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特許7348628アクチュエータ及びそれを備えたエアオペレートバルブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】アクチュエータ及びそれを備えたエアオペレートバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/122 20060101AFI20230913BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
F16K31/122
F15B15/14 375
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019140481
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021025529
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 修宏
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆博
(72)【発明者】
【氏名】茂木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】原田 章弘
(72)【発明者】
【氏名】木曽 秀則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀信
(72)【発明者】
【氏名】辻野 健吾
(72)【発明者】
【氏名】上林 正典
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-093913(JP,A)
【文献】特開2014-109314(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136427(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/122
F15B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の供給又は遮断によりステムを昇降させるアクチュエータであって、
前記ステムが昇降可能に支持されるハウジングと、
前記ハウジング内に区画され、前記作動流体が供給される圧力室と、
前記ハウジング内に前記ステムとともに昇降可能に収容されるピストンと、
前記ステムと前記ピストンとを連結する連結機構と
を備え、
前記連結機構は、
前記ステムの外周面に対向する内周面を有し、前記内周面に前記ステムに対する係合部を有する連結部材と、
前記連結部材を前記ピストンに固定する固定部材と、
前記ステムに形成され、前記係合部が係合される被係合部と
を含み、
前記被係合部は、前記ステムの外周面を拡径した鍔部であり、
前記係合部は、前記連結部材の内周面から前記ピストンに対向する前記連結部材の対向面に亘って環状に切り欠いて形成され、前記鍔部が嵌入される第1ザグリ部である、アクチュエータ。
【請求項2】
前記第1ザグリ部の深さは、前記鍔部の前記ステムの軸方向における厚み以下である、請求項に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ステムの径方向における前記鍔部と前記第1ザグリ部との互いの当接面は、前記ステムから拡径し、且つ前記ピストンに近づく方向に傾斜したテーパ面である、請求項又はに記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記連結機構は、
前記ステムの外周面を拡径した鍔部と、
前記鍔部を前記ピストンに固定する固定部材と
を含む、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記ピストンは、
前記ステムの昇降に伴い前記ハウジングのボディの内壁に摺動される摺動外周面と、
前記圧力室を前記内壁とともに区画し、前記作動流体の圧力を受ける第1受圧面と、
前記ステムに挿入される挿入面部、及び該挿入面部に連なるとともに前記第1受圧面に亘って切り欠いて形成され、環状の第1弾性部材が嵌入される第1嵌入部からなる内周面と
を有する、請求項1からの何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記ステムは、前記圧力室に開口する前記作動流体の流路を有し、
前記アクチュエータは、前記内壁に固定されるとともに、前記第1受圧面及び前記内壁とともに前記圧力室を区画する区画部材を有し、
前記区画部材は、
前記ステムの昇降に伴い前記ステムの外周面が第2弾性部材を介して摺動される摺動内周面と、
