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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】室外ユニット
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20230913BHJP
   F04C 29/06 20060101ALI20230913BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20230913BHJP
   F24F 1/12 20110101ALI20230913BHJP
【FI】
F04B39/00 102V
F04C29/06 Z
F04C29/12 C
F24F1/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022144589
(22)【出願日】2022-09-12
(62)【分割の表示】P 2021161006の分割
【原出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023051779
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】片山 達也
(72)【発明者】
【氏名】菊竹 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小森 啓治
(72)【発明者】
【氏名】土川 翔伍
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/216875(WO,A1)
【文献】特開2018-35711(JP,A)
【文献】特開2011-52636(JP,A)
【文献】特開2021-32135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04C 29/06
F04C 29/12
F24F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(1)と、
該圧縮機(1)に隣り合うアキュムレータ(2)とを備えた室外ユニットであって、
前記圧縮機(1)は、
第1ケーシング(10)と、
前記第1ケーシング(10)に収容される電動機(20)と、
前記電動機(20)に駆動される駆動軸(31)と、
流体を圧縮する圧縮機構(30)とを有し、
前記アキュムレータ(2)は、
第2ケーシング(61)を有し、
前記第1ケーシング(10)の側面上部のうち、前記圧縮機(1)及び前記アキュムレータ(2)の並び方向に直交する第1部分を加振したときの、前記圧縮機(1)の最大回転数の3倍の数値の周波数と、該周波数の1.25倍の周波数との間における周波数域において、前記第2ケーシング(61)の側面上部のうち、前記第1ケーシング(10)に向かい合う部分に対向する第2部分における、前記第2ケーシング(61)の周方向の周波数応答関数を示す指標が、1.0m/s/N以下となる室外ユニット。
【請求項2】
前記圧縮機(1)及び前記アキュムレータ(2)に、冷媒回路(9)に繋がる冷媒管(9a)が接続された状態において、前記第1部分を加振したときの、前記第2部分における前記第2ケーシング(61)の周方向の周波数応答関数を示す指標が、1.0m/s/N以下となる請求項1の室外ユニット。
【請求項3】
前記圧縮機(1)及び前記アキュムレータ(2)に、冷媒回路(9)に繋がる冷媒管(9a)が接続されていない状態において、前記第1部分を加振したときの、前記第2部分における前記第2ケーシング(61)の周方向の周波数応答関数を示す指標が、1.0m/s/N以下となる請求項1の室外ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、室外ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の圧縮機では、アキュームレータがブラケットを介して圧縮機のケーシング側面に固定されている。ブラケットの位置を調節することで、アキュームレータの振動や騒音の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-317479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り、圧縮機の接続されたアキュームレータでは、振動対策が必要になる場合がある。
