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7348541膨張黒鉛シートの破砕粒体及びカーボン含有れんが
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  • -膨張黒鉛シートの破砕粒体及びカーボン含有れんが 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】膨張黒鉛シートの破砕粒体及びカーボン含有れんが
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/043 20060101AFI20230913BHJP
   C01B 32/225 20170101ALI20230913BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20230913BHJP
   C04B 35/103 20060101ALI20230913BHJP
   C04B 35/536 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C04B35/043
C01B32/225
F27D1/00 N
C04B35/103
C04B35/536
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021154081
(22)【出願日】2021-09-22
(65)【公開番号】P2023045575
(43)【公開日】2023-04-03
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100195877
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻木 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 晃陽
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-059482(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0031704(US,A1)
【文献】特開2010-167481(JP,A)
【文献】特開2021-107086(JP,A)
【文献】特開2000-319063(JP,A)
【文献】特開平08-081256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00 -35/047
C04B 35/053-35/106
C04B 35/109-35/22
C04B 35/45 -35/457
C04B 35/547-35/553
C04B 35/556
C01B 32/00 -32/991
F27D 1/00 - 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数の粒子からなる、膨張黒鉛シートの破砕粒体であって、
前記複数の粒子のうちの一粒子を第1の水平面上に静置させ、前記一粒子の前記第1の水平面上への投影像と接する2本の平行線のうち、間隔が最小のものを第1の平行線とし、前記第1の平行線の間隔を前記一粒子の幅(w)とし、
前記投影像と接する、前記第1の平行線に直角な2本の第2の平行線の間隔を前記一粒子の長さ(l)とし、
前記一粒子と接する、前記第1の水平面に平行な第2の水平面と、前記第1の水平面との間隔を前記一粒子の高さ(h)とし、
前記一粒子の幅(w)の前記一粒子の高さ(h)に対する比を前記一粒子の扁平度(w/h)とし、
前記一粒子の長さ(l)の前記一粒子の幅(w)に対する比を前記一粒子の伸長度(l/w)とするとき、
前記複数の粒子のうちの2以上の前記一粒子の長さ(l)と高さ(h)の平均がそれぞれ3~60mm、0.1~6mmであり、
前記複数の粒子のうちの2以上の前記一粒子の幅(w)の平均と、前記複数の粒子のうちの2以上の前記一粒子の長さ(l)の平均と、前記複数の粒子のうちの2以上の前記一粒子の高さ(h)の平均から算出される扁平度(w/h)と伸長度(l/w)がそれぞれ1.5~10、2~20であり、
ゆるみかさ密度が0.33~0.50g/cm であることを特徴とする膨張黒鉛シートの破砕粒体。
【請求項2】
耐火原料と、カーボン原料と、バインダーとを主成分として含み、
前記カーボン原料が請求項1に記載の膨張黒鉛シートの破砕粒体を含むことを特徴とするカーボン含有れんが。
【請求項3】
請求項に記載のカーボン含有れんがにおいて、
