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特許7348649生物検体中におけるレベルを定量化するための標準としての、ジカルボン酸脂肪酸二量体及びその誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】生物検体中におけるレベルを定量化するための標準としての、ジカルボン酸脂肪酸二量体及びその誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07C 57/13 20060101AFI20230913BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20230913BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230913BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230913BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230913BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20230913BHJP
   C07C 309/67 20060101ALI20230913BHJP
   C07C 51/16 20060101ALI20230913BHJP
   C07C 51/42 20060101ALI20230913BHJP
   C07B 59/00 20060101ALN20230913BHJP
【FI】
C07C57/13 CSP
G01N27/62 V
G01N33/50 D
G01N33/53 S
G01N33/574 Z
G01N33/536 E
C07C309/67
C07C51/16
C07C51/42
C07B59/00
【請求項の数】 46
(21)【出願番号】P 2019567997
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 CA2018050729
(87)【国際公開番号】W WO2018227306
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】62/520,292
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】318016685
【氏名又は名称】メッド-ライフ ディスカバリーズ エルピー
(74)【復代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤシンゲ ドゥシュマンティ
(72)【発明者】
【氏名】リッチー ショーン
(72)【発明者】
【氏名】レヴィー ダニエル イー.
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-508091(JP,A)
【文献】特表2013-500275(JP,A)
【文献】特表2013-506142(JP,A)
【文献】Ritchie, Shawn A. 他,Low-serum GTA-446 anti-inflammatory fatty acid levels as a new risk factor for colon cancer,International Journal of Cancer,2013年,132(2),355-362
【文献】Ritchie, Shawn A. 他,Reduced levels of hydroxylated, polyunsaturated ultra long-chain fatty acids in the serum of colorectal cancer patients: implications for early screening and detection,BMC Medicine,2010年,8(1),13-22
【文献】Chen, Yingrong 他,Metabolomic profiling of human serum in lung cancer patients using liquid chromatography/hybrid quadrupole time-of-flight mass spectrometry and gas chromatography/mass spectrometry,Journal of Cancer Research and Clinical Oncology,2015年,141(4),705-718
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C、G01N、C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I若しくは式III:
【化1】
の構造を有する化合物、その塩又は同位体標識化合物。
【請求項2】
化合物、その塩又は同位体標識化合物が単離化合物である、請求項1に記載の化合物、その塩又は同位体標識化合物
【請求項3】
化合物、その塩又は同位体標識化合物が合成的に調製された化合物である、請求項1又は2に記載の化合物、その塩又は同位体標識化合物
【請求項4】
化合物、その塩又は同位体標識化合物が解析標準化合物である、請求項1~3のいずれかに記載の化合物、その塩又は同位体標識化合物
【請求項5】
式I若しくは式III:
【化2】
の構造内に組み込まれた1若しくは2以上の同位体標識を含む同位体標識化合物、又はその塩。
【請求項6】
1又は2以上の同位体標識が、安定同位体標識、放射性同位体標識、又はそれらの組合せである、請求項5に記載の同位体標識化合物。
【請求項7】
1又は2以上の同位体標識が、重水素(H)及び13Cからなる群から選択される、請求項5又は6に記載の同位体標識化合物。
【請求項8】
1又は2以上の同位体標識が、三重水素(H)及び14Cからなる群から選択される、請求項5又は6に記載の同位体標識化合物。
【請求項9】
同位体標識化合物が、
すべての炭素-炭素二重結合がトランス配置である、
【化3】


若しくは前記同位体標識化合物の誘導体、又はその塩である、請求項5~7のいずれかに記載の同位体標識化合物。
【請求項10】
化合物が、解析標準化合物である、請求項5~9のいずれかに記載の同位体標識化合物。
【請求項11】
請求項5~9のいずれかに記載の同位体標識化合物を含む、代謝トレーサー組成物。
【請求項12】
請求項1~9のいずれかに記載の化合物、その塩又は同位体標識化合物と、賦形剤、担体又は希釈剤とを含む、組成物。
【請求項13】
請求項5~9のいずれかに記載の同位体標識化合物を含む、インビトロ又はインビボ診断剤。
【請求項14】
試料中における消化管酸(GTA)のレベルを決定するための方法であって、
前記試料からのGTA検出シグナルを測定するステップであって、前記GTA検出シグナルが前記試料中における前記GTAレベルを表している前記ステップと、
測定された前記GTA検出シグナルを校正基準と比較することによって、前記試料中における前記GTAのレベルを定量化するステップとを含み、GTAが、
【化4】
である、前記方法。
【請求項15】
GTA検出シグナルが、質量分析法によって測定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
校正基準が、請求項5~10のいずれかに記載の化合物の既知量を使用して作成された標準曲線を含む、請求項14~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
校正基準が、請求項5~10のいずれかに記載の同位体標識化合物の既知量で試料をスパイクするステップ、及び
前記試料からの内部標準シグナルを測定するステップであって、前記内部標準シグナルが前記試料にスパイクされる前記同位体標識化合物の前記既知量を表している、前記の測定するステップによって得られる、
請求項14~15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
内部標準シグナルが、質量分析法によって測定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
測定されたGTA検出シグナルによって表される、試料中におけるGTAレベルの、内部標準シグナルによって表される、前記試料にスパイクされた同位体標識化合物の既知量に対する比を決定するステップをさらに含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
校正基準が、可変GTA/同位体標識化合物比と前記比が比較される濃度との一連の混合物から生成された同位体希釈曲線(IDC)を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
IDCが、GTA含有量が固定量の同位体標識化合物に対して変化する一連の混合物から生成される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
同位体標識化合物の固定量が、試料にスパイクされた同位体標識化合物の既知量と実質的に同じである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
試料中における消化管酸(GTA)のレベルを決定するための、請求項1~10のいずれかに記載の化合物、その塩又は同位体標識化合物の使用。
【請求項24】
GTAが、
【化5】
である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
試料中における消化管酸(GTA)のレベルを決定する際に使用するための校正基準を生成するための、請求項1~10のいずれかに記載の化合物、その塩又は同位体標識化合物の使用。
【請求項26】
GTAが、
【化6】
である、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
試料中における消化管酸(GTA)のレベルを決定する際に使用するための内部標準としての、請求項5~9のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項28】
GTAが、
【化7】
である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
対象を、大腸がんにかかっている又は大腸がんになるリスクがあると認定するための診断を補助する方法であって、
前記対象から得られた試料中における消化管酸(GTA)のレベルを、
前記試料からのGTA検出シグナルを測定することであって、前記GTA検出シグナルが前記試料中における前記GTAレベルを表している、前記の測定すること、及び
測定されたGTA検出シグナルを校正基準と比較することによって、前記試料中における前記GTAのレベルを定量化すること
によって決定するステップであって、
前記試料中における前記GTAの決定されたレベルが健常対照群と比較して低減していることが、前記対象が大腸がんにかかっている又は大腸がんになるリスクがあることを示す、ステップ
を含み、
前記GTAが、
【化8】
である、前記方法。
【請求項30】
GTA検出シグナルが、質量分析法によって測定される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
校正基準が、既知量の請求項5~10のいずれかに記載の化合物を使用して調製された標準曲線を含む、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
対象から得られた試料中におけるGTAのレベルを決定するステップが、
前記試料を、請求項5~10のいずれかに記載の同位体標識化合物の既知量でスパイクすること、及び
前記試料からの内部標準シグナルを測定することであって、前記内部標準シグナルが前記試料にスパイクされた前記既知の分量の前記同位体標識化合物を表している、前記測定すること
を含む、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項33】
内部標準シグナルが、質量分析法によって測定される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
測定されたGTA検出シグナルによって表される、試料中におけるGTAレベルの、内部標準シグナルによって表される、前記試料にスパイクされた同位体標識化合物の既知量に対する比を決定するステップをさらに含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
校正基準が、GTA/同位体標識化合物の様々な比と前記比が比較される濃度との一連の混合物から生成された同位体希釈曲線(IDC)を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
IDCが、GTA含有量が固定量の同位体標識化合物に対して変化する一連の混合物から生成される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
同位体標識化合物の固定量が、試料にスパイクされる同位体標識化合物の既知量と実質的に同じである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
式:
【化17】
を有する化合物、又はその同位体標識化合物。
【請求項39】
式:
【化18】
を有する化合物、その塩又は同位体標識化合物の合成における、請求項38に記載の化合物の使用。
【請求項40】
式(I):
【化19】
を有する化合物、又はその同位体標識化合物を合成するための方法であって、
請求項38に記載の化合物を用意するステップと、
前記化合物を1-ヘプチンで薗頭カップリングを行うステップと、
リンドラー触媒による還元を行うステップと、
メチルエステル還元を行うステップと、
メタンスルホニルクロリドとの反応を行うステップと、
メシレートをマロン酸ジメチルで置きかえるステップと、
アセタール開裂、エステル加水分解及び脱炭酸を同時に行うための酸処理を行うステップと、
ウィッティヒ反応を行って、式Iの化合物又はその同位体標識化合物を生成するステップと
を含み、
前記請求項38に記載の化合物又は前記方法における少なくとも1つの反応物質が、式Iの同位体標識化合物が合成される場合に、得られた式Iの化合物に組み込まれる少なくとも1個の同位体標識原子を含む、
前記方法。
【請求項41】
ウィッティヒ反応が、(トリフェニルホスホラニリデン)アセトアルデヒド又は(4-カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドとの反応を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
式D:
【化20】
[式中、
は、-Sn(R10、-OTf、-Cl、-Br、-I、-B(OH)又は
【化21】
であり、
は、置換されていてもよい飽和若しくは不飽和C-C20アルキル、置換されていてもよい飽和若しくは不飽和C-C20アルケニル、又は置換されていてもよい飽和若しくは不飽和C-C20アルキニルであり、
各Rは、独立して、置換されていてもよいC-Cアルキルであるか、又は前記R基は、一緒になって、結合している酸素原子を架橋して5若しくは6員環を形成する、置換されていてもよいエチレン若しくはプロピレン基を形成し、
は、置換されていてもよいC-Cアルキルであり、
10は、置換されていてもよいC-Cアルキルである]
を有する化合物又はその同位体標識化合物。
【請求項43】
消化管酸(GTA)の合成における、請求項42に記載の化合物の使用。
【請求項44】
GTAが、式N若しくはS:
【化22】
の化合物、その塩又は同位体標識化合物である、請求項43に記載の使用
[式中、Rは、置換されていてもよい飽和若しくは不飽和C-C20アルキル、置換されていてもよい飽和若しくは不飽和C-C20アルケニル、又は置換されていてもよい飽和若しくは不飽和C-C20アルキニルであり、Rは、置換されていてもよい飽和若しくは不飽和C-C20アルキル、置換されていてもよい飽和若しくは不飽和C-C20アルケニル、又は置換されていてもよい飽和若しくは不飽和C-C20アルキニルである]。
【請求項45】
