(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】エッチング装置、およびエッチング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230913BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
H01L21/302 101E
H01L21/302 105B
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2019217143
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000107745
【氏名又は名称】スピードファム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 康嗣
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-253234(JP,A)
【文献】特開2016-162795(JP,A)
【文献】特表2004-524685(JP,A)
【文献】特開2003-298061(JP,A)
【文献】特開平05-190499(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0098535(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング処理対象をエッチングするエッチング装置であって、
プラズマを発生させて上記エッチング処理対象に供給するプラズマ装置と、
上記プラズマ装置にプロセスガスを供給するプロセスガス供給装置と、
上記エッチング処理対象の厚さを測定する測定装置と、
上記エッチング処理対象を上記プラズマ装置および測定装置に対して主走査方向および副走査方向に移動させる移動装置と、
上記プラズマ装置、測定装置、および移動装置の作動を制御する制御装置と、
を備え、
上記制御装置は、上記エッチング処理対象を主走査方向、および副走査方向に移動させて、上記エッチング処理対象のエッチングを行った後、エッチング後のエッチング処理対象を少なくとも副走査方向に移動させて、副走査方向に亘る領域で、かつ、主走査方向の一部の領域である測定領域のエッチング処理対象の厚さを上記測定装置に測定させ、上記測定の結果に基づいて、その後のエッチング処理対象のエッチングを行うように構成されたことを特徴とするエッチング装置。
【請求項2】
請求項1のエッチング装置であって、
上記測定領域は、上記副走査方向に沿った直線上または帯状の領域であることを特徴とするエッチング装置。
【請求項3】
請求項1から請求項2のうち何れか1項のエッチング装置であって、
上記測定装置は、上記プラズマ装置と同じチャンバ内に設けられていることを特徴とするエッチング装置。
【請求項4】
請求項3のエッチング装置であって、
上記測定装置は、上記エッチング装置によるエッチングと同時に上記エッチング処理対象の厚さの測定をし得るように設けられていることを特徴とするエッチング装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち何れか1項のエッチング装置であって、
上記測定装置は複数設けられ、それぞれ、上記エッチング処理対象における互いに異なる領域のエッチング処理対象の厚さを同時に測定し得るように構成されていることを特徴とするエッチング装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち何れか1項のエッチング装置を用いたエッチング方法であって、
上記エッチング処理対象における全領域の厚さを測定する第1の測定工程と、
上記第1の測定工程による測定の結果に基づいて上記エッチング処理対象のエッチングを行うエッチング工程と、
エッチング後のエッチング処理対象を少なくとも副走査方向に移動させて、副走査方向に亘る領域で、かつ、主走査方向の一部の領域である測定領域のエッチング処理対象の厚さを測定する第2の測定工程と、
上記
第1および第2の測定工程による測定の結果に基づいて、その後のエッチング処理対象のエッチングを行う後続エッチング工程と、
が行われることを特徴とするエッチング方法。
【請求項7】
請求項6のエッチング方法であって、
上記第1の測定工程は、上記エッチング処理対象が上記エッチング装置に導入されるのに先立って行われることを特徴とするエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング処理対象の厚さを所定の目標の厚さにするためなどに用いられるエッチング装置、およびそのようなエッチング装置を用いたエッチング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板における半導体層の厚さを所定の目標の厚さにするために、上記半導体層の厚さを領域ごとに測定し、局所的にガスエッチングする技術が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにエッチング処理対象の厚さを測定して局所的にエッチングしても、エッチング装置のエッチング能力は種々の要因によって変動するため、必ずしも目標の厚さにできないことがある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、エッチング処理対象の厚さを高い精度で目標の厚さにすることなどが容易にできるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、
