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特許7348546空気調節装置、冷凍装置、および輸送用コンテナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】空気調節装置、冷凍装置、および輸送用コンテナ
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20230913BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20230913BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230913BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D63/02
F25D11/00 101D
F25D23/00 302Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021202395
(22)【出願日】2021-12-14
(65)【公開番号】P2023087868
(43)【公開日】2023-06-26
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 憲人
(72)【発明者】
【氏名】平田 渉
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-066169(JP,A)
【文献】特開2002-191927(JP,A)
【文献】特開平10-085545(JP,A)
【文献】特開平03-127609(JP,A)
【文献】特開2005-205275(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0141139(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22
B01D61/00-71/82
F25D11/00-16/00
A23B4/00-9/34
A01F25/00-25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
庫内空間(5)の庫内空気の組成を調節する空気調節装置であって、
被処理空気が内部に供給されるガス分離膜(124)と、
空気調節装置の所定期間の停止に伴う前記ガス分離膜(124)の性能の低下を抑制する第1動作を実行させる制御部(191)とを備え、
前記第1動作は、前記被処理空気を前記ガス分離膜(124)に供給する予備運転を含み、
前記予備運転において、前記ガス分離膜(124)に供給される空気を加圧する加圧部(110)を備え、
前記加圧部(10)は、前記予備運転における前記ガス分離膜(124)の内圧が、前記空気調節装置の通常運転における前記ガス分離膜(124)の内圧よりも高くなるように、前記ガス分離膜(124)に供給される空気を加圧するように構成される
空気調節装置。
【請求項2】
前記制御部(191)は、前記空気調節装置の停止から所定時間が経過すると、前記予備運転を開始させる
請求項1に記載の空気調節装置。
【請求項3】
前記制御部(191)は、前記空気調節装置の前記通常運転の開始時より所定時間前に前記予備運転を開始させる
請求項1に記載の空気調節装置。
【請求項4】
前記予備運転において、前記ガス分離膜(124)で分離された第1空気および第2空気を庫外空間(6)に排出する排気流路(103)を備えている
請求項2または3に記載の空気調節装置。
【請求項5】
前記予備運転において、前記ガス分離膜(124)に供給される空気を加熱する加熱部(175)を備えている
請求項2~4のいずれか1つに記載の空気調節装置。
【請求項6】
前記予備運転において、前記ガス分離膜(124)に供給される空気中の水分を減らす減湿部(111,113,130)を備えている
請求項2~5のいずれか1つに記載の空気調節装置。
【請求項7】
前記第1動作は、前記空気調節装置の運転を人に促すための動作を含む
請求項1~6のいずれか1つに記載の空気調節装置。
【請求項8】
前記制御部(191)は、前記ガス分離膜(124)の性能に関する情報を出力する
請求項1~7のいずれか1つに記載の空気調節装置。
【請求項9】
庫内空間(5)の庫内空気の組成を調節する空気調節装置であって、
被処理空気が内部に供給されるガス分離膜(124)と、
空気調節装置の所定期間の停止に伴う前記ガス分離膜(124)の性能の低下を抑制する第1動作を実行させる制御部(191)とを備え、
前記制御部(191)は、前記ガス分離膜(124)の性能に関する情報を出力し、
前記第1動作は、前記被処理空気を前記ガス分離膜(124)に供給する予備運転を含み、
前記予備運転において、前記ガス分離膜(124)に供給される空気を加圧する加圧部(110)を備え、
前記制御部(191)は、前記予備運転において、前記ガス分離膜(124)の内圧の減少速度に基づいて、前記ガス分離膜(124)の性能が回復するまでの時間または時刻を推定し、推定した時間または時刻を前記ガス分離膜(124)の性能に関する情報として出力する
空気調節装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つの空気調節装置(100)と、
前記庫内空間(5)の内部の温度を調節する冷媒回路(30)とを備える
冷凍装置。
【請求項11】
請求項10に記載の冷凍装置(10)と、
前記冷凍装置(10)が設けられるコンテナ本体(2)とを備えた
輸送用コンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調節装置、冷凍装置、および輸送用コンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、庫内空間の庫内空気の組成を調節する空気調節装置が開示されている。空気調節装置は、ガス分離膜を備える。被処理空気がガス分離膜を流れると、被処理空気中の一部の成分(例えば酸素および二酸化炭素)がガス分離膜を透過する。このようにして組成が調節された空気が庫内空間へ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-66169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような空気調節装置を長期間に亘って停止すると、分離膜が収縮し、分離膜の細孔が小さくなってしまう。この結果、分離膜の性能が低下してしまう問題があった。
【0005】
本開示の目的は、空気調節装置の停止に伴って分離膜の性能が低下するのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、庫内空間(5)の庫内空気の組成を調節する空気調節装置であって、
被処理空気が供給されるガス分離膜(124)と、前記空気調節装置の所定期間の停止に伴う前記ガス分離膜(124)の性能の低下を抑制する第1動作を実行させる制御部(191)とを備えている空気調節装置である。
【0007】
なお、ここでいう「分離膜の性能の低下を抑制する」という意味は、分離膜の性能が低下してしたときに、この分離膜の性能を回復させることも含む。
【0008】
第1の態様では、制御部(191)が第1動作を実行することで、空気調節装置の所定期間の停止に伴うガス分離膜(124)の性能の低下を抑制できる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、第1動作が、前記被処理空気を前記ガス分離膜(124)に供給する予備運転を含む。
【0010】
第2の態様では、第1動作として予備運転が実行され、被処理空気がガス分離膜(124)に供給される。被処理空気がガス分離膜(124)を流れることで、ガス分離膜(124)の細孔を拡大でき、ガス分離膜(124)の性能の低下を抑制できる。
【0011】
第3の態様は、第2の態様において、前記制御部(191)は、前記空気調節装置の停止から所定時間が経過すると、前記予備運転を開始させる。
【0012】
第3の態様では、空気調節装置の停止から所定時間が経過すると、制御部(191)が予備運転を開始させる。これにより、被処理空気がガス分離膜(124)を長期に亘って流れないことを回避でき、ガス分離膜(124)の性能の低下を抑制できる。
【0013】
第4の態様は、第2の態様において、前記制御部(191)は、前記空気調節装置の通常運転の開始時より所定時間前に前記予備運転を開始させる。
【0014】
第4の態様では、空気調節装置の通常運転の開始時より所定時間前に予備運転が開始されるので、通常運転の前にガス分離膜(124)の性能の低下を抑制できる。これにより、通常運転において、ガス分離膜(124)の性能が十分得られないことを抑制できる。
【0015】
第5の態様は、第3または第4の態様において、前記予備運転において、前記ガス分離膜(124)で分離された第1空気および第2空気を庫外空間(6)に排出する排気流路(103)を備えている。
【0016】
第5の態様では、予備運転において、ガス分離膜(124)を通過した第1空気および第2空気は、排気流路(103)を経由して庫外空間(6)に排出される。このため、予備運転を実行することに起因して、庫内空間(5)の空気の組成が変化してしまうことを抑制できる。
【0017】
第6の態様は、第3~第5のいずれか1つの態様において、前記予備運転において、前記ガス分離膜(124)に供給される空気を加熱する加熱部(175)を備えている。
【0018】
第6の態様では、予備運転において、加熱部(175)で加熱された空気がガス分離膜(124)に供給される。これにより、ガス分離膜(124)の性能の回復効果を向上できる。
【0019】
第7の態様は、第3~第6のいずれか1つの態様において、前記予備運転において、前記ガス分離膜(124)に供給される空気を加圧する加圧部(110)を備えている。
【0020】
第7の態様では、予備運転において、加圧部(110)で加圧された空気がガス分離膜(124)に供給される。これにより、ガス分離膜(124)の性能の回復効果を向上できる。
【0021】
第8の態様は、第3~第7のいずれか1つの態様において、前記予備運転において、前記ガス分離膜(124)に供給される空気中の水分を減らす減湿部(111,113,130)を備えている。
【0022】
第8の態様では、予備運転において、減湿部(111,113,130)で水分が減らされた空気がガス分離膜(124)に供給される。これにより、予備運転において、空気中の水分子の影響によりガス分離膜(124)の性能が低下することを抑制できる。
【0023】
第9の態様は、第1~第8のいずれか1つの態様において、前記第1動作は、前記空気調節装置の運転を人に促すための動作を含む。
【0024】
第9の態様では、空気調節装置の運転を人に促す動作が行われることで、空気調節装置(100)が長期間に亘って停止状態となることを抑制できる。この結果、空気調節装置の所定期間の停止に伴って、ガス分離膜(124)の性能が低下してしまうことを抑制できる。
【0025】
第10の態様は、前記制御部(191)は、前記ガス分離膜(124)の性能に関する情報を出力する。
【0026】
第10の態様では、ユーザなどの人がガス分離膜(124)の性能に関する情報を把握できる。
【0027】
