(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】パーキンソン病の診断を補助する方法、バイオマーカー、試薬キット及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230913BHJP
G01N 33/92 20060101ALI20230913BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20230913BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/92 C
C12N5/071
C12M1/34 D
G01N33/53 S
(21)【出願番号】P 2021561586
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2020044400
(87)【国際公開番号】W WO2021107155
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2019217481
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000252300
【氏名又は名称】富士フイルム和光純薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】西部 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】今若 直子
(72)【発明者】
【氏名】平安 一成
(72)【発明者】
【氏名】請川 亮
(72)【発明者】
【氏名】笹本 宏大
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 哲
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/088689(WO,A1)
【文献】特表2017-525976(JP,A)
【文献】国際公開第2017/032871(WO,A1)
【文献】特開2016-161480(JP,A)
【文献】国際公開第2018/145211(WO,A1)
【文献】OHMICHI Takuma et al.,Quantification of brain-derived extracellular vesicles in plasma as a biomarker to diagnose Parkinso,Parkinsonism and Related Disorders,2019年04月,Vol.61,pp.82-87
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53,33/68,33/92
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に由来する生体試料中の、
ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、又は
ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、並びにテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定すること
を含む、
前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、又は
前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対する前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を
パーキンソン病の指標
とする方法。
【請求項2】
前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、又は前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対する前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合が基準値以下
であることを前記指標とする、請求項1に記載
の方法。
【請求項3】
前記細胞外小胞の量の測定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記
指標が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の
量であり、
前記テトラスパニンが、CD9、CD63、及びCD81から選ばれるものである、請求項1に記載
の方法。
【請求項4】
前記細胞外小胞の量の測定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することが、テトラスパニンに対して親和性を有する物質、及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質を用いて前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記
指標が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の
量である、請求項1に記載
の方法。
【請求項5】
前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質が、T細胞免疫グロブリン・ムチン含有タンパク質である、請求項4に記載
の方法。
【請求項6】
前記細胞外小胞の量の測定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記
指標が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の
量であり、
前記生体試料が、血液試料又は脳脊髄液である、請求項1に記載
の方法。
【請求項7】
前記細胞外小胞の量の測定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、並びにテトラスパニンを有する細胞外小胞
の量を測定することであり、
前記
指標が、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対する
前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割
合であり、
前記
ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞におけるテトラスパニン、並びに前記テトラスパニンを有する細胞外小胞におけるテトラスパニンが、CD9又はCD63である、請求項1に記載
の方法。
【請求項8】
前記細胞外小胞の量の測定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、並びにテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することが、テトラスパニンに対して親和性を有する物質、及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質を用いて前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することが、前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質を用いて前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記
指標が、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割
合である、請求項1に記載
の方法。
【請求項9】
前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質が、T細胞免疫グロブリン・ムチン含有タンパク質である、請求項8に記載
の方法。
【請求項10】
前記細胞外小胞の量の測定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、並びにテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記
指標が、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割
合であり、
前記生体試料が、血液試料又は脳脊髄液である、請求項1に記載
の方法。
【請求項11】
前記
指標が、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合
であって、認知症状のあるパーキンソン病と認知症状のないパーキンソン病の
指標である、請求項1に記載
の方法。
【請求項12】
テトラスパニンに対して親和性を有する物質、及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質を含む、パーキンソン病の診断補助用試薬キット。
【請求項13】
ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞を含む、パーキンソン病の診断補助用バイオマーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキンソン病の診断を補助する方法、バイオマーカー、試薬キット及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(PD)とは、脳内の黒質に存在する神経細胞が変性し、線条体のドパミンが欠乏することでスムーズに体が動かせなくなる神経変性疾患である。パーキンソン病の有病率は10万人あたり100~150人と高く、加齢により有病率が上がることから、高齢化に伴い急速に患者数が増加している。
【0003】
現在パーキンソン病の根治療法はないが、レボドパ(L-Dopa)などドパミン前駆物質治療薬やドパミンアゴニストを投与し、脳内で減少したドパミン作用を補充することで運動症状を改善することができることが知られている。その為、パーキンソン病の病態を客観的に判定できるバイオマーカーが求められている。
【0004】
パーキンソン病の診断方法としては、抗NCAM抗体や抗L1CAM抗体を用いて血液中の神経由来細胞外小胞を濃縮し、当該細胞外小胞に含まれるαシヌクレイン等を指標として、パーキンソン病を判定する方法が報告されている(特許文献1、特許文献2、非特許文献1、非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特願2016-550673
【文献】特願2017-520760
【非特許文献】
【0006】
【文献】C.N. Winston et al. / Alzheimer’s & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring (2016) 3 :63-72
【文献】Mustapic M et al. Front. Neurosci. (2017) 11:278
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、血液中の神経由来細胞外小胞を指標としてパーキンソン病を診断する方法は、検体から神経由来細胞外小胞をアフィニティー濃縮する操作が必要であり、操作が煩雑である。また、検体を直接測定することができない為、アッセイ間での誤差が生じやすく、多検体測定への適用は困難である。
【0008】
前述の状況に鑑み、本発明は、簡便にパーキンソン病の診断を補助する方法、バイオマーカー、試薬キット及び装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の細胞外小胞がパーキンソン病の診断を補助する為のバイオマーカーとなり得るかについて検討した。
その結果、本発明者らは、細胞外小胞のうち、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する特定の細胞外小胞がパーキンソン病の診断補助用バイオマーカーとなることを新たに見出し、発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、以下のパーキンソン病の診断を補助する方法、バイオマーカー、試薬キット及び装置に関する。
【0011】
[1]被験者に由来する生体試料中の、
ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、又は
ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、並びにテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定すること、
前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、又は
前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対する前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を指標として、被験者がパーキンソン病であると判定することを含む、
パーキンソン病の診断を補助する方法。
[2]前記パーキンソン病の判定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、又は前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対する前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合が基準値以下の場合に、被験者がパーキンソン病であると判定することである、[1]に記載のパーキンソン病の診断を補助する方法。
[3]前記細胞外小胞の量の測定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記パーキンソン病の判定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を指標として、被験者がパーキンソン病であると判定することであり、
前記テトラスパニンが、CD9、CD63、及びCD81から選ばれるものである、[1]又は[2]に記載のパーキンソン病の診断を補助する方法。
[4]前記細胞外小胞の量を測定することが、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定が、テトラスパニンに対して親和性を有する物質、及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質を用いて前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記パーキンソン病の判定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を指標として、被験者がパーキンソン病であると判定することである、[1]~[3]から選ばれるいずれか一つに記載のパーキンソン病の診断を補助する方法。
[5]前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質が、T細胞免疫グロブリン・ムチン含有タンパク質である、[4]に記載のパーキンソン病の診断を補助する方法。
[6]前記細胞外小胞の量の測定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記パーキンソン病の判定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞を指標として、被験者がパーキンソン病であると判定することであり、
前記生体試料が、血液試料又は脳脊髄液である、[1]~[5]から選ばれるいずれか一つに記載のパーキンソン病の診断を補助する方法。
[7]前記細胞外小胞の量の測定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、並びにテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記パーキンソン病の判定が、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を指標として、被験者がパーキンソン病であると判定することであり、
前記テトラスパニンが、CD9又はCD63である、[1]又は[2]に記載のパーキンソン病の診断を補助する方法。
[8]前記細胞外小胞の量の測定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、並びにテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することが、テトラスパニンに対して親和性を有する物質、及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質を用いて前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することが、前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質を用いて前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記パーキンソン病の判定が、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を指標として、被験者がパーキンソン病であると判定することである、[1]、[2]及び[7]から選ばれるいずれか一つに記載のパーキンソン病の診断を補助する方法。
[9]前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質が、T細胞免疫グロブリン・ムチン含有タンパク質である、[8]に記載のパーキンソン病の診断を補助する方法。
[10]前記細胞外小胞の量の測定が、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、並びにテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定することであり、
前記パーキンソン病の判定が、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を指標として、被験者がパーキンソン病であると判定することであり、
前記生体試料が、血液試料又は脳脊髄液である、[1]~[2]及び[7]~[9]から選ばれるいずれか一つに記載のパーキンソン病の診断を補助する方法。
[11]前記パーキンソン病の判定が、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を指標として、被験者が認知症状のあるパーキンソン病と認知症状のないパーキンソン病のいずれの疾患に罹患しているのかを判定することである、[1]~[2]及び[7]~[10]から選ばれるいずれか一つに記載のパーキンソン病の診断を補助する方法。
[12]テトラスパニンに対して親和性を有する物質、及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質を含む、パーキンソン病の診断補助用試薬キット。
[13]ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞を含む、パーキンソン病の診断補助用バイオマーカー。
[14]被験者に由来する生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定する測定部、及び
前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を指標として被験者がパーキンソン病であると判定する判定部を有する、パーキンソン病の診断補助用装置。
[15]被験者に由来する生体試料中の、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、並びにテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定する測定部、
