(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】ポリウレタン組成物及びマリンホース
(51)【国際特許分類】
C08G 18/32 20060101AFI20230913BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20230913BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20230913BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20230913BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20230913BHJP
F16L 11/12 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C08G18/32 037
C08G18/10
C08G18/48
C08G18/66 081
C08G18/76 014
F16L11/12 Z
(21)【出願番号】P 2023531616
(86)(22)【出願日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2023007079
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2022029388
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】田中 淑美
(72)【発明者】
【氏名】若松 博之
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025191(JP,A)
【文献】特開昭62-021686(JP,A)
【文献】特開2007-146093(JP,A)
【文献】特開平02-292317(JP,A)
【文献】特開2004-204139(JP,A)
【文献】国際公開第2008/065733(WO,A1)
【文献】特開平10-185048(JP,A)
【文献】特開平01-176886(JP,A)
【文献】特開2003-342347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
F16L 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルポリオールとトリレンジイソシアネートとから形成され、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、
トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート
)を含む硬化剤と、
触媒としてアジピン酸とを含有し、
前記ウレタンプレポリマーが有する前記イソシアネート基と前記硬化剤が有するアミノ基とのモル比が0.90~2.00であり、
前記トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート
)の含有量が、前記硬化剤全量中の95~100モル%である、室温硬化型のポリウレタン組成物。
【請求項2】
前記モル比が1.00~1.25である、請求項
1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記アジピン酸の含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.03~0.20質量部である、請求項1
又は2に記載のポリウレタン組成物。
【請求項4】
前記アジピン酸の含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.09~0.13質量部である、請求項1~
3のいずれか1項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項5】
マリンホース用である、請求項1~
4のいずれか1項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項6】
ポリエーテルポリオールとトリレンジイソシアネートとから形成され、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、
3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルを含む硬化剤と、
触媒としてアジピン酸とを含有し、
前記ウレタンプレポリマーが有する前記イソシアネート基と前記硬化剤が有するアミノ基とのモル比が1.02~1.08であり、
前記3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルの含有量が、前記硬化剤全量中の95~100モル%である、室温硬化型のポリウレタン組成物。
【請求項7】
ポリエーテルポリオールとトリレンジイソシアネートとから形成され、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、
3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルを含む硬化剤と、
触媒としてアジピン酸とを含有し、
前記ウレタンプレポリマーが有する前記イソシアネート基と前記硬化剤が有するアミノ基とのモル比が0.90~2.00であり、
