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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】調整装置
(51)【国際特許分類】
   F16M 11/38 20060101AFI20230913BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20230913BHJP
   F16M 11/24 20060101ALN20230913BHJP
【FI】
F16M11/38 F
G03B17/56 B
F16M11/24 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019228144
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021095966
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】503216317
【氏名又は名称】有限会社長州電気
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 一夫
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-076819(JP,A)
【文献】特開2008-025834(JP,A)
【文献】特表2018-520937(JP,A)
【文献】特開2013-243535(JP,A)
【文献】特開2006-207798(JP,A)
【文献】特開2010-223382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00- 5/12,
7/00- 7/22
F16M 11/24-11/40,
G03B 17/56-17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材に対して所定量変位した第2の部材を前記第1の部材に固定する固定構造を備えるとともに、前記第1の部材に対する前記第2の部材の相対変位を調整する調整装置において、
前記第1の部材および前記第2の部材とは別体とされ、当該第1の部材及び第2の部材の相対変位方向に並ぶように設けられる複数の調整部材と、
前記第1の部材および前記第2の部材とは別体とされ、前記調整部材の間に挿入されて当該調整部材に係止する係止部材と、
複数の前記調整部材を保持する第1保持部と、
前記係止部材を保持する第2保持部とを備え、
前記第1の部材および前記第2の部材は、共に所定方向に長い中空部材で構成され、
前記第1の部材が前記第2の部材の内側へ挿入されるとともに、前記第2の部材の前記第1の部材に対する相対変位方向は当該第1の部材の長手方向とされ、
前記調整部材は、前記第1の部材とともに、前記第2の部材に対して相対移動する部材であり、前記係止部材の挿入方向手前側から奥側まで連続して延びるように形成されるとともに、前記挿入方向手前側から奥側まで連続して当該係止部材に当接する調整部材側当接面を備え、
複数の前記調整部材は、前記第1の部材の内部に当該第1の部材の長手方向に並ぶように収容されて前記第1保持部により保持され、
前記第1の部材における前記調整部材を収容する部分は、当該調整部材の前記挿入方向手前側を露出させる開口部を有し、
前記係止部材は、前記第2の部材に支持される部材であり、前記調整部材側当接面に対して前記挿入方向手前側から奥側まで連続して当接する係止部材側当接面を備え
前記第2の部材には、前記係止部材の差し込み孔が前記開口部と一致するように形成され、前記第2保持部は前記差し込み孔に差し込まれた前記係止部材を保持することを特徴とする調整装置。
【請求項2】
請求項に記載の調整装置において、
前記調整部材は磁性体で構成され、
前記調整部材を吸着する磁石を備えていることを特徴とする調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長さや角度を調整する調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カメラの三脚、脚立、梯子、椅子等の脚の長さ調整を行うことが可能に構成された伸縮装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の伸縮装置は、筒状部材からなる第1の脚部と、第1の脚部に挿入される第2の脚部と、第2の脚部の挿入方向奥側に設けられた長さ調整部材とを備えている。第1の脚部には、窓部が形成されており、この窓部から係止部を差し込んで長さ調整部材に係止させることにより、第1の脚部に対する第2の脚部の挿入方向の位置が規定される。特許文献1の図10には、積層された複数のリングによって長さ調整部材を構成する形態が示されており、第2の脚部を第1の脚部に所定量挿入した状態で、係止部を第1の部材の窓部からリング間に挿入すると、係止部がリングに係止して第1の脚部に対する第2の脚部の移動が阻止される。これにより、所望長さを得ることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-76819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の伸縮装置によって脚の長さを調整する場合、脚が第1の脚部と第2の脚部とに分割されることになるので、多少のガタツキが発生するのは避けられない。しかも、特許文献1のリングによって長さ調整部材を構成している形態の場合、リングの中央部には穴が形成されているので、係止部をリング間に挿入した際、係止部はリングの中央部において当該リングとは接触しないことになる。すなわち、係止部を挿入方向に長くしても、リングと接触する部分は当該リングの径方向外側部分だけになり、バランスが悪く、係止部とリングとのガタツキが大きくなるおそれがある。このことは長期間の使用によって顕著な問題となりやすい。
【0005】
さらに、特許文献1では、リング内にシャフトが通っているので、係止部を第1の脚部の奥まで挿入しようとすると、途中でシャフトに当たり、奥まで挿入することができない。このことによっても、バランスの悪化を招き、ひいてはガタツキの発生要因となる。
【0006】
また、長さ調整以外にも、例えば第1の部材と第2の部材との相対的な角度調整を行いたい場合があり、この場合も、所望の角度に設定した後、第1の部材と第2の部材とのガタツキをできるだけ少なくしたいという要求がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、第1の部材と第2の部材とを相対変位可能にする場合に、それらのガタツキを少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、複数の調整部材を第1の部材と第2の部材の相対変位方向に並べて設けておき、調整部材の間に係止部材を挿入することによって第1の部材と第2の部材との相対変位を阻止し、調整部材と係止部材との当接面を係止部材の挿入方向手前側から奥側まで連続させるようにした。
【0009】
