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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】車高調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/02 20060101AFI20230913BHJP
   F16D 13/08 20060101ALI20230913BHJP
   F16D 41/10 20060101ALI20230913BHJP
   F16D 41/20 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B60G17/02
F16D13/08 Z
F16D41/10
F16D41/20 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019160997
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021037868
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/058773(WO,A1)
【文献】特開2003-039928(JP,A)
【文献】特開2019-058032(JP,A)
【文献】特開2009-096413(JP,A)
【文献】特開2016-020722(JP,A)
【文献】特開2005-264991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 - 99/00
F16D 11/00 - 23/14
F16D 41/00 - 47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサスペンションを構成する車体側の基部および車輪側の基部のうち何れか一方に設置され、車高調節に用いられるねじ部を有する設置基部と、
前記ねじ部に螺合するコマ部材を回転可能に支持すると共に、前記設置基部との相対高さが変化するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記コマ部材を回転させる駆動モータと、
前記駆動モータと前記コマ部材との間に介挿され、前記駆動モータの正逆回転を前記コマ部材に伝達すると共に、前記コマ部材からの回転逆入力が前記駆動モータに伝達されるのを防止するクラッチと、
前記駆動モータの駆動態様を制御する制御部と、を備え
前記クラッチが、
前記コマ部材に歯合するギヤ部および前記駆動モータの回転が伝達される係合部を有し、前記ハウジングに回転可能に支持されるケースと、
前記ケースの回転軸芯と同軸芯状に前記ハウジングに形成された筒状の当接部と、
前記当接部に対して自然状態に戻るべく拡径あるいは縮径して付勢当接する状態に配置された巻きばねと、
前記駆動モータの出力軸に接続され、前記係合部に回転力を伝達する爪部材と、を有し、
前記爪部材が前記駆動モータによって駆動回転される際に、前記爪部材の一部が前記巻きばねの端部に当接して前記巻きばねの付勢当接を解消し、前記爪部材が前記ケースを回転させる状態となり、
前記ケースに前記回転逆入力が作用した際には、前記ケースの一部が前記巻きばねの端部に当接して前記巻きばねの付勢当接が高められ、前記ケースの回転が阻止される車高調整装置。
【請求項2】
前記当接部が前記巻きばねの外周側に配置され、前記巻きばねの拡径変形により前記当接部への付勢当接が行われる請求項1に記載の車高調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンションに設置され、ねじ部を介して車高を変化させる車高調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような車高調整装置としては例えば以下の特許文献1(〔0024〕乃至〔0032〕段落など参照)に記載されたものがある。
【0003】
係る車高調整装置は、車輪のダンパにおいてばねを支持する部材の一部に取り付けられる。この車高調整装置は、筒状のスリーブ13の周りに相対回転可能に設けられたスピンドル7をモータ6によって回転させ、このスピンドル7の周りにボールねじを介して螺合しているガイドスリーブ9を上下させる。
【0004】