前記耐火原料がマグネシアであることを特徴とするカーボン含有れんが。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膨張黒鉛シートの破砕粒体及びそれを含むカーボン含有れんがに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼プロセス等の高温装置用材料として、カーボン含有れんがが広く使用されている。カーボン含有れんがの材料としては、例えば、マグネシア・カーボン質、マグネシア・スピネル・カーボン質、スピネル・カーボン質、アルミナ・マグネシア・カーボン質、アルミナ・炭化けい素・カーボン質等がある。カーボンとしては、通常カーボン原料が使用されるが、特許文献1は、耐スポーリング性や耐食性等の維持、向上のため、膨張後、圧縮、粉砕した膨張黒鉛を使用することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-59482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
膨張後、圧縮、粉砕した膨張黒鉛は、れんが坏土の成形作業性の向上にも一定の効果を示すものの、れんが坏土はかさ高い。成形時にれんが坏土が成形枠内に収まりきらず、仮成形を要することがある等、成形作業性に課題が残る。
【0005】
本開示は上記実状を鑑みてなされたものであり、カーボン含有れんがの耐スポーリング性や耐食性等を維持、向上させるとともに、れんが坏土のかさ高さを抑え、成形作業性を向上させることができる膨張黒鉛シートの破砕粒体及びそれを含むカーボン含有れんがを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一の態様は、
膨張黒鉛シートを破砕した複数の粒子からなる、膨張黒鉛シートの破砕粒体であって、
前記複数の粒子のうちの一粒子を第1の水平面上に静置させ、前記一粒子の前記第1の水平面上への投影像と接する2本の平行線のうち、間隔が最小のものを第1の平行線とし、前記第1の平行線の間隔を前記一粒子の幅(w)とし、
前記投影像と接する、前記第1の平行線に直角な2本の第2の平行線の間隔を前記一粒子の長さ(l)とし、
前記一粒子と接する、前記第1の水平面に平行な第2の水平面と、前記第1の水平面との間隔を前記一粒子の高さ(h)とし、
前記一粒子の幅(w)の前記一粒子の高さ(h)に対する比を前記一粒子の扁平度(w/h)とし、
前記一粒子の長さ(l)の前記一粒子の幅(w)に対する比を前記一粒子の伸長度(l/w)とするとき、
前記複数の粒子のうちの2以上の前記一粒子の長さ(l)と高さ(h)の平均がそれぞれ3~60mm、0.1~6mmであり、
前記複数の粒子のうちの2以上の前記一粒子の幅(w)の平均と、前記複数の粒子のうちの2以上の前記一粒子の長さ(l)の平均と、前記複数の粒子のうちの2以上の前記一粒子の高さ(h)の平均から算出される扁平度(w/h)と伸長度(l/w)がそれぞれ1.5~10、2~20であることを特徴とする膨張黒鉛シートの破砕粒体に関する。
【0007】
本開示の一の態様の膨張黒鉛シートの破砕粒体は、膨張黒鉛シートを破砕した複数の粒子からなり、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の長さ(l)と高さ(h)の平均がそれぞれ3~60mm、0.1~6mmであり、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の幅(w)の平均と、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の長さ(l)の平均と、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の高さ(h)の平均から算出される扁平度(w/h)と伸長度(l/w)がそれぞれ1.5~10、2~20であることにより、カーボン含有れんがに添加されると、耐スポーリング性や耐食性等を維持、向上させるとともに、れんが坏土のかさ高さを抑え、成形作業性を向上させることができる。
【0008】
(2)本開示の一の態様では、ゆるみかさ密度が0.33~0.50g/cmであることが好ましい。れんが坏土のかさ高さを抑え、成形作業性をより向上させることができる。
【0009】
(3)本開示の他の態様は、
耐火原料と、カーボン原料と、バインダーとを主成分として含み、
前記カーボン原料が本開示の一の態様の膨張黒鉛シートの破砕粒体を含むことを特徴とするカーボン含有れんがに関する。
【0010】
本開示の他の態様のカーボン含有れんがは、カーボン原料が本開示の一の態様の膨張黒鉛シートの破砕粒体を含むため、耐スポーリング性や耐食性等を維持、向上させるとともに、れんが坏土のかさ高さを抑え、成形作業性を向上させることができる。
【0011】
(4)本開示の他の態様では、
前記耐火原料がマグネシアであることが好ましい。耐スポーリング性や耐食性等をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】粒子形状パラメータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが本開示の解決手段として必須であるとは限らない。