前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対する前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を算出する演算部、及び
前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を指標として被験者がパーキンソン病であると判定する判定部を有する、パーキンソン病の診断補助用装置。
[16]ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞、並びにテトラスパニンを有する細胞外小胞を含む、パーキンソン病の診断補助用バイオマーカーセット。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便に、パーキンソン病の診断を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1はホスファチジルセリン及びCD9を有するエクソソームの量を指標として認知症状のないパーキンソン病患者由来血漿検体及び健常者由来血漿検体を評価した箱ひげグラフである。
【
図2】
図2はCD9を有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びCD9を有するエクソソームの量の割合を指標として認知症状のないパーキンソン病患者由来血漿検体、健常者由来血漿検体を評価した箱ひげグラフである。
【
図3】
図3はCD9を有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びCD9を有するエクソソームの量の割合を指標として認知症状のないパーキンソン病患者由来血漿検体、認知症状のあるパーキンソン病患者由来血漿検体、健常者由来血漿検体を評価した箱ひげグラフである。
【
図4】
図4はホスファチジルセリン及びCD9を有するエクソソームの量を指標としてパーキンソン病患者由来血漿検体及び健常者由来血漿検体を評価した箱ひげグラフである。
【
図5】
図5はCD9を有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びCD9を有するエクソソームの量の割合を指標としてパーキンソン病患者由来血漿検体及び健常者由来血漿検体を評価した箱ひげグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、範囲の上限と下限を示す場合、特別に記載した場合を除き、A~BはA以上B以下であることを示す。
【0015】
細胞外小胞は、細胞に由来する、脂質二重膜で構成される小型膜小胞である。当該細胞外小胞は、例えば、20nm~1000nmの直径を有するものが挙げられ、50nm~800nmのものが好ましく、50nm~500nmのものがより好ましく、50nm~200nmのものが特に好ましい。前記細胞外小胞としては、例えば、Nature Reviews Immunology 9, 581-593 (August 2009)、「肥満研究」Vol.13 No.2 2007 トピックス 青木直人等に記載の通り、その発生起源や小型膜小胞の大きさ等により様々に分類されるものが挙げられる。具体的には、エクソソーム、微小胞、エクトソーム、膜粒子、エクソソーム様小胞、アポトーシス小体、アディポソーム等が挙げられ、エクソソーム及び微小胞が好ましく、エクソソームがより好ましい。
【0016】
前記エクソソームは、細胞に由来する、脂質二重膜で構成された小型膜小胞であり、例えば、50nm~200nmの直径を有するものが挙げられ、50nm~150nmのものが好ましく、50nm~100nmのものがより好ましい。なお、エクソソームは、後期エンドソームに由来すると考えられている。
【0017】
前記微小胞は、細胞に由来する、脂質二重膜で構成された小型膜小胞であり、例えば、100nm~1000nmの直径を有するものが挙げられ、100nm~800nmのものが好ましく、100nm~500nmのものがより好ましい。なお、微小胞は、細胞膜に由来すると考えられている。
【0018】
前記細胞外小胞は、被験者に由来する生体試料に含有されるものであっても、被験者に由来する生体試料から単離されたものであってもよく、被験者に由来する生体試料から単離されたものが好ましい。
【0019】
前記被験者に由来する生体試料としては、細胞外小胞を含みうるものであれば何れでもよく、例えば血清、血漿、全血、バフィーコート等の血液由来試料、脳脊髄液、尿、唾液、精液、胸部滲出液、涙液、痰、粘液、リンパ液、腹水、胸水、羊水、膀胱洗浄液、気管支肺胞洗浄液等の体液試料が挙げられ、血液由来試料、脳脊髄液が好ましく、血清、血漿、脳脊髄液がより好ましく、血清、血漿が更に好ましく、血漿が特に好ましい。また、被験者への試料採取の負担が軽いことから血液由来試料がより有用である。
前記被験者に由来する生体試料は、例えば、被験者から直接採取されたものであっても、回収、濃縮、精製、単離、緩衝液等による希釈、ろ過滅菌等の前処理を行ったものであってもよい。これら前処理は、常法に従い適宜行えばよい。以下、前記被験者に由来する生体試料を「生体試料」と略記する場合がある。
【0020】
前記生体試料から細胞外小胞を単離する方法としては、常法に従い行えばよく、特に限定されない。前記生体試料から細胞外小胞を単離する方法としては、例えば、アフィニティー法(例えば、PSアフィニティー法)、分画遠心分離法(例えば、ペレットダウン法、スクロースクッション法、密度勾配遠心法等の超遠心法)、免疫沈降法、クロマトグラフィー法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー法、ゲル浸透クロマトグラフィー法)、密度勾配法(例えば、ショ糖密度勾配法)、電気泳動法(例えば、オルガネラ電気泳動法)、磁気分離法(例えば、磁気活性化細胞選別(MACS)法)、限外濾過濃縮法(例えば、ナノ膜限外濾過濃縮法)、パーコール勾配単離法、マイクロ流体デバイスを利用した方法、PEG沈殿法等が挙げられ、高い精製度の細胞外小胞を得られることからアフィニティー法、又は理論的に偏りの無い回収が可能であることから分画遠心分離法が好ましく、アフィニティー法又は超遠心法がより好ましく、アフィニティー法が特に好ましい。アフィニティー法の中でも、ホスファチジルセリンに対するアフィニティー精製であるPSアフィニティー法が好ましい。アフィニティー法及び分画遠心分離法は、例えば、WO2016/088689に記載の方法に準じておこなえばよい。
これらの単離方法は、1種のみを用いても、2種以上を組み合わせてもよい。また、1種の単離方法による単離を2回以上繰り返してもよい。
【0021】
前記被験者としては、特に限定されず、例えば、診断基準に基づいてパーキンソン病と診断されたヒト、診断基準に基づいてパーキンソン病を発症するリスクがあると診断されたヒト、パーキンソン病の診断を受けていないヒト、診断基準に基づいてパーキンソン病であると診断されなかったヒト、又は診断基準に基づいてパーキンソン病を発症するリスクがあると診断されなかったヒトが挙げられ、診断基準に基づいてパーキンソン病と診断されたヒト、診断基準に基づいてパーキンソン病を発症するリスクがあると診断されたヒト、パーキンソン病の診断を受けていないヒトが好ましい。
前記診断基準としては、例えば、問診、MIBG心筋シンチグラフィー、ドパミントランスポーターシンチグラフィー等のパーキンソン病診療ガイドラインで推奨されているパーキンソン病のバイオマーカー等に関する検査、パーキンソン病のバイオマーカーの候補物質に関する検査等の結果に基づいて、パーキンソン病であると診断する際に用いられる診断基準等が挙げられる。
【0022】
本発明は、パーキンソン病の診断を補助する方法、バイオマーカー、試薬キット及び装置に関する。
本発明には、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞を含むバイオマーカーを使用し、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を指標として、被験者がパーキンソン病であると判定する場合(以下、「第1発明」と略記する場合がある)と、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞、テトラスパニンを有する細胞外小胞を含むバイオマーカーを組み合わせて使用し、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対する前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を指標として、被験者がパーキンソン病であると判定する場合(以下、「第2発明」と略記する場合がある)が含まれる。
【0023】
1.第1発明
<パーキンソン病の症診断補助用バイオマーカー>
第1発明におけるパーキンソン病の診断補助用バイオマーカー(以下「PDマーカー」と略記する場合がある)は、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞を含む。
【0024】
PDマーカーにおける細胞外小胞は、前記のものと同様であり、好ましいものも同様である。
PDマーカーにおけるホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞は、CD9、CD63、CD81、CD151等の少なくとも一つのテトラスパニン及びリン脂質であるホスファチジルセリンを膜表面に有しており、CD9、CD63、及びCD81から選ばれる少なくとも一つのテトラスパニン並びにホスファチジルセリンを有するものが好ましく、CD9及びCD81から選ばれる少なくとも一つのテトラスパニン並びにホスファチジルセリンを有するものがより好ましく、CD9及びホスファチジルセリンを有するものが特に好ましい。
【0025】
<パーキンソン病の診断を補助する方法>
第1発明におけるパーキンソン病の診断を補助する方法(以下「PD診断補助方法」と略記する場合がある)は、生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定すること、当該生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を指標として、被験者がパーキンソン病であると判定することを含む。
【0026】
PD診断補助方法における、生体試料、被験者、細胞外小胞は、それぞれ前記のものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0027】
PD診断補助方法におけるホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞は、PDマーカーにおいて前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0028】
PD診断補助方法における「量」としては、質量や濃度が挙げられる。また、前記「量」には、質量や濃度と相関関係を有する実測値(例えば、吸光度、吸光度変化量、透過光、透過光変化量、蛍光強度、蛍光強度変化量、発光量、発光量変化量、濁度、濁度変化率、散乱光、散乱光変化率、反射率、反射率変化量、屈折率、屈折率変化量等)も含まれる。
【0029】
PD診断補助方法におけるホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定は、1種のテトラスパニン及びホスファチジルセリンを有する細胞外小胞の量のみ(例えば、CD9及びホスファチジルセリンを有する細胞外小胞のみ)を測定対象としても、2種以上のテトラスパニン及びホスファチジルセリンを有する細胞外小胞の量(例えば、CD9及びホスファチジルセリンを有する細胞外小胞、並びにCD81及びホスファチジルセリンを有する細胞外小胞)を測定対象としてもよく、1種のテトラスパニン及びホスファチジルセリンを有する細胞外小胞の量のみを測定対象とするのが好ましい。
【0030】
PD診断補助方法におけるホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定は、通常この分野でなされる方法であれば、特に限定されない。当該測定は、例えば、テトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質を用いた免疫学的測定方法、質量分析法、これらを組み合わせた方法等を用いればよく、中でも、テトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質を用いた免疫学的測定方法が好ましい。なお、当該免疫学的測定方法には、免疫反応(抗原抗体反応)を利用する方法の他、例えばレクチンとタンパク質の結合等の抗原抗体反応以外の2分子間における結合力を利用する方法(免疫学的測定方法に準じた方法)も含まれる。
【0031】
前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質としては、テトラスパニンに対して特異的に結合する物質であればよく、例えば、テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体やテトラスパニンが有する糖鎖に対して特異的に結合するレクチン等のテトラスパニンに対して特異的に結合するタンパク質、テトラスパニンに対して特異的に結合する核酸等が挙げられ、テトラスパニンに対して特異的に結合するタンパク質が好ましく、テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体がより好ましい。テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体としては、例えば、抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体、抗CD151抗体等が挙げられ、抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体が好ましく、抗CD9抗体、抗CD81抗体がより好ましく、抗CD9抗体が特に好ましい。前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質は、1種のみを用いても、2種以上を用いても何れでもよく、1種のみを用いるのが好ましい。
【0032】
前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質としては、ホスファチジルセリンに対して特異的に結合する物質であればよく、例えば、ホスファチジルセリンに対して特異的に結合するタンパク質、ホスファチジルセリンに対して特異的に結合する核酸等が挙げられ、ホスファチジルセリンに対して特異的に結合するタンパク質が好ましい。ホスファチジルセリンに対して特異的に結合するタンパク質としては、例えば、ホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体やホスファチジルセリン親和性タンパク質が挙げられ、ホスファチジルセリン親和性タンパク質が好ましい。ホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体としては、例えば抗ホスファチジルセリン抗体1H6(メルク(株))等が挙げられる。ホスファチジルセリン親和性タンパク質としては、例えば、Tim1(T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有分子1、T-cell immunoglobulin-mucin-domain 1)、Tim2(T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有分子2、T-cell immunoglobulin-mucin-domain 2)、Tim3(T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有分子3、T-cell immunoglobulin-mucin-domain 3)、Tim4(T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有分子4、T-cell immunoglobulin-mucin-domain 4)等のTimタンパク質;抗ホスファチジルセリン抗体;Annexin V;MFG-E8等が挙げられ、Timタンパク質、抗ホスファチジルセリン抗体が好ましく、Timタンパク質がより好ましい。また、Timタンパク質としては、Tim1、Tim4が好ましく、Tim4がより好ましい。
前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、1種類のみを用いても、2種類以上を用いてもよく、1種類のみを用いるのが好ましい。
【0033】
前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質及び前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、市販品でも常法により適宜調製されたものでもよい。また、前記テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体や前記ホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよく、これらを単独であるいはこれらを適宜組み合わせて用いてもよい。また、前記テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体や前記ホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体は、免疫グロブリン分子そのもの(intact immunoglobulin)のみならず、その断片であって抗原への結合能を有する断片であるFab、F(ab’)2、F(ab’)等のフラグメント抗体や一本鎖抗体(single chain Fv)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ等の合成抗体等を用いてもよい。また、これらの抗体を調製する場合は、例えば「免疫測定法」(生物化学的測定研究会編集、講談社、2014)等に記載の方法に従っておこなえばよい。
【0034】
前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質又は/及び前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、標識物質により標識されたものであってもよい。当該標識物質としては、例えば、ペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素類、99mTc、131I、125I、14C、3H、32P、35S等の放射性同位元素、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、4-メチルウンベリフェロン、HiLyte、Alexa、CyDye又はローダミン、或いはこれらの誘導体等の蛍光性物質、ルシフェリン、ルミノール、ルテニウム錯体等の発光性物質、フェノール、ナフトール、又はアントラセン、或いはこれらの誘導体等の紫外部に吸収を有する物質、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等のオキシル基を有する化合物に代表されるスピンラベル化剤としての性質を有する物質、金コロイド、量子ドット等のナノ粒子等が挙げられ、酵素類、蛍光性物質が好ましい。当該標識物質で前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質又は/及び前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質を標識する方法は、特に制限されず、自体公知の標識方法に従って行えばよい。これらの標識物質の測定は、標識物質に応じた自体公知の測定方法に従って行えばよい。
