(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】診断システム、診断方法、診断プログラム、及び、空気調和機
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20230913BHJP
F24F 11/38 20180101ALI20230913BHJP
【FI】
F25B49/02 570D
F24F11/38
(21)【出願番号】P 2021146023
(22)【出願日】2021-09-08
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大浦 竜太
(72)【発明者】
【氏名】南 淳哉
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-223477(JP,A)
【文献】特開2012-137276(JP,A)
【文献】国際公開第2021/171448(WO,A1)
【文献】特開平01-137175(JP,A)
【文献】特開2001-227792(JP,A)
【文献】特開2020-133966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
F24F 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機(11)の停止中、前記空気調和機(11)に設けられたセンサ(51~59)の検出値を取得し、当該検出値又は当該検出値から求められる演算値に基づいて、前記センサ(51~59)の検出状態を診断する処理部(71)を備えている、診断システムであって、
前記センサの一部のセンサ(51,52)は、冷媒の圧力を検出する圧力センサであり、
前記処理部(71)は、前記一部のセンサ(51,52)の検出値から圧力相当飽和温度を前記演算値として求め、
前記処理部(71)は、前記演算値と所定の基準値との比較に基づいて前記検出状態を診断し、前記基準値は、前記空気調和機(11)に設けられた前記センサ(51~59)の他の一部のセンサである複数の温度センサ(53,55~58)の検出値からのみ求められ、前記検出値の中央値である、診断システム。
【請求項2】
空気調和機(11)の停止中、前記空気調和機(11)に設けられたセンサ(51~59)の検出値を取得し、当該検出値又は当該検出値から求められる演算値に基づいて、前記センサ(51~59)の検出状態を診断する処理部(71)を備えている、診断システムであって、
前記センサの一部のセンサ(51,52)は、冷媒の圧力を検出する圧力センサであり、
前記処理部(71)は、前記一部のセンサ(51,52)の検出値から圧力相当飽和温度を前記演算値として求め、
前記処理部(71)は、前記演算値と所定の基準値との比較に基づいて前記検出状態を診断し、前記基準値は、前記空気調和機(11)に設けられた前記センサ(51~59)の他の一部のセンサである複数の温度センサ(53,55~58)の検出値からのみ求められ、前記検出値の平均値である、診断システム。
【請求項3】
前記平均値は、前記他の一部のセンサである複数の温度センサ(53,55~58)の検出値のうちの最大値と最小値とを省いて求められる、請求項2に記載の診断システム。
【請求項4】
前記処理部(71)は
、前記演算値と前記基準値との差分が閾値を超えた場合に、その差分に応じた補正値を求め、前記空気調和機(11)に補正値を用いた運転制御を指示する、請求項1~3のいずれか1項に記載の診断システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の診断システムを備える、空気調和機。
【請求項6】
空気調和機(11)の停止中、前記空気調和機(11)に設けられたセンサ(51~59)の検出値を取得する工程と、
当該検出値又は当該検出値から求められる演算値に基づいて、前記センサ(51~59)の検出状態を診断する工程と、を含む、診断方法であって、
前記センサの一部のセンサ(51,52)は、冷媒の圧力を検出する圧力センサであり、
前記一部のセンサ(51,52)の検出値から圧力相当飽和温度を前記演算値として求め、
前記演算値と所定の基準値との比較に基づいて前記検出状態を診断し、前記基準値は、前記空気調和機(11)に設けられた前記センサ(51~59)の他の一部である複数の温度センサ(53,55~58)の検出値からのみ求められ、前記検出値の中央値である、診断方法。
【請求項7】
空気調和機(11)の停止中、前記空気調和機(11)に設けられたセンサ(51~59)の検出値を取得する工程と、
当該検出値又は当該検出値から求められる演算値に基づいて、前記センサ(51~59)の検出状態を診断する工程と、を含む、診断方法であって、
前記センサの一部のセンサ(51,52)は、冷媒の圧力を検出する圧力センサであり、
前記一部のセンサ(51,52)の検出値から圧力相当飽和温度を前記演算値として求め、
前記演算値と所定の基準値との比較に基づいて前記検出状態を診断し、前記基準値は、前記空気調和機(11)に設けられた前記センサ(51~59)の他の一部である複数の温度センサ(53,55~58)の検出値からのみ求められ、前記検出値の平均値である、診断方法。
【請求項8】
前記平均値は、前記他の一部のセンサである複数の温度センサ(53,55~58)の検出値のうちの最大値と最小値とを省いて求められる、請求項7に記載の診断方法。
【請求項9】
空気調和機(11)の停止中、前記空気調和機(11)に設けられたセンサ(51~59)の検出値を取得する手順と、
前記検出値又は当該検出値から求められる演算値に基づいて、前記センサ(51~59)の検出状態を診断する手順と、をコンピュータに実行させる、診断プログラムであって、
前記のセンサの一部のセンサ(51,52)は、冷媒の圧力を検出する圧力センサであり、
前記一部のセンサ(51,52)の検出値から圧力相当飽和温度を前記演算値として求め、
前記演算値と所定の基準値との比較に基づいて前記検出状態を診断し、前記基準値は、前記空気調和機(11)に設けられた前記センサ(51~59)の他の一部である複数の温度センサ(53,55~58)の検出値からのみ求められる、前記検出値の中央値である、診断プログラム。
【請求項10】
空気調和機(11)の停止中、前記空気調和機(11)に設けられたセンサ(51~59)の検出値を取得する手順と、
前記検出値又は当該検出値から求められる演算値に基づいて、前記センサ(51~59)の検出状態を診断する手順と、をコンピュータに実行させる、診断プログラムであって、
