(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】レーザ照射装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20230913BHJP
B23K 26/066 20140101ALI20230913BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20230913BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20230913BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
B23K26/066
B23K26/073
B23K26/082
G02B26/08 E
(21)【出願番号】P 2019230844
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】下浦 厚志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良和
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4176925(US,A)
【文献】特開平05-237676(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0267345(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08 - 26/10
B23K 26/066
B23K 26/073
B23K 26/082
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源と、
前記光源から出射されたレーザ光の一部を通過させるスリットが形成されたマスクと、
前記スリットを通過したレーザ光が通過するスキャン光学系と、
前記スキャン光学系を通過したスリット像を縮小して加工面に投影する縮小光学系と、
を備え、
前記スキャン光学系は、前記スリットを通過したレーザ光を平行光にする第1光学部材と、前記第1光学部材を通過したレーザ光を反射するスキャンミラーであって、回動可能に設けられたスキャンミラーと、前記スキャンミラーで反射されたレーザ光を中間像面に結像させる第2光学部材と、を有し、
前記縮小光学系は、前記中間像面に結像した前記スリット像を縮小する第3光学部材と、前記第3光学部材の焦点位置に開口位置がくるように設けられた対物レンズと、を有する
ことを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項2】
前記第2光学部材は、fθレンズであることを特徴とする請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項3】
前記第2光学部材は、テレセントリック型のfθレンズであることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ照射装置。
【請求項4】
前記スキャンミラーは、第1ミラー及び第2ミラーを有し、
前記第1ミラーの反射面である第1反射面と、前記第2ミラーの反射面である第2反射面とは、異なる方向を向いており、
前記第1反射面の回動中心と、前記第2反射面の回動中心とは、ねじれの位置にある
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のレーザ照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、相互に平行な2つの辺を有する貫通孔を有するマスクでレーザビームの断面を整形し、反射ミラーでビームを反射し、ガルバノスキャナでビームを2次元方向に走査し、fθレンズで貫通孔の像を加工対象物の表面上に結像させて、加工対象物の一部を除去する加工を行うレーザ加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引用文献1に記載の発明では、矩形の像(ビームスポット)を加工対象物上に結像させるが、ビームスポットの大きさを小さくすることは考慮されていない。すなわち、引用文献1に記載の発明では、任意の形状の微小な像を結像させることはできない。