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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】流力振動発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 5/00 20060101AFI20230913BHJP
   G01H 11/08 20060101ALI20230913BHJP
   F03D 9/25 20160101ALI20230913BHJP
   F03D 5/06 20060101ALI20230913BHJP
   H02N 2/18 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
F03D5/00
G01H11/08 Z
F03D9/25
F03D5/06
H02N2/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020004494
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021110320
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】木綿 隆弘
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-120360(JP,A)
【文献】特開2006-226221(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 5/00
G01H 11/08
F03D 9/25
F03D 5/06
H02N 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる方向である第1方向に対して垂直に配置され、前記流体の流れによる力を受けてギャロッピング振動する柱状の振動発生体と、
前記振動発生体を基準として前記第1方向の下流側において、前記振動発生体に対して隙間をあけ、かつ、前記第1方向に沿って配置されるスプリッターと、
柱状の前記振動発生体の一方の端部に接続され、前記振動発生体のギャロッピング振動を電力に変換する発電部と、
前記発電部および前記スプリッターのそれぞれを支持するベース部と、
を備え
前記発電部は、前記ベース部に接続される支柱と、一方の端部が前記支柱に接続され他方の端部が前記振動発生体に接続される弾性部材と、前記弾性部材に設けられる磁歪素子と、前記弾性部材および前記磁歪素子を巻回するコイルと、を有する
流力振動発電装置。
【請求項2】
前記振動発生体および前記スプリッターのそれぞれは、前記第1方向に垂直な第2方向に沿って配置され、
前記ベース部は、前記第2方向に沿う軸を中心に回転自在である
請求項1に記載の流力振動発電装置。
【請求項3】
前記ベース部の回転軸である前記第2方向に沿う軸と、前記支柱の軸とは一致している
請求項2に記載の流力振動発電装置。
【請求項4】
前記第2方向における前記スプリッターの長さは、前記第2方向における前記振動発生体の長さ以上である
請求項2または3に記載の流力振動発電装置。
【請求項5】
さらに、第1の開口および前記第1の開口よりも開口面積が大きい第2の開口を有する集風体を備え、
前記集風体は、前記第2の開口が前記第1の開口よりも前記第1方向の下流側に位置するように配置され、
前記振動発生体および前記スプリッターのそれぞれは、前記集風体内において前記第2方向に沿って配置されている
請求項2~4のいずれか1項に記載の流力振動発電装置。
【請求項6】
前記発電部および前記スプリッターのそれぞれは、前記集風体に支持され、
前記集風体は、前記第2方向に沿う軸を中心に回転自在である
請求項に記載の流力振動発電装置。
【請求項7】
前記スプリッターは、前記第1方向から見た場合に、前記振動発生体と重なっている
請求項1~6のいずれか1項に記載の流力振動発電装置。
【請求項8】
流体が流れる方向である第1方向に対して垂直に配置され、前記流体の流れによる力を受けてギャロッピング振動する矩形柱状の振動発生体と、
前記振動発生体を基準として前記第1方向の下流側において、前記振動発生体に対して隙間をあけ、かつ、前記第1方向に沿って配置されるスプリッターと、
前記矩形柱状の前記振動発生体の一方の端部に接続され、前記振動発生体のギャロッピング振動を電力に変換する発電部と、