前記圧力室を前記内壁及び前記第1受圧面とともに区画し、前記作動流体の圧力を受ける第2受圧面と、
前記摺動内周面から前記第2受圧面に亘って切り欠いて形成され、前記第2弾性部材が嵌入される第2嵌入部と
を有する、請求項に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第1及び第2受圧面の少なくとも何れか一方は、前記ステムの降下に伴い前記第1受圧面が前記第2受圧面に接触したときに前記流路が連通される第2ザグリ部を有する、請求項に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記第1及び第2弾性部材は、前記ステムの降下に伴い前記第1受圧面が前記第2受圧面に接触したときに前記第2ザグリ部に露出する、請求項に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記圧力室と、前記圧力室に面する前記ピストンとを複数有する、請求項1からの何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記ステムは、昇降により弁体を開閉作動し、
前記ピストンの昇降に伴う前記弁体の開閉を前記ピストンまでの距離の変化に基づいて検出する開閉検出センサを有する、請求項1からの何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載のアクチュエータを備えるエアオペレートバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ及びそれを備えたエアオペレートバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作動流体の供給又は遮断によりステムを昇降させて弁体を開閉作動するアクチュエータを備えた流量制御バルブが開示されている。このバルブは、エアオペレートバルブであって、アクチュエータは、ステムが昇降可能に支持されるハウジングと、ハウジング内に区画され、作動流体が供給される圧力室と、ハウジング内にステムとともに昇降可能に収容されるピストンとを有している。
【0003】
ピストンは、ステムの昇降に伴いハウジングの内壁に摺動される摺動外周面と、圧力室をハウジングの内壁とともに区画し、作動流体の圧力を受ける受圧面と、ステムの外周面にOリング等の弾性部材を介して固定される内周面と、内周面に形成され、弾性部材が嵌入される環状の嵌入溝とを有して形成されている。
【0004】
そして、特許文献1では、弾性部材を介してピストンをステム(特許文献1のロッドに相当)に連結することにより、ステムに対してピストンが傾くことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-109314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ピストンをステムに緊密に連結する場合、バルブの組み立て時に、ステムにピストンを圧入固定することが考えられる。この場合、ピストンの内周面とステムの外周面との嵌め合いは、締まり嵌めに近い状態となるが、これらの面間に隙間は生じ得る。従って、圧力室のシール機能を確保するためには、弾性部材を介してピストンをステムに連結する必要がある。
【0007】
しかしながら、ピストンの内周面に形成された嵌入溝に、弾性部材を嵌入した状態でステムにピストンを圧入すると、弾性部材の表面がステムの外周面に接触して損傷したり、或いは、ステムとピストンとの間に弾性部材が挟まって巻き込まれたりし、ひいては弾性部材が断裂することがある。また、ピストンにステムを圧入した後には、弾性部材は嵌入溝に嵌入された状態でピストンの内周面に覆われるため、弾性部材の損傷、巻き込み、断裂を目視で確認することはできない。
【0008】
このため、外観上は問題がないバルブであっても、ピストンの圧入時における弾性部材の損傷、巻き込み、断裂によって、圧力室のシール機能が低下していまい、圧縮室からの作動流体の漏れ、ひいてはバルブの作動不良を招くおそれがあった。従って、ピストンをステムに圧入以外の手法で連結することにより、ステムに対するピストンの傾きを防止する調芯機能と、圧力室のシール機能との双方を実現することが求められている。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ピストンをステムに圧入以外の手法で連結することにより、ステムに対するピストンの傾きを防止する調芯機能と、圧力室のシール機能との双方を実現することができるアクチュエータ及びそれを備えたエアオペレートバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の態様として実現することができる。