【0005】
本開示の目的は、アキュムレータの表面振動を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、
圧縮機(1)と、
該圧縮機(1)に隣り合うアキュムレータ(2)とを備えた室外ユニットであって、
前記圧縮機(1)は、
第1ケーシング(10)と、
前記第1ケーシング(10)に収容される電動機(20)と、
前記電動機(20)に駆動される駆動軸(31)と、
流体を圧縮する圧縮機構(30)とを有し、
前記アキュムレータ(2)は、
第2ケーシング(61)を有し、
前記第1ケーシング(10)の側面上部のうち、前記圧縮機(1)及び前記アキュムレータ(2)の並び方向に直交する第1部分を加振したときの、前記圧縮機(1)の最大回転数の3倍の数値の周波数と、該周波数の1.25倍の周波数との間における周波数域において、前記第2ケーシング(61)の側面上部のうち、前記第1ケーシング(10)に向かい合う部分に対向する第2部分における、前記第2ケーシング(61)の周方向の周波数応答関数を示す指標が、1.0m/s/N以下となる室外ユニットである。
【0007】
第1の態様では、圧縮機(1)に回転に応じて、圧縮機(1)及びアキュムレータ(2)は振動する。圧縮機(1)の回転数が最高時において、アキュムレータ(2)の構造固有値の周波数と、電動機(20)の周波数の3N成分とが干渉することで、アキュムレータ(2)表面により大きな振動が発生するという知見に基づいて、第1ケーシング(10)の第1部分を加振したときの、第2ケーシング(61)の第2部分における周方向の周波数応答関数を示す指標を1.0m/s/N以下とした。該指標を1.0m/s/N以下とすることで、アキュムレータ(2)の構造固有値の周波数と、電動機(20)の周波数の3N成分との干渉を回避でき、アキュムレータ(2)表面に発生する振動の増大を抑制できる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、
前記圧縮機(1)及び前記アキュムレータ(2)に前記冷媒管(9a)が接続された状態において、前記第1部分を加振したときの、前記第2部分における前記第2ケーシング(61)の周方向の周波数応答関数を示す指標が、1.0m/s/N以下となる。
【0009】
前記圧縮機(1)の吐出管(15)、及び前記アキュムレータ(2)の入口部(62)に冷媒回路に繋がる冷媒管(9a)が接続された状態において、前記第1部分を加振したときの、前記第2部分における前記第2ケーシング(61)の周方向の周波数応答関数を示す指標が、1.0m/s/N以下となる。
【0010】
第2の態様では、圧縮機ユニット(U)に冷媒管(9a)を付けた状態においても、圧縮機(1)を運転しない状態でアキュムレータ(2)表面に発生する振動の増大を抑制できるかどうかを把握できる。
【0011】
本開示の第3の態様は、第1の態様において、
前記圧縮機(1)及び前記アキュムレータ(2)に前記冷媒管(9a)が接続されていない状態において、前記第1部分を加振したときの、前記第2部分における前記第2ケーシング(61)の周方向の周波数応答関数を示す指標が、1.0m/s/N以下となる。
【0012】
第3の態様では、圧縮機ユニット(U)に冷媒管(9a)を付けていない状態においても、圧縮機(1)を運転しない状態でアキュムレータ(2)表面に発生する振動の増大を抑制できるかどうかを把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る冷凍装置の配管系統図である。
図2図2は、圧縮機ユニット縦断面図である。
図3図3は、ピストンの平面図である。
図4】(A)は、固定部材により圧縮機とアキュムレータとが固定されている状態の一部を拡大した横断面図である。(B)は、固定部材を圧縮機側から見た図である。
図5図5は、圧縮機構の動作を示す図である。
図6図6は、圧縮機の運転中の本実施形態の圧縮機ユニットと従来の圧縮機ユニットとのアキュムレータの振動特性を比較したデータである。
図7図7は、ハンマリング試験における圧縮機ユニットの加振位置と応答位置を説明する図である。(A)は、圧縮機とアキュムレータとを正面から見た模式図である。(B)は圧縮機とアキュムレータとを上から見た模式図である。
図8図8は、ハンマリング試験による周波数とアキュムレータの周波数応答関数との関係を示したデータである。
