(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】工具システム及び工具システム用プログラム
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20230913BHJP
G01D 7/02 20060101ALI20230913BHJP
B25B 23/14 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B25F5/00 C
G01D7/02
B25B23/14 620J
(21)【出願番号】P 2018184183
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-08-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・平成30年6月19日にhttps://youtu.be/k7GTGDyp7oQにて公開。 ・平成30年6月22日に京都機械工具株式会社第68回定時株主総会(開催場所:京都府久世郡久御山町佐山新開地128番地)にて公開。 ・平成30年9月19日に平成30年度KTC代理店実務者会議(開催場所:京都府久世郡久御山町佐山新開地128番地)にて公開。 ・平成30年6月20日~平成30年6月22日に設計・製造ソリューション展にて展示。 ・平成30年7月20日、平成30年7月24日、平成30年7月26日、平成30年8月2日、平成30年9月10日に京都府久世郡久御山町佐山新開地128番地にて取材を受けて公開。 ・平成30年4月23日に大阪市西区立売堀3-8-14にて、平成30年5月22日・平成30年6月18日・平成30年7月18日・平成30年7月27日・平成30年8月9日・平成30年8月27日・平成30年9月13日に京都府久世郡久御山町佐山新開地128番地にて、平成30年9月19日に159 Sin Ming Rd,Singaporeにて、平成30年9月20日に東京都港区新橋四丁目28番1号トラスコフィオリートビル トラスコ中山株式会社東京本社・Jl.Puri Kencana no. 1 Kembangan Selatan Jakarta Barat,Indonesia・Jl. Raya Bekasi Km 21-22 Pulo Gadung, Indonesiaにて商談による公開。
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広
(72)【発明者】
【氏名】芳本 悠未
(72)【発明者】
【氏名】松本 喜晴
(72)【発明者】
【氏名】藤村 明
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3207174(JP,U)
【文献】特開2012-168043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00 ー 5/02
G01D 7/02
B25B 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測定工具と、当該複数の測定工具とは別に設けられ、前記複数の測定工具と有線又は無線により接続された表示機器とを備え、
前記複数の測定工具が、
測定値を示す測定データを送信するデータ送信部を有し、
前記表示機器が、
前記データ送信部から送信された測定データを受信するデータ受信部と、
前記データ受信部が受信した測定データが示す測定値をリアルタイムで表示する表示制御部とを有し、
前記表示制御部が、前記複数の測定工具であって前記表示機器と通信接続されている測定工具との通信接続状態、及び、前記表示機器と過去に通信接続されたことがある測定工具であって現在通信接続されていない測定工具との通信接続状態とともに、当該通信接続されている測定工具の測定値を一覧表示
し、
前記表示制御部が、前記通信接続されている測定工具の通信接続状態とともにその測定工具の測定値が一覧表示された領域内に表示する通信接続されている測定工具の測定値の表示色、識別情報の表示色、又は、測定値及び識別情報の背景色の少なくとも一つを当該測定工具の種別に応じて変化させて表示することを特徴とする工具システム。
【請求項2】
複数の測定工具と、当該複数の測定工具とは別に設けられ、前記複数の測定工具と有線又は無線により接続された表示機器とを備え、