前記3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルの含有量が、前記硬化剤全量中の95~100モル%であり、
マリンホース用である、室温硬化型のポリウレタン組成物。
【請求項8】
前記硬化剤の全量が3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルである、請求項
6又は7に記載のポリウレタン組成物。
【請求項9】
請求項1~
4、6のいずれか1項に記載のポリウレタン組成物を用いて形成された、マリンホース。
【請求項10】
前記ポリウレタン組成物を用いて形成された最外層を有する、請求項9に記載のマリンホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン組成物及びマリンホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原油等のオイルを、陸上のオイルタンクと海上のオイルタンカーとのような間で輸送するために、マリンホースが利用されている。
マリンホースのような大型のゴム製品をカバーする最外層には、例えばポリウレタンが使用されている。また、ポリウレタンを得る際に使用される硬化剤として、硬化性と物性のバランスが優れる観点から、3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノフェニルメタン(MOCA)が用いられている。
【0003】
一方、近年、環境衛生上の観点から、MOCAを使用しないポリウレタン樹脂組成物を注型し加熱し硬化させて得られるポリウレタン成形体が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようななか、本発明者らは特許文献1を参考にしてポリウレタン組成物を調製し、開放系(湿気に触れることができる状態)で室温硬化させて評価したところ、MOCAを使用した場合と同等又はそれ以上の性能(可使時間の長さが十分に得られ、室温条件下且つ開放系での硬化性、耐発泡性が優れ、硬化後の硬度が高く、耐摩耗性、耐水性が優れる)を得ることが困難な場合があることが判明した。
【0006】
そこで、本発明は、可使時間、室温条件下且つ開放系での硬化性、耐発泡性、硬化後の硬度、耐摩耗性、耐水性が優れるポリウレタン組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、マリンホースを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ポリエーテルポリオールとトリレンジイソシアネートとから形成されイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)及び/又は3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルを含む硬化剤と、触媒としてアジピン酸とを含有し、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と硬化剤が有するアミノ基とのモル比、並びに、トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)及び/又は3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルの含有量がそれぞれ特定の範囲である、ポリウレタン組成物によれば、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0008】
[1] ポリエーテルポリオールとトリレンジイソシアネートとから形成され、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、
トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)及び/又は3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルを含む硬化剤と、
触媒としてアジピン酸とを含有し、
上記ウレタンプレポリマーが有する上記イソシアネート基と上記硬化剤が有するアミノ基とのモル比が0.90~2.00であり、
上記トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)及び/又は上記3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルの含有量が、上記硬化剤全量中の95~100モル%である、室温硬化型のポリウレタン組成物。
[2] 上記硬化剤の全量がトリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)である、[1]に記載のポリウレタン組成物。
[3] 上記硬化剤の全量が3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルである、[1]に記載のポリウレタン組成物。
[4] 上記モル比が1.00~1.25である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリウレタン組成物。
[5] 上記モル比が1.02~1.08である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリウレタン組成物。
[6] 上記アジピン酸の含有量が、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.03~0.20質量部である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のポリウレタン組成物。