前記発電部および前記スプリッターのそれぞれを支持するベース部と、
を備え
前記振動発生体および前記スプリッターのそれぞれは、前記第1方向に垂直な第2方向に沿って配置され、
前記発電部は、前記ベース部に接続される支柱と、一方の端部が前記支柱に接続され他方の端部が前記振動発生体に接続される弾性部材と、前記弾性部材に設けられる磁歪素子と、前記弾性部材および前記磁歪素子を巻回するコイルと、を有し、
前記振動発生体の前記第1方向の長さをDとし、前記第1方向および前記第2方向の両方に垂直な第3方向の長さをHとし、前記第1方向における前記振動発生体と前記スプリッターとの前記隙間をGとした場合に、
D≦0.5Hであり、かつ、隙間Gが5mm以上である条件においてG<Dを満たす
流力振動発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れを利用して発電を行う流力振動発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風または水流などの流力を利用して発電を行う流力振動発電装置が知られている。その種の流力振動発電装置の一例として、特許文献1には、流体の流れによる力を受けてギャロッピング振動する振動発生体と、振動発生体の振動を電力に変換するトランスデューサと、板状の方向決定材と、振動発生体、トランスデューサおよび方向決定材を支持する回転台と、を備える流力振動発電装置が開示されている。この流力振動発電装置では、流体の流れにより発生した力を受けた方向決定材が回転台を回転させて振動発生体の向きを変更している。
【0003】
また、非特許文献1には、振動発生体のギャロッピング振動を確認するための風洞実験装置が示されている。この風洞実験装置は、風洞と、風洞内に設けられた柱状の振動発生体と、板状のスプリッターと、を備えている。振動発生体は、流体の流れによる力を受けて振動できるように、振動発生体の両端がばね等を介して風洞壁に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-226221号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】平田勝哉、他3名、“23 矩形柱ギャロッピングにおけるスプリッタ板の影響(自由振動実験)”、第11回風工学シンポジウム論文集、1990年12月、日本学術会議災害工学研究連絡委員会風工学専門委員会・電気学会・土木学会・日本気象学会・日本建築学会・日本鋼構造協会・日本風工学会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1の風洞実験装置は、振動発生体の両端がばね等を介して支持されており、振動発生体で発生する振動が増幅されにくい構造となっている。
【0007】
また、特許文献1の流力振動発電装置では、板状の方向決定材が、流体の流れる方向において振動発生体の下流側でなくトランスデューサの下流側に配置されている。そのため、振動発生体で発生する振動を大きくすることができず、流力振動発電装置の発電量を増やすことができないという問題がある。
【0008】
上記課題を鑑み、本発明は、発電量を増やすことができる流力振動発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するため、本発明の一形態における流力振動発電装置は、流体が流れる方向である第1方向に対して垂直に配置され、前記流体の流れによる力(流力)を受けてギャロッピング振動する柱状の振動発生体と、前記振動発生体を基準として前記第1方向の下流側において、前記振動発生体に対して隙間をあけ、かつ、前記第1方向に沿って配置されるスプリッターと、柱状の前記振動発生体の一方の端部に接続され、前記振動発生体のギャロッピング振動を電力に変換する発電部と、を備える。
【0010】
このように、スプリッターを振動発生体よりも下流側に配置し、また、振動発生体の一方の端部を発電部に接続することで、振動発生体の振動振幅を大きくすることができる。これにより、流力振動発電装置の発電量を増やすことができる。
【0011】
また、前記スプリッターは、前記第1方向から見た場合に、前記振動発生体と重なっていてもよい。
【0012】
この構成によれば、スプリッターを用いて振動発生体の振動振幅を大きくすることができる。これにより、流力振動発電装置の発電量を増やすことができる。
【0013】