前記複数の測定工具が、
測定値を示す測定データを送信するデータ送信部を有し、
前記表示機器が、
前記データ送信部から送信された測定データを受信するデータ受信部と、
前記データ受信部が受信した測定データが示す測定値をリアルタイムで表示する表示制御部とを有し、
前記表示制御部が、前記複数の測定工具であって前記表示機器と通信接続されている測定工具との通信接続状態、及び、前記表示機器と過去に通信接続されたことがある測定工具であって現在通信接続されていない測定工具との通信接続状態とともに、当該通信接続されている測定工具の測定値を一覧表示し、前記通信接続されている測定工具に設定された識別情報をさらに表示
し、
前記表示制御部が、前記通信接続されている測定工具の通信接続状態とともにその測定工具の測定値が一覧表示された領域内に表示する通信接続されている測定工具の測定値の表示色、識別情報の表示色、又は、測定値及び識別情報の背景色の少なくとも一つを当該測定工具の種別に応じて変化させて表示することを特徴とする工具システム。
【請求項3】
複数の測定工具と、当該複数の測定工具とは別に設けられ、前記複数の測定工具と有線又は無線により接続された表示機器とを備え、
前記複数の測定工具が、
測定値を示す測定データを送信するデータ送信部を有し、
前記表示機器が、
前記データ送信部から送信された測定データを受信するデータ受信部と、
前記データ受信部が受信した測定データが示す測定値をリアルタイムで表示する表示制御部とを有し、
前記表示制御部が、前記複数の測定工具であって前記表示機器と通信接続されている測定工具の通信接続状態とともにその測定工具の測定値を一覧表示し、その一覧表示された領域とは別領域に対し、前記表示機器と過去に通信接続されたことがある測定工具であって現在通信接続されていない測定工具の通信接続状態とともにその測定工具の識別情報を表示することを特徴とする工具システム。
【請求項4】
前記表示制御部が、前記通信接続されている測定工具の通信接続状態とともにその測定工具の測定値が一覧表示された領域内に表示する通信接続されている測定工具の測定値の表示色、識別情報の表示色、又は、測定値及び識別情報の背景色の少なくとも一つを当該測定工具の種別に応じて変化させて表示する請求
項3のいずれかに記載の工具システム。
【請求項5】
前記表示機器が、前記一覧表示された測定工具の中からユーザが選択した測定工具を示す選択信号を受け付ける選択信号受付部をさらに有し、
前記表示制御部が、前記選択信号受付部が受け付けた選択信号に基づいて、前記一覧表示から、選択された測定工具の測定値を個別表示する個別画面に切り替える請求項1乃至4のいずれかに記載の工具システム。
【請求項6】
複数の測定工具とは別に設けられ、前記複数の測定工具と有線又は無線により接続される表示機器に用いられるプログラムであって、
前記複数の測定工具から送信された測定値を示す測定データを受信するデータ受信部と、
前記測定データが示す測定値をリアルタイムで表示する表示制御部としての機能を前記表示機器に発揮させるものであり、
前記表示制御部が、前記複数の測定工具であって前記表示機器と通信接続されている測定工具との通信接続状態
とともにその測定工具の測定値を一覧表示し、その一覧表示された領域とは別領域に対し、前記表示機器と過去に通信接続されたことがある測定工具であって現在通信接続されていない測定工具との通信接続状態とともに
その測定工具の識別情報を一覧表示することを特徴とする工具システム用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具システム及びこれに用いられる工具システム用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トルクレンチ等の締付工具としては、締付トルクを測定する測定器と、この測定器により測定された締付トルクが表示されるディスプレイとを備えたものがある。このような締付工具を用いれば、作業者は締付トルクを確認しながら作業を進めることができる。
【0003】
一方、引用文献1には、表示機器を締付工具とは別体にして、これらを配線接続することで、締付トルクが表示機器に表示される構成が記載されている。このような構成であれば、締付工具そのものを小型で軽量なものにすることができ、例えば狭小な作業空間でも使い勝手が良い。