第1の発明は、第1の部材に対して所定量変位した第2の部材を前記第1の部材に固定する固定構造を備えた調整装置において、前記第1の部材および前記第2の部材とは別体とされ、前記相対変位方向に並ぶように設けられる複数の調整部材と、前記第1の部材および前記第2の部材とは別体とされ、当該第1の部材及び第2の部材の調整部材の間に挿入されて当該調整部材に係止する係止部材と、複数の前記調整部材を保持する第1保持部と、前記係止部材を保持する第2保持部とを備え、前記調整部材は、前記係止部材の挿入方向手前側から奥側まで連続して延びるように形成されるとともに、前記挿入方向手前側から奥側まで連続して当該係止部材に当接する調整部材側当接面を備え、前記係止部材は、前記調整部材側当接面に対して前記挿入方向手前側から奥側まで連続して当接する係止部材側当接面を備えていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、第1の部材に対して第2の部材を相対変位させることにより、第1の部材に対する第2の部材の位置が変更される。これにより、長さ調整や角度調整が可能になる。第2の部材を第1の部材に対して所定量変位させた状態で、係止部材を調整部材の間に挿入して当該調整部材に係止させると、調整部材および係止部材がそれぞれ調整装置に保持されているので、第1の部材と第2の部材との相対変位が阻止されて第2の部材が第1の部材に固定される。調整部材は相対変位方向に並んでいるので、その範囲内であれば、第2の部材を第1の部材に対して任意の位置に変位させた状態で、第2の部材を第1の部材に固定することが可能になり、長さや角度の微調整が行える。
【0011】
そして、係止部材を調整部材の間に挿入した状態では、係止部材がその挿入方向手前側から奥側まで連続して調整部材に当接するので、外力が作用した際や振動した際にバランスが良好に保たれる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1の部材および前記第2の部材は、共に所定方向に長い中空部材で構成され、前記第1の部材が前記第2の部材の内側へ挿入されるとともに、前記第2の部材の前記第1の部材に対する相対変位方向は当該第1の部材の長手方向とされ、複数の前記調整部材は、前記第1の部材の内部に当該第1の部材の長手方向に並ぶように収容されて前記第1保持部により保持され、前記第1の部材における前記調整部材を収容する部分は、当該調整部材の前記挿入方向手前側を露出させる開口部を有し、前記第2の部材には、前記係止部材の差し込み孔が前記開口部と一致するように形成され、前記第2保持部は前記差し込み孔に差し込まれた前記係止部材を保持することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、調整部材が第1の部材の内部に収容されるので、第1の部材の内部空間が有効に活用される。そして、第2の部材を第1の部材の長手方向に変位させることで、第1の部材および第2の部材で構成される物の長さを変更することが可能になる。所望の長さにした状態で、係止部材を第2の部材の差し込み孔から差し込むと、第1の部材の開口部を経て当該第1の部材の内部に収容されている調整部材の間に挿入される。これにより、第2の部材が第1の部材に固定される。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、前記第2の部材は、前記第1の部材に対して相対回動可能に支軸により連結され、複数の前記調整部材は、前記支軸の周方向に並ぶように設けられていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第2の部材を第1の部材に対して支軸周りに回動させることにより、第1の部材と第2の部材とのなす角度が変化する。所望の角度にした状態で、係止部材を調整部材の間に挿入すると、第2の部材が第1の部材に固定される。調整部材は支軸の周方向に並んでいるので、その範囲内であれば、任意の角度にした状態で、第2の部材を第1の部材に固定することが可能になり、角度の調整が行える。
【0016】
第4の発明は、前記第1保持部は、前記調整部材を収容する収容溝で構成され、当該収容溝は前記支軸の周方向に延びるように形成され、前記調整部材は、柱状をなすとともに、前記収容溝の延びる方向に並んでいることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、調整部材を収容溝に収容して収容部材を第1の部材に取り付けることで、調整部材が支軸の周方向に並ぶように配列され、この配列状態が維持される。
【0018】
第5の発明は、前記収容溝は、前記支軸を中心とした円環状に延びるように形成され、前記調整部材は、前記収容溝の周方向の一部分を残して他の部分を埋めるように収容され、前記第1の部材には、前記収容溝の周方向の前記一部分に差し込まれる固定部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、調整部材が収容溝に収容された収容部材を第1の部材に取り付ける際に、第1の部材の固定部が収容溝の周方向の一部分に差し込まれるので、調整部材と第1の部材との支軸周りの相対的な変位が阻止された状態になる。そして、係止部材を調整部材の間に挿入すると、第2の部材が第1の部材に対して相対的に回動しなくなる。
【0020】
第6の発明は、前記係止部材を前記調整部材の間に導入するための導入孔を有していることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、係止部材を調整部材の間に差し込む際に、係止部材が導入孔によって導入される。
【0022】
第7の発明は、前記調整部材は磁性体で構成され、前記調整部材を吸着する磁石を備えていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、複数の調整部材が磁石によって吸着されて調整装置に保持される。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明によれば、複数の調整部材を第1の部材と第2の部材の相対変位方向に並べて設け、これら調整部材の間に係止部材を挿入した状態で、係止部材をその挿入方向手前側から奥側まで連続して調整部材に当接させることができるので、外力が作用したときのバランスが従来例のものよりも良好になり、第1の部材と第2の部材のガタツキを少なくすることができる。
【0025】
第2の発明によれば、調整部材を第1の部材の内部に収容することで、長さ調整が可能な調整装置をコンパクトにすることができる。
【0026】
第3の発明によれば、調整部材を用いて第1の部材と第2の部材とのなす角度を調整することができる。
【0027】
第4の発明によれば、第2の部材を第1の部材に対して回動させたときに調整部材を支軸の周方向に配列した状態で維持することができ、角度の微調整を確実に行うことができる。
【0028】
第5の発明によれば、円環状にした収容溝の一部分に第1の部材の固定部を差し込むという簡単な構成によって第2の部材を第1の部材に固定することができる。
【0029】
第6の発明によれば、係止部材が導入孔によって調整部材の間に導入されるので、係止部材をスムーズに挿入することができる。
【0030】
