(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】到着判定システムおよび到着判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
G01C21/34
(21)【出願番号】P 2019176719
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2019026277
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 歩
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-002978(JP,A)
【文献】特開2009-080009(JP,A)
【文献】特開2009-186205(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0019039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が停止しているか否かを判定する停止判定部と、
前記車両が停止しており、かつ、前記車両の現在地が目的地を囲む道路の内側に存在する場合、前記車両が前記目的地に到着したと判定する到着判定部と
、
前記現在地と前記目的地とを結ぶ線分と、道路とが接触するか否かを判定する接触判定部と、を備え、
前記線分と道路とが接触しない場合、前記到着判定部は、前記現在地が前記目的地を囲む道路の内側に存在するとみなす、
到着判定システム。
【請求項2】
前記到着判定部は、
前記現在地と前記目的地との距離が閾値より大きい場合、前記車両が前記目的地に到着したと判定しない、
請求
項1に記載の到着判定システム。
【請求項3】
前記閾値は、
前記車両が停止している期間において、時間の経過とともに大きくなる、
請求
項2に記載の到着判定システム。
【請求項4】
コンピュータを、
車両が停止しているか否かを判定する停止判定部、
前記車両が停止しており、かつ、前記車両の現在地が目的地を囲む道路の内側に存在する場合、前記車両が前記目的地に到着したと判定する到着判定部、
前記現在地と前記目的地とを結ぶ線分と、道路とが接触するか否かを判定する接触判定部、として機能させ、
前記線分と道路とが接触しない場合、前記到着判定部は、前記現在地が前記目的地を囲む道路の内側に存在するとみなす、
到着判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地への到着を判定する到着判定システムおよび到着判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーションシステム等において、目的地に到着したが否かを判定する処理が行われている。例えば、特許文献1に開示された技術においては、車両の位置情報から、車両が判定エリア内に存在し、車両速度が所定速度以下の状態が所定の時間以上継続した場合に目的地に到着したと判定される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、目的地への到着を誤判定することがあった。すなわち、目的地として設定された座標と、目的地への到着座標(例えば、駐車場の座標等)とが異なる場合、誤判定が生じやすくなる。目的地として設定された座標と、目的地への到着座標とが異なる場合にも到着と判定するためには、目的地に到着したと判定するための判定エリアが充分に広いことが必要になる。しかし、判定エリアが過度に広いと、目的地周辺の道路で信号待ちをしているなどの場合に目的地に到着したと判定されるなどの誤判定が生じやすい。
【0005】
特に、工場などの広い敷地を有する目的地においては、目的地として設定された座標と敷地内の駐車場が遠い場合等において、正確に目的地への到着を判定することが困難である。また、目的地となる施設の敷地の境界を示す情報を予め用意すれば、現在地が当該境界の内側に存在する場合に車両が目的地に到着したと判定することは可能である。しかし、目的地となり得る全ての施設についてこのような情報を用意するのは非常に困難である。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、簡易な構成によって目的地への到着判定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、到着判定システムは、車両が停止しているか否かを判定する停止判定部と、前記車両が停止しており、かつ、前記車両の現在地が目的地を囲む道路の内側に存在する場合、前記車両が前記目的地に到着したと判定する到着判定部と、を備える。
【0007】
また、上記の目的を達成するため、到着判定プログラムは、コンピュータを、車両が停止しているか否かを判定する停止判定部、前記車両が停止しており、かつ、前記車両の現在地が目的地を囲む道路の内側に存在する場合、前記車両が前記目的地に到着したと判定する到着判定部、として機能させる。
【0008】
すなわち、任意の目的地は道路に囲まれている。従って、目的地を囲む道路の内側に車両が停止している場合、車両が目的地に到着している状態または目的地に非常に近い状態のいずれかである。従って、目的地を囲む道路の内側に車両が停止している場合に目的地に到着したと判定される構成であれば、目的地としての施設内に車両が存在する可能性が高い状態で、目的地に到着したと判定することができる。