請求項44に記載の式N若しくはSの化合物又はその式N若しくはSの同位体標識化合物を合成するための方法であって、
請求項42に記載の化合物を用意するステップと、
基を、置換されていてもよい飽和若しくは不飽和アルキル、置換されていてもよい飽和若しくは不飽和アルケニル又は置換されていてもよい飽和若しくは不飽和アルキニルで置きかえるために、カップリング反応を行い、更に必要に応じて還元を行ってもよいステップと、
含有エステルをヒドロキシル基に変換するステップと、
前記ヒドロキシル基を脱離基に変換するステップと、
前記脱離基をマロン酸ジアルキルで置きかえるステップと、
アセタール加水分解、エステル加水分解及び脱炭酸を行って、アルデヒドを形成するステップと、
前記アルデヒドにおいてカップリング反応を行って、式N若しくはSの化合物又はその同位体標識化合物を生成するステップとを含み、
前記請求項42に記載の化合物又は前記方法における少なくとも1つの反応物質が、式N又はSの同位体標識化合物が合成される場合に、得られた式N若しくはSの化合物に組み込まれる少なくとも1個の同位体標識原子を含む、
前記方法。
【請求項46】
【化23】

若しくはそれらの任意の組合せ
の塩又は同位体標識化合物
である、請求項1~10のいずれかに記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ジカルボン酸及びその誘導体に関する。より詳細には、本発明は、大腸がんの診断において使用するための、ジカルボン酸化合物及びその標識誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
消化管酸(GTA,Gastric tract acid)は当初、対照対象に比べて大腸がん(CRC,colorectal cancer)患者の血清中において低減している炭素数28~36の多価不飽和脂肪酸として発見され報告された。GTA-446と呼ばれる特異的な炭素数28のGTAを測定することに基づく商業的スクリーニングアッセイ(Cologic(登録商標))が、CRCのリスク増大について平均リスク集団をスクリーニングするために開発された。
【0003】
Cologic(登録商標)試験は、これまで、連続希釈された既知の濃度のGTA-446で構成される外部GTA-446標準曲線からのGTA-446の選択親/娘フラグメント対のシグナル応答を外挿することにより、試料中におけるGTA-446の量を定量化するための、タンデム質量分析を使用して実施されてきた。しかしながら、市販の合成GTA-446は入手困難であるため、校正曲線は、大量のヒト血清(典型的には50リットル又はそれ以上)から精製されたGTA-446に依拠する。このアプローチの不利な点は、単離プロセスが労働集約的であり、少量(40Lのヒト血清から約5mg)しか得られず、内因性の天然種しかもたらさないことである。したがって、例えば、回収並びに機器感度における例えばマトリックス効果及び/又はドリフト等の他の潜在的な変動原因を制御する標識内部標準には選択肢がなかったことから、アッセイにはある特定の制限が生じる。
【0004】
典型的には、解析的(analytical)アプローチでは、そのような用途における内部標準の使用が好ましい。好ましい解析的アプローチは、既知量の所望の分析物の安定同位体標識バージョンを試験されている試料にスパイクし、次いで、内因性分析物の標識標準に対する比を決定するものであり得る。次いで、この比を使用して、試料中における標的分析物の定量的評価を外挿することができる。
【0005】
消化管酸GTA-446は、少量であっても得るのが難しいことに加えて、完全には特性決定されておらず、合成的に調製されておらず、標識誘導体が生成されていない。さらに、これまでのところ、GTA-446(C2846)は、4つの不飽和、単一のカルボン酸部分及び2つのヒドロキシ部分を含有する、単一の長鎖脂肪酸であると考えられていた。
【0006】
GTA-446の定量は、これまでは主としてタンデム質量分析解析(tandem mass spectrometry analyses)にさらに限定されており、何故なら、適切な抗体の欠如により、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA,enzyme-linked immunosorbent assay)ベースの定量化アッセイが実施されてこなかったためである。多くの診断プラットフォームがELISA原理に基づいているが、特異的な抗GTA-446抗体の欠如は、GTA-446検出及び定量化のための制限要因を表す。特異的抗体の産生は、十分な分量の純粋な化合物抗原を要し、これは、合成GTA-446が入手困難であることによって制限されてきた。
【0007】
GTA-446及び/若しくはその誘導体の代替的な、追加の及び/若しくは改善された供給源、並びに/又は試料中におけるそれらの定量化のための方法が、望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、GTA-446レベル等のGTAレベルを定量化するためのアッセイ、試料、及び/又は対象における大腸がんの診断のためのアッセイの役に立ち得る、式Iの構造を有する化合物、又はその塩、エステル、プロドラッグ若しくは標識誘導体、又はそれに関連する化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある特定の実施形態において、式I若しくは式III:
【0010】
【化1】
【0011】
の構造を有する化合物、又はその塩、エステル、プロドラッグ若しくは標識誘導体が、本明細書において提供される。
【0012】
さらなる実施形態において、化合物は、単離化合物であってよい。
【0013】
上記の化合物(単数又は複数)の別の実施形態において、化合物は、合成的に調製された化合物、解析標準化合物(analytical standard compound)、又は両方であってよい。
【0014】
また別の実施形態において、式I若しくは式III:
【0015】
【化2】
【0016】
の構造内に組み込まれた1若しくは2以上の同位体標識を含む同位体標識化合物、又はその塩、エステル若しくはプロドラッグが、本明細書において提供される。
【0017】
上記の同位体標識化合物のさらなる実施形態において、1又は2以上の同位体標識は、安定同位体標識、放射性同位体標識、又はそれらの組合せであってよい。
【0018】
上記の同位体標識化合物(単数又は複数)のまたさらなる実施形態において、1又は2以上の同位体標識は、重水素(H)及び13Cからなる群から選択されてよい。
【0019】
上記の同位体標識化合物(単数又は複数)のまたさらなる実施形態において、1又は2以上の同位体標識は、三重水素(H)及び14Cからなる群から選択されてよい。
【0020】
また別の実施形態において、同位体標識化合物は、
すべての炭素-炭素二重結合がトランス配置である、
【0021】
【化3】
【0022】
若しくはその誘導体、
又はその塩、エステル若しくはプロドラッグであってよい。
【0023】
さらに別の実施形態において、上記の同位体標識化合物(単数又は複数)は、解析標準化合物であってよい。
【0024】
上記の化合物(単数又は複数)の別の実施形態において、化合物は、
【0025】
【化4】
【0026】
の化合物、若しくはそれらの任意の組合せ、
又はその塩、エステル、プロドラッグ若しくは標識誘導体であってよい。
【0027】
別の実施形態において、上述した通りの同位体標識化合物(単数又は複数)を含む代謝トレーサー組成物が、本明細書において提供される。
【0028】
また別の実施形態において、上記の化合物(単数又は複数)のいずれかと、賦形剤、担体又は希釈剤とを含む、組成物が、本明細書において提供される。
【0029】
さらに別の実施形態において、上述した通りの同位体標識化合物(単数又は複数)を含むインビトロ又はインビボ診断剤が、本明細書において提供される。
【0030】
別の実施形態において、上記の化合物(単数又は複数)のいずれかと、賦形剤、担体又は希釈剤とを含む、組成物が、本明細書において提供される。
【0031】
さらに別の実施形態において、試料中における消化管酸(GTA)のレベルを決定するための方法であって、
試料からのGTA検出シグナルを測定するステップであって、GTA検出シグナルが試料中におけるGTAレベルを表している、測定するステップと、
測定されたGTA検出シグナルを校正基準と比較することによって、試料中におけるGTAのレベルを定量化するステップと
を含む、前記方法が、本明細書において提供される。
【0032】
上記の方法のさらなる実施形態において、GTAは、
【0033】
【化5】
【0034】
であってよい。
【0035】
上記の方法(単数又は複数)のさらに別の実施形態において、GTA検出シグナルは、質量分析によって測定されてよい。
【0036】
上記の方法(単数又は複数)のまた別の実施形態において、校正基準は、既知量の上記に記載の化合物(単数又は複数)を使用して調製された標準曲線を含み得る。
【0037】
上記の方法(単数又は複数)のさらに別の実施形態において、校正基準は、
試料を、既知量の上記に記載の同位体標識化合物(単数又は複数)でスパイクすること、及び
試料からの内部標準シグナルを測定することであって、内部標準シグナルが試料にスパイクされる既知量の同位体標識化合物を表している、測定すること
によって得られ得る。
【0038】
上記の方法(単数又は複数)のさらなる実施形態において、内部標準シグナルは、質量分析によって測定されてよい。
【0039】
上記の方法(単数又は複数)のさらに別の実施形態において、当該方法は、測定されたGTA検出シグナルによって表される、試料中におけるGTAレベルの、内部標準シグナルによって表される、試料にスパイクされる既知量の同位体標識化合物に対する比を決定するステップをさらに含み得る。
【0040】
上記の方法(単数又は複数)のさらに別の実施形態において、校正基準は、可変GTA/同位体標識化合物比及び前記比が比較される濃度の一連の混合物から生成された同位体希釈曲線(IDC,isotope dilution curve)を含み得る。
【0041】
上記の方法(単数又は複数)のまた別の実施形態において、IDCは、GTA含有量が固定量の同位体標識化合物に対して変化する一連の混合物から生成され得る。
【0042】
上記の方法(単数又は複数)の別の実施形態において、固定量の同位体標識化合物は、試料にスパイクされる既知量の同位体標識化合物と実質的に同じであってよい。
【0043】
別の実施形態において、試料中における消化管酸(GTA)のレベルを決定するための、上記に記載の化合物(単数又は複数)の使用が、本明細書において提供される。さらなる実施形態において、GTAは、
【0044】
【化6】
【0045】
であってよい。
【0046】
さらに別の実施形態において、試料中における消化管酸(GTA)のレベルを決定する際に使用するための校正基準を生成するための、上記に記載の化合物(単数又は複数)の使用が、本明細書において提供される。さらなる実施形態において、GTAは、
【0047】
【化7】
【0048】
であってよい。
【0049】
別の実施形態において、試料中における消化管酸(GTA)のレベルを決定する際に使用するための内部標準としての、上記に記載の化合物(単数又は複数)の使用が、本明細書において提供される。さらなる実施形態において、GTAは、
【0050】
【化8】
【0051】
であってよい。
【0052】
別の実施形態において、対象を、大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法であって、
対象から得られた試料中における消化管酸(GTA)のレベルを、
試料からのGTA検出シグナルを測定することであって、GTA検出シグナルが試料中におけるGTAレベルを表している、測定すること、及び
測定されたGTA検出シグナルを校正基準と比較することによって、試料中におけるGTAのレベルを定量化すること
によって決定するステップと、
試料中におけるGTAの決定されたレベルが健常対照群と比較して低減している場合に、対象を、大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するステップと
を含み、
GTAが、
【0053】
【化9】
【0054】
である、前記方法が、本明細書において提供される。
【0055】
さらなる実施形態において、GTA検出シグナルは、質量分析によって測定されてよい。
【0056】
上記の方法(単数又は複数)のさらに別の実施形態において、校正基準は、既知量の上記に記載の化合物(単数又は複数)を使用して調製された標準曲線を含み得る。
【0057】
上記の方法(単数又は複数)の別の実施形態において、対象から得られた試料中におけるGTAのレベルを決定するステップは、
試料を、既知量の上記に記載の同位体標識化合物(単数又は複数)でスパイクすること、及び
試料からの内部標準シグナルを測定することであって、内部標準シグナルが試料にスパイクされる既知量の同位体標識化合物を表している、測定すること
を含み得る。
【0058】
さらなる実施形態において、内部標準シグナルは、質量分析によって測定されてよい。
【0059】
上記の方法(単数又は複数)のさらに別の実施形態において、当該方法は、測定されたGTA検出シグナルによって表される、試料中におけるGTAレベルの、内部標準シグナルによって表される、試料にスパイクされる既知量の同位体標識化合物に対する比を決定するステップをさらに含み得る。
【0060】
上記の方法(単数又は複数)のまた別の実施形態において、校正基準は、可変GTA/同位体標識化合物比及び前記比が比較される濃度の一連の混合物から生成された同位体希釈曲線(IDC)を含み得る。
【0061】
別の実施形態において、IDCは、GTA含有量が固定量の同位体標識化合物に対して変化する一連の混合物から生成され得る。
【0062】
上記の方法(単数又は複数)のさらに別の実施形態において、固定量の同位体標識化合物は、試料にスパイクされる既知量の同位体標識化合物と実質的に同じであってよい。
【0063】
別の実施形態において、対象を、
【0064】
【化10】
【0065】
である消化管酸(GTA)のレベルの変化に関連する大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法における、上記に記載の化合物(単数又は複数)の使用が、本明細書において提供される。
【0066】
また別の実施形態において、対象を、
【0067】
【化11】
【0068】
である消化管酸(GTA)のレベルの変化に関連する大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法において使用するための校正基準を生成するための、上記に記載の化合物(単数又は複数)の使用が、本明細書において提供される。
【0069】
別の実施形態において、対象を、
【0070】
【化12】
【0071】
である消化管酸(GTA)のレベルの変化に関連する大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法において使用するための内部標準としての、上記で定義されている化合物(単数又は複数)の使用が、本明細書において提供される。
【0072】
別の実施形態において、式I:
【0073】
【化13】
【0074】
の化合物と特異的に結合する、抗体又はその抗原結合フラグメントが、本明細書において提供される。
【0075】
別の実施形態において、抗体は、モノクローナル又はポリクローナル抗体であってよい。
【0076】
別の実施形態において、上記で定義されている化合物(単数又は複数)の、前記化合物の抗原性エピトープと特異的に結合する抗体を調製するための抗原としての使用が、本明細書において提供される。
【0077】
さらに別の実施形態において、試料中における消化管酸(GTA)のレベルをイムノアッセイによって検出する又は定量化するための、上記で定義されている抗体(単数又は複数)の使用であって、GTAが、
【0078】
【化14】
【0079】
である、前記使用が、本明細書において提供される。
【0080】
また別の実施形態において、対象を、
【0081】
【化15】
【0082】
である消化管酸(GTA)のレベルの変化に関連する大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法における、上記で定義されている抗体(単数又は複数)の使用が、本明細書において提供される。