エッチング処理対象をエッチングするエッチング装置であって、
プラズマを発生させて上記エッチング処理対象に供給するプラズマ装置と、
上記プラズマ装置にプロセスガスを供給するプロセスガス供給装置と、
上記エッチング処理対象の厚さを測定する測定装置と、
上記エッチング処理対象を上記プラズマ装置および測定装置に対して主走査方向および副走査方向に移動させる移動装置と、
上記プラズマ装置、測定装置、および移動装置の作動を制御する制御装置と、
を備え、
上記制御装置は、上記エッチング処理対象を主走査方向、および副走査方向に移動させて、上記エッチング処理対象のエッチングを行った後、エッチング後のエッチング処理対象を少なくとも副走査方向に移動させて、副走査方向に亘る領域で、かつ、主走査方向の一部の領域である測定領域のエッチング処理対象の厚さを上記測定装置に測定させ、上記測定の結果に基づいて、その後のエッチング処理対象のエッチングを行うように構成されたことを特徴とする。
【0007】
これにより、例えば主として副走査方向に並ぶ領域のエッチング処理対象の厚さが測定されてエッチング量の補正を行うことによって、エッチング処理対象の厚さの測定を簡素化し全体の処理時間を短縮することが容易にできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エッチング処理対象の厚さを高い精度で目標の厚さにすることなどが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】エッチング装置の構成を模式的に示す模式図である。
【
図2】エッチングおよび厚さ測定の走査方向を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(エッチング装置の概略構成)
図1はダウンストリームプラズマエッチングを用いたエッチング装置の一例を示すものである。シリコンウェーハ1(基板)は、ゲートバルブ10を有するチャンバCの中に収容されたステージ2(移動装置)の上に載置されるようになっている。ステージ2はX軸駆動モータ3、およびY軸駆動モータ3’の作用によりX軸、Y軸方向(
図2に示す主走査方向A、副走査方向B)への駆動が可能であり、それによりシリコンウェーハ1はX軸、Y軸方向への移動が可能となっている。ここで、以下の説明では、便宜上、シリコンウェーハ1に対して相対的に先端ノズル5や層厚測定装置11が移動するとして説明する。
【0012】
シリコンウェーハ1の上部におけるチャンバC内にはプラズマ発生用の放電管4の先端ノズル5が設置されている。放電管4の他端はプロセスガス供給ライン8(プロセスガス供給装置)に接続されている。また放電管4のプラズマ発生領域6に相当する部分にはマイクロ波電源7が配置されている。上記放電管4、先端ノズル5、プラズマ発生領域6、およびマイクロ波電源7によってプラズマ装置が構成されている。
【0013】
チャンバCには、また、シリコンウェーハ1上の半導体(エッチング処理対象)層の厚さを測定する層厚測定装置11が設けられている。
【0014】
エッチングを行う際には、上記チャンバCに接続される真空ポンプ(図示せず)を稼動した状態で、プロセスガスである六弗化硫黄ガスをプロセスガス供給ライン8より導入し、プラズマ発生装置を稼動させて放電管4の中でフッ素ラジカルを発生させ、先端ノズル5からシリコンウェーハ1に照射する。シリコンウェーハ1は上記放電管4の先端ノズル5から照射されるフッ素ラジカルによりエッチング作用を受ける。ここで、フッ素ラジカルはその下に位置するシリコンウェーハの部分に局部的に作用するが、シリコンウェーハが上記のようにXY軸方向に駆動されるので、それによりウェーハ全面が加工される。より詳しくは、シリコンウェーハ1はステージ2に接続したX軸駆動モータ3、Y軸駆動モータ3’の駆動により、先端ノズル5が相対的に
図2に示す主走査方向Aに往復しながら、副走査方向Bにピッチpずつ移動する。また、後述するように層厚測定装置11による測定が行われる際には、層厚測定装置11は相対的に副走査方向Bに移動する。
【0015】
上記ステージ2の駆動制御や、プラズマ発生装置の動作制御、層厚測定装置11による半導体層の厚さの測定などは、制御コンピュータ9(制御装置)によって行われるようになっている。
【0016】
(厚さ制御)
上記のようなエッチング装置で、例えばシリコン基板等の支持基板上に絶縁膜を介して半導体層が形成されたシリコンウェーハ1について、上記半導体層の層厚が、領域ごとに所定の層厚になるようにエッチング処理される場合の動作の例を説明する。
【0017】