図9図9は、冷媒管を取り付けた場合と冷媒管を取り外した場合とのハンマリング試験による周波数とアキュムレータの周波数応答関数との関係を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下に説明する各実施形態、変形例、その他の例等の各構成は、本発明を実施可能な範囲において、組み合わせたり、一部を置換したりできる。
【0015】
(1)圧縮機ユニット
図1及び図2に示すように、本例の圧縮機ユニット(U)は冷凍装置(100)に適用される。冷凍装置(100)は、例えば室内を空調する空気調和装置である。冷凍装置(100)は、冷媒回路(9)を備える。冷媒回路(9)には、圧縮機(1)、アキュムレータ(2)、四方切換弁(3)、室外熱交換器(4)、膨張弁(5)、及び室内熱交換器(6)が設けられている。各種の機器は、冷媒管(9a)により接続される。冷媒回路(9)は、冷媒管(9a)に冷媒が流れることで冷媒が各種の機器を循環し、冷凍サイクルを行う。室外に配置される室外ユニット(7)には、圧縮機(1)、四方切換弁(3)、室外熱交換器(4)、および膨張弁(5)が配置される。室内に配置される室内ユニット(8)には、室内熱交換器(6)が配置される。
【0016】
本実施形態に係る圧縮機ユニット(U)は、圧縮機(1)とアキュムレータ(2)とを有する。圧縮機(1)及びアキュムレータ(2)は、縦置き型である。圧縮機(1)及びアキュムレータ(2)は、後述する固定部材(64)により互いに固定される。
【0017】
(2)圧縮機
本圧縮機(1)は、ロータリ圧縮機である。圧縮機(1)は、冷媒回路を流れる冷媒を圧縮する。圧縮機(1)は、密閉容器(10)、電動機(20)、および圧縮機構(30)を有している。電動機(20)および圧縮機構(30)は、密閉容器(10)内に収納されている。圧縮機(1)は、圧縮機構(30)において圧縮された冷媒が密閉容器(10)の内部空間(S)に吐出され、内部空間(S)が高圧となる所謂高圧ドーム型に構成されている。
【0018】
(2-1)密閉容器
密閉容器(10)は、縦長に形成される。具体的に、密閉容器(10)は、上下方向に延びる円筒状の胴部(11)と、該胴部(11)の上端を閉塞する上部鏡板(12)と、該胴部(11)の下端を閉塞する下部鏡板(13)とを備えている。密閉容器(10)は、本開示の第1ケーシング(10)の一例である。上部鏡板(12)および下部鏡板(13)は、比較的肉厚に形成されている。胴部(11)の下部には、吸入管(14)が設けられる。
【0019】
吸入管(14)は、比較的肉厚に形成される。具体的に、吸入管(14)の内径と外径との差は、1.0mm~2.8mmであり、好ましくは、2.8mmである。上部鏡板(12)には、吐出管(15)と電動機(20)へ電力を供給するためのターミナル(16)とが設けられている。
【0020】
吐出管(15)には、冷媒管(9a)が挿入される。密閉容器(10)に底部には、油貯まり部(17)が形成されている。胴部(11)の内周面の概ね中腹にはマウンティングプレート(44)が固定される。
【0021】
(2-2)電動機
電動機(20)は、密閉容器(10)に収容される。電動機(20)は、圧縮機構(30)を駆動する。電動機(20)内において、マウンティングプレート(44)の上側に配置される。内部空間(S)は、電動機(20)の下側の第1内部空間(S1)と、電動機(20)の上側の第2内部空間(S2)とに区分される。電動機(20)は、胴部(11)の内周面に沿った筒状のステータ(21)と、該ステータ(21)の内側に配置されたロータ(22)とを有する。
【0022】
(2-3)駆動軸
駆動軸(31)は、密閉容器(10)内において、上下方向に延びるように配置されている。駆動軸(31)は、電動機(20)に駆動される。駆動軸(31)の上部は、電動機(20)のロータ(22)に連結されている。駆動軸(31)の下部は、上から下に向かって順に、上側軸部(31a)、偏心部(32)、及び下側軸部(31b)を有している。偏心部(32)は、駆動軸(31)の軸心に対して偏心している。偏心部(32)は、上側軸部(31a)、及び下側軸部(31b)よりも大径に形成されている。
【0023】
(2-4)圧縮機構
圧縮機構(30)は、密閉容器(10)内に収容される。圧縮機構(30)は、吸入した流体を圧縮して前記密閉容器(10)の内部空間(S)へ吐出する。具体的に、圧縮機構(30)は、マウンティングプレート(44)の下面に配置され、マウンティングプレート(44)により固定される。圧縮機構(30)は、駆動軸(31)、シリンダ(34)、フロントヘッド(41)、リアヘッド(43)、及びピストン(35)を備えている。