【0009】
上記の目的を達成するため、到着判定システムは、車両が停止しているか否かを判定する停止判定部と、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分と、道路とが接触するか否かを判定する接触判定部と、車両が停止しており、かつ、線分と道路とが接触しない場合、車両が目的地に到着したと判定する到着判定部と、を備えてもよい。
【0010】
また、上記の目的を達成するため、到着判定プログラムは、コンピュータを、車両が停止しているか否かを判定する停止判定部、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分と、道路とが接触するか否かを判定する接触判定部、車両が停止しており、かつ、線分と道路とが接触しない場合、車両が目的地に到着したと判定する到着判定部、として機能させてもよい。
【0011】
すなわち、車両と目的地(目的地とされた座標)との間に道路が存在しない場合、車両と目的地との間を分断する道路が存在しない状態であるため、目的地としての施設内に車両が存在する可能性が高い。このため、車両が停止しており、かつ、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分と、道路とが接触しない場合に、車両が目的地に到着したと判定する構成によれば、簡易な構成によって目的地への到着判定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】到着判定システムを含むナビゲーションシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーションシステムの構成:
(2)到着判定処理:
(3)他の実施形態:
【0014】
(1)ナビゲーションシステムの構成:
図1は、本発明にかかる到着判定システムを含むナビゲーションシステム10の構成を示すブロック図である。ナビゲーションシステム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30を備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。
【0015】
記録媒体30には、予め地図情報30aが記録されている。地図情報30aは、経路の探索や車両の位置の特定に利用される情報であり、車両が走行する道路上に設定されたノードの位置を示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置を示す形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ,道路やその周辺に存在する地物の位置や属性等を示す地物データ等を含んでいる。これらの地物には目的地となり得る施設が含まれる。本実施形態において、施設を示す地物データに施設の位置を示す情報が含まれるが、施設の範囲を示す情報(施設の境界を示すポリゴン等)は含まれていない(または、一部の施設データのみに施設の範囲を示す情報が存在する)。
【0016】
本実施形態において、リンクデータには各リンクが示す道路区間のリンクコストが対応付けられている。リンクコストはリンクが示す道路区間が経路となりやすい度合いを示しており、種々の手法で決められて良く、渋滞情報等に基づいて変化しても良い。本実施形態において、地図情報30aにリンクデータとして記録されていない道路は、目的地への到着判定において存在しない道路として扱われる。従って、地図情報30aにリンクデータとして含まれない道路(施設内で駐車場まで移動するための道路等)は、目的地への到着判定にも考慮されない。
【0017】
本実施形態においては、車両にGNSS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43とユーザI/F部44とが備えられている。GNSS受信部41は、Global Navigation Satellite Systemの信号を受信する装置であり、航法衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在地を算出するための信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在地を取得する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ43は、車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両の向きに対応した信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の進行方向を取得する。車速センサ42およびジャイロセンサ43等は、車両の走行軌跡を特定するために利用され、本実施形態においては、車両の出発地と走行軌跡とに基づいて現在地が特定され、当該出発地と走行軌跡とに基づいて特定された車両の現在地がGNSS受信部41の出力信号に基づいて補正される。
【0018】