(1) まず、エッチング前のシリコンウェーハ1における半導体層の全域の層厚が測定される。この測定は、エッチング装置に設けられた層厚測定装置11によって行われるようにしてもよいが、通常、装置外の形状測定装置等によって測定することによって、測定精度を高くしたり、処理の高速化を図ったりすることが容易になる。
【0018】
(2) シリコンウェーハ1の各領域ごとに、上記測定の結果と、あらかじめ設定された目標層厚とに基づいて、エッチングによる取代が求められる。 (3) 先端ノズル5が、上記取代に応じた速度で、相対的に主走査方向、および副走査方向に移動しながら、エッチングが行われる。
【0019】
(4) エッチングが完了すると、層厚測定装置11が
図2に示す副走査方向Bに移動しながら、例えば主走査方向Aの中央付近での半導体層の層厚が測定される。これによって測定された層厚と当初の目標層厚とに差異がある場合には、上記測定された層厚と当初の目標層厚との差異に応じた取代の補正値が求められる。上記測定は、主走査方向の移動を全く伴わないでシリコンウェーハ1における直線状の領域に対して行われるのでもよいが、これに限らず、多少、主走査方向の移動を伴ってシリコンウェーハ1における帯状の領域に対して行われるようにしてもよい。何れにしても、シリコンウェーハ1の全領域のうちの一部についてだけ行われることによって、測定に要する時間を短くすることができる。
【0020】
(5) 以後、他のシリコンウェーハ1について、上記(1)~(4)と同様の動作が繰り返されるが、(2)においては、さらに、上記(4)でのエッチング後の測定結果に基づく補正を含めた取代が求められる(フィードバック)。ここで、上記(4)で測定されたのは主走査方向Aに関しては一部の位置についてのものであるが、エッチングのバラツキが、主走査方向Aの位置に比べて副走査方向Bの位置への依存性が高いような場合には、副走査方向Bの位置が同じで主走査方向Aの位置が異なる各領域に対しては、その副走査方向Bの位置での測定値を代表値として、同様の補正が行われるようにすることができる。または、副走査方向Bに隣接する領域での測定値に基づいて補間演算で得られる値などに基づいて、各主走査方向Aの位置での補正が行われるようにしてもよい。さらに、副走査方向Bの位置が同じ領域に限らず、プラズマの発生が開始されてからの時間が対応する領域の測定値に基づいて補正されるなどしてもよい。
【0021】
なお、一般的な補正は加工位置情報に対して行うものであるが、本発明では時間情報に依存する加工傾向に対して補正を行うことを概念に入れることで、加工精度を向上させている。また、位置情報により補正した後に、時間情報によって更に補正を加えることもできる。
【0022】
上記のように、主走査方向Aの位置に依存するエッチング程度の変動よりも、副走査方向Bの位置に依存するエッチング程度の変動の方が大きいことが見込まれるような場合には、主として副走査方向Bに並ぶ領域の層厚を測定してエッチング量の補正を行うことにより、測定を簡素化し全体の処理時間を短縮することが容易にでき、フィードバック頻度の向上やフィードバックに係るタイムラグの抑制によって、加工精度の維持・向上を図ることができる。
【0023】
(その他の事項)
なお、上記の例では、チャンバCに層厚測定装置11が設けられている例を示したが、これに限らず、エッチング加工の終了後にチャンバCから取り出して外部の他の測定装置で層厚が測定されるようにしてもよい。ただし、チャンバCに設けられている場合には、加工後、チャンバCの真空を破ったりすることなく直ちに測定を行って、次のエッチングへのフィードバックを容易にしたりできる。また、エッチング処理と並行して測定を行うようにしたりすることも容易にできるようになる。
【0024】
また、層厚測定装置11は1つに限らず、複数設けて、シリコンウェーハ1上の複数の領域について同時に層厚を測定できるようにしてもよい。この場合には、測定時間の短縮が容易になるとともに、ステージ2のストロークを短く抑え、チャンバCを小さく抑えることができる。
【0025】
また、上記の例では主走査方向が直線である例を示したが、これに限らず、シリコンウェーハを回転させることにより、円周方向が主走査方向、半径(または直径)方向の移動が副走査方向となる場合でも、同様にエッチング後の測定に基づいた補正をすることができる。
【0026】
また、上記の例ではシリコンウェーハ1上に形成された半導体層を目標の厚さに加工する例を示したが、これに限らず、シリコン、石英等の基板自体をエッチング処理対象として目標の厚さに加工してもよく、さらに、基板全体の厚さや平行度・平坦度等に目標値をもって加工をしてもよい。
【0027】
また、基板上に形成された膜等がエッチング処理対象とされる場合、そのエッチング対象は、シリコン(SOI)等の半導体膜や、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の絶縁膜、タンタル等の導電膜などであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 シリコンウェーハ
2 ステージ
3 X軸駆動モータ
3’ Y軸駆動モータ
4 放電管
5 先端ノズル
6 プラズマ発生領域
7 マイクロ波電源
8 プロセスガス供給ライン
9 制御コンピュータ
10 ゲートバルブ
11 層厚測定装置