また、前記振動発生体および前記スプリッターのそれぞれは、前記第1方向に垂直な第2方向に沿って配置され、前記振動発生体は、前記第2方向における前記振動発生体の一方の端部が支持されていてもよい。
【0014】
このように振動発生体の一方の端部を支持することで、振動発生体の振動振幅を大きくすることができる。これにより、流力振動発電装置の発電量を確実に増やすことができる。
【0015】
また、前記第2方向における前記スプリッターの長さは、前記第2方向における前記振動発生体の長さ以上であってもよい。
【0016】
この構成によれば、振動発生体の下流側に確実にスプリッターを存在させることができ、振動発生体の振動振幅を確実に大きくすることができる。これにより、流力振動発電装置の発電量を増やすことができる。
【0017】
また、流力振動発電装置は、さらに、前記発電部および前記スプリッターのそれぞれを支持するベース部を備え、前記ベース部は、前記第2方向に沿う軸を中心に回転自在であってもよい。
【0018】
この構成によれば、流体の流れによる力を受けたスプリッターによりベース部を回転させ、振動発生体およびスプリッターの向きを変更することができる。このため、流体の流れる方向に応じて振動発生体およびスプリッターの向きを変えることができ、振動発生体の振動振幅を適切に大きくすることができる。これにより、流力振動発電装置の発電量を増やすことができる。
【0019】
また、前記発電部は、前記振動発生体に接続される弾性部材と、前記弾性部材に設けられる磁歪素子と、前記弾性部材および前記磁歪素子を巻回するコイルと、を備えていてもよい。
【0020】
これによれば、簡易な構造により振動発生体の振動振幅を大きくすることができる。これにより、流力振動発電装置の発電量を増やすことができる。
【0021】
また、流力振動発電装置は、さらに、第1の開口および前記第1の開口よりも開口面積が大きい第2の開口を有する集風体を備え、前記集風体は、前記第2の開口が前記第1の開口よりも前記第1方向の下流側に位置するように配置され、前記振動発生体および前記スプリッターのそれぞれは、前記集風体内において前記第2方向に沿って配置されていてもよい。
【0022】
この構成によれば、集風体が無い場合よりも強い力を振動発生体に付与し、振動発生体の振動振幅を大きくすることができる。これにより、流力振動発電装置の発電量を増やすことができる。
【0023】
また、前記発電部および前記スプリッターのそれぞれは、前記集風体に支持され、前記集風体は、前記第2方向に沿う軸を中心に回転自在であってもよい。
【0024】
この構成によれば、流体の流れによる力を受けた集風体により集風体を回転させるとともに、振動発生体およびスプリッターの向きを変更することができる。このため、流体の流れる方向に応じて振動発生体およびスプリッターの向きを変えることができ、振動発生体の振動振幅を適切に大きくすることができる。これにより、流力振動発電装置の発電量を増やすことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、流力振動発電装置の発電量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】流体実験装置の概略構成を示す図である。
図2】流体実験装置で使用した振動発生体の横断面を示す図である。
図3】流体実験装置における振動発生体の無次元振動振幅を示す図である。
図4】実施の形態1に係る流力振動発電装置を示す斜視図である。
図5】実施の形態1に係る流力振動発電装置の振動発生体およびスプリッターの平面図である。
図6】実施の形態1に係る流力振動発電装置の側面図である。
図7】実施の形態1に係る流力振動発電装置の発電部を示す図である。
図8】実施の形態1に係る流力振動発電装置の発電部を流体の流れ方向から見た場合の図である。
図9】実施の形態1に係る流力振動発電装置の振動発生体の他の例を示す図である。
図10】実施の形態1の変形例に係る流力振動発電装置の発電部を示す図である。
図11】実施の形態2に係る流力振動発電装置を示す斜視図である。
図12】実施の形態2に係る流力振動発電装置の集風体を図11に示すXII-XII線で切断した場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(本発明に至る経緯)