ユーザI/F部44は、利用者の指示を入力し、また、利用者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しない入力部および表示部(タッチパネルディスプレイやスイッチ)、スピーカー等の出力部を備えている。
【0019】
本実施形態においては、制御部20で実行可能なプログラムに図示しないナビゲーションプログラムが含まれている。制御部20は、ナビゲーションプログラムの処理により、車両の現在位置を取得し、利用者の指示や配送管理者の指示等に基づいて目的地を取得する。そして、制御部20は、出発地から目的地までの走行予定経路を取得し、当該経路に沿って利用者を案内する機能を実行する。また、当該ナビゲーションプログラムは、種々のプログラムモジュールを備えており、その一つに到着判定プログラム21が含まれている。到着判定プログラム21は、車両が目的地に到着したか否かを判定する機能を備えており、当該到着判定プログラム21は、ナビゲーションプログラムの実行下において実行される。
【0020】
図3Aは、目的地となった施設Fとその周辺の道路の例を示す図である。地図情報30aにおいて施設Fの位置は位置Gであり、施設Fが目的地となる場合、目的地の座標は位置Gとなる。ただし、地図情報30aにおいて施設F内の道路区間は定義されていないため、走行予定経路となり得る道路区間は、施設Fの周囲の道路である。
図3に示す例において施設Fには入口E
1,E
2が2箇所存在し、各入口E
1,E
2の近くに駐車場P
1,P
2が存在する。走行予定経路の探索が行われる場合、施設Fの位置である位置Gに最も接近する道路上の位置までの走行予定経路が探索される。
図3Aにおいては、探索された走行予定経路が実線の矢印で示されている。
【0021】
本実施形態にかかるナビゲーションシステム10は、配達業者の配達経路を走行予定経路とするシステムであり、走行履歴を収集して配達経路通りに車両が走行したか否か確認するなどの管理にも利用される。このため、本実施形態にかかるナビゲーションシステム10は、配達経路としての走行予定経路を案内している際に、経路の再探索は行わない。すなわち、通常のナビゲーションシステムにおいては、車両が走行予定経路ではない道路を走行すると、車両の現在地から目的地までの走行予定経路を再探索し、再探索された走行予定経路を案内する。
【0022】
しかし、本実施形態においては、車両が走行予定経路を外れた場合には、予定外の走行を行ったという情報として収集したり、予定外の走行であることを運転者に通知したりするなどのため、再探索は行われない。
図3Aに示す例においては、走行予定経路を外れて入口E
2から施設Fに向かう経路が破線の矢印によって示されている。当該破線の矢印に示す経路のように、当初の走行予定経路を外れた場合であっても、再探索は行われない。
【0023】
走行予定経路を外れている場合、外れていない場合のいずれであっても、ナビゲーションシステム10で経路案内を行っている過程において目的地は変化せず、車両が目的地に到着した場合、制御部20は経路案内を終了させる。このため、経路案内が行われている過程において制御部20は、到着判定プログラム21の機能により、目的地への到着判定を行っている。車両が走行予定経路に沿って走行している場合、車両の現在地と目的地の位置関係に加え、現在地が走行予定経路の終点に到達したか否かに基づいて目的地への到着判定を行うことが可能である。また、現在地が走行予定経路の終点に到達したのであれば、現在地は目的地にほぼ到達していると推定できるため、現在地と目的地との距離が閾値以下であるなどの判定によって目的地への到着判定を正確に実施できる可能性が高い。
【0024】
しかし、車両が走行予定経路に沿って走行していない場合、現在地と走行予定経路との関係に基づいて目的地への到着判定を行うことは困難である。そこで、本実施形態においては、車両が走行予定経路に沿って走行していない場合であっても正確に目的地への到着判定を実行できるように構成されている。このような到着判定を行うため、到着判定プログラム21は、停止判定部21a、接触判定部21b、到着判定部21cを備えている。
【0025】
停止判定部21aは、車両が停止しているか否かを判定する機能を制御部20に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、GNSS受信部41、車速センサ42、ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて取得される車両の現在地の履歴を参照する。そして、制御部20は、当該履歴に基づいて、車両が移動していない状態(車速が停止していると見なされる値以下の状態)であると判定される場合に、車両が停止していると判定する。
【0026】
接触判定部21bは、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分と、道路とが接触するか否かを判定する機能を制御部20に実行させるプログラムモジュールである。本実施形態において制御部20は、仮想空間内で当該判定を行う。具体的には、本実施形態において制御部20は、地図情報30aにおいて道路の位置を表現するための仮想空間(例えば、緯度および経度によって張られる空間)で処理を行う。
【0027】