【0004】
ところで、近年、締付工具以外にもデプスゲージやノギス等の測定工具において、作業時に測定値を示す測定データを取得するものが多数開発されており、これら複数の測定工具を表示機器に接続して一元管理することが求められると予想される。一方、前記したような表示機器は、配線接続された測定工具の測定値のみを表示する構成になっているため、複数の測定工具を接続して一元管理することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、複数の測定工具が接続された表示機器によって、複数の測定工具を一元管理し易い工具システムを得ることを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本願発明に係る工具システムは、複数の測定工具と、当該複数の測定工具とは別に設けられ、前記複数の測定工具と有線又は無線により接続された表示機器とを備え、前記複数の測定工具が、測定値を示す測定データを送信するデータ送信部を有し、前記表示機器が、前記データ送信部から送信された測定データを受信するデータ受信部と、前記データ受信部が受信した測定データが示す測定値をリアルタイムで表示する表示制御部とを有し、前記表示制御部が、前記複数の測定工具との通信接続状態と共に、当該通信接続されている測定工具の測定値を一覧表示することを特徴とするものである。
【0008】
このようなものであれば、表示機器に対し、複数の測定工具との通信接続状態と共に、当該通信接続されている測定工具の測定値が一覧表示されるため、当該一覧表示を参照することにより、表示機器に接続されている各測定工具を瞬時に把握することができる。また、一覧表示される測定値は、通信接続されている測定工具から受信した測定データを示す測定値がリアルタイムで表示されるため、当該一覧表示を参照することにより、表示機器に接続されている各測定工具の使用状態も瞬時に把握できる。このため、管理者が、一覧表示を参照することにより、各測定工具の使用状態が把握でき、これに伴って各測定工具を使用する作業者の作業状況も把握できるようになる。
【0009】
また、具体的には、前記表示制御部が、前記通信接続されている測定工具に設定された識別情報をさらに表示するものであってもよい。このようなものであれば、表示機器に接続されている各測定工具を明確に区別することができる。
【0010】
また、前記一覧表示領域と別領域に対し、前記表示機器と過去に通信接続されたことがある測定工具であって現在通信接続されていない測定工具の少なくとも識別情報を表示するものであってもよい。
【0011】
このようなものであれば、過去に通信接続されたことがある測定工具の識別情報が、通信接続されていなくても画面上に表示されるため、当該測定工具の接続し忘れを防止することができる。
【0012】
また、前記表示制御部が、前記一覧表示領域内に表示する通信接続されている測定工具の測定値の表示色、識別情報の表示色、又は、測定値及び識別情報の背景色の少なくとも一つを当該測定工具の種別に応じて変化させて表示するものであってもよい。
【0013】
このようなものであれば、測定工具の種別に応じた色から直感的にどのような種別の測定工具10が通信接続されているか把握できるようになる。
【0014】
また、前記表示機器が、前記一覧表示された測定工具の中からユーザが選択した測定工具を示す選択信号を受け付ける選択信号受付部をさらに有し、前記表示制御部が、前記選択信号受付部が受け付けた選択信号に基づいて、前記一覧表示から、選択された測定工具の測定値を個別表示する個別画面に切り替えるものであってもよい。
【0015】
このようなものであれば、個別画面に対し、測定工具の測定値を含む詳細情報を表示することにより、一覧表示された測定工具の中から選択した測定工具の詳細を容易に確認することができるようになる。
【0016】
また、本発明に係る工具システム用プログラムは、複数の測定工具とは別に設けられ、前記複数の測定工具と有線又は無線により接続される表示機器に用いられるプログラムであって、前記複数の測定工具から送信された測定値を示す測定データを受信するデータ受信部と、前記測定データが示す測定値をリアルタイムで表示する表示制御部としての機能を前記表示機器に発揮させるものであり、前記表示制御部が、前記複数の測定工具との通信接続状態と共に、当該通信接続されている測定工具の測定値を一覧表示することを特徴とするものである。