[7] 上記アジピン酸の含有量が、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.09~0.13質量部である、[1]~[6]のいずれか1つに記載のポリウレタン組成物。
[8] マリンホース用である、[1]~[7]のいずれか1つに記載のポリウレタン組成物。
[9] [1]~[7]のいずれか1つに記載のポリウレタン組成物を用いて形成された、マリンホース。
[10] 上記ポリウレタン組成物を用いて形成された最外層を有する、[9]に記載のマリンホース。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリウレタン組成物は、可使時間、室温条件下且つ開放系での硬化性、耐発泡性、硬化後の硬度、耐摩耗性、耐水性が優れる。
本発明のポリウレタン組成物によれば、本発明のマリンホースを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその製造方法について特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、可使時間、室温条件下且つ開放系での硬化性、耐発泡性、硬化後の硬度、耐摩耗性、及び、耐水性のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0011】
[ポリウレタン組成物]
本発明のポリウレタン組成物(本発明の組成物)は、
ポリエーテルポリオールとトリレンジイソシアネートとから形成され、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、
トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)及び/又は3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルを含む硬化剤と、
触媒としてアジピン酸とを含有し、
上記ウレタンプレポリマーが有する上記イソシアネート基と上記硬化剤が有するアミノ基とのモル比が0.90~2.00であり、
上記トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)及び/又は上記3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルの含有量が、上記硬化剤全量中の95~100モル%である、室温硬化型のポリウレタン組成物である。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0012】
[ウレタンプレポリマー]
本発明の組成物に含有されるウレタンプレポリマーは、ポリエーテルポリオールとトリレンジイソシアネートとから形成される。
【0013】
[ポリエーテルポリオール]
上記ウレタンプレポリマーを形成するために使用されるポリエーテルポリオールは、ヒドロキシ基を1分子当たり複数有し、主鎖がポリエーテルである化合物である。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、本発明の効果がより優れるという観点から、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含むことが好ましい。
【0014】
ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、イソシアネート(トリレンジイソシアネートを少なくとも含むイソシアネート)との反応によって得られるウレタンプレポリマーの粘度が常温において適度な流動性を有することができるという観点から、500~20,000であることが好ましい。本発明において上記重量平均分子量は、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン(THF))により得られたポリスチレン換算値である。
【0015】
[トリレンジイソシアネート]
上記ウレタンプレポリマーを形成するために使用されるトリレンジイソシアネートは、特に制限されない。トリレンジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、これらの混合物が挙げられる。
【0016】
[イソシアネート基]
本発明の組成物に含有されるウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を有する。
イソシアネート基は、トリレンジイソシアネートに由来することができる。
上記ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を、ウレタンプレポリマーの末端及び/又は側鎖に有することができる。
上記ウレタンプレポリマーは、本発明の効果がより優れる理由から、イソシアネート基を複数有することが好ましい。
ウレタンプレポリマーのイソシアネート基の含有量(NCO%)は、本発明の効果がより優れる理由から、上記ウレタンプレポリマー全量中の0.5~5質量%であることが好ましい。上記のイソシアネート基の含有量(NCO%)は、理論上の計算値であってもよい。ウレタンプレポリマーが市販品である場合、上記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基の含有量(NCO%)は、カタログ値であってもよい。
【0017】
(ウレタンプレポリマーの調製)