ガイドスリーブ9は、スリーブ13に対してテレスコピックに伸縮し、スリーブ13に対する二つの高さ位置で固定される。当該固定に際しては、スピンドル7の上方端部に、スピンドル7と相対回転可能なロックリング19が設けてあり、このロックリング19の回転姿勢に応じてガイドスリーブ9が二つの高さ位置の何れかで支持される。
【0005】
ここには所謂ボールペンのノック機構が構成されている。ガイドスリーブ9の上昇に際し、ガイドスリーブ9と共にランプリング21が上昇する。このランプリング21の上縁には、のこぎり歯状の傾斜面が設けてあり、この傾斜面がロックリング19を押し上げるようにロックリング19の外周に設けたロック突起20に当接する。ガイドスリーブ9が上昇して、ランプリング21がロックリング19に当接すると、ガイドスリーブ9の内面に形成された溝部によるロックリング19の回転拘束が開放され、ロックリング19が、のこぎり歯の一山分だけ回転する。
【0006】
この結果、ロックリング19の外周に設けられたロック突起20がガイドスリーブ9の内面に設けられた二種類のロックポケット23a、23bに交互に係合する。これらロックポケット23a、23bは、夫々ガイドスリーブ9のスライド方向に沿って深さが異なっており、ガイドスリーブ9の高さ保持位置が変更される。
【0007】
これらの構成によれば、ガイドスリーブ9の高さを調整する際には、スピンドル7とガイドスリーブ9との間のボールねじによってガイドスリーブ9が駆動される。一方、ガイドスリーブ9を位置保持する際には、ガイドスリーブ9を設定高さに対して所定高さだけ上方に持ち上げたのち改めて当該所定高さ下げることで、ガイドスリーブ9のロックポケット23aあるいは23bをロックリング19に当接させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2016-530154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の車高調整装置にあっては、車高調整後に機械的な爪を用いて車高を保持する。そのため、車高保持の信頼性は高まるものの保持車高が段階的になり、任意の車高を選択することができない。
【0010】
また、車高を上昇・下降させる際には爪位置を切り換えるために微細な上下動を行わせる必要がある。よって、目標とする車高への円滑な変化が期待できない。
【0011】
さらに、当該車高装置の構造は極めて複雑であり、耐久性・信頼性においても十分とは言えない。
【0012】
このように、従来の車高調整装置にあっては種々の改善すべき点があり、従来から機構が簡便で任意の車高設定が迅速に行える車高調整装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(特徴構成)
本発明に係る車高調整装置の特徴構成は、
車両のサスペンションを構成する車体側の基部および車輪側の基部のうち何れか一方に設置され、車高調節に用いられるねじ部を有する設置基部と、
前記ねじ部に螺合するコマ部材を回転可能に支持すると共に、前記設置基部との相対高さが変化するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記コマ部材を回転させる駆動モータと、
前記駆動モータと前記コマ部材との間に介挿され、前記駆動モータの正逆回転を前記コマ部材に伝達すると共に、前記コマ部材からの回転逆入力が前記駆動モータに伝達されるのを防止するクラッチと、
前記駆動モータの駆動態様を制御する制御部と、を備え
前記クラッチが、
前記コマ部材に歯合するギヤ部および前記駆動モータの回転が伝達される係合部を有し、前記ハウジングに回転可能に支持されるケースと、
前記ケースの回転軸芯と同軸芯状に前記ハウジングに形成された筒状の当接部と、
前記当接部に対して自然状態に戻るべく拡径あるいは縮径して付勢当接する状態に配置された巻きばねと、
前記駆動モータの出力軸に接続され、前記係合部に回転力を伝達する爪部材と、を有し、
前記爪部材が前記駆動モータによって駆動回転される際に、前記爪部材の一部が前記巻きばねの端部に当接して前記巻きばねの付勢当接を解消し、前記爪部材が前記ケースを回転させる状態となり、
前記ケースに前記回転逆入力が作用した際には、前記ケースの一部が前記巻きばねの端部に当接して前記巻きばねの付勢当接が高められ、前記ケースの回転が阻止される点に特徴を有する。
【0014】
(効果)
