(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】端折れ検出装置及びそれを備える印刷物搬送システム、端折れ検出方法、並びに端折れ検出プログラム
(51)【国際特許分類】
B65H 7/14 20060101AFI20230913BHJP
B65H 5/08 20060101ALI20230913BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230913BHJP
【FI】
B65H7/14
B65H5/08 H
G06T7/00 350B
(21)【出願番号】P 2022010198
(22)【出願日】2022-01-26
【審査請求日】2023-06-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591005316
【氏名又は名称】西研グラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】田中 忠臣
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-065855(JP,A)
【文献】特開2020-134989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/14
B65H 5/08
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路にて
把持手段により1部ずつ把持されて搬送される印刷物の端折れを検出する端折れ検出装置であって、
前記
把持手段により1部ずつ把持されて搬送される印刷物を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段から出力される画像情報を取得する画像取得部と、
前記画像情報に基づいて、学習モデルを用いて、前記印刷物の端折れの判定を行う判定部と、を備え、
前記学習モデルは、端折れしている前記印刷物の画像情報及び端折れしていない前記印刷物の画像情報を使用して学習されていることを特徴とする端折れ検出装置。
【請求項2】
前記学習モデルが、端折れの有無の二値でラベル付けされた前記印刷物の画像情報を使用して学習されている請求項1に記載の端折れ検出装置。
【請求項3】
前記撮像手段が前記印刷物の側面を撮像する請求項
1又は2に記載の端折れ検出装置。
【請求項4】
前記画像取得部が取得した前記画像情報を記憶する画像記憶部を更に備える請求項1乃至
3のいずれかに記載の端折れ検出装置。
【請求項5】
前記撮像手段が、前記印刷物を走行させるために前記搬送経路に設けられた搬送機構の動作を検知するセンサ部から出力される動作信号に応じて、前記印刷物を撮像する請求項1乃至
4のいずれかに記載の端折れ検出装置。
【請求項6】
前記センサ部が、前記搬送機構の動作として、前記搬送機構が具備する搬送チェーンに噛合する歯車の動作を検知する請求項
5に記載の端折れ検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至
4のいずれかに記載の端折れ検出装置と、前記搬送経路に設けられて前記印刷物を脱荷する脱荷部と、を備える印刷物搬送システムであって、
前記脱荷部が、前記端折れ検出装置が端折れしていると判定した前記印刷物は脱荷しないことを特徴とする印刷物搬送システム。
【請求項8】
請求項
5又は
6に記載の端折れ検出装置と、前記センサ部と、前記搬送経路に設けられて前記印刷物を脱荷する脱荷部と、を備える印刷物搬送システムであって、
前記脱荷部が、前記動作信号を利用して生成される脱荷停止信号に基づいて、前記端折れ検出装置が端折れしていると判定した場合に、前記端折れしていると判定された印刷物を脱荷しないことを特徴とする印刷物搬送システム。
【請求項9】
搬送経路にて
把持手段により1部ずつ把持されて搬送される印刷物の端折れを検出する端折れ検出方法であって、
前記
把持手段により1部ずつ把持されて搬送される印刷物を撮像した画像情報を取得する画像取得ステップと、
前記画像情報に基づいて、学習モデルを用いて、前記印刷物の端折れの判定を行う判定ステップと、を含み、
前記学習モデルは、端折れしている前記印刷物の画像情報及び端折れしていない前記印刷物の画像情報を使用して学習されていることを特徴とする端折れ検出方法。
【請求項10】