すなわち、制御部20は、GNSS受信部41、車速センサ42、ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて取得される車両の現在地を取得する。また、制御部20は、地図情報30aを参照し、目的地となった施設の位置を取得する。そして、制御部20は、両者を結ぶ線分を上述の仮想空間内で定義する。さらに、制御部20は、地図情報30aを参照し、当該線分の周囲に存在する道路区間の位置を特定し、線分と道路とが接触するか否かを判定する。
【0028】
図3Bは、
図3Aに示す例において車両の現在地が位置C
1~C
3に存在する場合の例を説明する図である。なお、位置C
1は施設F内の駐車場P
2内で車両が停止している場合の位置であり、位置C
2は、一点鎖線で示す道路区間R上において信号待ち等で車両が停止している場合の位置である。位置C
3は施設Fに対して隣接する施設F
3内で車両が停止している場合の位置である。車両の現在地が位置C
1である場合、制御部20は、目的地である施設Fの位置Gと位置C
1とを結ぶ距離L
1の線分を取得する。
図3Bに示す例において、地図情報30aには、位置Gと位置C
1との間に存在する道路区間を示すリンクデータが含まれていない。従って、この場合、制御部20は、当該線分と道路とが接触すると判定しない。
【0029】
車両の現在地が位置C
2である場合、制御部20は、位置Gと位置C
2とを結ぶ距離L
2の線分を取得する。
図3Bに示す例において、地図情報30aには、位置C
2が存在する道路区間Rを示すリンクデータが含まれている。従って、この場合、制御部20は、当該線分と道路とが接触すると判定する。車両の現在地が位置C
3である場合、制御部20は、位置Gと位置C
3とを結ぶ距離L
3の線分を取得する。
図3Bに示す例において、地図情報30aには、位置Gと位置C
3との間に存在する道路区間Rを示すリンクデータが含まれている。従って、この場合、制御部20は、当該線分と道路とが接触すると判定する。
【0030】
到着判定部21cは、車両が停止しており、かつ、車両の現在地が目的地を囲む道路の内側に存在する場合、車両が目的地に到着したと判定する機能を制御部20に実行させるプログラムモジュールである。本実施形態において、制御部20は、車両が停止しており、かつ、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分と、道路とが接触しない場合、車両が目的地に到着したと判定する。すなわち、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分に道路が接触しない場合、車両の現在地が目的地を囲む道路の内側に存在する可能性が高いため、制御部20は、車両が停止しており、かつ、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分には道路が接触しない場合に、車両が目的地に到着したと判定する。ただし、本実施形態においては、当該判定に例外が設けられており、現在地と目的地との距離が閾値より大きい場合、制御部20は、車両が目的地に到着したと判定しない。閾値は、車両が目的地に近づいたか否かを判定するための値であり、車両が停止している期間において、時間の経過とともに大きくなる。
【0031】
すなわち、本実施形態においては、車両の現在地と目的地とが過度に遠い状態で目的地に到着したと判定されないようにするため、目的地への接近を判定するための閾値が予め設定してある。ただし、閾値が固定されていると、
図3A,
図3Bに示すように広い敷地が目的地となっている場合に、目的地への到着を正確に判定できない可能性がある。そこで、初期の段階の閾値は、現在地が目的地に充分に接近したと見なすことができる程度の小さい値とし、時間の経過とともに徐々に閾値が大きくなるように構成されている。
【0032】
この構成によれば、
図3A,
図3Bに示すように広い敷地が目的地となっている場合であっても、現在地が目的地に接近している状況を把握することができる。なお、現在地と目的地との距離が閾値より大きい場合、接触判定部21bによる判定が行われなくてもよい。この構成によれば、車両の現在地が目的地から遠く、明らかに目的地に到着していない状態で線分の導出や線分と道路の接触判定の処理が行われることを防止することができる。
【0033】
一方、現在地と目的地との距離が閾値以下であり、かつ、車両が停止中であり、かつ、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分と、道路とが接触しない場合、制御部20は、目的地に到着したと判定する。すなわち、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分と、道路とが接触しない場合、車両と目的地との間に地図情報30aが示す道路が存在しない状態である。この状態は、車両と目的地との間を分断する道路が存在しない状態であるため、目的地としての施設内に車両が存在する可能性が高い。例えば、車両の現在地が
図3Bに示す位置C
1である場合のように、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分と、道路とが接触しない場合、車両は目的地である施設Fに到着している。本実施形態において制御部20は、この場合において車両が目的地に到着したと判定する。