【0024】
(2-5)シリンダ、及びピストン
図2及び図3に示すように、シリンダ(34)は、略円筒状に形成される。シリンダ(34)の軸は、上下方向に延びるように配置される。シリンダ(34)には、駆動軸(31)の偏心部(32)が挿入されている。
【0025】
ピストン(35)は、シリンダ(34)に収容される。ピストン(35)は、上側のフロントヘッド(41)と下側のリアヘッド(43)との双方に摺動するように構成されている。ピストン(35)は、ピストン本体(36)とブレード(37)とを有している。
【0026】
ピストン本体(36)は、環状に形成される。具体的に、ピストン本体(36)は、やや厚肉の円筒状に形成されている。駆動軸(31)の偏心部(32)が摺動可能に挿入されている。ピストン本体(36)は、駆動軸(31)が回転すると、シリンダ(34)の内周面に沿って公転するように構成されている。ピストン本体(36)とシリンダ(34)との間には、圧縮室(50)が形成されている。
【0027】
ブレード(37)は、ピストン本体(36)と一体に形成される。ブレード(37)は、ピストン本体(36)の外周面から径方向外方へ突出している。ブレード(37)は、シリンダ(34)の内周面から径方向外方へ延びるブッシュ溝(53)に設けられた一対の揺動ブッシュ(54a,54b)に挟み込まれている。ブレード(37)は、ピストン本体(36)の公転時に、ピストン本体(36)の自転を規制するように構成されている。また、ブレード(37)は、圧縮室(50)を低圧室(51)と高圧室(52)とに区画している。
【0028】
シリンダ(34)には、吸入ポート(55)が径方向に貫通形成されている。吸入ポート(55)は、内周端が低圧室(51)に連通し、外周端が吸入管(14)に接続されている。
【0029】
(2-6)フロントヘッド、及びリアヘッド
フロントヘッド(41)は、シリンダ(34)の上端に固定される。フロントヘッド(41)は、シリンダ(34)の上端を塞ぐ。フロントヘッド(41)の軸受部(41a)は、駆動軸(31)の上側軸部(31a)を回転自在に支持する。吐出弁(41i)は、高圧室(52)と第1内部空間(S1)とを連通する吐出ポート(図示省略)に設けられる。吐出弁(41i)は、高圧室(52)の冷媒の圧力が所定値以上になったときに開く。
【0030】
リアヘッド(43)は、シリンダ(34)の下端に固定される。リアヘッド(43)は、シリンダ(34)の下端を塞ぐ。リアヘッド(43)の軸受部(43a)は、駆動軸(31)の下側軸部(31b)を回転自在に支持する。
【0031】
(3)アキュムレータ
アキュムレータ(2)は、圧縮機(1)が吸入する冷媒を一時的に貯留する。アキュムレータ(2)は、気体と液体とを分離する。具体的に、アキュムレータ(2)は、ガス状の冷媒に含まれる液状の冷媒や冷凍機油などを分離する。アキュムレータ(2)は、ケーシング(61)、出口管(65)、及び固定部材(64)を備えている。
【0032】
(3-1)ケーシング
ケーシング(61)は、縦長に形成される。ケーシング(61)は、円筒状の密閉容器である。ケーシング(61)は、本開示の第2ケーシング(61)の一例である。ケーシング(61)は、縦長となる向きに配置されている。第2ケーシング(61)は、金属(例えば鉄)によって形成されている。ケーシング(61)の上端には、入口部(62)が形成される。入口部(62)には、冷媒管(9a)が挿入される。入口部(62)と冷媒管(9a)とは、例えば溶接により固定される。冷媒回路(9)の冷媒は、入口部(62)を介してケーシング(61)内に流入する。ケーシング(61)の下端には、出口部(63)が形成される。出口部(63)には、出口管(65)が挿入される。出口部(63)と出口管(65)とは、例えば溶接により固定される。
【0033】
(3-2)出口管
出口管(65)は、金属(例えば銅)で形成されている。出口管(65)の一端は、出口部(63)から、ケーシング(61)内の上方に向かって伸びている。出口管(65)の一端は、ケーシング(61)内の中腹よりも上方に位置する。出口管(65)の他端は、吸入管(14)に挿入される。出口管(65)の他端と吸入管(14)とは、例えば溶接により固定される。
【0034】
(3-3)固定部材
