(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】車両の後部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 33/02 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
B62D33/02 T
(21)【出願番号】P 2022581570
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2022015441
【審査請求日】2022-12-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】山梨 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】黒木 崇史
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-208438(JP,A)
【文献】特開2016-094090(JP,A)
【文献】実開昭55-095974(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第113942585(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷台の載置面を構成するフロアパネルと、
前記荷台の側壁を構成する一対のサイドパネルと、
前記フロアパネルの後端に配置され、車幅方向に延在して前記一対のサイドパネルを接続するリアエンドパネルと、
前記リアエンドパネルに沿って、該リアエンドパネルの車幅方向一端から他端まで延在するパネル部材と、
を備え、
前記パネル部材は、前記フロアパネル、前記リアエンドパネル
、および
、前記フロアパネルの下方にて前記一対のサイドパネル
の車両中央側の面にそれぞれ固定されている
ことを特徴とする車両の後部構造。
【請求項2】
前記リアエンドパネルの上部には、前方に延びる第1のフロア接合面が形成され、
前記パネル部材の上部には、前方に延びる第2のフロア接合面が形成され、
前記第2のフロア接合面は、前記フロアパネルの後端部と前記第1のフロア接合面との間に挟み込まれて固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の後部構造。
【請求項3】
前記第2のフロア接合面は、下側に位置する前記フロアパネルの後端部と、上側に位置する前記第1のフロア接合面との間に挟み込まれて固定されている
ことを特徴とする請求項2に記載の車両の後部構造。
【請求項4】
前記第2のフロア接合面は、前方に突出する複数の突出部を有し、
前記複数の突出部は、車幅方向に所定距離を空けて前記フロアパネルの後端部と前記第1のフロア接合面との間にそれぞれ挟み込まれて固定されている
ことを特徴とする請求項2または3に記載の車両の後部構造。
【請求項5】
前記複数の突出部は、車幅方向に連続的に形成された波型形状を有している
ことを特徴とする請求項4に記載の車両の後部構造。
【請求項6】
前記パネル部材は、前記リアエンドパネルの上端から下端まで延在し、下部が前記リアエンドパネルに固定されている
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両の後部構造。
【請求項7】
前記リアエンドパネルの下部の車幅方向中央部には、前方に突出するパネル部材接合面が形成され、
前記パネル部材の下部は、前記パネル部材接合面に固定されている
ことを特徴とする請求項6に記載の車両の後部構造。
【請求項8】
前記リアエンドパネルと前記パネル部材との間であって、車幅方向中央部に配置されるセンタブラケットをさらに備え、
前記リアエンドパネルと前記パネル部材の下部とは、前記センタブラケットを介して固定されている
ことを特徴とする請求項6または7に記載の車両の後部構造。
【請求項9】
前記パネル部材の車幅方向両端部にそれぞれ取り付けられる一対のサイドブラケットをさらに備え、
前記パネル部材は、前記一対のサイドブラケットを介して一対のサイドパネルにそれぞれ固定されている
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の車両の後部構造。
【請求項10】
前記パネル部材の下端部には、車幅方向に延びるビード部が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の車両の後部構造。
【請求項11】