【0017】
このように構成された工具システム用プログラムを既存の工具システムにインストールすることによって、上述した工具システムと同様の作用効果を奏し得る。なお、工具システム用プログラムは電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、フラッシュメモリ等のプログラム記録媒体に記録されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
このように構成した本発明によれば、複数の測定工具が接続された表示機器によって、複数の測定工具を一元管理し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態における工具システムの構成を示す模式図。
【
図2】同実施形態の表示機器の機能を説明するための機能ブロック図。
【
図3】同実施形態の管理画面の表示態様の一例を説明するための図。
【
図4】同実施形態の個別画面の表示態様の一例を説明するための図。
【
図5】同実施形態のスクロール表示の具体例を説明するための図である。
【
図6】同実施形態のスクロール表示の具体例を説明するための図である。
【
図7】同実施形態の個別画面の表示態様の一例を説明するための図。
【
図8】同実施形態の個別画面の表示態様の一例を説明するための図。
【
図9】同実施形態の個別画面の表示態様の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係る工具システムの一実施形態について説明する。
【0021】
本実施形態の工具システム100は、自動車、鉄道車両、航空機やその他の種々の装置の組み立て、解体、点検等の作業現場において用いられるものであり、
図1に示すように、複数の測定工具10と、複数の測定工具10に有線又は無線により接続される表示機器20と、を備えている。
【0022】
なお、本実施形態においては、測定工具10として、締付工具であるトルクレンチ10aと、長さ測定工具であるノギス10b及びデプスゲージ10cと、を使用している。なお、締付工具としては、トルクレンチ10a以外にもドライバーやスパナ等の種々のものを使用してもよく、また、長さ測定工具としては、ノギス10bやデプスゲージ10c以外の種々のものを使用してもよい。また、測定工具10として、タイヤインフレータ等を使用してもよい。
【0023】
測定工具10は、測定機構11と、表示機器20と通信する通信手段12と、を備えたものであり、この通信手段12が測定機構11により測定された測定値を示す測定データを送信するデータ送信部13としての機能を有している。なお、測定機構11は、トルクレンチ10aであればネジ等の締付トルクを測定する機構であり、長さ測定工具10bであれば対象物の長さを測定する機構である。
【0024】
表示機器20は、CPU、メモリ、ディスプレイ(画面)D、入力手段などを有するものであり、ここでは測定工具10と無線により通信可能な例えばスマートフォンやタブレット端末等といった、作業者が携帯可能なタッチパネルディスプレイを有するモバイル端末である。そして、この表示機器20は、前記メモリに格納された工具システム用プログラムに基づいて、
図2に示すように、データ受信部21、表示制御部22、選択信号受付部23等としての機能を発揮するように構成されている。
【0025】
以下、各部の説明を兼ねて、表示機器20の動作を説明する。
【0026】
データ受信部21は、上述したデータ送信部13から送信された測定データを受信して、表示制御部22に出力する。
【0027】
表示制御部22は、
図3に示すように、ディスプレイDの表示内容を制御するものであり、複数の測定工具10との通信接続状態と共に、通信接続されている測定工具10に関する測定値及び識別情報を一覧表示する。また、表示制御部22は、識別情報の隣に測定値をその単位と共に表示する。本実施形態では、表示制御部22は、トルクレンチ10aの識別情報(
図3中、「AAAA」)の隣に測定値をその単位(
図3中、「N・m」)と共に表示すると共に、ノギス10bの識別情報(
図3中、「BBBB」)の隣に測定値をその単位(