前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質及び前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、これら又はいずれか一方を一次親和性物質とし、当該一次親和性物質に対して特異的に結合する2次親和性物質(例えば、2次抗体)をさらに用いてもよい。当該2次親和性物質は、標識物質により標識されたものであってもよく、標識されたものが好ましく、標識物質により標識された2次抗体がより好ましい。また、当該標識物質や標識方法は前記したものと同様であり、好ましいものも同様である。
また、標識物質による標識は、前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質又は/及び前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質にアビジン類及びビオチン類の一方を結合させたもの、並びに標識物質にアビジン類及びビオチン類の残りの一方を結合させたものを用いて、アビジン類とビオチン類の結合を利用してもよい。ビオチン類としては、ビオチン、イミノビオチン、デスチオビオチン、ビオシチン、ビオチンスルホキド等が挙げられ、ビオチンが好ましい。アビジン類としては、アビジン、タマビジン、タマビジン2、ストレプトアビジン等が挙げられ、ストレプトアビジンが好ましい。前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質又は/及び前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質にアビジン類及びビオチン類の一方を結合させる方法、標識物質にアビジン類及びビオチン類の残りの一方を結合させる方法は、常法に従って行えばよい。
【0035】
前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質又は/及び前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は固相に固定化されていてもよく、ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質が固相に固定化されているのが好ましい。
【0036】
前記固相としては、例えばラテックス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート、ポリ塩化ビニール、ポリエチレン、ポリクロロカーボネート、シリコーン樹脂、シリコーンラバー等の合成高分子化合物、例えば多孔性ガラス、スリガラス、セラミックス、アルミナ、シリカゲル、活性炭、金属酸化物等の無機物質等が挙げられる。また、これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
前記固相の形状は特に限定されず、例えば、マイクロタイタープレート(ELISAプレート)、ビーズ、チューブ(マイクロチューブ)、粒子、多数のチューブが一体成形された専用のトレイ、ディスク状片、試験管等が挙げられる。
【0038】
前記固相にテトラスパニンに対して親和性を有する物質又は/及び前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質を固定化する方法としては、通常この分野で用いられる方法であれば特に限定されず、常法に従って行えばよい。
【0039】
PD診断補助方法において、前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質及び前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の組み合わせは特に限定されないが、前記テトラスパニンに対して特異的に結合するタンパク質と前記ホスファチジルセリンに対して特異的に結合するタンパク質の組み合わせが好ましく、前記テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体と前記ホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体又は前記ホスファチジルセリン親和性タンパク質の組み合わせがより好ましい。
当該テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体とホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体又はホスファチジルセリン親和性タンパク質の組み合わせとしては、例えば、テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体とTimタンパク質又はホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体の組み合わせが挙げられ、抗CD9抗体、抗CD63抗体、又は抗CD81抗体とTimタンパク質の組み合わせが好ましく、抗CD9抗体又は抗CD81抗体とTimタンパク質の組み合わせがより好ましく、抗CD9抗体又は抗CD81抗体とTim1又はTim4の組み合わせが更に好ましく、抗CD9抗体又は抗CD81抗体とTim4の組み合わせが特に好ましく、抗CD9抗体とTim4の組み合わせが最も好ましい。
【0040】
前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定は、具体的には、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA法)、酵素免疫測定法(EIA法)、放射免疫測定法(RIA法)、蛍光酵素免疫法(FEIA法)、蛍光免疫測定法(FIA法)、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)、化学発光免疫測定法(CLIA法)、電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)、免疫複合体転移法、イムノクロマトグラフィー法(ICA法)、Luminescent Oxygen Channeling Immunoassay(LOCI法)、Liquid-phase Binding Assay-ElectroKinetic Analyte Transport Assay(LBA-EATA法)、レクチン電気泳動法等のキャピラリー電気泳動法、ウエスタンブロット法、ラテックス免疫比ろう法等の免疫比ろう法(NIA法)、ラテックス免疫比濁法等の免疫比濁法(TIA法)、微粒子計数免疫凝集測定法(PCIA法)等の免疫凝集法、表面プラズモン共鳴法(SPR法)、AlphaLISA法、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)や生体発光共鳴エネルギー転移(BRET)を用いて目的分子の存在を検出するアッセイ等の自体公知の免疫学的測定法や質量分析法が挙げられ、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA法)、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)、化学発光免疫測定法(CLIA法)、電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)、キャピラリー電気泳動法が好ましく、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA法)、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)、LBA-EATA法がより好ましく、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA法)が特に好ましい。
前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定原理は特に限定されず、例えば、サンドイッチ法、競合法等が挙げられ、サンドイッチ法が好ましい。また、当該測定原理として、ホモジアニス法、ヘテロジニアス法等を用いてもよく、ヘテロジニアス法が好ましい。
前記免疫学的測定法に準じた方法としては、例えば、前記テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体や前記ホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体以外の前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質や前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質を用いて、前記免疫学的測定法を行う方法等が挙げられ、好ましい方法も同様のものが挙げられる。
【0041】
前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定は、具体的には、WO2016/088689に記載の方法に準じておこなえばよく、当該公報のすべての記載は本明細書に組み込まれる。
【0042】
PD診断補助方法におけるホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定は、具体的には、例えば、(1)生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞と、テトラスパニンに対して親和性を有する物質と、ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質とを接触させ、生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞と、テトラスパニンに対して親和性を有する物質と、ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質とを含む複合体を形成させる工程(以下、「複合体形成工程」と略記する場合がある)、及び(2)当該複合体の量を測定する工程(以下、「複合体量測定工程」と略記する場合がある)を含む方法が好ましい方法として挙げられる。
【0043】
テトラスパニンに対して親和性を有する物質と、ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質及びその組み合わせ等の具体例、好ましい例は前記のものと同様である。
【0044】
複合体形成工程におけるテトラスパニンに対して親和性を有する物質とホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質と生体試料とを接触させる順序は特に限定されないが、生体試料とホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質とを接触させた後にテトラスパニンに対して親和性を有する物質を接触させるのが好ましい。
すなわち、複合体形成工程は、生体試料とホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質とを接触させて生体試料中の細胞外小胞とホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質とから構成される第1の複合体を形成させる第1手順と、当該第1の複合体とテトラスパニンに対して親和性を有する物質とを接触させて、当該第1の複合体とテトラスパニンに対して親和性を有する物質とから構成される第2の複合体を形成させる第2手順を含むのが好ましい。
【0045】
複合体形成工程は、具体的には、例えば、固相に固定化したホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体又はTimタンパク質(Tim1又はTim4が好ましく、Tim4がより好ましい)と生体試料とを接触させて、ホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体又はTimタンパク質と生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞との第1の複合体を形成させ、当該第1の複合体とテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体とを接触させ、当該第1の複合体とテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体との第2の複合体を形成させる。
【0046】
複合体を形成させた後、少なくとも複合体量測定工程の前に洗浄操作(B/F分離)を行うのが好ましい。
具体的には、例えば、上記方法において第1の複合体を形成させた後又は/及び第2の複合体を形成させた後に洗浄操作を行えばよく、第1の複合体を形成させた後に洗浄操作(B/F分離)を行い、更に第2の複合体を形成させた後に洗浄操作(B/F分離)を行うのが好ましい。
【0047】
複合体量測定工程は、複合体形成工程で得られた、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞と、テトラスパニンに対して親和性を有する物質と、ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質を含む複合体の量を測定する工程であり、当該複合体の量が測定できる方法であれば、いずれの方法であってもよい。
複合体量測定工程は、より具体的には、例えば、(1)標識物質により標識されたテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体を用いるか、(2)「テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体」に対して特異的に結合する、標識物質により標識された標識2次抗体を用いるか、(3)アビジン類及びビオチン類の一方を結合させたテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体とアビジン類及びビオチン類の残りの一方を結合させた標識物質を用いるか等して、前述の複合体形成工程で得られた、固相に固定化したホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体又はTimタンパク質(Tim1又はTim4が好ましく、Tim4がより好ましい)と生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞とテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体と標識物質(酵素類、蛍光性物質が好ましい)を含む複合体における標識物質を検出すればよい。
【0048】
複合体量測定工程において、標識物質を検出する前に洗浄操作(B/F分離)を行うのが好ましい。
【0049】
PD診断補助方法におけるホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定は、より具体的には、例えば、固相プレートに固定化したホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体又はTimタンパク質(Tim1又はTim4が好ましく、Tim4がより好ましい)と生体試料とを接触させて、ホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体又はTimタンパク質と生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞との第1の複合体を形成させ、要すればB/F分離後、(1)当該第1の複合体と標識物質により標識されたテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体とを接触させ、当該第1の複合体と標識物質により標識されたテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体との第2の複合体を形成させる、(2)前記第1の複合体とテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体とを接触させ、当該第1の複合体とテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体との第2の複合体を形成させ、要すればB/F分離後、当該第2の複合体と「当該テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体」に対して特異的に結合する、標識物質により標識された標識2次抗体とを接触させ、当該第2の複合体と当該標識2次抗体との第3の複合体を形成させる、或いは(3)前記第1の複合体とアビジン類及びビオチン類の一方を結合させたテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体とを接触させ、当該第1の複合体とアビジン類及びビオチン類の一方を結合させたテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体との第2の複合体を形成させ、要すればB/F分離後、当該第2の複合体とアビジン類及びビオチン類の残りの一方を結合させた標識物質(酵素類、蛍光性物質が好ましい)の第3の複合体を形成させ、B/F分離の後、得られる第2の複合体又は第3の複合体の標識物質を検出すればよい。
【0050】
生体試料の量や生体試料中のタンパク質の量(濃度)、生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(濃度)や粒子数、これらと反応させるテトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の量(濃度)、標識物質や標識方法等は、生体試料の種類、要求される測定感度、用いる測定方法や測定装置などに応じて適宜設定すればよい。
また、生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(濃度)等は、標準品を用いて検量線を作成することにより算出してもよい。当該標準品としては、例えば、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞等が挙げられる。
【0051】
PD診断補助方法におけるパーキンソン病の判定は、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を指標として、パーキンソン病を判定することを含む。
当該パーキンソン病の判定としては、例えば、被験者がパーキンソン病に罹患している可能性が高いか否かの判定、被験者がパーキンソン病に罹患している可能性の有無の判定、被験者がパーキンソン病を発症するリスクが高いか否かの判定、被験者がパーキンソン病を発症するリスクの有無の判定が挙げられ、被験者がパーキンソン病に罹患している可能性が高いか否かの判定、被験者がパーキンソン病に罹患している可能性の有無の判定が好ましい。
【0052】
PD診断補助方法におけるパーキンソン病の判定は、例えば、前述のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定により得られた、被験者に由来する生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を、予め定めた基準値(カットオフ値)と比較することによりなされる。
具体的には、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量が予め定めた基準値以下の場合は、被験者がパーキンソン病に罹患している可能性が高い、又は被験者がパーキンソン病に罹患している可能性がある、或いは被験者がパーキンソン病を発症するリスクが高い、又は被験者がパーキンソン病を発症するリスクがあると判定できる。
また、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量が予め定めた基準値より大きい場合は、被検者がパーキンソン病に罹患している可能性が低い又は被検者がパーキンソン病に罹患している可能性がない、或いは被験者がパーキンソン病を発症するリスクが低い、又は被験者がパーキンソン病を発症するリスクがないと判定できる。