本構成のようにクラッチが設けられていることで、車体の荷重がハウジングに作用し、当該荷重がコマ部材に逆入力として作用した場合でも、当該逆入力が駆動モータに伝達されるのを防止することができる。そのため駆動モータを逆入力に抵抗させるべく駆動させるなどの必要性が生じない。
本構成であれば、車高調整の動作が簡便で任意の車高設定を迅速に行うことができ、省電力化が可能な車高調整装置を得ることができる。
【0015】
削除
【0016】
(効果)
また、本構成のクラッチであれば、ほぼ全ての構成部材が略筒状となり、回転伝達経路の途中に配置できる簡便かつコンパクトなクラッチを得ることができる。また、巻きばねを用いる場合、当接部に対する係止力は巻きばねの弾性あるいは巻き付け回数を調節することで容易に変更可能であるため各種の設計対応が可能となる。さらに、クラッチの動作に際しては巻きばねの付勢当接巻き付け状態が僅かに変化するだけであり、振動や騒音の発生が抑制された車高調整装置を得ることができる。
【0017】
(特徴構成)
本構成の車高調整装置においては、前記当接部が前記巻きばねの外周側に配置され、前記巻きばねの拡径変形により前記当接部への付勢当接が行われるように構成することができる。
【0018】
(効果)
本構成のように巻きばねの拡径変形を利用してケースの逆入力による回転を阻止する場合、ケースと巻きばねとの当接位置がケースの回転中心からより離れた位置となる。このため、ケースの回転を阻止するモーメントが大きくなり易く回転防止効果が高まる。また、巻きばねの周長が長くなるため、ケースに対する当接長さを確保し易くなる。よって、所定の摩擦力を得るために必要な巻き数が少なくなり、回転軸芯の方向に沿った巻きばね更にはクラッチの寸法を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る車高調整装置の構成を示す説明図
図2】第1実施形態に係る車高調整装置の要部を示す斜視図
図3】第1実施形態に係る車高調整装置の要部を示す分解斜視図
図4】第2実施形態に係る車高調整装置の要部を示す斜視図
図5】第3実施形態に係る車高調整装置の構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
(全体概要)
図1に、第1実施形態に係る車高調整装置Sを示す。本実施形態の車高調整装置Sは、例えば、車両のサスペンションを構成する車体側の設置基部および車輪側の設置基部のうち何れか一方に設置される。本実施形態では、一つの車輪につき、車輪側の設置基部、即ち、サスペンションのコイルばね1を受けるばね受2の下方に車高調整装置Sを設ける例を示す。以下、当該車高調整装置Sを設置した側のものを設置基部Aと称する。
【0021】
本実施形態において設置基部Aはショックアブソーバのシェルであり、当該シェルに筒状のスリーブ3が外挿してある。このスリーブ3は、車高調整装置Sの基体部であり、後述のハウジング4が高さ調節自在に取り付けられる。スリーブ3には雄ねじ部3aとレールAaが外挿されている。スリーブ3の下端に設けた第1フランジ部3bと、雄ねじ部3aの上端でスリーブ3の外面に螺合させた固定ナット3cとで雄ねじ部3aとレールAaがスリーブ3に固定される。スリーブの上端には中心側に張り出した第2フランジ部3dが設けられており、シェルの上面に当接する。スリーブ3は、コイルばね1によってばね受2およびハウジング4等を介して下方に付勢され、第2フランジ部3dがシェルに押し付けられてスリーブ3の位置が固定される。
【0022】
ばね受2の下方側には車高調整装置Sを構成するハウジング4が設けられている。他方のハウジング4に設けられたコマ部材5には、この雄ねじ部3aに螺合する雌ねじ部5aが形成されている。コマ部材5は、支持軸受6を介してハウジング4を支持している。これにより、駆動モータMによってコマ部材5を正逆回転させることでハウジング4がスリーブ3に対して昇降し、車両の車高調整が行われる。
【0023】
因みに、これら雄ねじ部3a及び雌ねじ部5aは台形ねじで構成してある。台形ねじであれば、夫々のねじ山の断面積を増やすことができ、かつ、互いのねじ山の当接面積を少なくして耐荷重を高めることができる。
【0024】
車高が変化する際にはハウジング4は回転しない。通常は、車重が作用するコイルばね1とばね受2との摩擦力によってハウジング4の回転が阻止される。ただし、当該摩擦に抗ってハウジング4が回転するのを防止するために、ハウジング4の下部には切欠き4aが設けられている。当該切欠き4aは、設置基部Aに設けた長尺状のレールAaを跨ぐように配置され、ハウジング4が車高変更時に設置基部Aに対して回転するのを規制する。