第11の態様は、第1~第10のいずれか1つの態様の空気調節装置(100)と、庫内空間(5)の内部の温度を調節する冷媒回路(30)とを備える冷凍装置である。
【0028】
第12の態様は、第11の態様の冷凍装置(10)と、該冷凍装置(10)が設けられるコンテナ本体(2)とを備えた輸送用コンテナである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、実施形態の輸送用コンテナを前側から視た斜視図である。
図2図2は、実施形態の輸送用コンテナの内部構造を示す概略の縦断面図である。
図3図3は、実施形態の輸送用冷凍装置の冷媒回路の配管系統図である。
図4図4は、実施形態の輸送用コンテナの概略の構成を示すブロック図である。
図5図5は、実施形態の空気調節装置の構成を示す配管系統図である。
図6図6は、実施形態の空気調節装置に設けられたガス分離モジュールの概略断面図である。
図7図7は、実施形態の空気調節装置に設けられた水分離モジュールの概略断面図である。
図8図8は、実施形態の空気調節装置の第1運転を示す図5に相当する図である。
図9図9は、実施形態の空気調節装置の第2運転を示す図5に相当する図である。
図10図10は、実施形態の空気調節装置の第3運転を示す図5に相当する図である。
図11図11は、実施形態の空気調節装置の第4運転を示す図5に相当する図である。
図12図12は、実施形態の空気調節装置の第5運転を示す図5に相当する図である。
図13図13は、実施形態の空気調節装置の予備運転の開始判定に係る制御のフローチャートである。
図14図14は、変形例1の空気調節装置の予備運転に関する制御のフローチャートである。
図15図15は、変形例2の空気調節装置の図5に相当する図である。
図16図16は、変形例2の空気調節装置の予備運転を示す図5に相当する図である。
図17図17は、変形例3の空気調節装置の図5に相当する図である。
図18図18は、変形例4の空気調節装置の第1動作に関する制御のフローチャートである。
図19図19は、変形例5の空気調節装置の第2動作に関する制御のフローチャートである。
図20図20は、変形例6の空気調節装置の図5に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0031】
(1)輸送用コンテナの概要
本開示は、輸送用コンテナ(1)である。輸送用コンテナ(1)は、庫内の温度管理が可能なリーファーコンテナ(reefer container)である。輸送用コンテナ(1)は、果物、野菜、花卉などの生鮮物を輸送するために用いられる。生鮮物は、空気中の酸素(O)を取り込んで二酸化炭素(CO)を放出する。
【0032】
図1に示すように、輸送用コンテナ(1)は、コンテナ本体(2)と、コンテナ本体(2)に設けられる輸送用冷凍装置(10)とを備える。輸送用コンテナ(1)は、海上輸送に用いられる。輸送用コンテナ(1)は、船舶などの海上輸送体によって搬送される。図5に示すように、輸送用コンテナ(1)は、空気調節装置(100)を備える。空気調節装置(100)は、コンテナ本体(2)の庫内の空気の組成を調節する。
【0033】
(2)コンテナ本体
コンテナ本体(2)は、生鮮物を収容する収納庫である。
【0034】
コンテナ本体(2)は、中空の箱状に形成される。コンテナ本体(2)は、横長に形成される。コンテナ本体(2)の長手方向の一端には、開口が形成される。コンテナ本体(2)の開口は、輸送用冷凍装置(10)によって塞がれる。コンテナ本体(2)の庫内には、輸送対象物を収納するための庫内空間としての収納空間(5)が形成される。
【0035】
(3)輸送用冷凍装置
輸送用冷凍装置(10)は、コンテナ本体(2)の開口に取り付けられる。輸送用冷凍装置(10)は、ケーシング(11)と冷媒回路(30)とを備える。輸送用冷凍装置(10)は、収納空間(5)の空気(庫内空気)の温度を調節する。
【0036】
(3-1)ケーシング
図2に示すように、ケーシング(11)は、隔壁(12)と仕切板(15)とを備える。
【0037】
隔壁(12)の内側には、庫内流路(20)が形成される。隔壁(12)の外側には、庫外空間(6)の一部である庫外室(25)が形成される。庫内流路(20)と庫外室(25)とは、隔壁(12)によって仕切られる。
【0038】
隔壁(12)は、庫外壁(13)と庫内壁(14)とを備える。庫外壁(13)は、コンテナ本体(2)の外側に位置する。庫内壁(14)は、コンテナ本体(2)の内側に位置する。
【0039】
庫外壁(13)は、コンテナ本体(2)の開口を塞いでいる。庫外壁(13)は、コンテナ本体(2)の開口の周縁部に取り付けられる。庫外壁(13)の下部は、コンテナ本体(2)の内側に向かって膨出する。庫外室(25)は、この膨出した庫外壁(13)の内側に形成される。
【0040】
庫内壁(14)は、庫外壁(13)と対向する。庫内壁(14)は、庫外壁(13)に沿った形状を有する。庫内壁(14)と庫外壁(13)との間には、断熱材(16)が設けられる。
【0041】
仕切板(15)は、庫内壁(14)よりもコンテナ本体(2)の内側に配置される。隔壁(12)と仕切板(15)との間には、庫内流路(20)が形成される。仕切板(15)の上端とコンテナ本体(2)の天板との間には、流入口(21)が形成される。仕切板(15)の下端と隔壁(12)の下端との間には、流出口(22)が形成される。庫内流路(20)は、流入口(21)から流出口(22)に亘って形成される。
【0042】
(3-2)冷媒回路の要素部品
冷媒回路(30)は、それに充填された冷媒を有する。冷媒回路(30)は、冷媒が循環することで蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。冷媒回路(30)は、圧縮機(31)、庫外熱交換器(32)、膨張弁(33)、庫内熱交換器(51)、及びこれらを接続する冷媒配管を含む。
【0043】
圧縮機(31)は、庫外室(25)の下部に配置される。庫外熱交換器(32)は、庫外室(25)の上部に配置される。庫外熱交換器(32)は、冷媒を庫外空気と熱交換させるフィンアンドチューブ熱交換器である。庫外熱交換器(32)の形状は、概ね矩形の筒状である。庫内熱交換器(51)は、庫内流路(20)に配置される。庫内熱交換器(51)は、冷媒を庫内空気と熱交換させるフィンアンドチューブ熱交換器である。
【0044】
(3-3)庫外ファンおよび庫内ファン
輸送用冷凍装置(10)は、1つの庫外ファン(34)を備える。庫外ファン(34)は、プロペラファンである。庫外ファン(34)は、庫外室(25)に配置される。庫外ファン(34)は、筒状に形成された庫外熱交換器(32)の内側に配置される。庫外ファン(34)は、庫外熱交換器(32)へ庫外空気を送る。
【0045】
輸送用冷凍装置(10)は、2つの庫内ファン(35)を備える。庫内ファン(35)は、プロペラファンである。庫内ファン(35)は、庫内流路(20)に配置される。庫内ファン(35)は、庫内熱交換器(51)の上方に配置される。庫内ファン(35)は、庫内熱交換器(51)へ庫内空気を送る。
【0046】
(3-4)ヒータ
輸送用冷凍装置(10)は、ヒータ(52)を備える。ヒータ(52)は、庫内熱交換器(51)の下方に配置される。ヒータ(52)は、庫内熱交換器(51)に付着した霜を融かすために用いられる。
【0047】
(3-5)電装品箱
図1に示すように、輸送用冷凍装置(10)は、電装品箱(36)を有する。電装品箱(36)は、庫外室(25)の上部に配置される。電装品箱(36)の内部には、インバータ基板及び制御基板等の電気部品が収容される。
【0048】
(3-6)冷媒回路の構成
図3に示すように、冷媒回路(30)は、主要部品として、圧縮機(31)と、庫外熱交換器(32)と、膨張弁(33)と、庫内熱交換器(51)とを有する。膨張弁(33)は、その開度が調節可能な電子膨張弁である。
【0049】
冷媒回路(30)は、吐出管(41)と吸入管(42)とを有する。吐出管(41)の一端は圧縮機(31)の吐出部に接続する。吐出管(41)の他端は、庫外熱交換器(32)のガス端に接続する。吸入管(42)の一端は、圧縮機(31)の吸入部に接続する。吸入管(42)の他端は、庫内熱交換器(51)のガス端に接続する。
【0050】
冷媒回路(30)は、液管(43)、レシーバ(44)、冷却熱交換器(45)、第1開閉弁(46)、連通管(47)、第2開閉弁(48)、インジェクション管(49)、及びインジェクション弁(50)を有する。
【0051】
液管(43)の一端は、庫外熱交換器(32)の液端に接続する。液管(43)の他端は、庫内熱交換器(51)の液端に接続する。レシーバ(44)は、液管(43)に設けられる。レシーバ(44)は、冷媒を貯留する容器である。
【0052】
冷却熱交換器(45)は、第1流路(45a)と第2流路(45b)とを有する。冷却熱交換器(45)は、第1流路(45a)の冷媒と、第2流路(45b)の冷媒とを熱交換させる。冷却熱交換器(45)は、例えばプレート式の熱交換器である。第1流路(45a)は、液管(43)の一部である。第2流路(45b)は、インジェクション管(49)の一部である。冷却熱交換器(45)は、液管(43)を流れる冷媒を冷却する。
【0053】
第1開閉弁(46)は、液管(43)におけるレシーバ(44)と第1流路(45a)との間の部分に設けられる。第1開閉弁(46)は、開閉可能な電磁弁である。
【0054】
連通管(47)は、冷媒回路(30)の高圧ライン及び低圧ラインを連通させる。連通管(47)の一端は、吐出管(41)に接続する。連通管(47)の他端は、液管(43)における膨張弁(33)と庫内熱交換器(51)との間の部分に接続する。
【0055】
第2開閉弁(48)は、連通管(47)に設けられる。第2開閉弁(48)は、開閉可能な電磁弁である。
【0056】
インジェクション管(49)は、圧縮機(31)の中圧部に冷媒を導入する。インジェクション管(49)の一端は、液管(43)におけるレシーバ(44)と第1流路(45a)との間の部分に接続する。インジェクション管(49)の他端は、圧縮機(31)の中圧部に接続する。中圧部の圧力である中間圧力は、圧縮機(31)の吸入圧力よりも高く、その吐出圧力よりも低い。
【0057】
インジェクション弁(50)は、インジェクション管(49)における第2流路(45b)の上流側の部分に設けられる。インジェクション弁(50)は、その開度が調節可能な電子膨張弁である。
【0058】
(3-7)第1制御ユニット
図4に示すように、輸送用冷凍装置(10)は、第1制御ユニット(90)を備える。第1制御ユニット(90)は、表示部(91)と、操作部(92)と、第1制御部(93)とを含む。
【0059】
表示部(91)は、例えば液晶パネルで構成される。表示部(91)は、輸送用冷凍装置(10)および空気調節装置(100)の運転に関する情報を表示する。
【0060】
操作部(92)は、操作ボタンで構成される。操作部(92)は、表示部(91)としての液晶パネルに兼用されるタッチパネルであってもよい。人は、操作部(92)により、輸送用冷凍装置(10)の運転を操作する。人は、操作部(92)により、輸送用冷凍装置(10)の運転条件を設定する。
【0061】
第1制御部(93)は、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0062】