本態様に係るアクチュエータは、作動流体の供給又は遮断によりステムを昇降させるアクチュエータであって、ステムが昇降可能に支持されるハウジングと、ハウジング内に区画され、作動流体が供給される圧力室と、ハウジング内にステムとともに昇降可能に収容されるピストンと、ステムとピストンとを連結する連結機構とを備え、連結機構は、ステムの外周面に対向する内周面を有し、内周面にステムに対する係合部を有する連結部材と、連結部材をピストンに固定する固定部材と、ステムに形成され、係合部が係合される被係合部とを含み、被係合部は、ステムの外周面を拡径した鍔部であり、係合部は、連結部材の内周面からピストンに対向する連結部材の対向面に亘って環状に切り欠いて形成され、鍔部が嵌入される第1ザグリ部である
【0011】
た、本態様に係る前述したアクチュエータにおいて、第1ザグリ部の深さは、鍔部のステムの軸方向における厚み以下である。
【0012】
また、本態様に係る前述したアクチュエータにおいて、ステムの径方向における鍔部と第1ザグリ部との互いの当接面は、ステムから拡径し、且つピストンに近づく方向に傾斜したテーパ面である。
また、本態様に係る前述したアクチュエータにおいて、連結機構は、ステムの外周面を拡径した鍔部と、鍔部をピストンに固定する固定部材とを含む。
【0013】
また、本態様に係る前述したアクチュエータにおいて、ピストンは、ステムの昇降に伴いハウジングのボディの内壁に摺動される摺動外周面と、圧力室を内壁とともに区画し、作動流体の圧力を受ける第1受圧面と、ステムに挿入される挿入面部、及び該挿入面部に連なるとともに第1受圧面に亘って切り欠いて形成され、環状の第1弾性部材が嵌入される第1嵌入部からなる内周面とを有する。
【0014】
また、本態様に係る前述したアクチュエータにおいて、ステムは、圧力室に開口する作動流体の流路を有し、アクチュエータは、内壁に固定されるとともに、第1受圧面及び内壁とともに圧力室を区画する区画部材を有し、区画部材は、ステムの昇降に伴いステムの外周面が第2弾性部材を介して摺動される摺動内周面と、圧力室を内壁及び第1受圧面とともに区画し、作動流体の圧力を受ける第2受圧面と、摺動内周面から第2受圧面に亘って切り欠いて形成され、第2弾性部材が嵌入される第2嵌入部とを有する。
【0015】
また、本態様に係る前述したアクチュエータにおいて、第1及び第2受圧面の少なくとも何れか一方は、ステムの降下に伴い第1受圧面が第2受圧面に接触したときに流路が連通される第2ザグリ部を有する。
また、本態様に係る前述したアクチュエータにおいて、第1及び第2弾性部材は、ステムの降下に伴い第1受圧面が第2受圧面に接触したときに第2ザグリ部に露出する。
【0016】
また、本態様に係る前述したアクチュエータにおいて、圧力室と、圧力室に面するピストンとをそれぞれ複数有する。
また、本態様に係る前述したアクチュエータにおいて、ステムは、昇降により弁体を開閉作動し、ピストンの昇降に伴う弁体の開閉をピストンまでの距離の変化に基づいて検出する開閉検出センサを有する。
【0017】
一方、本態様に係るエアオペレートバルブは、前述した何れかのアクチュエータを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアクチュエータ及びそれを備えたエアオペレートバルブによれば、ピストンをステムに圧入以外の手法で連結することにより、ステムに対するピストンの傾きを防止する調芯機能と、圧力室のシール機能との双方を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るアクチュエータを備えたエアオペレートバルブの弁開時における縦断面図である。
図2図1のアクチュエータの拡大図である。
図3図2のA-A方向矢印から見た連結機構の平面図である。
図4図1のエアオペレートバルブの弁閉時における縦断面図である。
図5図3のアクチュエータの拡大図である。
図6】本発明の変形例に係る連結機構の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に係るアクチュエータ18を備えたエアオペレートバルブ1(以下、単にバルブ1ともいう)の弁開時における縦断面図を示す。なお、以下、図1図2図4図6の説明においては、各図の上側を上方として説明している。
【0021】
バルブ1は、プロセス流体の微小流量を高精度制御可能なダイレクトタッチ型のメタルダイヤフラムバルブであり、ボディ2、ダイヤフラム4、ボンネット6、ボンネットナット8、ダイヤフラム押え10、押えアダプタ12、ステム14、スプリング16、アクチュエータ18等を備えている。バルブ1は、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法の成膜技術を利用した半導体製造装置に用いられる。