【0083】
別の実施形態において、試料中における消化管酸(GTA)のレベルを決定するための方法であって、
試料中におけるGTAのレベルを、GTAと特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを用いるイムノアッセイを使用して測定するステップを含み、
GTAが、
【0084】
【化16】
【0085】
である、前記方法が、本明細書において提供される。
【0086】
上記の方法のさらなる実施形態において、イムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含み得る。
【0087】
上記の方法(単数又は複数)の別の実施形態において、当該方法は、上記に記載の化合物(単数又は複数)を含む対照試料を、イムノアッセイにおける陽性対照として使用するステップをさらに含み得る。
【0088】
上記の方法(単数又は複数)のさらに別の実施形態において、当該方法は、試料中におけるGTAのレベルを外挿するために標準曲線を使用するステップをさらに含み得、標準曲線は、複数の既知量の上記に記載の化合物(単数又は複数)を使用して生成されたものである。
【0089】
別の実施形態において、対象を、大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法であって、
対象から得られた試料中における消化管酸(GTA)のレベルを、
試料中におけるGTAのレベルを、GTAと特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを用いるイムノアッセイを使用して測定すること
によって決定するステップと、
試料中におけるGTAの決定されたレベルが健常対照群と比較して低減している場合に、対象を、大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するステップと
を含み、
GTAが、
【0090】
【化17】
【0091】
である、前記方法が、本明細書において提供される。
【0092】
さらなる実施形態において、イムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含み得る。
【0093】
上記の方法(単数又は複数)の別の実施形態において、当該方法は、上記に記載の化合物(単数又は複数)を含む対照試料を、イムノアッセイにおける陽性対照として使用するステップをさらに含み得る。
【0094】
上記の方法(単数又は複数)のまた別の実施形態において、試料中におけるGTAのレベルを決定するステップは、試料中におけるGTAのレベルを外挿するために標準曲線を使用するステップをさらに含み得、標準曲線は、複数の既知量の上記に記載の化合物(単数又は複数)を使用して生成されたものである。
【0095】
別の実施形態において、試料中における消化管酸(GTA)のレベルを定量化するためのキットであって、
上記に記載の化合物(単数又は複数)、
上記に記載の代謝トレーサー、
上記に記載の組成物(単数又は複数)、
上記に記載の診断剤、及び
上記に記載の抗体(単数又は複数)
のうち少なくとも1つを含み、
上記に記載の方法(単数又は複数)を実施するための説明書のセットをさらに含んでいてもよい、
キットが、本明細書において提供される。
【0096】
別の実施形態において、対象を、大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断キットであって、
上記に記載の化合物(単数又は複数)、
上記に記載の代謝トレーサー、
上記に記載の組成物(単数又は複数)、
上記に記載の診断剤、及び
上記に記載の抗体(単数又は複数)
のうち少なくとも1つを含み、
上記に記載の方法(単数又は複数)を実施するための説明書のセットをさらに含んでいてもよい、キットが、本明細書において提供される。
【0097】
別の実施形態において、式:
【0098】
【化18】
【0099】
を有する化合物、又はその標識誘導体が、本明細書において提供される。
【0100】
また別の実施形態において、式:
【0101】
【化19】
【0102】
を有する化合物、又はその塩、エステル、プロドラッグ若しくは標識誘導体の合成における、上記化合物の使用が、本明細書において提供される。
【0103】
別の実施形態において、式(I):
【0104】
【化20】
【0105】
を有する化合物、又はその同位体標識誘導体を合成するための方法であって、
【0106】
【化21】
【0107】
を有する化合物を用意するステップと、
該化合物の、1-ヘプチンとの薗頭カップリングを行うステップと、
リンドラー触媒(Lindlar’s catalyst)による還元を行うステップと、
メチルエステル還元を行うステップと、
メタンスルホニルクロリドとの反応を行うステップと、
メシレートをマロン酸ジメチルで置きかえるステップと、
アセタール開裂、エステル加水分解及び脱炭酸を同時に行うための酸処理を行うステップと、
ウィッティヒ反応を行って、式Iの化合物又はその同位体標識誘導体を生成するステップと
を含み、
式24の化合物又は方法における少なくとも1つの反応物質が、式Iの同位体標識誘導体が合成される場合に、得られた式Iの化合物に組み込まれる少なくとも1個の同位体標識原子を含む、
前記方法が、本明細書において提供される。
【0108】
さらなる実施形態において、ウィッティヒ反応は、(トリフェニルホスホラニリデン)アセトアルデヒド又は(4-カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドとの反応を含み得る。
【0109】
さらに別の実施形態において、式D:
【0110】
【化22】
【0111】

[式中、
は、-Sn(R10、-OTf、-Cl、-Br、-I、-B(OH)又は
【0112】
【化23】
【0113】
であり、
は、置換されていてもよい飽和若しくは不飽和C-C20アルキル、飽和若しくは不飽和C-C20アルケニル、又は飽和若しくは不飽和C-C20アルキニルであり、
各Rは、独立して、置換されていてもよいC-Cアルキルであるか、又はR基は、一緒になって、結合している酸素原子を架橋して5若しくは6員環を形成する、置換されていてもよいエチレン若しくはプロピレン基を形成し、
は、置換されていてもよいC-Cアルキルであり、
10は、置換されていてもよいC-Cアルキルである]
を有する化合物又はその標識誘導体が、本明細書において提供される。
【0114】
また別の実施形態において、消化管酸(GTA)又はその誘導体の合成における式Dの化合物の使用が、本明細書において提供される。ある特定の実施形態において、GTA又はその誘導体は、式N若しくはS:
【0115】
【化24】
【0116】
の化合物、又はその塩、エステル、プロドラッグ若しくは標識誘導体
[式中、
は、置換されていてもよい飽和若しくは不飽和C-C20アルキル、飽和若しくは不飽和C-C20アルケニル、又は飽和若しくは不飽和C-C20アルキニルであり、
は、置換されていてもよい飽和若しくは不飽和C-C20アルキル、飽和若しくは不飽和C-C20アルケニル、又は飽和若しくは不飽和C-C20アルキニルである]
であってよい。
【0117】
別の実施形態において、上記に記載の式N若しくはSの化合物又はその同位体標識誘導体を合成するための方法であって、
上記に記載の式Dの化合物を用意するステップと、
基を、置換されていてもよい飽和若しくは不飽和アルキル、飽和若しくは不飽和アルケニル、又は飽和若しくは不飽和アルキニルで置きかえるために、カップリング反応を行い、還元を行ってもよいステップと、
含有エステルをヒドロキシル基に変換するステップと、
ヒドロキシル基を脱離基に変換するステップと、
脱離基をマロン酸ジアルキルで置きかえるステップと、
アセタール加水分解、エステル加水分解及び脱炭酸を行って、アルデヒドを形成するステップと、
アルデヒドにおいてカップリング反応を行って、式N若しくはSの化合物又はその同位体標識誘導体を生成するステップと
を含み、
式Dの化合物又は方法における少なくとも1つの反応物質が、式N又はSの同位体標識誘導体が合成される場合に、得られた式N又はSの化合物に組み込まれる少なくとも1個の同位体標識原子を含む、
前記方法が、本明細書において提供される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図1】任意の方法開発前の負APCIにおける水飽和酢酸エチル中の通常の血清有機抽出物の典型的な全イオンフローインジェクションクロマトグラム(TIC,total ion flow injection chromatogram)を示す図である。この図は、包括的な血清マトリックス中におけるGTA-446がいかに低いかを示す。
図2】メタノール水勾配を使用する、16~18分のGTA溶出ウィンドウを示す水飽和酢酸エチル中の通常の血清有機抽出物のフルスキャンカラムクロマトグラム(RP-18)を示す図である。
図3】単相抽出(MeOH-1~MeOH-3)対二相抽出(N-1~N3)の間の、有機相中におけるCRC446(MRM445/383)レベルの比較を示す図である。このデータに基づき、単相抽出を実装した。
図4】単相抽出、続いて、相分離を使用する、上部有機相の全イオン電流フローインジェクションクロマトグラムを示す図である。GTA446は、m/z445.3として観察される。
図5】粗マトリックスと比較してGTAが濃縮されていることを示す、NAPCIにおける順相フラッシュカラムクロマトグラフィー画分3(F3)のフルスキャンフローインジェクションクロマトグラムを示す図である。
図6】GTA446のさらなる精製を示す、NAPCIにおける逆相フラッシュカラムクロマトグラフィー画分5(F5)のフルスキャンフローインジェクションクロマトグラムを示す図である。
図7】GTA446のさらなる精製を示す、NAPCIにおける逆相フラッシュカラムクロマトグラフィー画分6(F6)のフルスキャンフローインジェクションクロマトグラムを示す図である。
図8】分取HPLC-RP分離からの、NAPCIにおけるGTA-446リッチ試料のフルスキャンクロマトグラムを示す図である。
図9】精製されたGTA446を示す、NAPCIにおける分取HPLC-NP分離からのフルスキャンクロマトグラムを示す図である。
図10】包括的な血清マトリックスにおいて見られるその内因性バージョンと同様のフラグメンテーションフィンガープリントを示す、NAPCI CE=35vにおける単離されたGTA-446のタンデムMSスペクトルを示す図である。
図11】8つのメチレンプロトン(δ5.5~6.2pm)、2つの末端メチル基(-CH 、δ0.84及び0.89pm、それぞれ3H、t)、及び主な官能基としての2つの-COO基からのδ12.0ppmにおける広幅ピークを示す、単離されたGTA-446バイオマーカー_2(CDCl中)のH-NMRを示す図である。
図12】8個のメチレン炭素(δ126~136pm)、2つの末端メチル基(-CHCH、δ14.0及び14.1pm)、及び2つの-COOH基からのδ181.2、181.4ppmにおける2個のカルボニル炭素、独自の構造実体としての45.9、47.0ppmにおける2個のメチレン炭素を示す、単離されたGTA-446バイオマーカー_2(CDCl中)の13C-NMRを示す図である。
図13】2Dプロトン相関を示すGTA-446バイオマーカー_2(CDCl中)のH-H COSY解析を示す図である。E,E及びE,Z配置は、それらのカップリング定数から推測した。
図14】直接2D13C-H相関を示す単離されたGTA-446バイオマーカー_2(CDCl中)の直接H-13C(HMQC)解析を示す図である。
図15】近接2D13C-H相関を示す単離されたGTA-446バイオマーカー_2(CDCl中)のロングレンジH-13C(HMBC)解析を示す図である。
図16】GTA-446の提案される13C安定同位体形態及び天然形態に基づいて予測されるそれらのタンデムMSフラグメントを示す図である。
図17】25の個体のヒト血清試料を使用する、GTA-446の提案される13C安定同位体についての血清干渉チェックを示す図である。これは、予測される構造A及びBの両方が、最も低い血清干渉を有し、GTA-446の内因性レベルを測定するための同位体希釈法において、内部標準として使用するための候補になり得ることを示す。
図18】CRC血液検査において商業的標準として使用するための、GTA-446の商業的製造のためのプロセス実施形態の概要の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0119】
本明細書において記載されるのは、式Iの構造を有する消化管酸(GTA)ベースの化合物、及びその塩、エステル、プロドラッグ又は標識誘導体、並びにそれに関連する他の化合物である。そのようなGTA化合物は、試料のGTAレベルを決定するため、対象を、大腸がんを有する若しくは発病するリスクがあるとして診断するため、又は抗体を作製するために使用され得る。式IのGTA(又は関連化合物)と特異的に結合する抗体又はそのフラグメント、並びに、試料中におけるGTAレベルを決定するため、又は対象を、大腸がんを有する若しくは発病するリスクがあるとして診断するための、そのような抗体又はそのフラグメントの使用が記載される。そのようなGTA化合物及び/又は抗体を含むキットも提供される。
【0120】
実施形態及び実施例は、当業者に向けた例証目的で提供するものであり、決して限定するものではないことが分かるであろう。
【0121】
ある特定の実施形態において、式I:
【0122】
【化25】
【0123】
の構造を有する消化管酸(GTA)化合物、又はその塩、エステル、プロドラッグ若しくは標識誘導体が、本明細書において提供される。
【0124】
ある特定の実施形態において、GTA化合物は、式II:
【0125】
【化26】
【0126】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素;対イオン;直鎖状若しくは分岐状置換若しくは非置換のアルカン、アルケン若しくはアルキン;置換若しくは非置換のシクロアルカン、シクロアルケン若しくはシクロアルキン;置換若しくは非置換芳香族基;プロドラッグのプロ部分;フルオロフォア;又は保護基であるか、或いは-OR及び/又は-ORは、それぞれ独立して、インビトロ又はインビボで処理されていてよい生体開裂可能な官能基によって置きかえられて、-COOH基又はその塩を形成し得る]
の構造を有する化合物を含み得る。
【0127】
理解されるであろう通り、ある特定の実施形態において、式I及び/又はIIの化合物は、立体異性体の混合物(概してラセミであってよく、又は立体異性体の1若しくは2以上が少なくとも部分的に濃縮されていてよい)として提供されてよく、又は実質的に立体異性的に純粋な形態で提供されてよい。式I及びIIの化合物は、2個のキラル炭素を含み、R/R、R/S、S/R、及びS/Sジアステレオマーとして構成されてよい。故に、ある特定の実施形態において、次の通りの構造:
【0128】
【化27】
【0129】
を有するGTA化合物、又はそれらの任意の混合物が、本明細書において提供される。
【0130】
ある特定の実施形態において、例として、対イオンは、-COO基上の負電荷を平衡させるために任意の適切な対イオンを含んでよく、それにより、塩を形成する。非限定的な例は、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム又はアルキルアンモニウムを含み得る。
【0131】
プロドラッグのプロ部分の例は、例えば、メチル、エチル、プロピル若しくはイソプロピル基、疎水性基、膜輸送ペプチド若しくはシグナル、膜横断部分、細胞標的化部分、又はインビトロ若しくはインビボで生体開裂可能である別の適切な基を含み得る。
【0132】
フルオロフォアの例は、例えば、フルオレセイン、シアニン、GFP、YFP、RFP、又は他のそのようなフルオロフォア、染料若しくは市販の標識を含み得る。
【0133】