第1制御部(93)は、庫外ファン(34)、庫内ファン(35)、ヒータ(52)、および冷媒回路(30)を制御する。具合的には、第1制御部(93)は、庫外ファン(34)、庫内ファン(35)、ヒータ(52)、および圧縮機(31)を制御する。第1制御部(93)は、庫外ファン(34)の回転数、庫内ファン(35)の回転数、および圧縮機(31)の回転数(運転周波数)を制御する。第1制御部(93)は、膨張弁(33)、第1開閉弁(46)、第2開閉弁(48)、およびインジェクション弁(50)の開度を制御する。
【0063】
(3-8)輸送用冷凍装置の運転動作
輸送用冷凍装置(10)の基本的な運転動作について説明する。輸送用冷凍装置(10)の運転時には、第1制御部(93)が、圧縮機(31)、庫外ファン(34)、および庫内ファン(35)を運転させる。第1制御部(93)が第1開閉弁(46)を開け、第2開閉弁(48)を閉じる。第1制御部(93)が、膨張弁(33)の開度を調節する。第1制御部(93)が、インジェクション弁(50)の開度を調節する。
【0064】
圧縮機(31)で圧縮された冷媒は、庫外熱交換器(32)を流れる。庫外熱交換器(32)では、冷媒が庫外空気へ放熱し、凝縮する。凝縮した冷媒は、レシーバ(44)を通過する。レシーバ(44)を通過した冷媒の一部は、冷却熱交換器(45)の第1流路(45a)を流れる。レシーバ(44)を通過した冷媒の残部は、インジェクション管(49)を流れ、インジェクション弁(50)において中間圧力まで減圧される。減圧された冷媒は、圧縮機(31)の中圧部に導入される。
【0065】
冷却熱交換器(45)では、第2流路(45b)の冷媒が第1流路(45a)の冷媒から吸熱し、蒸発する。これにより、第1流路(45a)の冷媒が冷却される。言い換えると、第1流路(45a)を流れる冷媒の過冷却度が大きくなる。
【0066】
冷却熱交換器(45)で冷却された冷媒は、膨張弁(33)で低圧まで減圧される。減圧された冷媒は、庫内熱交換器(51)を流れる。庫内熱交換器(51)では、冷媒が庫内空気から吸熱し、蒸発する。この結果、庫内熱交換器(51)は、庫内空気を冷却する。蒸発した冷媒は、圧縮機(31)に吸入され、再び圧縮される。
【0067】
コンテナ本体(2)の庫内空気は、収納空間(5)と庫内流路(20)とを循環する。庫内流路(20)では、庫内空気が庫内熱交換器(51)によって冷却される。これにより、収納空間(5)の庫内空気を冷却でき、庫内空気を所定温度に調節できる。
【0068】
(4)空気調節装置
本実施形態の輸送用冷凍装置(10)は、空気調節装置(100)を備える。
【0069】
空気調節装置(100)は、いわゆるCA(Controlled Atmosphere)輸送を行うために輸送用冷凍装置(10)に設けられる。空気調節装置(100)は、輸送用コンテナ(1)の収納空間(5)の空気の組成を、大気の組成と異なるように調節する。
【0070】
図5に示すように、空気調節装置(100)は、被処理空気が導入される空気流路(A)を備えている。被処理空気は、庫外空気および庫内空気を含む。空気流路(A)は、硬質のパイプで構成されていてもよいし、柔軟なホースで構成されていてもよいし、パイプとホースを組み合わせることで構成されていてもよい。
【0071】
空気流路(A)には、エアポンプ(110)とガス分離モジュール(120)とセンサユニット(140)とが設けられる。エアポンプ(110)は、空気流路(A)の空気を搬送する。ガス分離モジュール(120)は、空気の組成を調節する。ガス分離モジュール(120)は、被処理空気を第1空気と第2空気とに分離する。センサユニット(140)は、空気の組成を測定する。
【0072】
(4-1)空気流路
空気流路(A)は、流入流路(101)、給気流路(102)、排気流路(103)、庫内側排気路(104)、バイパス流路(105)、およびセンサ流路(106)を含む。
【0073】
流入流路(101)は、被処理空気をガス分離モジュール(120)に送るための流路である。流入流路(101)は、第1流入路(101a)と、第2流入路(101b)と、流入幹路(101c)とを含む。
【0074】
第1流入路(101a)は、庫外空気を空気流路(A)に導入するための流路である。第1流入路(101a)の入口端は、庫外空間(6)に開口する。第1流入路(101a)には、第1エアフィルタ(F1)が設けられる。第1エアフィルタ(F1)は、庫外空気に含まれる塵埃や塩分などを捕捉する。第1エアフィルタ(F1)は、例えばメンブレンフィルタで構成される。
【0075】
第2流入路(101b)は、庫内空気を空気流路(A)に導入するための流路である。第2流入路(101b)の入口端は、収納空間(5)に開口する。第2流入路(101b)には、第2エアフィルタ(F2)が設けられる。第2エアフィルタ(F2)は、庫内空気に含まれる塵埃などを捕捉する。第2エアフィルタ(F2)は、例えばメンブレンフィルタで構成される。第2流入路(101b)には、第1水分離器(111)が設けられる。
【0076】
流入幹路(101c)の入口端には、第1流入路(101a)の出口端と、第2流入路(101b)の出口端とが接続される。流入幹路(101c)の出口端には、ガス分離モジュール(120)の第1入口ポート(I1)が接続される。流入幹路(101c)には、空気流れの上流側から下流側に向かって、エアポンプ(110)、凝縮回路(112)、第2水分離器(113)、および水分離モジュール(130)が設けられる。
【0077】
給気流路(102)は、ガス分離モジュール(120)で分離した空気を収納空間(5)へ送るための流路である。給気流路(102)は、第1給気路(102a)と、第2給気路(102b)と、給気幹路(102c)とを含む。
【0078】
第1給気路(102a)は、ガス分離モジュール(120)で分離した第1空気を収納空間(5)へ送るための流路である。第1給気路(102a)の入口端には、ガス分離モジュール(120)の第1出口ポート(O1)が接続される。
【0079】
第2給気路(102b)は、ガス分離モジュール(120)で分離した第2空気を収納空間(5)へ送るための流路である。第2給気路(102b)の入口端には、ガス分離モジュール(120)の第2出口ポート(O2)が接続される。
【0080】
給気幹路(102c)の入口端には、第1給気路(102a)の出口端と、第2給気路(102b)の出口端とが接続される。給気幹路(102c)の出口端は、収納空間(5)に開口する。厳密には、給気幹路(102c)の出口端は、輸送用冷凍装置(10)の庫内流路(20)における庫内ファン(35)の下流側の流路に開口する。
【0081】
排気流路(103)は、ガス分離モジュール(120)で分離した空気を庫外空間(6)へ排出するための流路である。この空気は、第1空気および第2空気の一方、または両方を含む。排気流路(103)は、第1排気路(103a)、第2排気路(103b)、および排気幹路(103c)を含む。
【0082】
第1排気路(103a)は、第1空気を庫外空間(6)へ排出するための流路である。第1排気路(103a)の入口端は、第1給気路(102a)に接続する。第2排気路(103b)は、第2空気を庫外空間(6)へ排出するための流路である。第2排気路(103b)の入口端は、第2給気路(102b)に接続する。排気幹路(103c)の入口端には、第1排気路(103a)の出口端、および第2排気路(103b)の出口端が接続する。排気幹路(103c)の出口端は、庫外空間(6)に開口する。
【0083】
庫内側排気路(104)は、収納空間(5)の空気を庫外空間(6)へ排出するための流路である。庫内側排気路(104)の入口端は、第2流入路(101b)の中途部と接続する。厳密には、庫内側排気路(104)の入口端は、第1切換弁(151)と接続する。庫内側排気路(104)の出口端は、庫外空間(6)に開口する。
【0084】
バイパス流路(105)は、空気がガス分離モジュール(120)をバイパスするように、流入幹路(101c)に接続される。バイパス流路(105)の入口端は、流入幹路(101c)に接続する。厳密には、バイパス流路(105)の入口端は、第2切換弁(152))に接続する。バイパス流路(105)の出口端は、第1給気路(102a)に接続する。
【0085】
センサ流路(106)は、空気をセンサユニット(140)に送るための流路である。センサ流路(106)は、第1センサ路(106a)と第2センサ路(106b)とを含む。第1センサ路(106a)の入口端は、第1給気路(102a)に接続する。第1センサ路(106a)の出口端は、センサユニット(140)に接続する。第2センサ路(106b)の入口端は、センサユニット(140)に接続する。第2センサ路(106b)の出口端は、収納空間(5)に開口する。厳密には、第2センサ路(106b)の出口端は、輸送用冷凍装置(10)の庫内流路(20)における庫内ファン(35)の上流側の流路に開口する。
【0086】
(4-2)エアポンプ
エアポンプ(110)は、空気搬送部の一例である。エアポンプ(110)は、吸込口と吐出口とを有する。エアポンプ(110)は、吸込口から吸い込んだ空気を加圧し、加圧した空気を吐出口から吐出する。エアポンプ(110)は、ガス分離膜(124)に供給される空気を加圧する加圧部の一例である。
【0087】
(4-3-1)ガス分離モジュールの構成
ガス分離モジュール(120)は、被処理空気を互いに組成が異なる第1空気と第2空気とに分離する。図6に示すように、ガス分離モジュール(120)は、第1ケース(121)と、第1隔壁部(122)と、第2隔壁部(123)と、複数のガス分離膜(124)とを有する。第1隔壁部(122)および第2隔壁部(123)は、第1ケース(121)の内部に配置される。複数のガス分離膜(124)は、第1隔壁部(122)と第2隔壁部(123)との間に配置される。
【0088】
第1ケース(121)は、両端が閉塞された円筒状の容器である。第1ケース(121)は、その軸方向に延びている。第1ケース(121)の軸方向の一端部には、第1入口ポート(I1)が接続される。第1ケース(121)の軸方向の他端部には、第1出口ポート(O1)が接続される。第1ケース(121)の周壁部には、第2出口ポート(O2)が接続される。
【0089】
第1隔壁部(122)は、第1ケース(121)の一端部寄りに配置される。第2隔壁部(123)は、第1ケース(121)の他端部寄りに配置される。第1隔壁部(122)および第2隔壁部(123)は、第1ケース(121)の内部空間を軸方向に仕切るための仕切部材である。第1隔壁部(122)および第2隔壁部(123)は、第1ケース(121)を横断するように設けられる。
【0090】
第1ケース(121)の内部には、第1導入室(125)と、第1導出室(126)と、第2導出室(127)とが形成される。第1導入室(125)は、第1ケース(121)の一端部と第1隔壁部(122)との間に形成される。第1導出室(126)は、第1ケース(121)の他端部と第2隔壁部(123)との間に形成される。第2導出室(127)は、第1ケース(121)の周壁部と、第1隔壁部(122)と、第2隔壁部(123)との間の空間のうち、複数のガス分離膜(124)の外側に形成される。
【0091】
ガス分離膜(124)は、樹脂製の中空糸膜によって構成される。言い換えると、ガス分離膜(124)は、中空糸状、あるいは細長い管状に形成される。1つのガス分離膜(124)の外径は1mm以下である。ガス分離膜(124)は、それぞれの膜厚が実質的に同じである。