図3中、「mm」)と共に表示する。この一覧表示された画面が、表示機器20に通信接続された複数の測定工具を一元管理するための管理画面となる。
【0028】
ここで、識別情報とは、例えば、測定工具10毎に設定されているMACアドレス、測定工具毎に予め設定された任意の名称(例えば、機種名等)等である。
【0029】
また、表示制御部22は、管理画面において、通信接続されている測定工具10から受信した測定データが示す測定値をリアルタイムで表示する。すなわち、通信接続されている測定工具10によって測定される測定値が変化すると、これに伴って一覧表示に表示された当該通信接続されている測定工具10の測定値も変化する。
【0030】
表示制御部22による管理画面の表示態様を具体的に説明すると、ディスプレイDに設定された一覧表示領域S1内に、通信接続されている複数の測定工具10に関する測定値及び識別情報を表形式で一覧表示する。
【0031】
本実施形態では、測定工具が通信接続されると、表示制御部22は、一覧表示領域S1内に通信接続された測定工具に対応する接続表示領域S2を表示すると共に、その接続表示領域S2内に、対応する測定工具の測定値及び識別情報を表示する。なお、各接続表示領域S2は、それぞれ異なる色になっており、この色は、対応する測定工具10の種別によって定められている。すなわち、本実施形態では、接続表示領域S2の色を変化させることにより、測定値及び接続情報の背景色を測定工具10の種別毎に変化させている。これにより、接続表示領域S2の色から直感的にどのような種別の測定工具10が通信接続されているか把握できるようになる。なお、測定値や識別情報の表示色を測定工具10の種別に応じて変化させても同様の作用効果が得られる。
【0032】
また、表示制御部22は、ディスプレイDの一覧表示領域S1とは別に設定された非接続表示領域S3内に、表示機器20に対して過去に通信接続された測定工具10であって、現在通信接続されていない測定工具10の少なくとも識別情報を表示する。本実施形態では、表示制御部22は、一覧表示領域S1の下側に設定された非接続表示領域S3に現在接続されていないデプスゲージ10cの識別情報(
図3中、「CCCC」)を表示させる。
【0033】
このように構成された工具システムによれば、表示機器20を測定工具10とは別体にしてあるので、測定工具10の小型化や軽量化を図ることができる。また、表示機器20に対し、複数の測定工具10との通信接続状態と共に、当該通信接続されている測定工具10の測定値が一覧表示されるため、当該一覧表示を参照することにより、表示機器20に接続されている各測定工具10を瞬時に把握することができる。また、一覧表示される測定値は、通信接続されている測定工具10から受信した測定データを示す測定値がリアルタイムで表示されるため、当該一覧表示を参照することにより、表示機器20に接続されている各測定工具10の使用状態も瞬時に把握できる。
【0034】
選択信号受付部23は、一覧表示領域S1内に表示された通信接続されている測定工具10の中からユーザ(例えば、作業者や管理者等)が選択した測定工具10を示す選択信号を受け付けるものである。本実施形態では、選択信号受付部23は、ユーザが選択した測定工具10に対応する接続表示領域S2におけるタッチパネルへの入力(例えば、指先で画面に触れるタップ操作)によって生成される選択信号を受け付ける構成になっている。
【0035】
なお、表示制御部22は、選択信号受付部23で受け付けた選択信号に基づいて、一覧表示から選択された測定工具10を個別表示する個別画面に切り替える。すなわち、表示制御部22は、選択信号受付部23で受け付けた選択信号に基づいて、管理画面から選択された測定工具10に関する個別画面に切り替える。
【0036】
そして、表示制御部22は、個別画面に対し、選択された測定工具10の測定値及び識別情報を少なくとも表示する。また、表示制御部22は、個別画面に対し、測定値及び識別情報以外にも選択された測定工具10の種別によって定められた情報を必要に応じて表示する。
【0037】
なお、以下において、トルクレンチ10aの個別画面(
図4~7参照)を例示して、当該個別画面の表示態様を具体的に説明する。
【0038】
表示制御部22は、
図4に示すように、ディスプレイDに予め設定された測定値表示領域S4に締付トルク(測定値)をデジタル表示する。なお、本実施形態では、ディスプレイDの中央部に設定された測定値表示領域S4に締付トルク及びその単位が表示される。