第7の発明によれば、調整部材を磁石で吸着しておくことができるので、調整部材が調整装置から脱落するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態1に係る調整装置を備えた三脚の正面図である。
図2】三脚の脚部材の取り付け部分近傍を拡大して示す斜視図である。
図3】三脚の脚部材の取り付け部分の分解斜視図である。
図4A】収容部材を調整部材の収容方向から見た側面図であり、調整部材を収容した状態を示す。
図4B】収容部材の変形例を示す図4A相当図である。
図5】調整部材を収容する前の状態を示し、図4AにおけるV-V線に相当する断面図である。
図6A】調整部材の斜視図である。
図6B】変形例に係る調整部材の斜視図である。
図7】実施形態2に係り、図1におけるVII-VII線に相当する断面図である。
図8】実施形態2に係る脚部材の側面図である。
図9】実施形態2に係る脚部材の平面図である。
図10】実施形態2に係る収容部材を調整部材の収容方向から見た側面図である。
図11】実施形態3に係る調整装置を備えた脚立の斜視図である。
図12】アウトリガーの取り付け部分近傍を拡大して示す側面図である。
図13図12におけるXIII-XIII線断面図である。
図14】実施形態4に係る調整装置を備えた脚立のアウトリガー近傍の側面図である。
図15】実施形態4に係るアウトリガーの中間部の断面図である。
図16】実施形態5に係る調整装置を備えた自動車用シートの側面図である。
図17】実施形態5に係る調整装置の分解図であり、右側から見た場合を示す。
図18】実施形態5に係る調整装置の分解図であり、左側から見た場合を示す。
図19】実施形態6に係る調整装置を備えたドアクローザの斜視図である。
図20】カバーを省略したドアクローザの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0033】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る調整装置1を備えた三脚2の正面図である。三脚2は、支柱3と複数の脚部材5とを備えており、例えばカメラや各種測定機器等を所定高さに設置する際に使用されるものである。支柱3は、基端側に配置される基端側筒部材3aと、基端側筒部材3aに挿入される小径の先端側筒部材3bと、先端側筒部材3bの上端部に固定された機器取付部3cとを備えている。機器取付部3cには、上記カメラや測定機器等が取り付けられる。機器取付部3cは、例えば雲台等である。
【0034】
先端側筒部材3bを基端側筒部材3aに対して上下方向に移動させることにより、機器取付部3cの高さを調整することができる。先端側筒部材3bを移動させた後、締め付け部材3dによって基端側筒部材3aに締め付けることにより、先端側筒部材3bを基端側筒部材3bに固定することができる。
【0035】
基端側筒部材3aの下端部には、脚部材5が角度調整可能に取り付けられている。この実施形態では脚部材5が3本設けられている場合について説明するが、脚部材5の数は任意の数に設定することができる。脚部材5および脚部材5の支柱3への取付構造は3本とも同じである。
【0036】
図2に示すように、基端側筒部材3aの下端部の外周面には、脚部材(第2の部材)5を支持する一対の支持板(第1の部材)4、4が当該基端側筒部材3aの周方向に互いに間隔をあけて固定されている。各支持板4は、上下方向に延びるとともに、基端側筒部材3aの外周面から水平方向に突出している。一対の支持板4、4は互いに略平行となっている。
【0037】
三脚3は、脚部材5を支持板4に対して支持する支軸を構成するボルト6を有している。ボルト6の軸部6aは、水平方向に延びるように配置される。したがって、脚部材5は、支持板4に対して上下方向に相対回動可能に連結される。図3に示すように、各支持板4には、ボルト6の軸部6aが挿通する支持板側挿通孔4aが形成されている。また、脚部材5の基端部には、ボルト6の軸部6aが挿通する脚側挿通孔5aが形成されている。ボルト6の軸部6aを一方の支持板4の支持板側挿通孔4a、脚部材5の脚側挿通孔5a、他方の支持板4の支持板側挿通孔4aに挿通させた後、軸部6aにおける他方の支持板4から突出した部分にナット6bを螺合させることにより、脚部材5を支持板4、4、即ち基端側筒部材3aに対して取り付けることができる。なお、図2および図3に示す符号7は、脚部材5と一方の支持板4との間に設置されるカラーであり、必要に応じて設けることができる。図3に示すように、カラー7には、軸部6aが挿通するカラー側挿通孔7aが形成されている。
【0038】
この実施形態では、支持板4、4に対して脚部5を任意の角度となるまで軸部6a周りに回動変位させることができるようになっている。これは、調整装置1によって実現される。すなわち、調整装置1は、ボルト6、ナット6b、支持板4に形成された支持板側挿通孔4aおよび脚部材5に形成された脚側挿通孔5aを備えている。さらに、調整装置1は、支持板4、4に対して所定量回動変位した脚部材5を当該支持板4に固定するための固定機構10を備えており、この固定機構10によって脚部5を任意の角度で固定することができるようになっている。
【0039】
固定機構10は、複数の調整部材11と、調整部材11を収容する収容部材12と、調整部材11の間に挿入されて当該調整部材11に係止する係止部材13と、支持板4に形成された差し込み孔4bと、脚部材5に形成された係合突出部(固定部)5bとを備えている。調整部材11は、支持板4および脚部材5とは別体とされており、脚部5の支持板4に対する相対変位方向、即ち軸部6aの周方向に並ぶように設けられる部材である。図6Aに示すように、調整部材11は例えば円柱状のピン部材からなり、高剛性な金属製である。調整部材11の先端側には、先鋭部11aが形成されている。図6Bは、調整部材11の変形例を示しており、この変形例の調整部材11は、半円柱状のピン部材で構成されている。調整部材11の形状は、円柱状、半円柱状以外の形状であってもよく、例えば角柱状、板状、楕円形断面を有する柱状であってもよい。調整部材11の数は、特に限定されるものではないが、例えば5以上、好ましくは10以上に設定することができる。調整部材11の数を増やすことで、より多段階の調整が可能になるので好ましい。また、調整部材11の径は、例えば1mm以上5mm以下の範囲で設定することができる。調整部材11の径を小さくすることで調整ピッチが小さくなるので好ましい。
【0040】
調整部材11は、係止部材13の挿入方向手前側から奥側まで連続して延びるように形成されている。さらに、調整部材11は、その挿入方向手前側から奥側まで連続して係止部材13に当接する調整部材側当接面11bを備えている。調整部材11は、例えば鋼材等の磁性体で構成されている。
【0041】
収容部材12は、支持板4および脚部材5とは別体とされており、脚部材5の基端部におけるカラー7とは反対側の側面に当接するように配置される。収容部材12は円形の厚肉板状をなしており、その中心部にはボルト6の軸部6aが挿通する収容部材側挿通孔12aが形成されている。収容部材12は、ボルト6およびナット6bによって脚部材5と一体化されている。
【0042】