前記パネル部材の下端には、後方に突出し且つ車幅方向に延びる第1補強フランジ部が形成され、
前記リアエンドパネルの下端には、前方に突出し且つ車幅方向に延びる第2補強フランジ部が形成され、
前記第1補強フランジ部と前記第2補強フランジ部とが上下方向に近接している
ことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の車両の後部構造。
【請求項12】
車両の荷台の載置面を構成するフロアパネルと、
前記荷台の側壁を構成する一対のサイドパネルと、
前記フロアパネルの後端に配置され、車幅方向に延在して前記一対のサイドパネルを接続するリアエンドパネルと、
前記リアエンドパネルに沿って、該リアエンドパネルの車幅方向一端から他端まで延在するパネル部材と、
を備え、
前記パネル部材は、前記フロアパネルの上面もしくは下面、前記リアエンドパネルおよび前記一対のサイドパネルにそれぞれ固定されている
ことを特徴とする車両の後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
運転室の後側に荷台を備えたピップアップトラック等の車両(以下、トラックと総称する)は、重量物が搭載される荷台の補強する種々の構造が提案されており、例えば特許文献1には、荷台の左右側壁を形成するサイドパネルの補強構造が開示されている。荷台のフロアパネルは左右方向に延びる複数のクロスシルにより下方から支持され、各クロスシルの左右両端部は、サイドパネルを構成するサイドインナパネルよりも車幅外側に延びて延長部を形成している。各延長部上にはブラケットが立設され、各ブラケットには、サイドインナパネルの外側面に沿うように当接部が形成されている。これによりサイドインナパネルが補強され、横方向への荷重を受けたときのサイドパネルの揺動が拘束されることで荷台の強度が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トラックの荷台の後部は、フロアパネルの後端部にリアエンドパネルを接合し、リアエンドパネル上に開閉可能な後部アオリを設けてなる。リアエンドパネルは、フロアパネルの後側で左右方向に延び、その上部がフロアパネルの後端部に重ねられて左右方向に所定間隔をおいてスポット溶接されると共に、リアエンドパネルの左右両端がサイドパネルにスポット溶接されている。
【0005】
全体としてリアエンドパネルは前後に面した平板状をなしているため、例えばトラックの悪路走行時等には、振動を受けて前後に共振する場合がある。このリアエンドパネルの共振によりフロアパネルが上下に振れ出す現象が誘発され、フロアパネルとリアエンドパネルとを接合しているスポット溶接部に過大な負荷が作用してしまう。このような過大な負荷は、亀裂等のスポット溶接部の破損の要因になり、結果として荷台の耐久性を低下させてしまうという問題があった。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、振動を受けてリアエンドパネルが前後に共振する現象、ひいてはこれに誘発されたフロアパネルの上下の振れ出しに起因してスポット溶接部が破損する事態を抑制でき、これにより荷台の耐久性を向上することができる車両の後部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の車両の後部構造は、車両の荷台の載置面を構成するフロアパネルと、前記荷台の側壁を構成する一対のサイドパネルと、前記フロアパネルの後端に配置され、車幅方向に延在して前記一対のサイドパネルを接続するリアエンドパネルと、前記リアエンドパネルに沿って、該リアエンドパネルの車幅方向一端から他端まで延在するパネル部材と、を備え、前記パネル部材は、前記フロアパネル、前記リアエンドパネル、および、前記フロアパネルの下方にて前記一対のサイドパネルにそれぞれ固定されていることを特徴とする。
【0008】
従って、パネル部材がフロアパネル、リアエンドパネルおよびサイドパネルにそれぞれ固定されているため、フロアパネルの上下の振れ出しが抑制される。
【0009】
その他の態様として、前記リアエンドパネルの上部に、前方に延びる第1のフロア接合面が形成され、前記パネル部材の上部に、前方に延びる第2のフロア接合面が形成され、前記第2のフロア接合面は、前記フロアパネルの後端部と前記第1のフロア接合面との間に挟み込まれて固定されていてもよい。
従って、フロアパネルの後端部に第1のフロア接合面及び第2のフロア接合面が挟み込まれて固定されることにより、フロアパネルの上下の振れ出しが抑制される。
【0010】