【0092】
各ガス分離膜(124)は、第1隔壁部(122)と第2隔壁部(123)とに亘るように、第1ケース(121)の軸方向に延びている。ガス分離膜(124)の一端(入口端)は、第1隔壁部(122)を貫通し、第1導入室(125)に開口する。ガス分離膜(124)の他端(出口端)は、第2隔壁部(123)を貫通し、第1導出室(126)に開口する。第1導入室(125)と第1導出室(126)とは、ガス分離膜(124)を介して互いに連通する。第2導出室(127)は、第1導入室(125)、第1導出室(126)、およびガス分離膜(124)の内部と実質的には連通しない。
【0093】
ガス分離膜(124)は、高分子の非多孔膜である。ガス分離膜(124)は、ガス分離膜(124)を透過する分子の速度が物質毎に異なることを利用して、混合ガスに含まれる成分を分離する。
【0094】
ガス分離膜(124)は、窒素の透過速度が、酸素の透過速度と二酸化炭素の透過速度の両方よりも低い特性を有している。言い換えると、ガス分離膜(124)は、窒素の透過率が、酸素の透過率と二酸化炭素の透過率の両方よりも低い特性を有している。
【0095】
(4-3-2)ガス分離モジュールの動作
流入流路(101)の被処理空気は、第1入口ポート(I1)を介して第1導入室(125)へ流入する。第1導入室(125)の空気は、各ガス分離膜(124)の内部を第1導出室(126)へ向かって流れる。ガス分離膜(124)の内部の空気は、その一部がガス分離膜(124)を透過して第2導出室(127)へ移動し、その残部が第1導出室(126)へ流出する。
【0096】
ガス分離膜(124)は、窒素の透過率が酸素および二酸化炭素の透過率よりも低い。言い換えると、空気中の窒素は、酸素および二酸化炭素に比べてガス分離膜(124)を透過しにくい。このため、ガス分離膜(124)の内部を流れる空気は、第1導出室(126)に近付くにつれて、その窒素濃度が上昇し、同時にその酸素濃度および二酸化炭素濃度が低下する。ガス分離膜(124)を流れる空気に含まれる酸素と二酸化炭素は、ガス分離膜(124)を透過して第2導出室(127)へ移動する。
【0097】
第1導出室(126)へ流出した空気中の窒素濃度は、第1導入室(125)の空気中の窒素濃度よりも高くなる。第1導出室(126)へ流出した空気中の酸素濃度および二酸化炭素濃度は、第1導入室(125)の空気中の酸素濃度および二酸化炭素濃度よりも低くなる。第1導出室(126)の空気は、第1空気である。第1空気は、第1出口ポート(O1)を介して第1給気路(102a)に流出する。
【0098】
第2導出室(127)へ流出した空気中の窒素濃度は、第1導入室(125)の空気中の窒素濃度よりも低くなる。第2導出室(127)へ流出した空気中の酸素濃度および二酸化炭素濃度は、第1導入室(125)の空気中の酸素濃度および二酸化炭素濃度よりも高くなる。第2導出室(127)の空気は、第2空気である。第2空気は、第2出口ポート(O2)を介して第2給気路(102b)に流出する。
【0099】
(4-4)第1水分離器、凝縮回路、および第2水分離器
第1水分離器(111)は、第2流入路(101b)のうち第2エアフィルタ(F2)の下流側に設けられる。第1水分離器(111)は、空気中に含まれる液状態の水を除去する。厳密には、第1水分離器(111)は、空気中に含まれる液状態の水を遠心力によって除去する、サイクロン式の気液分離器である。第1水分離器(111)は、ガス分離膜(124)に供給される空気中の水分を減らす減湿部の一例である。
【0100】
凝縮回路(112)は、流入幹路(101c)のうち、エアポンプ(110)と第2水分離器(113)との間に配置される。凝縮回路(112)は、庫内空間(5)に配置される伝熱管によって構成される。凝縮回路(112)を空気が流れると、この空気が庫内空気によって冷却される。この結果、凝縮回路(112)の空気中の水分が凝縮し、凝縮水が生成される。
【0101】
第2水分離器(113)は、流入幹路(101c)のうち、凝縮回路(112)と水分離モジュール(130)の間に配置される。第2水分離器(113)は、空気中に含まれる水分を除去する。厳密には、第2水分離器(113)は、空気中に含まれる液状態の水を遠心力によって除去する、サイクロン式の気液分離器である。第2水分離器(113)は、ガス分離膜(124)に供給される空気中の水分を減らす減湿部の一例である。
【0102】
(4-5-1)水分離モジュールの構成
水分離モジュール(130)は、流入幹路(101c)におけるガス分離膜(124)の上流側に配置される。水分離モジュール(130)は、空気中に含まれる水分を除去する。厳密には、水分離モジュール(130)は、空気中に含まれる水分子を分離する。本例の水分離モジュール(130)は、サンセップ(登録商標)によって構成される、膜式のドライヤである。
【0103】
図7に示すように、水分離モジュール(130)は、第2ケース(131)と、第3隔壁部(132)と、第4隔壁部(133)と、複数の水分離膜(134)とを有する。第3隔壁部(132)および第4隔壁部(133)は、第2ケース(131)の内部に配置される。複数の水分離膜(134)は、第3隔壁部(132)と第4隔壁部(133)との間に配置される。
【0104】
第2ケース(131)は、両端が閉塞された円筒状の容器である。第2ケース(131)は、その軸方向に延びている。第2ケース(131)の軸方向の一端部には、第2入口ポート(I2)が接続される。第2ケース(131)の軸方向の他端部には、第3出口ポート(O3)が接続される。第2ケース(131)の周壁部には、第3入口ポート(I3)と第4出口ポート(O4)とが接続される。第3入口ポート(I3)は、第2ケース(131)の周壁部のうち、該第2ケース(131)の他端部寄りに位置する。第4出口ポート(O4)は、第2ケース(131)の周壁部のうち、該第2ケース(131)の一端部寄りに位置する。
【0105】
図5に示すように、第2入口ポート(I2)は、流入幹路(101c)のうち水分離モジュール(130)の上流側の流路に接続する。第3出口ポート(O3)は、流入幹路(101c)のうちガス分離モジュール(120)の上流側の流路に接続する。
【0106】
空気流路(A)は、導入路(107)および水供給路(108)を有する。導入路(107)および水供給路(108)は、水分離モジュール(130)に接続する。
【0107】
導入路(107)は、比較的湿度の低い空気を水分離モジュール(130)に供給するための流路である。導入路(107)の入口端は、給気幹路(102c)に接続する。導入路(107)の出口端は、水分離モジュール(130)の第3入口ポート(I3)に接続する。
【0108】
水供給路(108)は、水分離モジュール(130)で分離された水を含む空気を収納空間(5)へ送るための流路である。水供給路(108)の入口端は、水分離モジュール(130)の第4出口ポート(O4)に接続する。水供給路(108)の出口端は、給気幹路(102c)における、導入路(107)の入口端よりも下流側に接続する。厳密には、水供給路(108)の出口端は、第5切換弁(155)よりも下流側に接続する。
【0109】
第2ケース(131)の内部には、第2導入室(135)と、第3導出室(136)と、第4導出室(137)とが形成される。第2導入室(135)は、第2ケース(131)の一端部と第3隔壁部(132)との間に形成される。第3導出室(136)は、第2ケース(131)の他端部と第4隔壁部(133)との間に形成される。第4導出室(137)は、第2ケース(131)の周壁部と、第3隔壁部(132)と、第4隔壁部(133)との間の空間のうち、複数の水分離膜(134)の外側に形成される。
【0110】
各水分離膜(134)は、第3隔壁部(132)と第4隔壁部(133)とに亘るように、第2ケース(131)の軸方向に延びている。水分離膜(134)の一端(入口端)は、第3隔壁部(132)を貫通し、第2導入室(135)に開口する。水分離膜(134)の他端(出口端)は、第4隔壁部(133)を貫通し、第3導出室(136)に開口する。第2導入室(135)と第3導出室(136)とは、水分離膜(134)を介して互いに連通する。第4導出室(137)は、第2導入室(135)、第3導出室(136)、および水分離膜(134)の内部と実質的には連通しない。
【0111】
水分離膜(134)は、樹脂製の中空糸膜によって構成される。言い換えると、水分離膜(134)は、中空糸状、あるいは細長い管状に形成される。水分離膜(134)は、フッ素系イオン交換樹脂によって構成される。水分離膜(134)は、空気中の水分子を透過させる特性を有する。
【0112】
水分離膜(134)を有する水分離モジュール(130)は、ガス分離膜(124)に供給される空気中の水分を減らす減湿部の一例である。
【0113】
(4-5-2)水分離モジュールの動作
流入流路(101)の被処理空気は、第2入口ポート(I2)を介して第2導入室(135)へ流入する。第2導入室(135)の空気は、各水分離膜(134)の内部を第3導出室(136)へ向かって流れる。給気幹路(102c)の空気は、第3入口ポート(I3)から第4導出室(137)へ流入する。
【0114】
水分離膜(134)の内部の空気中の水分子は、水分離膜(134)を透過して第4導出室(137)へ移動する。これにより、水分離膜(134)を透過した水分子が第4導出室(137)を流れる空気に付与される。水分離膜(134)の内部の空気は水分子を失うことで除湿され、第3導出室(136)に流出する。第3導出室(136)の空気は、第3出口ポート(O3)を介して流入幹路(101c)に流出し、ガス分離モジュール(120)に供給される。
【0115】
第4導出室(137)で加湿された空気は、第4出口ポート(O4)を介して水供給路(108)に流出する。水供給路(108)の空気は、給気幹路(102c)に流出し、収納空間(5)に送られる。
【0116】
(4-6)センサユニット
センサユニット(140)は、酸素センサ(141)と、二酸化炭素センサ(142)と、センサケース(143)とを備える。
【0117】
酸素センサ(141)は、空気等の混合気体の酸素濃度を計測するジルコニア電流方式のセンサである。二酸化炭素センサ(142)は、空気等の混合気体の二酸化炭素濃度を計測する非分散型赤外線吸収(NDIR:non dispersive infrared)方式のセンサである。酸素センサ(141)及び二酸化炭素センサ(142)は、センサケース(143)に収容される。
【0118】
センサケース(143)は、箱状の部材である。センサケース(143)は、第3エアフィルタ(F3)を備える。第3エアフィルタ(F3)は、庫内空気に含まれる塵埃などを捕捉するためのメンブレンフィルタである。第3エアフィルタ(F3)は、センサケース(143)へ流入する庫内空気を濾過する。
【0119】
(4-7)流路切換機構
空気流路(A)には、空気流れを変更するための流路切換機構が設けられる。流路切換機構は、第1切換弁(151)、第2切換弁(152)、第3切換弁(153)、第4切換弁(154)、および第5切換弁(155)を含む。これらの切換弁(151,152,153,154,155)は、三方弁によって構成される。
【0120】