保護基の例は、例えば、メチルエステル、ベンジルエステル、tert-ブチルエステル、オキサゾリン又はシリルエステルを含み得る。当業者ならば、その多くが、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるGreene’s Protective Groups in Organic Synthesis, Fourth Ed., ISBN: 9780471697541 (2007; John Wiley & Sons, Inc.)において記載されている、様々な保護基に気付くであろう。
【0134】
インビボ又はインビトロで処理されて-COOH基又はその塩を形成し得る生体開裂可能な官能基の例は、例えば、任意の適切なカーボネート、エステル、アミド又はカルバメート基を含み得る。
【0135】
ある特定のさらなる実施形態において、GTA化合物は、上述した化合物のいずれかの同位体標識誘導体を含み得る。ある特定の実施形態において、同位体標識誘導体は、その中で統合された、1つの、又は1つを超える、同位体標識を含み得る。ある特定の実施形態において、1又は2以上の同位体標識は、安定同位体標識、放射性同位体標識、又はそれらの組合せを含み得る。同位体標識は、例えば、重水素(H)若しくは13C、又は両方を含み得る。ある特定の実施形態において、同位体標識は、例えば、三重水素(H)、14C又は両方を含み得る。ある特定の実施形態において、同位体標識は、例えば、GTA構造内の飽和炭素において、炭素原子と共有結合した、少なくとも1つの重水素又は三重水素標識を含み得る。当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、特定の用途に適合させるために上述した化合物に組み込まれ得る又は結合され得る、様々な標識(同位体、放射性同位体、蛍光、又はその他)に気付くであろう。
【0136】
ある特定の実施形態において、同様の特性を共有し得る、上述した消化管酸(GTA)化合物に関連する化合物も、本明細書において提供される。ある特定の実施形態において、式III:
【0137】
【化28】
【0138】
の構造を有する化合物、又はその塩、エステル、プロドラッグ若しくは標識誘導体が、本明細書において提供される。
【0139】
別の実施形態において、式IV:
【0140】
【化29】
【0141】
[式中、R及びRは、式IIに関して上記に記載である]
の化合物が、本明細書において提供される。
【0142】
理解されるであろう通り、ある特定の実施形態において、式III及び/又はIVの化合物は、立体異性体の混合物(概してラセミであってよく、又は立体異性体の1若しくは2以上が少なくとも部分的に濃縮されていてよい)として提供されてよく、又は実質的に立体異性的に純粋な形態で提供されてよい。式III及びIVの化合物は、2個のキラル炭素を含み、R/R、R/S、S/R、及びS/Sジアステレオマーとして構成されてよい。故に、ある特定の実施形態において、次の通りの構造:
【0143】
【化30】
【0144】
を有する化合物、又はそれらの任意の混合物が、本明細書において提供される。
【0145】
ある特定のさらなる実施形態において、式III又はIVの化合物は、上述した化合物のいずれかの同位体標識誘導体を含み得る。ある特定の実施形態において、同位体標識誘導体は、その中で統合された、1つの、又は1つを超える、同位体標識を含み得る。ある特定の実施形態において、1又は2以上の同位体標識は、安定同位体標識、放射性同位体標識、又はそれらの組合せを含み得る。同位体標識は、例えば、重水素(H)若しくは13C、又は両方を含み得る。ある特定の実施形態において、同位体標識は、例えば、三重水素(H)、14C、又は両方を含み得る。ある特定の実施形態において、同位体標識は、例えば、構造内の飽和炭素において、炭素原子と共有結合した、少なくとも1つの重水素又は三重水素標識を含み得る。当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、特定の用途に適合させるために上述した化合物に組み込まれ得る又は結合され得る、様々な標識(同位体、放射性同位体、蛍光、又はその他)に気付くであろう。
【0146】
そのような化合物及びその企図される使用のさらなる実施形態について、以下でさらに詳細に記載する。
【0147】
消化管酸及びGTA-446
本明細書において提供されるのは、消化管酸GTA-446を含む多価不飽和28-炭素ジカルボン酸脂肪酸、及びそれらの誘導体である。そのような化合物は、例えば、血清及び/又は他の生体マトリックス中における、前記28-炭素脂肪酸又は別のGTAのレベルを定量化するアッセイの、正確さ及び/又は特異性を改善する際に使用するためのものであってよい。
【0148】
ある特定の実施形態において、本明細書において記載されている通りの化合物は、例えば、ある特定の実施形態において、ヒト血清試料又は他のそのような試料であってよい生物検体等である試料中における、例えば消化管酸GTA-446又は別のそのようなGTAを含む関連分子の定量化において、例えば参照標準又は校正基準として使用され得る。
【0149】
消化管酸GTA-446は、これまでは完全には特性決定されておらず、合成的に調製されておらず、標識誘導体が生成されていなかった。さらに、これまでのところ、GTA-446(C2846)は、4つの不飽和、単一のカルボン酸部分及び2つのヒドロキシ部分を含有する、単一の長鎖脂肪酸であると考えられていた。
【0150】
しかしながら、本明細書において詳述される実験的研究は、GTA-446が、実際には、2つの14-炭素不飽和脂肪酸の共役を含むジカルボン酸脂肪酸二量体であることを今や明らかにした(以下の式Iを参照)。具体的には、GTA-446は、9及び5’位において架橋され、2つの末端カルボン酸基を含む。これらの結果に基づき、GTAファミリーは、概して、それらのアルキル骨格間に架橋された長鎖(C14-C22)多価不飽和脂肪酸二量体で構成され得る可能性が高いように思われる。本発明者らの知る限り、この研究は、特にヒト血清中において、この構造を有する分子が報告された最初の事例を表す。
【0151】
【化31】
【0152】
NMR(H、13C、COSY、HMBC及びHMQC)及び質量分光法(FTICR及びMS/MS)から導出されるGTA-446の分子構造。化学式C2846。精密質量:446.34
したがって、ある特定の実施形態において、例えば解析標準として役立ち得る精製又は単離されたGTA-446化合物又は組成物が、本明細書において提供される。高純度を実現するための、標的の沈殿、相分離、FCC(Flash Column Chromatography:フラッシュカラムクロマトグラフィー)及び/又はHPLC分離のステップを含み得るマルチステッププロセスを伴う、ヒト血清等のGTA-446リッチ出発材料から式Iの精製化合物を得るための単離プロセスも、本明細書において提供される。
【0153】
別の実施形態において、1又は2以上の標識を精製されたGTA-446アイソフォームに組み込むことによってGTA-446(及びそれに関連する他の化合物)の標識アイソフォームを産生するための方法が、本明細書において提供される。例として、そのような標識は、重水素交換のステップ、又は適切な市販の試薬(例えば、4-フェニル-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(PTAD,4-Phenyl-1,2,4-triazoline-3,5-dione))及び種々のカルボン酸誘導体を使用する共役系のDiels-Alder誘導体化を含み得る種々の形態の誘導体化から選択される別の適切な修飾ステップを含む方法によって、組み込まれ得る。ある特定の実施形態において、GTA-446の標識アイソフォームが質量分析用途において使用するためのものである場合、GTA-446の標識アイソフォームは、親娘イオンの質量が、MS解析によって同定又は定量化されている非標識GTA-446分析物(又は他の分析物)と共通ではないように設計され得る。合理的に設計された同位体標識化合物の例について、以下でさらに詳細に記載する。
【0154】
ある特定の実施形態において、式I:
【0155】
【化32】
【0156】
の構造を有する化合物、又はその塩、エステル、プロドラッグ若しくは標識誘導体が、本明細書において提供される。
【0157】
上述した式II、III及びIVのもの等の関連化合物も提供される。
【0158】
ある特定の実施形態において、化合物は、単離又は精製化合物であってよい。化合物は、例えば、合成的に調製された化合物であってよい。化合物は、ある特定の実施形態において、アッセイにおいて使用するための解析標準化合物として調製され得る。
【0159】
そのような化合物と、許容される賦形剤、担体又は希釈剤とを含む、組成物も、本明細書において提供される。
【0160】
ヒト血清からの単離
ヒト血清からGTA-446を単離するためのプロセスの例を、以下の実施例1及び2において詳細に記載する。プロセスは、ある特定の実施形態において、高いGTA-446濃度を持つものを同定するための市販の血清のロットの評価、続いて、大(50L)量の選ばれたロットの調達を伴い得る。ある特定の実施形態において、血清の試験ロットは、ギ酸で緩衝(それによりタンパク質が沈殿)した、水と酢酸エチルとの間で抽出され得る。実施例1の研究において、GTA-446は、選択された方法下、9つの他の同様の脂肪酸のプールにより、16.3~17.6分の間で溶出されることが観察された(以下を参照)。血清源の選択は、GTA-446について、この出発時の抽出がいかに清潔にされ及び/又は濃縮されているかに基づいて決まることがあり、これは、他の汚染物質が精製の効率を低減させ得ることからスケールアップ抽出を容易にする際に有用であり得る。
【0161】
以下でさらに詳細に記載される実験は、体液についてGTA-446を単離するための方法を同定した。ある特定の実施形態において、そのために、溶媒抽出/沈殿のステップ、続いて、カラムクロマトグラフ分離のステップを含む、ヒト血清、血液、又は他の適切な体液からGTA-446を単離するための方法が、本明細書において提供される。
【0162】
ある特定の実施形態において、体液からGTA-446を精製するための方法であって、
単相抽出/タンパク質沈殿ステップにおいて体液を処理し、それにより、沈殿したタンパク質固体及び液相を産生するステップと、
沈殿したタンパク質固体を液相から分離するステップと、
相分離ステップにおいて液相を処理して、有機血清抽出物を得るステップと、
カラム分離ステップにおいて有機血清抽出物を処理するステップであって、
順相分離ステップ、
逆相分離ステップ、及び
逆相段階とその後の順相段階を含む、二段階HPLC分離ステップ
を含むステップと
を含み、
精製されたGTA-446画分が、二段階HPLC分離ステップの順相段階の後に溶出され、それにより、精製されたGTA-446を提供する、
前記方法が、本明細書において提供される。
【0163】
上記の方法のある特定の実施形態において、単相抽出/タンパク質沈殿ステップは、メタノールの存在下、水中酢酸エチルを使用する抽出を含んでよく、ここで、メタノールは、水中酢酸エチルを混合するためのメディエーターとして作用する。例として、血清:MeOH(1%ギ酸を加えたもの):EtOAcの約1:2:4の比を有する溶媒混合物を含む単相抽出混合物は、単相抽出/タンパク質沈殿ステップに使用されてよく、これは、沈殿が発生するまで約5分の待ち時間を可能にすることを伴い得る。ある特定の実施形態において、相分離ステップは、液相を相分離するためのヘキサンの使用を含んでよく、それにより、有機血清抽出物を得る。したがって、ある特定のそのような実施形態において、相分離ステップにおける溶媒比は、例えば、約1:2:4:4 血清:メタノール:酢酸エチル:ヘキサンであってよい。
【0164】
合理的に設計された標識誘導体
式Iの構造及びこの構造のバイオマーカーGTA-446との結合の発見は、追加で同位体標識GTA-446誘導体化合物の合理的な設計を可能にする。そのような化合物は、例えば、生体試料中における質量分析ベースのGTA-446(又は他のGTA)解析及び/又は定量化を容易にするように設計され得る。例として、同位体標識GTA-446誘導体化合物は、解析及び/又は定量化方法において使用されている親/娘GTA-446MSシグナルに対応する内部標準シグナルを提供するように設計され得る。そのような同位体標識GTA-446誘導体化合物は、例えば、解析及び/又は定量化方法において使用されている親/娘GTA-446(又は他のGTA)MSシグナルに対応する内部標準シグナルを提供するように設計されてよく、それにより、内部標準シグナルは、解析中に検出される他の無関係な血清シグナルと実質的に重複せず、又はそれらから干渉を受けない。
【0165】
そのような同位体標識化合物の設計例において、干渉研究は、干渉シグナルの欠如を検証するためにGTA-446の種々の理論上の13Cが組み込まれたアイソフォームの親-娘イオン組合せを調査するための、血清及びタンデムMS解析を使用して実施した。ある特定の例において、3つの候補標準を解析し、これは、対応する非標識GTA-446タンデムMS対と同様の理論上のMS/MSフラグメント、並びに水及び二酸化炭素の損失後に親及び娘フラグメントをもたらした。そのそれぞれが合理的に設計された同位体標識GTA-446誘導体を表す、図16における構造(A)、(B)及び(C)を参照されたい。これらを、個々の血清抽出物の25の試料において解析した。分子A及びBの両方は特に、スパイクされていない血清抽出物における低干渉を示したが、このことは、両方が特に有用な潜在的な内部標準候補であると示唆するものである。同位体標識化合物(A)、(B)、(C)、並びにフラグメントA及びBの干渉解析を、図16のように、図17に示す。そのような同位体標識化合物は、ある特定の実施形態において、血清中におけるGTA-446レベルを定量化するための安定同位体希釈法への組み込みに使用され得る。
【0166】
ある特定の実施形態において、式I:
【0167】
【化33】
【0168】
の構造内に組み込まれた1若しくは2以上の同位体標識を含む同位体標識化合物、又はその塩、エステル若しくはプロドラッグが、本明細書において提供される。
【0169】
上記の同位体標識化合物は、ある特定の実施形態において、安定同位体標識、放射性同位体標識、又はそれらの組合せである、1又は2以上の同位体標識を含み得る。1又は2以上の同位体標識は、例えば、重水素(H)及び13Cからなる群から選択されてよい。1又は2以上の同位体標識は、ある特定のさらなる実施形態において、三重水素(H)及び14Cからなる群から選択されてよい。
【0170】
ある特定の例において、同位体標識化合物は、式(A)、(B)若しくは(C):
【0171】
【化34】
【0172】
の構造を有する化合物、又はその塩、エステル若しくはプロドラッグであってよい、又はそれらを含んでよい。
【0173】
ある特定の実施形態において、同位体標識化合物は、式(A)、(B)又は(C)のいずれか1つの標識化戦略を、式II、III又はIVの化合物に適用してよい。
【0174】
ある特定の実施形態において、同位体標識化合物は、解析標準化合物として使用するためのものであってよい。ある特定の他の実施形態において、同位体標識化合物は、代謝トレーサー組成物、インビトロ若しくはインビボ診断剤において、又は別の組成物において使用するためのものであってよい。
【0175】
合成
別の実施形態において、本明細書において記載されている通りの、合成的に調製されたGTA-446関連化合物(又はその塩、エステル若しくは標識誘導体)、又はそれに関連する他の化合物が企図される。ある特定の実施形態において、合成化学アプローチを使用して調製された、そのような化合物又はその誘導体が企図される。そのような合成的に調製された化合物は、例えば、同位体希釈質量分析検出法において使用され得る。
【0176】
血清からGTA-446を単離する際の難しさ(純粋なGTA446の収率は、典型的には、出発血清から1%未満である)及びGTA-446に対応する安定同位体標識化合物の天然源の欠如により、GTA-446又はその誘導体の非標識及び/又は標識形態の合成的産生は、安定同位体アッセイ等のGTA-446アッセイを容易にするために有用であり得る。
【0177】
これまで、本発明者らの知る限り、GTA-446又はその誘導体を得るための公知の又は報告された単離又は合成スキームはなかった。GTA-446の構造がこれまで不明であったことを考慮して、式Iの化合物及びその誘導体の調製のための合成スキームは、単純に企図されなかった。
【0178】