【0039】
また、表示制御部22は、ディスプレイDに予め設定された識別情報表示領域S5に選択されたトルクレンチ10a(測定工具10)の識別情報を表示する。本実施形態では、ディスプレイDにおける測定値表示領域S4の上側に設定された識別情報表示領域S5に選択されたトルクレンチ10aの名称(
図4中、「AAAA」)が表示される。
【0040】
また、表示制御部22は、表示機器20に設けられた設定データ受付部24が受け付けた設定データの示す設定トルクを、ディスプレイDに予め設定された設定トルク表示領域S6に表示する。本実施形態では、設定トルクが締付トルクよりも小さい文字サイズで表示され、この設定トルクの近傍に設定トルクを変更するためのスライダ等の設定トルク変更部S7が表示される。具体的には、測定値表示領域S4の右側に設定トルク変更部S7及び設定トルク表示領域S6が設けられている。
【0041】
また、表示制御部22は、ディスプレイDに予め設定された詳細情報表示領域S8に詳細情報を表示する。なお、表示制御部22が、詳細情報表示領域S8に表示する詳細情報の内容は、表示機器20に設けられた切替信号受付部25が受け付けた切替信号に基づいて切り替えられるように構成されている。本実施形態では、切替信号受付部25が、ディスプレイDにおける測定表示領域S4の下側に設定された詳細情報表示領域S8におけるタッチパネルへの入力(例えば、指先で画面に触れてその指を移動させるスワイプ操作)によって生成される切替信号を受け付けるように構成されている。
【0042】
詳細情報表示領域S8に表示される詳細情報の第1例を
図4~
図6に基づき説明する。表示制御部22は、詳細情報表示領域S8に締付トルクをグラフ表示する。表示されるグラフGは、例えば縦軸がトルク軸であり、横軸が時間軸である。
【0043】
ここで、表示制御部22は、締付トルクのグラフGを時間軸に沿ってスクロール表示して、グラフの一部を拡大表示する。なお、
図4では、グラフが左側にスクロールされる例を示している。
【0044】
スクロール表示の態様としては、例えば以下の(1)、(2)等が考えられる。
【0045】
(1)
図5(a)に示すように、最新の締付トルクが時間軸の固定された所定の座標(
図5(a)では、t
1の座標)にプロットされるようにグラフGを左側にスクロールする。
【0046】
(2)
図5(b)に示すように、締付トルクを時間軸の第1座標(例えば最小値)から順次プロットしていき、締付トルクのプロットが時間軸の第2座標(例えば最大値)に到達した場合に、グラフGを左側にスクロールして、再び、締付トルクを時間軸の第1座標(例えば最小値)から順次プロットする。
【0047】
また、表示制御部22は、グラフGとともに設定トルクを認識可能に表示する。例えば、グラフGとともにグラフ表示領域S4に設定トルクを示すラインLを表示する。これにより、作業中の締付トルクと設定トルクとを視覚的に認識可能となり、作業性を向上させることができる。
【0048】
さらに、表示制御部22は、タッチパネルへの入力に基づいてグラフGをスクロール表示することができる。これにより、現在表示されている締付トルクの波形だけでなく、表示されていない過去の締付トルクの波形を遡って表示することができる。
【0049】
その他、表示制御部22は、
図6に示すように、グラフGに表示される締付トルクに基づいて、トルク軸の最大値又は最小値を変更するようにしても良い。つまり、トルク軸のレンジを変更するようにしても良い。これにより、表示される締付トルクに合わせてグラフGを拡大表示することができ、トルク変化を認識しやすくできる。
【0050】
このような詳細情報を個別画面に表示することにより、トルクレンチ10aとは別体の表示機器20に、締付トルクのグラフGを時間軸に沿ってスクロール表示するので、グラフGの波形を従来に比べて拡大して表示することができ、締付トルクの変化を認識しやすくすることができる。
【0051】
また、詳細情報表示領域S8に表示される詳細情報の第2例を
図7に基づき説明する。表示制御部22は、複数の測定時点における測定値を表形式で一覧表示する。本実施形態では、詳細情報表示領域S8内にはそれぞれ異なる3つまでの測定時点での締付トルクが表示される。
【0052】