図4Aにも示すように、収容部材12には、調整部材11を収容する収容溝12bが形成されている。収容溝12bは、収容部材12における脚部材5側の側面に開口しており、この開口から調整部材11を収容溝12bに収容することができるようになっている。調整部材11の先鋭部11aが収容溝12bの底面側となるように調整部材11が収容される。この収容溝12bは、収容部材側挿通孔6aの中心と同心の円環状に延びており、収容部材側挿通孔6aを囲むように位置している。収容溝12bの深さは、調整部材11の長さと略等しく設定されており、収容された調整部材11の端部が収容溝12bから突出しないようになっている。収容溝12bの幅は、調整部材11の外径よりも若干広めに設定されており、調整部材11が収容溝12bの内部で当該収容溝12bの延びる方向に容易に移動可能となっている。また、図5に示すように、収容溝12bの底面は、傾斜面12cを有している。傾斜面12cは、収容溝12bの幅方向中央部が最も深くなるように形成されている。図4Aに示すように、予め決定されている所定数の調整部材11を収容溝12bに収容した状態で、収容溝12bには空きができるようになっている。つまり、複数の調整部材11は、収容溝12bの周方向の一部分を残して他の部分を埋めるように収容されている。
【0043】
図4Bは、収容部材12の変形例を示すものである。変形例では収容溝12bの幅を広くしており、調整部材11を収容溝12bの幅方向にずらして配置することができるようになっている。すなわち、調整部材11は、収容溝12bの幅方向外側寄りに配置されるものと、収容溝12bの幅方向内側寄りに配置されるものとがある。外側寄りに配置される調整部材11の中心は、収容溝12bの幅方向中央部よりも外側に位置付けられ、内側寄りに配置される調整部材11の中心は、収容溝12bの幅方向中央部よりも内側に位置付けられている。このような配置は、調整部材11の外径を収容溝12bの幅より小さくすることで可能になる。
【0044】
収容部材12と脚部材5とは相対的に回動可能になっているが、収容部材12と脚部材5とが当接した状態で保持されるので、収容部材12に収容された調整部材11を脚部材5に保持しておくことができる。したがって、収容部材12の収容溝12bは、本発明の第1保持部である。収容溝12bの形状は図示した形状に限られるものではない。
【0045】
なお、収容溝12bには、調整部材11に接触する弾性材を収容することもできる。弾性材を収容しておくことで、調整部材11の収容溝12b内でのガタツキを抑制することができる。弾性材としては、例えばゴム等からなるクッション材を挙げることができる。また、収容部材12の収容溝12bの底面には、調整部材11を吸着するための磁石(図示せず)が設けられていてもよい。調整部材11を磁石に吸着させておくことで、調整部材11が導入孔12dから外部へ出てしまうのを抑制することができる。磁石は収容溝12bの側面に設けることもできる。
【0046】
図3に示すように、収容部材12には、係止部材13が差し込まれる導入孔12dが収容溝12bと連なるように形成されている。導入孔12dは、係止部材13を調整部材11の間に導入するためのものである。図4Aに示すように、導入孔12dはスリット状をなしており、その長手方向は収容部材12の径方向、即ち収容溝12bの幅方向と一致している。導入孔12dの長手方向の寸法は、収容溝12bの幅寸法よりも長く設定されており、導入孔12dの長手方向両側は収容溝12bから幅方向両側へ突出するように位置している。導入孔12dは、収容部材12を厚み方向に貫通するように形成されている。
【0047】
収容部材12における脚部材5と反対側の側面は、支持板4の側面に当接するようになっている。収容部材12が当接する側に位置する支持板4には、係止部材13が差し込まれる差し込み孔4bが形成されている。差し込み孔4bは、収容部材12の導入孔12dと同様なスリット状をなしており、導入孔12dと同じ形状にすることができる。
【0048】
収容部材12は、当該収容部材12が当接する支持板4に固定されており、収容部材12と支持板4とが相対的に回動しないようになっている。収容部材12と支持板4とは、溶接による固定方法や凹凸嵌合による固定方法等を使用して動かないように一体化することができる。支持板4の差し込み孔4bと、収容部材12の導入孔12dとが一致するように、支持板4と収容部材12との位置合わせが行われている。
【0049】
脚部材5の係合突出部5bは、収容部材12が配置される側へ向けて突出しており、脚部材5の本体部分に対して動かないように一体化されている。係合突出部5bは、脚部材5の本体部分とは別の部材で構成されていてもよいし、脚部材5の本体部分に一体成形されていてもよい。係合突出部5bは、脚側挿通孔5aの中心部分を中心とする円弧状に形成されている。収容部材12を脚部材5の側面の規定の位置に接触させたときに、係合突出部5bが収容部材12の収容溝12bに入るように、当該係合突出部5bの位置が設定されている。具体的には、係合突出部5bの周方向の寸法は、所定数の調整部材11が収容された収容溝12bの空いた部分の周方向の寸法よりも短く設定されている。これにより、収容部材12を脚部材5の側面に当接させたときに、係合突出部5bを収容溝12bの空いた部分(周方向の一部分)に入れることが可能になる。係合突出部5bを収容溝12bの空いた部分に入れたとき、収容溝12b内における調整部材11の間には、若干の隙間が形成されている。この隙間は係止部材13を調整部材11の間に差し込むことができるようにするための隙間である。なお、係合突出部5bは周方向に断続して複数設けることもできる。
【0050】
図3に示すように、係止部材13は、係止板部13aと、操作部13bとを備えている。係止板部13aは、支持板4に形成された差し込み孔4bおよび収容部材12に形成された導入孔12dに差し込むことが可能に形成されており、例えば金属製の板材で構成することができる。係止板部13aを差し込み孔4bに差し込むことで、係止部材13を支持板4に保持することができるので、差し込み孔4bは本発明の第2保持部である。
【0051】
係止板部13aは、調整部材側当接面11bに対して挿入方向手前側から奥側まで連続して当接する係止部材側当接面13cを備えている。操作部13bは、係止板部13aの基端部に設けられており、三脚2の使用者が例えば手で持って係止部材13の操作を容易にするための部分である。操作部13bの形状は任意の形状にすることができ、例えばリング状であってもよい。
【0052】
(調整装置1の動作)
次に、調整装置1の動作について説明する。係止部材13の操作部13bを持って係止板部13aを収容部材12の導入孔12dから抜く操作を行うと、係止板部13aが調整部材11の間から抜ける。これにより、脚部材5と支持板4との相対的な回動が可能になる。すなわち、脚部材5には係合突出部5bが設けられており、この係合突出部5bが収容部材12の収容溝12bに入る一方、その収容部材12は支持板4に固定されているので、脚部材5を支持板4に対して回動させると、係合突出部5bが収容溝12b内でその周方向に相対的に移動することになる。このとき、調整部材11には係止板部13aが係止していないので、調整部材11が係合突出部5bによって周方向に押され、調整部材11が収容溝12b内を周方向に移動する。このことで脚部材5を任意の角度となるまで回動させることができる。このとき、係止部材13は支持板4に保持させておいてもよいし、支持板4から取り外してもよい。なお、脚部材5はその先端部が上に来るまで回動させることもでき、これにより、脚部材5を折り畳んだ状態にして三脚2をコンパクトにすることができる。