過去には、滑沢剤及びポリマーの産生のための、単量体の、モノ不飽和脂肪酸を利用するジカルボン酸脂肪酸二量体の工業規模の製造が、報告されていた。そのような方法は、典型的には、高温(200℃~300℃)、高圧(70~175psi)等の厳しい反応条件を含み、多くの場合、触媒としての粘土又は粘土鉱物並びに長時間の混合及びかき混ぜを使用する。これらの反応の最終生成物は、典型的には、非特異的なポリマー混合物を含む。一般化された脂肪酸二量体化プロセスのための典型的な概略的な反応経路は、そのようなプロセスに基づき、下記:
【0179】
【化35】
を含んでよい。
【0180】
二量体化プロセス中に、シス/トランス異性化、二重結合シフト、分岐、環形成及び/又は重合等の他の副反応も発生し得、潜在的に、様々な副生成物につながる。多くの場合、分別蒸留法を用いて、副生成物及び未反応の出発材料の残りから所望の種を分離する。
【0181】
前述の方法は、GTA-446合成にとって理想的ではない場合があり、何故なら、共役点及び不飽和の位置に対する特異性は実現することが難しい場合があるためである。第2に、GTA-446は、二量体化を複雑にする4つの二重結合を含有する(モノ不飽和脂肪酸が例において示されている)。
【0182】
故に、合成化学アプローチを用いて、本明細書において記載されている通りの化合物を産生し得ることが、本明細書において企図される。GTA-446構造の解明を含む本明細書において提供される教示を考慮して、様々な合成アプローチが、提供される構造の逆合成解析によって企図され得る。合成スキームは、ある特定の実施形態において、合成中に望ましくない副生成物へと転位することを実質的に回避する、適切な出発材料の使用並びに/又は反応性官能基のブロッキング/保護を伴い得る。
【0183】
ある特定の実施形態において、合成アプローチは、例えば、2つのC14カルボン酸鎖間で炭素-炭素(C-C)二量体化し、適切な触媒を使用することによって及び/又は反応性部位のブロッキングによって特異的なアルケン立体化学を保持して所望の最終生成物を得ることを含み得ることが企図される。例えば、適切な不斉ヘックカップリング又は粘土鉱物触媒高温/高圧二量体化を用いて、GTA-446を合成してもよい。
【0184】
GTA-446の同位体標識誘導体は、例えば、重水素(H)又は13C形態のいずれかとして合成され得る。重水素は、ある特定の条件下での溶媒による水素交換を受けて、重水素化及び非重水素化形態間の平衡を得ることができる。13Cは、低い天然存在度(約1%)を持つ特に安定な同位体であり、これは、C-C結合によって共有的に組み込まれていることから、その12Cバージョンによる実質的な転位を受けないと予測される。少なくとも1個の重水素、少なくとも1個の13C、又は両方を含む同位体標識化合物は、すべて本明細書において企図されており、特定の用途に適合させるように選択され得る。例えば、高い安定性が所望される場合、13Cが使用され得るが、ある特定の用途には重水素標識誘導体も企図される。特定の用途に応じて、本明細書において記載されている化合物の放射性標識誘導体も企図される。ある特定の実施形態において、標識誘導体は、以下でさらに詳細に記載する通り、合成中に1又は2以上の標識試薬/反応物質を使用することによって、生成され得る。
【0185】
GTA化合物及びその誘導体を調製するための合成戦略を以下で提示し、式I及びIIIの化合物を調製するためのより詳細な提案される合成経路を、以下の実施例4及び5においてさらに記載する。
【0186】
下記の合成経路は、式Dの前駆体化合物又はその標識誘導体:
【0187】
【化36】
【0188】
[式中、
は、-Sn(R10、-OTf、-Cl、-Br、-I、-B(OH)又は
【0189】
【化37】
【0190】
であり、
は、置換されていてもよい飽和若しくは不飽和C-C20アルキル、飽和若しくは不飽和C-C20アルケニル、又は飽和若しくは不飽和C-C20アルキニルであり、
各Rは、独立して、置換されていてもよいC-Cアルキルであるか、又はR基は、一緒になって、結合している酸素原子を架橋して5若しくは6員環を形成する、置換されていてもよいエチレン若しくはプロピレン基を形成し、
は、置換されていてもよいC-Cアルキルであり、
10は、置換されていてもよいC-Cアルキルである]
から、GTA化合物、その誘導体、及び/又はそれに関連する化合物を生成し得る。
【0191】
ある特定の実施形態において、式Dの化合物を使用して、次の通りの式Eの化合物との反応によって、式F、G又はHの化合物を生成し得ることが企図される。
【0192】
【化38】
【0193】
理解されるであろう通り、化合物D及びEは、化合物F、化合物G又は化合物Hのうち少なくとも1つを提供するように、スティル、薗頭、鈴木又は任意の他の適切な金属媒介性クロスカップリング反応を使用してカップリングされ得る。当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、代わりのクロスカップリング反応が、化合物Aを化合物Bとカップリングする際に有用であり得ることを認識するであろう。式Eの化合物(及び、同様に、式DのR部分)は、そのようなカップリング反応に適合するように選択され得る。
【0194】
ある特定の実施形態において、式Eの化合物は、
が、置換されていてもよい飽和若しくは不飽和C-C20アルキル、飽和若しくは不飽和C-C20アルケニル、又は飽和若しくは不飽和C-C20アルキニルであり、
が、-H、-Sn(R10、-OTf、-Cl、-Br、-I、-B(OH)又は
【0195】
【化39】
【0196】
であり、
Lが、
【0197】
【化40】
【0198】
であり、
10が、置換されていてもよいC-Cアルキルであり、
及びLが、式F、G又はHの化合物のいずれか1つを生成するための式DのビニルR基との反応のために選択される
ものを含み得る。
【0199】
次いで、式F、G又はHの化合物を使用して、GTA化合物、その誘導体及び/又はそれに関連する化合物を生成し得ることが企図される。
【0200】
式Fの化合物が使用される場合、GTA化合物、その誘導体及び/又はそれに関連する化合物が、次の通りに調製され得ることが企図される。
【0201】
【化41】
【0202】
化合物Jは、例えば水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素リチウム又はDIBALを使用する、化合物Fのエステルの還元によって、調製され得ることが企図される。当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、エステルのアルコールへの還元に有用であり得る代わりの試薬があることを認識するであろう。化合物Kは、化合物Jを、例えば、MsCl、Ts-Cl、Bs-Cl、トリフル酸無水物、CBr/PPh、N-ヨードスクシンイミド/PPh又はCCl/PPhと反応させることによって、調製され得る。当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、代わりの条件もアルコールを脱離基に変換するために適切であり得ることを認識するであろう。式Kの化合物において、Rは、特定の用途に応じて、-OMs、-OTf、-OTs、-OBs、-Cl、-Br、-I又は任意の他の適切な脱離基であってよい。化合物Lは、例えば、塩基性条件下、化合物Kをマロン酸ジアルキルと反応させることによって、調製され得る。当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、脱離基をマロン酸ジアルキルで置きかえるための多くの適切な条件があり得ることを認識するであろう。式Lの化合物において、各Rは、独立して、例えば、置換されていてもよいC-Cアルキルであってよい。化合物Mは、化合物Lのタンデム脱炭酸によるアセタール及びエステルの同時酸加水分解によって、調製され得ることが企図される。当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、この転換に有用であり得る種々の試薬及び触媒があることを認識するであろう。化合物Nは、化合物Mとのウィッティヒ反応によって、調製され得る。当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、ウィッティヒ反応代替が利用可能であり得、ジュリアカップリング及びホーナー・エモンズカップリング反応を含み得るがこれらに限定されないことを認識するであろう。
【0203】
式G又はHの化合物が使用される場合、GTA化合物、その誘導体及び/又はそれに関連する化合物が、次の通りに調製され得ることが企図される。
【0204】
【化42】
【0205】
化合物Hは、リンドラー触媒又はボラン等の試薬を使用する還元(ヒドロホウ素化)によって、化合物Gに変換され得ることが企図される。当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、三重結合のシス-オレフィンへの還元に影響するための適切な代わりの試薬及び方法が使用されてもよいことを認識するであろう。化合物Oは、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素リチウム又はDIBALを使用する、化合物Gのエステルの還元によって、調製され得る。当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、代わりの試薬が、エステルのアルコールへの還元に有用であり得ることを認識するであろう。化合物Pは、化合物Oを、例えば、MsCl、Ts-Cl、Bs-Cl、トリフル酸無水物、CBr/PPh、N-ヨードスクシンイミド/PPh又はCCl/PPhと反応させることによって、調製され得る。当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、アルコールを脱離基に変換するために有用な代わりの条件が使用され得ることを認識するであろう。式Pの化合物において、Rは、特定の用途に応じて、-OMs、-OTf、-OTs、-OBs、-Cl、-Br、-I又は任意の他の適切な脱離基であってよい。化合物Qは、塩基性条件下、化合物Pをマロン酸ジアルキルと反応させることによって、調製され得る。当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、脱離基をマロン酸ジアルキルで置きかえるための多くの利用可能な条件があり得ることを認識するであろう。式Qの化合物において、各Rは、独立して、例えば、置換されていてもよいC-Cアルキルであってよい。化合物Rは、化合物Qのタンデム脱炭酸によるアセタール及びエステルの同時酸加水分解によって、調製され得る。当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、この転換に有用であり得る種々の試薬及び触媒があり得ることを認識するであろう。化合物Sは、化合物Rとのウィッティヒ反応によって、調製され得ることが企図される。当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、ウィッティヒ反応代替が利用可能であり得、ジュリアカップリング及びホーナー・エモンズカップリング反応を含み得るがこれらに限定されないことを認識するであろう。
【0206】
理解されるであろう通り、上記で提示したもの等の合成経路を使用して、GTA化合物、その誘導体、その標識バージョン及び/又はそれに関連する化合物を生成し得る。試薬、反応物質及びR基の選択を通して、様々な異なるGTA又はGTA様化合物が、そのような合成経路を使用して調製され得ることが企図される。ある特定の実施形態において、同位体標識及び/又は放射性標識等の標識は、合成中に標識が化合物に組み込まれるような、1又は2以上の標識を担持する試薬/反応物質を使用することによって、そのようなGTA化合物及び誘導体に組み込まれ得る。
【0207】
式I及びIIIの化合物を調製するためのより詳細な提案される合成経路を、以下に提供される実施例4及び5においてさらに記載する。
【0208】
試料中におけるGTAのレベルを決定するための方法
GTA-446化合物、及び同位体標識誘導体を含むその誘導体は、GTA定量化アッセイにおいて特に有用であり得る。ある特定の実施形態において、そのような化合物は、例えば、同位体希釈質量分析方法の使用を含むGTA-446定量化を可能することによって、市販のCologic(登録商標)結腸がんスクリーニング検査を強化するために使用され得る。
【0209】
GTA-446定量化方法及びアッセイ、並びに、対象を、大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法及びアッセイの例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2007/030928号パンフレットにおいて詳細に記載されているものを含み得る。該参考文献は、中でも、GTA-446に対応する446.34ダルトンの代謝マーカー及び本明細書において記載されている新たに解明された構造について記載している。
【0210】
理解されるであろう通り、本明細書において記載されている通りのGTA-446化合物、及び同位体標識誘導体を含むその誘導体は、所望の消化管酸(GTA)のレベルを調査するGTA定量化アッセイにおいて有用であり得る。消化管脂肪酸(GTA)は、ホモ及びヘテロ14~22炭素二量体脂肪酸のファミリーを含むことが認識されることになり、現在記載されているGTA-446化合物及びその誘導体は、これらのGTAの定量化において有用であり得ることが本明細書において企図される。
【0211】
プロトタイプGTAファミリーメンバー、GTA-446は、式Iによって描写される通り、2つの14-炭素鎖からなる。GTA-446は、大腸がんスクリーニングのための商業的Cologic(商標)血液検査において測定される分析物であるのに対し、GTA PC-594、2つの二量体化された18-炭素脂肪酸で構成される36炭素ジカルボン酸脂肪酸は、膵臓がんリスクのためのPanaSee(商標)血液検査において測定される。現在、いずれの方法も内部標準を組み込んでおらず、これはそのような標準の欠如による。そのような標準の欠如は、複数のプラットフォームでアッセイを実行することを難しくし、アッセイ結果を幾分限定する。現在記載されている主題を使用して、Cologic(商標)及びPanaSee(商標)等のアッセイとの組合せに適切であり得る12C及び13C構造を提供することによって、内部標準の欠如に対処し得る。
【0212】
GTA-446特異的標準は、GTA-446レベルを測定するCologic(商標)アッセイに特によく適合し得るが、そのような標準は、任意の他の適切なGTAの定量化にも有用であり得ることが企図される。これまでに測定されたすべてのGTAは、衝突誘起解離(CID,collision-induced dissociation)タンデム質量分析下で、特に水及び二酸化炭素損失の相対的パターンにおいて、独自のフラグメンテーションパターンを示す。理論に縛られることを望むものではないが、当業者ならば、標準が標的分析物と同様の特性を呈する限り、代わりの参照標準を使用して様々な分子を定量化し得ることが分かるであろう。GTA代謝系の場合において、GTA-446のCID下での挙動は、他のGTAと同様であり、故に、GTA-446の13C内部標準及び12C/13C GTA446の同位体希釈曲線は、適切な解析信頼度を持つ複数のGTA種にわたって、相対的定量化を提供するのに役立ち得る。
【0213】
ある特定の実施形態において、本明細書において記載されている通りのGTA-446ベースの化合物は、例えば、GTA PC-594を調査するためのPanaSee(商標)アッセイと組み合わせて使用され得る。例として、本明細書において記載されている通りのGTA-446ベースの化合物は、国際公開第2011/038509号パンフレットにおいて記載されている通り、GTAのレベルを調査するために使用され得る。故に、ある特定の実施形態において、試料中における消化管酸(GTA)のレベルを決定するための方法であって、
試料からのGTA検出シグナルを測定するステップであって、GTA検出シグナルが試料中におけるGTAレベルを表している、測定するステップと、
測定されたGTA検出シグナルを校正基準と比較することによって、試料中におけるGTAのレベルを定量化するステップと