図4に示すように、固定部材(64)は、密閉容器(10)とケーシング(61)とを固定する。固定部材(64)は、金属の板部材である。固定部材(64)は、密閉容器(10)の側面(胴部(11))に接する第1面部(64a)と、ケーシング(61)の側面に接する2つの第2面部(64b)とを有する(図4(A))。第1面部(64a)は、密閉容器(10)の側面に沿って湾曲するように形成される。第1面部(64a)は矩形に形成される。2つの第2面部(64b)は、第1面部(64a)の周方向の両端に配置される。固定部材(64)は、第2面部(64b)がケーシング(61)側面に溶接されることで、ケーシング(61)に固定される。
【0035】
第1面部(64a)には、溶接用の突起(66)が形成される(図4(B))。この突起(66)は、溶接前の第1面部(64a)の4隅のそれぞれに形成される。この突起(66)を溶融することで、第1面部(64a)は、密閉容器(10)に固定される。第1面部(64a)の上下方向の長さ(密閉容器の筒軸方向の長さ)は、32mm~38mmであり、好ましくは38mmである。
【0036】
(4)運転動作
図5に示すように、圧縮機(1)では、電動機(20)を起動してロータ(22)を回転させると、駆動軸(31)が回転し、偏心部(32)が偏心回転する。そして、偏心部(32)の偏心回転に伴って、ピストン(35)が自転を規制しながらシリンダ(34)の内周面に沿って公転する。
【0037】
圧縮室(50)へ冷媒を吸入する吸入行程について説明する。駆動軸(31)が回転角0°の状態(図4(A)の状態)から僅かに回転すると、ピストン(35)とシリンダ(34)の接触位置が吸入ポート(55)の内周端を通過する。このとき、低圧室(51)への冷媒の吸入が開始される。
【0038】
冷媒の吸入は、吸入管(14)から吸入ポート(55)を介して行われる。そして、駆動軸(31)の回転角が大きくなると、次第に、低圧室(51)の容積が増大し、低圧室(51)へ吸入される冷媒量が増加する(図4(B)~(H)の状態)。そして、この冷媒の吸入行程は、駆動軸(31)の回転角が360°になるまで続き、その後、吐出行程へと移行する。
【0039】
続いて、圧縮室(50)で冷媒を圧縮して吐出する吐出行程について説明する。駆動軸(31)が回転角0°の状態(図4(A)の状態)から僅かに回転すると、ピストン(35)とシリンダ(34)の接触位置が再び吸入ポート(55)の内周端を通過する。このとき、低圧室(51)における冷媒の閉じ込みが完了する。
【0040】
吸入ポート(55)に繋がっていた低圧室(51)が、吐出ポート(図示省略)だけに繋がる高圧室(52)となる。この状態から、高圧室(52)における冷媒の圧縮が開始される。駆動軸(31)の回転角が大きくなると、高圧室(52)の容積が減少し、高圧室(52)の圧力が上昇する。高圧室(52)の圧力が所定圧力を上回ると、吐出弁(41i)が開く。このとき、高圧室(52)の冷媒が、吐出ポート(図示省略)から吐出されて、
第1内部空間(S1)に流入する。このガス冷媒は、第2内部空間(S2)に移動した後、吐出管(15)を介して圧縮機(1)の外部へと吐出される。この冷媒の吐出行程は、駆動軸(31)の回転角が360°になるまで続き、その後、吸入行程へと移行する。このように、圧縮機(1)では、圧縮室(50)において、吸入行程と吐出行程とが交互に繰り返されることによって、冷媒の圧縮動作が連続的に行われる。
【0041】
(5)圧縮機が高速回転しているときのアキュムレータの表面振動における課題
従来より、アキュムレータの構造固有値と電動機の周波数の1N成分とが、運転周波数10~120Hzの間で干渉することで、アキュムレータの表面振動が大きくなることが知られている。構造固有値は、圧縮機の運転周波数に依存しないアキュムレータ固有の周波数である。本例のアキュムレータ(2)の構造固有値は、500Hz近傍である。
【0042】
圧縮機の回転数を比較的抑えて運転した場合では、アキュムレータの構造固有値と、電動機の周波数の3N成分との干渉が回避される。しかし、圧縮機が高速で回転(例えば、120rps以上)すると、アキュムレータの構造固有値と電動機の3N成分とが干渉することで、アキュムレータの表面振動、特にアキュムレータのケーシング表面上部の周方向の振動が大きくなるという課題が見つかった。
【0043】
このような課題に対して、本例の圧縮機ユニット(U)は、密閉容器(10)の側面(胴部(11))上部のうち、圧縮機(1)及びアキュムレータ(2)の並び方向に直交する第1部分を加振したときの圧縮機(1)の最大回転数の3倍の数値の周波数において、ケーシング(61)の側面上部のうち、密閉容器(10)に向かい合う部分に対向する第2部分のケーシング(61)の周方向の周波数応答関数を示す指標が、1.0m/s/N以下となるように構成した。