まず、本発明に至る経緯について、図1図3を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、流体実験装置102の概略構成を示す図である。図1の(a)および(b)には、流体実験装置102の断面図が示されている。図1の(a)は、流体実験装置102を図1の(b)に示すIa-Ia線で切断した場合の断面図である。
【0029】
流体実験装置102は、振動発生体110のギャロッピング振動を確認するための装置である。図1に示すように、流体実験装置102は、角筒状の流路160と、流路160内に配置された柱状の振動発生体110と、板状のスプリッター120と、を備えている。
【0030】
流路160は、断面が縦400mm、横167mmの管路である。流路160を流れる流体としては、水が用いられている。流体は、例えば0.74m/s以上2.7m/sの流速Uで流路160内を流れている。以下において、所定の部品を基準として流体が流れる方向のプラス側を下流側とし、マイナス側を上流側とする。
【0031】
柱状の振動発生体110は、流体が流れる方向に対して垂直な方向に延びるように配置されている。振動発生体110は、流体の流れによる力を受けてギャロッピング振動する。なお図1では、振動発生体110の下端部にエンドプレートが設けられているが、エンドプレートは必ずしも必要ではない。
【0032】
振動発生体110は、振動発生体110の上端部に設けられた治具および板ばねによって支持されている。振動発生体110の下端部には、振動発生体110の振動を検出するための加速度センサが埋め込まれている。振動発生体110の振動は、加速度センサによって電圧信号に変換され、アンプにて増幅される。アンプにて増幅された信号は、A/Dコンバータによってデジタル変換された後、コンピュータに入力され、実験データとして蓄積される。
【0033】
スプリッター120は、振動発生体110を規準として、流体が流れる方向の下流側に配置されている。板状のスプリッター120は、流体が流れる方向に沿って、かつ、振動発生体110に対して所定の隙間をあけて配置されている。所定の隙間は、例えば6mmである。スプリッター120は、流路160の上面および下面のそれぞれに固定されている。
【0034】
図2は、流体実験装置102で使用した振動発生体110の横断面を示す図である。
【0035】
図2の(a)には、横断面が矩形状である振動発生体110が示され、図2の(b)には、横断面がD字状である振動発生体110が示されている。図2では、振動発生体110の奥行き寸法をD、振動発生体110の幅をHとし、図1では、振動発生体110の長さをLとしている。この流体実験装置102では、形状および寸法が異なる数種類の振動発生体110を用いて、振動発生体110の振動振幅を確認する実験が行われた。
【0036】
図3は、流体実験装置102における振動発生体110の無次元振動振幅ηrmsを示す図である。
【0037】
図3の縦軸に示される無次元振動振幅ηrmsは、ηrms=η/Hによって表される。ηは、振動発生体110の振動振幅の実効値である。図3の横軸に示される換算流速Vrは、Vr=U/(fc・H)によって表される。fcは、振動発生体110の固有振動数である。図3では、振動振幅だけでなく換算流速Vrも無次元化されている。
【0038】
図3の(a)には、横断面が矩形状で、断面辺長比がD/H=0.2である振動発生体110を用いた場合の実験結果が示されている。図3の(b)には、横断面が矩形状で、断面辺長比がD/H=0.5である振動発生体110を用いた場合の実験結果が示されている。図3の(c)には、横断面がD字状で、断面辺長比がD/H=0.5である振動発生体110を用いた場合の実験結果が示されている。また、図3の(a)~(c)には、振動発生体110のL/Hの値を変えた場合と、さらに、スプリッター120が設けられている場合と設けられていない場合との両方の実験結果が示されている。
【0039】
図3の(a)~(c)に示すように、振動発生体110の下流側にスプリッター120が設けられている場合は、スプリッター120が設けられていない場合に比べて、無次元振動振幅ηrmsが大きくなっている。この結果は、振動発生体110のL/Hの値、断面辺長比(D/H)の値、および、振動発生体110の横断面の形状が異なっている場合にも同様に表れる。
【0040】
このように振動発生体110よりも下流側にスプリッター120を設けることで、振動発生体110の振動振幅が増加するという実験結果が得られる。この実験結果を流力振動発電装置に適用することで、流力振動発電装置の発電量を増やすことが可能になると考えられる。