ウレタンプレポリマーの調製方法は特に制限されない。例えば、ポリエーテルポリオールを少なくとも含むポリオール(好ましくはポリオールの全量がポリエーテルポリオールである)とトリレンジイソシアネートを少なくとも含むポリイソシアネート(好ましくはポリイソシアネートの全量がトリレンジイソシアネートである)とを、ポリオールが有するヒドロキシ基に対し、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基が過剰になるように使用し、これらを混合して反応させることによってウレタンプレポリマーを製造することができる。
【0018】
[硬化剤]
本発明の組成物は、硬化剤を含有し、上記硬化剤は、トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)及び/又は3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルを含む。
本発明において上記硬化剤は、活性水素含有基を複数有し、上記ウレタンプレポリマーと反応しうる成分を指す。活性水素含有基は特に制限されない。例えば、アミノ基(-NH2)が挙げられる。
トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)は、上記ウレタンプレポリマーとの反応が緩やかなので、本発明の組成物は、可使時間を十分な長さで得ることができる。3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルも同様である。
【0019】
[トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)]
トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)は、下記構造の化合物であり、アミノ基(-NH
2)を有する。
本明細書において、トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)を「特定硬化剤1」と称することがある。
【化1】
【0020】
[3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピル]
3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピル(3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルエステル)は、下記構造の化合物であり、アミノ基(-NH
2)を有する。
本明細書において、3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルを「特定硬化剤2」と称することがある。
【化2】
上記硬化剤は、得られる硬化物の発色性が優れ、経時的な変色を抑制することができるという観点から、特定硬化剤1を含むことが好ましい。
【0021】
[特定硬化剤1,2の含有量]
本発明において、トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)及び/又は3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルの含有量は、硬化剤全量中の95~100モル%である。
本発明において、硬化剤が特定硬化剤1及び特定硬化剤2を含む場合、特定硬化剤1及び特定硬化剤2の合計含有量が、硬化剤全量中の95~100モル%である。
【0022】
(その他の硬化剤)
特定硬化剤1及び/又は特定硬化剤2の含有量が硬化剤全量中の95モル%以上100モル%未満である場合、硬化剤は、特定硬化剤1及び特定硬化剤2以外の硬化剤(その他の硬化剤)を更に含んでもよい。
その他の硬化剤(特定硬化剤1及び特定硬化剤2を除く)は、1分子中に複数の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)であれば特に限定されない。活性水素含有基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0023】
硬化剤は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の発色性が優れ、経時的な変色を抑制することができるという観点から、硬化剤がトリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)を含むことが好ましく、硬化剤の全量がトリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)であることがより好ましい。
【0024】
硬化剤は、本発明の効果(特に耐摩耗性、耐水性)がより優れるという観点から、硬化剤の全量が3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルであることが好ましい。
【0025】
[イソシアネート基とアミノ基とのモル比]
本発明において、上記ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と上記硬化剤が有するアミノ基とのモル比(NCO/NH2)は、0.90~2.00である。
特定硬化剤1及び特定硬化剤2は上述のとおりそれぞれアミノ基(-NH2)を有する。
【0026】
上記モル比は、本発明の効果(特に耐摩耗性)がより優れるという観点から、1.00~1.25であることが好ましく、1.02~1.08がより好ましい。
【0027】