【0044】
具体的には、本例の圧縮機ユニット(U)では、上述したように固定部材(64)をアキュムレータ(2)に直接溶接し、固定部材(64)と圧縮機(1)との溶接点数(突起(66))を4点にした。加えて、吸入管(14)を比較的肉厚にし、吸入管(14)と出口管(65)とをろう付けにより固定した。固定部材(64)の上下方向の幅を38mmに形成した。このような手段を講じることで、従来の圧縮機ユニットよりもアキュムレータ(2)の取り付け構造の剛性が向上する。取り付け構造の剛性が向上すると、アキュムレータ(2)の構造固有値が高周波側にシフトし、該構造固有値と電動機の3N成分との干渉を回避できる。その結果、圧縮機(1)が高速回転してもアキュムレータ(2)の表面の振動を抑えることができる。以下、具体的に説明する。
【0045】
(6)圧縮機の回転数とアキュムレータの振動加速度との関係
本例の圧縮機を138rpsを最高回転数として運転させた場合、本例のアキュムレータ(2)では、ケーシング(61)表面上部における周方向の振動加速度に対する影響が比較的高い。例えば、ケーシング(61)表面上部における径方向の振動加速度には、周方向の振動加速度ほどの影響は見られなかった。
【0046】
図6の実線aは、本例のアキュムレータ(2)のケーシング(61)表面上部における周方向の振動加速度を示す。図6の破線bは、従来のアキュムレータのケーシング表面上部における周方向の振動加速度を示す。図6に示すように、圧縮機の運転中の本例の圧縮機ユニット(U)と従来の圧縮機ユニットとのアキュムレータの振動特性は異なる。なお、両圧縮機ユニットには、冷媒管(9a)が接続されている。以下の説明では、アキュムレータのケーシング表面上部における周方向の振動加速度を、単に振動加速度と呼ぶ場合がある。
【0047】
ここで、圧縮機の最高回転数での運転時における、アキュムレータの構造固有値と電動機の周波数の3N成分との干渉が回避されるときの振動加速度を、目標振動加速度とする。本例では、圧縮機の回転数が最高回転数である138rpsにおける目標振動加速度を8m/s以下とする。すなわち、本例において、圧縮機が最高回転数で運転している場合において、振動加速度が8m/s以下であれば、アキュムレータ(2)の構造固有値と、電動機の周波数の3N成分との干渉が回避され、アキュムレータ(2)のケーシング(61)の表面振動が抑えられる。一方、振動加速度が8m/s以上であれば、アキュムレータの構造固有値と、電動機の周波数の3N成分とが干渉し、アキュムレータ(2)ののケーシング(61)の表面振動が増大する。
【0048】
図6に示すように、圧縮機(1)の回転数が138rpsのとき、本例の圧縮機ユニット(U)では、振動加速度が8m/s以下であるため、目標振動加速度の条件を満たす。一方、従来の圧縮機ユニットでは、圧縮機の回転数が138rpsのとき、振動加速度が8m/s以上となり、目標振動加速度の条件を満たさない。このように、本例の圧縮機ユニット(U)は、圧縮機(1)の最高回転数(138rps)において、アキュムレータ(500Hz近傍)と電動機(20)の周波数の3N成分との干渉を回避でき、アキュムレータ(2)の振動を抑えることができる。
【0049】
(7)ハンマリング条件の検討
ハンマリング試験を行うことで、本例の圧縮機ユニット(U)の特性を再現した。ハンマリング試験を行えば、実際に圧縮機(1)を運転することなく、該圧縮機ユニット(U)が、アキュムレータ(2)の表面振動を抑えることができる圧縮機ユニットであるかを把握できる。
【0050】
まず、ハンマリング試験の条件検討を行った。具体的に、圧縮機(1)が最高回転数で運転しているときの、アキュムレータ(2)の振動特性と同等の傾向を示すような、圧縮機(1)の加振位置と、アキュムレータ(2)の応答位置との最適な組み合わせを検討した。
【0051】
ゴム等の弾性部材の上に配置した圧縮機(1)をハンマー(PCB社製、型番086C01)で加振し、その応答性をアキュムレータ(2)の表面上部に取り付けた加速度センサ(DYTRAN社製、型番3263A1)の検出値に基づいて解析した。解析は、ケーシング(61)の側面における周方向の周波数応答関数(FRF:Frequency Response Function)を解析用ソフトウェア(National Instruments社製)を用いて行われた。詳細は後述するが、FRFを求める理由は、FRFは圧縮機が、運転中のアキュムレータ(2)の振動加速度と相関するためである。
【0052】