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、レーザ光を走査しつつ、精緻な像を結像させることができるレーザ照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るレーザ照射装置は、例えば、レーザ光を出射する光源と、前記光源から出射されたレーザ光の一部を通過させるスリットが形成されたマスクと、前記スリットを通過したレーザ光が通過するスキャン光学系と、前記スキャン光学系を通過したスリット像を縮小して加工面に投影する縮小光学系と、を備え、前記スキャン光学系は、前記スリットを通過したレーザ光を平行光にする第1光学部材と、前記第1光学部材を通過したレーザ光を反射するスキャンミラーであって、回動可能に設けられたスキャンミラーと、前記スキャンミラーで反射されたレーザ光を中間像面に結像させる第2光学部材と、を有し、前記縮小光学系は、前記中間像面に結像した前記スリット像を縮小する第3光学部材と、前記第3光学部材の焦点位置に開口位置がくるように設けられた対物レンズと、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るレーザ照射装置によれば、レーザ光の強度分布を均一化してスリットで成形し、スリットを通過したレーザ光を第1光学部材で平行光にし、第2光学部材でレーザ光を中間像面に結像させるとともに、スキャンミラーにより中間像面上でレーザ光を走査する。また、縮小光学系は、中間像面に結像したスリット像を縮小して加工対象物の加工面に結像させる。このような構成とすることで、レーザ光を走査しつつ、精緻な像を結像させることができる。
【0008】
ここで、前記第2光学部材は、fθレンズであってもよい。これにより、第3光学部材と対物レンズとの距離を常に一定にすることができる。
【0009】
ここで、前記第2光学部材は、テレセントリック型のfθレンズであってもよい。これにより、レーザ光が対物レンズに全て入射するため、レーザ光を広範囲に走査してもエネルギーの損失が発生しない。
【0010】
ここで、前記スキャンミラーは、第1ミラー及び第2ミラーを有し、前記第1ミラーの反射面である第1反射面と、前記第2ミラーの反射面である第2反射面とは、異なる方向を向いており、前記第1反射面の回動中心と、前記第2反射面の回動中心とは、ねじれの位置にあってもよい。これにより、簡単な構成でレーザ光を二次元走査することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レーザ光を走査しつつ、精緻な像を結像させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のレーザ照射装置1の概略を示す図である。
【
図3】スキャンミラー16でレーザ光を振った場合の光路を模式的に示す図であり、(A)は(B)、(C)、(D)に示すすべての光線を重ねた状態を示し、(B)はスキャンミラー16における反射前後の主光線のなす角度が鈍角である場合を示し、(C)は主光線が光軸上にある(スキャンミラー16における反射前後の主光線のなす角度が直角である)場合を示し、(D)はスキャンミラー16における反射前後の主光線のなす角度が鋭角である場合を示す。
【
図4】加工対象物100の概略を模式的に示す図であり、(A)は側面図、(B)は平面図である。
【
図5】従来のレーザ照射装置110の概略を示す図である。
【
図6】レーザ照射装置110において、スキャンミラー16でレーザ光を振った場合の光路を模式的に示す図であり、(A)は(B)、(C)、(D)に示すすべての光線を重ねた状態を示し、(B)はスキャンミラー16における反射前後の主光線のなす角度が鋭角である場合を示し、(C)は主光線が光軸上にある(スキャンミラー16における反射前後の主光線のなす角度が直角である)場合を示し、(D)はスキャンミラー16における反射前後の主光線のなす角度が鈍角である場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明のレーザ照射装置は、xy方向にレーザ光を走査して加工対象物に加工を行うものである。
【0014】
図1は、本発明のレーザ照射装置1の概略を示す図である。レーザ照射装置1は、主として、光源10と、ホモジナイザ11と、マスク12と、スキャン光学系13と、縮小光学系14と、を有し、加工対象物100にレーザ光を照射する。
【0015】
ここで、加工対象物100について説明する。
図4は、加工対象物100の概略を模式的に示す図であり、(A)は側面図、(B)は平面図である。加工対象物100は、サファイア基板101上にLEDチップ102が形成されたものである。レーザ照射装置1は、サファイア基板101とLEDチップ102との界面にレーザを照射して、LEDチップ102をサファイア基板101から剥離する。LEDチップ102の大きさは、幅d1が略30~70μm、高さd2が略10~30μmである。
【0016】