本発明において、上記ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と上記硬化剤が有するアミノ基とのモル比(NCO/NH2)は、上述したウレタンプレポリマーのイソシアネート基の含有量(NCO%)と、硬化剤のアミン価(単位:mgKOH/g)から下記式で計算することができる。硬化剤がアミン価を数値範囲で有する場合、硬化剤のアミン価の平均値を用いて上記モル比を計算することができる。硬化剤が市販品である場合、硬化剤のアミン価としてカタログ値を用いることができる。
モル比(NCO/NH2)=A/B
A=使用されたウレタンプレポリマーの量(g)×NCO%×0.01÷42.1
B=使用された硬化剤の量(g)×アミン価×0.001÷56
【0028】
なお、硬化剤が特定硬化剤1及び特定硬化剤2以外の硬化剤(その他の硬化剤)を更に含む場合、その他の硬化剤が有する活性水素含有基は、上記モル比におけるアミノ基に加算することができる。本発明において、加算後のモル比は、0.90~2.00であればよく、好適範囲は上記と同様である。
【0029】
[アジピン酸]
本発明の組成物は、触媒としてアジピン酸とを含有する。
アジピン酸は、ウレタンプレポリマーと、トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)及び/又は3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルとの反応を、経時的に加速させることができる。このため、本発明の組成物は、可使時間を十分な長さにできる一方、室温且つ開放系での硬化性(特に24時間後の硬化性)が優れる。
【0030】
アジピン酸(HOOC-CH2CH2CH2CH2-COOH)は、特に制限されない。
【0031】
(アジピン酸の含有量)
アジピン酸の含有量は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、本発明の効果がより優れるという観点から、0.03~0.20質量部であることが好ましく、本発明の効果(特に、可使時間、室温条件下且つ開放系での硬化性、耐摩耗性、耐水性)がより優れ、混合終了5分後の粘度が低いため塗布等の作業性が優れ、耐水試験前後での物性低下を抑制できるという観点から、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.09~0.13質量部がより好ましい。
【0032】
(添加剤)
本発明の組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、老化防止剤、着色剤が挙げられる。各添加剤の種類、含有量は、適宜選択することができる。
【0033】
本発明の組成物は、MOCAを含有しないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
本発明の組成物は、金属触媒(金属を有する触媒)の含有量が、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0~0.5質量部であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0034】
(ポリウレタン組成物の製造方法)
本発明の組成物を製造する方法は特に制限されない。例えば、上述した各成分を窒素ガス雰囲気下で混合する方法等が挙げられる。
【0035】
[室温硬化型]
本発明のポリウレタン組成物は、室温硬化型である。また、本発明のポリウレタン組成物は、室温且つ開放系で硬化することができる。つまり、本発明の組成物は、室温条件下において、湿気によって硬化し、ポリウレタンとなることができる。本発明の組成物は、例えば、0~35℃、相対湿度20~65%の条件下で硬化することができる。
【0036】
(用途等)
本発明の組成物は、例えば、マリンホースのような大型のゴム製品に適用することができ、具体的には例えば、上記ゴム製品をカバーする最外層に適用することができる。
上記ゴム製品を構成するゴムは特に制限されない。
本発明の組成物は上述のとおり室温硬化型であるので、加熱や金型を使用せず、大型の製品に適用することができ、有用である。
【0037】
[マリンホース]
本発明のマリンホースは、本発明のポリウレタン組成物を用いて形成された、マリンホースである。
【0038】
本発明のマリンホースに使用されるポリウレタン組成物は、本発明のポリウレタン組成物であれば特に制限されない。
【0039】
上記ポリウレタン組成物を、本発明のマリンホースが有するいずれの部材に使用するかは特に制限されない。
本発明のポリウレタン組成物は耐摩耗性、耐水性等が優れるという観点から、本発明のマリンホースは、上記ポリウレタン組成物を用いて形成された最外層を有することが好ましい。
上記最外層の厚さは、例えば、3~20mmとすることができる。
【0040】
本発明のマリンホースが上記ポリウレタン組成物を用いて形成された最外層を有する場合、上記最外層によってカバーされるマリンホース本体は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
マリンホース本体の表層としては、例えば、ゴム層が挙げられる。上記ゴム層としては、例えば、ゴムとしてニトリルゴムを含有するゴム層が挙げられる。
マリンホース本体がゴム層を有する場合、マリンホース本体は加硫済みであればよい。
【0041】
(マリンホースの製造)
本発明のマリンホースの製造方法としては、例えば、加硫済みのゴム製のマリンホース本体の表面に上記ポリウレタン組成物を塗布し、塗布後、0~35℃の条件下で、大気中の湿気によって上記ポリウレタン組成物を硬化させて最外層を形成する方法が挙げられる。