【0034】
一方、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分と、道路とが接触する場合、車両が道路上に存在するか、または、車両と目的地との間に地図情報30aが示す道路が存在する状態である。この状態は、道路を走行中であるか、目的地である施設Fと現在地とが道路で分断されている状態であるため、目的地としての施設内に車両が存在しない可能性が高い。例えば、車両の現在地が
図3Bに示す位置C
2である場合のように、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分と、道路とが接触している場合、車両は目的地周辺の道路を走行中である可能性が高い。また車両の現在地が
図3Bに示す位置C
3である場合のように、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分と、道路とが交差している場合、車両は目的地以外の施設に存在する可能性が高い。そこで、制御部20は、これらの場合において車両が目的地に到着したと判定しない。以上の構成によれば、簡易な構成によって目的地への到着判定精度を向上させることができる。
【0035】
(2)到着判定処理:
次に、到着判定プログラム21による到着判定処理を説明する。本実施形態においては、利用者がユーザI/F44部を操作して、目的地を入力して走行予定経路を探索し、走行予定経路の案内を開始した場合、制御部20が、
図2に示す到着判定処理を実行する。到着判定処理が開始されると、制御部20は、現在地が走行予定経路外であるか否かを判定する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、GNSS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて車両の現在地を取得する。そして、制御部20は、地図情報30aを参照し、当該現在地が案内中の走行予定経路上に存在しない場合に、現在地が走行予定経路外であると判定する。
【0036】
ステップS100において、現在地が走行予定経路外であると判定されない場合、制御部20は、一定期間毎にステップS100の判定を繰り返す。むろん、車両が走行予定経路を走行している場合においても目的地への到着判定は行われる。例えば、車両が走行予定経路を走行している場合、車両が走行予定経路の終端付近に到達し、かつ、目的地と現在地との距離が固定の既定値以下である場合に、制御部20が目的地に到着したと判定する構成等を採用可能である。
【0037】
一方、ステップS100において、現在地が走行予定経路外であると判定された場合、制御部20は、停止判定部21aの機能により、制御部20は、車両が停止中であるか否かを判定する(ステップS105)。すなわち、制御部20は、GNSS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて取得された車両の現在地の履歴を参照する。そして、履歴が示す現在地の変化に基づいて、車両が移動していない状態であると判定される場合に、車両が停止していると判定する。
【0038】
ステップS105において、車両が停止中であると判定されない場合、制御部20は、閾値を初期値に設定し(ステップS107)、ステップS105以降の判定を繰り返す。すなわち、車両が停止中と判定されるまで待機する。なお、閾値の初期値は、予め決められた固定値である。
【0039】
ステップS105において、車両が停止中であると判定された場合、制御部20は、到着判定部21cの機能により、現在地と目的地との距離が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、GNSS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて車両の現在地を取得し、地図情報30aを参照して目的地の位置を取得する。そして、制御部20は、車両の現在地と目的地との距離を取得し、閾値と比較する。
【0040】
図3Cは、
図3A,
図3Bと同一の例における閾値を示している。閾値の初期値は値Th
0であり、最初にステップS110が実行された場合、制御部20は、車両の現在地と目的地との距離を比較する。閾値の初期値は、比較的小さい施設に対して接近したか否かを判定できるように、比較的小さい値となっている。しかし、
図3Cに示す例のように、目的地としての施設Fが大きい場合、閾値が値Th
0であると、車両の接近を判定できる閾値として機能しない場合がある。
図3Cに示す例においては、車両の現在地が位置C
1~C
3である場合の目的地との距離L
1~L
3のいずれもが値Th
0より大きい。従って、これらの場合、ステップS110の初回実行時には現在地と目的地との距離が閾値以下であると判定されない。
【0041】
そこで、本実施形態においては、閾値の大きさを徐々に増加させる。具体的には、ステップS110において、現在地と目的地との距離が閾値以下であると判定されない場合、制御部20は、到着判定部21cの機能により、一定期間待機し(ステップS115)、閾値を一定量増加させる(ステップS120)。なお、ここで、一定期間および一定量は予め決められていれば良く、例えば、車両が信号機等によって停止している期間内に、現在地と目的地との距離が閾値以下であると判定される範囲が充分に変化するように決められる構成等を採用可能である。閾値を増加する処理が行われると、制御部20は、ステップS105以降の処理を繰り返す。