【0053】
前記予め定めた基準値(カットオフ値)は、パーキンソン病患者と健常者とを区別するために予め設定される、生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量である。
前記予め定めた基準値の決定方法は、特に限定されず、例えば、パーキンソン病に罹患している患者及び健常者から取得した生体試料に含まれるホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定し、得られたホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を用いて、ROC解析(Receiver Operating Characteristic analysis)等の統計解析により定めることができる。前記予め定めた基準値の設定においては、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率などを考慮することが好ましい。前記予め定めた基準値は、例えば、感度が60%以上となるように定めることができ、70%以上となるものが好ましく、80%以上となるものがより好ましく、90%以上となるものが更に好ましく、例えば、特異度が60%以上となるように定めることができ、70%以上となるものが好ましく、80%以上となるものがより好ましく、90%以上となるものが更に好ましい。
【0054】
<パーキンソン病の診断補助用試薬キット>
第1発明におけるパーキンソン病の診断補助用試薬キット(以下、「PD診断補助用試薬キット」と略記する場合がある)は、テトラスパニンに対して親和性を有する物質、及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質を含む。
【0055】
PD診断補助用試薬キットにおける、テトラスパニンに対して親和性を有する物質、ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、それぞれPD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
当該テトラスパニンに対して親和性を有する物質、及び当該ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、それぞれ溶液状態であっても、凍結状態や乾燥状態、凍結乾燥状態であってもよい。また、当該テトラスパニンに対して親和性を有する物質、及び当該ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、一つの試薬としてキットに含まれていても別々の試薬としてキットに含まれていてもよい。
【0056】
PD診断補助用試薬キットにおけるテトラスパニンに対して親和性を有する物質とホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の組み合わせは、PD診断補助方法において前述したものと同様の組み合わせが挙げられ、好ましい組み合わせも同様である。
【0057】
PD診断補助用試薬キットにおけるテトラスパニンに対して親和性を有する物質又は/及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、固相に固定化されていてもよく、また標識物質により標識されていてもよい。当該固相や固相への固定化方法、当該標識物質や標識方法としては、PD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0058】
PD診断補助用試薬キットは、前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質又は/及び前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質に対して特異的に結合する2次親和性物質(例えば、2次抗体)をさらに含んでいてもよい。PD診断補助用試薬キットにおける当該2次親和性物質は、PD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。また、PD診断補助用試薬キットにおける2次親和性物質は、標識物質により標識されたものであってもよく、当該標識物質や標識方法はPD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0059】
PD診断補助用試薬キットにおける前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質又は/及び前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、アビジン類及びビオチン類の一方が結合したものでもよく、当該アビジン類及びビオチン類としては、PD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
PD診断補助用試薬キットは、さらにアビジン類及びビオチン類の一方が結合した標識物質を含んでいてもよく、当該標識物質や標識方法としては、PD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0060】
PD診断補助用試薬キットにおけるテトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の濃度(量)は、測定方法に応じて、通常この分野で用いられている範囲で適宜設定されればよい。テトラスパニンに対して親和性を有する物質は、例えば、使用時の濃度として、固相に固定化する場合は、通常10~20000ng/mL、100~10000ng/mLとなる量が含まれるものが好ましく、検出に用いる場合は、通常10~5000ng/mL、100~500ng/mLとなる量が含まれるものが好ましい。また、ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、例えば、使用時の濃度として、固相に固定化する場合は、通常10~20000ng/mL、100~10000ng/mLとなる量が含まれるものが好ましく、検出に用いる場合は、通常10~5000ng/mL、100~500ng/mLとなる量が含まれるものが好ましい。
【0061】
また、通常この分野で用いられる試薬類、例えば、緩衝剤、反応促進剤、糖類、タンパク質、塩類、界面活性剤等の安定化剤、防腐剤等を、テトラスパニンに対して親和性を有する物質又は/及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質と共存させてもよい。これらの濃度、pHも通常この分野で用いられている範囲から適宜選択すればよい。
【0062】
さらに、PD診断補助用試薬キットは、テトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の他に、これらの親和性物質を用いたテトラスパニン及びホスファチジルセリンを有する細胞外小胞の量を測定する為に必要な試薬を備えていてもよい。このような試薬としては、例えば、洗浄剤、試料希釈液(試料を希釈する為の試薬)、標識物質を検出する為の試薬、これらの親和性物質に標識物質を結合させる為の試薬、これらの親和性物質を固相に固定化する為の試薬、これらの親和性物質や標識物質にアビジン類又はビオチン類を結合させるための試薬等が挙げられる。これらの試薬の濃度、pH等も通常この分野で用いられている範囲から適宜選択すればよい。
【0063】
PD診断補助用試薬キットは、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞について検量線を作成するために用いられる標準品を含んでいてもよい。当該標準品としては、例えば、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞が挙げられる。当該標準品は、溶液状態であっても、凍結状態や乾燥状態、凍結乾燥状態であってもよい。また、通常この分野で用いられる試薬類、例えば、緩衝剤、反応促進剤、糖類、タンパク質、塩類、界面活性剤等の安定化剤、防腐剤等を、当該標準品と共存させてもよい。これらの濃度、pHも通常この分野で用いられている範囲から適宜選択すればよい。
【0064】
PD診断補助用試薬キットには、添付文書や取扱説明書が含まれていてもよい。当該添付文書や取扱説明書としては、例えば、被験者に由来する生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定すること又は/及びホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を指標として、被験者がパーキンソン病であると判定することが記載された添付文書や取扱説明書等が挙げられる。これらの添付文書や取扱説明書は、複数のものに分かれて記載されたものであっても、一つのものに纏めて記載されたものであってもよい。
【0065】
PD診断補助用試薬キットは、具体的には、例えば、テトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質のいずれか一方が固相に固定化されたものとテトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の残りの一方が、標識物質と結合しているもの又は当該残りの一方の親和性物質とこれを間接的に標識物質と結合する為の成分を含むキットが挙げられる。
PD診断補助用試薬キットは、テトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質のいずれか一方が固相に固定化されたものと下記(1)~(3)から選ばれるいずれか1つを含むキットが好ましいものとして挙げられる。
(1)テトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の残りの一方が標識物質と結合したもの、(2)テトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の残りの一方、並びに当該親和性物質に対して特異的に結合する2次親和性物質が標識物質と結合したもの、(3)テトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の残りの一方がアビジン類及びビオチン類の一方と結合したもの、並びにアビジン類及びビオチン類の残りの一方が標識物質と結合したもの
【0066】
PD診断補助用試薬キットの好ましい具体例としては、ホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体又はTimタンパク質(Tim4又はTim1がより好ましく、Tim4が特に好ましい)が固定化された固相プレートと下記(1)~(3)から選ばれるいずれか1つを含むキットが挙げられる。
(1)ホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体(抗CD9抗体又は抗CD81抗体がより好ましく、抗CD9抗体が特に好ましい)又はTimタンパク質の残りの一方が標識物質と結合したものを含む溶液(通常10~5000ng/mL、100~500ng/mLが好ましい)、(2)ホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体又はTimタンパク質の残りの一方を含む溶液(通常10~5000ng/mL、100~500ng/mLが好ましい)、並びに当該親和性物質に対して特異的に結合する2次親和性物質が標識物質と結合したものを含む溶液(通常10~5000ng/mL、100~500ng/mLが好ましい)、(3)アビジン類及びビオチン類の一方が結合したテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体(抗CD9抗体又は抗CD81抗体が好ましく、抗CD9抗体がより好ましい)を含む溶液(通常10~5000ng/mL、100~500ng/mLが好ましい)、並びにアビジン類及びビオチン類の残りの一方が結合した標識物質を含む溶液(通常10~5000ng/mL、100~500ng/mLが好ましい)。
【0067】
<パーキンソン病の診断補助用装置>
第1発明におけるパーキンソン病の診断補助用装置(以下、「PD診断補助用装置」と略記する場合がある)は、被験者に由来する生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定する測定部、及び前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を指標として被験者がパーキンソン病であると判定する判定部を有する。
【0068】
PD診断補助用装置における生体試料、被験者、細胞外小胞は、それぞれ前記のものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0069】
PD診断補助用装置を構成する測定部、判定部等は同一の装置内に配置されていても、それぞれ別体となっていてもよい。
【0070】
PD診断補助用装置における測定部は、装置に導入された生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定する部位である。当該測定部の大きさや構成は特に限定されない。当該測定部としては、例えば、ELISA法に用いられるマイクロプレートリーダー又はCCDを用いて撮像するイメージング装置、ウエスタンブロット法又はマイクロアレイ(マイクロチップ)を利用した方法に用いられるイメージング装置、質量分析法に用いられる質量分析装置、分子間相互作用解析装置、及びフローサイトメトリーに用いられるフローサイトメーター、HPLC法やキャピラリー電気泳動法に用いられる紫外可視光検出器や蛍光検出器等が挙げられる。
【0071】
PD診断補助用装置におけるホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞、量、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定方法の測定対象は、PD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0072】
PD診断補助用装置におけるホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の測定や当該測定に用いられる物質は、PD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものや具体例も同様である。
【0073】
PD診断補助用装置は、演算部を備えていてもよい。PD診断補助用装置における演算部は、前記測定部で得られた生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の質量や濃度と相関関係を有する実測値(例えば、吸光度、吸光度変化量、透過光、透過光変化量、蛍光強度、蛍光強度変化量、発光量、発光量変化量、濁度、濁度変化率、散乱光、散乱光変化率、反射率、反射率変化量、屈折率、屈折率変化量等)を、質量や濃度等に換算する部位である。
なお、当該実測値、演算部により換算された質量や濃度等は、メモリやハードディスクなど装置に備えられた記憶装置等に記憶されてもよい。
【0074】
PD診断補助用装置における判定部は、前記測定部又は前記演算部で得られたホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を指標として、パーキンソン病を判定する部位である。
【0075】
PD診断補助用装置におけるパーキンソン病の判定や当該判定に用いられる予め定められた基準値、予め定められた基準値の決定方法は、PD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものや具体例も同様である。
【0076】
PD診断補助用装置おける予め定められた基準値は、PD診断補助用装置に予め記憶されていてもよいし、判定の際にPD診断補助用装置の入力部位から入力されてもよい。
【0077】
PD診断補助用装置は、出力部を備えていてもよい。出力部では、判定の結果をディスプレイなどの表示装置やプリンターなどの印刷装置に表示又は出力させるなどの処理が行われる。
【0078】
2.第2発明
<パーキンソン病の診断補助用バイオマーカーセット>
第2発明におけるパーキンソン病の診断補助用バイオマーカーセット(以下、「PDマーカーセット」と略記する場合がある)は、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞、テトラスパニンを有する細胞外小胞を含むバイオマーカーの組み合わせである。
PDマーカーセットによれば、例えば、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合(以下「PDマーカー(II)」と略記する場合がある)を求めることができ、当該割合は、被験者がパーキンソン病であると判定する為の指標として用いることができる。
また、PDマーカー(II)によれば、被験者が、認知症状のあるパーキンソン病であるか、或いは、認知症状のないパーキンソン病であるかを区別する為の指標として用いることもできる。
【0079】
PDマーカーセットにおける細胞外小胞は、前記細胞外小胞と同様であり、好ましいものも同様である。
【0080】
PDマーカーセットにおけるホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞は、CD9、CD63、CD81、CD151等の少なくとも一つのテトラスパニン及びリン脂質であるホスファチジルセリンを膜表面に有しており、CD9、CD63、及びCD81から選ばれる少なくとも一つのテトラスパニン並びにホスファチジルセリンを有するものが好ましく、CD9及びCD63から選ばれる少なくとも一つのテトラスパニン並びにホスファチジルセリンを有するものがより好ましく、CD9及びホスファチジルセリンを有するものが特に好ましい。
【0081】
PDマーカーセットのテトラスパニンを有する細胞外小胞は、CD9、CD63、CD81、CD151等の少なくとも一つのテトラスパニンを膜表面に有しており、CD9、CD63、及びCD81から選ばれる少なくとも一つのテトラスパニンを有するものが好ましく、CD9及びCD63から選ばれる少なくとも一つのテトラスパニンを有するものがより好ましく、CD9を有するものが特に好ましい。
【0082】
PDマーカーセットのホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞におけるテトラスパニンは、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞におけるテトラスパニンと同一のものであっても異なるものであってもよく、同一のものが好ましい。
【0083】
<パーキンソン病の診断を補助する方法(II)>
第2発明におけるパーキンソン病の診断を補助する方法(以下、「PD診断補助方法(II)」と略記する場合がある)は、生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、及び生体試料中のテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定すること、テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合(PDマーカー(II))を算出すること、テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対する、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を指標として、被験者がパーキンソン病であると判定することを含む。
【0084】
PD診断補助方法(II)における生体試料、被験者、細胞外小胞は、それぞれ前記のものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0085】