【0041】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の一形態に係る実現形態を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0042】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0043】
(実施の形態1)
実施の形態1の流力振動発電装置について、図4図8を参照しながら説明する。
【0044】
図4は、実施の形態1に係る流力振動発電装置1を示す斜視図である。図5は、流力振動発電装置1の振動発生体10およびスプリッター20の平面図である。図6は、流力振動発電装置1の側面図である。図7は、流力振動発電装置1の発電部30を示す図である。図8は、流力振動発電装置1の発電部30を流体の流れ方向から見た場合の図である。
【0045】
流力振動発電装置1は、流体の流れによる力を利用して発電を行う装置であり、流体の流れが存在する場所に配置される。流体は、例えば、空気などの気体であるが、気体に限られず、水または油などの液体であってもよい。
【0046】
図4図7において、流体が流れる方向を第1方向d1とし、第1方向d1に垂直な方向を第2方向d2とし、第1方向d1および第2方向d2の両方に垂直な方向を第3方向d3とする。本実施の形態では、第2方向d2が鉛直方向となり、第1方向d1および第3方向d3が水平方向となっている。
【0047】
流力振動発電装置1は、振動発生体10と、スプリッター20と、発電部30と、ベース部50と、を備えている。
【0048】
図4図6に示すように、振動発生体10は、柱状の形状を有し、流体が流れる方向である第1方向d1に対して垂直に配置される。具体的には振動発生体10は、鉛直方向である第2方向d2に沿って延びるように配置されている。振動発生体10は、剛性を有し、例えば、アルミニウム、チタンなどの軽金属材料によって形成される。なお、振動発生体10は、繊維強化プラスチックなどによって形成されてもよい。
【0049】
図5に示すように、振動発生体10は、横断面が矩形状である。振動発生体10は、第1方向d1に直交する正面11と、正面11に背向する背面12と、第1方向d1に沿う両側面13と、を有している。側面13は、正面11および背面12の両方に対して垂直である。振動発生体10の奥行き寸法D(=第1方向d1の長さ)、振動発生体10の幅H(=第3方向d3の長さ)、および、振動発生体10の長さL(=第2方向d2の長さ:図6参照)は、D<H<Lの関係を有し、より望ましくはD<6Hの関係を有している。
【0050】
振動発生体10は、自発的に振動を起こす振動体ではなく、外部から力を受けて往復移動する振動体である。振動発生体10は、正面11が流体の流れる方向に直交するように配置され、流体の流れによる力(第3方向d3における圧力差を起因とする力)を受けることで第3方向d3にギャロッピング振動する。
【0051】
図6に示すように、第2方向d2における振動発生体10の一方の端部(長手方向における一方の端部)10aには、発電部30が接続されている。振動発生体10の他方の端部10bは、何も接続されておらず自由端となっている。すなわち、振動発生体10は、振動発生体10に一方の端部10aのみが発電部30に支持(固定)されている。
【0052】
発電部30は、振動発生体10で発生したギャロッピング振動を電力に変換する変換装置である。図7および図8に示すように、発電部30は、振動発生体10に接続される弾性部材31と、弾性部材31に設けられる磁歪素子32およびコイル33と、弾性部材31に接続される支柱35と、を有している。コイル33を構成する巻線の端部には、電気負荷または二次電池が導通接続される(図示省略)。
【0053】
弾性部材31は、例えば、磁性を有するばね鋼材料によって形成される。弾性部材31は、U字状であり、第2方向d2に沿って延びる一方の板状部位31a、および、一方の板状部位31aに対向し第2方向d2に沿って延びる他方の板状部位31bを有している。一方の板状部位31aの端部は締結部材等を用いて支柱35に固定され、他方の板状部位31bの端部は締結部材等を用いて振動発生体10に接続される。なお、一方の板状部位31aは溶接または接着等によって支柱35に固定されてもよいし、他方の板状部位31bは溶接または接着等によって振動発生体10に接続されてもよい。
【0054】