【0053】
脚部材5を任意の角度となるまで回動させた後、係止部材13の係止板部13aを収容部材12の導入孔12dに差し込むと、係止板部13aが調整部材11の間に挿入されて調整部材11に係止した状態になる。係止部材13が支持板4に保持されているので、脚部材5を回動させようとした際に調整部材11の移動が係止部材13によって阻止される。これにより、脚部材5が支持板4に固定されて回動不能になる。
【0054】
係止部材13の係止板部13aを調整部材11の間に挿入する際、調整部材11の先端側に先鋭部11aが形成されているので、隣り合う調整部材11の間に隙間ができ、係止板部13aの先端部が調整部材11の間に入りやすくなる。係止板部13aを調整部材11の間に挿入すると、調整部材11の調整部材側当接面11bと、係止部材13の係止部材側当接面13cとが当接する。このとき、調整部材11が係止板部13aの挿入方向手前側から奥側まで延びていて、その調整部材11の調整部材側当接面11bが係止板部13aの挿入方向手前側から奥側まで連続しており、しかも、係止部材13の係止部材側当接面13cも当該係止板部13aの挿入方向手前側から奥側まで連続しているので、外力や作用した際や加振力が作用した際にバランスが良好に保たれる。
【0055】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、脚部材5の支持板4に対する角度を任意の角度に調整することができ、係止部材13を調整部材11の間に挿入すると、係止部材13がその挿入方向手前側から奥側まで連続して調整部材11に当接するので、外力や作用した際や加振力が作用した際にバランスが良好になり、これにより、脚部材5の支持板4に対するガタツキを少なくすることができる。
【0056】
(実施形態2)
図7図10は、本発明の実施形態2に係るものである。実施形態2では、複数の調整装置1を1つ操作部材によって一度に操作できるように構成されている点で実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0057】
図8および図9に示すように、脚部材5における脚側挿通孔5aの周りには、複数の磁石5cが埋め込まれている。磁石5cは、調整部材11を吸着するためのものであり、脚側挿通孔5aの中心と同心の円弧状に並んでいる。磁石5cは被覆板5dによって覆われている。脚部材5における収容部材12側の面には、2つの係合突出部5bが周方向に互いに間隔をあけて設けられている。
【0058】
図10に示すように、収容部材12の導入孔12dは、当該収容部材12の外周面から径方向内方へ向けて延びるように形成されている。また、導入孔12dは、収容部材12の両側面において開口している。導入孔12dは、収容溝12bと連なっており、導入孔12dに対して収容部材12の外方から係止部材13の係止板部13aが導入されると、収容溝12bに達し、当該収容溝12bに収容されている調整部材11の間に挿入されるようになっている。
【0059】
収容部材12の側面と脚部材5の側面とを合わせたとき、係合突出部5b、5bの間において磁石5cが設けられている範囲に調整部材11が配列されるように、当該調整部材11が設けられている。収容溝12bに収容されている調整部材11は磁石5cに吸着されるので、導入孔12dから外部へ出てしまうのを抑制することができる。
【0060】
図7に示すように、基端側筒部材3aの内部に、脚部材5の基端側の一部と、収容部材12の一部とが配置されるようになっている。収容部材12の導入孔12dは、基端側筒部材3aの内部において開口している。また、基端側筒部材3aの内部には、係止部材13および操作部材3eが収容されている。操作部材3eは上下方向に延びる棒材等で構成されている。操作部材3eの上部には、図示しないがレバーが基端側筒部材3aを貫通して外方へ突出するように設けられている。このレバーを外部から操作することで操作部材3eをその軸芯周りに回動させることができるようになっている。
【0061】
操作部材3eの下端部に係止部材13が固定されており、操作部材3eによって回動させることができるようになっている。係止部材13は、水平方向に放射状に延びる3つの係止板部13aを有している。各係止板部13aと、収容部材12の導入孔12dとは同じ高さに配置されている。図7に実線で示す係止位置となるまで係止部材13を回動させると、各係止板部13aがそれぞれ調整装置1の収容部材12の導入孔12dに入り、調整部材11の間に挿入される。
【0062】
一方、図7に仮想線で示す非係止位置となるまで係止部材13を回動させると、各係止板部13aがそれぞれ調整装置1の収容部材12の導入孔12dから出るので、調整部材11に対して係止しなくなる。
【0063】
実施形態2によれば、実施形態1と同じ作用効果を奏することができるのに加えて、係止部材3を基端側筒部材3aの内部に収容することができるので、調整装置1をコンパクトにすることができる。また、3つの調整装置1を1つの係止部材3で操作することができるので、操作性が良好になる。なお、1つの係止部材3で操作する調整装置1の数は3つに限られるものではなく、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0064】
(実施形態3)
図11~15は、本発明の実施形態3に係るものである。実施形態3では、調整装置1を脚立100のアウトリガー101の角度調整に使用している点で実施形態1と異なっており、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0065】
図11に示す脚立100の支柱(第2の部材)102には、アウトリガー(第1の部材)101が回動可能に設けられている。アウトリガー101は上下方向に長い中空部材で構成されている。支柱102の中間部には、アウトリガー101の上端部を支持する上端支持部材103が上側ブラケット104を介して取り付けられている。上側ブラケット104は、支柱102を径方向に挟持するようにして当該支柱102に固定されている。また、支柱102の上側ブラケット104よりも下側には、アウトリガー101の中間部を支持する中間支持部材140が連結棒141および下側ブラケット142を介して取り付けられている。
【0066】
図12に示すように、上側ブラケット104の上部および下部には、脚立100の外方へ突出する上側突出板部104aおよび下側突出板部104bが固定されている。上端支持部材103は、アウトリガー101の上端部が挿入される挿入部103aを有しており、アウトリガー101の上端部は挿入部103aに挿入された状態で例えばピン等の結合部材103bによって結合されている。上端支持部材103には、連結部材103cが設けられている。連結部材103cは、上側ブラケット104の上側突出板部104aの下面に重なるように配置される上側板部103dと、上側ブラケット104の下側突出板部104bの上面に重なるように配置される下側板部103eとを有している。