PD診断補助方法(II)における、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞は、PDマーカーセットにおいて前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
PD診断補助方法(II)における、量、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定対象、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定や当該測定に用いられる物質は、PD診断補助方法において前述したものと同様のものが挙げられ、テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体、並びにテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体とホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体又はホスファチジルセリン親和性タンパク質の組み合わせ以外は、好ましいものや具体例もPD診断補助方法において前述したものと同様である。
【0086】
PD診断補助方法(II)におけるテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体としては、例えば、抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体、抗CD151抗体等が挙げられ、抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体が好ましく、抗CD9抗体、抗CD63抗体がより好ましく、抗CD9抗体が特に好ましい。
前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質は、1種のみを用いても、2種以上を用いても何れでもよく、1種のみを用いるのが好ましい。
【0087】
PD診断補助方法(II)におけるテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体とホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体又はホスファチジルセリン親和性タンパク質の組み合わせとしては、例えば、テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体とTimタンパク質又はホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体の組み合わせが挙げられ、抗CD9抗体、抗CD63抗体、又は抗CD81抗体とTimタンパク質の組み合わせが好ましく、抗CD9抗体又は抗CD63抗体とTimタンパク質の組み合わせがより好ましく、抗CD9抗体又は抗CD63抗体とTim1又はTim4の組み合わせが更に好ましく、抗CD9抗体又は抗CD63抗体とTim4の組み合わせが特に好ましく、抗CD9抗体とTim4の組み合わせが最も好ましい。
【0088】
PD診断補助方法(II)におけるテトラスパニンを有する細胞外小胞は、PDマーカーセットにおいて前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0089】
PD診断補助方法(II)における前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞におけるテトラスパニンと前記テトラスパニンを有する細胞外小胞におけるテトラスパニンは同一のものであっても異なるものであってもよく、同一のものが好ましい。
【0090】
PD診断補助方法(II)におけるテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定は、1種のテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(例えば、CD9を有する細胞外小胞のみ)を測定対象としても、2種以上のテトラスパニン細胞外小胞の量(例えば、CD9を有する細胞外小胞、及びCD63を有する細胞外小胞)を測定対象としてもよく、1種のテトラスパニンを有する細胞外小胞の量のみを測定対象とするのが好ましい。
当該テトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定は、通常この分野で用いられる方法であれば、特に限定されず、例えば、テトラスパニンに対して親和性を有する物質を用いる免疫学的測定方法、質量分析法、これらを組み合わせた方法が挙げられ、テトラスパニンに対して親和性を有する物質を用いる免疫学的測定方法が好ましい。なお、当該免疫学的測定方法には、免疫反応(抗原抗体反応)を利用する方法だけでなく、例えばレクチンとタンパク質の結合等の抗原抗体反応以外の2分子間における結合力を利用する方法(免疫学的測定方法に準じた方法)も含まれる。
前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定におけるテトラスパニンに対して親和性を有する物質としては、PD診断補助方法において前述したものと同様のものが挙げられ、テトラスパニンに対して特異的に結合するタンパク質が好ましく、テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体がより好ましい。当該テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体としては、例えば、抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体、抗CD151抗体等が挙げられ、抗CD9抗体、抗CD63抗体が好ましく、抗CD9抗体がより好ましい。前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質は、1種のみを用いても、2種以上を用いてもよく、1種のみを用いるのが好ましい。
【0091】
前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質は、市販品でも常法により適宜調製されたものでもよい。また、前記テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよく、これらを単独であるいはこれらを適宜組み合わせて用いてもよい。また、前記テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体は、免疫グロブリン分子そのもの(intact immunoglobulin)のみならず、その断片であって抗原への結合能を有する断片であるFab、F(ab’)2、F(ab’)等のフラグメント抗体や一本鎖抗体(single chain Fv)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ等の合成抗体等を用いてもよい。また、これらの抗体を調製する場合は、例えば「免疫測定法」(生物化学的測定研究会編集、講談社、2014)等に記載の方法に従っておこなえばよい。
【0092】
PD診断補助方法(II)におけるテトラスパニンに対して親和性を有する物質は、標識物質によって標識されたものであってもよく、標識物質や標識方法は、PD診断補助方法と同様であり、好ましいものや具体例も同様である。
また、PD診断補助方法と同様、テトラスパニンに対して親和性を有する物質を一次親和性物質とし、当該一次親和性物質に対して特異的に結合する2次親和性物質(例えば、2次抗体)をさらに用いてもよい。当該2次親和性物質は、標識物質により標識されたものであってもよく、当該標識物質や標識方法はPD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
さらに、標識物質による標識は、前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質にアビジン類及びビオチン類の一方を結合させたもの、並びに標識物質にアビジン類及びビオチン類の残りの一方を結合させたものを用いて、アビジン類とビオチン類の結合を利用してもよい。当該アビジン類や当該ビオチン類、テトラスパニンに対して親和性を有する物質にアビジン類やビオチン類を結合させる方法は、PD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものや具体例も同様である。
【0093】
PD診断補助方法(II)におけるテトラスパニンに対して親和性を有する物質は、固相に固定化されていてもよく、当該固相や固相に前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質を固定化する方法は、PD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものや具体例も同様である。
【0094】
PD診断補助方法(II)における前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞を測定する為に用いられるテトラスパニンに対して親和性を有する物質と、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞を測定する為に用いられるテトラスパニンに対して親和性を有する物質は、少なくとも一つの同一のテトラスパニンに対して親和性を有する物質(例えば、両者の測定に少なくともCD9に対して親和性を有する物質を使用する)を用いても、異なる種類のテトラスパニンに対して親和性を有する物質(例えば、一方の測定にCD9に対して親和性を有する物質を使用し、残りの一方の測定にCD63に対して親和性を有する物質を使用する)を用いてもよく、少なくとも一つの同一のテトラスパニンに対して親和性を有する物質を使用するのが好ましく、同一のテトラスパニンに対して親和性を有する物質のみを使用する(例えば、両者の測定にCD9に対して親和性を有する物質のみを使用する)のがより好ましく、同一のテトラスパニンに対して親和性を有する物質を一種類のみ(例えば、両者の測定に抗CD9抗体のみを使用する)を使用するのが特に好ましい。
【0095】
PD診断補助方法(II)におけるテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定、測定原理は、PD診断補助方法においてホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定、測定原理として前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0096】
PD診断補助方法(II)におけるテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定は、具体的には、例えば、(1)生体試料中のテトラスパニンを有する細胞外小胞と、テトラスパニンに対して親和性を有する物質とを接触させ、生体試料中のテトラスパニンを有する細胞外小胞と、テトラスパニンに対して親和性を有する物質を含む複合体を形成させる工程(複合体形成工程)、及び(2)当該複合体の量を測定する工程(複合体量測定工程)を含む方法が好ましい方法として挙げられる。
【0097】
PD診断補助方法(II)のテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定における複合体形成工程は、生体試料とテトラスパニンに対して親和性を有する物質とを接触させて生体試料中の細胞外小胞とテトラスパニンに対して親和性を有する物質とから構成される第1の複合体を形成させる第1手順と、当該第1の複合体とテトラスパニンに対して親和性を有する物質とを接触させて、当該第1の複合体とテトラスパニンに対して親和性を有する物質とから構成される第2の複合体を形成させる第2手順を含むのが好ましい。
当該第1の複合体を形成させる際に使用するテトラスパニンに対して親和性を有する物質と当該第2の複合体を形成させる際に使用するテトラスパニンに対して親和性を有する物質とは、同一のものが好ましい。
【0098】
PD診断補助方法(II)のテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定における複合体形成工程は、具体的には、例えば、固相に固定化したテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体(抗CD9抗体、抗CD63抗体が好ましく、抗CD9抗体がより好ましい)と生体試料とを接触させて、テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体と生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞との第1の複合体を形成させ、当該第1の複合体とテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体(抗CD9抗体、抗CD63抗体が好ましく、抗CD9抗体がより好ましい)を接触させ、当該第1の複合体とテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体との第2の複合体を形成させる。
【0099】
複合体を形成させた後、少なくとも複合体量測定工程の前に洗浄操作(B/F分離)を行うのが好ましい。
具体的には、例えば、上記方法において第1の複合体を形成させた後又は/及び第2の複合体を形成させた後に洗浄操作を行えばよく、第1の複合体を形成させた後に洗浄操作(B/F分離)を行い、更に第2の複合体を形成させた後に洗浄操作(B/F分離)を行うのが好ましい。
【0100】
PD診断補助方法(II)のテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定における複合体量測定工程は、複合体形成工程で得られた、テトラスパニンを有する細胞外小胞と、テトラスパニンに対して親和性を有する物質を含む複合体の量を測定する工程であり、当該複合体の量が測定できる方法であれば、いずれの方法であってもよい。
当該複合体量測定工程は、より具体的には、例えば、(1)標識物質により標識されたテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体を用いるか、(2)「テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体」に対して特異的に結合する、標識物質により標識された標識2次抗体を用いるか、(3)アビジン類及びビオチン類の一方を結合させたテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体とアビジン類及びビオチン類の残りの一方を結合させた標識物質を用いるか等して、前述の複合体形成工程で得られた固相プレートに固定化したテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体(抗CD9抗体、抗CD63抗体が好ましく、抗CD9抗体がより好ましい)と生体試料中のテトラスパニンを有する細胞外小胞とテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体(抗CD9抗体、抗CD63抗体が好ましく、抗CD9抗体がより好ましい)と標識物質(酵素類、蛍光性物質が好ましい)を含む複合体における標識物質を検出すればよい。
【0101】
複合体量測定工程において、標識物質を検出する前に洗浄操作(B/F分離)を行うのが好ましい。
【0102】
PD診断補助方法(II)における前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定は、より具体的には、例えば、固相プレートに固定化したテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体(抗CD9抗体、抗CD63抗体が好ましく、抗CD9抗体がより好ましい)と生体試料とを接触させて、テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体と生体試料中のテトラスパニンを有する細胞外小胞との第1の複合体を形成させ、要すればB/F分離の後、(1)当該第1の複合体と標識物質により標識されたテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体(抗CD9抗体、抗CD63抗体が好ましく、抗CD9抗体がより好ましい)とを接触させ、当該第1の複合体と標識物質により標識されたテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体との第2の複合体を形成させる、(2)前記第1の複合体とテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体(抗CD9抗体、抗CD63抗体が好ましく、抗CD9抗体がより好ましい)とを接触させ、当該第1の複合体とテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体との第2の複合体を形成させ、要すればB/F分離後、当該第2の複合体と「当該テトラスパニンに対して特異的に結合する抗体」に対して特異的に結合する、標識物質により標識された標識2次抗体とを接触させ、当該第2の複合体と当該標識2次抗体との第3の複合体を形成させる、或いは(3)前記第1の複合体とアビジン類及びビオチン類の一方を結合させたテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体(抗CD9抗体、抗CD63抗体が好ましく、抗CD9抗体がより好ましい)とを接触させ、当該第1の複合体とアビジン類及びビオチン類の一方を結合させたテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体との第2の複合体を形成させ、要すればB/F分離後、当該第2の複合体とアビジン類及びビオチン類の残りの一方を結合させた標識物質(酵素類、蛍光性物質が好ましい)の第3の複合体を形成させ、B/F分離の後、得られる第2の複合体又は第3の複合体の標識物質(酵素類、蛍光性物質が好ましい)を検出すればよい。
【0103】
生体試料の量や生体試料中のタンパク質の量(濃度)、生体試料中のテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(濃度)や粒子数、これらと反応させるテトラスパニンに対して親和性を有する物質の量(濃度)、標識物質や標識方法等は、生体試料の種類、要求される測定感度、用いる測定方法や測定装置などに応じて適宜設定すればよい。
また、生体試料中のテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(濃度)等は、標準品を用いて検量線を作成することにより算出してもよい。当該標準品としては、例えば、テトラスパニンを有する細胞外小胞等が挙げられる。
【0104】
前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合は、前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)を、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)により除すること((A)/(B))により算出すればよい。
【0105】
PD診断補助方法(II)におけるパーキンソン病の判定は、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対する前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))を指標として、パーキンソン病を判定することを含む。
当該パーキンソン病の判定としては、例えば、被験者がパーキンソン病に罹患している可能性が高いか否かの判定、被験者がパーキンソン病に罹患している可能性の有無の判定、被験者がパーキンソン病を発症するリスクが高いか否かの判定、被験者がパーキンソン病を発症するリスクの有無の判定が挙げられ、被験者がパーキンソン病に罹患している可能性が高いか否かの判定、被験者がパーキンソン病に罹患している可能性の有無の判定が好ましい。