前記のセンサの一部のセンサ(51,52)は、冷媒の圧力を検出する圧力センサであり、
前記一部のセンサ(51,52)の検出値から圧力相当飽和温度を前記演算値として求め、
前記演算値と所定の基準値との比較に基づいて前記検出状態を診断し、前記基準値は、前記空気調和機(11)に設けられた前記センサ(51~59)の他の一部である複数の温度センサ(53,55~58)の検出値からのみ求められる、前記検出値の平均値である、診断プログラム。
【請求項11】
前記平均値は、前記他の一部のセンサである複数の温度センサ(53,55~58)の検出値のうちの最大値と最小値とを省いて求められる、請求項10に記載の診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、診断システム、診断方法、診断プログラム、及び、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機、熱交換器、四路切換弁、及び膨張弁等を有する冷媒回路を備え、冷房運転及び暖房運転を行う空気調和機が知られている(特許文献1参照)。この特許文献1記載の空気調和機には、冷媒の温度や空気の温度を検出する温度センサが設けられ、これら温度センサの検出値は空気調和機の運転制御のために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気調和機に設けられる温度センサ等の各種センサは、次第に正常な値からずれ(「検知ずれ」)が生じてくることがあり、このずれが大きくなり過ぎると、空気調和機が適切に制御されず運転に支障を来たすおそれがある。そのため、このようなセンサの検出状態を把握しておくことが望まれる。
【0005】
本開示は、センサの検出状態を診断することができる診断システム及び空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の診断システムは、空気調和機の停止中、前記空気調和機に設けられたセンサの検出値を取得し、当該検出値又は当該検出値から求められる演算値と所定の基準値との比較に基づいて、前記センサの検出状態を診断する処理部を備えている。
【0007】
空気調和機が停止している間、空気調和装置に設けられたセンサの検出値は、周囲の環境に応じてある値に収束していくと考えられる。本開示では、空気調和装置の停止中に診断対象となるセンサの検出値を取得し、その検出値又は当該検出値から求められる演算値と、収束していくと考えられる値(基準値)とを比較することによって、当該センサが正常な状態からどの程度のずれを持っているのかを把握することができ、そのずれの大きさからセンサの検出状態を診断することができる。
【0008】
(2)好ましくは、前記センサは、温度センサである。
空気調和機の停止中、空気調和装置に設けられた温度センサの検出値は、周囲の温度に収束していくので、温度センサの検出値を周囲の温度に対応する基準値と比較することによって、当該温度センサが正常な状態からどの程度のずれを持っているのかを把握することができる。
【0009】
(3)好ましくは、前記基準値は、前記空気調和機に設けられた複数の温度センサの検出値から求められる。
この構成によれば、空気調和機に設けられた温度センサの検出値から基準値を求めることによって、空気調和機の設置場所の周囲の環境に応じた適切な基準値を設定することができる。
【0010】
(4)好ましくは、前記基準値は、前記空気調和機に設けられた複数の温度センサの検出値の中央値である。
上記構成によれば、複数の温度センサの検出値の中央値を基準値とすることによって、検出値に異常な値が含まれていた場合に、その値が基準値に悪影響を与えるのを抑制することができる。
【0011】
(5)好ましくは、前記基準値は、前記空気調和機に設けられた複数の温度センサの検出値の平均値である。
【0012】
(6)好ましくは、前記平均値は、前記複数の温度センサの検出値のうちの最大値と最小値とを省いて求められる。
この構成によれば、複数の温度センサの検出値に異常に大きな値や小さな値が含まれていた場合に、その値が基準値に悪影響を与えるのを抑制することができる。
【0013】
(7)好ましくは、診断対象となる前記センサが、前記複数の温度センサのいずれかである。
この構成によれば、診断対象となるセンサ自身を、基準値を求めるための温度センサとして利用することができる。
【0014】
(8)好ましくは、前記基準値が、空気調和機の周囲の気温を検出する周囲温度センサの検出値であり、
診断対象となる前記センサが、前記周囲温度センサ以外の温度センサである。
【0015】
(9)好ましくは、前記センサは、冷媒の圧力を検出する圧力センサである。
空気調和機の停止中、空気調和装置に設けられた圧力センサの検出値は、周囲の環境に応じた値に収束していく。したがって、圧力センサの検出値又は検出値から求められる演算値を、周囲の環境に応じた基準値と比較することによって、当該圧力センサが正常な状態からどの程度のずれを持っているのかを把握することができる。
【0016】
(10)好ましくは、前記処理部は、前記センサの検出値から圧力相当飽和温度を前記演算値として求める。
【0017】
(11)好ましくは、前記基準値は、前記空気調和機に設けられた複数の温度センサの検出値から求められる。
【0018】
(12)好ましくは、前記処理部は、前記センサの検出値又は前記演算値と前記基準値との差分が閾値を超えた場合に、その差分に応じた補正値を求め、前記空気調和機に補正値を用いた運転制御を指示する。
この構成によれば、センサの検知値にずれがある場合でも、応急処置的に空気調和機の運転を継続することができる。
【0019】
(13)本開示の空気調和機は、上記(1)~(12)のいずれか1つに記載の診断システムを備える。
【0020】
(14)本開示の診断方法は、空気調和機の停止中、前記空気調和機に設けられたセンサの検出値を取得する工程と、当該検出値又は当該検出値から求められる演算値に基づいて、前記センサの検出状態を診断する工程と、を含む。
【0021】
(15)本開示の診断プログラムは、空気調和機の停止中、前記空気調和機に設けられたセンサの検出値を取得する手順と、
当該検出値又は当該検出値から求められる演算値に基づいて、前記センサの検出状態を診断する手順と、をコンピュータに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の一実施形態に係る空気調和システムの構成図である。
【
図4】記憶部に記憶される異常情報、リトライ情報、及び予兆情報の内容を例示する表である。
【
図6A】表示部に表示される異常情報の内容を例示する表である。
【