第1切換弁(151)は、第2流入路(101b)と庫内側排気路(104)との接続部に設けられる。第1切換弁(151)は、庫内空気がガス分離モジュール(120)に供給される第1状態と、庫内空気が庫外空間(6)に排出される第2状態とに切り換わる。具体的には、第1状態の第1切換弁(151)は、収納空間(5)と流入幹路(101c)とを連通させ、収納空間(5)と庫外空間(6)とを遮断する。第2状態の第2切換弁(152)は、収納空間(5)と流入幹路(101c)とを遮断し、収納空間(5)と庫外空間(6)とを連通させる。
【0121】
第2切換弁(152)は、流入幹路(101c)とバイパス流路(105)との接続部に設けられる。言い換えると、第2切換弁(152)は、流入幹路(101c)におけるガス分離膜(124)の上流側に設けられる。第2切換弁(152)は、流入流路(101)の空気がガス分離モジュール(120)に供給される第1状態と、流入流路(101)の空気がガス分離モジュール(120)をバイパスする第2状態とに切り換わる。具体的には、第1状態の第2切換弁(152)は、流入幹路(101c)とガス分離膜(124)とを連通させ、流入幹路(101c)とバイパス流路(105)とを遮断する。第2状態の第2切換弁(152)は、流入幹路(101c)とガス分離膜(124)とを遮断させ、流入幹路(101c)とバイパス流路(105)とを連通させる。
【0122】
第3切換弁(153)は、第1給気路(102a)と第1排気路(103a)の接続部に設けられる。言い換えると、第3切換弁(153)は、第1給気路(102a)における、センサ流路(106)の接続部と第1給気路(102a)の出口端との間に設けられる。第3切換弁(153)は、第1給気路(102a)の空気が収納空間(5)に供給される第1状態と、第1給気路(102a)の空気が庫外空間(6)に排出される第2状態とに切り換わる。具体的には、第1状態の第3切換弁(153)は、第1給気路(102a)と収納空間(5)とを連通させ、第1給気路(102a)と第1排気路(103a)とを遮断する。第2状態の第3切換弁(153)は、第1給気路(102a)と収納空間(5)とを遮断し、第1給気路(102a)と第1排気路(103a)とを連通させる。
【0123】
第4切換弁(154)は、第2給気路(102b)と第2排気路(103b)の接続部に設けられる。言い換えると、第4切換弁(154)は、第2給気路(102b)における、ガス分離モジュール(120)の第2出口ポート(O2)と第2給気路(102b)の出口端との間に設けられる。第4切換弁(154)は、第2給気路(102b)の空気が収納空間(5)に供給される第1状態と、第2給気路(102b)の空気が庫外空間(6)に排出される第2状態とに切り換わる。具体的には、第1状態の第4切換弁(154)は、第2給気路(102b)と収納空間(5)とを連通させ、第2給気路(102b)と第2排気路(103b)とを遮断する。第2状態の第4切換弁(154)は、第2給気路(102b)と収納空間(5)とを遮断し、第2給気路(102b)と第2排気路(103b)とを連通させる。
【0124】
第5切換弁(155)は、給気幹路(102c)と導入路(107)との接続部に設けられる。言い換えると、第5切換弁(155)は、給気幹路(102c)における、水供給路(108)の上流側に設けられる。第5切換弁(155)は、給気流路(102)の空気が水分離モジュール(130)を経由せずに、収納空間(5)に供給される第1状態と、給気流路(102)の空気が水分離モジュール(130)を経由して、収納空間(5)に供給される第2状態とに切り換わる。具体的には、第1状態の第5切換弁(155)は、給気幹路(102c)と導入路(107)とを連通させ、給気幹路(102c)と収納空間(5)とを遮断する。第2状態の第5切換弁(155)は、給気幹路(102c)と導入路(107)とを遮断し、給気幹路(102c)と収納空間(5)とを連通させる。
【0125】
流路切換機構は、空気流路(A)に設けられる空気開閉弁(156)を含む。空気開閉弁(156)は、第1センサ路(106a)に設けられる。空気開閉弁(156)は、例えば電磁弁で構成され、センサ流路(106)を開閉する。
【0126】
(4-8)逆止弁
空気流路(A)には、第1逆止弁(157)および第2逆止弁(158)が設けられる。
【0127】
第1逆止弁(157)は、第1給気路(102a)に設けられる。具体的には、第1逆止弁(157)は、第1給気路(102a)における、ガス分離モジュール(120)の第1出口ポート(O1)とバイパス流路(105)の接続部との間に設けられる。第1逆止弁(157)は、ガス分離モジュール(120)の第1出口ポート(O1)から第1給気路(102a)の出口端へ向かう空気の流れを許容し、それとは逆向きの空気の流れを禁止する。
【0128】
第2逆止弁(158)は、第2給気路(102b)に設けられる。具体的には、第2逆止弁(158)は、第2給気路(102b)における、ガス分離モジュール(120)の第2出口ポート(O2)と第2排気路(103b)の接続部との間に設けられる。第2逆止弁(158)は、ガス分離モジュール(120)の第2出口ポート(O2)から第2給気路(102b)の出口端へ向かう空気の流れを許容し、それとは逆向きの空気の流れを禁止する。
【0129】
(4-9)圧力センサ
空気流路(A)には、第1圧力センサ(161)と、第2圧力センサ(162)と、第3圧力センサ(163)とが設けられる。これらの圧力センサ(161,162,163)は、空気の圧力を検出する。
【0130】
第1圧力センサ(161)は、流入流路(101)における、水分離モジュール(130)の下流側に設けられる。具体的には、第1圧力センサ(161)は、流入幹路(101c)における、水分離モジュール(130)の第1出口ポート(O1)と第2切換弁(152)との間に設けられる。第1圧力センサ(161)は、水分離モジュール(130)の内部の圧力を検出する。具体的には、第1圧力センサ(161)は、第3導出室(136)、あるいは水分離膜(134)の内圧を検出する。
【0131】
第2圧力センサ(162)は、第1給気路(102a)における、ガス分離モジュール(120)の下流側に設けられる。具体的には、第2圧力センサ(162)は、第1給気路(102a)における、ガス分離モジュール(120)の第1出口ポート(O1)と第3切換弁(153)との間に設けられる。第2圧力センサ(162)は、ガス分離モジュール(120)の内部の圧力を検出する。具体的には、第2圧力センサ(162)は、第1導出室(126)の圧力、あるいはガス分離膜(124)の内圧を検出する。
【0132】
第3圧力センサ(163)は、第2給気路(102b)における、ガス分離モジュール(120)の下流側に設けられる。具体的には、第3圧力センサ(163)は、第2給気路(102b)における、ガス分離モジュール(120)の第2出口ポート(O2)と第4切換弁(154)との間に設けられる。第3圧力センサ(163)は、ガス分離モジュール(120)の第2導出室(127)の圧力を検出する。
【0133】
(4-10)圧力調節弁
空気流路(A)には、第1圧力調節弁(171)と、第2圧力調節弁(172)とが設けられる。これらの圧力調節弁(171,172)は、空気の圧力を調節する圧力調節部の一例である。
【0134】
第1圧力調節弁(171)は、流入流路(101)における、水分離モジュール(130)の下流側に設けられる。具体的には、第1圧力調節弁(171)は、流入幹路(101c)における、第1圧力センサ(161)と第2切換弁(152)との間に設けられる。第1圧力調節弁(171)は、水分離モジュール(130)の内部の圧力を調節する。 具体的には、第1圧力調節弁(171)は、水分離モジュール(130)の第3導出室(136)の圧力、あるいは水分離膜(134)の内圧を調節する。例えば、第1圧力調節弁(171)は、第1圧力センサ(161)の検出圧力に基づいて開度が調節されてもよい。第1圧力調節弁(171)が、水分離モジュール(130)内部の圧力を調節することで、水分離モジュール(130)における除湿を適切におこなうことができる。
【0135】
第2圧力調節弁(172)は、第1給気路(102a)における、ガス分離モジュール(120)の下流側に設けられる。具体的には、第2圧力調節弁(172)は、第1給気路(102a)における、第2圧力センサ(162)と第3切換弁(153)との間に設けられる。第2圧力調節弁(172)は、ガス分離モジュール(120)の内部の圧力を調節する。具体的には、第2圧力調節弁(172)は、ガス分離モジュール(120)のの第1導出室(125)の圧力、あるいはガス分離膜(124)の内圧を調節する。例えば、第2圧力調節弁(172)は、第2圧力センサ(162)の検出圧力に基づいて開度が調節されてもよい。第2圧力調節弁(172)が、ガス分離モジュール(120)の内部の圧力を調節することで、ガス分離モジュール(120)における分離を適切におこなうことができる。
【0136】
(4-11)第2制御ユニット
図4および図5に示すように、空気調節装置(100)は、第2制御ユニット(190)を備える。第2制御ユニット(190)は、通信線(W)を介して第1制御ユニット(90)に接続される。通信線(W)は、第1制御ユニット(90)と第2制御ユニット(190)との間で、信号や情報の授受を相互に行う。通信線(W)は有線であるが、無線であってもよい。
【0137】
第2制御ユニット(190)は、第2制御部(191)を含む。第2制御部(191)は、本開示の制御部の一例である。
【0138】
第2制御部(191)は、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0139】
第2制御部(191)は、第1圧力センサ(161)、第2圧力センサ(162)、および第3圧力センサ(163)で検出した信号を受信する。第2制御部(191)は、エアポンプ(110)、流路切換機構、および圧力調節弁(171,172)を制御する。具体的には、第2制御部(191)は、エアポンプ(110)の運転を制御する。第2制御部(191)は、各切換弁(151,152,153,154,155)を第1状態と第2状態とに切り換える。第2制御部(191)は、空気開閉弁(156)を開閉する。第2制御部(191)は、圧力調節弁(171,172)の開度を調節する。
【0140】
(4-12)空気調節装置の運転動作
空気調節装置(100)の運転動作を説明する。空気調節装置(100)の運転は、以下に説明する第1~第5運転を含む。本例において、第1~第5運転では、第2制御部(191)が第5切換弁(155)を第1状態とする。このため、これらの運転では、水分離モジュール(130)が空気中の水分を除去する動作を行う。
【0141】
(4-12-1)第1運転
第1運転は、庫外空気と庫内空気の両方を被処理空気とし、第1空気を収納空間(5)へ供給して第2空気を庫外空間(6)へ排出する運転である。この第1運転は、収納空間(5)内の庫内空気の酸素濃度を引き下げるために行われる。
【0142】
図8に示すように、第1運転において、第2制御部(191)は、第1切換弁(151)を第1状態に、第2切換弁(152)を第1状態に、第3切換弁(153)を第1状態に、第4切換弁(154)を第2状態に、第5切換弁(155)を第1状態に、空気開閉弁(156)を閉状態に、それぞれ設定する。
【0143】