その他の態様として、前記第2のフロア接合面は、下側に位置する前記フロアパネルの後端部と、上側に位置する前記第1のフロア接合面との間に挟み込まれて固定されていてもよい。
従って、下側のフロアパネルの後端部と上側の第1のフロア接合面との間に第2のフロア接合面が挟み込まれて固定されることにより、フロアパネルの上下の振れ出しが抑制される。
【0011】
その他の態様として、前記第2のフロア接合面は、前方に突出する複数の突出部を有し、前記複数の突出部は、車幅方向に所定距離を空けて前記フロアパネルの後端部と前記第1のフロア接合面との間にそれぞれ挟み込まれて固定されていてもよい。
従って、各突出部は所定間隔をおいて左右方向に連なり、これらの突出部が第1のフロア接合面と共にフロアパネルの後端部に挟み込まれて固定されることにより、フロアパネルの上下の振れ出しが抑制される。
【0012】
その他の態様として、前記複数の突出部は、車幅方向に連続的に形成された波型形状を有していてもよい。
従って、荷台が過大な外力を受けて捩れ変形を生じたとき等には、各接合部の間の領域においてフロアパネル、第1のフロア接合面及び第2のフロア接合面が撓んで外力を逃がすことから、接合部に作用する負荷が軽減される。
【0013】
その他の態様として、前記パネル部材は、前記リアエンドパネルの上端から下端まで延在し、下部が前記リアエンドパネルに固定されていてもよい。
従って、パネル部材の下部がリアエンドパネルに接続されているため、リアエンドパネルの前後の共振が抑制される。
【0014】
その他の態様として、前記リアエンドパネルの下部の車幅方向中央部には、前方に突出するパネル部材接合面が形成され、前記パネル部材の下部は、前記パネル部材接合面に固定されていてもよい。
従って、パネル部材の下部がリアエンドパネルのパネル部材接合面に接合されているため、リアエンドパネルの前後の共振が抑制される。
【0015】
その他の態様として、前記リアエンドパネルと前記パネル部材との間であって、車幅方向中央部に配置されるセンタブラケットをさらに備え、前記リアエンドパネルと前記パネル部材の下部とは、前記センタブラケットを介して固定されていてもよい。
従って、パネル部材の下部がセンタブラケットを介してリアエンドパネルの下部に接続されているため、リアエンドパネルの前後の共振が抑制される。
【0016】
その他の態様として、前記パネル部材の車幅方向両端部にそれぞれ取り付けられる一対のサイドブラケットをさらに備え、前記パネル部材は、前記一対のサイドブラケットを介して一対のサイドパネルにそれぞれ固定されていてもよい。
従って、一対のサイドブラケットを介して一対のサイドパネルにパネル部材がそれぞれ固定される。
【0017】
その他の態様として、前記パネル部材の下端部に、車幅方向に延びるビード部が形成されていてもよい。
従って、パネル部材の下部の曲げ剛性がビード部により高められる。
【0018】
その他の態様として、前記パネル部材の下端に、後方に突出し且つ車幅方向に延びる第1補強フランジ部が形成され、前記リアエンドパネルの下端に、前方に突出し且つ車幅方向に延びる第2補強フランジ部が形成され、前記第1補強フランジ部と前記第2補強フランジ部とが上下方向に近接していてもよい。
従って、パネル部材の下部の曲げ剛性が第1補強フランジ部により高められ、リアエンドパネルの下部の曲げ剛性が第2補強フランジ部により高められる。
また、本発明の車両の後部構造は、車両の荷台の載置面を構成するフロアパネルと、前記荷台の側壁を構成する一対のサイドパネルと、前記フロアパネルの後端に配置され、車幅方向に延在して前記一対のサイドパネルを接続するリアエンドパネルと、前記リアエンドパネルに沿って、該リアエンドパネルの車幅方向一端から他端まで延在するパネル部材と、を備え、前記パネル部材は、前記フロアパネルの上面もしくは下面、前記リアエンドパネルおよび前記一対のサイドパネルにそれぞれ固定されていることを特徴とする。
従って、パネル部材がフロアパネルの上面もしくは下面、リアエンドパネルおよびサイドパネルにそれぞれ固定されているため、フロアパネルの上下の振れ出しが抑制される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両の後部構造によれば、振動を受けてリアエンドパネルが前後に共振する現象、ひいてはこれに誘発されたフロアパネルの上下の振れ出しに起因してスポット溶接部が破損する事態を抑制でき、これにより荷台の耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の後部補強構造が適用されたトラックの荷台を上斜め後方から見た斜視図である。
【