図6B】表示部に表示されるリトライ情報の内容を例示する表である。
【
図6C】表示部に表示される予兆情報の内容を例示する表である。
【
図7】温度センサの検知ずれを診断する手順を示すフローチャートである。
【
図8】圧力センサの検知ずれを診断する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しつつ、空気調和システムの実施形態を詳細に説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る空気調和システムの構成図である。
図1に示すように、空気調和システムは、空気調和機11と、集中管理装置50と、管理サーバー62とを有している。空気調和機11は、空調対象空間である室内の空気の温度を所定の目標温度に調整する。本実施形態の空気調和機11は、室内の冷房と暖房とを行う。
【0024】
空気調和機11は、室内機21と室外機22とを備えている。この空気調和機11は、例えば、室外機22に対して複数台の室内機21が並列に接続されるマルチタイプの空気調和機11である。ただし、空気調和機11は、室外機22及び室内機21を1台ずつ備えていてもよい。
【0025】
図2は、空気調和機の概略的な冷媒回路図である。
図2に示すように、空気調和機11は、冷媒回路23を有している。冷媒回路23は、室内機21と室外機22との間で冷媒を循環させる。冷媒回路23は、圧縮機30、油分離器31、四路切換弁32、室外熱交換器(熱源熱交換器)33、室外膨張弁34、過冷却器35、液閉鎖弁36、室内膨張弁24、室内熱交換器(利用熱交換器)25、ガス閉鎖弁37、アキュムレータ38、及びこれらを接続する冷媒配管40L、40G等を備える。
【0026】
室内機21は、冷媒回路23を構成する室内膨張弁24と室内熱交換器25とを備えている。室内膨張弁24は、冷媒流量の調節を行うことが可能な電動弁により構成されている。室内熱交換器25は、クロスフィンチューブ式又はマイクロチャネル式の熱交換器とされ、室内の空気と熱交換するために用いられる。
【0027】
室内機21は、さらに室内ファン26及び室内温度センサ27を備えている。室内ファン26は、室内の空気を室内機21の内部に取り込み、取り込んだ空気と室内熱交換器25との間で熱交換を行わせた後、当該空気を室内に吹き出すように構成されている。室内ファン26は、インバータ制御によって運転回転数を調整可能なモータを備えている。室内温度センサ27は、室内の温度を検出する。
【0028】
室外機22は、冷媒回路23を構成する圧縮機30、油分離器31、四路切換弁32、室外熱交換器33、室外膨張弁34、過冷却器35、液閉鎖弁36、ガス閉鎖弁37、及びアキュムレータ38を備えている。
【0029】
圧縮機30は、低圧のガス冷媒を吸引し高圧のガス冷媒を吐出する。圧縮機30は、インバータ制御によって運転回転数を調整可能なモータを備えている。圧縮機30は、モータがインバータ制御されることによって容量(能力)を変更可能な可変容量型(能力可変型)である。ただし、圧縮機30は一定容量型であってもよい。圧縮機30は複数台設けられていてもよい。この場合、容量可変型の圧縮機30と一定容量形の圧縮機30とが混在していてもよい。
【0030】
油分離器31は、圧縮機30から吐出された冷媒に含まれる冷凍機油を冷媒から分離する。油分離器31で分離された冷凍機油は、油戻し管41を介して圧縮機30に戻される。油戻し管41には開閉弁42が設けられている。開閉弁42は電磁弁からなる。開閉弁42を開くと、油分離器31内の冷凍機油が油戻し管41を通り、吸入配管44を流れる冷媒とともに圧縮機30へ吸入される。
【0031】
四路切換弁32は、冷媒配管における冷媒の流れを反転させ、圧縮機30から吐出される冷媒を室外熱交換器33と室内熱交換器25との一方に切り換えて供給する。これにより、空気調和機11は、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行うことができる。
【0032】
室外熱交換器33は、例えばクロスフィンチューブ式又はマイクロチャネル式の熱交換器であり、空気を熱源として冷媒と熱交換し、冷媒を凝縮又は蒸発させる。
室外膨張弁34は、冷媒流量の調節等を行うことが可能な電動弁により構成されている。
【0033】
過冷却器35は、室外熱交換器33において凝縮された冷媒を過冷却する。過冷却器35は、第1伝熱管35aと第2伝熱管35bとを有する。第1伝熱管35aの一端は、室外膨張弁34まで延びる冷媒配管に接続されている。第1伝熱管35aの他端は、液閉鎖弁36まで延びる冷媒配管に接続されている。第2伝熱管35bの一端は、第1伝熱管35aと室外膨張弁34との間の冷媒配管から分岐する分岐管35cに接続されている。分岐管35cには、膨張弁43が設けられている。第2伝熱管35bの他端は、圧縮機30へ冷媒を戻すための吸入配管44に接続されている。
【0034】
過冷却器35は、圧縮機30から室外熱交換器33及び膨張弁34を通過して第1伝熱管35aを流れる冷媒と、膨張弁43により減圧されて第2伝熱管35bを流れる冷媒との間で熱交換を行い、第1伝熱管35aを流れる冷媒を過冷却する。第2伝熱管35bを流れる冷媒は、吸入配管44を通り、アキュムレータ38を経て圧縮機30に吸入される。
【0035】
アキュムレータ38は、圧縮機30に吸入される低圧冷媒を一時的に貯留し、ガス冷媒と液冷媒とを分離する。アキュムレータ38は、吸入配管44に設けられている。アキュムレータ38には、油戻し管45の一端が接続されている。油戻し管45の他端は、吸入配管44に接続されている。油戻し管45は、アキュムレータ38から圧縮機30への冷凍機油を戻すための管である。油戻し管45には開閉弁46が設けられている。開閉弁46は電磁弁からなる。開閉弁46を開くと、アキュムレータ38内の冷凍機油が油戻し管45を通り、吸入配管44を流れる冷媒とともに圧縮機30へ吸入される。
【0036】
液閉鎖弁36は、手動の開閉弁である。ガス閉鎖弁37も手動の開閉弁である。液閉鎖弁36及びガス閉鎖弁37は、閉じることによって冷媒配管40L,40Gにおける冷媒の流れを遮蔽し、開くことによって、冷媒配管40L,40Gにおける冷媒の流れを許容する。
【0037】
室外機22は、さらに室外ファン39、圧力センサ51,52、温度センサ53~59、電流センサ60等を備えている。室外ファン39は、インバータ制御によって運転回転数を調整可能なモータを備えている。室外ファン39は、屋外の空気を室外機22の内部に取り込み、取り込んだ空気と室外熱交換器33との間で熱交換を行わせた後、当該空気を室外機22の外部に吹き出すように構成されている。