【0022】
ボディ2は、ステンレス鋼等の金属材により形成され、ボディ2の下部には流体入口20及び流体出口22が形成されている。ボディ2の上部には流体入口20及び流体出口22に連通する上方開放された断面凹状の弁室24が形成されている。弁室24の底面には合成樹脂製の弁座26が設けられ、弁室24の内周面の下側には環状の段部28が形成されている。
【0023】
ボンネット6は、その筒状下端部がボディ2の弁室24内に挿入され、ボディ2の筒状上部に螺合されている。ボンネット6内には、ステム14が昇降可能に配置され、ステム14の周囲にはコイル状のスプリング16が配置されている。スプリング16は、ステム14の下部に形成された拡径部14aを下方に付勢している。拡径部14aの下面にはダイヤフラム4の中央部の上面に当接可能な合成樹脂製のダイヤフラム押え10が嵌着されている。
【0024】
ステム14の上部にはロッド30が螺合されて連結されている。ロッド30は、ボンネット6の上部から突出され、アクチュエータ18内に挿入されている。なお、ロッド30はステム14と連結されて一体に昇降するため、ロッド30をステム14と同義で扱う場合がある。ダイヤフラム4は、弁座26の上方に配置され、複数枚のダイヤフラムにより構成されている。また、ダイヤフラム4は、自然状態で中央部が上方へ湾曲した皿状となっている。
【0025】
ダイヤフラム4は、極薄の厚みを有し、ステンレス鋼や、その他の形状記憶合金等の金属材から形成されている。押えアダプタ12は、弁室24の内周面に取り付けられた環状部材であり、ボンネット6の筒状下端部により段部28に向けて押圧される。ダイヤフラム4の周縁部は、段部28と押えアダプタ12とにより挟持固定され、弁室24の気密性が保持される。
【0026】
本実施形態のアクチュエータ18は、図示しない流体供給源からの作動流体の供給又は遮断によりステム14を昇降させて、弁体であるダイヤフラム4を弁座26に当離座させ、バルブ1の開閉作動を行う流体作動式の駆動機構である。アクチュエータ18は、ハウジング34、ハウジング34内の上下に区画された2つの圧力室36、個々の圧力室36に面してハウジング34内の上下に配置された2つのピストン38、ハウジング34内の各ピストン38間に配置された1つの区画部材40を備えている。
【0027】
アクチュエータ18は、上側のピストン38に対向する位置に開閉検出センサ42を備えている。開閉検出センサ42は、例えば光センサであって、アクチュエータキャップ34aの上面から挿入され、上側のピストン38の上面を反射面として使用している。開閉検出センサ42は、ステム14の昇降に伴うダイヤフラム4の開閉、すなわちバルブ1の開閉動作を上側のピストン38までの距離の変化に基づいて検出する。アクチュエータ18は、ステム14の昇降によるストローク量を調整可能なストローク調整機構を備えている。
【0028】
図2は、図1のアクチュエータ18の拡大図を示す。ハウジング34は、上側のアクチュエータキャップ34aと下側のアクチュエータボディ34bとを螺合等により結合して形成されている。アクチュエータボディ34bの筒状下部34cには、ロッド30を挿入するための開口34dが形成されている。筒状下部34cをボンネット6に挿入し、ボンネットナット8を締め込むことによりアクチュエータ18がボンネット6に締結固定される。ロッド30は、ハウジング34に上側Oリング35と下側Oリング(第2弾性部材)37とを介して昇降可能に支持される。
【0029】
アクチュエータキャップ34aの上部には、流体供給源が接続される作動流体の供給口44が形成され、供給口44はロッド30の上端に開口された作動流体の流路46と連通している。流路46は、ロッド30の軸方向に延設された軸方向孔46aと、軸方向孔46aから径方向に分岐する2系統の径方向孔46bとから構成されている。2つの圧力室36には、供給口44から、軸方向孔46a、径方向孔46bを順に経て作動流体が供給される。
【0030】
2つのピストン38は、ロッド30に連結され、ハウジング34内にロッド30とともに昇降可能に収容されている。詳しくは、図2に示すように、各ピストン38は、摺動外周面38a、第1受圧面38b、内周面38cを有している。摺動外周面38aは、ステム14の昇降に伴いハウジング34の内壁34eにOリング47を介して摺動される。第1受圧面38bは、環帯状をなし、圧力室36を内壁34eとともに区画し、作動流体の圧力を受ける。
【0031】