図2】リアエンドパネル及びパネル部材を下斜め前方から見た斜視図である。
【
図3】リアエンドパネル、フロアパネル、パネル部材及びセンタブラケットの接合状態を示す
図2のA部詳細図である。
【
図4】サイドブラケットを介したサイドパネルに対する補強ブラケットの連結状態を示す
図3のIV-IV線断面図である。
【
図5】同じくサイドブラケットを介したサイドパネルに対する補強ブラケットの連結状態を示す斜視図である。
【
図6】リアエンドパネル、パネル部材及びセンタブラケットの関係を示す斜視図である。
【
図7】接合状態を異にする3種類のスポット溶接部の配置を示す斜視図である。
【
図8】リアエンドパネルのフロア接合面、フロアパネルの後端及びパネル部材9の突出部9bの関係を示す
図3の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をピックアップトラックの荷台の後部補強構造に具体化した一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態のトラックの荷台を上斜め後方から見た斜視図、
図2は、リアエンドパネル及びパネル部材を下斜め前方から見た斜視図であり、以下の説明では、車両に搭乗した運転者を基準として前後、左右及び上下方向を規定する。
【0022】
図1に示すように、トラック1の荷台2は、フロアパネル3、フロントパネル4、左右一対のサイドパネル5、及び図示しない後部アオリにより画成され、全体として上方に開口する箱状をなしている。フロアパネル3は荷台2の載置面を形成し、左右方向に凹凸をなして連続する補強リブ3aが形成されている。フロントパネル4は荷台2の前壁を形成し、図示しない運転室との間を区画している。サイドパネル5は荷台2の左右側壁をそれぞれ形成し、後輪が配置されるタイヤハウス5aが形成されている。後部アオリは荷台2の後壁を形成し、下端を中心として開閉可能となっている。
【0023】
図2に示すようにフロアパネル3は、左右方向に延びる複数本のクロスシル6により下方から支持され、各クロスシル6の左右両端は、荷台2の左右両側で前後方向に延設された図示しないサイドメンバに連結されている。フロアパネル3の後側にはリアエンドパネル8が配設され、このリアエンドパネル8によりフロアパネル3の下側の空間が隠蔽されると共に、リアエンドパネル8上に後部アオリが開閉可能に連結されている。
【0024】
図3は、リアエンドパネル8、パネル部材及びセンタブラケットの関係を示す斜視図、
図4は、リアエンドパネル8、フロアパネル3、パネル部材及びセンタブラケットの接合状態を示す
図2のA部詳細図、
図4は、サイドブラケットを介したサイドパネル5に対する補強ブラケットの連結状態を示す
図3のIV-IV線断面図、
図5は、同じくサイドブラケットを介したサイドパネル5に対する補強ブラケットの連結状態を示す斜視図、
図6は、リアエンドパネル8、パネル部材及びセンタブラケットの関係を示す斜視図、
図7は、接合状態を異にする3種類のスポット溶接部の配置を示す斜視図、
図8は、リアエンドパネルのフロア接合面、フロアパネルの後端及びパネル部材9の突出部9bの関係を示す
図3の詳細図である。
【0025】
なお、
図4,5においては、車体の左右中心線Cから右側の領域を示しているが、左側の領域についても左右対称の同一構成である。
【0026】
図3,6に示すように、リアエンドパネル8の本体部8aは、全体として前後に面した平板状をなして左右方向に延び、図示はしないが、その左右両端がサイドパネル5の後端部にそれぞれスポット溶接されている。本体部8aの上部は前方に向けて略直角に折曲されて、前方に延び且つ上下に面したフロア接合面8b(本発明の「第1のフロア接合面」に相当)を形成し、フロアパネル3の後端部に上方から重ねられている。
【0027】
リアエンドパネル8の下部の左右中央の領域は本体部8aから前方に突出し、前後に面したパネル部材接合面8cを形成している。パネル部材接合面8cの左右両側は本体部8aと連続し、パネル部材接合面8cの上部は本体部8aから離間してブラケット収容部8dを形成している。リアエンドパネル8のフロア接合面8bはフロアパネル3の後端部に接合され、パネル部材接合面8cは後述するパネル部材9に接合されるが、その詳細は後述する。
【0028】
図4,5に示すように、フロアパネル3の下側において、リアエンドパネル8のパネル部材接合面8cには前方から重なるようにパネル部材9の本体部9aが配設されている。全体として本体部9aは前後に面した平板状をなし、リアエンドパネル8の本体部8aの上下幅とほぼ等しい上下幅を有すると共に、本体部8aに沿って左右方向に延びている。左右のサイドパネル5の後端部には、それぞれサイドブラケット10の外端部(車幅外側の箇所)がスポット溶接により接合され(