【0038】
圧力センサ51,52は、吸入圧力センサ51と、吐出圧力センサ52とを含む。吸入圧力センサ51は、圧縮機30に吸入される冷媒の圧力を検出する。吐出圧力センサ52は、圧縮機30から吐出される冷媒の圧力を検出する。
【0039】
温度センサ53~59は、冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ53~57と、外気の温度を検出する外気温度センサ58と、圧縮機30の表面温度を検出する温度センサ59とを含む。冷媒温度センサ53は、圧縮機30に吸入される冷媒の温度を検出する。冷媒温度センサ54は、圧縮機30から吐出される冷媒の温度を検出する。冷媒温度センサ55は、室外熱交換器33の液側の冷媒の温度を検出する。冷媒温度センサ56は、過冷却器35と液閉鎖弁36との間の冷媒の温度を検出する。冷媒温度センサ57は、過冷却器35の第2伝熱管35bから流出した冷媒の温度を検出する。
【0040】
吸入圧力センサ51、吐出圧力センサ52、冷媒温度センサ53,54の検出値を用いて、室外熱交換器33及び室内熱交換器25における冷媒の蒸発温度及び凝縮温度、冷媒の過熱度等が求められ、これらの値を調整するように圧縮機30の回転数や室外膨張弁34、室内膨張弁24の開度等が制御される。
【0041】
上記構成の空気調和機11が冷房運転を行う場合、四路切換弁32が
図1において実線で示す状態に保持される。圧縮機30から吐出された高温高圧のガス状冷媒は、四路切換弁32を経て室外熱交換器33に流入し、室外ファン39の作動により室外空気と熱交換して凝縮・液化する。液化した冷媒は、全開状態の室外膨張弁34及び過冷却器35を通過して室内機21に流入する。室内機21において、冷媒は、室内膨張弁24で所定の低圧に減圧され、さらに室内熱交換器25で室内空気と熱交換して蒸発する。冷媒の蒸発によって冷却された室内空気は、室内ファン26によって室内に吹き出され、当該室内を冷房する。室内熱交換器25で蒸発した冷媒は、ガス冷媒配管40Gを通って室外機22に戻り、四路切換弁32を経て圧縮機30に吸い込まれる。空気調和機11は、室外熱交換器33に付着した霜を取り除くデフロスト運転を行う場合にも、冷房運転と同様に動作する。
【0042】
空気調和機11が暖房運転を行う場合、四路切換弁32が
図1において破線で示す状態に保持される。圧縮機30から吐出された高温高圧のガス状冷媒は、四路切換弁32を通過して室内機21の室内熱交換器25に流入する。室内熱交換器25において、冷媒は室内空気と熱交換して凝縮・液化する。冷媒の凝縮によって加熱された室内空気は、室内ファン26によって室内に吹き出され、当該室内を暖房する。室内熱交換器25において液化した冷媒は、液冷媒配管40Lを通って室外機22に戻り、室外膨張弁34で所定の低圧に減圧され、さらに室外熱交換器33で室外空気と熱交換して蒸発する。室外熱交換器33で蒸発して気化した冷媒は、四路切換弁32を経て圧縮機30に吸い込まれる。
【0043】
室内機21は、室内制御部29と、リモートコントローラ(リモコン)29Aとをさらに有している。室内制御部29は、CPU等の演算部及びRAM,ROM等の記憶部を有するマイクロコンピュータ等により構成されている。室内制御部29は、FPGAやASIC等の集積回路を備えたものであってもよい。室内機21に設けられた各センサの検出値は、室内制御部29に入力される。室内制御部29は、室内温度センサ27等の検出値に基づいて室内膨張弁24や室内ファン26の動作を制御する。
【0044】
リモコン29Aは、空気調和機11に対する運転の開始及び停止の指示の入力、冷房及び暖房等の運転モードの入力、室内の設定温度の入力等のために用いられる。リモコン29Aは、設定内容等を表示する表示部29A1(
図3参照)を有している。この表示部29A1は、後述するようにユーザに異常の発生を知らせるための報知部としても機能する。
【0045】
室外機22は、室外制御部70をさらに有している。室外制御部70は、CPU等の演算部及びRAM,ROM等の記憶部を有するマイクロコンピュータ等により構成されている。室外制御部70は、記憶部に記憶されたプログラムを演算部が実行することによって所定の機能を発揮する。室外制御部70は、FPGAやASIC等の集積回路を備えたものであってもよい。室外機22に設けられた各種センサ51~60の検出値は、室外制御部70に入力される。室外制御部70は、各種センサ51~60の検出値等に基づいて、圧縮機30、室外ファン39、膨張弁34,43等の動作を制御する。室外制御部70は、後述するように、空気調和機11の異常の有無を診断する異常診断システムとしても機能する。
【0046】
室内制御部29と室外制御部70と集中管理装置50とは、LAN(ローカルエリアネットワーク)等のローカルな通信ネットワークを介して接続されている。具体的に、室内制御部29と室外制御部70とは、伝送線を介して相互に通信可能に接続されている。室内制御部29と室外制御部70とは、伝送線を介して相互に通信可能に集中管理装置50に接続されている。
【0047】
集中管理装置50は、CPU等の演算部及びROM,RAM等の記憶部を有するマイクロコンピュータ等の制御部50aを備える。制御部50aは、記憶部に記憶されたプログラムを演算部が実行することによって所定の機能を発揮する。制御部50aは、FPGAやASIC等の集積回路を備えたものであってもよい。集中管理装置50は、例えばビルの中央管理室に設置される。集中管理装置50は、室外機22及び室内機21を管理する。具体的に、集中管理装置50は、制御部50aによって室外機22及び室内機21の稼働状況の監視、空調温度の設定、運転・停止の制御等を行う。
【0048】
管理サーバー62は、空気調和機11が設置される建物とは離れた遠隔地に設けられている。管理サーバー62は、例えば、CPU等の演算部及びROM,RAM等の記憶部を有する制御部62aを含むパーソナルコンピュータにより構成されている。制御部62aは、記憶部に記憶されたプログラムを演算部が実行することによって所定の機能を発揮する。制御部62aは、FPGAやASIC等の集積回路を備えたものであってもよい。集中管理装置50と管理サーバー62とは、インターネット等の広域通信ネットワーク63を介して通信可能に接続されている。
【0049】
本実施形態の空気調和システムにおいて、集中管理装置50及び管理サーバー62は省略されていてもよい。
【0050】
[異常診断システム]