磁歪素子32は、Fe-Ga合金によって形成されたユニモルフ型の磁歪素子である。磁歪素子32は、板状であり、弾性部材31の他方の板状部位31bに接着剤等で貼り付けられている。
【0055】
コイル33は、弾性部材31の他方の板状部位31bおよび磁歪素子32を一緒にまとめて線材を巻回することで形成される。コイル33は、コイル33の巻回軸が第2方向d2に沿うように形成されている。弾性部材31の一方の板状部位31aには、磁石34が固定され、弾性部材31、磁歪素子32および磁石34とで閉磁路が形成される。
【0056】
振動発生体10が振動すると、弾性部材31の他方の板状部位31bが屈曲し、磁歪素子32に引っ張り力および圧縮力が交互に付与される。磁歪素子32に引っ張り力および圧縮力が付与されることで、閉磁路における磁束が変化し、コイル33に起電力が発生する。このようにして、発電部30から電力を取り出すことが可能となる。
【0057】
次に、振動発生体10の振動を増幅させるためのスプリッター20、および、スプリッター20を用いて振動発生体10の向きを変更するための構成について説明する。
【0058】
図5および図6に示すように、スプリッター20は、板状の形状を有し、アルミニウム、チタンなどの軽金属材料、または、繊維強化プラスチックなどによって形成される。スプリッター20は、振動発生体10を規準として第1方向d1の下流側に配置されている。具体的には、スプリッター20は、第1方向d1および第2方向d2に沿うように配置され、第1方向d1から見た場合に振動発生体10に重なっている。また、スプリッター20は、振動発生体10に対して隙間Gをあけて配置され、振動発生体10には接触していない。隙間Gは、振動発生体10の奥行き寸法Dよりも小さく(G<D)、例えば5mm以上10mm以下である。
【0059】
スプリッター20の奥行き寸法Ds(=第1方向d1の長さ)およびスプリッター20の厚みts(=第3方向d3の長さ)の関係は、ts<Dsである。なお、寸法Dsおよびスプリッター20の長さLs(第2方向d2の長さ)の関係は、Ds<Lsであってもよいし、Ds≧Lsであってもよい。スプリッター20の奥行き寸法Dsは、振動発生体10の幅Hの5倍以上15倍以下である。スプリッター20の厚みtsは、振動発生体10の幅Hよりも十分に小さい。
【0060】
例えば、第2方向d2におけるスプリッター20の長さLsは、第2方向d2における振動発生体10の長さL以上である。そのためスプリッター20は、振動発生体10を第1方向d1から見た場合に、振動発生体10の下流側に必ず存在している。本実施の形態では、スプリッター20の長さLsは、振動発生体10の長さLおよび発電部30の長さ(第2方向d2の長さ)を足し合わせた長さとなっている。スプリッター20の長さLsは、振動発生体10の長さLよりも長く、長さLの3倍以下であってもよい(L<Ls≦3L)。
【0061】
図6および図7に示すように、ベース部50は、発電部30およびスプリッター20のそれぞれを支持する回転装置である。ベース部50は、第2方向d2に沿う軸Zaを中心に回転自在である。具体的には、ベース部50は、回転軸52と、回転軸52上に配置された平板51とによって構成されている。例えば、回転軸52は、ベアリング等によって支持され、平板51は、回転軸52の軸心と一致する軸Zaを中心に回転自在となっている。なお本実施の形態では、回転軸52の軸心と発電部30の支柱35の軸とが一致している。
【0062】
スプリッター20の第2方向d2の一方の端部は、片持ち状態で平板51に固定され、発電部30の支柱35は、片持ち状態で平板51に固定されている。スプリッター20は、軸Zaを中心に回転自在であり、振動発生体10も、発電部30を介して軸Zaを中心に回転自在となっている。なお、例えば平板51上に門状(逆U字状)のフレームが設置されている場合、スプリッター20は、一方の端部が平板51に固定され、他方の端部が門状のフレームに固定されていてもよい。
【0063】
この流力振動発電装置1では、流体の流れによる力を受けたスプリッター20によりベース部50が回転され、振動発生体10の向きが変更される。すなわち、本実施の形態のスプリッター20は、振動発生体10の振動を増幅させる機能を有するとともに、振動発生体10の向きを決定する方向決定機能を有している。
【0064】