また、PD診断補助方法(II)におけるパーキンソン病の判定は、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対する前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))を指標として、被験者が、認知症状のあるパーキンソン病であるか、或いは、認知症状のないパーキンソン病であるかを判定する(区別する)ことを含みうる。
本明細書において、認知症状とは、脳の認知機能が後天的な器質的障害によって低下した状態を意味する。具体的には、例えば、ミニメンタルステート検査(MMSE)において30満点中27点以下の場合に認知症状があると判断され、例えばアルツハイマー型認知症や軽度認知障害を発症している可能性が考えられる。本明細書において、認知症状があるパーキンソン病とは、パーキンソン病に罹患している又はパーキンソン病を発症する可能性がある、且つ、認知症状を発症している又は認知症状を発症する可能性がある状態であり、例えば、パーキンソン病に罹患している又はパーキンソン病を発症する可能性があり、且つMMSEが27点以下の場合である。
本明細書において、認知症状がないパーキンソン病とは、パーキンソン病に罹患している又はパーキンソン病を発症する可能性がある、且つ、認知症状を発症していない又は認知症状を発症する可能性がない状態であり、例えば、パーキンソン病に罹患している又はパーキンソン病を発症する可能性があり、且つMMSEが27点より大きい場合である。
【0106】
PD診断補助方法(II)におけるパーキンソン病の判定は、例えば、前述のテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定、前述のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定により得られた、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))を、予め定めた基準値(カットオフ値)と比較することによりなされる。
具体的には、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))が予め定めた基準値以下の場合は、被験者がパーキンソン病に罹患している可能性が高い、又は被験者がパーキンソン病に罹患している可能性がある、或いは被験者がパーキンソン病を発症するリスクが高い、又は被験者がパーキンソン病を発症するリスクがあると判定できる。
また、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))が予め定めた基準値より大きい場合は、被検者がパーキンソン病に罹患している可能性が低い又は被検者がパーキンソン病に罹患している可能性がない、或いは被験者がパーキンソン病を発症するリスクが低い、又は被験者がパーキンソン病を発症するリスクがないと判定できる。
PD診断補助方法(II)における予め定めた基準値(カットオフ値)は、パーキンソン病患者と健常者とを区別するために予め設定される、生体試料中のテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))である。
【0107】
PD診断補助方法(II)における予め定めた基準値の決定方法は、特に限定されず、例えば、パーキンソン病に罹患している患者及び健常者から取得した生体試料に含まれるテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)を測定し、テトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))をそれぞれ算出し、得られたテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))を用いて、ROC解析(Receiver Operating Characteristic analysis)等の統計解析により定めることができる。当該予め定めた基準値の設定においては、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率などを考慮することが好ましい。前記予め定めた基準値は、例えば、感度が60%以上となるように定めることができ、70%以上となるものが好ましく、80%以上となるものがより好ましく、90%以上となるものが更に好ましく、例えば、特異度が60%以上となるように定めることができ、70%以上となるものが好ましく、80%以上となるものがより好ましく、90%以上となるものが更に好ましい。
【0108】
PD診断補助方法(II)におけるパーキンソン病の判定は、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対する前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))を指標として、被験者が、健常者であるか、認知症状のあるパーキンソン病であるか、或いは、認知症状のないパーキンソン病であるかを複数のあらかじめ定めた基準値{カットオフ値、例えば健常者と認知症状のあるパーキンソン病を区別するためのカットオフ値(以下「健常者/認知症状のあるパーキンソン病基準値」と略記する場合がある)と認知症状のあるパーキンソン病と認知症状のないパーキンソン病を区別するためのカットオフ値(以下「認知症状のあるパーキンソン病/認知症状のないパーキンソン病基準値」と略記する場合がある)}により判定(区別)してもよく、「認知症状のあるパーキンソン病/認知症状のないパーキンソン病基準値」により、被験者が認知症状のあるパーキンソン病であるか、或いは、認知症状のないパーキンソン病であるかのみを判定(区別)してもよい。
【0109】
PD診断補助方法(II)において、被験者が認知症状のあるパーキンソン病であるか、或いは、認知症状のないパーキンソン病であるかのみを判定する場合における被験者は、診断基準に基づいてパーキンソン病と診断されたヒト、診断基準に基づいてパーキンソン病を発症するリスクがあると診断されたヒトが好ましい。当該診断基準としては、前記のものと同様である。
【0110】
PD診断補助方法(II)における、被験者が認知症状のあるパーキンソン病であるか、或いは、認知症状のないパーキンソン病であるかの判定は、例えば、前述のテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定、前述のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定により得られた、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))を、予め定めた「認知症状のあるパーキンソン病/認知症状のないパーキンソン病基準値」と比較することによりなされる。
具体的には、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))が「認知症状のあるパーキンソン病/認知症状のないパーキンソン病基準値」以下の場合は、被験者が認知症状のないパーキンソン病に罹患している可能性が高い、又は被験者が認知症状のないパーキンソン病を発症するリスクが高い、或いは被験者が認知症状のないパーキンソン病を発症するリスクがあると判定できる。
また、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))が「認知症状のあるパーキンソン病/認知症状のないパーキンソン病基準値」より大きい場合は、被検者が認知症状のあるパーキンソン病に罹患している可能性が高い、又は被験者が認知症状のあるパーキンソン病を発症するリスクが高い、或いは被験者が認知症状のあるパーキンソン病を発症するリスクがあると判定できる。
【0111】
「認知症状のあるパーキンソン病/認知症状のないパーキンソン病基準値」の決定方法は、特に限定されず、例えば、認知症状のあるパーキンソン病に罹患している患者及び認知症状のないパーキンソン病に罹患している患者から取得した生体試料に含まれるテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)を測定し、テトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))をそれぞれ算出し、得られたテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))を用いて、ROC解析(Receiver Operating Characteristic analysis)等の統計解析により定めることができる。当該予め定めた基準値の設定においては、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率などを考慮することが好ましい。前記予め定めた基準値は、例えば、感度が60%以上となるように定めることができ、70%以上となるものが好ましく、80%以上となるものがより好ましく、90%以上となるものが更に好ましく、例えば、特異度が60%以上となるように定めることができ、70%以上となるものが好ましく、80%以上となるものがより好ましく、90%以上となるものが更に好ましい。
【0112】
PD診断補助方法(II)における被験者が健常者か、認知症状のあるパーキンソン病であるか、或いは、認知症状のないパーキンソン病であるかの判定は、例えば、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対する前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))が、「認知症状のあるパーキンソン病/認知症状のないパーキンソン病基準値」以下の場合は、被験者が認知症状のないパーキンソン病に罹患している可能性が高い、又は被験者が認知症状のないパーキンソン病を発症するリスクが高い、或いは被験者が認知症状のないパーキンソン病を発症するリスクがある;「認知症状のあるパーキンソン病/認知症状のないパーキンソン病基準値」より大きく「健常者/認知症状のあるパーキンソン病基準値」以下である場合は、被験者が認知症状のあるパーキンソン病に罹患している可能性が高い、又は被験者が認知症状のあるパーキンソン病を発症するリスクが高い、或いは被験者が認知症状のあるパーキンソン病を発症するリスクがある;「健常者/認知症状のあるパーキンソン病基準値」より大きい場合は、被検者がパーキンソン病に罹患している可能性が低い又は被検者がパーキンソン病に罹患している可能性がない、或いは被験者がパーキンソン病を発症するリスクが低い、又は被験者がパーキンソン病を発症するリスクがないと判定できる。
【0113】
「健常者/認知症状のあるパーキンソン病基準値」の決定方法は、特に限定されず、例えば、健常者および認知症状のあるパーキンソン病患者から取得した生体試料に含まれるテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)を測定し、テトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))をそれぞれ算出し、得られたテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(A)に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量(B)の割合((A)/(B))を用いて、ROC解析(Receiver Operating Characteristic analysis)等の統計解析により定めることができる。当該予め定めた基準値の設定においては、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率などを考慮することが好ましい。前記予め定めた基準値は、例えば、感度が60%以上となるように定めることができ、70%以上となるものが好ましく、80%以上となるものがより好ましく、90%以上となるものが更に好ましく、例えば、特異度が60%以上となるように定めることができ、70%以上となるものが好ましく、80%以上となるものがより好ましく、90%以上となるものが更に好ましい。
【0114】
<パーキンソン病の診断補助用試薬キット(II)>
第2発明におけるパーキンソン病の診断補助用試薬キット(以下、「PD診断補助用試薬キット(II)」と略記する場合がある)は、テトラスパニンに対して親和性を有する物質、及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質を含む。
【0115】
PD診断補助用試薬キット(II)におけるテトラスパニンに対して親和性を有する物質、ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、それぞれPD診断補助方法(II)において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。当該テトラスパニンに対して親和性を有する物質、及び当該ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、それぞれ溶液状態であっても、凍結状態や乾燥状態、凍結乾燥状態であってもよい。また、当該テトラスパニンに対して親和性を有する物質、及び当該ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、一つの試薬としてキットに含まれていても別々の試薬としてキットに含まれていてもよい。
【0116】
PD診断補助用試薬キット(II)におけるテトラスパニンに対して親和性を有する物質とホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の組み合わせは、PD診断補助方法(II)において前述した組み合わせと同様の組み合わせが挙げられ、好ましい組み合わせも同様である。
【0117】
PD診断補助用試薬キット(II)におけるテトラスパニンに対して親和性を有する物質又は/及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、固相に固定化されていてもよく、また標識物質により標識されていてもよい。当該固相や固相への固定化方法、当該標識物質や標識方法は、PD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0118】
PD診断補助用試薬キット(II)は、前記テトラスパニンに対して親和性を有する物質又は/及び前記ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質に対して特異的に結合する2次親和性物質(例えば、2次抗体)をさらに含んでいてもよい。PD診断補助用試薬キット(II)における当該2次親和性物質は、PD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。また、PD診断補助用試薬キット(II)における2次親和性物質は、標識物質により標識されたものであってもよく、当該標識物質や標識方法はPD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0119】
PD診断補助用試薬キット(II)におけるテトラスパニンに対して親和性を有する物質又は/及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、アビジン類及びビオチン類の一方が結合したものでもよく、当該アビジン類及びビオチン類としては、PD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
PD診断補助用試薬キット(II)は、アビジン類及びビオチン類の一方が結合した標識物質を含んでいてもよく、当該標識物質や標識方法としては、それぞれPD診断補助方法において前述したものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0120】
PD診断補助用試薬キット(II)におけるテトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の濃度(量)は、測定方法に応じて、通常この分野で用いられている範囲で適宜設定されればよい。テトラスパニンに対して親和性を有する物質は、例えば、使用時の濃度として、固相に固定化する場合は、通常10~20000ng/mL、100~10000ng/mLとなる量が含まれるものが好ましく、検出に用いる場合は、通常10~5000ng/mL、100~500ng/mLとなる量が含まれるものが好ましい。また、ホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、例えば、使用時の濃度として、固相に固定化する場合は、通常10~20000ng/mL、100~10000ng/mLとなる量が含まれるものが好ましく、検出に用いる場合は、通常10~5000ng/mL、100~500ng/mLとなる量が含まれるものが好ましい。
また、PD診断補助用試薬キット(II)におけるテトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質は、通常この分野で用いられる試薬類と共存させてもよく、当該試薬としてはPD診断補助用試薬キットと同様である。
【0121】
さらに、PD診断補助用試薬キット(II)は、テトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の他に、これらの親和性物質を用いたテトラスパニン及びホスファチジルセリンを有する細胞外小胞の量又は/及びホスファチジルセリンを有する細胞外小胞の量を測定する為に必要な試薬を備えていてもよい。このような試薬としては、PD診断補助用試薬キットのものと同様である。
【0122】
PD診断補助用試薬キット(II)は、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞について検量線を作成するために用いられる標準品を含んでいてもよく、当該標準品としては、PD診断補助用試薬キットと同様である。
また、PD診断補助用試薬キット(II)は、テトラスパニンを有する細胞外小胞について検量線を作成するために用いられる標準品を含んでいてもよく、当該標準品としては、テトラスパニンを有する細胞外小胞が挙げられる。当該標準品は、溶液状態であっても、凍結状態や乾燥状態、凍結乾燥状態であってもよい。また、通常この分野で用いられる試薬類、例えば、緩衝剤、反応促進剤、糖類、タンパク質、塩類、界面活性剤等の安定化剤、防腐剤等を、当該標準品と共存させてもよい。これらの濃度、pHも通常この分野で用いられている範囲から適宜選択すればよい。
【0123】
PD診断補助用試薬キット(II)には、添付文書や取扱説明書が含まれていてもよい。当該添付文書や取扱説明書としては、例えば、被験者に由来する生体試料中のテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、並びにホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定すること又は/及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を指標として、被験者がパーキンソン病であると判定すること(例えば、PD診断補助方法(II))が記載された添付文書や取扱説明書等が挙げられる。これらの添付文書や取扱説明書は、複数のものに分かれて記載されたものであっても、一つのものに纏めて記載されたものであってもよい。
【0124】
PD診断補助用試薬キット(II)は、具体的には、例えば、下記(A)及び(B)を含むキットが挙げられる。
(A)テトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質のいずれか一方が固相に固定化されたものとテトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の残りの一方が標識物質と結合しているもの又は当該残りの一方の親和性物質とこれを間接的に標識物質と結合させる成分
