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特許7348528クロークレーンのトング吊下用治具及びスラブの搬送方法
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  • 特許-クロークレーンのトング吊下用治具及びスラブの搬送方法 図1
  • 特許-クロークレーンのトング吊下用治具及びスラブの搬送方法 図2
  • 特許-クロークレーンのトング吊下用治具及びスラブの搬送方法 図3
  • 特許-クロークレーンのトング吊下用治具及びスラブの搬送方法 図4
  • 特許-クロークレーンのトング吊下用治具及びスラブの搬送方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】クロークレーンのトング吊下用治具及びスラブの搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/10 20060101AFI20230913BHJP
   B66C 1/24 20060101ALI20230913BHJP
   B66C 17/06 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B66C1/10 X
B66C1/24 Z
B66C17/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020052796
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151903
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】鶴園 弘明
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 伸一
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-173651(JP,A)
【文献】実開昭58-160257(JP,U)
【文献】特開平11-35296(JP,A)
【文献】登録実用新案第3100662(JP,U)
【文献】特開平7-315785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/10
B66C 1/24
B66C 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ吊上げ用のトングが取り付けられるビームを、クロークレーンのクローに支持するための治具であって、
前記クローの受け面に沿って前記クローの両側に水平に配置される梁部材と、
前記クローの先端部を覆うように配置される鈎状部材と、
前記クローの受け面において前記クローの長手方向と直交する方向で前記ビームを支持する位置の前後で、各々前記梁部材間に架け渡されて前記梁部材に固定される第1の固定部材、第2の固定部材と、
前記クローの後端部の後側で、前記梁部材間に架け渡されて前記梁部材に固定される第3の固定部材と、を備えたことを特徴とする、クロークレーンのトング吊下用治具。
【請求項2】
前記鈎状部材と、前記第1の固定部材、第2の固定部材は、予め前記梁部材に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載のクロークレーンのトング吊下用治具。
【請求項3】
クロークレーンのクローに、請求項1または2のいずれか一項に記載のクロークレーンのトング吊下用治具を取り付け、
スラブ吊上げ用のトングが取り付けられたビームを前記クローに支持し、
前記トングの掴み爪でスラブを把持して搬送することを特徴とする、スラブの搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロークレーンのトング吊下用治具及びスラブの搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、製鋼工場では、スラブの如き鋼材等の長尺重量物を運搬する手段として、クロークレーンが使用されている。このクロークレーンは一側に開口部があるクローが複数取り付けられたビームを、クレーンで昇降させることで操作を行う。通常、複数のロールで構成された搬送テーブル上のスラブを持ち上げるために、ロール間に複数のクローを差し入れてスラブを掬い上げ、別の搬送テーブルへ下す。
【0003】
しかしながら、スラブの持ち上げ、下しの作業はスラブの下側にクローを差し入れる必要があるため、クロークレーンはロール間のようにスラブの下側にクローを差し入れる空間がないと上げ下ろしができないという制約がある。
【0004】
ところで、移送先の搬送テーブルの下流工程で何かしらのトラブル又は工事が発生した場合には、クロークレーンによる前記移送先の搬送テーブルへのスラブの搬送を行えない場合があり、その場合には、スラブを別途トレーラーに複数枚積み重ねて搬送することが行われる。
【0005】
このようなトレーラーへの載置作業はクロークレーンでは行えないため、スラブの両側からスラブトングと呼ばれるトングでスラブの上からスラブの両側を把持して、トレーラーへと搬送することになる。
【0006】
しかしながら、そのためにトングをクローに交換する場合は、トングとクローの取り付け、取り外しは大変な労力、時間がかかる。一方、トング専用のクレーンを別途設置するには費用、スペースが必要なる。