を含む、前記方法が、本明細書において提供される。
【0214】
ある特定の実施形態において、GTAは、
【0215】
【化43】
【0216】
、又は別の適切なGTAファミリーメンバーであってよい。
【0217】
ある特定の実施形態において、GTA検出シグナルは、質量分析によって測定されてよい。ある特定のさらなる実施形態において、GTA検出シグナルは、市販のCologic(登録商標)アッセイのような及び/又は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2007/030928号パンフレットにおいて記載されている通りの技術のような質量分析技術によって測定されてよい。
【0218】
上述した方法のある特定の実施形態において、校正基準は、既知量の本明細書において定義されている通りの化合物を使用して調製された標準曲線を含み得る。
【0219】
ある特定の実施形態において、上述した方法は、
試料を、既知量の本明細書において定義されている通りの同位体標識化合物でスパイクするステップと、
試料からの内部標準シグナルを測定するステップであって、内部標準シグナルが試料にスパイクされる既知量の同位体標識化合物を表している、測定するステップと
をさらに含み得る。
【0220】
内部標準シグナルは、ある特定の実施形態において、質量分析によって測定されてもよい。
【0221】
ある特定の実施形態において、上述した方法は、測定されたGTA検出シグナルによって表される、試料中におけるGTAレベルの、内部標準シグナルによって表される、試料にスパイクされる既知量の同位体標識化合物に対する比を決定するステップをさらに含み得る。校正基準は、ある特定の実施形態において、可変GTA/同位体標識化合物比及び前記比が比較される濃度の一連の混合物から生成された同位体希釈曲線(IDC)を含み得る。ある特定の実施形態において、IDCは、GTA含有量が固定量の同位体標識化合物に対して変化する一連の混合物から生成され得る。ある特定の実施形態において、固定量の同位体標識化合物は、試料にスパイクされる既知量の同位体標識化合物と実質的に同じであってよい。
【0222】
当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、IDC質量分析技術、同位体希釈質量分析技術、及びIDC曲線を生成するための方法に気付くであろうし、そのような技術を、特定の用途に適合するように所望される通りに選択及び/又は修正することができるであろう。
【0223】
試料中における消化管酸(GTA)のレベルを決定する際に使用するための校正基準を生成するための、本明細書において記載されている通りの化合物の使用も、本明細書において提供される。ある特定の実施形態において、GTAは、
【0224】
【化44】
【0225】
、又は別の適切なGTAファミリーメンバーであってよい。
【0226】
また、試料中における消化管酸(GTA)のレベルを決定する際に使用するための内部標準としての本明細書において定義されている通りの同位体標識化合物の使用も、本明細書において提供される。ある特定の実施形態において、GTAは、
【0227】
【化45】
【0228】
、又は別の適切なGTAファミリーメンバーであってよい。
【0229】
本明細書において記載されている通り、定量化すること又は定量化は、試料又は体液中における、相対的又は定量的用語いずれかでの、特定の分子、例えばGTAの量の決定に関するように意図される。例えば、これは、モル/L、重量パーセント、又は他の標準測定単位での、分子の濃度の決定を意味し得る。代替として、該用語は、内部標準又は対照に対する分子のレベルの相対的決定に関し得る(例えば、濃度を計算することなく)。例えば、分子の相対的定量化は、内部標準又は対照と比較した、例えば、疾患又は治療の進行を測定するために前の時点と比較した経時的な、対象における増大又は減少の決定を伴い得る。
【0230】
対象を、大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法
GTA-446化合物、及び同位体標識誘導体を含むその誘導体は、対象を、GTA-446レベルに関係する大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法において、特に有用であり得る。ある特定の実施形態において、そのような化合物は、例えば、同位体希釈質量分析方法の使用を含むGTA-446定量化を可能にすることによって、市販のCologic(登録商標)結腸がんスクリーニング検査を強化するために使用され得る。
【0231】
GTA-446定量化方法及びアッセイ、並びに、対象を、大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法及びアッセイの例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2007/030928号パンフレットにおいて詳細に記載述されているものを含み得る。該参考文献は、中でも、GTA-446に対応する446.34ダルトンの代謝マーカー及び本明細書において記載されている新たに解明された構造について記載している。
【0232】
ある特定の実施形態において、対象を、大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法であって、
対象から得られた試料中における消化管酸(GTA)のレベルを、
試料からのGTA検出シグナルを測定することであって、GTA検出シグナルが試料中におけるGTAレベルを表している、測定すること、及び
測定されたGTA検出シグナルを校正基準と比較することによって、試料中におけるGTAのレベルを定量化すること
によって決定するステップと、
試料中におけるGTAの決定されたレベルが健常対照群と比較して低減している場合に、対象を、大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するステップと
を含み、
GTAが、
【0233】
【化46】
【0234】
である、前記方法が、本明細書において提供される。
【0235】
ある特定の実施形態において、GTA検出シグナルは、質量分析によって測定されてよい。ある特定のさらなる実施形態において、GTA検出シグナルは、市販のCologic(登録商標)アッセイのような及び/又は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2007/030928号パンフレットにおいて記載されている通りの技術のような質量分析技術によって測定されてよい。
【0236】
上述した方法のある特定の実施形態において、校正基準は、既知量の本明細書において定義されている通りの化合物を使用して調製された標準曲線を含み得る。
【0237】
ある特定の実施形態において、対象から得られた試料中におけるGTAのレベルを決定するステップは、
試料を、既知量の本明細書において記載されている通りの同位体標識化合物でスパイクすること、及び
試料からの内部標準シグナルを測定することであって、内部標準シグナルが試料にスパイクされる既知量の同位体標識化合物を表している、測定すること
をさらに含み得る。
【0238】
ある特定の実施形態において、内部標準シグナルは、質量分析によって測定されてもよい。
【0239】
ある特定の実施形態において、そのような方法は、測定されたGTA検出シグナルによって表される、試料中におけるGTAレベルの、内部標準シグナルによって表される、試料にスパイクされる既知量の同位体標識化合物に対する比を決定するステップをさらに含み得る。校正基準は、ある特定の実施形態において、可変GTA/同位体標識化合物比及び前記比が比較される濃度の一連の混合物から生成された同位体希釈曲線(IDC)を含み得る。ある特定の実施形態において、IDCは、GTA含有量が固定量の同位体標識化合物に対して変化する一連の混合物から生成され得る。固定量の同位体標識化合物は、ある特定の実施形態において、試料にスパイクされる既知量の同位体標識化合物と実質的に同じであってよい。
【0240】
当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、IDC質量分析技術、同位体希釈質量分析技術、及びIDC曲線を生成するための方法に気付くであろうし、そのような技術を、特定の用途に適合するように所望される通りに選択及び/又は修正することができるであろう。
【0241】
ある特定の実施形態において、対象を、
【0242】
【化47】
【0243】
である消化管酸(GTA)のレベルの変化に関連する大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法における、本明細書において記載されている通りの化合物の使用が、本明細書において提供される。
【0244】
別の実施形態において、対象を、
【0245】
【化48】
【0246】
である消化管酸(GTA)のレベルの変化に関連する大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法において使用するための校正基準を生成するための、本明細書において記載されている通りの化合物の使用が、本明細書において提供される。
【0247】
さらに別の実施形態において、対象を、
【0248】
【化49】
【0249】
である消化管酸(GTA)のレベルの変化に関連する大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法において使用するための内部標準としての、本明細書において記載されている通りの同位体標識化合物の使用が、本明細書において提供される。
【0250】
イムノアッセイ-抗体生成
別の実施形態において、GTA-446と特異的に結合する抗体又はそのフラグメントを生成するための、本明細書において記載されている通りのGTA-446化合物の使用が、本明細書において提供される。そのような抗体は、GTA-446の検出及び/又は定量化において、様々な使用を有し得る。そのような抗体は、ある特定の実施形態において、試料中におけるGTA-446レベルを検出及び/又は定量化するための、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)等のイムノアッセイにおいて使用するためのものであってよい。
【0251】
これまで、GTA-446の定量化は、タンデム質量分析に限定されており、適切な抗体の欠如により、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって実施されてこなかった。特異的抗体の産生は、概して、十分な分量の純粋な化合物を要し、これは、合成GTA-446が入手困難であることによってこれまで制限されてきた。
【0252】
ある特定の実施形態において、抗GTA-446抗体の生成における、単離された、精製された又は合成GTA-446の使用が、本明細書において提供される。ある特定のさらなる実施形態において、そのような抗GTA-446抗体を用いる、GTA-446検出及び/又は定量化イムノアッセイが、本明細書において提供される。
【0253】
ある実施形態において、式I:
【0254】
【化50】
【0255】
の化合物と特異的に結合する、抗体又はその抗原結合フラグメントが、本明細書において提供される。
【0256】
ある特定の実施形態において、抗体は、モノクローナル又はポリクローナル抗体であってよいか、又はそれを含んでいてもよい。
【0257】
別の実施形態において、本明細書において記載されている通りの化合物の、前記化合物の抗原性エピトープと特異的に結合する抗体を調製するための抗原としての使用が、本明細書において提供される。
【0258】
当業者ならば、本明細書における教示を考慮して、本明細書において記載されている通りの抗GTA-446抗体又はそのフラグメントを生成するための、様々な適切な技術に気付くであろう。そのような技術の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Antibodies: A Laboratoy Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2014, ISBN: 978-1-936113-81-1において記載されているものを含み得る。
【0259】
試料中におけるGTAのレベルを決定するためのイムノアッセイ
本明細書において記載されている通りの抗GTA-446抗体は、試料中におけるGTAレベルの検出及び/又は定量化のための、ELISAベースのアッセイ等であるがこれに限定されないイムノアッセイにおいて使用され得る。
【0260】
ある特定の実施形態において、試料中における消化管酸(GTA)のレベルを決定するための方法であって、
試料中におけるGTAのレベルを、GTAと特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを用いるイムノアッセイを使用して測定するステップを含み、
GTAが、
【0261】
【化51】
【0262】
である、前記方法が、本明細書において提供される。
【0263】
ある特定の実施形態において、イムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含み得る。
【0264】
ある特定の実施形態において、上述した方法は、本明細書において定義されている通りの化合物を含む対照試料を、イムノアッセイにおける陽性対照として使用するステップをさらに含み得る。
【0265】
さらなる実施形態において、上述した方法は、試料中におけるGTAのレベルを外挿するために標準曲線を使用するステップをさらに含み得、標準曲線は、複数の既知量の本明細書において記載されている通りの化合物を使用して生成されたものである。
【0266】
別の実施形態において、試料中における消化管酸(GTA)のレベルをイムノアッセイによって決定又は定量化するための、抗GTA-446抗体又はそのフラグメントの使用であって、GTAが、
【0267】
【化52】
【0268】
である、前記使用が、本明細書において提供される。
【0269】
対象を、大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するためのイムノアッセイ
本明細書において記載されている通りの抗GTA-446抗体は、対象を、大腸がん(CRC)を有する又は発病するリスクがあるとして同定する診断方法の一部としての、試料中におけるGTAレベルの検出及び/又は定量化のための、ELISAベースのアッセイ等であるがこれに限定されないイムノアッセイにおいて使用され得る。
【0270】
ある特定の実施形態において、対象を、大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法であって、
対象から得られた試料中における消化管酸(GTA)のレベルを、
試料中におけるGTAのレベルを、GTAと特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを用いるイムノアッセイを使用して測定すること
によって決定するステップと、
試料中におけるGTAの決定されたレベルが健常対照群と比較して低減している場合に、対象を、大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するステップと
を含み、
GTAが、
【0271】
【化53】
【0272】
である、前記方法が、本明細書において提供される。
【0273】
ある特定の実施形態において、イムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含み得る。
【0274】
さらなる実施形態において、上述した方法は、本明細書において記載されている通りの化合物を含む対照試料を、イムノアッセイにおける陽性対照として使用するステップをさらに含み得る。
【0275】
さらなる実施形態において、試料中におけるGTAのレベルを決定するステップは、試料中におけるGTAのレベルを外挿するために標準曲線を使用するステップをさらに含み得、標準曲線は、複数の既知量の本明細書において記載されている通りの化合物を使用して生成されたものである。
【0276】
別の実施形態において、対象を、
【0277】
【化54】
【0278】