(B)テトラスパニンに対して親和性を有する物質が固相に固定化されたものとテトラスパニンに対して親和性を有する物質が標識物質と結合しているもの又は当該親和性物質とこれを間接的に標識物質と結合させる成分
【0125】
PD診断補助用試薬キット(II)は、例えば下記(C)及び(D)を含むキットが好ましいものとして挙げられる。
(C)テトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質のいずれか一方が固相に固定化されたものと下記(1)~(3)から選ばれるいずれか一つ
(1)テトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の残りの一方が標識物質と結合したもの、(2)テトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の残りの一方、並びに当該親和性物質に対して特異的に結合する2次親和性物質が標識物質と結合したもの、(3)テトラスパニンに対して親和性を有する物質及びホスファチジルセリンに対して親和性を有する物質の残りの一方がアビジン類及びビオチン類の一方と結合したもの、並びにアビジン類及びビオチン類の残りの一方が標識物質と結合したもの
(D)テトラスパニンに対して親和性を有する物質が固相に固定化されたものと下記(4)~(6)から選ばれるいずれか一つ
(4)テトラスパニンに対して親和性を有する物質が標識物質と結合したもの、(5)テトラスパニンに対して親和性を有する物質、及びテトラスパニンに対して親和性を有する物質に対して特異的に結合する2次親和性物質が標識物質と結合したもの、(6)テトラスパニンに対して親和性を有する物質がアビジン類及びビオチン類の一方と結合したもの、並びにアビジン類及びビオチン類の残りの一方が標識物質と結合したものから選ばれるいずれか一つ
【0126】
PD診断補助用試薬キット(II)の好ましい例として、例えば以下のものが挙げられる。
例えば、ホスファチジルセリンに対して特異的に結合する抗体又はTimタンパク質(Tim4又はTim1がより好ましく、Tim4が特に好ましい)が固定化された固相プレート、テトラスパニン抗体(抗CD9抗体又は抗CD63抗体がより好ましく、抗CD9抗体が特に好ましい)が固定化された固相プレートと下記(1)~(3)から選ばれるいずれか1つを含むキットが挙げられる。
(1)テトラスパニン抗体(抗CD9抗体又は抗CD63抗体がより好ましく、抗CD9抗体が特に好ましい)が標識物質と結合したものを含む溶液(通常10~5000ng/mL、100~500ng/mLが好ましい)、(2)テトラスパニン抗体(抗CD9抗体又は抗CD63抗体がより好ましく、抗CD9抗体が特に好ましい)を含む溶液(通常10~5000ng/mL、100~500ng/mLが好ましい)、並びに当該テトラスパニン抗体に対して特異的に結合する2次親和性物質が標識物質と結合したものを含む溶液(通常10~5000ng/mL、100~500ng/mLが好ましい)、(3)アビジン類及びビオチン類の一方が結合したテトラスパニンに対して特異的に結合する抗体(抗CD9抗体又は抗CD63抗体が好ましく、抗CD9抗体がより好ましい)を含む溶液(通常10~5000ng/mL、100~500ng/mLが好ましい)、並びにアビジン類及びビオチン類の残りの一方が結合した標識物質を含む溶液(通常10~5000ng/mL、100~500ng/mLが好ましい)
【0127】
<パーキンソン病の診断補助用装置(II)>
第2発明におけるパーキンソン病の診断補助用装置(以下、「PD診断補助用装置(II)」と略記する場合がある)は、被験者に由来する生体試料中の、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、並びにテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定を測定する測定部、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対する前記ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を算出する演算部、及び前記生体試料中のテトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対する生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を指標として、被験者がパーキンソン病であると判定する判定部を有する。
【0128】
PD診断補助用装置(II)を構成する測定部、演算部、判定部等は同一の装置内に配置されていても、それぞれ別体となっていてもよい。
【0129】
PD診断補助用装置(II)における前記測定部は、装置に導入された生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、並びにテトラスパニンを有する細胞外小胞の量を測定する部位である。当該測定部の大きさや構成は特に限定されない。
当該測定部としては、例えば、ELISA法に用いられるマイクロプレートリーダー又はCCDを用いて撮像するイメージング装置、ウエスタンブロット法又はマイクロアレイ(マイクロチップ)を利用した方法に用いられるイメージング装置、質量分析法に用いられる質量分析装置、分子間相互作用解析装置、及びフローサイトメトリーに用いられるフローサイトメーター、HPLC法やキャピラリー電気泳動法に用いられる紫外可視光検出器や蛍光検出器等が挙げられる。
【0130】
PD診断補助用装置(II)における、被験者、生体試料、細胞外小胞は、それぞれ前記のものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0131】
PD診断補助用装置(II)における、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞、量、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定対象はPD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
PD診断補助用装置(II)における、ホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定や当該測定に用いられる物質は、PD診断補助方法において前述したものと同様であり、好ましいものや具体例も同様である。
【0132】
また、PD診断補助用装置(II)におけるテトラスパニンを有する細胞外小胞、テトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定対象は、PD診断補助方法(II)において前述したものと同様であり、好ましいものも同様である。
PD診断補助用装置(II)におけるテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の測定や当該測定に用いられる物質は、PD診断補助方法(II)において前述したものと同様であり、好ましいものや具体例も同様である。
【0133】
PD診断補助用装置(II)における演算部は、測定部で得られたテトラスパニンを有する細胞外小胞の量、及びホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量に基づき、テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を算出する部位である。当該測定部の大きさや構成は特に限定されない。
PD診断補助用装置(II)における演算部は、PD診断補助用装置における測定部で得られた生体試料中のホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞、並びにテトラスパニンを有する細胞外小胞の質量や濃度と相関関係を有する実測値(例えば、吸光度、吸光度変化量、透過光、透過光変化量、蛍光強度、蛍光強度変化量、発光量、発光量変化量、濁度、濁度変化率、散乱光、散乱光変化率、反射率、反射率変化量、屈折率、屈折率変化量等)を質量や濃度等に換算した後、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を算出してもよい。
なお、当該実測値、演算部により換算された質量や濃度等、前記テトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合は、メモリやハードディスクなど装置に備えられた記憶装置等に記憶されてもよい。
【0134】
PD診断補助用装置(II)における判定部は、演算部で算出したテトラスパニンを有する細胞外小胞の量に対するホスファチジルセリン及びテトラスパニンを有する細胞外小胞の量の割合を指標として、パーキンソン病を判定する部位である。
また、PD診断補助用装置(II)における判定部は、被験者が認知症状のあるパーキンソン病であるか、或いは、認知症状のないパーキンソン病であるかを区別して判定する部位であってもよい。
【0135】
PD診断補助用装置(II)におけるパーキンソン病の判定や当該判定に用いられる予め定められた基準値、予め定められた基準値の決定方法は、PD診断補助方法(II)において前述したものと同様であり、好ましいものや具体例も同様である。
PD診断補助用装置(II)における予め定めた基準値は、PD診断補助用装置(II)に予め記憶されていてもよいし、判定の際にPD診断補助用装置(II)の入力部位から入力されてもよい。
【0136】
PD診断補助用装置(II)は、出力部を備えていてもよい。出力部では、前記した判定の結果をディスプレイなどの表示装置やプリンターなどの印刷装置に表示又は出力させるなどの処理が行われる。
【0137】
本発明によれば、医師による被験者のパーキンソン病に関する診断を補助する為のデータ(判定結果)が得られる。
医師は、本発明により被験者がパーキンソン病と判定された場合には、例えば、問診、MIBG心筋シンチグラフィー、ドパミントランスポーターシンチグラフィー等のパーキンソン病診療ガイドラインで推奨されているパーキンソン病のバイオマーカー等に関する検査、パーキンソン病のバイオマーカーの候補物質を用いた検査をさらに行ってもよく、これらの結果等を考慮し、被験者のパーキンソン病に関する診断をすることができる。
また、本発明により被験者がパーキンソン病と判定された場合には、レボドパ(L-dopa)等のパーキンソン病の薬(パーキンソン病の進行を遅らせる薬や治療薬)を投与したり、手術を行ったりしてもよい。
被験者が認知症状のあるパーキンソン病と判定された場合には、例えば、抗コリン薬等の認知症状に悪影響を及ぼし得る薬は投与されないことが好ましく、また例えば、コリンエステラーゼ阻害剤等の認知症や軽度認知障害の薬(認知症や軽度認知障害の進行を遅らせる薬や治療薬)の投与や手術を行うことが好ましい。
被験者が認知症状のないパーキンソン病と判定された場合には、例えば、抗コリン薬等の認知症状に悪影響を及ぼし得る薬であっても投与することができる。
従って、被験者が認知症状のないパーキンソン病であるか、認知症状のあるパーキンソン病であるかを判定(区別)することは、医師による治療方針の決定や診断に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明のパーキンソン病の診断を補助する方法、バイオマーカー、試薬キット及び装置は、パーキンソン病の診断を補助することが可能であることから、臨床検査の分野において有用である。本発明によれば、高い正確度で、パーキンソン病の診断を補助することができる。
【実施例】
【0139】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されない。実施例および比較例において、「パーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)」は認知症状のないパーキンソン病患者の検体、「パーキンソン病患者(MMSEが27以下)」は認知症状のあるパーキンソン病患者の検体である。
【0140】
実施例1.PS及びCD9を有するエクソソームの量を指標とするパーキンソン病検体(MMSEが27より大きい)の評価
Timタンパク質-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法によりエクソソームの測定を行い、AUC及びp値を算出した。
(1)キャリブレーターの調製
MagCapture(登録商標)Exosome Isolation Kit PS(富士フイルム和光純薬(株)製、以下「Aキット」とする)を用いて、当該キットに添付された取扱説明書に従って、COLO201細胞培養上清からエクソソームを単離し、当該キットに付属の溶出液を用いてエクソソームを溶出した。プロテインアッセイBCAキット(富士フイルム和光純薬(株)製)を用いて、得られたエクソソーム溶液中のタンパク質濃度をBCA法(ビシンコニン酸法)により測定した。
次いで、得られたエクソソーム溶液を、PS Capture Exosome ELISA Kit,Streptavidin HRP(富士フイルム和光純薬(株)製、以下「Bキット」とする)に付属のReaction Bufferを用いて、BCA法で測定したタンパク質濃度をもとに、0.156、0.313、0.625、1.25、2.50、5.00、10.0、20.0 ng/mLとなるようにそれぞれ希釈し、8点の濃度からなるCOLO201細胞培養上清由来エクソソーム希釈系列(以下、「キャリブレーター」とする)を得た。
(2)測定用検体の前処理
PrecisionMed社より購入したパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)8検体、健常者37検体のEDTA血漿を、それぞれ10,000gで20分間遠心分離した後、上清を回収した。得られた上清を、前記Aキットに付属のReaction Bufferを用いて、それぞれ100倍希釈し、「測定用検体希釈液」とした。
(3)ELISA法による測定
(2)で調製した測定用検体希釈液を、Tim4タンパク質を固相に固定化し抗CD9抗体を検出用抗体としたTim4タンパク質-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法により測定した。具体的には、抗CD9マウスモノクローナル抗体(1K、富士フイルム和光純薬(株)製)を、1.6mM DTTで還元後、Biotin-PEAC5-maleimide((株)同仁化学研究所製)と37℃で1.5時間反応させ、ビオチン標識抗CD9マウスモノクローナル抗体を作製した。検出用抗体以外は、前記Bキットに付属の試薬を用いた。
まず、Bキットに付属のWashing Buffer(10×)を、精製水(蒸留水)で10倍に希釈した後、Bキットに付属のExosome Binding Enhancer(100×)を得られた希釈液に対して1/100量添加した。得られた溶液を、「洗浄液(1×)」とする。次いで、Bキットに付属の「Tim4タンパク質が固相に固定化された96ウェルプレート」の各ウェルを、洗浄液(1×)300~350μLでそれぞれ3回洗浄した。
次いで、(2)で調製したパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)の測定用検体希釈液(8検体 n=2、16ウェル)、健常者検体の測定用検体希釈液(37検体 n=2、74ウェル)、(2)で調製したキャリブレーター(8点分 n=2、16ウェル)、及びブランクとしてBキットに付属のReaction Buffer(n=2、2ウェル)をプレートの各ウェルに100μLずつ分注した。次いで、プレートにプレートシールを貼り、マイクロプレート振とう器を用いて約500rpmで撹拌しながら室温で2時間反応させた。反応後、反応液を捨て、各ウェルを洗浄液(×1)300~350μLで3回洗浄した。 次いで、Bキットに付属のReaction Bufferを用いて、ビオチン標識抗CD9マウスモノクローナル抗体を終濃度が250ng/mLとなるように希釈し、ビオチン標識抗体反応液を得た。得られたビオチン標識抗体反応液を、各ウェルに100μLずつ分注し、プレートシールを貼り、マイクロプレート振とう器を用いて約500rpmで撹拌しながら室温で1時間反応させた。反応後、反応液を捨て、各ウェルを洗浄液(×1)300~350μLで3回洗浄した。
Bキットに付属のReaction Bufferに対して、1/100量のHRP-conjugated Streptavidin(100×)を添加して、よく混合し、HRP標識ストレプトアビジン反応液(1×)を調製した。得られたHRP標識ストレプトアビジン反応液(1×)を各ウェルに100μLずつ分注し、プレートシールを貼り、マイクロプレート振とう器を用いて約500rpmで撹拌しながら室温で2時間反応させた。反応終了後、反応液を捨て、各ウェルを洗浄液(1×)300~350μLで5回洗浄した。
次いで、室温に戻したBキットに付属のTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)Solutionを100μLずつ各ウェルに分注し、マイクロプレート振とう器を用いて約1分間撹拌した後、プレートシールを貼り、室温(20~25℃)で30分間静置反応させた。その後、室温に戻したBキットに付属のStop Solutionを100μLずつ各ウェルに添加し、マイクロプレート振とう器を用いて約5秒間撹拌後、速やかに96ウェルマイクロプレートリーダー(Tecan社、Safire2)を用いて450nmの吸光度と副波長620nmの吸光度をそれぞれ測定した。450nm吸光度値から副波長620nm吸光度値を差し引いた値を「吸光度値」とし、測定用検体希釈液の吸光度値からブランクの吸光度値を差し引いた値を「補正後検体吸光度値」として、それぞれ算出した。そして、COLO201細胞培養上清由来エクソソーム希釈系列(キャリブレーター)の吸光度値からブランクの吸光度値を差し引いた値とキャリブレーターのタンパク質濃度から標準曲線を作成した。標準曲線を用いて、補正後検体吸光度値をタンパク質濃度に換算し、得られた換算値に検体希釈率を乗じた値を「検体測定値」[ng/mL]とした。
(4)AUCの算出
(3)で得られた検体測定値を基に、JMP(登録商標)11(SAS Institute Inc.,Cary,NC,USA)を用いて、Wilcoxon/Kruskal-Wallisの検定(順位和)により、パーキンソン病患者と健常者の有意差検定を行い、p値を算出した。また、(3)で得られた検体測定値を基に、JMP(登録商標)11(SAS Institute Inc.,Cary,NC,USA)を用いてロジスティック回帰分析をおこない、得られた受信者動作特性曲線(ROC曲線)から、曲線下面積値(AUC)を算出した。
得られた結果を下記表1に示す。また、検体測定値を基に作成した箱ひげグラフを
図1に示す。図中、縦軸は検体測定値、横軸のControlは健常者の結果、PDはパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)の結果をそれぞれ示す。
【0141】
比較例1.CD9を有するエクソソームの量を指標とするパーキンソン病検体(MMSEが27より大きい)の評価
Tim4タンパク質の代わりに抗CD9抗体を固相に固定化した以外は、実施例1と同様の方法により、抗CD9抗体-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法によりエクソソームを測定し、パーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)と健常者の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
抗CD9抗体を固相に固定したプレートは、以下の方法により調製した。抗CD9マウスモノクローナル抗体(1K)(富士フイルム和光純薬(株)製)を50mM MOPS(pH7.5)で10μg/mLの濃度に希釈し、96ウェルマイクロプレート(Nunc社)のウェルに100μL添加し、冷蔵で一晩インキュベーションした。TBST(Tris Buffered Saline、pH7.4)でウェルを3回洗浄後、10mg/mLブロックエース含有TBS(Tris Buffered Saline、pH7.4)を300μL添加し、冷蔵で一晩インキュベーションしたものをそれぞれ抗体固相化プレートとして使用した。