【0007】
この点に関し、特許文献1には、クレーンの走行台車から垂下させたマストとクロー付きビームとの着脱を従来のコッターピン打ち込みを必要とせずレバーによる操作で着脱を簡易化することについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭61-295992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら特許文献1の方法をトングにも適用すれば、クローとトングの取り換えは多少容易にはなるものの、依然としてクローとトングを交換することは変わらず、やはりクロー、トングの取り付け、取り外しの作業自体は行う必要があり、さらなる改善が待たれていたところである。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、クローとトングとの交換作業を省いて、クローへのトングを取り付け、取り外しを行うための治具を新たに開発して、そのような問題の解決を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
クローでトングを吊り上げて、トングを操作しスラブを運搬することができれば、クローの取外し、取付けの作業を省略することができ、さらなる作業効率化が見込まれる。また、その際にクローとトング間が固定されていない場合、クレーンの発進または停止時にトングがずれたり、クローとトングの位置が毎回異なり操作性が悪化する可能性がある。そこで、クローとトングを治具で固定させることが望まれる。
【0012】
このような観点から、発明者はトングを取り付けるビームをクローに支持させるとともに、支持したビームがクローにおいて位置ずれしないような工夫を施すことにした。
【0013】
そこで前記目的を達成するための本発明は、スラブ吊上げ用のトングが取り付けられるビームを、クロークレーンのクローに支持するための治具であって、前記クローの受け面に沿って前記クローの両側に水平に配置される梁部材と、前記クローの先端部を覆うように配置される鈎状部材と、前記クローの受け面において前記クローの長手方向と直交する方向で前記ビームを支持する位置の前後、すなわち前記クローの長手方向で前記ビームを挟むような位置で、各々前記梁部材間に架け渡されて前記梁部材に固定される第1の固定部材、第2の固定部材と、前記クローの後端部の後側で、前記梁部材間に架け渡されて前記梁部材に固定される第3の固定部材と、を備えたことを特徴としている。
【0014】
本発明によれば、治具をクローの受け面にセットして固定し、その後スラブ吊上げ用のトングが取り付けられたビームをクローの受け面で支持することで、クローにトングを取り付けることが可能になる。したがってクローとトングとの交換作業は不要であり、クローをそのまま用いてトングを使用してスラブを把持してこれを搬送することができる。また本発明の治具は、クローの先端部を覆う鈎状部材と、ビームを支持する位置の前後で、各々梁部材間に架け渡されて当該梁部材に固定される第1の固定部材、第2の固定部材及び第3の固定部材を有しているから、ビームを支持する際や、トングを作動させる際にビームは位置ずれせず、安定してビームに取り付けられたトングの作業が行える。
なおここでクローの先端部を覆う鈎状部材は、クローの先端部全面を覆う必要はなく、その一部を覆う形状のものであれば、所期の目的を達成できる。
【0015】
前記鈎状部材と、前記第1の固定部材、第2の固定部材は、予め前記梁部材に固定して一体化しておけば、治具のクローへのセットが簡易、迅速に行える。
【0016】
このようなクロークレーンのトング吊下用治具を使用すれば、スラブ吊上げ用のトングが取り付けられたビームを前記クローに支持し、前記トングの掴み爪でスラブを把持して搬送することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クローとトングとの交換作業をすることなく、クロークレーンによってトングによるスラブの搬送作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態にかかるトング吊下用治具とクローの斜視図である。
図2】実施の形態にかかるトング吊下用治具をクローに取り付ける様子を示す斜視図である。
図3】実施の形態にかかるトング吊下用治具をクローに取り付けた様子を示す側面図である。
図4図3のA-A線断面図である。
図5】実施の形態にかかるトング吊下用治具をクローに取り付けてスラブを把持している様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0020】
図1は、クロー1に取り付ける前の実施の形態にかかるトング吊下用治具10の斜視図であり、このトング吊下用治具10は、クロー1の受け面2に沿ってクロー1の両側に水平に配置される梁部材11、12と、クロー1の先端部3を覆うように配置される鈎状部材13、14と、梁部材11、12に架け渡されて梁部材11、12に固定される第1の固定部材15、第2の固定部材16を有している。梁部材11、12の長さは、クロー1の先端部3から後端部4までの長さよりも、例えば約200mm長い。
【0021】