である消化管酸(GTA)のレベルの変化に関連する大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断方法における、本明細書において記載されている通りの抗GTA-446抗体又はその抗原結合フラグメントの使用が、本明細書において提供される。
【0279】
定量化及び/又は診断キット
ある特定の実施形態において、試料中におけるGTAレベルの検出及び/又は定量化に関連するキットが、本明細書において提供される。
【0280】
ある実施形態において、試料中における消化管酸(GTA)のレベルを定量化するためのキットであって、
本明細書において記載されている通りの化合物、
本明細書において記載されている通りの代謝トレーサー、
本明細書において記載されている通りの組成物、
本明細書において記載されている通りの診断剤、及び
本明細書において記載されている通りの抗体又はその抗原結合フラグメント
のうち少なくとも1つを含み、
本明細書において記載されている通りの方法を実施するための説明書のセットをさらに含んでいてもよい、
キットが、本明細書において提供される。
【0281】
別の実施形態において、対象を、大腸がんを有する又は発病するリスクがあるとして同定するための診断キットであって、
本明細書において記載されている通りの化合物、
本明細書において記載されている通りの代謝トレーサー、
本明細書において記載されている通りの組成物、
本明細書において記載されている通りの診断剤、及び
本明細書において記載されている通りの抗体又はその抗原結合フラグメント
のうち少なくとも1つを含み、
本明細書において記載されている通りの方法を実施するための説明書のセットをさらに含んでいてもよい、
キットが、本明細書において提供される。
【実施例1】
【0282】
ヒト血清からのGTA-446単離のための方法
ヒト血清からGTA-446を単離するための一般的なプロセス(例えば、図18を参照)は、高いGTA-446濃度を持つロットについて市販の血清の複数のロットの評価、続いて、大(50L)量の選ばれたロットの調達を伴い得る。この例における血清の試験ロットは、ギ酸で緩衝した、水と酢酸エチルとの間で抽出した。GTA-446は、選択された方法下、9つの他の同様の脂肪酸のプールにより、16.3~17.6分の間で溶出した(図2参照)。血清源の選択は、他の汚染物質がプロセスにおける精製の効率を低減させ得ることから、GTA-446による出発時の(staring)抽出が、スケールアップ抽出のためにいかに清潔にされ及び濃縮されているかに基づいて決めた。
【0283】
血清中における内因性GTA-446の低い存在度(図1)により、本明細書において、血清抽出プロトコールが設計された。ヒト血清マトリックスは、ある範囲の溶解度を有する様々な成分で構成されている。タンパク質、脂質及び炭水化物等の複合分子に加えて、血清は、アミノ酸、ビタミン及び他の小代謝産物等の非常に小さい分子も含有する。それらの構造的官能性は、非常に極性の高い(水/メタノール媒質中の、炭水化物及びタンパク質並びに他の親水性成分)~中極性(酢酸エチル、クロロホルム及びジクロロメタン中の、リン脂質及び脂肪酸並びに他のヘテロ原子の小代謝産物)~非極性(ヘキサン中の、トリ及びジグリセリド並びにより大きい糖脂質)溶媒組合せの範囲の、可変溶解度をもたらす。したがって、取り扱う及び蒸発させるために安全及び好都合であるGTA-446濃縮画分を得る初期分離ステップのための適切な溶媒スキームの選択を実施した。タンデムMS/MSフラグメンテーションは、低分子量(500amu未満)と一緒に、標的分子がカルボン酸及びヒドロキシル官能性を持つ小代謝産物であり(上述した通り)、酢酸エチル/メタノール溶媒組合せ中で容易に可溶化されるであろうことを示唆した。メタノールがマトリックス中におけるタンパク質の沈殿をもたらすことから、この溶媒組合せは、抽出に好都合である。
【0284】
水中酢酸エチルの、メタノールの存在下での混和性により(後者は、水中酢酸エチルを混合するためのメディエーターとして作用する)、単相沈殿ステップは、予備GTA-446濃縮ステップにおいてGTA-446の良好な濃度を実現するように設計された。二相沈殿とは異なり、CRCマーカーの有機相への完全な移行が弱い静電引力及び水性相との分子間水素結合により阻害されるかもしれない場合、いかなる初期相分離もないことから、単相沈殿ステップによりそのようなリスクが低減された。この仮説を検証するために、単相(MeOH-1~MeOH-2)及び二相(N1~N3)分離間の抽出物を、MS解析を使用して比較し、これにより、前者が後者を上回る20%の抽出効率を示すことを検出した(図3)。
【0285】
GTA-446抽出を改善するための取り組みの中で、適正な酸強度を持つメタノール/酢酸エチル比の選択、及び沈殿のための待ち時間について研究した。このステップにおける方法開発中の主な焦点は、蒸発時間及び廃溶媒の低減も可能にするであろう低い溶媒容量を使用して良好な抽出効率を得ること、並びに低い酸強度を使用することであった。血清:MeOH(1%ギ酸を加えたもの):EtOAcの1:2:4の比を有する溶媒混合物を沈殿ステップのために選択して、沈殿まで5分間の待ち時間を可能にした。
【0286】
均質化された液体を遠心分離及びデカントすることによって、液体から沈殿したタンパク質固体を分離したところ、今や血清中はすべて極性及び非極性可溶分となった。単離プロセスにおける次の段階は、減圧下で低温蒸発を容易にすること及びGTA-446を含有する血清の粗有機抽出物を得るための、GTA-446の揮発性溶媒系への相分離であった。単相溶液中において、メタノールは、水及び酢酸エチルを混合するための中間体として作用するため、有機及び水性相の両方が分離不可能である。
【0287】
抽出媒質中における水の存在が、蒸発ステップ中により長い時間及びより高い温度を産生したことから、大容量の溶媒混合物(HO:MeOH:EtOAc、1:2:4)は、小規模ロータベーパーを使用して効率的に蒸発させるのに不都合であった。また、酸性水性相中におけるGTA-446の安定性は、ラクトン形成の可能性による懸案事項であった。したがって、水性相から、中性、低極性、有機相へのGTA-446の迅速な及び効率的な分離は、単相沈殿ステップの後で抽出シーケンスに相分離ステップを導入することによって設計した。これは、所望の分析物から水性相中に抽出された不要な極性物質のほとんども分離した。相分離は、水と酢酸エチルとの溶媒比を調整し、水よりも酢酸エチルの量が多いと溶媒を2つの層に簡単に分離することによって;又は、有機可溶分を上部有機相中に分散させる、ヘキサン等の非混和性の非極性溶媒を添加することによってのいずれかで、実現した。一連の実験は、沈殿ステップから得られた溶媒混合物への、異なる容量の水、酢酸エチル及びヘキサンの、異なる組合せでの添加を有するように設計した(表1)。
【0288】
【表1】
【0289】
有機及び水性相の両方を収集し、飛行時間質量分析によって解析して、各実験におけるGTA-446抽出効率を決定した。GTAマーカーパネルは、抽出効率において顕著な差異を示さなかったすべての種類の試験抽出の有機相において検出された。3つの溶媒組合せの中で、GTA-446抽出に基づく区別はなかったため、相分離の優れた明瞭性により、ヘキサンを選択した。相分離を得るために水を添加した2つの実験では、エマルションが形成され、明確な分離を得るにはより長い時間がかかった。また、水性相の全容積は、バルク抽出における他の2つと比較してはるかに少なく、取り扱いやすかった。したがって、同定された最終溶媒比は、1:2:4:4 血清:メタノール:酢酸エチル:ヘキサンであった。次いで、有機上部層を蒸発乾固させて、その元のマトリックス中の極性不純物のほとんどを欠いている、GTA-446が濃縮された粗抽出物を得た(図4参照)。
【0290】
単離プロセスの次のステップは、粗マトリックス中の他の不純物からのGTA-446の分離及び精製であり、順及び逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC,high performance liquid chromatography)並びにフラッシュカラムクロマトグラフィーを使用するカラム分離シーケンスに依拠していた。具体的には、順相クロマトグラフィーを最初に実施して、粗混合物から、トリ及びジアシルグリセリド並びに同様の実体等の非極性材料のほとんどを排除した。他の一般的な血清脂肪酸を持つGTA-446と中~長鎖長の誘導体との間の適合する極性性質により、それらは、各種脂肪化合物のプールとして、一緒に溶出する傾向がある。その結果、血清中における適合する成分から95%を超える純度を得るためのGTA-446の分離及び単離は難しく、脂肪酸及びそれらのアナログの微量不純物レベルは、多くの場合、細かいHPLC精製の後であっても、精製されたGTA-C28画分とともに残存する。これは、干渉シグナルにより、NMRデータを使用して完全な構造解明を得ることを難しくしていた。この困難を克服するために、ほとんどの不純物を排除するHPLCへの注入前に、初期順相フラッシュカラム分離、続いて、逆相FCの使用を用い、その後のHPLC精製のために一画分中にGTA-446及び密接に関連した分子を残す方法が開発された。
【0291】
初期順相フラッシュカラム分離は、シリカゲルを使用し、低~高極性の溶媒勾配を用いた。粗血清抽出物をシリカゲルカラムに充填し、酢酸エチル中、より高いヘキサン濃度で出発し、メタノール中、より高いジクロロメタン濃度で終了する、溶媒で溶出した。溶出物を6つの異なる画分として収集し、減圧下で蒸発乾固させて、各画分の粗試料を得た。乾燥画分は、負の大気圧化学イオン化(NAPCI,negative atmospheric pressure chemical ionization)下、飛行時間又は他の同様の質量分析技術によって解析され得る。フルスキャンフローインジェクションクロマトグラムは、GTA-446バイオマーカーが、典型的には、F3(20mg、2.2%回収率)において、他のC36-GTAアナログ(m/z:550~600amu)とともに、60:40 ヘキサン/EtOAcの溶媒組合せで溶出することを示した(図5参照)。負のAPCIモードでの画分1及び2のクロマトグラフ解析は、脂肪酸不純物のほとんど[m/z:255.2(16:0)、279.2(18:2)、281.2(18:1)、303.2(20:4)]が溶出したことを指し示した。画分4の粗ドライダウン(crude dry down)の解析は、より極性の高いC36-GTAの存在を指し示し、画分4の後に溶出した関連分子はなかった。
【0292】
逆相フラッシュカラム分離は、C-18結合シリカに依拠し、水中60%アセトニトリルで出発し、95%まで次第に増大し、100%メタノール洗浄液で終了して、100mlずつの15の画分を収集した。次いで、乾燥画分のフルスキャンフローインジェクションクロマトグラム(full scan flow injection chromatogram)を使用して、典型的には75:25及び80:20 AcCN:HOの溶媒組合せを持つ他のC28-GTAアナログとともにF5及び6において現れる、GTA-446を含有する画分を同定した(図6及び7)。後者の画分F7及び12は、他のC28-C36-GTAアナログの組合せを含有していた。次いで、GTA-446リッチ画分(F5及び6)を合わせて、60%を上回るGTA-446を含有する別のGTA-446リッチ画分を得たが、試料中には依然として他のC28及びC36-GTAアナログがあった。純度をさらに改善するために、GTA-446構造異性体を効率的に分割する、調節された2ステップのHPLC分離を実施した。
【0293】
FCC分離と同様に、2ステップHPLC分離は、初期逆相ステップ、続いて、分取HPLCを使用する順相(シアノ(CN)カラム)ステップを含んでいた。逆相FCC分離からのGTA-446濃縮画分を、ダイオードアレイ検出器及びUV/vis吸収を用いる逆相カラムを使用する分取HPLC分離に適切な、適切な溶媒(1:1 CHCl:CHCN)に溶解した。次いで、異なる比の水:アセトニトリル:ギ酸を混合し、14~29分の間、30秒溶出画分を収集することによって作製した2つの溶媒系を使用して、勾配溶出を35分間かけて行った。収集された画分の解析は、GTA-446濃縮が75%を上回ることを示したが、不純物として他のC28-GTAアナログがあった。
【0294】
次いで、逆相分取HPLCからのGTA-446濃縮画分をプールし、ヘキサン、EtOAc及びギ酸を含むアイソクラティック溶媒で溶出するシアノ結合順相分取HPLCカラムを使用するさらなる精製に供した。UVカットオフ波長を、λ=256nmを超える値に設定して、EtOAcからのシグナル干渉を克服した。代替として、溶媒のスペクトル干渉を回避するためにUV検出器をMS検出器と取り換えてよく、MSデータを使用するGTA-446の存在の検出のために、小容量の溶出剤を毎回試験してよく、これは、信頼できる検出方法を提供し得る。LCMSによる第2の分取HPLC精製から収集された画分の解析は、典型的には、同様のタンデムMSパターンを示す複数の立体異性形態の95%を超えるGTA-446の純度を指し示した。血清中の初期出発濃度に応じて、40Lのヒト血清から、種々の画分の中でおよそ5mgの精製されたGTA-446を得ることが可能であった。
【0295】
図8は、分取HPLC-RP分離からのNAPCIにおけるGTA-446リッチ試料のフルスキャンクロマトグラムを示す。
【実施例2】
【0296】
ヒト血清からのGTA-446単離のための実験プロトコール
この例では、120mlの解凍及びよく混合したSeracare社製血清を、2000mlの目盛り付きガラスボトルに添加した。同じボトルに、内容物を旋回させながら、0.1%ギ酸で酸性化した240mlのメタノールをゆっくりと添加した。混合物を、タンパク質沈殿の完了のために5分間にわたって静置させた。次に、同じフラスコに、480mlの酢酸エチル溶液をゆっくりと添加した。混合物をさらに5分間にわたって静置させた。次いで、溶液を手で撹拌して、均質化混合物を得て、16個の50mlのファルコンチューブに等しく(約52.5ml/チューブ)配分した。これらを10分間にわたって遠心分離して(3500rpm/4℃)、沈殿物を気密パレットに押し込むと、液体から十分に分離したチューブの底に留まった。上清を、480mlのヘキサンを含有する分液漏斗に移し、よく振とうし、相を分離させた。有機相を、質量分析法により、GTA-446の存在について解析した。底部水性相を収集し、さらなる抽出のためにヘキサンの第2の漏斗に移した。上部有機層を無水硫酸ナトリウム下で乾燥させ、濾過し、減圧下で乾燥させて、ヒト血清の粗有機抽出物(45Lの血清を処理して合計208.05g)を得た。
【0297】
上記の沈殿方法から得られた合計208gの粗有機抽出物を、順相(normal phase)フラッシュカラムクロマトグラフィー分離に供した。カラム条件及び溶媒勾配を表2にまとめる。カラム直径、シリカゲルの重量及び溶出剤の容量を、使用した際の粗有機抽出物の重量に対してスケールアップした。
【0298】
【表2】
【0299】
圧縮空気をフラッシュして気泡の捕捉を回避して装填の均質化を得ながら、ヘキサンを使用してカラムを取り付けた。30gの粗抽出物を、最小容量のDCMに溶解し、カラムに取り付けた。画分を収集し、GTAを含有する各画分(F8~F13)のLCMS解析に基づき、減圧下で蒸発乾固させ、ドライダウンされたものをさらなる分離に使用した。他の画分を廃棄した。208gの粗有機抽出物を処理して合計約3gを収集した。
【0300】
プールFCC-NP画分(Q-Starデータに基づくF8~F13から)を含有する合計2.5gのGTA-446を、FCC-RPでさらに分離した。カラム条件及び溶媒勾配を表3にまとめる。カラム直径、シリカゲルの重量及び溶出剤の容量を、使用した際の粗有機抽出物の重量に対してスケールアップした。
【0301】
【表3】
【0302】
アセトニトリルを使用してカラムを取り付け、圧縮空気をフラッシュして気泡の捕捉を回避して装填の均質化を得ながら、60:40 AcCN:HOで平衡させた。1gの粗抽出物を、1:1 AcCN:DCMを使用して溶解し、カラムに取り付けた。画分を収集し、LCMSによって解析した。GTA-446の大部分がAcCN/HO 70/30の組合せによって溶出し、より少ない量が、65/35のAcCN/HOを使用する最終画分において溶出した。これらの画分を減圧下で乾燥させ、重量を決定した。2.5gの粗有機抽出物を処理して、合計およそ1.6gを収集した。これらを、その後、HPLCにおけるさらなる精製に供した。