ここで、表示制御部22は、測定時点を示すものであり、トルクレンチ10aによる締付が何回目であるかを示すLAP数と、そのLAP数における測定値である締付トルクを対にして各測定時点での測定値を一覧表示する。また、トルクレンチ10aにより作業が進められて、データ送信部10から送信された新たな測定データがデータ受信部21で受信されると、表示制御部22は最新の締付トルクが表示されるように一覧表示を更新する。例えば
図7に示すように、LAP1~3までが一覧表示されている状態で、新たな締付作業が行われるとLAP2~4の各締付トルクが詳細情報表示領域S8内に表示される。さらに締付作業が行われると
図7に示すようにLAP3~5の各締付トルクが詳細情報表示領域S8内に表示される。この実施形態では表示制御部22は最新のLAPの測定値を詳細情報表示領域S8内において最も上側に表示するように構成されている。
【0053】
なお、詳細情報表示領域S8内において各LAPに対応させて表示される締付トルクはトルクレンチ10aにより、締付けが開始されてから終了するまでの間での最大の締付トルクが表示される。例えばデータ受信部21において受信された締付トルクの時系列データにおいて、締付トルクがLAP開始閾値を超え、その後LAP終了閾値を下回るまでの区間が1つの測定区間として設定され、この測定区間中で最も大きい締付トルクがそのLAPにおける測定値として詳細情報表示領域S8内に表示される。
【0054】
また、表示制御部22はタッチパネルを介して詳細情報表示領域S8上に例えば上下方向の入力が有り、4つ以上のLAPの測定が完了している状態ではスクロール表示によって詳細情報表示領域S8に表示されていないLAPの締付トルクを順番に表示する。
【0055】
このように表示制御部22は、初期設定では詳細情報表示領域S8内に所定時点以降から最新までの所定数の測定値を表示し、所定時間よりも前の測定値については前記詳細情報表示領域S8内に表示しないように構成されている。すなわち、最新の測定値と所定回前までの測定値のみがデフォルトでは表示されるので、測定時点が多数となっても表示画面D内の一覧表示の大きさを一定に保ち、作業者が視認しやすい状態を保つことができる。
【0056】
このような詳細情報を個別画面に表示することにより、詳細情報表示領域S8内に何回目の測定であるかを示すLAP数とともに、その締付トルクが表示されるので、作業者は詳細情報表示領域S8を見るだけで、予め定められている作業工程においてどの程度まで進んでいるかをすぐに確認することができる。
【0057】
例えば、作業工程が5回の締付け作業が定義されている場合であれば、LAP5が表示されていればこの締付作業が一巡の作業が完了したことがわかる。また、LAP4までしか表示されていなければ、どこかの締付箇所が抜けている可能性があることがわかり、すぐに作業した内容を確認して不良を発見することができる。
【0058】
さらに、一覧表示はLAP数とともに対応する締付トルクが表示されているので、例えば現在行っているはずの締付作業で必要とされる設定トルクに対して大きく異なる締付トルクが表示されている場合には、締付箇所を間違っている可能性に作業者は気づくことが可能となる。
【0059】
また、
図8に示すように、詳細情報表示領域S8に詳細情報を表示しなくてもよい。
【0060】
さらに、表示制御部22は、
図8に示すように、個別画面において、ディスプレイDに設定された測定値表示領域S4に表示された締付トルクとは別領域S9の表示態様を、締付トルクに応じて、締付途中の作業者に知覚可能に変化させるように構成してもよい。なお、ここでいう知覚可能な変化とは、少なくとも視覚を通じて認識することのできる変化であり、表示機器20が作業者の周辺に設けられている場合において、締付途中の作業者がディスプレイDに視線を移すことなく、その変化を感じ取ることができる程度の変化である。
【0061】
上述した別領域S9は、ディスプレイDの表示領域全体における少なくとも半分以上であることが好ましく、ここではディスプレイDの背景を別領域S9として設定してあり、その表示態様としては例えば色、模様、明るさ等が挙げられる。
【0062】
表示制御部22は、ここではディスプレイDの背景色を締付トルクに応じて変更するように構成されており、具体的には背景色を締付トルクに応じて互いに異なる複数色に段階的に切り替える。
【0063】