【0014】
<粒子形状パラメータ>
本実施形態の膨張黒鉛シートの破砕粒体は、膨張黒鉛シートを破砕した複数の粒子からなる。図1は複数の粒子のうちの一粒子10の形状パラメータを示す。膨張黒鉛シートを粉砕した一粒子10を第1の水平面11上に静置させ、一粒子10の第1の水平面11上への投影像と接する2本の平行線のうち、間隔が最小のものを第1の平行線12とし、第1の平行線12の間隔を一粒子10の幅(w)とする。投影像と接する、第1の平行線12に直角な2本の第2の平行線13の間隔を一粒子10の長さ(l)とする。一粒子10と接する、第1の水平面11に平行な第2の水平面14と、第1の水平面11との間隔を一粒子10の高さ(h)とする。一粒子10の幅(w)の一粒子10の高さ(h)に対する比を粒子の扁平度(w/h)とし、一粒子10の長さ(l)の一粒子10の幅(w)に対する比を粒子の伸長度(l/w)とする。
【0015】
本実施形態の膨張黒鉛シートの破砕粒体の幅(w)、長さ(l)及び高さ(h)については、それぞれ複数の粒子のうちの2以上の一粒子の幅(w)の平均、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の長さ(l)の平均及び複数の粒子のうちの2以上の一粒子の高さ(h)の平均とする。算出方法の一例を示す。複数の粒子から2以上の一粒子をランダムサンプリングし、各一粒子の幅(w)、長さ(l)及び高さ(h)を測定する。サンプリング方法は、例えば、JIS M8100「粉塊混合物-サンプリング方法通則」に従う。サンプリングの大きさは95%信頼区間を満足できるサイズとする。検査手順は、例えば、JIS Z 9004「計量規準型一回抜取検査(標準偏差未知で上限又は下限規格値だけ規定した場合)」に従う。測定方法はノギスでもよいし、適当な画像処理でもよい。複数の粒子のうちの2以上の一粒子の幅(w)の平均、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の長さ(l)の平均及び複数の粒子のうちの2以上の一粒子の高さ(h)の平均は、それぞれの個数平均、即ち、サンプリングした2以上の一粒子の幅(w)、長さ(l)及び高さ(h)の測定値の合計をサンプリングの大きさで除した値とする。本実施形態の膨張黒鉛シートの破砕粒体の扁平度(w/h)と伸長度(l/w)は、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の幅(w)の平均と、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の長さ(l)の平均と、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の高さ(h)の平均から算出される。
【0016】
<ゆるみかさ密度>
ゆるみかさ密度は、メスシリンダーに測定対象物を静かに入れ、測定対象物の質量をその容積で除した値をいう。
【0017】
<膨張黒鉛シートの破砕粒体>
本実施形態の膨張黒鉛シートの破砕粒体は、膨張黒鉛シートを破砕した複数の粒子からなり、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の長さ(l)と高さ(h)の平均がそれぞれ3~60mm、0.1~6mmであり、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の幅(w)の平均と、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の長さ(l)の平均と、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の高さ(h)の平均から算出される扁平度(w/h)と伸長度(l/w)がそれぞれ1.5~10、2~20である。
【0018】
膨張黒鉛シートの破砕粒体の製造方法は次のとおりである。天然黒鉛等、結晶性の高い黒鉛の層間に、硫酸や硝酸等を侵入させて黒鉛層間化合物を形成し、黒鉛層間化合物を短時間で高温に加熱すると急激に膨張して膨張化黒鉛が得られる。なお、本明細書において、膨張黒鉛とは、膨張後、圧縮等の処理をされた膨張化黒鉛をいうものとする。膨張化黒鉛をロール等で圧延して膨張黒鉛シートが得られる。圧延の圧力を調整することで破砕粒体の高さ(h)を調整してもよい。膨張黒鉛シートを破砕して膨張黒鉛シートの破砕粒体が得られる。膨張黒鉛シートはそのまま使用してもよいし、打ち抜き後の端材等を使用してもよい。膨張黒鉛シートの破砕は公知の方法を使用してよく、例えば、シュレッダーのように円筒状の刃物を回転させて膨張黒鉛シートを裁断してもよいし、ピンミル等の粉砕機を使用してもよい。裁断機の場合、刃物の幅を調整することで破砕粒体の幅(w)等を調整することができる。粉砕機の場合、ピンの間隔や回転数を調整することで破砕粒体の幅(w)等を調整することができる。