検出抗体の抗CD9抗体は、実施例1と同様の方法によりビオチン標識したものを用いた。
得られた結果を下記表1に示す。また、検体測定値を基に作成した箱ひげグラフを
図1に示す。図中、縦軸は検体測定値、横軸のControlは健常者の結果、PDはパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)の結果をそれぞれ示す。
【0142】
実施例2.PS及びCD63を有するエクソソームの量を指標とするパーキンソン病検体(MMSEが27より大きい)の評価
検出抗体として抗CD9抗体の代わりに抗CD63抗体を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、Timタンパク質-抗CD63抗体のサンドイッチELISA法によりエクソソームを測定し、パーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)と健常者の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
検出抗体の抗CD63抗体は、PS Capture Exosome ELISA Kit,Streptavidin HRP(富士フイルム和光純薬(株)製、上記「Bキット」)に付属のビオチン標識された抗CD63抗体を用いた。
得られた結果を下記表1に示す。
【0143】
比較例2.CD63を指標とするパーキンソン病検体の評価
抗CD9抗体の代わりに抗CD63マウスモノクローナル抗体(3-13)(富士フイルム和光純薬)を固相に固定化し、また検出抗体として用いた以外は、比較例1と同様の方法により、抗CD63抗体-抗CD63抗体のサンドイッチELISA法によりエクソソームを測定し、パーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)と健常者の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
抗CD63抗体を固相に固定したプレートは、比較例1と同様の方法により調製した。検出抗体の抗CD63抗体は、PS Capture Exosome ELISA Kit,Streptavidin HRP(富士フイルム和光純薬(株)製、上記「Bキット」)に付属のビオチン標識された抗CD63抗体を用いた。
得られた結果を下記表1に示す。
【0144】
実施例3.PS及びCD81を有するエクソソームの量を指標とするパーキンソン病認知症検体の評価
検出抗体として抗CD9抗体の代わりに抗CD81マウスモノクローナル抗体(17B1)(富士フイルム和光純薬(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、Timタンパク質-抗CD81抗体のサンドイッチELISA法によりエクソソームを測定し、パーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)と健常者の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
検出抗体の抗CD81抗体は、実施例1と同様の方法によりビオチン標識したものを用いた。
得られた結果を下記表1に示す。
【0145】
比較例3.CD81を有するエクソソームの量を指標とするパーキンソン病検体(MMSEが27より大きい)の評価
抗CD9抗体の代わりに抗CD81マウスモノクローナル抗体(17B1)(富士フイルム和光純薬(株)製)を固相に固定化し、また検出抗体として用いた以外は、実施例1と同様の方法により、抗CD81抗体-抗CD81抗体のサンドイッチELISA法によりエクソソームを測定し、パーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)と健常者の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
抗CD81抗体を固相に固定したプレートは、比較例1と同様の方法により調製した。
検出抗体の抗CD81抗体は、実施例1と同様の方法によりビオチン標識したものを用いた。
得られた結果を下記表1に示す。
【0146】
実施例4.CD9を有するエクソソームの量に対するPS及びCD9を有するエクソソームの量の割合を指標とするパーキンソン病検体(MMSEが27より大きい)の評価
実施例1(Timタンパク質-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法)で得られた「検体測定値」(値(A))を、比較例1(抗CD9抗体-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法)で得られた「検体測定値」(値(B))で除することにより、(A)/(B)(以下、「補正後検体測定値」とする)を得た。
得られた補正後検体測定値に基づいて、実施例1(4)と同様の方法により、パーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)と健常者の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
得られた結果を下記表1に示す。また、補正後検体測定値を基に作成した箱ひげグラフを
図2に示す。図中、縦軸は補正後検体測定値((A)/(B))、横軸のControlは健常者の結果、PDはパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)の結果をそれぞれ示す。
【0147】
実施例5.CD63を有するエクソソームの量に対するPS及びCD63を有するエクソソームの量の割合を指標とするパーキンソン病検体(MMSEが27より大きい)の評価
実施例2(Timタンパク質-抗CD63抗体のサンドイッチELISA法)で得られた「検体測定値」(値(A))を、比較例2(抗CD63抗体-抗CD63抗体のサンドイッチELISA法)で得られた「検体測定値」(値(B))で除することにより、(A)/(B)(補正後検体測定値)を得た。
得られた補正後検体測定値に基づいて、実施例1(4)と同様の方法により、パーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)と健常者の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
得られた結果を下記表1に示す。
【0148】
【0149】
表1より、認知症状のないパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)と健常者由来の血漿をそれぞれ試料とし、CD9、CD63、又はCD81のテトラスパニンを有するエクソソームの量を指標としてパーキンソン病を評価した場合、AUCはそれぞれ0.855、0.848、0.642であった。
他方、認知症状のないパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)と健常者由来の血漿をそれぞれ試料とし、CD9、CD63、又はCD81のテトラスパニン及びTimタンパク質が結合するホスファチジルセリンを有するエクソソームの量を指標としてパーキンソン病を評価した場合、AUCはそれぞれ0.929、0.899、0.916であり、いずれも高い正確度でパーキンソン病症(特に認知症状のないパーキンソン病)を検出できることが判った。
また、ホスファチジルセリン及びCD63を有するエクソソームの検体測定値(値(A))を、CD63を有するエクソソームの検体測定値(値(B))で除することにより得られた補正後検体測定値((A)/(B))を指標としてパーキンソン病を評価した場合、AUCは0.892であり、高い正確度でパーキンソン病(特に認知症状のないパーキンソン病)を検出できることが判った。また、ホスファチジルセリン及びCD9を有するエクソソームの検体測定値(値(A))を、CD9を有するエクソソームの検体測定値(値(B))で除することにより得られた補正後検体測定値((A)/(B))を指標としてパーキンソン病を評価した場合、AUCは0.973であり、極めて高い正確度でパーキンソン病(特に認知症状のないパーキンソン病)を検出できることが判った。
【0150】
実施例6.CD9を有するエクソソームの量に対するPS及びCD9を有するエクソソームの量の割合を指標とするパーキンソン病検体(MMSEが27以下)の評価
「PrecisionMed社より購入したパーキンソン病患者(MMSEが27以下)8検体、健常者30検体のEDTA血漿」を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、Timタンいパク質-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法にてエクソソームの測定を行い、「検体測定値」(値(A))を得た。
また、「PrecisionMed社より購入したパーキンソン病患者(MMSEが27以下)8検体、健常者30検体のEDTA血漿」を用いた以外は、比較例1と同様の方法により、抗CD9抗体-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法にてエクソソームの測定を行い、「検体測定値」(値(B))を得た。
「検体測定値」(値(A))を「検体測定値」(値(B))で除することにより、(A)/(B)(以下、「補正後検体測定値」とする)を得た。得られた補正後検体測定値に基づいて、実施例1(4)と同様の方法により、パーキンソン病患者(MMSEが27以下)と健常者の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
得られた結果を下記表2に示す。また、補正後検体測定値を基に作成した箱ひげグラフを
図3に示す。図中、縦軸は検体測定値、横軸のControlは健常者の結果、PD(MMSEが27以下)はパーキンソン病患者(MMSEが27以下)、PD(MMSEが27より大きい)はパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)の結果をそれぞれ示す。
【0151】
【0152】
実施例7.PS及びCD9を有するエクソソームの量を指標とするパーキンソン病検体(MMSEが27より大きい)の評価
「PrecisionMed社より購入したパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)8検体、健常者30検体のEDTA血漿」を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、Timタンパク質-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法にてエクソソームの測定を行い、パーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)と健常者の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
得られた結果を下記表3に示す。
【0153】
比較例4.CD9を有するエクソソームの量を指標とするパーキンソン病検体(MMSEが27より大きい)の評価
「PrecisionMed社より購入したパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)8検体、健常者30検体のEDTA血漿」を用いた以外は、比較例1と同様の方法により、抗CD9抗体-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法にてエクソソームの測定を行い、パーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)と健常者の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
得られた結果を下記表3に示す。
【0154】
実施例8.CD9を有するエクソソームの量に対するPS及びCD9を有するエクソソームの量の割合を指標とするパーキンソン病検体(MMSEが27より大きい)の評価
実施例7(Timタンパク質-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法)で得られた「検体測定値」(値(A))を、比較例4(抗CD9抗体-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法)で得られた「検体測定値」(値(B))で除することにより、(A)/(B)(以下、「補正後検体測定値」とする)を得た。
得られた補正後検体測定値に基づいて、実施例1(4)と同様の方法により、パーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)と健常者の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
得られた結果を下記表3に示す。また、補正後検体測定値を基に作成した箱ひげグラフを
図3に示す。
【0155】
【0156】
実施例9.CD9を有するエクソソームの量に対するPS及びCD9を有するエクソソームの量の割合を指標とするパーキンソン病検体(MMSEが27以下)とパーキンソン病検体(MMSEが27より大きい)の評価
「PrecisionMed社より購入したパーキンソン病患者(MMSEが27以下)8検体と、PrecisionMed社より購入したパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)8検体」を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、Timタンパク質-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法にてエクソソームの測定を行い、「検体測定値」(値(A))を得た。
また、「PrecisionMed社より購入したパーキンソン病患者(MMSEが27以下)8検体、PrecisionMed社より購入したパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)8検体」を用いた以外は、比較例1と同様の方法により、抗CD9抗体-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法にてエクソソームの測定を行い、「検体測定値」(値(B))を得た。
「検体測定値」(値(A))を「検体測定値」(値(B))で除することにより、(A)/(B)(以下、「補正後検体測定値」とする)を得た。得られた補正後検体測定値に基づいて、実施例1(4)と同様の方法により、パーキンソン病患者(MMSEが27以下)とパーキンソン病検体(MMSEが27より大きい)の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
得られた結果を下記表4に示す。また、補正後検体測定値を基に作成した箱ひげグラフを
図3に示す。
【0157】
【0158】
実施例10.PS及びCD9を有するエクソソームの量を指標とするパーキンソン病検体の評価
「PrecisionMed社より購入したパーキンソン病患者16検体(MMSEが27以下8検体とMMSEが27より大きい8検体)、健常者30検体のEDTA血漿」を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、Timタンパク質-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法にてエクソソームの測定を行い、パーキンソン病患者と健常者の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
得られた結果を下記表5に示す。また、検体測定値を基に作成した箱ひげグラフを
図4に示す。図中、縦軸は検体測定値、横軸のControlは健常者の結果、PDはパーキンソン病患者の結果をそれぞれ示す。
【0159】
比較例7.CD9を有するエクソソームの量を指標とするパーキンソン病検体の評価
「PrecisionMed社より購入したパーキンソン病患者16検体(MMSEが27以下8検体とMMSEが27より大きい8検体)、健常者30検体のEDTA血漿」を用いた以外は、比較例1と同様の方法により、抗CD9抗体-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法にてエクソソームの測定を行い、パーキンソン病患者と健常者の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
得られた結果を下記表5に示す。
【0160】
実施例11.CD9を有するエクソソームの量に対するPS及びCD9を有するエクソソームの量の割合を指標とするパーキンソン病検体の評価
実施例10(Timタンパク質-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法)で得られた「検体測定値」(値(A))を、比較例7(抗CD9抗体-抗CD9抗体のサンドイッチELISA法)で得られた「検体測定値」(値(B))で除することにより、(A)/(B)(以下、「補正後検体測定値」とする)を得た。
得られた補正後検体測定値に基づいて、実施例1(4)と同様の方法により、パーキンソン病患者と健常者の有意差検定を行い、AUC及びp値を算出した。
得られた結果を下記表5に示す。また、検体測定値を基に作成した箱ひげグラフを
図5に示す。図中、縦軸は補正後検体測定値、横軸のControlは健常者の結果、PDはパーキンソン病患者の結果をそれぞれ示す。
【0161】
【0162】
表2より、認知症状のあるパーキンソン病患者(MMSEが27以下)と健常者由来の血漿をそれぞれ試料とし、ホスファチジルセリン及びCD9を有するエクソソームの検体測定値(値(A))を、CD9を有するエクソソームの検体測定値(値(B))で除することにより得られた補正後検体測定値((A)/(B))を評価した場合、AUCは0.804であり、高い正確度でパーキンソン病(特に、認知症状のあるパーキンソン病)を検出できることが判った。
表3より、認知症状のないパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)と健常者由来の血漿をそれぞれ試料とし、ホスファチジルセリン及びCD9を有するエクソソームの検体測定値(値(A))を、CD9を有するエクソソームの検体測定値(値(B))で除することにより得られた補正後検体測定値((A)/(B))を評価した場合、AUCは0.950であり、極めて高い正確度でパーキンソン病(特に、認知症状のないパーキンソン病)を検出できることが判った。
表4より、認知症状のあるパーキンソン病患者(MMSEが27以下)と認知症状のないパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)の血漿をそれぞれ試料とし、ホスファチジルセリン及びCD9を有するエクソソームの検体測定値(値(A))を、CD9を有するエクソソームの検体測定値(値(B))で除することにより得られた補正後検体測定値((A)/(B))を評価した場合、AUCは0.844であり、高い正確度で認知症状のあるパーキンソン病患者(MMSEが27以下)と認知症状のないパーキンソン病患者(MMSEが27より大きい)を区別して検出できることが判った。また、補正後検体測定値((A)/(B))とMMSEの相関係数は、0.7833であり、高い相関関係がみられた。
表5より、パーキンソン病患者(認知症状のあるパーキンソン病患者と認知症状のないパーキンソン病患者を含む)と健常者由来の血漿をそれぞれ試料とし、CD9を有するエクソソームの量を指標としてパーキンソン病を評価した場合、AUCは0.764、ホスファチジルセリン及びCD9を有するエクソソームの検体測定値(値(A))を、CD9を有するエクソソームの検体測定値(値(B))で除することにより得られた補正後検体測定値((A)/(B))を評価した場合、AUCは0.877であり、高い正確度でパーキンソン病を検出できることが判った。