図7に示すように、密閉容器(10)の側面上部のうち、圧縮機(1)及びアキュムレータ(2)の並び方向に直交する第1部分(図7のa)を加振位置とした。この部分は、本開示の第1部分である。また、ケーシング(61)の側面上部のうち、密閉容器(10)に向かい合う部分に対向する第2部分(図7のb)を応答位置とした。第1部分を加振したときの第2部分のケーシング(61)の周方向のFRFが、圧縮機(1)の運転中のそれと同等の挙動を示した。このことより、本例のハンマリング条件では、第1部分を加振位置とし、第2部分を応答位置とした。なお、本例の周波数応答関数(FRF)を示す指標は、アクセレランス(加速度/力(m/s/N))である。
【0053】
上記ハンマリング条件にて、本例の圧縮機ユニット(U)と、従来の圧縮機ユニットとについてハンマリング試験を実施した。図8は、横軸を周波数(Hz)、縦軸をFRF(m/s/N)として、本例の圧縮機ユニット(U)(実線a)及び従来の圧縮機ユニット(破線b)の各アキュムレータの振動特性を示す。
【0054】
ここで、電動機の周波数の3N成分として、圧縮機の最高回転数の3倍の数値近傍の周波数を第1周波数とする。第1周波数におけるFRFのうち、アキュムレータ(500Hz近傍)と電動機(20)の周波数の3N成分との干渉が回避されるFRFを目標FRFとする。本例では、圧縮機の最高回転数を138rpsとして、第1周波数を414Hzとした。また、目標FRFを、1.0m/s/N以下に設定した。
【0055】
図8に示すように、本例の圧縮機ユニット(U)では、414HzにおけるFRFは、0.92m/s/Nとなった。従来の圧縮機ユニットでは、414Hz付近の周波数におけるFRFは、1.02m/s/Nとなった。従って、本例の圧縮機ユニット(U)では、目標FRFを満たす一方、従来の圧縮機ユニット(U)では、目標FRFを満たさない。このことは、本例の圧縮機ユニット(U)は、圧縮機(1)が回転数138rpsで運転しているときのアキュムレータの表面上部の周方向の振動加速度が、目標振動加速度である8.0m/s以下を満たすことを示す。一方、従来の圧縮機ユニットでは、目標振動加速度を満たさないことを示す。
【0056】
以上により、圧縮機を運転しない状態で、上記ハンマリング条件にて試験を行った結果、第1周波数(414Hz)におけるFRF値が、1.0m/s/N以下の条件を満たすことで、アキュムレータ(500Hz及びその近傍)と電動機(20)の周波数の3N成分との干渉を回避でき、アキュムレータ(2)のケーシング(61)の表面振動の増大を抑制できる。
【0057】
なお、圧縮機(1)の回転数が120rps以上における第1周波数において、FRF(m/s/N)と、アキュムレータ(2)のケーシング(61)側面上部の周方向の振動加速度(m/s)とは相関する。データは示さないが、本例の圧縮機ユニット(U)及び従来の圧縮機ユニット(U)ともに相関係数が0.70以上を示した。
【0058】
(8)特徴
(8-1)
本例の室外ユニット(7)では、圧縮機(1)の密閉容器(10)(第1ケーシング)の側面上部のうち、圧縮機(1)及びアキュムレータ(2)の並び方向に直交する第1部分を加振したときの、圧縮機(1)の最大回転数の3倍の数値の第1周波数において、アキュムレータ(2)のケーシング(61)(第2ケーシング)の側面上部のうち、密閉容器(10)に向かい合う部分に対向する第2部分におけるケーシング(61)の周方向の周波数応答関数を示す指標が、1.0m/s/N以下となる。
【0059】
上述したハンマリング条件において、上記指標が、1.0m/s/N以下となることで、圧縮機(1)の最高回転数で運転しているときの回転数の3N成分の周波数と、アキュムレータ(2)の上部における周方向の周波数との衝突を回避できる。このことで、アキュムレータ(2)のケーシング(61)の表面振動を抑えることができる。
【0060】
加えて、圧縮機(1)を運転させてなくても、ハンマリング試験を行うことで、該圧縮機ユニット(U)が、アキュムレータ(2)のケーシング(61)の表面振動を抑えることができるか否かを確認できる。
【0061】
加えて、ハンマリング試験により、運転中の圧縮機ユニット(U)におけるアキュムレータ(2)の表面振動を抑えられるか把握できるため、わざわざ圧縮機(1)を運転させて確認する必要がなくなる。このため、圧縮機ユニット(U)の製造時間を短縮できる。
【0062】
(8-2)
本例の室外ユニット(7)では、圧縮機(1)及びアキュムレータ(2)に冷媒管(9a)が接続された状態において、第1部分を加振したときの、第2部分におけるケーシング(61)の周方向の周波数応答関数を示す指標が、1.0m/s/N以下となる。