マリンホース本体の表面に上記ポリウレタン組成物を塗布する方法は、特に制限されない。例えば、一般に使用されている各種の塗布方法を用いることができる。具体的には例えば、刷毛で塗る方法等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0043】
[ポリウレタン組成物の製造]
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、各ポリウレタン組成物を製造した。なお、混合の際、予め、ウレタンプレポリマーを80℃に加温し、硬化剤を加熱溶解した状態でそれぞれ使用した。
【0044】
[評価]
上記のとおり製造された各ポリウレタン組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
*可使時間(ポットライフ)
・評価方法
上記のとおり製造された各ポリウレタン組成物を、20℃、50%RH(相対湿度)の環境下でBH型粘度計(ローターNo.6、回転速度10rpm)を用いて60秒毎にポリウレタン組成物の粘度を測定し、測定開始から上記粘度が25000mPa・Sとなるまで時間をポットライフとした。
・評価基準
ポットライフが8~20分であった場合、可使時間が十分に長いと評価し、これを「〇」と表示した。「〇」の後に記載した数字はポットライフの測定結果(分)である。
ポットライフが3分超8分未満であった場合、可使時間がやや短いが、実用上問題ないと評価し、これを「△」と表示した。「△」の後の数字はポットライフ(分)である。
本発明において、ポットライフが3分超であった場合、可使時間が長い(可使時間が優れる)と評価した。
一方、ポットライフが3分以下であった場合、可使時間が非常に短く、実用的ではないと評価し、これを「×」と表示した。「×」の後の数字はポットライフ(分)である。
【0045】
*粘度(混合終了5分後の粘度)
上記のとおり混合して製造された各ポリウレタン組成物を、20℃、50%RH(相対湿度)の環境下に置き、混合終了5分後のポリウレタン組成物の粘度(単位mPa・s)を、BH型粘度計(ローターNo.6、回転速度10rpm)を用いて測定した。なお、上記粘度を測定できなかった場合(例えば、混合後の組成物の硬化が速すぎて混合直後の段階で材料が硬化した場合)、これを「測定不可」と表示した。
混合終了5分後のポリウレタン組成物の粘度は、特に制限されないが、塗布作業可能な粘度として5,000~25,000mPa・sであることが好ましい。混合終了5分後のポリウレタン組成物の粘度が5,000mPa・s以上である場合、例えばマリンホースのような円筒状のゴム製品に混合後のポリウレタン組成物を塗布しても上記ポリウレタン組成物が上記ゴム製品から垂れ落ちにくく、上記ポリウレタン組成物の厚みを確保しやいという観点から好ましい。混合終了5分後のポリウレタン組成物の粘度が25,000mPa・s以下である場合、塗布作業がしやすいという観点から好ましい。
混合終了5分後のポリウレタン組成物の粘度は、上述の観点から、7,000~10,000mPa・sであることがより好ましく、7,000~15,000mPa・sが更に好ましい。
【0046】
*硬化性(室温且つ開放系での24hr後の硬度)
・評価方法
上記のとおり製造された各ポリウレタン組成物を、10mmの厚さの型(縦5cm、横5cm)に流し込み、その後、20℃、50%RH(相対湿度)の環境下、型の上部は開放した状態で24時間養生させた。
養生後、得られた硬化物(24時間後硬化物)の硬度を、JIS K6253-3:2012に準拠して測定した。
・評価基準
上記のとおり測定された、室温(20℃)且つ開放系での24時間後の硬度が50以上であった場合、硬化性が優れると評価した。上記硬度が50より大きい程、硬化性がより優れる。
一方、上記硬度が50未満であった場合、硬化性が悪いと評価した。
【0047】
*耐発泡性
・評価方法
ニトリルゴムで形成されたゴムシートの上に、5mmの厚さの型(縦15cm、横20cm)を置き、上記型に、上記のとおり製造された各ポリウレタン組成物を流し込み、その後、20℃、50%RH(相対湿度)の環境下、型の上部は開放した状態で7日間養生させた。
養生後、得られた硬化物(ゴム層とウレタン層との積層体)を、縦15cm、横幅25mmの短冊状にカットし、上記短冊の長手方向のカット断面における、ウレタン層とゴム層との界面を目視で観察した。
・評価基準
上記界面に気泡がなく又は気泡があっても気泡の数が10個未満であり、且つ、上記界面に亀裂がなかった場合、耐発泡性が優れると評価し、これを「〇」と表示した。
上記界面が上記のような状態であった場合、ウレタン層とゴム層との接着性が優れると考えられる。
一方、上記界面に気泡が10個以上あった場合、又は、上記界面に亀裂があった場合、耐発泡性が悪いと評価した。
上記界面が上記のような状態であった場合、ウレタン層とゴム層との接着性が悪いと考えられる。
【0048】
*JIS-A硬度(7日経過後の硬度)
・評価方法
上記のとおり製造された各ポリウレタン組成物を、2mmの厚さの型に流し込み、その後、20℃、50%RH(相対湿度)の環境下、型の上部は開放した状態で7日間養生させた。
養生後、得られたシート状の硬化物(7日後硬化物)の硬度を、JIS K6253-3:2012に準拠して測定した。
なお、本明細書において、ポリウレタン組成物を上記条件(20℃、50%RHの環境下、上記型の上部は開放した状態で7日間養生)で硬化させた場合、得られた硬化物を完全に硬化したものとする。
・評価基準