【0042】
車両が同一位置に停止し続けると、ステップS110において、現在地と目的地との距離が閾値以下であると判定される場合がある。例えば、
図3Cに示す例において、閾値の大きさが増加して値Th
1になった場合、車両の現在地が位置C
3に存在するのであれば、現在地と目的地との距離が閾値以下であると判定される。車両の現在地が位置C
1に存在する場合や、車両の現在地が位置C
2に存在する場合であっても、車両が停止し続けると、やがて、ステップS110において、現在地と目的地との距離が閾値以下であると判定される。
【0043】
ステップS110において、現在地と目的地との距離が閾値以下であると判定されると、制御部20は、接触判定部21bの機能により、現在地と目的地とを結ぶ線分を取得する(ステップS125)。すなわち、制御部20は、GNSS受信部41、車速センサ42、ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて取得される車両の現在地を取得する。また、制御部20は、地図情報30aを参照し、目的地となった施設の位置を取得する。そして、制御部20は、両者を結ぶ線分を仮想空間内で定義する。
【0044】
図3Bに示す例であれば、車両の現在地が位置C
1である場合には、位置C
1と目的地の位置Gとの間を結ぶ距離L
1の線分が取得される。車両の現在地が位置C
2である場合には、位置C
2と目的地の位置Gとの間を結ぶ距離L
2の線分が取得される。車両の現在地が位置C
3である場合には、位置C
3と目的地の位置Gとの間を結ぶ距離L
3の線分が取得される。
【0045】
次に、制御部20は、接触判定部21bの機能により、線分が道路に接触しているか否かを判定する(ステップS130)。すなわち、制御部20は、地図情報30aを参照し、当該線分の周囲に存在する道路区間の位置を特定し、線分と道路とが接触するか否かを判定する。
図3Bに示す例であれば、車両の現在地が位置C
1である場合には、位置C
1と目的地の位置Gとの間を結ぶ線分が道路に接触していると判定されない。車両の現在地が位置C
2である場合には、位置C
2と目的地の位置Gとの間を結ぶ線分が道路Rに接触していると判定される。車両の現在地が位置C
3である場合には、位置C
3と目的地の位置Gとの間を結ぶ線分が道路Rに接触していると判定される。
【0046】
ステップS130において、線分が道路に接触していると判定された場合、制御部20は、ステップS105以降の処理を繰り返す。すなわち、車両が停止し続けると、ステップS105,S110,S125,S130が繰り返され、目的地に到着したと判定されない。車両が移動を開始すると、ステップS105の判定を経て閾値が初期化され、制御部20は、再度車両が停止したと判定されるまで待機する。
【0047】
ステップS130において、線分が道路に接触していると判定されない場合、制御部20は、目的地に到着したと判定する(ステップS135)。すなわち、制御部20は、車両が停止している期間に、ステップS125で現在地と目的地との距離が閾値以下であると判定され、かつ、ステップS130で現在地と目的地とを結ぶ線分が道路に接触していると判定された場合、車両が目的地に到着したと判定する。例えば、
図3Bに示す例において、車両が位置C
1で停止し続けると、ステップS120で閾値が増加し続ける。閾値の増加によって、位置C
1と目的地の位置Gとの間の距離が閾値以下になった場合、位置C
1と目的地の位置Gとの間に道路は存在しないため、ステップS130において位置C
1と目的地の位置Gとの間を結ぶ線分が道路に接触していると判定されない。この結果、制御部20は、目的地に到着したと判定する。
【0048】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、注意情報生成システムは、車両等に搭載された装置であっても良いし、可搬型の端末によって実現される装置であっても良いし、複数の装置(例えば、クライアントとサーバや、ナビゲーション装置内の制御部とユーザI/F部内の制御部等)によって実現されるシステムであっても良い。
【0049】
到着判定システムを構成する停止判定部21aと接触判定部21bと到着判定部21cとの少なくとも一部が複数の装置に分かれて存在しても良い。むろん、上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。例えば、上述の実施形態における到着判定処理では、走行予定経路から外れている場合にステップS105以降の処理が実行されるが、走行予定経路から外れているか否かにかかわらず、ステップS105以降の処理が実行されてもよい。
【0050】