下側のピストン38の場合、第1受圧面38b、内壁34e、内壁34eの一部であるハウジング34の底壁(区画部材)34fとともに圧力室36が区画される。内周面38cは、ロッド30の外周面30aに、第1Oリング(第1弾性部材)48を介して、圧入のような締り嵌めの嵌め合いではなく、中間嵌め程度の嵌め合いで固定される。内周面38cには、第1嵌入部52が形成されている。
【0032】
ここで、本実施形態のアクチュエータ18は、ステム14と上側のピストン38とを連結する連結機構70を備えている。連結機構70は、ステム14とピストン38とを連結する連結部材72と、連結部材72をピストン38に固定するビス(固定部材)74と、ステム14に形成された鍔部(被係合部)76とから構成されている。
【0033】
連結部材72は、ディスク状をなし、開閉検出センサ42が突出するアクチュエータキャップ34aの底面38fと、上側のピストン38の上面38dとの間のアクチュエータキャップ34aの空間38gに位置付けられている。連結部材72は、ステム14への挿通によりロッド30の外周面30a、換言するとステム14の外周面14bに対向、或いは当接される内周面72aと、内周面72aにおいて鍔部76に係合される第1ザグリ部(係合部)78とを有する。
【0034】
鍔部76は、ステム14の外周面14bを拡径して形成され、鍔部76の下面76aが上側のピストン38の上面38dに当接している。これにより、圧力室36に作動流体が供給されたとき、各圧力室36の圧力によりステム14がピストン38とともに押し上げられて上昇する。連結部材72は、空間38gにおいて、ステム14のストロークに応じて上下移動しても、アクチュエータキャップ34aの底面38fに接触しない厚みを有するとともに、開閉検出センサ42に接触しない外径を有する。
【0035】
第1ザグリ部78は、連結部材72の内周面72aからピストン38に対向する連結部材72の下面(対向面)72bに亘って環状に切り欠いて形成され、鍔部76が嵌入される。第1ザグリ部78の深さDは、鍔部76のステム14の軸方向における厚みW以下に設定されている。
【0036】
これにより、連結部材72をビス74で締結したときに連結部材72の撓みは発生しない。また、深さDが厚みWと等しい場合、第1ザグリ部78の底面78aと鍔部76の上面76bとが当接し、さらにビス74の締結力によって鍔部76の下面76aがピストン38の上面38dに当接する。
【0037】
図3は、図2のA-A方向矢印から見た連結機構70の平面図を示す。連結部材72は、平面視円形をなし、4つのビス74でピストン38の上面38dに締結される。このように、アクチュエータ18が連結機構70を備えることにより、ピストン38がステム14に圧入以外の手法で緊密に連結され、ステム14に対する各ピストン38の傾きを防止する調芯機能を実現することができる。また、第1嵌入部52は、内周面38cから第1受圧面38bに至る角部を全周に亘って切り欠いて形成される。
【0038】
バルブ1の組み立て時に、連結機構70によりピストン38をステム14に連結する前又は後の何れかにおいて、第1嵌入部52に第1Oリング48が嵌入される。ピストン38をステム14に圧入しないため、第1Oリング48の損傷、巻き込み、断裂を確実に防止することができ、各圧力室36のシール機能が実現される。
【0039】
また、第1嵌入部52から第1Oリング48の状態を目視で容易に確認することができる。このため、第1Oリング48の損傷、巻き込み、断裂が万一発生した場合であっても、これらの状態を早期に発見可能である。また、第1Oリング48は、潰れ変形することによる自身の弾性力を第1嵌入部52の内壁に作用させながら、第1嵌入部52に摩擦を伴い嵌入されている。このため、第1Oリング48がピストン38の昇降によっても脱落することはない。
【0040】
さらに、第1Oリング48は圧力室36に露出しているため、バルブ1の全開時には、圧力室36に作用する作動流体の圧力によって、第1Oリング48が第1嵌入部52の内壁に押し付けられる。この押し付け力により、第1嵌入部52内において第1Oリング48の潰れ変形がさらに促進され、各圧力室36のシール性がさらに向上する。
【0041】
さらに、第1Oリング48は、圧力室36に露出して作動流体と接触し、作動流体が帯びる温度に応じて熱膨張することがある。このような第1Oリング48の熱膨張が従来のような限られたスペースの嵌入溝で生じると、熱膨張が規制されるとともに熱の逃げ場がないため、第1Oリング48の硬化、軟化、膨潤等の変質を生じることがある。
【0042】
しかし、本実施形態の場合には、第1嵌入部52に第1Oリング48が嵌入されて熱膨張の自由度がある程度保証され、また、熱の逃げ経路がある程度確保されている。このため、当該熱膨張に伴う第1Oリング48の変質と、圧力室36のシール性への影響とが低減される。
【0043】