【0025】
〔クラッチ〕
コマ部材5は、ばね受2・ハウジング4・支持軸受6を介して車両の荷重を支持する。その際、この荷重はコマ部材5を回転させようとする。コマ部材5が回転すると車高が下がるため、これを防止するべくハウジング4にはクラッチCが設けられている。
【0026】
図2はクラッチCの斜視図であり、図3は、クラッチCの分解斜視図である。クラッチCは、駆動モータMとコマ部材5との間に介装してある。主な構成は、駆動モータMの出力軸に係合する爪部材C1と、当該爪部材C1が係合する筒状のケースC2と、当該ケースC2の内部に設けられた巻きばねC3と、ハウジング4に設けられて巻きばねC3が巻き付き状態に当接・離間する筒状の当接部C4である。当接部C4は、ケースC2の回転軸芯Xと同軸芯状に形成される。
【0027】
このうちケースC2は、図1乃至図3に示すように例えばカップ状の部材であり、外周部には第1ギヤC21が設けてある。この第1ギヤC21は、コマ部材5の外周に設けた第2ギヤ51と係合する。また、ケースC2の内部には巻きばねC3が装着される。さらにケースC2の内部であって、巻きばねC3とケースC2の内周面との間には、ハウジング4から延出する円筒状の当接部C4が挿入した状態で配置される。
【0028】
さらに、ハウジング4からは軸部C5が延出しており、ケースC2の孔部C25を貫通すると共に、爪部材C1の基部C11の上面側に形成された孔部C14に挿入される。孔部C25には低摩擦係数を有する部材で形成した第1ブッシュ71が挿入され、孔部C14には同様の第2ブッシュ72が挿入される。これにより、ケースC2および爪部材C1が軸部C5によって円滑に回転支持される。
【0029】
爪部材C1は、筒状の基部C11と、当該基部C11から突出する爪部C12とを有する。爪部C12は、ケースC2の底面に形成した円弧状の孔部で構成される係合部C22を介してケースC2の内部に侵入している。駆動モータMを回転させると、モータ軸Maの断面形状に合わせて基部C11の下面に形成された係合孔C15に駆動力が伝達されて爪部C12が回動し、係合部C22の両端の何れかに当接してケースC2を正逆回転させる。
【0030】
この爪部C12は当該回動に際して、巻きばねC3の両端部のうち何れかを押し操作する。爪部C12は、巻きばねC3の両端部に設けた第1端部C31と第2端部C32との間に位置させる。爪部C12の先端には、巻きばねC3の第1端部C31が係合離脱しないように鉤部C13を取り付けておくとよい。図2および図3の例では、巻きばねC3は自然状態に戻るべく拡径して当接部C4の内面に当接している。この時の当接力を高めるため、巻きばねC3の断面形状は矩形状であるのが好ましい。
【0031】
駆動モータMにより爪部C12が何れかの方向に回動すると、第1端部C31あるいは第2端部C32が押し操作される。何れの場合も、当接部C4に対する巻きばねC3の当接力が減少する。この結果、巻きばねC3が当接部C4に対して滑り始め、爪部C12は巻きばねC3およびケースC2を共に回転させる。
【0032】
巻きばねC3の端部を素早く押し操作するために、当接部C4に当接している状態の巻きばねC3の第1端部C31および第2端部C32に対して、爪部C12の両側面が夫々当接するほど近接しているのが好ましい。例えば、爪部C12が回動して第1端部C31を押し操作すると、第2端部C32は爪部C12の回動に遅れ、爪部C12の側面との距離が広がる。ただし、爪部C12の回動が終了すれば、巻きばねC3は自然状態に戻ろうとして、爪部C12から離間していた第2端部C32が再度爪部C12の側面近傍の位置に復帰する。よって、次に爪部C12が第2端部C32の側に回動する際には、爪部C12は素早く第2端部C32を押し操作することができる。このようなケースC2の正逆回転により、ハウジング4が昇降して車高調整が行われる。
【0033】
一方、車高を維持する際には、車両の荷重によってコマ部材5が回動しないようにコマ部材5を制動する必要がある。コマ部材5が回転逆入力によって回動を強いられる場合、本構成ではケースC2の底面から一体に突出形成した、第1端部C31を押圧する第1作用部C23あるいは第2端部C32を押圧する第2作用部C24が機能する。つまり、第1作用部C23および第2作用部C24は巻きばねC3を拡径する側に押し操作する。図2に示すように、巻きばねC3の第1端部C31は爪部C12と第1作用部C23とで挟まれた状態となり、第2端部C32は爪部C12と第2作用部C24とで挟まれた状態となる。