このように、本実施の形態の流力振動発電装置1は、流体が流れる方向である第1方向d1に対して垂直に配置され、流体の流れによる力を受けてギャロッピング振動する柱状の振動発生体10と、振動発生体10を基準として第1方向d1の下流側において、振動発生体10に対して隙間Gをあけ、かつ、第1方向d1に沿って配置されるスプリッター20と、柱状の振動発生体10の一方の端部10aに接続され、振動発生体10のギャロッピング振動を電力に変換する発電部30と、を備える。このように、スプリッター20を振動発生体10の下流側に配置することで、振動発生体10の振動振幅を大きくすることができる。これにより、流力振動発電装置1の発電量を増やすことができる。
【0065】
なお、上記の流力振動発電装置1では、振動発生体10の横断面が矩形状である例を示したが、振動発生体10の形状は矩形状に限られない。そこで、振動発生体10の他の例について説明する。
【0066】
図9は、流力振動発電装置1の振動発生体10の他の例を示す図である。
【0067】
図9の(a)には、横断面がD字状である振動発生体10が示されている。D字状の振動発生体10では、例えば図9の(a)に示す姿勢を0°として、傾ける角度θが-60°以上60°以下の場合に振動する。
【0068】
図9の(b)には、横断面が三角状である振動発生体10が示されている。三角状の振動発生体10では、図9の(b)に示す姿勢を0°として、傾ける角度θが少なくとも0°の場合に振動する。
【0069】
図9の(c)には、横断面が逆L字状の振動発生体10が示されている。逆L字状の振動発生体10では、例えば図9の(c)に示す姿勢を0°として、傾ける角度θが-45°以上10°以下および45°以上100°以下の場合に振動する。
【0070】
図9の(d)には、横断面がプラス(+)字状の振動発生体10が示されている。プラス字状の振動発生体10では、例えば、図9の(d)に示す姿勢を0°として、傾ける角度θが-45°以上-35°以下の場合に振動する。
【0071】
図9の(e)には、横断面がT字状の振動発生体10が示されている。T字状の振動発生体10では、例えば、図9の(e)に示す姿勢を0°として、傾ける角度θが-90°以上-35°以下および-5°以上50°以下の場合に振動する。
【0072】
図9の(f)には、横断面が横向きY字状の振動発生体10が示されている。横向きY字状の振動発生体10では、図9の(e)に示す姿勢を0°として、傾ける角度θが-60°の場合に振動すると推測される。
【0073】
図9の(a)~(e)に示す振動発生体10を流力振動発電装置1に用いて発電した場合であっても、流力振動発電装置1の発電量を増加することが可能である。
【0074】
また、上記の流力振動発電装置1では、磁歪素子32が1つである発電部30の例を示したが、発電部30の構成はそれに限られない。そこで、発電部30の他の例について説明する。
【0075】
図10は、変形例に係る流力振動発電装置1Aの発電部30Aを示す図である。図10の(a)には、発電部30Aを第1方向d1から見た図が示され、図10の(b)には、発電部30Aを第3方向d3から見た図が示されている。
【0076】
図10に示すように、発電部30Aは、磁歪材料で構成された第1の磁歪棒41と、第1の磁歪棒41に巻かれた第1のコイル43と、磁歪材料で構成され、第1の磁歪棒41に平行に配置された第2の磁歪棒42と、第2の磁歪棒42に巻かれた第2のコイル44と、を備える。また、発電部30Aは、第1の磁歪棒41および第2の磁歪棒42のそれぞれの両端に、第1の磁歪棒41および第2の磁歪棒42を連結するように設けられた2つの連結ヨーク45と、2つの連結ヨーク45に接続されるバックヨーク46と、を備える。バックヨーク46は磁石47を有している。2つの連結ヨーク45のうち、一方の連結ヨーク45は振動発生体10に接続され、他方の連結ヨーク45は支柱35に接続される。
【0077】
この発電部30Aでは、第1の磁歪棒41および第2の磁歪棒42の軸方向と垂直な方向(第3方向d3)の振動によって、第1の磁歪棒41および第2の磁歪棒42の一方が伸張し、他方が収縮することにより発電が行われる。図10に示す発電部30Aを流力振動発電装置1Aに用いた場合であっても、流力振動発電装置1Aの発電量を増加することが可能である。
【0078】
(実施の形態2)
次に、実施の形態1の流力振動発電装置について、図11および図12を参照しながら説明する。実施の形態2では、振動発生体10およびスプリッター20が、風レンズ(登録商標)などの集風体60内に配置されている例について説明する。
【0079】