一方、区画部材40は、2つのピストン38の間において内壁34eに固定され、上側のピストン38の第1受圧面38b及び内壁34eとともに上側の圧力室36を区画している。詳しくは、区画部材40は、摺動内周面40a、第2受圧面40b、固定外周面40cを有している。摺動内周面40aは、ステム14の昇降に伴いロッド30の外周面30aに第2Oリング(第2弾性部材)54を介して摺動される。
【0044】
第2受圧面40bは、環帯状をなし、圧力室36を内壁34e及び第1受圧面38bとともに区画し、作動流体の圧力を受ける。固定外周面40cは、Oリング56を介して内壁34eに固定される。摺動内周面40aには、摺動面部58と第2嵌入部60とが形成されている。摺動面部58には、ステム14の昇降に伴いロッド30の外周面30aが摺動する。
【0045】
第2嵌入部60は、摺動内周面40aから第2受圧面40bに至る角部を全周に亘って切り欠いて形成され、第2Oリング54が嵌入される。これにより、ロッド30が区画部材40に対して気密に摺動されるとともに、上側の圧力室36のシール機能が確保される。また、第2Oリング54は、第1Oリング48の場合と同様に、潰れ変形することによる自身の弾性力により摩擦を伴って第2嵌入部60に嵌入されている。
【0046】
このため、第2Oリング54がロッド30の昇降によっても脱落することはない。さらに、第2Oリング54は、第1Oリング48の場合と同様に、圧力室36に露出している。このため、バルブ1の全開時には、圧力室36に作用する作動流体の圧力によって、第2Oリング54が第2嵌入部60の内壁に押し付けられる。この押し付け力により、第2嵌入部60内において第2Oリング54の潰れ変形がさらに促進され、上側の圧力室36のシール性がさらに向上する。
【0047】
さらに、第2Oリング54は、第2嵌入部60に嵌入されていることにより、第1Oリング48の場合と同様に、熱膨張がある程度許容される。従って、従来のように限られたスペースで第2Oリング54が熱膨張することにより生じる弊害、つまり、第2Oリング54の変質と、下側の圧力室36のシール性への影響とが低減される。
【0048】
さらに、ハウジング34の底壁34fは、下側の圧力室36を区画する意味において区画部材40と同様の機能を有し、下側Oリング37は、底壁34fに設けられた下側嵌入部(第2嵌入部)39に圧力室36に露出して嵌入され、第2Oリング54と同様の機能を有している。従って、下側の圧力室36のシール機能も確保される。さらには、第1受圧面38bには、ステム14の降下に伴い第1受圧面38bが第2受圧面40bに接触したときに流路46の径方向孔46bが連通される第2ザグリ部62が形成されている。
【0049】
以下、バルブ1の開閉動作とともに第2ザグリ部62の機能について説明する。
図4は、バルブ1の弁閉時における縦断面図を示し、図5は、図4のアクチュエータ18の拡大図を示す。図4及び図5の場合、ステム14がボンネット6内に設けられたスプリング16の弾性力により下方に付勢されている。
【0050】
バルブ1が、図4及び図5に示す弁閉状態から、図1及び図2に示す弁開状態になるときには、供給口44から流路46を介して2つの圧力室36に作動流体が供給され、各圧力室36の圧力により、スプリング16の弾性力に抗してピストン38及びステム14が引き上げられて上昇する。これにより、ダイヤフラム4は、自身の復元力により断面凸状の自然状態となって弁座26から離座し、バルブ1は全開状態になる。
【0051】
一方、バルブ1が、図1及び図2に示す弁開状態から、図4及び図5に示す弁閉状態になるときには、供給口44からの作動流体の供給が停止され、流路46及び2つの圧力室36内の圧力が開放されている。この状態では、スプリング16の弾性力によりピストン38及びステム14が降下する。これにより、ダイヤフラム4は、その中央部がダイヤフラム押え10により下方へ押圧され、自身の復元力に抗して断面凹状に変形されて弁座26に当座し、バルブ1は全閉状態になる。
【0052】
ここで、ストローク調整機構によってステム14のストローク量を小さくすると、ステム14の降下に伴い第1受圧面38bが第2受圧面40bに接触することがあり得る。第1及び第2受圧面38b、40b同士の接触が生じると、圧力室36に必要な容積が確保できず、また、径方向孔46bが塞がれてしまうため、バルブ1の作動不良を生じ得る。また、第1Oリング48が区画部材40に接触し、第1Oリング48が損傷するおそれもある。
【0053】
しかし、第1受圧面38bに第2ザグリ部62を形成したことにより、図5に示すように第1受圧面38bが第2受圧面40bに接触しても、第2ザグリ部62の空間には径方向孔46bが開口されているから、当該空間に作動ガスを供給可能である。従って、第2ザグリ部62の空間が圧力室36として確保される。
【0054】