図4,5にスポット溶接部11として示す)、各サイドブラケット10の内端部(車幅内側の箇所)はサイドパネル5から車幅内方に向けて突出している。各サイドブラケット10の内端部には、それぞれパネル部材9の本体部9aの左右両端部がボルト12及びナット13で締結されている。結果としてパネル部材9は、リアエンドパネル8の本体部8aから前方に離間した位置で、左右のサイドブラケット10を介して左右両端部をサイドパネル5に取り付けられている。後述する車体の組付工程での便宜のために、パネル部材9の左右長さは左右のサイドパネル5の間隔よりも短く設定されている。
【0029】
図3,4,8に示すように、パネル部材9の本体部9aの上部は前方に向けて略直角に折曲され、その前端縁は、平面視で左右方向に延びる波型状、詳しくは、凸と凹とを交互に繰り返して左右方向に連続する波型状をなすように形成されている。以下、波型状の前方への突出箇所をそれぞれ突出部9b(本発明の「第2のフロア接合面」に相当)と称するが、これらの突出部9bは、フロアパネル3の補強リブ3aの凹凸と対応する間隔をおいて左右方向に連なっている。
【0030】
フロアパネル3の後端部では補強リブ3aの凹凸が突出部9bの厚み相当まで浅くされ、その凹の箇所にそれぞれパネル部材9の突出部9bが配置され、フロアパネル3とリアエンドパネル8のフロア接合面8bとの間に挟み込まれている。これにより左右方向における各突出部9bの箇所では、下側に位置するフロアパネル3、中間に位置するパネル部材9の突出部9b、及び上側に位置するリアエンドパネル8のフロア接合面8bの3枚の板材が互いに重なり合ってスポット溶接により接合されている(本発明の「接合部」に相当し、以下、スポット溶接部14と称する)。また、各突出部9bの間の箇所では、下側に位置するフロアパネル3、及び上側に位置するフロア接合面8bの2枚の板材が互いに重なり合ってスポット溶接により接合されている(本発明の「接合部」に相当し、以下、スポット溶接部15と称する)。
【0031】
但し、スポット溶接部14の中でも、3箇所のスポット溶接部14a(
図4では2箇所のみ示す)は、後述する組付工程の便宜のために、パネル部材9の突出部9b及びリアエンドパネル8のフロア接合面8bの2枚の板材がスポット溶接されている。
【0032】
図3,4,6,7に示すように、パネル部材9のブラケット収容部8dには、センタブラケット16が配設されている。センタブラケット16は、上下に面した平板状をなす本体部16a、本体部16aの後端部から上方に折曲された後部フランジ部16b、本体部16aの前端部から下方に折曲された前部フランジ部16cからなる。後部フランジ部16bは、リアエンドパネル8の本体部8aに重ねられて左右方向に所定間隔をおいてスポット溶接され、これによりセンタブラケット16の後部がリアエンドパネル8に接合されている。
【0033】
前部フランジ部16cは、パネル部材9の本体部9aに重ねられた状態を保ちつつ下方へと延設され、リアエンドパネル8のパネル部材接合面8cとパネル部材9の本体部9aとの間に挟み込まれている。この挟み込まれた箇所では、リアエンドパネル8のパネル部材接合面8c、パネル部材9の本体部9a、及びセンタブラケット16の前部フランジ部16cの3枚の板材が互いに重なり合い、
図7に示す4箇所でスポット溶接により接合されている(以下、スポット溶接部17と称する)。
【0034】
また、スポット溶接部17の上方位置では、パネル部材9の本体部9a及びセンタブラケット16の前部フランジ部16cの2枚の板材が互いに重なり合い、
図7に示す4箇所でスポット溶接により接合されている(以下、スポット溶接部18と称する)。また、スポット溶接部17を挟んだ左右両側では、パネル部材9の本体部9a及びリアエンドパネル8のパネル部材接合面8cの2枚の板材が互いに重なり合い、
図7に示す4箇所でスポット溶接により接合されている(以下、スポット溶接部19l,19rと称する)。
【0035】
左右一対のスポット溶接部19l,19rは、可能な限り左右に離間配置されている。詳しくは、左側の一対のスポット溶接部19lの位置は、パネル部材接合面8cの最左側に設定され、右側の一対のスポット溶接部19の位置は、パネル部材接合面8cの最右側に設定されている。このため、左右に離間した位置でパネル部材9の本体部9aとパネル部材接合面8cとが接合され、これにより接合強度が高められている。
【0036】