【0019】
膨張黒鉛シートの破砕粒体は、膨張黒鉛シートを破砕した複数の粒子からなり、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の長さ(l)の平均は3~60mmであり、耐スポーリング性を重視する場合は20~60mmが好ましく、成形作業性を重視する場合は5~20mmが好ましく、両者をバランスしたより好ましい範囲は12.5~25mmである。複数の粒子のうちの2以上の一粒子の高さ(h)の平均は0.1~6mmであり、耐スポーリング性を重視する場合は0.1~0.5mmが好ましく、成形作業性を重視する場合は2~6mmが好ましく、両者をバランスしたより好ましい範囲は0.1~2.0mmである。膨張黒鉛シートの破砕粒体の長さ(l)、高さ(h)を上記の好ましい範囲にすることにより、カーボン含有れんがの成形作業性と耐スポーリング性をより高度に両立させることができる。
【0020】
膨張黒鉛シートの破砕粒体の扁平度(w/h)と伸長度(l/w)は、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の幅(w)の平均と、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の長さ(l)の平均と、複数の粒子のうちの2以上の一粒子の高さ(h)の平均から算出される。膨張黒鉛シートの破砕粒体の扁平度(w/h)は1.5~10であり、耐スポーリング性を重視する場合は2.5~10が好ましく、成形作業性を重視する場合は1.5~2.5が好ましく、両者をバランスしたより好ましい範囲は2.5~5である。扁平度(w/h)が1.5以上で耐スポーリング性が向上し、10以下で成形作業性が向上する。膨張黒鉛シートの破砕粒体の伸長度(l/w)は2~20であり、耐スポーリング性を重視する場合は10~20が好ましく、成形作業性を重視する場合は2~10が好ましく、両者をバランスしたより好ましい範囲は5~20である。伸長度(l/w)が2以上で耐スポーリング性が向上し、20以下で成形作業性が向上する。扁平度、伸長度を上記の好ましい範囲にすることにより、カーボン含有れんがの成形作業性と耐スポーリング性を高度に両立させることができる。
【0021】
膨張黒鉛シートの破砕粒体のゆるみかさ密度は0.33~0.50g/cmが好ましく、より好ましくは0.37~0.39g/cmである。この範囲にすることによって、れんが坏土のかさ高さを抑え、成形作業性をより向上させることができる。
【0022】
<カーボン含有れんが>
本実施形態のカーボン含有れんがは、耐火原料と、カーボン原料と、バインダーとを主成分として含み、カーボン原料が本実施形態の膨張黒鉛シートの破砕粒体を含む。カーボン原料が本実施形態の膨張黒鉛シートの破砕粒体を含むため、耐スポーリング性や耐食性等を維持、向上させるとともに、れんが坏土のかさ高さを抑え、成形作業性を向上させることができる。
【0023】
<耐火原料>
耐火原料は、例えば、マグネシア原料、スピネル原料、アルミナ原料、炭化けい素原料等、一般的な耐火原料を使用することができる。
【0024】
マグネシア原料は、一般にマグネシア・カーボン質耐火物に使用されるものであればよく、例えば、電融マグネシア、海水マグネシア、天然マグネシア、焼結マグネシア等が挙げられる。マグネシア原料の純度はMgO:98質量%以上が好ましい。この場合、マグネシア・カーボン質耐火物の耐食性が向上するとともに、マグネシア・カーボン反応を抑制することもできる。
【0025】
スピネル原料は、一般にカーボン含有れんがに使用されるものであればよく、例えば、電融スピネル、焼結スピネル等が挙げられる。スピネル(MgAl)の化学量論組成は、Alが71.7質量%、MgOが28.3質量%であるが、その他に種々の組成のものがある。化学量論組成よりAlを多く含むものはアルミナリッチスピネル、MgOを多く含むものはマグネシアリッチスピネルと呼ばれる。本実施形態に用いられるスピネル原料としては、いずれのものでもよい。
【0026】
アルミナ原料は、一般にカーボン含有れんがに使用されるものであればよく、例えば、電融アルミナ、焼結アルミナ、天然アルミナ等が挙げられる。Alの純度は95質量%以上が好ましい。この場合、耐食性が向上する。
【0027】
炭化けい素原料は、一般にカーボン含有れんがに使用されるものであればよい。SiCの純度は95質量%以上が好ましい。この場合、耐食性が向上するとともに、カーボンの酸化を抑制することができる。
【0028】
<カーボン原料>