【0034】
周方向に沿った第1作用部C23と第2作用部C24との間隔は、同方向に沿った巻きばねC3の第1端部C31と第2端部C32との間隔よりも若干広く形成してある。これは、爪部C12によって巻きばねC3の当接が緩められる際に、第1端部C31と第2端部C32とが周方向に沿って広がることを可能にするためである。
【0035】
尚、図3に示すように、回転軸芯Xに沿った第1作用部C23の高さおよび第2作用部C24の高さは、ケースC2の軽量化を図る等の目的から夫々の押し操作が可能となる範囲で異ならせてある。
【0036】
〔その他の構成〕
駆動モータMは制御部8によって駆動制御されるが、例えば、爪部C12が巻きばねC3の第1端部C31あるいは第2端部C32の押し操作を開始する瞬間だけ回転トルクを高めるよう電力印加を行うことができる。これにより、巻きばねC3が当接部C4に対して摺動し始める迄の高い摩擦力に対抗することができ、コマ部材5を迅速に回転開始させることができる。
【0037】
ハウジング4の上下端部とスリーブ3との間には、可撓性の埃除けカバー9を設けておく。これによりスリーブ3の雄ねじ部3a等を清浄に維持し、円滑な作動性を確保することができる。
【0038】
スリーブ3は、その内側にショックアブソーバのピストンを組み込むことができる。図1では、スリーブ3の内周面をピストン10の摺動面としているが、この他に、予めショックアブソーバとして組み立てたものをスリーブ3の内部に設けることができる。これにより、当該車高調整装置Sの小型化が可能となる。
【0039】
〔第2実施形態〕
図4には、第2実施形態に係るクラッチCの構成を示す。ここでは巻きばねC3が巻き付く当接部C4を巻きばねC3の内周側に設ける。
【0040】
この場合、ハウジング4から延出する筒状の軸部C5が巻きばねC3の当接部C4を兼ねる。軸部C5の中心には、ケースC2の底部に立設した第1軸部C25を挿通する第1軸孔C51が設けてある。尚、第1軸部C25と第1軸孔C51との間には摺動性を高める第1ブッシュ71が介装してある。
【0041】
ケースC2の裏面であって、第1軸部C25の中心部には第2軸孔C26を形成してあり、爪部材C1の表面に形成した第2軸部C14が挿通される。第2軸部C14と第2軸孔C26との間にも摺動性を高める第2ブッシュ72が介装されている。
【0042】
爪部C12および第1作用部C23、第2作用部C24は、夫々巻きばねC3の外側に配置される。つまり、巻きばねC3が縮径変形することで当接部C4への巻き付勢力が増大する。
【0043】
本構成であれば、第1実施形態で設けた筒状の当接部C4を省略することができ、クラッチCの構成が簡略化される。特に、巻きばねC3およびクラッチCの外径寸法が小さくできる。小径化のためケースC2の回転を止める制動トルクが減少するが、巻きばねC3の巻数を増やすことで対処可能である。また、巻きばねC3の第1端部C31と第2端部C32に当接するケースC2の第1作用部C23と第2作用部C24もケースC2の内面に部分的な凸部を形成することで足りるからケースC2が軽量化される。このように本構成であれば、クラッチCさらには車高調整装置Sの更なるコンパクト化が可能となる。
【0044】
〔第3実施形態〕
図5には、第3実施形態に係る車高調整装置Sの構成を示す。ここでは、スリーブ3の雄ねじ部3aとコマ部材5との螺合部としてボールねじBを用いる。
【0045】
本構成であれば、雄ねじ部3aとコマ部材5との相対回転に係る摩擦力が極めて小さくなり駆動力が低減される。このため駆動モータMを小型化でき、消費電力を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る車高調整装置は、例えばコイルばねを備えた車両のサスペンション等に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
4 ハウジング
5 コマ部材
8 制御部
A 設置基部
C クラッチ
C1 爪部材
C11 基部
C2 ケース
C22 係合部
C3 巻きばね
C4 当接部
M 駆動モータ
S 車高調整装置
X 回転軸芯
図1
図2
図3
図4
図5