図3に示すように、パネル部材9の下端縁は後方に折曲されて、これにより後方に突出し且つ左右方向に延びる第1補強フランジ部9cが形成されると共に、その上側位置には、前方に凸の断面形状をなすビード部9dが左右方向に延設されている。これらの第1補強フランジ部9c及びビード部9dにより、パネル部材9の下部の曲げ剛性が高められている。また、リアエンドパネル8のパネル部材接合面8cの下端縁は、パネル部材9の第1補強フランジ部9cよりも若干上側位置で前方に折曲され、これにより、前方に突出し且つ左右方向に延びる第2補強フランジ部8eを形成している。この第2補強フランジ部8eにより、リアエンドパネル8の特にパネル部材接合面8cの曲げ剛性が高められている。
【0037】
リアエンドパネル8の第2補強フランジ部8eの前端は、パネル部材9のビード部9dに対して僅かに後方に離間し、第1補強フランジ部9cに対しては僅かに上方に離間している。結果として、第2補強フランジ部8eと第1補強フランジ部9c及びビード部9dとの間には、下方に開口する間隙が形成されている。車両の雨天走行時にタイヤが跳ね上げた飛沫により、パネル部材9の本体部9aとリアエンドパネル8のパネル部材接合面8cとの間に雨水等が侵入すると、腐食等の要因になり得る。第2補強フランジ部8eと第1補強フランジ部9c及びビード部9dとの間に形成された間隙により、侵入した雨水が速やかに下方に排出されるため、腐食等のトラブルを未然に防止できる。
【0038】
加えて、リアエンドパネル8の第2補強フランジ部8eが後方に折曲されて形成され、パネル部材9の第1補強フランジ部9cが前方に折曲されて形成されている。そして、互いに上下方向に近接しているため、その間隙の開口幅は僅かなものに過ぎない。従って、この間隙を介して逆に雨水が内部に侵入する事態も防止できる。
【0039】
このようなセンタブラケット16が取り付けられることにより、リアエンドパネル8の左右中央には後方且つ下方に開放された空間が形成され、その内部が図示しないライセンスプレート及び照明の装着に利用される。
【0040】
車体の組付工程においては、まずセンタブラケット16を介してリアエンドパネル8とパネル部材9とを接合する。詳しくは、各スポット溶接部17,18,19l,19rにおいて各板材8,9,16を互いに接合すると共に、リアエンドパネル8及びパネル部材9の上部については、
図4に示す3箇所のスポット溶接部14aだけを接合する。これによりリアエンドパネル8、パネル部材9及びセンタブラケット16がアセンブリ状態になり、その上部についても3箇所のスポット溶接部14aにより互いの位置関係が定まる。
【0041】
次いで、アセンブリ8,9,16を車体後方からフロアパネル3の後側の所定位置に配設する。パネル部材9の左右長さが左右のサイドパネル5の間隔よりも短いため、このときのパネル部材9は、左右のサイドパネル5の間を問題なく通過して左右のサイドブラケット10の間に配設される。これにより、パネル部材9の左右両端部を左右のサイドブラケット10の内端部に締結することができる。
【0042】
また、このときのパネル部材9の各突出部9bは、フロアパネル3とリアエンドパネル8のフロア接合面8bとの間に挟み込まれる。この状態で各スポット溶接部14では、フロアパネル3、突出部9b及びフロア接合面8bを互いに接合し、各スポット溶接部15では、フロアパネル3及びフロア接合面8bを互いに接合する。これにより、車体へのアセンブリ8,9,16の組付が完了する。
【0043】
次いで、以上のように構成されたトラック1の荷台2の後部補強構造における各部材の接合関係を説明する。
【0044】
まず、特許文献1等に記載された従来技術の問題点は、以下のとおりである。リアエンドパネル8は、本体部8aからパネル部材接合面8cを前方に突出させてブラケット収容部8dを開口させた形状をなすため、特に下部に位置するパネル部材接合面8c付近の剛性が不足する傾向がある。従って、悪路走行時等に振動を受けたときに、リアエンドパネル8が前後に共振し易い。このため何らかの対策を講じない場合には、リアエンドパネル8の共振に誘発されてフロアパネル3が上下に振れ出し、フロアパネル3とリアエンドパネル8とを接合するスポット溶接部14,15に過大な負荷が作用してしまう。
【0045】