第1運転において、第2流入路(101b)を流れる庫内空気は、第1水分離器(111)を流れる。第1水分離器(111)は、庫内空気中の水(液体)を分離する。第1水分離器(111)を通過した空気と、第1流入路(101a)を流れる庫外空気とは、流入幹路(101c)へ流入して混合した後に、被処理空気としてエアポンプ(110)に吸い込まれる。エアポンプ(110)は、吸い込んだ空気を加圧して吐出する。エアポンプ(110)から吐出された空気は、凝縮回路(112)によって冷却された後、第2水分離器(113)を流れる。第2水分離器(113)は、被処理空気が凝縮回路(112)を通過する間に凝縮した水を、被処理空気から分離する。
【0144】
第2水分離器(113)を通過した空気は、水分離モジュール(130)の水分離膜(134)を流れることで除湿される。水分離モジュール(130)で除湿された被処理空気は、ガス分離モジュール(120)へ流入する。ガス分離モジュール(120)では、被処理空気が第1空気と第2空気に分離される。
【0145】
被処理空気よりも酸素濃度が低い第1空気は、第1給気路(102a)および導入路(107)を順に流れ、水分離モジュール(130)の第3導出室(136)を流れる。第3導出室(136)では、水分離膜(134)を透過した水分子が第1空気に付与される。水分離モジュール(130)で加湿された第1空気は、水供給路(108)および給気幹路(102c)を順に流れ、庫内空間(5)に供給される。
【0146】
被処理空気よりも酸素濃度が高い第2空気は、第2給気路(102b)、第2排気路(103b)、および排気幹路(103c)を順に流れ、庫外空間(6)へ排出される。
【0147】
第1運転において、第1エアフィルタ(F1)を通って第1流入路(101a)へ流入する庫外空気の流量は、庫外空間(6)へ排出される第2空気の流量よりも多い。その結果、収納空間(5)の気圧は、輸送用コンテナ(1)の外部の気圧(つまり、大気圧)よりも高くなる。これにより、収納空間(5)は、陽圧に保たれる。
【0148】
(4-12-2)第2運転
第2運転は、庫外空気を被処理空気とし、第1空気を庫内空間(5)へ供給して第2空気を庫外空間(6)へ排出する運転である。この第2運転は、収納空間(5)内の庫内空気の酸素濃度を引き下げるために行われる。
【0149】
図9に示すように、第2運転において、第2制御部(191)は、第1切換弁(151)を第2状態に、第2切換弁(152)を第1状態に、第3切換弁(153)を第1状態に、第4切換弁(154)を第2状態に、第5切換弁(155)を第1状態に、空気開閉弁(156)を閉状態に、それぞれ設定する。
【0150】
第1流入路(101a)を流れる庫外空気は、エアポンプ(110)で加圧された後、凝縮回路(112)および第2水分離器(113)を通過する。第2水分離器(113)を通過した空気は、水分離モジュール(130)の水分離膜(134)を流れることで除湿される。水分離モジュール(130)で除湿された被処理空気は、ガス分離モジュール(120)へ流入する。ガス分離モジュール(120)では、被処理空気が第1空気と第2空気に分離される。被処理空気よりも酸素濃度が低い第1空気は、水分離モジュール(130)で加湿された後、水供給路(108)および給気幹路(102c)を順に流れ、庫内空間(5)に供給される。
【0151】
被処理空気よりも酸素濃度が高い第2空気は、第2給気路(102b)、第2排気路(103b)、および排気幹路(103c)を順に流れ、庫外空間(6)へ排出される。
【0152】
第2運転において、収納空間(5)は、陽圧に保たれる。そのため、庫内空間(5)の空気は、第2流入路(101b)および庫内側排気路(104)を流れ庫外空間(6)に排出される。その結果、収納空間(5)の空気が第1空気に、次第に入れ替わる。
【0153】
(4-12-3)第3運転
第3運転は、庫外空気と庫内空気の両方を被処理空気とし、第1空気を庫外へ排出して第2空気を庫内へ供給する運転である。この第3運転は、収納空間(5)内の庫内空気の酸素濃度を引き上げるために行われる。
【0154】
図10に示すように、第3運転において、第2制御部(191)は、第1切換弁(151)を第1状態に、第2切換弁(152)を第1状態に、第3切換弁(153)を第2状態に、第4切換弁(154)を第1状態に、第5切換弁(155)を第1状態に、空気開閉弁(156)を閉状態に、それぞれ設定する。
【0155】
第3運転において、第1流入路(101a)を流れる庫外空気と、第2流入路(101b)を流れる庫内空気とが混合した空気(被処理空気)は、エアポンプ(110)で加圧された後、凝縮回路(112)および第2水分離器(113)を通過する。第2水分離器(113)を通過した空気は、水分離モジュール(130)の水分離膜(134)を流れることで除湿される。水分離モジュール(130)で除湿された被処理空気は、ガス分離モジュール(120)へ流入する。ガス分離モジュール(120)では、被処理空気が第1空気と第2空気に分離される。被処理空気よりも酸素濃度が低い第1空気は、第1給気路(102a)、第1排気路(103a)、および排気幹路(103c)を順に流れ、庫外空間(6)へ排出される。
【0156】
被処理空気よりも酸素濃度が高い第2空気は、第2給気路(102b)および導入路(107)を順に流れ、水分離モジュール(130)の第3導出室(136)を流れる。第3導出室(136)では、水分離膜(134)を透過した水分子が第2空気に付与される。水分離モジュール(130)で加湿された第2空気は、水供給路(108)および給気幹路(102c)を順に流れ、庫内空間(5)に供給される。
【0157】
第3運転において、収納空間(5)は、陽圧に保たれる。
【0158】
(4-12-4)第4運転
第4運転は、庫外空気を被処理空気とし、第1空気を庫外へ排出して第2空気を庫内へ供給する運転である。この第4運転は、収納空間(5)内の庫内空気の酸素濃度を引き上げるために行われる。
【0159】
図11に示すように、第4運転において、第2制御部(191)は、第1切換弁(151)を第2状態に、第2切換弁(152)を第1状態に、第3切換弁(153)を第2状態に、第4切換弁(154)を第1状態に、第5切換弁(155)を第1状態に、空気開閉弁(156)を閉状態に、それぞれ設定する。
【0160】
第1流入路(101a)を流れる庫外空気(被処理空気)は、エアポンプ(110)で加圧された後、凝縮回路(112)および第2水分離器(113)を通過する。第2水分離器(113)を通過した空気は、水分離モジュール(130)の水分離膜(134)を流れることで、除湿される。水分離モジュール(130)で除湿された被処理空気は、ガス分離モジュール(120)へ流入する。ガス分離モジュール(120)では、被処理空気が第1空気と第2空気に分離される。被処理空気よりも酸素濃度が高い第2空気は、水分離モジュール(130)で加湿された後、水供給路(108)および給気幹路(102c)を順に流れ、庫内空間(5)に供給される。
【0161】
被処理空気よりも酸素濃度が低い第1空気は、第2給気路(102b)、第2排気路(103b)、および排気幹路(103c)を順に流れ、庫外空間(6)へ排出される。
【0162】
第4運転において、収納空間(5)は、陽圧に保たれる。そのため、庫内空間(5)の空気は、第2流入路(101b)および庫内側排気路(104)を流れ庫外空間(6)に排出される。その結果、収納空間(5)の空気が第2空気に、次第に入れ替わる。
【0163】
(4-12-5)第5運転
第5運転は、庫外空気をそのまま庫内へ供給する運転である。この第5運転は、収納空間(5)内の庫内空気の酸素濃度を引き上げるために行われる。
【0164】
図12に示すように、第5運転において、第2制御部(191)は、第1切換弁(151)を第2状態に、第2切換弁(152)を第2状態に、第3切換弁(153)を第1状態に、第4切換弁(154)を第2状態に、第5切換弁(155)を第1状態に、空気開閉弁(156)を閉状態に、それぞれ設定する。
【0165】
第1流入路(101a)を流れる庫外空気は、エアポンプ(110)で加圧された後、凝縮回路(112)および第2水分離器(113)を通過する。第2水分離器(113)を通過した空気は、水分離モジュール(130)の水分離膜(134)を流れることで、除湿される。水分離モジュール(130)で除湿された空気は、ガス分離モジュール(120)をバイパスするように、バイパス流路(105)を流れる。バイパス流路(105)を流出した空気は、第1給気路(102a)および導入路(107)を順に流れ、水分離モジュール(130)の第3導出室(136)を流れる。第3導出室(136)では、水分離膜(134)を透過した水分子が空気に付与される。水分離モジュール(130)で加湿された空気は、水供給路(108)および給気幹路(102c)を順に流れ、庫内空間(5)に供給される。
【0166】
第5運転において、収納空間(5)は、陽圧に保たれる。そのため、庫内空間(5)の空気は、第2流入路(101b)および庫内側排気路(104)を流れ庫外空間(6)に排出される。その結果、収納空間(5)の空気が庫外空気に、次第に入れ替わる。
【0167】
(5-1)ガス分離膜の性能低下について
空気調節装置(100)を長期間に亘って停止すると、ガス分離モジュール(120)のガス分離膜(124)の性能が低下してしまう。具体的には、ガス分離膜(124)は、ガスを分離するための多数の細孔を有する。空気調節装置(100)の低下に伴い長期間に亘ってガス分離モジュール(120)が使用されない場合、ガス分離膜(124)が収縮し、細孔のサイズが小さくなってしまう。この結果、ガス分離膜(124)による酸素や二酸化炭素の透過率が低下し、空気調節装置(100)によるガス分離の性能が低下してしまうという問題があった。
【0168】
(5-2)予備運転の開始判定
本実施形態の空気調節装置(100)は、上記の課題を解決するために第1動作を実行する。具体的には、第2制御部(191)は、空気調節装置(100)の所定期間の停止に伴うガス分離膜(124)の性能の低下を抑制する第1動作を実行する。本実施形態の第1動作は、被処理空気をガス分離膜(124)に供給する予備運転を含む。第2制御部(191)は、空気調節装置(100)の停止から所定期間が経過すると、予備運転を開始させる。
【0169】
本実施形態の予備運転に係る制御について図13を参照しながら詳細に説明する。
【0170】
ステップST1において、第2制御部(191)が通常運転の運転指令を受信すると、ステップST2において、第2制御部(191)は、通常運転を実行するように空気調節装置(100)を制御する。ここで、通常運転は、ガス分離モジュール(120)によって被処理空気を分離する運転であり、上述した第1運転、第2運転、第3運転、および第4運転を含む。通常運転は、収納空間(5)の空気の組成を調整することを目的としている。
【0171】
ステップST3において、第2制御部(191)が通常運転の停止指令を受信すると、ステップST4において、第2制御部(191)は、空気調節装置(100)を停止させる。
【0172】
ステップST5において、空気調節装置(100)の運転が停止してから所定時間T1が経過すると、ステップST6において、第2制御部(191)が予備運転を実行させる。ここでいう運転は、通常運転、および予備運転を含む。所定時間T1は、空気調節装置(100)の停止、あるいはガス分離膜(124)の未使用に伴うガス分離膜(124)の性能の低下を考慮して設定される。所定時間T1は例えば数日から数十日に設定される。
【0173】