カーボン原料としては、本実施形態の膨張黒鉛シートの破砕粒体の他、例えば、鱗状黒鉛、土状黒鉛、カーボンブラック、無煙炭、人造黒鉛等、市販の固体状カーボンを含んでもよい。これらのカーボン原料は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
<バインダー>
バインダーは一般にカーボン含有れんがに使用されるものであればよく、例えば、熱硬化性(レゾール型)又は熱可塑性(ノボラック型)フェノール樹脂、エチレングリコール等が挙げられる。バインダーの形態は一般に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、液体、粉末等が挙げられる。常温で粘性が低いバインダーや一定温度に加温して粘性を低下させたバインダーは、少量の添加で均質に分散させることができるため、特に好ましい。また、バインダーは、一般に不焼成れんがに使用されるものであれば樹脂でなくてもよく、例えば、糖蜜等の多糖類溶液、珪酸塩等の無機化合物が挙げられる。
【0030】
<少量添加物>
一般にカーボン含有れんがに使用されるものであれば主成分以外の少量添加物を添加してもよく、例えば、酸化防止剤、カーボンブラック、粉末ピッチ等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、Al、Si、BC、SiC、Al-Mg合金等が挙げられる。
【実施例
【0031】
以下、本開示の実施例について詳細に説明する。
【0032】
[試験片の作成]
膨張化処理によりゆるみかさ密度0.01g/cmの膨張化黒鉛を得た後、圧縮してシート化、裁断し、膨張黒鉛シートの破砕粒体を得た。膨張黒鉛シートの破砕粒体からランダムサンプリングし、各粒子の幅(w)、長さ(l)及び高さ(h)を測定し、幅(w)、長さ(l)及び高さ(h)の個数平均を算出した。幅(w)、長さ(l)及び高さ(h)の個数平均から扁平度(w/h)と伸長度(l/w)を算出した。さらに、膨張黒鉛シートの破砕粒体のゆるみかさ密度を測定した。表1にその結果を示す。
【表1】
【0033】
膨張黒鉛シートの破砕粒体A,B,Q,Rは、扁平度(w/h)が本発明の範囲外であり、C,H,Rは、伸長度(l/w)が本発明の範囲外であり、D,E,F,G,I,J,K,L,M,N,O,Pは、本発明の範囲内である。
【0034】
表1に示す膨張黒鉛シートの破砕粒体を用い、表2に示す配合に従って混練物(れんが坏土)を得た。
【表2】
【0035】
実施例1~12は、カーボン原料の種類を、本発明の範囲内の膨張黒鉛シートの破砕粒体D~G,I~Pで変更したものである。実施例13~18は、膨張黒鉛シートの破砕粒体Pを使用し、本発明の範囲内でマグネシア原料とカーボン原料の含有量を変化させたものである。実施例19~22は、膨張黒鉛シートの破砕粒体Pを使用し、本発明の範囲内でマグネシア原料以外の耐火原料と、一部マグネシア原料を含有させたものである。一方、比較例1~6は、カーボン原料の種類を、本発明の範囲外の膨張黒鉛シートの破砕粒体A~C,H,Q,Rとしたものである。
【0036】
混練物を、長さ900mm×幅180mm×高さ150mmの直方体形状に成形した後、250℃で24時間乾燥してれんがを得た。必要に応じてれんがを所定の形状に加工し、試験片とした。
【0037】
[評価方法]
試験片について、以下の評価を行った。
【0038】
<ゆるみかさ密度>
混練物のゆるみかさ密度は、メスシリンダーに測定対象物を静かに入れ、測定対象物の容積と質量を測定して求めた。
【0039】
<気孔率・曲げ強さ>
気孔率はJIS R2205(耐火れんがの見掛気孔率・吸水率・比重の測定方法)に従って測定した。曲げ強さはJIS R2213(耐火れんがの曲げ強さの試験方法)に従って測定した。
【0040】
<耐食性(溶損指数)>
耐食性は高周波内張り法で評価した。即ち、試験温度は1700℃とし、侵食剤にはCaO/SiO(質量比)が2.8の合成スラグを使用した。侵食剤は1回に400g投入し、1時間毎に入れ替え、計6時間試験を継続した。試験後の試験片を稼働面に垂直な方向に切断して溶損面積を測定した。比較例1の溶損面積を100とする溶損指数で耐食性を評価した。溶損指数が小さいほど耐摩耗性は良好である。
【0041】
<耐摩耗性(摩耗指数)>
耐摩耗性はASTM C704(Abrasion Resistance of Refractory Materials at Room Temperature)に準じて評価した。即ち、所定の形状:115×115×30mmの直方体に加工した試験片を還元雰囲気中1000℃で焼成し、115×115mmの面を摩耗材の吐出方向に対し45°傾斜させてセットした。15回転/分で回転させた試験片に摩耗材を連続的に吹き付けた。摩耗材として粒径が0.3~1mmのSiC粒子を使用した。吹き付けた摩耗材の量は1kgとし、吹き付けエアー圧は0.4MPaとした。吹き付け試験前後の試験片の質量を測定し、質量変化と試験片の嵩比重から摩耗体積を算出した。比較例1の摩耗体積を100とする摩耗指数で耐摩耗性を評価した。摩耗指数が小さいほど耐摩耗性は良好である。