【0067】
上側突出板部104aと上側板部103dとは、両板部104a、103dを上下方向に貫通するボルト(回動軸)106および当該ボルト106に螺合するナット106bとによって相対回動可能に連結されている。また、下側突出板部104bと下側板部103eとは、両板部104b、103eを上下方向に貫通するボルト(回動軸)107および当該ボルト107に螺合するナット107bとによって相対回動可能に連結されている。
【0068】
図13に示すように、上側突出板部104aの上面には、回動部材108が配置されている。回動部材108の中心部には、ボルト106の軸部106aが挿通する回動部材側挿通孔108aが形成されている。回動部材108の一部は上側突出板部104aを下方へ貫通して上側板部103dに固定されており、回動部材108と上端支持部材103とは一体に回動するようになっている。
【0069】
回動部材108には、複数の調整部材111を収容する収容部材112が固定されている。回動部材108はアウトリガー102と一体化されているので、この回動部材108に固定された収容部材112により、調整部材111をアウトリガー102に対して保持した状態にすることができる。
【0070】
収容部材112に収容される調整部材111は上下方向かつ回動軸である軸部106aの径方向に延びる板状に形成されている。調整部材111の先端側には先鋭部111aが形成されている。調整部材111の側面は、係止部材113の挿入方向手前側から奥側まで連続して当該係止部材113に当接する調整部材側当接面111bである。収容部材112は、調整部材111の先鋭部111aを露出させるとともに、係止部材113を導入する開口部(導入孔)112aを有している。
【0071】
一方、上側突出板部104aは、収容部材112よりも外方へ延出するように形成されている。上側突出板部104aの上面には、係止部材113を保持する保持部材109が固定されている。保持部材109には、収容部材112の開口部112aに対向する部分に、係止部材113を差し込む差し込み孔109aが形成されている。
【0072】
係止部材113は、調整部材111の調整部材側当接面111bに沿って延びる係止板部113aと、把持部113bとを備えている。係止板部113aは、調整部材側当接面111bに対して挿入方向手前側から奥側まで連続して当接する係止部材側当接面113cを有している。係止板部113aは、保持部材109の差し込み孔109aから収容部材112の開口部112aに挿入可能になっており、係止板部113aを開口部112aに挿入することで調整部材111の間に挿入することができる。
【0073】
アウトリガー101の角度を調整する際には、まず、係止部材113の把持部113bを持って係止板部113aを収容部材112の開口部112aから抜く操作を行うと、係止板部113aが調整部材111の間から抜ける。これにより、収容部材112が保持部材109に対してフリーな状態になるので、収容部材112を回動部材108と共に回動させることが可能になり、アウトリガー101の角度を調整することができる。
【0074】
アウトリガー101を任意の角度となるまで回動させた後、係止部材113の係止板部113aを収容部材112の開口部112aに差し込むと、係止板部113aが調整部材111の間に挿入されて調整部材111に係止した状態になる。これにより収容部材112の保持部材109に対する回動が不能になるので、アウトリガー101が支柱に102に固定された状態になる。
【0075】
また、図11に示すように、下側ブラケット142は、支柱102を挟持するようにして取り付けられている。また、中間支持部材140は、アウトリガー101の外面を囲むように形成されており、上下方向に長い中空部材で構成されている。中間支持部材140と下側ブラケット142とは連結棒141によって連結されている。連結棒141の中間支持部材140側の端部は、中間支持部材140に対して回動可能に取り付けられており、アウトリガー101の角度調整が許容されるようになっている。また、連結棒141の下側ブラケット142側の端部は、下側ブラケット142に対して回動可能に取り付けられている。中間支持部材140とアウトリガー101とは連結ピン(図示せず)等によって固定することができる。
【0076】
この実施形態3によれば、アウトリガー101の角度を調整することができ、この場合に、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0077】
(実施形態4)
図14および図15は、本発明の実施形態4に係るものであり、この実施形態4では、調整装置1を実施形態3の脚立100のアウトリガー101の開き調整に使用している点で実施形態1と異なっており、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0078】
図14および図15に示すように、アウトリガー(第1の部材)101を中間支持部材(第2の部材)140の内部に挿入した状態で、中間支持部材140をアウトリガー101の長手方向に相対的に移動させることにより、アウトリガー101の支柱102に対する開き角度を調整することができる。
【0079】
図15に示すように、アウトリガー101の内部には、調整部材211を収容する収容部材(第1保持部)212が設けられており、この収容部材212に収容される調整部材211は、アウトリガー101の長手方向に並ぶように収容されている。調整部材211の先端部には、先鋭部211aが形成され、また、調整部材211の側面には調整部材側当接面211bが形成されている。アウトリガー101の調整部材211を収容する部分は、当該調整部材211における係止部材213の挿入方向手前側を露出させる開口部101aを有している。また、係止部材213は、係止部材側当接面213cを有する係止板部213aと把持部213bとを備えている。
【0080】
中間支持部材140には、係止部材213の係止板部213aを差し込む差し込み孔140aがアウトリガー101の開口部101aと一致するように形成されている。また、中間支持部材140には、保持部材(第2保持部)146が固定されている。保持部材146には、差し込み孔140aと一致するように係止板部213aの挿入孔146aが形成されている。
【0081】
アウトリガー101の開きを調整する際には、まず、係止部材213の把持部213bを持って係止板部213aを収容部材212から抜く操作を行うと、係止板部213aが調整部材211の間から抜ける。これにより、アウトリガー101と中間支持部材140とがフリーな状態になるので、アウトリガー101を中間支持部材140に対して長手方向に変位させてアウトリガー101の開きを調整することができる。
【0082】
アウトリガー101を任意の開き角度とした後、係止部材213の係止板部213aを収容部材212に差し込むと、係止板部213aが調整部材211の間に挿入されて調整部材211に係止した状態になる。これにより収容部材212の保持部材146に対する変位が不能になるので、アウトリガー101が中間支持部材140に固定された状態になる。