各表示態様である背景色は、それぞれに対して予め設定された数値範囲内に締付トルクが含まれていることを示しており、言い換えれば、各表示態様は互いに異なる作業状況を示している。なお、各背景色は、2色覚者が識別可能な色であることが好ましい。
【0064】
表示態様の一例としては、例えば締付トルクが0である場合の第1の表示態様として黒色の背景色など、締付トルクが0より大きく所定の第1トルク以下である場合の第2の表示態様として灰色の背景色など、締付トルクが第1トルクよりは大きく所定の第2トルク以下である場合の第3の表示態様として黄色の背景色など、締付トルクが第2トルクより大きく設定トルク以下である場合の第4の表示態様として緑色の背景色などが挙げられる。上記の場合、第1の背景色~第4の表示態様は、それぞれ未作業状態、低トルク状態、中トルク状態、作業完了状態を示している。なお、切り替わる色の種類や数はこれに限らず、適宜変更して構わない。
【0065】
本実施形態の表示制御部22は、作業完了状態を示す第4の表示態様において、作業完了状態であることを示す完了記号Xを表示するように構成されている。
【0066】
また、表示制御部22は、締付トルクが設定トルクより大きい場合に、作業不合格状態を示す第5の表示態様に切り替えるように構成されている。なお、第5の表示態様としては、
図9に示すように、上記と同様に背景色を変更させる態様や、表示された締付トルクの文字色を反転させる態様や、作業不合格状態を示す警告記号Yを表示する態様や、それらを組み合わせた態様など、種々の態様が挙げられる。
【0067】
このような表示態様によれば、ディスプレイDの背景色を、締付トルクに応じて変化させるので、作業者は視線を表示機器20に移すことなく、表示態様の変化を感じ取ることができる。これにより、作業者は、表示態様の変化を感じ取ることで、締付トルクが徐々に増していることや、締付トルクが設定トルクに到達したこと等を締付途中に視線を手元から移すことなく知ることができ、作業性の低下を招くことなく、トルクレンチ10aの小型化や軽量化を図れる。
【0068】
また、背景表示全体の背景色を締付トルクに応じて段階的に変更させるので、作業者にとってその変化をより感じ取りやすいものとすることができる。
【0069】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0070】
例えば、表示機器20が、一覧表示された測定工具10の中からユーザが表示機器20に対する通信接続を解除する測定工具10を示す接続解除信号を受け付ける接続解除信号受付部をさらに有し、表示制御部22が、接続解除信号受付部が受け付けた接続解除信号に基づいて、一覧表示から、当該測定工具に関する表示(接続表示領域、測定値、識別情報)を消去するように構成してもよい。この場合、接続解除信号受付部が、一覧表示領域S1内に表示された通信接続を解除したい測定工具10に係る接続表示領域S2におけるタッチパネルへの入力(例えば、指先で画面に触れてその指を移動させるスワイプ操作)によって生成される接続解除信号を受け付けるように構成すればよい。
【0071】
さらに、表示機器20としてはポータブル端末に限らず、例えば作業者が装着可能なゴーグル型のものであっても良い。この場合、作業者はディスプレイDを介して手元を見るので、表示態様の変化をより感じ取り易くなる。加えて、表示機器20としては、プロジェクタを用いて構成されていても良く、この場合は例えば壁面やスクリーンなどが締付トルクを表示する画面である。
【0072】
測定工具10としては、測定データを送信するのみならず、例えば表示機器20から設定データを受信するなど、表示機器20との間で種々のデータを送受信するものであっても良い。また、測定工具10としては、例えば測定値を表示するディスプレイが設けられたものであっても構わない。
【0073】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0074】
100・・・工具システム
10 ・・・測定工具
11 ・・・測定機構
12 ・・・通信手段
13 ・・・データ送信部
20 ・・・表示機器
21 ・・・データ受信部
22 ・・・表示制御部
23 ・・・選択信号受付部
D ・・・ディスプレイ
S1 ・・・一覧表示領域
S2 ・・・接続表示領域
S3 ・・・非接続表示領域(別領域)