また、第1及び第2受圧面38b、40b同士の接触を回避するために安全率を見込んでバルブ1の全閉時における圧力室36を大きく確保する必要はなく、また、アクチュエータ18の外形を軸方向に長目に確保する必要はない。従って、アクチュエータ18、ひいてはバルブ1の信頼性を確保しつつ、アクチュエータ18、ひいてはバルブ1のさらなる小型化を図ることができる。
【0055】
また、ストローク調整機構によってステム14のストローク量を小さく調整したうえで、さらに圧力室36の容積を第2ザグリ部62の空間容積を見込んで極力小さく設定することも可能である。これにより、圧力室36の容積を極力小さく設定することができるため、バルブ1の開閉動作の応答性及び制御性が向上する。さらに、図5に示すように、第1及び第2Oリング48、54と下側Oリング37とは、ステム14の降下に伴い第1受圧面38bが第2受圧面40bに接触したときに第2ザグリ部62に露出する。
【0056】
これにより、バルブ1の全閉状態から全開状態に移行するときに圧力室36に作動流体が供給されると、第2ザグリ部62の空間において第1及び第2Oリング48、54が作動流体で押し付けられて潰れ変形する。従って、第1及び第2受圧面38b、40b同士が接触する場合であっても、第2ザグリ部62を形成したことにより各圧力室36のシール機能が確保される。
【0057】
以上のように本実施形態のアクチュエータ18及びそれを備えたバルブ1は、ロッド30、換言するとステム14に対するピストン38の傾きを防止する調芯機能と、圧力室36のシール機能との双方を実現することができる。特に、バルブ1をALD(Atomic Layer Deposition)法の成膜技術を利用した半導体製造装置に用いる場合、膜厚が極小となることに伴い成膜回数が増加する。
【0058】
このため、バルブ1が耐えうる開閉動作の回数(耐用回数)を大幅に増加させなければならない。そこで、ストローク調整機構によりステム14のストローク量を小さくすることにより、ダイヤフラム4の湾曲変位による負荷を低減し、バルブ1の耐用回数の増加を図ることが考えられる。
【0059】
しかし、ステム14のストローク量を小さくすると、従来は誤差範囲として許容されていたピストン38の微小な傾きの影響度が大きくなる。従って、開閉検知の要求があるバルブ1に開閉検出センサ42を配置した場合には、開閉検出センサ42によるバルブ1の開閉動作の誤検出が頻発するおそれがあった。
【0060】
そこで、本実施形態では、アクチュエータ18に、ステム14と上側のピストン38とを連結する連結機構70を設けている。連結機構70を設けたことにより、ステム14にピストン38を圧入固定しなくとも良いため、連結機構70によりステム14にピストン38を緊密に連結しつつ、ピストン38をステム14に圧入した場合に生じる第1Oリング48の損傷、巻き込み、断裂を防止することができる。
【0061】
従って、ロッド30ひいてはステム14に対する各ピストン38の傾きを防止する調芯機能を実現と、各圧力室36のシール機能との双方を実現することができる。さらに、これらの機能の実現により、バルブ1に開閉検出センサ42を配置する場合、バルブ1の開閉動作の誤検出を防止することができるため、バルブ1の信頼性を向上することができ、また、バルブ1の耐久性を向上することもできる。
【0062】
より具体的には、連結機構70は、第1ザグリ部78を有する連結部材72、ビス74、ステム14に形成された鍔部76から構成されている。これにより、ステム14に形成された既存の鍔部76に連結部材72の第1ザグリ部78を係合させ、連結部材72をビス74でピストン38に固定するだけの簡単な構成により連結機構70を実現することができる。
【0063】
また、第1ザグリ部78の深さDは、鍔部76のステム14の軸方向における厚みW以下に設定されている。これにより、連結部材72の撓みを防止しつつ、ステム14、ピストン38、連結部材72を互いの当接によって確実に連結して一体化することができるため、ステム14に対する各ピストン38の傾きをより効果的に防止することができる。
【0064】
さらには、前述したように、第1Oリング48は圧力室36に露出していることにより、各圧力室36のシール性がさらに向上する。また、第1Oリング48の熱膨張に伴う第1Oリング48の変質と、圧力室36のシール性への影響とが低減される。また、区画部材40に切り欠きによる第2嵌入部60を形成したことにより、ロッド30が区画部材40に対して気密に摺動されるとともに、上側の圧力室36のシール機能が確保される。
【0065】
また、ハウジング34の底壁34fに形成した下側嵌入部39と、そこに嵌入される下側Oリング37とにより下側の圧力室36のシール機能も確保される。また、第2Oリング54及び下側Oリング37は圧力室36に露出していることにより、各圧力室36のシール性がさらに向上する。また、第2Oリング54の熱膨張に伴う第2Oリング54の変質と、圧力室36のシール性への影響とが低減される。