【0063】
圧縮機ユニット(U)に冷媒管を取り付けた状態においても、アキュムレータ(2)のケーシング(61)表面に発生する振動の増加を抑制できるどうかを把握できる。
【0064】
(9)変形例
本例では、本開示の圧縮機ユニット(U)に冷媒管が接続されていない場合でのハンマリング条件について説明する。
【0065】
圧縮機ユニット(U)から冷媒管(9a)を外した状態で、上記実施形態と同じ条件でハンマリング試験を行った。図9の実線aは、冷媒管(9a)を取り付けた状態での試験結果を示す。図9の破線bは、冷媒管(9a)を外した状態での試験結果を示す。
【0066】
図9に示すように、本例の圧縮機ユニット(U)において、冷媒管(9a)が接続されていない場合では、アキュムレータ(2)の構造固有値は、冷媒管(9a)が接続されている場合よりも15%から20%程度高くなる。従って、第1周波数も、冷媒管(9a)が接続されていない場合では圧縮機ユニット(U)では、冷媒管(9a)が接続されている圧縮機ユニット(U)に比べて15%から20%程度、すなわち1.15倍から1.20倍程度高くなる。
【0067】
具体的に、圧縮機(1)の最高回転数を約138rpsとすると、第1周波数は、約138rpsの3倍の数値に1.15から1.20を乗じた値である、476Hzから496Hz程度となる。従って、冷媒管(9a)が接続されていない本例の圧縮機ユニット(U)では、476Hzから496Hz程度でのFRFが1.0m/s/N以下を満たす。
【0068】
このように、前記圧縮機(1)及び前記アキュムレータ(2)に前記冷媒管(9a)が接続されていない状態でも、上記実施形態のハンマリング条件において、517Hz近傍のFRFが目標FRFの1.0m/s/N以下を満たすとき、アキュムレータ(2)の構造固有値と電動機(20)の周波数の3N成分nとの干渉を回避でき、アキュムレータ(2)の表面振動の増大を抑制できる。
【0069】
(10)その他の実施形態
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0070】
圧縮機(1)の最大回転数は、120rps以上であればよい。回転数が120rps以上のとき、第1周波数におけるFRFが1.0m/s/N以下を満たすことで、アキュムレータ(2)のケーシング(61)の側面上部の周方向の振動加速度は8m/s以下となり、アキュムレータ(2)の表面振動の増大を抑えることができる。
【0071】
圧縮機ユニット(U)が冷媒管(9a)に接続または非接続に関わらず、第1周波数は、圧縮機(1)の最大回転数の3倍の数値の周波数と、該周波数の1.25倍の間の周波数との間の周波数域にあればよい。この周波数域において、FRFが1.0m/s/N以下を満たすとき、アキュムレータ(2)の構造固有値と圧縮機(1)の3N成分との干渉を回避でき、アキュムレータ(2)の表面振動の増大を抑えることができる。
【0072】
圧縮機ユニット(U)は、圧縮機(1)とアキュムレータ(2)との間に固定される弾性部材を有していてもよい。これにより、圧縮機(1)からアキュムレータ(2)への振動伝搬を減衰させることができる。このことで、アキュムレータ過去の圧縮機(1)からの振動に対する応答レベルを下げることができ、アキュムレータ(2)の表面振動の増大を抑制できる。
【0073】
圧縮機ユニット(U)において、アキュムレータ(2)の出口管(65)の肉厚を大きくしてもよいし、アキュムレータ(2)の上面に樹脂製のパテを配置してもよい。このことで、圧縮機(1)が最高回転数で回転しても、アキュムレータの表面振動を抑えることができる。
【0074】
圧縮機ユニット(U)の圧縮機(1)は、上記実施形態にように揺動型のロータリ圧縮機であってもよいし、ベーンを備えたロータリ圧縮機であってもよい。
【0075】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本開示は、圧縮機ユニットについて有用である。
【符号の説明】
【0077】
U 圧縮機ユニット
1 圧縮機
2 アキュムレータ
9a 冷媒管
10 密閉容器(第1ケーシング)
14 吸入管
15 吐出管
20 電動機
30 圧縮機構
31 駆動軸
61 ケーシング(第2ケーシング)
64 固定部材
64a 第1面部
100 冷凍装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9