図11は、実施の形態2に係る流力振動発電装置1Bを示す斜視図である。図12は、流力振動発電装置1Bの集風体60を図11に示すXII-XII線で切断した場合の図である。
【0080】
流力振動発電装置1Bは、振動発生体10と、スプリッター20と、発電部30と、ベース部50と、集風体60と、を備えている。振動発生体10、スプリッター20、発電部30の構成は、実施の形態1と同様であるので、ここでは集風体60について説明する。
【0081】
集風体60は、横断面が末広がりの凹形状となっており、第1の開口61および第1の開口61よりも開口面積が大きい第2の開口62を有している。集風体60は、第2の開口62が第1の開口61よりも第1方向d1の下流側に位置するように配置される。集風体60は、例えば、アルミニウム、チタンなどの軽金属材料または繊維強化プラスチックなどによって形成される。
【0082】
集風体60内には、振動発生体10、発電部30およびスプリッター20が配置される。発電部30の一方の端部およびスプリッター20の一方の端部のそれぞれは、集風体60に固定され支持されている。集風体60は、ベース部50に接続され、第2方向d2に沿う軸Zaを中心に回転自在となっている。
【0083】
この流力振動発電装置1Bのように、第2の開口62の開口面積を第1の開口61の開口面積よりも大きくすることで、第2の開口62における場の圧力を第1の開口61における場の圧力よりも低くすることができる。これにより、集風体60が無い場合よりも強いを振動発生体10に付与し、振動発生体10の振動振幅を大きくすることができる。これにより、流力振動発電装置1Bの発電量を増やすことができる。
【0084】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態1、2について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0085】
上記実施の形態では、第2方向d2が鉛直方向であり、第1方向d1および第3方向d3が水平方向である例を示したが、それに限られない。例えば、第3方向d3が鉛直方向であり、第1方向d1および第2方向d2が水平方向であってもよい。また、第1方向d1が鉛直方向であり、第2方向d2および第3方向d3が水平方向であってもよい。
【0086】
上記実施の形態では、発電部30の発電素子として磁歪素子を用いた例を示したが、それに限られず、発電素子として圧電素子を用いてもよい。
【0087】
上記実施の形態では、支柱35の軸が回転軸52の軸心に一致している例を示したが、それに限られない。例えば、支柱35の軸が回転軸52の軸心に一致していなくても、振動発生体10、発電部30およびスプリッター20が軸Zaを中心に回転自在であればよい。
【0088】
また、上記実施の形態の振動発生体10において、長さLと幅Hとの関係がL/H≦5.0であってもよい。これによれば、長さLと幅Hとの関係がL/H>5.0である場合に比べて、振動発生体10の振動振幅をより効果的に増幅させることができる。
【0089】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、風を利用した風力振動発電装置または水流を利用した水力振動発電装置として有用である。これらの発電装置で発電した電力は、例えば、携帯電話または音楽プレーヤーなどの携帯電子機器、体内センサ、超小型電力供給装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1、1A、1B 流力振動発電装置
10、110 振動発生体
10a 一方の端部
10b 他方の端部
11 正面
12 背面
13 側面
20、120 スプリッター
30、30A 発電部
31 弾性部材
31a 一方の板状部位
31b 他方の板状部位
32 磁歪素子
33 コイル
34 磁石
35 支柱
41、42 磁歪棒
43、44 コイル
45 連結ヨーク
46 バックヨーク
47 磁石
50 ベース部
51 平板
52 回転軸
60 集風体
61 第1の開口
62 第2の開口
102 流体実験装置
160 流路
D 振動発生体の奥行き寸法
Ds スプリッターの奥行き寸法
d1 第1方向
d2 第2方向
d3 第3方向
G 隙間
H 振動発生体の幅
L 振動発生体の長さ
Ls スプリッターの長さ
ts スプリッターの厚み
U 流速
Za 軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12