【0066】
また、第1受圧面38bに第2ザグリ部62を形成したことにより、第1受圧面38bが第2受圧面40bに接触する場合であっても、圧力室36の確保が可能である。従って、バルブ1の信頼性を確保しつつバルブ1の小型化を図ることができ、また、バルブ1の開閉動作の応答性及び制御性が向上する。
【0067】
また、第1及び第2Oリング48、54と下側Oリング37とは、ステム14の降下に伴い第1受圧面38bが第2受圧面40bに接触したときであっても第2ザグリ部62に露出する。これにより、第1及び第2受圧面38b、40b同士が接触する場合であっても、第2ザグリ部62を形成したことにより各圧力室36のシール機能が確保される。
【0068】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。例えば、上記実施形態では、ステム14の被係合部である鍔部76に対する連結部材72の係合部は第1ザグリ部78である。しかし、これに限らず、係合部及び被係合部は種々の態様が可能である。
【0069】
図6は、本発明の変形例に係る連結機構70の縦断面図を示す。鍔部76と第1ザグリ部78とのステム14の径方向における互いの当接面、つまり、鍔部76の上面76bと第1ザグリ部78の底面78aとを、ステム14から拡径し、且つピストン38に近づく方向に傾斜したテーパ面として形成する。この場合、連結部材72の底面78aより上側が前述した実施形態の場合に比して薄肉となる。
【0070】
このため、連結部材72をビス74で締結したとき、この薄肉部の若干の撓みが許容される。これにより、第1ザグリ部78の深さDと鍔部76のステム14の厚みWとの間に寸法誤差が生じていたとしても、当該撓みにより、第1ザグリ部78の底面78aと鍔部76の上面76bとを確実に当接させ、さらにビス74の締結力によって鍔部76の下面76aをピストン38の上面38dに確実に当接させることができる。
【0071】
従って、連結機構70の形成に際した寸法管理を厳密に行わなくとも、ステム14、ピストン38、連結部材72を互いの当接によって確実に連結して一体化することができるため、アクチュエータ18の生産性を向上しつつ、ステム14に対する各ピストン38の傾きをより効果的に防止することができる。
【0072】
また、連結部材72は、その周方向に複数に分割して形成しても良い。例えば、4つのビス74毎に連結部材72を周方向に4つに分割した場合、分割した部材をビス74で個々にトルク調整しながら、連結部材72をピストン38に締結可能である。従って、ステム14に対するピストン38の傾きを防止する調芯機能をより精密に行うことができる。
【0073】
また、連結機構70は、鍔部76をステム14の外周面14bにおいてさらに拡径し、鍔部76をピストン38にビス74で固定しても良い。この場合には、連結部材72が不要となるため、連結機構70ひいてはアクチュエータ18の部品点数を削減することができ、アクチュエータ18の生産性がさらに向上する。
【0074】
また、上記実施形態に限らず、第2ザグリ部62は第1及び第2受圧面38b、40bの少なくとも何れか一方に設ければ良い。また、上記実施形態に限らず、アクチュエータ18は、対となるピストン38及び圧力室36を1つずつ備えていても良いし、2つ以上ずつ備えていても良い。また、アクチュエータ18は、エアオペレートバルブ1に限らず、他の駆動源を有するバルブや、バルブ以外の駆動対象にも適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 エアオペレートバルブ
4 ダイヤフラム(弁体)
14 ステム
14b 外周面
18 アクチュエータ
30 ロッド(ステム)
30a 外周面
34d 開口
34e 内壁
34f 底壁(区画部材)
36 圧力室
37 下側Oリング(第2弾性部材)
38 ピストン
38a 摺動外周面
38b 第1受圧面
38c 内周面
39 下側嵌入部(第2嵌入部)
40 区画部材
40a 摺動内周面
40b 第2受圧面
42 開閉検出センサ
46 流路
48 第1Oリング(第1弾性部材)
50 圧入面部
52 第1嵌入部
54 第2Oリング(第2弾性部材)
60 第2嵌入部
62 第2ザグリ部
70 連結機構
72 連結部材
72a 内周面
74 ビス(固定部材)
76 鍔部(被係合部)
76b 上面(当接面、テーパ面)
78 第1ザグリ部(係合部)
78a 底面(当接面、テーパ面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6