LEDチップ102を外して基板(図示省略)に実装することで表示装置を製造するため、所望のLEDチップ102のみをサファイア基板101から剥離しなければならない。例えば、サファイア基板101にLEDチップ102のRGBが順に並んでいるときに、まず基板にRの画素のみを実装し、次にGの画素を実装し、最後にBの画素を実装することで表示装置を製造する場合がある。このような場合には、3個おきにLEDチップ102をサファイア基板101から剥離しなければならない。
【0017】
図4では、まずLEDチップ102aにレーザ光Lを照射し、次に3個離れた位置に配置されたLEDチップ102bにレーザ光Lを照射する例を示している。
【0018】
所望のLEDチップ102のみ剥離するため、レーザ照射装置1が照射するレーザ光Lは、LEDチップ102の形状に略一致している必要がある。また、隣接するLEDチップ102にレーザ光Lを照射しないようにするため、数10μmオーダーの精度でレーザ光Lを照射する必要がある。さらに、生産効率を高くするため、レーザ光の照射位置を素早く変更する必要がある。
【0019】
図1の説明に戻る。光源10は、例えば固体レーザ発振器であり、パルス状のレーザ光を出射する。
【0020】
ホモジナイザ11は、光源10から照射されたレーザ光の強度分布を均一化する光学系である。光源10から照射される光は、一般的に不均一な強度分布を有する(例えば、ガウシアンビーム)ため、ホモジナイザ11によりレーザ光の強度分布を均一にし、LEDチップ102に均一な強度のレーザ光を照射し、1個のLEDチップ102を確実にサファイア基板101から剥離する。
【0021】
マスク12は、ホモジナイザ11を通過したレーザ光の一部を通過させるスリット12aが形成された略板状の部材である。スリット12aの形状は、加工対象物100に照射するレーザ光の形状、ここではLEDチップ102の形状と相似である。縮小光学系14にて縮小するため、スリット12aの大きさは、加工対象物100に照射するレーザ光の形状より大きく、本実施の形態では略20倍である。
【0022】
スキャン光学系13は、スリット12aを通過したレーザ光が通過するものであり、スリット12aで形成された照射パターンを中間像面20に結像させる。スキャン光学系13は、主として、第1レンズ15と、スキャンミラー16と、第2レンズ17とを有する。
【0023】
第1レンズ15は、例えばチューブレンズであり、スリット12aを通過したレーザ光を平行光にする。
【0024】
スキャンミラー16は、第1レンズ15を通過したレーザ光を反射するものであり、第1ミラー16a及び第2ミラー16bを有する。第1ミラー16a及び第2ミラー16bは、それぞれ、レーザ光が反射する反射面16c、16dを有する。反射面16cと反射面16dとは、異なる方向を向いている。
【0025】
第1ミラー16a及び第2ミラー16bは、それぞれ、反射面16c、16dの向きが変えられるように回動可能に設けられている。反射面16cの回動中心16eは、第1ミラー16aの短辺に沿った線であり、第1ミラー16aの長手方向の略中央に配置されている。また、反射面16dの回動中心16fは、第2ミラー16bの短辺に沿った線であり、第2ミラー16bの長手方向の略中央に配置されている。回動中心16eと、回動中心16fの回動中心とは、ねじれの位置にある。
【0026】
第1ミラー16aを回動中心16eを中心に回動させることで、反射面16cで反射したレーザ光は、第2ミラー16b上で線に沿って移動し、第2ミラー16bが固定されている場合には、反射面16dで反射したレーザ光は、第2レンズ17上(すなわち、中間像面20上)で線に沿って移動する。また、第2ミラー16bを回動中心16fを中心に回動させることで、反射面16dのある一点に入射したレーザ光は、第2レンズ17上(すなわち、中間像面20上)で線に沿って移動する。そして、第1ミラー16aを回動させたときのレーザ光の走査方向と、第2ミラー16bを回動させたときのレーザ光の走査方向とは略直交する。これにより、スキャンミラー16は、スリット12aで形成された照射パターンを中間像面20上で二次元走査することができる。また、スキャンミラー16を2枚構成とすることで、簡単な構成でレーザ光を二次元走査することができる。
【0027】
第2レンズ17は、スキャンミラー16で反射されたレーザ光を、中間像面20に結像させるレンズである。本実施の形態では、スキャンミラー16で反射されたレーザ光が角度θで入射したときに、像高Yと入射角度との間に比例関係(Y=f・θ)が成立するfθレンズを第2レンズ17として用いる。特に、本実施の形態では、出力光線が光軸と平行な点に結像するテレセントリック型のfθレンズを第2レンズ17として用いる。第2レンズ17を通過したレーザ光は、中間像面20で結像し、縮小光学系14に入射する。
【0028】
図2は、レーザ照射装置1の光路図である。