室外制御部70は、空気調和機11に発生した「異常」の発生の検知、及び、「異常の予兆」(以下、単に「予兆」ともいう)の発生の検知を行う異常診断システムを構成している。室外制御部70は、各種センサ51~60の検出値や圧縮機30、室外ファン39、膨張弁34,43等の制御データを運転データとして取得する。室外制御部70は、取得した運転データを用いて、圧縮機30等の各種機器の動作を制御するとともに、空気調和機11の異常及び予兆の検知を行う。
【0051】
異常及び予兆の発生の検知対象となる機器は、例えば、圧縮機30、室外ファン39、膨張弁34,43、温度センサ53~59、圧力センサ51,52等である。室外制御部70は、空気調和機11の「異常」の発生を検知したとき、空気調和機11を停止させる。室外制御部70は、空気調和機11の「異常の予兆」の発生を検知したとき、空気調和機11の運転を継続して行う。
【0052】
室外制御部70は、所定の異常が発生した場合に空気調和機11を一旦停止し、所定時間経過後に再度運転させるリトライ運転を実行する。室外制御部70は、所定回数のリトライ運転を実行しても異常が発生する場合には、その異常を正式な「異常」として確定する。
【0053】
異常の検知には、従来公知の方法を適用することができる。例えば、圧縮機30に関しては、モータを流れる電流値が所定の閾値よりも高い場合、吸入圧力センサ51及び吐出圧力センサ52の検出値が所定の閾値よりも高い又は低い場合、両圧力センサ51,52の検出値の差が所定の閾値よりも小さい場合等に異常と判断することができる。
【0054】
異常の予兆の検知には、例えば、
図5に示される方法を適用することができる。
図5の詳細については、後述する。
【0055】
図3は、室外制御部の構成図である。
室外制御部70は、処理部71と、記憶部72と、表示部73と、出力部74とを有する。処理部71は、CPU等の演算装置により構成され、前述したような圧縮機30の動作制御の処理を行うとともに異常診断の処理を行う。
【0056】
処理部71は、「異常」、「リトライ運転」、及び「異常の予兆」が発生したことを検知すると、それらの情報である「異常情報」、「リトライ情報」、「予兆情報」を記憶部72に記憶させる処理を実行する。処理部71は、記憶部72に記憶された「異常情報」、「リトライ情報」、「予兆情報」を表示部73に表示させる処理を実行する。さらに、処理部71は、記憶部72に記憶された各情報のうち、「異常情報」をリモコン29Aの表示部29A1に表示させる処理を実行する。処理部71は、「予兆情報」及び「リトライ情報」を表示部29A1には表示させず、「異常情報」のみを表示させる。
【0057】
記憶部72は、空気調和機11の各種センサの検出データや圧縮機30等の制御データを記憶する。また、記憶部72は、処理部71によって「異常」、「リトライ運転」、及び「予兆」の発生が検知された場合、それらの「異常情報」、「リトライ情報」、及び「予兆情報」を記憶する。
【0058】
「異常情報」は、異常の内容と、その発生時間に関する情報とを含む。「予兆情報」は、予兆の内容と、その発生時間に関する情報とを含む。「リトライ情報」は、リトライ運転の原因となった異常の内容と、その発生時間に関する情報とを含む。
【0059】
図4は、記憶部に記憶される異常情報、リトライ情報、及び予兆情報の内容を例示する表である。
記憶部72には、
図4に示されるように、異常の形態(異常、リトライ運転、予兆)と、異常の内容と、異常が発生したときの積算通電時間(単に、「通電時間」ともいう)と、異常が発生したときの積算圧縮機運転時間とが対応付けられた状態で記憶される。積算圧縮機運転時間は、実質的に空気調和機11が空調を行っている運転時間である。
図4には、「異常」、「予兆」、及び「リトライ運転」が、発生順に下から並べて記載されている。記憶部72には、最新の情報と、過去n件の情報とを記憶することができる。nは、例えば83件とすることができ、合計で84件の情報を記憶部72に記憶することができる。
【0060】
図6A~
図6Cは、室外制御部の表示部に表示される異常情報、リトライ情報、及び予兆情報の内容を例示する表である。
表示部73は、記憶部72に記憶されている「異常情報」、「リトライ情報」、及び「予兆情報」を表示する。表示部73は、例えば7セグメントによるデジタル表示であり、異常情報、リトライ情報、及び予兆情報が、数字やアルファベット等によりコード化された状態で表示部73に表示される。本実施形態では、異常情報、リトライ情報、及び予兆情報として、それぞれ異常の内容、リトライ運転の内容、及び予兆の内容がそれぞれコード化され、表示部73に表示される。
【0061】
表示部73には、異常情報、リトライ情報、及び予兆情報のそれぞれについて、「最新」、「過去1」、「過去2」で示す3件分が表示される。そのため、空気調和機11が異常により停止したとき、その復旧にあたるサービスマン等は表示部73を見ることによって、実際に発生した異常の内容だけでなく、最近発生したリトライ運転及び予兆の情報をも知ることができ、異常の発生原因の究明のためにリトライ情報及び予兆情報を活用することができる。ただし、表示部73には、異常情報、リトライ情報、及び予兆情報がそれぞれ個別に3件ずつ表示されるだけで、相互の関係性を把握することは困難である。そのため、本実施形態の室外制御部70は、これらの情報の相互の関係を把握することができる形態で出力するように構成されている。
【0062】
室外制御部70の出力部74は、
図3に示すように、記憶部72に記憶された異常情報、リトライ情報、及び予兆情報を、外部の機器、例えばサービスマンが所持するPCやスマートフォン等の端末100(以下、「サービス端末」ともいう)に出力する。出力部74は、例えば室外制御部70を構成する制御基板等に設けられ、サービス端末100が有線接続される出力インタフェース等により構成される。出力部74は、異常情報等を無線で出力する通信装置であってもよい。
【0063】
前述したように、記憶部72に記憶される異常情報、リトライ情報、及び予兆情報には、それぞれが発生した時点における空気調和機11の通電時間と運転時間とが含まれており、出力部74は、これらの発生時間の情報を含めた状態で異常情報、リトライ情報、及び予兆情報を外部に出力する。そのため、例えば
図4に示すように、異常情報、リトライ情報、及び予兆情報を時系列に確認することが可能となっている。したがって、サービスマンは、出力された情報をもとに、異常が発生する前にどのようなリトライ運転が行われていたのか、或いはどのような予兆があったのかを確認することができる。したがって、サービスマンは、リトライ情報や予兆情報から異常の発生原因を容易に推定することができ、異常からの復旧(部品の修理や交換)を適切かつ迅速に行うことが可能となる。