上記のとおり得られた7日後硬化物の硬度が83~93であった場合、完全硬化後の硬度が優れると評価した。
一方、上記硬度が83未満又は93超であった場合、完全硬化後の硬度が低いと評価した。
なお、上記7日間の養生後に硬化物が得られなかった場合、これを「シート作製不可」と表示した。また、7日間養生後の硬化物が得られなかった場合、JIS-A硬度、後述する耐摩耗性、耐水性を評価しなかった。
【0049】
*耐摩耗性:DIN摩耗 摩耗体積(mm3)
・評価方法
上記のJIS-A硬度の測定のために得られたシート状の硬化物(7日後硬化物)を3枚重ねて、JIS K 6264-2:2005に準拠し、B法(ドラムを回転させる試験法)にてDIN摩耗試験を実施し、摩耗体積(mm3)を測定した。
・評価基準
上記摩耗体積が100mm3以下であった場合、耐摩耗性が優れると評価した。摩耗体積が100mm3よりも小さい程、耐摩耗性がより優れる。
一方、上記摩耗体積が100mm3を超えた場合、耐摩耗性が悪いと評価した。
【0050】
*耐水性:60℃温水×4W後 100%モジュラス(MPa)
・評価方法
上記のJIS-A硬度の測定のために得られたシート状の硬化物(7日後硬化物)と同じ硬化物を60℃の温水に4週間浸漬させる耐水試験を行った。
耐水試験後、温水から硬化物を引き上げて、硬化物からダンベル状3号形試験片を打ち抜き、JIS K6251:2017に準拠して、引張速度200mm/minで引張試験を実施し、耐水試験後の100%モジュラス(MPa)を測定した。
・評価基準
上記耐水試験後の100%モジュラスが4.0MPa以上であった場合、耐水性(耐温水性)が優れると評価した。上記100%モジュラスが4.0MPaよりも大きい程、耐水性(耐温水性)がより優れる。
一方、上記100%モジュラスが4.0MPa未満であった場合、耐水性が悪いと評価した。
【0051】
・耐水試験前の100%モジュラス(MPa)
上記のJIS-A硬度の測定のために得られたシート状の硬化物(7日後硬化物)と同じ硬化物(耐水試験はなし)を用いて、硬化物からダンベル状3号形試験片を打ち抜き、JIS K6251:2017に準拠して、引張速度200mm/minで引張試験を実施し、耐水試験前の100%モジュラス(MPa)を測定した。
【0052】
・耐水試験前後の100%モジュラスの維持率
上記のとおり測定された、耐水試験後の100%モジュラス、及び、耐水試験前の100%モジュラスを下記式に当てはめて、耐水試験前後の100%モジュラスの維持率を算出した。
耐水試験前後の100%モジュラスの維持率(%)
=A÷B×100
A:耐水試験後の100%モジュラス
B:耐水試験前後の100%モジュラス
上記維持率が大きい程、マリンホースの使用時の物性低下を抑制できるという観点から好ましい。
【0053】
*発色性
・評価方法
上記のJIS-A硬度の測定のために得られたシート状の硬化物(7日後硬化物)の色(透明か否か)を目視で確認した。
・評価基準
本発明において、上記硬化物が、透明であった場合、硬化物の発色性が優れると評価した。上記硬化物が透明であった場合、上記硬化物は着色していてもよい。上記硬化物が透明であった場合としては、硬化物が、例えば、無色透明、黄色で透明、オレンジ色で透明、又は、赤色で透明であった場合が挙げられる。硬化物の発色性が優れることによって、硬化物の外観も優れるので好ましい。
一方、上記硬化物が、透明ではなかった場合、硬化物の発色性が悪いと評価した。上記硬化物が透明ではなかった場合としては、例えば、硬化物が濁った場合、又は、硬化物の色が赤色よりも濃かった(例えば、茶色)場合が挙げられる。
【表1】
【0054】
【0055】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(ウレタンプレポリマー)
・ウレタンプレポリマー:商品名ハイプレンL-100、三井化学社製。ポリテトラメチレンエーテルグリコールとトリレンジイソシアネート(TDI)とで形成された、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー。イソシアネート基含有量(NCO%)はウレタンプレポリマー中の4.2質量%。
【0056】
(硬化剤)
以下に実施例で使用された各硬化剤の詳細を示す。なお、各硬化剤のアミン価について、カッコ内に、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と硬化剤が有するアミノ基とのモル比(NCO/NH2)の計算に使用したアミン価の値を示す。
・トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート):商品名CUA-4、クミアイ化学工業社製。分子量314.3。アミン価346~368mgKOH/g(357mgKOH/g)。特定硬化剤1
【0057】
・(比較)4,4-ジアミノ-3,3-ジエチル-5,5-ジメチルジフェニルメタン:商品名キュアハードMED-J、クミアイ化学工業社製。アミン価386~408mgKOH/g(397mgKOH/g)
・(比較)3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノフェニルメタン:MOCA。商品名イハラキュアミンMT、クミアイ化学工業社製。アミン価415~426mgKOH/g(420.5mgKOH/g)
【0058】
・3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸2-メチルプロピル:商品名ADDOLINK1604、ランクセス株式会社製、分子量242.7。アミン価452~479mgKOH/g(465.5mgKOH/g)。特定硬化剤2