本実施形態においては、リアエンドパネル8の前方位置にパネル部材9が配設され、その左右両端がサイドブラケット10を介して左右のサイドパネル5に接合されている。そして、このようなパネル部材9に対し、リアエンドパネル8の本体部8aがセンタブラケット16を介してスポット溶接部17及びスポット溶接部18の箇所でそれぞれ接合されると共に、リアエンドパネル8のパネル部材接合面8cがスポット溶接部19l,19rの箇所でパネル部材9に接合されている。結果としてパネル部材9は、リアエンドパネル8の前後方向への位置変位を規制し、これによりリアエンドパネル8の前後の共振、特に下部のパネル部材接合面8c付近の共振を抑制する作用を奏する。必然的にフロアパネル3の上下の振れ出しが抑制され、スポット溶接部14,15に作用する負荷を軽減できる。
【0046】
特に本実施形態では、パネル部材9の下部の曲げ剛性がビード部9d及び第1補強フランジ部9cにより高められ、リアエンドパネル8のパネル部材接合面8cの曲げ剛性が第2補強フランジ部8eにより高められている。このような剛性の向上も、パネル部材8の共振を抑制することに大きく貢献する。
【0047】
一方、フロアパネル3の後端部は、リアエンドパネル8の上部に対してスポット溶接部14,15の箇所で接合されるだけでなく、パネル部材9の上部に対してもスポット溶接部14の箇所で接合されている。そしてパネル部材9の本体部9aは、前後に面した平板状をなし、且つリアエンドパネル8の本体部8aの上下幅に対応する広い上下幅を有しているため、上下方向への曲げ剛性が高くて撓み難い形状と見なせる。このようなパネル部材9の上部がフロアパネル3の後端部に接合され、上下方向の振れ出しを抑制する作用を奏する。従って、上記したリアエンドパネル8自体の剛性向上による共振の抑制作用と相俟って、フロアパネル3の上下方向の振れ出しを一層確実に抑制することができる。
【0048】
また、以上のようにフロアパネル3の後端部に対し、リアエンドパネル8の上部及びパネル部材9の上部を2種のスポット溶接部14,15で接合しているものの、悪路の走行時等に荷台2が受ける過大な外力を逃がすための配慮がなされている。詳しくは、2種のスポット溶接部14,15は左右方向に等間隔で交互に連なり、これによりフロアパネル3の後端部、リアエンドパネル8の上部及びパネル部材9の上部を互いに接合している。そして、各スポット溶接部14,15が左右に離間しているため、その間の領域では接合対象の板材の撓みが許容されている。従って、荷台2が過大な外力を受けて捩れ変形を生じたとき等には、各スポット溶接部14,15の間の領域で板材が撓むことにより外力を逃がすことから、スポット溶接部14,15に作用する負荷を軽減できる。この要因も、スポット溶接部14,15の破損を防止することに大きく貢献する。
【0049】
結果として本実施形態のトラック1の荷台2の後部補強構造によれば、振動を受けてリアエンドパネル8が前後に共振する現象、ひいてはこれに誘発されたフロアパネル3の上下の振れ出しに起因してスポット溶接部14,15が破損する事態を抑制でき、これにより荷台2の耐久性を向上することができる。
【0050】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、ピックアップトラック1の荷台2の後部補強構造として具体化したが、適用対象のトラックの種類はこれに限るものではなく、例えばキャブオーバー型のトラックに適用してもよい。また、リアエンドパネル8やパネル部材9の形状等についても、実施形態に限るものではなく種々に変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 トラック
2 荷台
3 フロアパネル
5 サイドパネル
8 リアエンドパネル
8b フロア接合面(第1のフロア接合面)
8c パネル部材接合面
8e 第2補強フランジ部
9 パネル部材
9b 突出部(第2のフロア接合面)
9c 第1補強フランジ部
9d ビード部
10 サイドブラケット
14,15 スポット溶接部(接合部)
16 センタブラケット
【要約】
荷台(2)のフロアパネル(3)の後側に左右に延びる板状のリアエンドパネル(8)を配設し、荷台(2)の左右のサイドパネル(5)にリアエンドパネル(8)の左右両端部を接合し、リアエンドパネル(8)の上部にフロア接合面(8b)を形成する。フロアパネル(3)の下側において、リアエンドパネル(8)の前側で左右に延びる板状のパネル部材(9)を配設し、その左右両端部を左右のサイドパネル(5)に接合し、パネル部材(8)の上部を前方に折曲して、左右に連なる複数の突出部(9b)を形成する。フロアパネル(3)の後端部とフロア接合面(8b)との間に各突出部(9b)を挟み込んで接合する。リアエンドパネル(8)の下部中央を前方に突出させ、これにより形成されたパネル部材接合面(8c)及びパネル部材(9)の下部とリアエンドパネル(8)とをセンタブラケット(16)を介して接続する。