【0083】
この実施形態4によれば、アウトリガー101の開きを調整することができ、この場合に、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。なお、この実施形態4の構造を利用することで、第1の部材と第2の部材と長手方向の相対位置を変更することができるので、長さ調整を行うことができる。長さ調整を行う場合には、例えば実施形態1の基端側筒部材3aと先端側筒部材3bとを備えた支柱3に実施形態5を適用すればよい。
【0084】
(実施形態5)
図16図18は、本発明の実施形態5に係るものであり、この実施形態5では、調整装置1を自動車用シート300の角度調整に使用している点で実施形態1と異なっており、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。なお、以下の説明において、前とは車両前側、後とは車両後側、右とは車両右側、左とは車両左側を示すものとする。自動車用シート300は、運転席や助手席であってもよいし、2列目や3列目のシートであってもよい。自動車用以外のシートに本発明を適用することもできる。
【0085】
自動車用シート300は、車体のフロアにスライドレール(図示せず)を介して固定されるシートクッション部301と、シートクッション部301の後端部に取り付けられるシートバック部302とを有している。シートバック部302は、シートクッション部301に対してリクライニング角度の調整が行えるように、左右方向に延びる揺動軸周りに揺動可能に取り付けられている。
【0086】
図17および図18に示すように、シートクッション部301の右側面には、ウォームケーシング303が固定されている。ウォームケーシング303の内部には、ウォームホイール303aと、ウォームギヤ303bとが内蔵されている。ウォームホイール303aは、上記揺動軸が回転中心となるように配置され、ウォームケーシング303に対して上記揺動軸周りに回転可能に支持されている。ウォームギヤ303bは、ウォームホイール303aの上部に噛み合うように配置され、前後方向に延びる軸周りに回転可能にウォームケーシング303に支持されている。ウォームギヤ303bには操作軸303cが設けられており、この操作軸303cはウォームケーシング303から後側へ突出している。操作軸303cの後端部には、操作部303dが設けられている。ウォームケーシング303の中心部には、貫通孔303eが形成されている。また、ウォームホイール303aの内周面にはキー溝303fが形成されている。
【0087】
ウォームケーシング303の右側面には、バネケーシング304が固定されている。バネケーシング304の中心部には、左右方向に貫通する筒状部材304aがバネケーシング304に対して上記揺動軸周りに回転可能に設けられている。筒状部材304aは、ウォームケーシング303の貫通孔303eからウォームホイール303aの内側へ挿入されている。筒状部材304aの外周面には、キー溝304bが形成されている。ウォームホイール303aのキー溝303fと、筒状部材304aのキー溝304bにキー306が嵌入されており、ウォームホイール303aと筒状部材304aとが一体化されている。
【0088】
筒状部材304aの周囲には巻きバネ305が配設されており、この巻きバネ305がバネケーシング304に収容されている。巻きバネ305の内端部は筒状部材304aの外周面に固定されている。一方、巻きバネ305の外端部はバネケーシング304の内周面に固定されている。
【0089】
図17に示すように、バネケーシング304の中心部には、ウォームケーシング303の貫通孔303eと一致するように貫通孔304eが形成されている。バネケーシング304の右側面には、係合突出部(固定部)307が右側へ向けて突出している。この係合突出部307は、実施形態1の係合突出部5bと同じように構成することができ、上記揺動軸周りに円弧状に延びている。係合突出部307は、バネケーシング304およびウォームケーシング303を介してシートバック部302に固定されることになる。また、バネケーシング304の外周面には、ロック爪304fが形成されている。
【0090】
バネケーシング304の右側面には収容部材312が配置されている。収容部材312の中心部には、バネケーシング304の貫通孔304eと一致するように、収容部材側挿通孔312aが形成されている。図18に示すように、収容部材312には、複数の調整部材311を収容する収容溝312bが形成されている。収容部材312には、調整部材311をまとめておくためのバネ308が設けられている。このバネ308の中間部には、収容部材側挿通孔312aと一致する形状の環状部308aが形成されている。環状部308aには、後述するボルト60の軸部60aが挿通されるようになっている。
【0091】
バネ308の両端部には、調整部材311に当接する突部308b、308bが形成されている。突部308b、308b同士が接近する方向に付勢されており、これら突部308b、308bの間に調整部材311を配置しておくことで、調整部材311を収容溝312b内でまとめておくことができるようになっている。収容溝312bには、調整部材311が無い部分に、係合突出部307が差し込まれるようになっている。また、収容部材312には、係止部材313が差し込まれる導入孔312dが形成されている。
【0092】
収容部材312の外周面には、バネケーシング304のロック爪304fに係止するロックフック312hが揺動可能に設けられている。このロックフック312hは、シートバック部302が図16に示す位置まで倒れると、ロック爪304fに係止するようになっている。ロックフック312hは、手動で非係止状態にすることができ、ロック爪304fに係止した後、ロック爪304fから離脱させることもできるようになっている。なお、図示しないが、一般的に、シートバック部302は前方へ倒れる方向に常時付勢されている。
【0093】
収容部材312の右側面には、固定プレート350が固定されている。固定プレート350の中心部には、収容部材側挿通孔312aに一致する貫通孔350aが形成されている。固定プレート350には、係止部材313を左右方向に移動可能に支持する支持部材351が設けられている。
【0094】
固定プレート350および収容部材312は、ボルト60によってシートクッション部301に固定されている。固定プレート350および収容部材312と、ボルト60とは例えばキー等で結合しておくことができる。ボルト60は、固定プレート350の貫通孔350a、収容部材312の収容部材側挿通孔312a、バネケーシング304の貫通孔304eおよびウォームケーシング303の貫通孔303eに挿通された状態で、当該ボルト60の軸部60aの先端部がシートクッション部301のねじ孔(図示せず)に螺合するようになっている。螺合状態において、固定プレート350および収容部材312は、バネケーシング304に対して固定されておらず、かつ、ボルト60によってシートクッション部301に固定されることになるので、シートバック部302が揺動したとき、固定プレート350および収容部材312は回動しない。
【0095】