【0064】
異常情報、リトライ情報、及び予兆情報には、発生時間に関する情報として、空気調和機11の通電時間と運転時間とが含まれている。この通電時間から、異常、リトライ運転、及び予兆の発生原因が空気調和機11の運転による消耗や劣化によるものか否かを判断することができる。同様に、通電時間から、異常、リトライ運転、及び予兆の発生原因が寿命によるものか否かを判断することができる。なお、出力部74は、室外制御部70の表示部73に異常情報、リトライ情報、及び予兆情報を時系列に確認可能な状態で出力するものであってもよい。
【0065】
[異常の予兆の例示]
図5は、記憶部に記憶される異常情報、リトライ情報、及び予兆情報の内容を例示する表である。
図5には、空気調和機11を構成する部品と、その部品に生じ得る異常の予兆の内容と、その内容を検知するための方法とが対応付けられた状態で例示されている。例えば、圧縮機30で発生し得る異常の予兆の内容として、「電流値」、「湿り」、「過熱」が例示されている。
【0066】
「電流値」は、圧縮機30のモータを流れる電流値が所定値よりも高い状態が検知されることを意味している。この場合の電流値は、現在から所定期間前までの移動平均値が採用され、長期的にみた場合の電流値の異常が検知される。「湿り」は、圧縮機30が吐出する冷媒の湿り状態(過熱度が所定値未満)が検知されることを意味している。「過熱」は、圧縮機30が吐出する冷媒の過熱状態(過熱度が所定値以上)が検知されることを意味している。これらの状態が検知された場合、室外制御部70は、圧縮機30に「異常の予兆」がある、と診断する。しかしながら、これらの状態が検知されたとしても、直ちに空気調和機11の運転に支障が生じる訳ではないので、空気調和機11の運転は継続される。
【0067】
図5には、膨張弁34で発生し得る異常の予兆の内容として、「漏れ」が例示されている。これは、膨張弁34の下流側に配置された冷媒温度センサによって冷媒の湿り状態が検知されることを意味する。この状態が検知された場合、室外制御部70は、膨張弁34に「異常の予兆」がある、と診断する。
【0068】
図5には、室外熱交換器33で発生し得る異常の予兆の内容として、「霜の溶け残り」が例示されている。これは、空気調和機11がデフロスト運転を行っているときに、所定の完了条件を満たさない回数が所定数を超えることを意味している。この状態が検知された場合、室外制御部70は、室外熱交換器33に「異常の予兆」がある、と診断する。しかしながら、これらの状態が検知されたとしても、直ちに空気調和機11の運転に支障が生じる訳ではないので、空気調和機11の運転は継続される。
【0069】
図5には、温度センサ53~59の異常の予兆として、「検知ずれ」が例示されている。これは、診断対象となる温度センサと他の温度センサとの間に検出値の乖離が検知されることを意味する。この状態が検出された場合、室外制御部70は、その温度センサに「異常の予兆」がある、と診断する。
【0070】
図5には、圧力センサ51,52の異常の予兆として、「検知ずれ」が例示されている。これは、診断対象となる圧力センサ51,52の検出値から求められる圧力相当飽和温度(演算値)と、その他の温度センサの検出値との間に乖離が検知されることを意味する。この状態が検知された場合、室外制御部70は、その圧力センサ51,52に「異常の予兆」がある、と診断する。
【0071】
室外制御部70は、以上のような予兆の発生を検知したとしても、直ちに空気調和機11の運転に支障が生じる訳ではないので、空気調和機11を停止せずに運転を継続して実行する。
図5に示す異常の予兆のうち、圧縮機30の「電流値」、膨張弁の「漏れ」、熱交換器33の「霜溶け残り」、温度センサ53~59の「検知ずれ」、圧力センサ51,52の「検知ずれ」は、空気調和機11を停止するまでもない軽微な異常を検出することができるように、異常の発生を検知する方法とは異なる方法が採用されている。
【0072】
(予兆の検知の具体的処理)
上記の「異常の予兆」のうち、温度センサ53~59と圧力センサ51,52の「検知ずれ」について詳細に説明する。
空気調和機11に設けられる各種センサは、次第に検出値が正常な値からずれる「検知ずれ」を生じることがあり、この「検知ずれ」が大きくなると空気調和機11が適切に制御されず運転に支障を来たすおそれがある。そのため、本実施形態の空気調和機11では、温度センサ53~59及び圧力センサ51,52について、「検知ずれ」がある場合には、異常の予兆があるものと診断する。
【0073】
温度センサ53~59及び圧力センサ51,52の「検知ずれ」の診断は、空気調和機11の運転を停止しているときに行われる。室外制御部70は、各温度センサ53~59の検出値、及び、各圧力センサ51,52から求められる演算値と、所定の基準値とを比較し、この基準値との乖離が大きい状態が所定時間以上継続したときに、そのセンサに「検知ずれ」があると診断する。
【0074】
空気調和機11が停止しているときは、空気調和機11に設けられた温度センサ53~59の検出値は、次第に外気温度に収束していくことになる。また、空気調和機11に設けられた圧力センサ51,52の検出値から求められる圧力相当飽和温度は、次第に外気温度に収束していくことになる。本実施形態では、室外制御部70が、外気温度に相当する値を「基準値」として設定し、この基準値と、温度センサ53~59の検出値、及び、圧力センサ51,52の検出値から求められる圧力相当飽和温度(演算値)とを比較することによって、「検知ずれ」の診断を行う。
【0075】
図7は、温度センサの検知ずれを診断する手順を示すフローチャートである。
以下、温度センサ53~59の「検知ずれ」の診断手順をフローチャートを参照して説明する。
室外制御部70は、ステップS1において、空気調和機11が停止中であるか否かを判断する。室外制御部70は、ステップS1における判断が肯定的(Yes)である場合、ステップS2に処理を進める。
【0076】
室外制御部70は、ステップS2において、温度センサ53~59の検出値を取得する。次いで、室外制御部70は、ステップS3において、複数の温度センサ53~59の検出値を用いて基準値を算出する。本実施形態では、複数の温度センサ53~59の検出値うち、いずれか複数の検出値の中央値を基準値とする。中央値を基準値とするのは、複数の温度センサの検出値に異常に高い値や低い値が含まれていたとしても、その影響を受ける可能性を低くし、外気温度の再現性を高めることができるからである。
【0077】