【0059】
・(比較)ジメチルチオトルエンジアミン :商品名ハートキュア30、クミアイ化学社製。アミン価531mgKOH/g(531mgKOH/g)
【0060】
(アジピン酸)
・アジピン酸:旭化成社製
【0061】
第1表において、特定硬化剤1及び特定硬化剤2を含有せず、代わりにMOCAを含有する比較例1を基準として、特定硬化剤1及び/又は特定硬化剤2の含有量が所定の範囲を満たさない比較例2は可使時間が短く、完全硬化後(7日経過後)の硬度が低く、耐摩耗性、耐水性が悪かった。なお、特定硬化剤1及び特定硬化剤2を含有せず、代わりにMOCAを含有する比較例1は、環境衛生上の観点から好ましくない。
特定硬化剤1及び特定硬化剤2を含有せず、代わりに4,4-ジアミノ-3,3-ジエチル-5,5-ジメチルジフェニルメタンを含有する比較例3は、可使時間が短く、シートを作製することができなかった。
特定硬化剤1及び/又は特定硬化剤2の含有量が所定の範囲を満たさない比較例4は可使時間が短く、完全硬化後(7日経過後)の硬度が低く、耐水性が悪かった。
特定硬化剤1及び特定硬化剤2を含有せず、代わりにジメチルチオトルエンジアミンを含有する比較例5は、可使時間が短く、シートを作製することができなかった。
ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と硬化剤が有するアミノ基とのモル比(NCO/NH2)が0.90未満である比較例6は、完全硬化後(7日経過後)の硬度が低く、室温条件下且つ開放系での硬化性、耐摩耗性、耐水性が悪かった。
上記モル比(NCO/NH2)が2.00を超える比較例7は、耐発泡性が悪かった。
アジピン酸を含有しない比較例8は、完全硬化後(7日経過後)の硬度が低く、室温条件下且つ開放系での硬化性、耐水性が悪かった。
アジピン酸を含有しない比較例9は、室温条件下且つ開放系での硬化性が悪かった。
【0062】
これに対して、本発明のポリウレタン組成物は、可使時間の長さが十分に得られ、室温条件下且つ開放系での硬化性、耐発泡性が優れ、硬化後(7日経過後)の硬度、耐摩耗性、耐水性(耐温水性)が優れた。
本発明のポリウレタン組成物の、可使時間、室温条件下且つ開放系での硬化性、耐発泡性、硬化後(7日経過後)の硬度、耐摩耗性、耐水性(耐温水性)は、比較例1と同程度又は比較例1よりも優れた。なかでも、実施例1と比較例1との対比から、本発明のポリウレタン組成物は、MOCAを含有する比較例1よりも、可使時間が長く、耐摩耗性が優れることが分かる。
実施例1~7、10、11で得られた硬化物は発色性が優れた。一方、実施例8で得られた硬化物は発色性が悪かった。これは実施例8は特定硬化剤2を使用したためと考えられる。実施例9は特定硬化剤1,2を併用したが、特定硬化剤2を使用したため実施例8と同様に発色性が悪くなったと考えられる。
【0063】
混合終了5分後の粘度について実施例10、1~3、11を比較すると、実施例10、1~3は、実施例11よりも、混合終了5分後の粘度が低くポリウレタン組成物の粘度が低いことが示されている。実施例11は、混合終了5分後の粘度が高く増粘が速い。
このため、本発明においてポリウレタン組成物を塗布する(例えば、マリンホースのような大型のゴム製品に対して塗布する)作業が行いやすいという観点から、アジピン酸の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.15質量部以下であることが好ましく、0.13質量部以下がより好ましいということができる。
上記の「0.13質量部以下がより好ましい」について、実施例2、3の可使時間は実施例2が実施例3よりも1分長く、更に、混合終了5分後の粘度で実施例2、3を比較すると、実施例2の上記粘度は実施例3よりも格段に低いことが示されている。
また、室温条件下且つ開放系での硬化性、耐摩耗性について実施例10、1~3、11を比較すると、実施例2~3、11は、実施例10、1よりも、室温条件下且つ開放系での硬化性及び耐摩耗性が格段に優れることが示されている。
このため、室温条件下且つ開放系での硬化性及び/又は耐摩耗性がより優れるという観点から、アジピン酸の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.09質量部以上が好ましいということができる。
【要約】
本発明は、可使時間、室温条件下且つ開放系での硬化性、耐発泡性、硬化後の硬度、耐摩耗性、耐水性が優れるポリウレタン組成物、及び、マリンホースの提供を目的とする。本発明は、ポリエーテルポリオールとトリレンジイソシアネートとから形成され、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)及び/又は3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルを含む硬化剤と、触媒としてアジピン酸とを含有し、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と硬化剤が有するアミノ基とのモル比が0.90~2.00であり、トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)及び/又は3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルの含有量が、硬化剤全量中の95~100モル%である、室温硬化型のポリウレタン組成物、並びに、これを用いて形成されたマリンホースである。