したがって、係止部材313を左方向へ移動させて調整部材311の間から抜くと、収容部材312とバネケーシング304とがフリーな状態になるので、シートバック部302を前後方向に揺動させることが可能になる。シートバック部302を所望の揺動角度にした状態で、係止部材313を右方向へ移動させると係止部材313が調整部材311の間に挿入されて調整部材311に係止した状態になる。これにより、シートバック部302がシートクッション部301に固定されて揺動不能になる。
【0096】
通常の乗車時に、乗員が後方に向けてシートバック部302を押したりすることがあるが、このような力ではシートバック部302が揺動しないように、巻きバネ305の付勢力が設定されている。巻きバネ305の付勢力は、操作部303dを回転させることによって調整することができる。操作部303dを回転させると、ウォームギヤ303bが回転し、これによりウォームホイール303aが揺動軸周りに回転することになる。ウォームホイール303aと、筒状部材304aとはキー306によって結合されているので、筒状部材304aを回動させることができる。この筒状部材304aには巻きバネ305の内端部が固定されているので、巻きバネ305を締める方向または緩める方向に調整することができる。
【0097】
一方、後方から衝突された場合のように、シートバック部302に対して後方への大きな衝撃力が作用すると、収容部材312とシートクッション部301との間には上記巻きバネ305が介在しているので、巻きバネ305の付勢力に抗してシートクッション部301を後方へ揺動させることができる。これにより、乗員への衝撃力を緩和させることができる。そして、図16に示す位置までシートクッション部301が後方へ揺動すると、ロックフック312hがロック爪304fに係止する。シートバック部302が後方へ倒れ始める時の荷重は、巻きバネ305の付勢力によって設定することができる。
【0098】
この実施形態5によれば、シートバック部302の揺動角度を調整することができ、この場合に、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0099】
(実施形態6)
図19及び図20は、本発明の実施形態6に係るものであり、この実施形態6では、調整装置1をドアクローザ400の角度調整に使用している点で実施形態1と異なっており、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0100】
ドアクローザ400は、ドア(図示せず)に対して閉方向の力を作用させるための装置であり、ドアの上部に取り付けられる本体部401と、本体部401から突出するアーム402とを備えている。アーム402の先端部は、一般的にドア枠(図示せず)に対して回動可能に取り付けられている。
【0101】
本体部401は、上下方向に延びる軸403(図20に上端部のみ示す)を備えており、この軸403に対して本体部401の内部で発生した閉方向の力(バネ力)が伝達されるようになっている。図示しないが、軸403の上端部は、本体部401の上面から上方へ突出しており、この上端部にアーム402の基端部が固定されている。軸403の下端部は、本体部401の下面から下方へ突出している。軸403の下端部には、嵌合部材414が当該軸403に嵌合している。軸403と嵌合部材414とは一体化され、相対回転不能になっている。
【0102】
本体部401の下面には、収容部材412が配置されている。収容部材412の中心部には、軸403が挿通される収容部材側挿通孔(図示せず)が形成されている。軸403が収容部材側挿通孔に挿通された状態で、軸403と収容部材412とが係合して相対回転不能になっている。また、収容部材412には、複数の調整部材411を収容する収容溝412bが形成されている。収容部材412の下部はカバー450によって閉塞されている。図20ではこのカバー450を省略している。また、収容部材412には、スペーサ部材407も収容されている。スペーサ部材407は収容部材412に固定されている。
【0103】
収容部材412には、係止部材413の係止板部413aを差し込む差し込み孔412dが形成されている。係止部材413は、係止部材側当接面413cを有する係止板部413aと把持部413bとを備えている。
【0104】
本体部401には、係止部材413を保持するための保持部材451が固定されている。収容部材412は保持部材451の内部に収容されるようになっており、保持部材451と収容部材412とは軸403周りに相対的に回動可能となっている。保持部材451には、係止板部413aが挿入される保持孔451aが差し込み孔412dと一致するように形成されており、係止板部413aは保持孔451aに挿入された状態で保持されるようになっている。
【0105】
したがって、係止部材413を手前側へ移動させて調整部材411の間から抜くと、収容部材412と保持部材451とがフリーな状態になるので、軸403の本体部401に対する回動が許容されて通常の開閉動作を行うことができる。ドアを開き、所望の開き角度にした状態で、係止部材413を奥側へ移動させると係止部材413が調整部材411の間に挿入されて調整部材411に係止した状態になる。これにより、軸403が本体部401に固定されて回動不能になるので、ドアが所望の開き角度で固定される。
【0106】
この実施形態6によれば、ドアの開き角度を調整することができ、この場合に、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0107】
図20に示すように、係止部材413の先端部を嵌合部材414に形成した凹部414aに差し込むようにすることもできる。例えば、嵌合部材414の外周面に窪みからなる凹部414aを形成しておき、係止部材413を係止位置まで進出させた状態で係止部材413の先端部を嵌合部材414の凹部414aに差し込むことで、より強固にロックすることができる。
【0108】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えば、本発明の調整装置は、高さ調整に用いることもできる。また、本発明の調整装置は、例えば、突っ張り棒、自転車やオートバイのスタンドの長さ調整を行う場合に適用することができる。スタンドの場合、角度調整を行う場合や長さ調整を行う場合に本発明を適用することができる。また、本発明の調整装置は、歩行器の高さ調整、机や椅子等の高さ調整に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上説明したように、本発明に係る調整装置は、例えば三脚、脚立等の角度調整や長さ調整を行う場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 調整蔵置
4 支持板(第1の部材)
4b 差し込み孔(第2保持部)
5 脚部材(第2の部材)
5b 係合突出部(固定部)
5c 磁石
6 ボルト(支軸)
11 調整部材
11b 調整部材側当接面
12 収容部材
12b 収容溝(第1保持部)
13 係止部材
13c 係止部材側当接面
109a 差し込み孔
112a 開口部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20