基準値を求めるために使用する温度センサは、3個以上であることが好ましい。基準値を求めるために使用する温度センサが偶数個ある場合は、中央値に近い2つの値の平均値を基準値に採用することができる。本実施形態では、圧縮機30の周囲に配置された温度センサ54,59は、圧縮機30の熱影響を受けやすいので、基準値の算出に用いない。
【0078】
室外制御部70は、ステップS4において、各温度センサ53~58の検出値と基準値との差分が、所定の閾値を超えているか否かを判断する。ステップS4の判断が肯定的(Yes)である場合、室外制御部70は、ステップS5において、空気調和機11の停止後、所定時間が経過したか否かを判断する。この所定時間は、例えば8時間とすることができる。ステップS5における判断が肯定的(Yes)である場合、室外制御部70は、その温度センサ53~59に「検知ずれ」が発生していると診断し、異常の予兆情報として記憶部72に記憶し、処理を終了する。
【0079】
ステップS4における判断が否定的(No)である場合、室外制御部70は、ステップS8に処理を進め、温度センサ53~59には「検知ずれ」が生じていないと診断し、処理を終了する。
【0080】
ステップS4で用いる所定の閾値は、診断対象となる温度センサの種類に応じて設定することができる。例えば、圧縮機30は空気調和機11の停止中にクランクケースヒータによって温められるため、圧縮機30の周りに配置される温度センサ54,59は他の温度センサ53,55~58に比べて検出値が高くなる。そのため、これらの温度センサ54,59については所定の閾値が高めに設定される。
【0081】
なお、「検知ずれ」を診断する時間を8時間という長い時間に設定したのは、温度センサの検出値が周囲の温度(外気温度)にまで収束するまでにある程度の時間が必要だからである。ただし、この時間は特に限定されるものではない。
【0082】
図8は、圧力センサの検知ずれを診断する手順を示すフローチャートである。
以下、圧力センサ51,52の「検知ずれ」の診断手順をフローチャートを参照して説明する。
室外制御部70は、ステップS11において、空気調和機11が停止中であるか否かを判断する。室外制御部70は、ステップS1における判断が肯定的(Yes)である場合、ステップS12に処理を進める。
【0083】
室外制御部70は、ステップS12において、圧力センサ51,52及び温度センサ53~59の検出値を取得する。次いで、室外制御部70は、ステップS13において、複数の温度センサ53~59の検出値のうちいずれか複数の検出値を用いて基準値を算出する。本実施形態では、複数の検出値の中央値を基準値とする。中央値を基準値とするのは、複数の温度センサの検出値に異常に高い値や異常に低い値が含まれていたとしても、その影響を受けることが少なくなり、外気温度の再現性を高めることができるからである。
【0084】
基準値を求めるために使用する温度センサは、3個以上であることが好ましい。基準値を求めるために使用する温度センサが偶数個ある場合は、中央に近い2つの値の平均値を基準値に採用することができる。圧縮機30の周囲に配置された温度センサ54,59は、圧縮機30の熱影響を受けやすいので、基準値の算出に用いないことが好ましい。
【0085】
室外制御部70は、ステップS14において、圧力センサ51,52の検出値を用いて、冷媒の圧力相当飽和温度を算出する。そして、室外制御部70は、ステップS15において、各圧力センサ51,52の検出値から求められた圧力相当飽和温度と基準値との差分が、所定の閾値を超えているか否かを判断する。ステップS15の判断が肯定的である場合、室外制御部70は、ステップS16において、空気調和機11が停止してから所定時間が経過したか否かを判断する。この所定時間は、例えば8時間とすることができる。ステップS16における判断が肯定的(Yes)である場合、室外制御部70は、その圧力センサ51,52には「検知ずれ」が発生している診断し(ステップS17)、異常の予兆情報として記憶部72に記憶して(ステップS18)処理を終了する。
【0086】
ステップS15における判断が否定的(No)である場合、室外制御部70は、ステップS19に処理を進め、圧力センサ51,52には「検知ずれ」が生じていないと診断し、処理を終了する。
【0087】
[他の実施形態]
上記実施形態において、
図7のステップS3、
図8のステップS13で算出される基準値は、複数の温度センサの検出値の中央値に限らず、平均値を採用してもよい。この場合、複数の検出値のうち、最大値と最小値とを除いた他の検出値を用いて平均値を算出することがより好ましい。
【0088】
図7及び
図8に示すフローチャートにおいて、基準値を算出するための温度センサは、診断対象にはならない温度センサの検出値を用いてもよい。空気調和機11には、外気の温度を検出する温度センサ58が設けられているので、この温度センサ58の検出値を基準値として用いることもできる。ただし、この場合、温度センサ58自体に「検知ずれ」が生じていると、他の温度センサ51~57,59の検知ずれを検出することができなくため、複数の温度センサの検出値の中央値又は平均値を用いて基準値を設定することがより好ましい。
【0089】
室外制御部70における処理部71は、温度センサ53~59及び圧力センサ51,52に「検知ずれ」があるとの診断を行った場合、その温度センサの検出値又は圧力センサの検出値から求められる演算値(圧力相当飽和温度)と、基準値との差分に応じた補正値を求め、この補正値を用いて空気調和機11の運転を制御してもよい。
【0090】
室外制御部70における処理部71は、異常診断の結果を集中管理装置50に送信し、この集中管理装置50が、異常情報、リトライ情報、及び予兆情報を管理してもよい。また、室外制御部70における処理部71は、異常診断の結果を管理サーバー62に送信し、管理サーバー62において異常診断の結果を管理してもよい。空気調和機11の運転データではなく異常診断の結果のみを送信することで、通信量の増大を抑制することができる。管理サーバー62において異常診断の結果を管理する場合、室外制御部70で異常情報、リトライ情報、及び予兆情報を参照できなくなる不都合を解消するため、管理サーバー62は、異常情報、リトライ情報、及び予兆情報を広域通信ネットワーク63を介してサービス端末100や集中管理装置50等に送信する送信部を備えることがより好ましい。
【0091】
上記実施形態では、空気調和機11に異常診断システム(室外制御部70)が設けられていたが、集中管理装置50に異常診断システムが設けられていてもよい。この場合、空気調和機11の運転データは、空気調和機11から集中管理装置50に送信され、集中管理装置50の制御部50aにおいて異常の診断が行われる。ただし、空気調和機11から集中管理装置50へは、所定時間毎にしか運転データが送信されず、異常の診断に用いることができる運転データの量に制限が生じるため、より正確な異常診断を行ううえでは、空気調和機11に異常診断システムが設けられることがより好ましい。