さらに、上述の実施形態においては、車両が停止中であり、かつ、現在地と目的地との距離が閾値以下であり、かつ、現在地と目的地とを結ぶ線分が道路に接触しない場合に、目的地に到着したと判定されたが、これらの一部の条件が省略されても良い。例えば、現在地と目的地との距離が閾値以下であるという条件が省略され、車両が停止中であり、かつ、現在地と目的地とを結ぶ線分が道路に接触しない場合に、目的地に到着したと判定される構成等であっても良い。また、現在地と目的地との距離が閾値以下であるという条件が考慮される構成において、閾値が固定された値であっても良い。この場合、大きい施設への到着が目的地への到着と見なされるようにするため、多くの施設において施設内に駐車している車両の現在地と目的地との距離が閾値以下になるように設定されることが好ましい。
【0051】
停止判定部は、車両が停止しているか否かを判定することができればよい。すなわち、停止判定部は、車両が移動しない状態になっているか否か判定することができればよい。車両が停止しているか否かは、上述の実施形態のように、現在地の時間変化に基づいて判定されても良いし、他の要素、例えば、車速に基づいて判定されても良く、種々の構成を
採用可能である。
【0052】
接触判定部は、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分と、道路とが接触するか否かを判定することができればよい。すなわち、接触判定部は、地図を描画する空間などの仮想的な空間内で車両の現在地と目的地と道路の位置とを特定可能である。そして、接触判定部は、当該空間内で車両の現在地と目的地とを結ぶ線分を定義し、当該線分と道路との位置関係を特定することができればよい。線分と道路とが接触するか否かは、線分と道路とが交差する場合と、接触する場合とを含む。
【0053】
なお、線分と接触するか否か判定される対象となる道路は、限定されても良い。例えば、線分と接触するか否か判定される対象となる道路は、車両の経路となり得る道路に限定されても良い。すなわち、車両の現在地と、目的地との間に、車両の経路となり得る道路が存在する場合、当該道路を使って目的地に接近し得るため、目的地に到着しないと見なされる。
【0054】
車両の経路となり得る道路は、種々の道路であって良く、例えば、地図情報30aが示す全ての道路が経路となり得る道路であっても良いし、一部の道路は経路にならない道路であっても良い。後者としては、地図情報30aが示す特定の属性の道路(例えば、細街路)は、経路にならない構成等が挙げられる。
【0055】
さらに、線分と接触するか否か判定される対象となる道路は、車両が存在する道路が含まれても良いし、含まれなくても良い。前者であれば、車両が道路上を走行している間は目的地に到着したと判定されない。後者であれば、目的地に到着した状態で車両が道路上に存在する場合に、当該道路によって車両が目的地に到着していないと判定されることを防止することができる。
【0056】
到着判定部は、車両が停止しており、かつ、車両の現在地が目的地を囲む道路の内側に存在する場合、車両が目的地に到着したと判定することができればよい。車両の現在地が目的地を囲む道路の内側に存在するか否かの判定は、線分と道路とが接触するか否かによって間接的に実行される構成に限定されない。例えば、上述の
図1に示す構成において、接触判定部21bが省略され、停止判定部21aによる判定と、地図情報30aを参照することによる到着判定部21cによる判定と、に基づいて、車両が目的地に到着したか否か判定されてもよい。
【0057】
より具体的には、制御部20が、地図情報30aを参照して目的地を特定し、当該目的地の周囲に存在する道路を取得して、目的地を囲む道路を特定する。さらに、制御部20は、車両が停止している場合の現在地が当該道路に囲まれている場合に、車両が目的地に到着したと判定する。例えば、
図3Aに示す例において、位置Gを含む施設Fの周囲には道路R
1~R
5が存在する。当該道路の位置は地図情報30aに含まれているため、位置Gが目的地とされた場合に、制御部20は、地図情報30aに基づいて位置Gを囲む道路R
1~R
5を取得することができる。そして、車両が停止している場合の現在地がこれらの道路R
1~R
5に囲まれているならば、車両は施設F内で停止しており、制御部20は、車両が目的地に到着したと判定する。このような構成であっても、簡易な構成によって目的地への到着判定精度を向上させることが可能である。なお、目的地を囲む道路は、多くの場合、目的地を囲む閉じた道路の中で最も道路の距離の和が最も小さい道路であるが、道路の突き当たりに施設の入口が存在する場合等においては、目的地を囲む道路において一部閉じていない部分が存在してもよい。
【0058】
さらに、本発明のように、車両の現在地と目的地とを結ぶ線分と、道路とが接触しない場合に車両が目的地に到着したと判定する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のようなシステムを備えたナビゲーションシステムや方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリ等であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0059】
10…ナビゲーションシステム、20…制御部、21…到着判定プログラム、21a…目的地入力受付部、21b…訪問履歴取得部、21c…到着判定部、30…記録媒体、30a…地図情報、30b…訪問履歴情報、41…受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…ユーザI/F部