Bとを含むL字形に形成されるため、ボルト13を第2の部分124Bに押し込むことによって、第1後接触面111から第2後接触面121までの距離Dが最小の状態で第1部材11を第2部材12に固定することができる。
【0028】
例えば、図4に示した状態で第1部材11の溝部113に小梁2の下フランジ23の端部を挿入し、接合部材10を小梁2に予め取り付けて施工箇所まで搬送してもよい。ボルト13が貫通孔124の第2の部分124Bに押し込まれていてもボルト13の軸回りの回転は可能である。従って、下フランジ23を溝部113に挿入した後に、ボルト13を回転させて貫通ねじ孔114を貫通して溝部113の側面113Sから突出させ、下フランジ23を締め付けることによって第1部材11を下フランジ23に固定してもよい。
【0029】
次に、図5Aから図5Cに示された例では、第2部材12の貫通孔124に挿通されたボルト13が、第2の部分124Bから第1の部分124Aに移り、第1前接触面112と第2前接触面122との間の摺動が可能になっている。これによって、第1後接触面111から第2後接触面121までの距離を、図5Aに示した最小の距離Dから、より大きい距離D、最大の距離Dまで変化させることができる。例えば、上述のように下フランジ23に距離Dが最小(距離D)の状態で接合部材10を予め取り付け、下フランジ23の端面23Eがリブ31の端面31Eに対向した後に図5Aから図5Cに示したように距離Dを徐々に拡大する(距離Dおよび距離D)ことによって、接合部材10の配置を端面23Eと端面31Eとの間の隙間の大きさに容易に整合させることができる。
【0030】
さらに、図6Aから図6Cに示された例では、図5Aから図5Cに示されたように様々な距離Dで第1部材11および第2部材12が配置された状態でナット14を第2部材12に向かって締め付けることによって、第1部材11と第2部材12との位置関係が固定されている。ナット14を締め付けると、距離Dが小さくなる方向については第1前接触面112と第2前接触面122との間の摺動が規制されるため、施工後に第1部材11と第2部材12との間に相対的な動きが発生したことによって距離Dが小さくなり、接合部材10が被接合部材の面同士の隙間から脱落することを防止できる。
【0031】
図7は、本発明の一実施形態の変形例に係る接合構造の斜視図である。上記で図3に示した例では接合部材10の第1部材11が小梁2の下フランジ23側に、第2部材12がリブ31側に配置されていたが、この配置を逆にし、第1部材11をリブ31側に、第2部材12を下フランジ23側に配置してもよい。この場合、第1部材11の溝部113にはリブ31が挿入され、第1後接触面111にはリブ31の端面31Eが接触する。また、第2部材12の第2後接触面121には下フランジ23の端面23Eが接触する。
【0032】
上記の例に示されるように、本発明の実施形態における接合部材10の第1部材11および第2部材12のそれぞれと、接合構造を構成する被接合部材との関係は特に限定されない。第1部材11の溝部113には、被接合部材の板状部分であればどのようなものが挿入されてもよい。また、第2部材12の第2後接触面121には、図示された例のように板状部材が当接されてもよいし、あるいはより大きい壁面などに第2後接触面121が接触させられてもよい。
【0033】
以上で説明したような本発明の一実施形態では、接合部材10を構成する第1部材11の第1前接触面112と第2部材12の第1前接触面212とが傾斜して形成され、かつ互いに対して摺動可能である。従って、接合部材10は、隙間の寸法が変動する部材間に安定して介挿することができる。また、第1部材11に固定されたボルト13が第2部材12の貫通孔124に挿通されるため、第1部材11と第2部材12とを互いに係合させ、例えば施工中や施工後における第2部材の脱落を防止することができる。
【0034】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0035】
2…小梁、4…大梁、10…接合部材、11…第1部材、12…第2部材、13…ボルト、14…ナット、21…上フランジ、22…ウェブ、23…下フランジ、23E…端面、31…リブ、31E…端面、32…フィンプレート、33…ボルト、41…上フランジ、42…ウェブ、43…下フランジ、111…第1後接触面、112…第1前接触面、113…溝部、113B…底面、113S…側面、114…貫通ねじ孔、121…第2後接触面、122…第2前接触面、124…貫通孔、124A…第1の部分、124B…第2の部分、131…頭部、212…第1前接触面。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7