【0303】
FCC_RPからのGTA-446リッチプール(140mg)を、1:1 CHCl:ACN中で可溶化して、180mg/mL溶液を産生し、これを、次の通りの逆相条件下で、分取LC精製のための充填物として使用した:溶媒A=HO:ACN:ギ酸(95:5:0.05)、溶媒B=0.05%ギ酸を加えたACN、流速=25.5mL/分、温度=周囲、λ=210nmカラム=21.2mm×150mm、5μm、分取HT XDB-C18(Agilent社、970150-902、SN.USMQ001200)溶媒組成=35分間にわたって75%B 分別=14~29分から合計で30の画分(30秒スライス)。表4に示される通り、UV吸収及び保持時間ウィンドウに基づき個々の画分をプールした。
【0304】
【表4】
【0305】
次いで、7つのプールされた試料を、逆及び順相両方のクロマトグラフィーを使用するLCMSにおいて解析して、GTA-446単離及び他の考えられる不純物干渉の程度を視覚化した。プールされた試料5、5B及び7はいずれも、単離されたGTA-446レベルを示した。プール5及び5aの逆相LCMSは、GTA-446がほぼ完全に単離されたことを示したが、順相LCMSスペクトルは、異なる異性体及び他の微量不純物の間を分割するために、順相におけるさらなる精製が必要とされることを示した。
【0306】
25.7mgの逆相分取HPLC精製されたGTA-446リッチ試料を、150ulのCHClに溶解し、下記のLC条件を使用する順相分取HPLC(SBCN)においてさらに精製した。流速=4ml/分、温度=周囲、カラム=9.4mm×300mm、5μm、Zorhax SB-CN(Agilent社)、注入容量40ul。LC勾配は、表5に示される通りであった。
【0307】
【表5】
【0308】
表6に示す通りの保持時間ウィンドウに基づいて画分をプールした。
【0309】
【表6】
【0310】
プールされた試料のそれぞれをLCMSにおいて解析し、許容される精製(95%を超えるGTA-446)を示した。3つのGTA-446同位体が、プール1、2及び4において、それぞれ2.2、3.2及び3.8分の異なるtRで同定された。プール3はごくわずかであり、プール5は、標的のさらなる回収のために同じ条件下で再精製され得るカラム洗浄液をほとんど含有していた。プールされた試料を乾燥させ、秤量し、完全な構造解明のためにNMR分光法において解析した。各異性体についての最終重量は、表7に示される通りであった。
【0311】
【表7】
【実施例3】
【0312】
GTA-446の構造的特性決定
精製された異性体を、H、13C等の1D NMR実験、並びにH-H(COSY)、H-C(HMQC)及びロングレンジC-H(HMBC)カップリングのような2D実験において解析して、GTA-446の完全な構造解明を得た。最も豊富な異性体の構造を、MS(図9、10)及びNMR分光法(図11~14)を使用して得られたスペクトル情報を使用し、解明した。GTA-446のタンデムMSスペクトルの評価(m/z445.3(M-))は、異なる強度におけるHO(M--18)、CO(M--44)、2×HO(M--36)及びCO+HO(M--62)の損失を示唆している。この強度パターンは独自であり、任意の血清由来のGTA-446のMS/MSフラグメンテーションに一致する。COの損失は、これらが考えられるカルボン酸であるという結論につながった。水の損失は、最初は、それらがヒドロキシル基を含有することを示唆し、水及び二酸化炭素の損失は、一緒になって、カルボキシル及びヒドロキシル官能性が、単一カルボキシル基からよりも互いに分離されるべきであることを示唆していた。加えて、MS/MSは、2つのヒドロキシル基の存在を示唆したのに対し、フラグメントm/z223は、2つの同様の実体への構造の開裂を指し示し、これは、2つの同様の構造成分間の考えられる架橋系を示唆するものであった。しかしながら、MS/MS情報を用いた完全構造の解釈だけは難しかった。
【0313】
したがって、精製されたGTA-446のH NMRを実施し、これは、8つのメチレンプロトン(δ5.5~6.2pm)、2つの末端メチル基(-CHCH、δ0.84及び0.89pm、それぞれ3H、t)、及び2つの-COOH基からのδ12.0ppmにおける広幅ピークからのシグナル、並びにδ0.98~2.48ppmのCH及びCH基の他の34のシグナルを示した(図11参照)。13C-NMRスペクトルは、8個のメチレン炭素(δ126~136pm)、2つの末端メチル基(-CHCH、δ14.0及び14.1pm)、及び2つの-COOH基からのδ181.2、181.4ppmにおける2個のカルボニル炭素、45.9、47.0ppmにおける2個のメチレン炭素からのシグナル、δ22.1~34.1ppmにおけるCH基の14の二次炭素シグナルを示した(図12参照)。H-H COSY解析は、2つの共役系を示した(図13)。E,E及びE,Z配置は、それらのカップリング定数から推測した。詳細な構造情報は、HMQC及びHMBC解析から得、これは、9及び5’位における2つの鎖間の結合を明確に示した(図14、15)。これらのスペクトル情報を使用して、GTA-446の構造は、式I:
【0314】
【化55】
【0315】
に示される通り、9-(5’-(6’E,8’Z)-テトラデカ-ジエン酸)-(5E,7E)-テトラデカ-ジエン酸((5E,7E,11E,13Z)-9-ペンチル-10-(4’-ブタン酸))-ノナデカテトラエン酸)と解明された。
【実施例4】
【0316】
GTA-446のための提案される合成経路
合成GTA-446及び関連化合物を調製するための、提案される合成経路の実施形態を以下に記載する。この例は、当業者に向けたものであること、並びに、種々の修正、代替、追加、削除及び/又は置換が為され得ることが理解されるであろう。
【0317】
化合物15及び化合物16(参照標準として)の合成は、次の通りに提案され得る。
【0318】
【化56】
【0319】
【化57】
【0320】
スキーム1に示される通り、化合物17と化合物18との間のマイケル付加は、化合物19を生成し得る。化合物19に適用されるウィッティヒ反応は、化合物20を生成し得る[1]。化合物20をメタノール([2]又はオルトギ酸トリメチル[3]及び酸で処理することは、ジメチルアセタール化合物21を生成し得る。化合物20のメタノリシスは、ヒドロキシルエステル化合物22を生成し得る。化合物22のスワーン酸化は、アルデヒド化合物23を産生し得る。アルデヒドのトリフル酸無水物との反応は、ビニルトリフレート化合物24を産生し得る[4,5]。
【0321】
スキーム2に示される通り、化合物24と化合物25の薗頭カップリングは、化合物26を生成し得る[6]。リンドラー触媒を使用するその後の還元は、シス-オレフィン化合物27を生成し得る。メチルエステルの還元は、アルコール化合物28を生成し得る。メタンスルホニルクロリドとの反応は、化合物28をメシレート化合物29に変換し得る。メシレートのマロン酸ジメチルによる置きかえは、化合物30を生成し得る。化合物30を酸で処理すると、同時アセタール開裂、エステル加水分解及び脱炭酸が、アルデヒド化合物31を生成し得る。例えば(トリフェニルホスホラニリデン)アセトアルデヒド又は(4-カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドとの最終ウィッティヒ反応は、化合物15の合成を完了し得る。
【0322】
【化58】
【0323】
スキーム3に示される通り、化合物24と化合物32との間の鈴木反応は、化合物33を生成し得る[7]。故に、化合物16の完成は、スキーム2において例証される通りの化合物28から化合物15への変換のためと同じ戦略に準拠する。
【0324】
【化59】
【0325】
化合物17は、Sigma Aldrich社から入手可能であり、化合物18は、Sigma Aldrich社から入手可能であり、化合物25は、Sigma Aldrich社から入手可能であり、化合物32は、Sigma Aldrich社から入手可能である。すべてのウィッティヒ試薬は、Sigma Aldrich社から入手可能である。
【0326】
合成参考文献(そのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる):
[1]Schneiderman, Deborah K. and Hillmyer, Marc A.; Aliphatic Polyester Block Polymer Design; Macromolecules, 49(7), 2419-2428; 2016
[2]Andrade, Juan et al; Acetals; Ger. Offen., 3403426, 01 Aug 1985
[3]Yan, Jingqi et al; Method for preparing acetal by using acraldehyde; Faming Zhuanli Shenqing, 102276427, 14 Dec 2011
[4]Gracia Martinez, Antonio et al; Synthesis of gem-bistriflates: reaction of aliphatic aldehydes with trifluoromethanesulfonic acid anhydride; Synthesis, (1), 49-51; 1987
[5]Sartori, G. and Maggi, R.; Product subclass 4: synthesis of enol sulfonates; Science of Synthesis, 32, 757-781; 2008
[6]Suffert, Jean and Brueckner, Reinhard; Palladium catalyzed couplings of enol triflates with alkynes under very mild conditions. The stereoselective synthesis of dienediynes from bis(enol triflates); Tetrahedron Letters, 32(11), 1453-6; 1991
[7]Pirovano, Valentina et al; Gold-catalyzed synthesis of tetrahydrocarbazole derivatives through an intermolecular cycloaddition of vinyl indoles and N-allenamides; Chemical Communications, 49(34), 3594-3596; 2013
【実施例5】
【0327】
GTA-446中間体化合物24のための追加の提案される合成経路
合成GTA-446及び関連化合物を調製するための、提案される合成経路の実施形態が実施例4に記載されており、これは、中間体化合物24を経由して進む。この例では、化合物24の調製のための別の実施形態が提案される。この例は当業者に向けたものであること、並びに、種々の修正、代替、追加、削除及び/又は置換が為され得ることが理解されるであろう。
【0328】
【化60】
【0329】
スキーム4に示される通り、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド化合物38を、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS,tert-butyl diphenylsilyl)エーテル等のシリルエーテルとして保護して、化合物39を得ることができる。その後の脱水によるアルドール縮合は、化合物40を生成し得る。化合物40とヘプタナール(化合物18、スキーム1)との間のマイケル付加は、化合物41を生成し得る。化合物41に適用されるウィッティヒ反応は、化合物42を生成し得る。化合物42をDMSO及びNaClで処理することは、化合物43を生成し得る。化合物43のメタノール又はオルトギ酸トリメチル及び酸との反応は、ジメチルアセタール化合物44を生成し得る。化合物44のフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF,tetrabutylammonium fluoride)との反応は、化合物22を生成し得る。化合物22から化合物24への前進は、実施例4において記載されている通りに進み得る。
【0330】
1又は2以上の例証的な実施形態を例として記載してきた。本願の請求項に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、若干数の変形及び修正が為され得ることが、当業者には理解されるであろう。
【0331】
(参考文献)
1. Ritchie SA, Tonita J, Alvi R, et al. Low-serum GTA-446 anti-inflammatory fatty acid levels as a new risk factor for colon cancer. Int J Cancer. 2013;132:355-362
2.Ritchie SA, Jayasinghe D, Davies GF, Ahiahonu P, Ma H, Goodenowe DB. Human serum-derived hydroxy long-chain fatty acids exhibit anti-inflammatory and anti-proliferative activity. J Exp Clin Cancer Res. 2011;30:59
3.Ritchie SA, Heath D, Yamazaki Y, et al. Reduction of novel circulating long-chain fatty acids in colorectal cancer patients is independent of tumor burden and correlates with age. BMC Gastroenterol. 2010;10:140
4.Ritchie SA, Chitou B, Zheng Q, et al. Pancreatic cancer serum biomarker PC-594: Diagnostic performance and comparison to CA19-9. World J Gastroenterol. 2015;21:6604-6612
5.Ritchie SA, Akita H, Takemasa I, et al. Metabolic system alterations in pancreatic cancer patient serum: potential for early detection. BMC Cancer. 2013;13:416
6. Ritchie S, Heath D, Yamazaki Y, et al. Reduction of novel circulating long-chain fatty acids in colorectal cancer patients is independent of tumor burden and correlates with age. BMC gastroenterology. 2010;10
7.Ritchie S, Ahiahonu P, Jayasinghe D, et al. Reduced levels of hydroxylated, polyunsaturated ultra long-chain fatty acids in the serum of colorectal cancer patients: implications for early screening and detection. BMC medicine. 2010;8

本明細書の上記(参考文献)に記載されたすべての文献及び他の箇所で引用されたすべての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
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