【0092】
同様に、管理サーバー62に異常診断システムが設けられていてもよい。この場合、空気調和機11の運転データは、集中管理装置50又は空気調和機11から管理サーバー62に送信され、この管理サーバー62の制御部62aにおいて異常の診断が行われる。この場合、大量の空気調和機11の運転データを広域通信ネットワーク63を介して管理サーバー62に送信する必要があるため、通信コストが多大となる。したがって、空気調和機11又は集中管理装置50に異常診断システムが設けられることがより好ましい。
【0093】
なお、管理サーバー62において異常診断の結果を管理する場合、室外制御部70や集中管理装置50で異常情報、リトライ情報、及び予兆情報を参照できなくなる不都合を解消するため、管理サーバー62は、異常情報、リトライ情報、及び予兆情報を広域通信ネットワーク63を介してサービス端末100や集中管理装置50等に送信する送信部を備えることがより好ましい。
【0094】
上記実施形態では、異常診断システムを構成する処理部71、記憶部72、及び出力部74が、いずれも1つの装置(空気調和機11の室外制御部70、集中管理装置50の制御部50a、又は管理サーバー62の制御部62a)に備わっていたが、これらは別々の装置、例えば、互いに異なる制御部(コンピュータ)に備わっていてもよく、これらの異なる制御部が、互いに連携することによって異常診断システムが構成されていてもよい。
【0095】
上記実施形態においては、複数の温度センサ53~59、及び、複数の圧力センサ51,52が「検知ずれ」の診断対象となっていたが、このうち少なくとも1つのセンサが検知ずれの診断対象となっていればよい。
【0096】
[実施形態の作用効果]
(1)上記実施形態では、室外制御部(診断システム)70が、空気調和機11の停止中、空気調和機11に設けられたセンサ51~59の検出値を取得し、当該検出値又は当該検出値から求められる演算値(例えば、圧力相当飽和温度)に基づいて、センサ51~59の検出状態を診断する処理部71を備えている。空気調和機11が停止している間、空気調和機11に設けられたセンサ51~59の検出値は、周囲の環境に応じてある値、例えば、外気温度や外気温度に対応する値に収束していくと考えられる。本開示では、空気調和機11の停止中に診断対象となるセンサ51~59の検出値を取得し、その検出値又は当該検出値から求められる演算値と、収束していくと考えられる値(基準値)とを比較することによって、当該センサ51~59が正常な状態からどの程度のずれを持っているのかを把握することができ、そのずれの大きさからセンサ51~59の検出状態を診断することができる。
【0097】
(2)上記実施形態では、センサ51~59が温度センサ53~59である。処理部71は、検出値と所定の基準値との比較に基づいて検出状態を診断する。基準値は、空気調和機11に設けられた複数の温度センサ53、55~58の検出値から求められる。このように、空気調和機11に設けられた温度センサ53、55~58の検出値から基準値を求めることによって、空気調和機11の設置場所の周囲の環境に応じた適切な基準値を設定することができる。
【0098】
(3)上記実施形態では、基準値が、空気調和機11に設けられた複数の温度センサ53、55~58の検出値の中央値である。このように、複数の温度センサ53、55~58の検出値の中央値を基準値とすることによって、検出値に異常な値が含まれていた場合に、その値が基準値に悪影響を与えるのを抑制することができる。
【0099】
(4)上記他の実施形態では、基準値は、空気調和機11に設けられた複数の温度センサ53、55~58の検出値の平均値である。この場合、平均値は、複数の温度センサ53、55~58の検出値のうちの最大値と最小値とを省いて求められる。これによって、複数の温度センサ53、55~58の検出値に異常に大きな値や小さな値が含まれていた場合に、その値が基準値に悪影響を与えるのを抑制することができる。
【0100】
(5)上記実施形態では、診断対象となるセンサ53~58の検出値を用いて基準値が求められる。また、上記の他の実施形態では、基準値が、空気調和機11の周囲の気温を検出する外気温度センサ(周囲温度センサ)58の検出値であり、診断対象となるセンサが、周囲温度センサ58以外の温度センサ53~57,59である。周囲温度センサ58の検出値を基準値として用いることで、中央値や平均値等の演算が不要となり、処理部71の処理を軽減することができる。
【0101】
(6)上記実施形態では、診断対象となるセンサは、冷媒の圧力を検出する圧力センサ51,52である。空気調和機11の停止中、空気調和機11に設けられた圧力センサ51,52の検出値は、周囲の環境に応じた値に収束していく。したがって、圧力センサ51,52の検出値又は検出定値から求められる演算値を、周囲の環境に応じた基準値と比較することによって、当該圧力センサ51,52が正常な状態からどの程度の検知ずれを持っているのかを把握することができる。
【0102】
(7)上記実施形態では、室外制御部(診断システム)70の処理部71が、基準値と比較する演算値として、圧力センサ51,52の検出値から圧力相当飽和温度を求める。そのため、温度である基準値との比較で、圧力センサ51,52の検知ずれを診断することができる。
【0103】
(8)上記他の実施形態では、処理部71が、センサ51~59の検出値又は検出値から求められる演算値と、基準値との差分が所定の閾値を超えた場合に、その差分に応じた補正値を求め、その補正値によって空気調和機11の運転制御を行う。これにより、センサの検知ずれがある場合でも、応急処置的に空気調和機11の運転を継続することができる。
【0104】
なお、本開示は、以上の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
11 :空気調和機
50 :集中管理装置(第1管理装置)
50a :制御部(診断システム)
51 :圧力センサ
52 :圧力センサ
53 :温度センサ
54 :温度センサ
55 :温度センサ
56 :温度センサ
57 :温度センサ
58 :温度センサ(周囲温度センサ)
59 :温度センサ
62 :管理サーバー
62a :制御部(診断システム)
70 :室外制御部(診断システム)
71 :処理部
72 :記憶部
73 :表示部
74 :出力部