図2では、主光線、上光線、下光線を図示している。
図2の実線は、主光線が光軸上にある場合であり、
図2の点線は、主光線が光軸上からずれた(スキャンミラー16でレーザ光が振れた)場合である。
【0029】
スリット12aを通過した光は、広がりながら第1レンズ15に入射し、第1レンズ15でレーザ光が平行光に変換され、スキャンミラー16でレーザ光が反射される。スキャンミラー16において光軸の向きが変えられない(レーザ光が振られない)場合には、
図2の実線で示すように、主光線の向きは変わらず、光軸上にある。それに対し、スキャンミラー16において光軸の向きが変えられた(レーザ光が振られた)場合には、
図2の点線で示すように、主光線の向きが変わり、レーザ光が第2レンズ17に斜めに入射する。
【0030】
第2レンズ17に斜めに入射したレーザ光の主光線の向きは、斜めに入射しなかったレーザ光の主光線の向きと略平行になる。すなわち、第2レンズ17は、スキャンミラー16によりレーザ光の角度が変化したとしても、中間像面20上の主光線の角度を平行にする。また、第2レンズ17と縮小光学系14との間はテレセントリックであるため、第2レンズ17におけるレーザ光の主光線の振れ(第2レンズ17の中心と、レーザ光の主光線との位置ずれ)と、中間像面20におけるレーザ光の主光線の振れ(中間像面20の中心と、レーザ光の主光線との位置ずれ)とは略一致する。
【0031】
図1の説明に戻る。縮小光学系14は、スキャン光学系を通過した光を縮小するものであり、主として、第3レンズ18と、対物レンズ19とを有する。本実施の形態では、縮小光学系14は、中間像面20の照射パターンを略1/20倍に縮小して、加工対象物100の加工面に投影する。
【0032】
第3レンズ18は、第2レンズ17を通過し、中間像面20で結像したスリット像が入射するレンズであり、例えばチューブレンズである。中間像面20と第3レンズ18との距離は、第3レンズ18の焦点距離と略一致する。第3レンズ18は、中間像面20の照射パターンを略1/20倍に縮小して、対物レンズ19に入射させる。
【0033】
対物レンズ19は、第3レンズ18で縮小された中間像面20の照射パターンを加工対象物100の加工面に結像させる。対物レンズ19は、第3レンズ18の焦点位置に対物レンズ19の開口位置がくるように設けられている。本実施の形態では、第2レンズ17がfθレンズであり、第2レンズ17と第3レンズ18との間がテレセントリックであるため、第3レンズ18と対物レンズ19との距離が常に一定である。
【0034】
図2に示すように、主光線の交差点を対物レンズ19の瞳位置とすることで、エネルギーの損失を無くすことができる。
【0035】
図3は、スキャンミラー16でレーザ光を振った場合の光路を模式的に示す図であり、(A)は(B)、(C)、(D)に示すすべての光線を重ねた状態を示し、(B)はスキャンミラー16における反射前後の主光線のなす角度が鈍角である場合を示し、(C)は主光線が光軸上にある(スキャンミラー16における反射前後の主光線のなす角度が直角である)場合を示し、(D)はスキャンミラー16における反射前後の主光線のなす角度が鋭角である場合を示す。
【0036】
主光線が光軸上にある場合も主光線が光軸上に無い場合も、主光線、上光線及び下光線は、対物レンズ19上の同じ位置に入射する。したがって、対物レンズ19の開口部においてエネルギーロスは発生しない。
【0037】
本実施の形態によれば、スキャン光学系13でスリット像を中間像面20に結像し、それを縮小光学系14で縮小するため、レーザ光を走査しつつ、精緻な像を結像させることができる。
【0038】
また、本実施の形態によれば、テレセントリック型のfθレンズでスリット像を中間像面20に結像し、それを縮小光学系14で縮小するため、スキャンミラー16により中間像面20上でレーザ光を振っても、レーザ光が対物レンズ19の瞳上の同じ位置に入射する。したがって、レーザエネルギーの損失を無くすことができる。
【0039】
図5は、従来のレーザ照射装置110の概略を示す図である。レーザ照射装置110は、主として、光源10と、ホモジナイザ11と、マスク12と、結像レンズ21と、スキャンミラー16と、対物レンズ22(ここでは、fθレンズ)とを有する。
【0040】
レーザ照射装置110では、スキャンミラー16を中心にしてスキャン時のレーザ光の光線の角度が変わるため、対物レンズ22の開口部においてレーザ光の一部が対物レンズ22の開口部から外れるおそれがある。
【0041】
図6は、レーザ照射装置110において、スキャンミラー16でレーザ光を振った場合の光路を模式的に示す図であり、(A)は(B)、(C)、(D)に示すすべての光線を重ねた状態を示し、(B)はスキャンミラー16における反射前後の主光線のなす角度が鋭角である場合を示し、(C)は主光線が光軸上にある(スキャンミラー16における反射前後の主光線のなす角度が直角である)場合を示し、(D)はスキャンミラー16における反射前後の主光線のなす角度が鈍角である場合を示す。