ステップST7において、予備運転の停止条件が成立すると、ステップST8において、第2制御部(191)は予備運転を停止させる。本例の予備運転の停止条件は、予備運転が開始してから所定時間T2が経過することである。
【0174】
(5-3)予備運転
予備運転は、ガス分離膜(124)の被処理空気を供給する運転である。予備運転は、空気調節装置(100)の所定期間の停止に伴うガス分離膜(124)の性能の低下を抑制する目的でおこなわれる運転である。したがって、予備運転中の空気調節装置(100)は、上述した第1運転、第2運転、第3運転、および第4運転と同様の動作を行ってもよい。本実施形態の予備運転は、ユーザなどの人の操作に伴う運転指令により実行されない点で、上述した通常運転と異なる。
【0175】
予備運転において、例えば第1運転と同様の動作(図8を参照)が行われると、被処理空気がガス分離モジュール(120)を流れる。ガス分離モジュール(120)では、第1導入室(125)に流入した被処理空気が、各ガス分離膜(124)を流れる。被処理空気がガス分離膜(124)の内部を流れると、ガス分離膜(124)が拡張し、各細孔のサイズが拡大する。これにより、ガス分離膜(124)による酸素や二酸化炭素の分離性能が回復する。
【0176】
エアポンプ(110)は、ガス分離膜(124)に供給される空気を加圧する加圧部を構成する。具体的には、エアポンプ(110)は、予備運転におけるガス分離膜(124)の内圧が、上述した通常運転におけるガス分離膜(124)の内圧P1以上となるように、被処理空気を加圧する。エアポンプ(110)は、ガス分離膜(124)の内圧が、その耐圧P2を越えないように被処理空気を加圧する。ガス分離膜(124)の内圧は、第2圧力調節弁(172)によって調整することができる。具体的には、第2制御部(191)は、第2圧力センサ(162)の検出圧力が、P1以上P2未満となるように、第2圧力調節弁(172)の開度を制御する。予備運転時のガス分離膜(124)の内圧は、例えば700[kPa]に維持される。
【0177】
以上のように、ガス分離膜(124)に供給される被処理空気を加圧することで、ガス分離膜(124)が拡張し易くなり、細孔のサイズが広がりやすくなる。この結果、ガス分離膜(124)の性能の回復効果が向上する。
【0178】
空気調節装置(100)は、減湿部として、第1水分離膜(134)、第2水分離膜(134)、および水分離モジュール(130)を有する。これらの減湿部は、ガス分離膜(124)に供給される空気中の水分を減らす。ここで、ガス分離膜(124)に供給される空気中の水分がガス分離膜(124)に付着すると、この水分が細孔を塞いでしまい、ガス分離膜(124)の分離性能が低下してしまうことがある。これに対し、減湿部として、第1水分離膜(134)、第2水分離膜(134)、および水分離モジュール(130)が空気を除湿することで、水分がガス分離膜(124)に付着することに起因して、ガス分離膜(124)の性能が低下してしまうことを抑制できる。なお、減湿部は、第1水分離器(111)、第2水分離器(113)、および水分離モジュール(130)のいずれか1つ、または2つであってもよいし、他の方式の減湿部であってよい。
【0179】
上述したように、第2制御部(191)は、予備運転を所定時間T2の間継続させる。所定時間T2は、例えば24時間に設定される。このように、予備運転を所定時間T2だけ継続することで、ガス分離膜(124)の細孔のサイズを十分に広げることができる。
【0180】
(6)実施形態の特徴
(6-1)
上述した実施形態の空気調節装置(100)は、空気調節装置(100)の所定期間の停止に伴うガス分離膜(124)の性能の低下を抑制する第1動作を実行させる第2制御部(191)を備える。このため、ガス分離膜(124)が収縮してその性能が低下した場合にも、第1動作により、ガス分離膜(124)の性能の低下を抑制できる。
【0181】
(6-2)
第1動作は、被処理空気をガス分離膜(124)に供給する予備運転を含む。この予備運転において、被処理空気をガス分離膜(124)に供給すると、ガス分離膜(124)を拡張させることができ、その細孔のサイズを拡大できる。その結果、ガス分離膜(124)の性能を容易且つ速やかに回復できる。
【0182】
(6-3)
第2制御部(191)は、空気調節装置(100)の停止から所定時間が経過すると、予備運転を開始させる。このため、空気調節装置(100)の停止に伴いガス分離膜(124)の性能が低下したタイミングに併せて、ガス分離膜(124)の性能を確実に回復させることができる。
【0183】
(6-4)
空気調節装置(100)は、予備運転において、ガス分離膜(124)に供給される空気を加圧するエアポンプ(110)を備えている。これにより、ガス分離膜(124)を拡張させ易くなるので、ガス分離膜(124)の性能を速やか且つ確実に回復させることができる。
【0184】
(6-5)
空気調節装置(100)は、予備運転において、ガス分離膜(124)に供給される空気の水分を減らす減湿部(111,113,130)を備える。これにより、水分がガス分離膜(124)の細孔を塞ぐことを抑制できるので、ガス分離膜(124)の性能の低下を抑制できる。
【0185】
(7)実施形態の変形例
上述した実施形態においては、以下のような変形例の構成としてもよい。なお、以下の説明では、原則として、実施形態と異なる点について説明する。
【0186】
(7-1)変形例1
変形例1の第2制御部(191)は、通常運転の開始時より所定時間前に予備運転を開始させる。この制御について、図14を参照しながら説明する。
【0187】
ステップST11において、第2制御部(191)は、通常運転の開始時刻を決定する。第2制御部(191)は、通常運転の開始時刻を推定してもよい。この場合、第2制御部(191)は、例えば輸送用コンテナ(1)の輸送ルートに基づき通常運転の開始時刻を推定する。例えば輸送用コンテナ(1)、あるいは輸送用コンテナ(1)を搬送する船舶などにGPS(Global Positioning System、全地球測位システム)を設けることで、第2制御部(191)は、輸送用コンテナ(1)の輸送用ルートを取得できる。第2制御部(191)は、例えば輸送用コンテナ(1)が港に到着したことをGPSに基づき特定し、このタイミングに併せて通常運転の開始時刻を推定する。輸送用コンテナ(1)が港に到着することで、コンテナ本体(2)に次の生鮮物が搬送され、収納空間(5)の空気の冷却、及びこの空気の組成の調整が必要になるためである。
【0188】
なお、通常運転の開始時刻は、ユーザによって予め決定される入力値であってもよい。この場合、ユーザは操作部(92)により通常運転の開始時刻を決定する。第2制御部(191)は、操作部(92)を介して入力された時刻を通常運転の開始時刻として決定する。
【0189】
ステップST12において、第2制御部(191)は、予備運転の開始時刻を決定する。予備運転の開始時刻は、通常運転の開始時刻から、予備運転の実行時間(例えば上述したT2)を差し引いた時刻である。
【0190】
ステップST13において、第2制御部(191)は、ステップST12において求めた開始時刻から、空気調節装置(100)の予備運転を実行させる。その結果、上述した実施形態と同様、被処理空気がガス分離膜(124)に供給される。このため、ガス分離膜(124)の性能を回復させることができる。
【0191】
予備運転が終了すると、ステップST14において、第2制御部(191)は通常運転を実行させる。具体的には、通常運転では、例えば上述した第1運転、第2運転、第3運転、または第4運転が実行される。通常運転の直前には、予備運転が実行され、ガス分離膜(124)の性能が回復している。このため、通常運転では、ガス分離膜(124)によるガス分離の性能を十分に発揮させることができる。
【0192】
なお、変形例1において、予備運転と通常運転とを連続的に実行してもよい。この場合、予備運転は、通常運転と同じ動作を行うのが好ましい。具体的には、通常運転において、第2制御部(191)は、空気調節装置(100)の第1運転を実行させるとする。この場合、第2制御部(191)は、予備運転においても、空気調節装置(100)の第1運転を実行させ、ガス分離膜(124)の性能を回復させる。厳密にいうと、第2制御部(191)は、予備運転としての第1運転の実行時間が経過した後、通常運転としての第1運転を連続的に実行させる。これにより、空気調節装置(100)を停止させることなく、通常運転の開始時刻からガス分離膜(124)の性能を十分に得ることができる。
【0193】
(7-2)変形例2
図15に示すように、変形例2に係る空気調節装置(100)は、実施形態に係る水分離モジュール(130)、導入路(107)、水供給路(108)、および第5切換弁(155)を有していない。変形例2の空気調節装置(100)は、実施形態と同様にして、第1運転、第2運転、第3運転、第4運転、および第5運転を行う。変形例2では、給気幹路(102c)の空気が導入路(107)および水供給路(108)を介さず、直接的に収納空間(5)に送られる点が、実施形態と異なる。
【0194】
変形例2の空気調節装置(100)の予備運転では、図16に示すように、ガス分離モジュール(120)で分離された第1空気および第2空気が庫外空間(6)に排出される。言い換えると、変形例2の排気流路(103)は、ガス分離膜(124)で分離された第1空気および第2空気を庫外空間(6)に排出する。
【0195】
具体的には、予備運転において、第2制御部(191)は、第3切換弁(153)を第2状態に、第4切換弁(154)を第2状態にそれぞれ設定する。第2制御部(191)は、例えば第2切換弁(152)を第1状態に、空気開閉弁(156)を閉状態にそれぞれ設定する。例えば第2制御部(191)は、第1切換弁(151)を第1状態に設定する。第2制御部(191)は、第1切換弁(151)を第2状態に設定してもよい。
【0196】
予備運転において、第1水分離器(111)で除湿された空気は、ガス分離モジュール(120)のガス分離膜(124)に供給される。これにより、ガス分離膜(124)の性能が回復する。ガス分離モジュール(120)で分離された第1空気は、第1給気路(102a)および第1排気路(103a)を順に流れ、排気幹路(103c)に流出する。ガス分離モジュール(120)で分離された第2空気は、第2給気路(102b)および第2排気路(103b)を順に流れ、排気幹路(103c)に流出する。排気幹路(103c)で合流した空気は、庫外空間(6)へ排出される。予備運転において、第2制御部(191)が第1切換弁(151)を第1状態に設定した場合、第2水分離器(113)で除湿された空気も、ガス分離モジュール(120)のガス分離膜(124)に供給される。これにより、ガス分離膜(124)の性能が回復する。
【0197】
以上のように、変形例2では、予備運転において、ガス分離膜(124)で分離された第1空気と第2空気とが庫外空間(6)へ排出される。言い換えると、予備運転では、第1空気および第2空気が庫内空間である収納空間(5)へ供給されない。したがって、予備運転を実行することに伴い収納空間(5)の空気の組成が変化してしまうことを回避できる。
【0198】