【0042】
<耐スポーリング性(弾性率低下率)>
耐スポーリング性は急熱急冷試験で評価した。即ち、所定の形状:40×40×160mmの直方体に加工した試験片を還元雰囲気中1000℃で焼成した。試験片を1680℃の溶銑に60秒間浸漬した後、15秒間冷水に浸漬する操作を2回繰り返した。浸漬試験前後の試験片の弾性率を測定し、以下の式により弾性率低下率を算出し、耐スポーリング性を評価した。弾性率は試験片の長手方向(160mm長さ方向)の超音波伝播速度より求めた。
弾性率低下率=(試験前の弾性率-試験後の弾性率)/試験前の弾性率×100
【0043】
弾性率低下率が小さいほど耐スポーリング性は良好であり、40%未満を優、40%以上50%未満を良、50%以上55%未満を可、55%以上を不可と評価した。
【0044】
<成形作業性>
成形作業性は、成形金型への充てん度で評価した。即ち、所要量のれんが坏土を成形金型に投入したとき、金型からあふれる場合は成形作業性が不良であり、金型にほぼ収まる場合は成形作業性が良好である。この指標として、混練物のゆるみかさ密度(g/cm)で評価した。ゆるみかさ密度が0.85以上を優、0.80以上0.85未満を良、0.77以上0.80未満を可、0.77未満を不可と評価した。
【0045】
<総合評価>
成形作業性及び耐スポーリング性の評価結果において、優=3点、良=2点、可=1点、不可=0点とし、成形作業性と耐スポーリング性の評価結果をかけ合わせた数値を用いて総合評価を行った。即ち、成形作業性と耐スポーリング性の評価結果をかけ合わせた数値が、4点以上=優、3点=良、2点=可、0点=不可と評価した。
【0046】
[評価結果]
評価結果を表3に示す。
【表3】
【0047】
実施例1~22のカーボンれんがは、いずれも良好な特性を示した。粒体の長さ(l)が20~60mmの実施例3~4、6~9、12は特に耐スポーリング性が良好であり、長さ(l)が長くなるに従い耐スポーリング性が向上した。また、粒体の長さ(l)が5~20mmの実施例1~2、5~6、9~12は成形作業性が特に良好であり、長さ(l)が短くなるに従い成形作業性が向上した。粒体の高さ(h)が0.1~0.5mmである実施例10~12は特に耐スポーリング性が良好であり、高さ(h)が低くなるに従い耐スポーリング性が向上した。高さ(h)が2~6mmである実施例5~9は特に成形作業性が良好であり、高さ(h)が高くなるに従い成形作業性が向上した。粒体の扁平度(w/h)が1.5~10の実施例1~12は耐スポーリング性、成形作業性が良好であり、扁平度(w/h)が2.5~10の実施例5~12は特に耐スポーリング性が良好であり、扁平度(w/h)が大きくなるに従い耐スポーリング性が向上した。粒体の扁平度(w/h)が1.5~2.5の実施例1~8は特に成形作業性が良好であり、扁平度(w/h)が小さくなるに従い成形作業性が向上した。粒体の伸長度(l/w)が2~20の実施例1~12は耐スポーリング性、成形作業性が良好であり、伸長度(l/w)が10~20の実施例3、4、8、11、12は特に耐スポーリング性が良好であり、伸長度(l/w)が大きくなるに従い耐スポーリング性が向上した。粒体の伸長度(l/w)が2~10の実施例1~3、5~8は特に成形作業性が良好であり、伸長度(l/w)が小さくなるに従い成形作業性が向上した。なお、粒体の伸長度(l/w)が2~10の実施例9~11の成形作業性が可に留まったのは、粒体の扁平度が5以上と、やや大きかったためと考えられる。粒体のゆるみかさ密度が0.39~0.50g/cmの実施例1~3、5~8は成形作業性が良であり、ゆるみかさ密度が大きくなるに従い成形作業性が向上した。粒体のゆるみかさ密度が0.33~0.41g/cmの実施例4、9~11は耐スポーリング性が良好であり、ゆるみかさ密度が小さくなるに従い耐スポーリング性が向上した。
【0048】
比較例1~3は、いずれも耐スポーリング性に劣る結果となった。粒体の扁平度(w/h)又は伸長度(l/w)が本発明の範囲より小さかったためと考えられる。比較例4~6は、成形作業性が劣る結果となった。粒体の扁平度(w/h)及び伸長度(l/w)のいずれか一方又は両方が本発明の範囲より大きかったためと考えられる。
【0049】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれる。例えば、明細書において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えられることができる。また、本実施形態の構成も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 一粒子、11 第1の水平面、12 第1の平行線、13 第2の平行線、14 第2の水平面
図1