本実施の形態では、トング吊下用治具10は、クロー1の受け面2に取り付ける前に、予め梁部材11、12に対して、鈎状部材13、14と、第1の固定部材15、第2の固定部材16はボルト等によって固定されている。これによってクロー1へのセット、取り付けが容易になっている。
【0022】
すなわち、トング吊下用治具10を取り付ける場合には、図1に示したように、梁部材11、12に対して、鈎状部材13、14と、第1の固定部材15、第2の固定部材16をボルト等によって固定し、その状態で図1の矢印(X方向負方向)に示したように、クロー1の受け面2側に差し入れて、トング吊下用治具10をクロー1に装着する。トング吊下用治具10を取り付け作業自体は、例えばクロー1を地上に下した状態でこれを行う。
【0023】
次いで図2に示したように、第3の固定部材17をクロー1の後端部4の後側と当接する状態で梁部材11、12間に掛け渡すように、ボルト等で固定する。これによってトング吊下用治具10はクロー1の受け面2に取り付けられる。かかる場合、梁部材11、12は、クロー1の受け面2の両側に沿って配置される。これによってトング吊下用治具10は、クロー1の幅方向(Y方向)のズレが防止される。なお梁部材11、12の上面は、クロー1の受け面2と同一高さとなるように梁部材11、12は、クロー1の受け面2の両側に配置される。
【0024】
また鈎状部材13、14は、クロー1の先端側にクロー1の先端部3を覆うよう配置され、これによってトング吊下用治具10のクロー1の先端部3側へのズレが防止される。一方、クロー1の先端部3の下面に延出して配置される鈎状部材13、14の各下面部13a、14aによって、トング吊下用治具10の浮き上がりは防止される。
【0025】
そして図1に示した第1の固定部材15と第2の固定部材16は、梁部材11、12と直交する方向、すなわち図1中のY方向に配置される。この場合、第1の固定部材15と第2の固定部材16との間の距離Lは、支持するスラブ吊上げ用のトングが取り付けられるビーム20のクロー1の受け面2での支持位置によって設定される。
【0026】
すなわち、図3図4に示したように、クロー1の受け面2に設置した際の安定性を確保するためにビーム20の下面側には、安定板20aが設けられており、さらに安定板20aの取り付けを補強するために、たとえばビーム20の長手方向と直角方向に例えば三角形の補強リブ21、22、23、24が取り付けられる。これら補強リブ21、22、23、24の外側端部(X方向の端部)間の距離に応じた長さに前記した距離Lは設定される。これによって、クロー1の受け面2に支持したビーム20がX方向、すなわちクロー1の長手方向にずれることが防止される。またクロー1の後端部4の後側に配置される第3の固定部材17によって、トング吊下用治具10自体がクロー1の先端部3側(X方向正方向)へとずれることが防止される。
【0027】
ビーム20には、図5に示したように、トング30をビーム20から吊下させるための取付治具25が、図4に示した位置、すなわちクロー1の受け面2からY方向にずれた位置に固定されている。この取付治具25の下面側にトング30が吊下される。なおこの種のクロークレーンでは、クロー1は複数が並列に設けられており、したがってビーム20は、少なくとも2つのクロー1によって支持される。
【0028】
トング30は、図5に示したように、例えばリンク材31、32、33、34を有しており、電動ホイストなどの駆動装置35によってこれらリンク材31、32、33、34が回動伸縮することで、最下側のリンク材31、32の各内側に設けられた掴み爪31a、32aによって、スラブSの両側を強固に把持することが可能である。
【0029】
実施の形態にかかるトング吊下用治具10は以上の構成を有しており、図5に示したように、このトング吊下用治具10をクロー1に取り付けることで、トング30をクロー1によって支持、吊下することができ、スラブSの両側をトング30によって把持して、これを搬送することができる。したがって従来のようにクロー1自体をトング30と交換する必要がなく、またトング30のクロー1への取り付け、取り外しも容易である。
【0030】
しかもクロー1に装着されたトング吊下用治具10によってトング30を有するビーム20が、X方向にずれることはなく、またトング吊下用治具10自体も浮き上がったり、X方向にずれることはないので、トング30を常に一定の位置で安定して支持することができ、トング30によるスラブSの把持、並びにその搬送を安定して行うことが可能である。なおビーム20がY方向に多少ずれても作業性への影響は少ないが、ビーム20がX方向にずれるとバランスが崩れてクロー1が傾き、ビーム20がずれ落ちる恐れがある。したがってビーム20がX方向にずれることがないようにすることは極めて重要である。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、クロークレーンによってトングによるスラブの搬送作業を行う際に有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 クロー
2 受け面
3 先端部
4 後端部
10 トング吊下用治具
11、12 梁部材
13、14 鈎状部材
13a、14a 下面部
15 第1の固定部材
16 第2の固定部材
17 第3の固定部材
20 ビーム
20a 安定板
21、22、23、24 補強リブ
25 取付治具
30 トング
31、32、33、34 リンク材
31a、32a 掴み爪
35 駆動装置
S スラブ
図1
図2
図3
図4
図5