変形例2の空気流路(A)において、第2流入路(101b)を省略し、収納空間(5)を流入流路(101)に接続せず、収納空間(5)を庫内側排気路(104)を介して庫外空間(6)に接続してもよい。この場合、庫内側排気路(104)には、開閉弁が設けられる。第2制御部(191)が開閉弁の開閉状態を設定することで、収納空間(5)の庫内空気を庫外空間(6)へ排出するかしないかを切り換えることができる。予備運転において、第2制御部(191)が開閉弁を閉状態に設定すると、庫内空気が庫内排気路(104)を介して庫外空間(6)へ排出されない。このため、庫内空間である収納空間(5)の空気の組成が変化してしまうことを抑制できる。加えて、収納空間(5)の圧力が変化してしまうことを抑制できる。
【0199】
(7-3)変形例3
図17に示すように、変形例3の空気調節装置(100)は、空気流路(A)に加熱部(175)が設けられる。加熱部(175)は、予備運転において、ガス分離膜(124)に供給される空気を加熱する。本例の加熱部(175)は、電気式のヒータによって構成される。加熱部(175)は、流入幹路(101c)に設けられる。具体的には、加熱部(175)は、水分離モジュール(130)とガス分離モジュール(120)の間に設けられる。
【0200】
変形例3の予備運転では、加熱部(175)によって所定温度に加熱された被処理空気が、ガス分離膜(124)に供給される。被処理空気を加熱することで、空気中の成分がガス分離膜(124)の回復性能を向上できる。これは、空気の温度が高くなることで、ガス分離膜(124)にけるガスの拡散係数が増大すること、および空気の温度が高くなることで、空気中の相対湿度が下がることに起因すると推察できる。
【0201】
なお、加熱部(175)は、冷凍装置(10)に設けられるとともに、排熱によって空気を加熱する機器であってもよい。この機器としては、例えば圧縮機(31)がある。
【0202】
(7-4)変形例4
変形例4の第2制御部(191)は、第1動作として、空気調節装置(100)の運転を人に促すための動作を実行する。この動作に関する制御について、図18を参照しながら詳細に説明する。
【0203】
ステップST21において、第2制御部(191)は、ガス分離膜(124)の性能が低下していることを示す第1条件が成立するか否かを判定する。ここで、第1条件は、空気調節装置(100)が停止してから所定時間が経過したこと、ガス分離膜(124)が使用されてない時間が所定時間以上続いたことが挙げられる。これらの条件が成立する場合、ガス分離膜(124)の細孔のサイズが小さくなってしまうためである。
【0204】
ステップST21において第1条件が成立すると、ステップS22において、第2制御部(191)は、空気調節装置(100)の運転を人に促すための第1信号を出力する。第2制御部(191)から出力された第1信号は、通信線(W)を経由して第1制御ユニット(90)の第1制御部(93)に入力される。
【0205】
第1信号を受信した第1制御部(93)は、空気調節装置(100)の運転を人に促すように表示部(91)を制御する。厳密には、第1信号を受信した第1制御部(93)は、通常運転を人に促すように表示部(91)を制御する。表示部(91)は、空気調節装置(100)の運転を人に促すことを人に知らせる第1報知部の一例である。ステップS23において、表示部(91)は、文字、図形、記号、サインなどによって、空気調節装置(100)の通常運転を人に促す。表示部(91)を確認した人は、操作部(92)を操作することにより、空気調節装置(100)の通常運転を実行させる。
【0206】
変形例4の通常運転 においては、例えば第1運転、第2運転、第3運転、または第4運転が実行される。また、変形例4の通常運転において、第5運転が実行されてもよい。あるいは、変形例4の運転において、変形例2に記載の予備運転と同様の運転が実行されてもよい。あるいは、変形例4の運転において、変形例3に記載の予備運転と同様の運転が実行されてもよい。
【0207】
第1報知部は、光によって空気調節装置(100)の通常運転を促すLEDなどの発光部であってもよい。第1報知部は、声などの音によって空気調節装置(100)の通常運転を促す音発生部であってもよい。
【0208】
表示部(91)などの第1報知部は、第2制御ユニット(190)に設けられてもよい。この場合、ステップST21において第1条件が成立すると、空気調節装置(100)の表示部(91)が、空気調節装置(100)の通常運転を人に促す。
【0209】
(7-5)変形例5
変形例5の第2制御部(191)は、ガス分離膜(124)の性能に関する情報を出力する。この動作に関する制御について、図19を参照しながら詳細に説明する。図19に係る制御は、上述した実施形態の空気調節装置(100)に付加される。言い換えると、変形例5の空気調節装置(100)は、第1動作に加えて、ガス分離膜(124)の性能に関する情報を出力する動作(第2動作)を行う。
【0210】
ステップST31において、第2制御部(191)は、空気調節装置(100)の予備運転を実行させる。ステップST32において、第2制御部(191)は、ガス分離膜(124)の性能に関する情報を推定する。具体的には、第2制御部(191)は、ガス分離膜(124)の性能が回復するまでの時間を推定する。
【0211】
第2制御部(191)は、ガス分離膜(124)の内圧の速度変化と、予備運転の経過時間との関係を示すデータを記憶している。予備運転の開始直後には、ガス分離膜(124)の細孔の径が小さいのに対し、予備運転を実行することに伴い細孔の径が徐々に大きくなる。予備運転が進むと、細孔が十分に大きくなり、その細孔の径の変化速度が小さくなる。このため、ガス分離膜(124)の内圧の減少変化量は、予備運転の開始直後は比較的大きくなり、その後、次第に小さくなる。つまり、予備運転の開始直後は、ガス分離膜(124)の内圧の減少速度が比較的大きく、その後、この減少速度が徐々に小さくなっていく。したがって、あるタイミングでのガス分離膜(124)の内圧の減少速度がわかれば、その後、どれくらいの時間が経過すればガス分離膜(124)の性能が回復するかを推定できる。
【0212】
具体的には、ステップST32において、第2制御部(191)は、予備運転を開始した後の所定のタイミングにおいて、第2圧力センサ(162)の圧力検出値の減少速度を求める。第2制御部(191)は、この減少速度と、上記のデータとに基づいて、ガス分離膜(124)の性能が回復するまでの時間や時刻を推定する。なお、ステップST32において、ガス分離膜(124)の内圧の減少速度を求める際には、基本的には、第2制御部(191)は、第2圧力調節弁(172)の開度の調節は行わない。
【0213】
ステップS33において、第2制御部(191)は、推定した時間や時刻に関する情報を、ガス分離膜(124)の性能に関する情報として出力する。第2制御部(191)は、この情報を第1制御ユニット(90)の第1制御部(93)に出力する。この情報を受信した第1制御部(93)は、この時間や時刻を人に知らせるように表示部(91)を制御する。表示部(91)は、ガス分離膜(124)の性能に関する情報を人に知らせる第2報知部の一例である。ステップS34において、表示部(91)は、文字、図形、記号、サインなどによって、ガス分離膜(124)の性能が回復するまでの時間や時刻を表示する。このようにして、人は、ガス分離膜(124)の性能が回復するまでの時間や時刻を、表示部(91)を介して知ることできる。したがって、空気調節装置(100)の信頼性を確保できる。
【0214】
第2報知部は、光によってガス分離膜(124)の性能に関する情報を人に知らせる発光部であってもよい。第2報知部は、声などの音によってガス分離膜(124)の性能に関する情報を人に知らせる音発生部であってもよい。
【0215】
表示部(91)などの第2報知部は、第2制御ユニット(190)に設けられてもよい。この場合、ステップST27では、空気調節装置(100)の表示部(91)が、ガス分離膜(124)の性能に関する情報を人に知らせる。
【0216】
本例では、ガス分離膜(124)の性能に関する情報が、ガス分離膜(124)の性能が回復するまでの時間や時刻であるが、この情報は、ガス分離膜(124)の性能そのものであってもよいし、ガス分離膜(124)の性能の低下の度合いであってもよい。
【0217】
(7-6)変形例6
図20に示す変形例6の空気調節装置(100)は、実施形態に係る第5切換弁(155)が省略されている。変形例6では、庫内へ供給される空気が、導入路(107)および水供給路(108)を必ず流れて、収納空間(5)へ送られる。言い換えると、変形例6では、導入路(107)及び水供給路(108)が、給気幹路(102c)の一部を構成している。
【0218】
(8)参考例
参考例の空気調節装置(100)は、実施形態および変形例1~4に係る第1動作を行わない。言い換えると、参考例の空気調節装置(100)は、空気調節装置(100)の所定期間の停止に伴うガス分離膜(124)の性能の低下を抑制する動作を行わない。参考例の空気調節装置(100)は、変形例5に係る第2動作を行う。これにより、人は、ガス分離膜(124)の性能に関する情報を知ることができる。したがって、空気調節装置(100)の信頼性を確保できる。
【0219】
(9)その他の実施形態
加圧部は、エアポンプ(110)以外であってもよく、空気を圧縮する圧縮機や、空気を搬送するファンであってもよい。
【0220】
実施形態の空気調節装置(100)において、第5切換弁(155)を省略してもよい。
【0221】
空気調節装置(100)、輸送用冷凍装置(10)、または輸送用コンテナは、バッテリーなどの充電式の補助電源を有していてもよい。補助電源は、空気調節装置に電力を供給可能に構成される。空気調節装置(100)の電源がOFF状態であり、空気調節装置(100)が停止状態であるときにも、補助電源から空気調節装置(100)へ電力を供給できる。これにより、空気調節装置(100)が停止状態であるときであっても、空気調節装置(100)は予備運転を確実に実行できる。
【0222】
輸送用コンテナ(1)は、陸上輸送に用いられてもよい。この場合、輸送用コンテナ(1)は、車両などの陸上輸送体によって搬送される。具体的には、輸送用コンテナ(1)は、トレーラに搭載される。
【0223】
空気調節装置(100)は、定置式の倉庫において庫内の空気の組成を調節するために用いられてもよい。例えば、空気調節装置(100)は、果物、野菜、花卉などの生鮮物を保管するための倉庫に備えられてもよい。 この場合、倉庫の庫内に、保管対象物を収納するための庫内空間としての収納空間(5)が形成される。
【0224】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態の要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0225】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0226】
以上に説明したように、本開示は、空気調節装置、冷凍装置、おあよび輸送用コンテナについて有用である。
【符号の説明】
【0227】
1 輸送用コンテナ
2 コンテナ本体
5 庫内空間
6 庫外空間
10 冷凍装置
30 冷媒回路
100 空気調節装置
103 排気流路
110 エアポンプ(加圧部)
111 第1水分離器(減湿部)
113 第2水分離器(減湿部)
124 ガス分離膜
130 水分離モジュール(減湿部)
175 加熱部
191 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20