【0042】
主光線が光軸上にある場合は、
図6(C)に示すように、対物レンズ22に全ての光線が入射するためエネルギー損失は発生しないが、主光線が光軸上にない場合は、
図6(B)、(D)に示すように、一部の光線が対物レンズ19から外れてしまう。
【0043】
例えば、倍率20倍、N/Aが0.36、実視野がφ1.2mm、開口径がφ7.7mmの対物レンズを用いるとする。スキャン位置を±0.6mmとすると、対物レンズ22への主光線の入射角は±3.43°となる。スキャンミラー16の位置が対物レンズ22の開口部から50mm離れているとすると、対物レンズ22の開口部における主光線の位置ずれは±3mmになる。
【0044】
つまり、対物レンズの開口径φ7.7mmに対し、主光線が±3mmもずれてしまう。したがって、
図6(B)、(D)に示すようにレーザ光が振られた場合には、レーザ光の一部が対物レンズに入射せず、エネルギーの損失が発生してしまう。
【0045】
それに対し、本実施の形態では、スキャンミラー16でレーザ光を振っても、レーザ光が対物レンズ19の瞳上の同じ位置に入射するため、エネルギーの損失が発生しない。
【0046】
また、本実施の形態では、ホモジナイザ11でレーザ光の強度分布を均一化し、スリット12aでビームを整形しているため、LEDチップ102全体に均一な強度のレーザ光を照射することができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、第2レンズ17がfθレンズであり、第2レンズ17と第3レンズ18との間がテレセントリックであったが、第2レンズ17はfθレンズに限られない。ただし、第2レンズ17と第3レンズ18との間がテレセントリックにならないレンズを第2レンズ17として用いる場合には、第3レンズ18の焦点距離の変化に応じて第3レンズ18と対物レンズ19との距離を動かす必要がある。
【0048】
また、本実施の形態では、スキャンミラー16が2枚のミラー(第1ミラー16a及び第2ミラー16b)を有したが、スキャンミラー16の構成はこれに限られない。例えば、スキャンミラーが有するミラーは1枚でもよい。その1枚のミラーが、1方向に回動可能である場合には1次元の走査が可能であり、2方向に回動可能である場合には2次元の走査が可能である。ただし、1枚のミラーでレーザ光を二次元走査しようとすると構成が複雑になるため、2枚のミラーで2次元走査することが望ましい。
【0049】
また、本実施の形態では、光源10から出射されたレーザ光の強度分布がホモジナイザ11で均一化され、ホモジナイザ11を通過したレーザ光の一部がスリット12aを通過したが、ホモジナイザ11は必須ではない。例えば、光源10から出射されたレーザ光(ガウシアンビーム)のうちの強度の強い部分のみを使用する(スリット12aを通過させる)場合も、ある程度均一な照射が可能となる。ただし、エネルギー損失の発生を減らすためには、ホモジナイザ11で強度分布が均一化されたレーザ光を用いることが望ましい。
【0050】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0051】
例えば、本発明のレーザ照射装置は、xy方向にレーザ光を走査して加工対象物に加工を行う様々な装置、例えば、レーザアニール装置に用いることができる。すなわち、本発明は、スキャンミラーを用いて素早くレーザ光を2次元方向に走査することが要求される様々な装置に適用することができる。
【0052】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、略平行とは、厳密に平行の場合には限られない。また、例えば、略矩形形状とは、厳密に矩形形状の場合には限られない。また、例えば、単に平行、直交、同一等と表現する場合において、厳密に平行、直交、同一等の場合のみでなく、略平行、略直交、略同一等の場合を含むものとする。
【符号の説明】
【0053】
1 :レーザ照射装置
10 :光源
11 :ホモジナイザ
12 :マスク
12a :スリット
13 :スキャン光学系
14 :縮小光学系
15 :第1レンズ
16 :スキャンミラー
16a :第1ミラー
16b :第2ミラー
16c、16d:反射面
16e、16f:回動中心
17 :第2レンズ
18 :第3レンズ
19 :対物レンズ
20 :中間像面
21 :結像レンズ
22 :対物レンズ
100 :加工対象物
101 :サファイア基板
102、102a、102b:LEDチップ
110 :レーザ照射装置