コンピュータに、請求項
9に記載の端折れ検出方法を実行させるための端折れ検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送経路にて搬送される印刷物の端折れを検出する端折れ検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
新聞輪転機で印刷された新聞紙等の印刷物は、同機が装備する折機により新聞紙の形状に折り畳まれて切断される。ここで、
図1を参照して、折機の動作について説明する。
図1は、新聞輪転機が装備する折機の構成例の概要を示す正面図であり、破線は紙の流れを示す。
【0003】
図1に示される折機1は、4頁幅の新聞用の紙を処理する新聞輪転機に装備されるものである。新聞輪転機の印刷部(図示せず)で印刷された4頁幅の紙は、同機のレールフレーム部(図示せず)にて中央をスリットされて2頁幅に2分割されて、折機1に搬入される。
【0004】
折機1には、2頁幅の2条の紙を縦折りするように、2台のフォーマー11が並列して設けられている。折機1に引き込まれた紙は、フォーマー11によって縦折りされ、フォーミングローラ12によって案内されて、ニッピングローラ13に送られる。
ニッピングローラ13は3箇所に設けられており、ニッピングローラ13にて、縦折りされた紙の縦折り部が挟持されることで、折り目が確実に付けられる。
【0005】
ニッピングローラ13を通過した紙(縦折りされた紙)は、鋸胴14及び折胴15によって1頁長に裁断される。鋸胴14及び折胴15は、紙の搬送方向と直交し紙の幅方向と平行な軸を中心として回転可能な円柱状のシリンダーで、紙が挿入可能な僅かな間隔をおいて配置されている。紙は折胴15が有する引込み用針(図示せず)によって引っ張られて折胴15の表面に沿って移動し、鋸胴14が有する2組の断裁刃14a及び14bとの接触により裁断される。
【0006】
裁断された紙は、折胴15の引込み用針から外れ、折胴15の直下に配置されている折下ガイド16上において、折胴15が有する折ブレード(図示せず)によって、折下ガイド16の直下に隣接する折下ドラッグローラ17の間に、その略中央を押し込まれて、横折りされる。
横折りされた紙は、デリバリーファン18に落とされ、デリバリーファン18は、横折りされた紙を1部ずつ受け取り、回転している途中でデリバリーコンベヤ19に払い出す。払い出された紙は、デリバリーコンベヤ19によって、折機1から排出される。
【0007】
このような折機1の動作において、動作速度や紙質等の条件により、新聞紙の端が折れたり曲がったりする端折れが生じることがある。端折れは、鋸胴14が有する断裁刃14a及び14bの劣化、折胴15が有する断裁刃受けゴムの劣化及び引込み用針の抜けタイミングの不良、折下ガイド16の位置の不良、折下ドラッグローラ17の隙間の不良及び回転位相の不良、デリバリーファン18とデリバリーコンベヤ19のベルトの隙間の不良等により、発生する。端折れした新聞紙を出荷してしまうと、製品の品質を落としてしまうことになる。
【0008】
端折れした新聞紙を出荷してしまわないように、オペレータが印刷された新聞紙の抜き取り検査を定期的に行い、端折れが生じていないか確認するとしても、端折れは突発的に発生するので、定期的な抜き取りでは漏れが生じる可能性があり、抜き取り検査はオペレータにとっても負担となる。
【0009】
そこで、このような端折れを自動的に検出する技術が提案されている。
例えば、特許文献1では、印刷用紙の不要な折れ(端折れ)により折れ部分の厚みが増し、折り込みローラが振動することに着目し、非接触式の変位センサで振動変位を検出して、不要な折れの発生を検出する折機が提案されている。特許文献1の折機は、変位センサを折り込みローラの一方の軸受けに向かって配置し、変位センサが折り込みローラの軸受けまでの距離を検出することで、折り込みローラの振動変位を検出し、振動変位が所定値以上になったか否かを判定することで、印刷用紙の不要な折れの発生を検出する。
【0010】
特許文献2では、接触型センサを使用して、フォルディングローラ(折り込みローラ)のバウンドを検出して、折不良紙の発生を検出する折不良紙検出排紙装置が提案されている。特許文献2の装置は、接触型センサとして、例えば加速度センサを採用し、折不良紙の発生によりフォルディングローラがバウンドしたときに、その振動の変化を検出し、制御装置が接触型センサの検出信号に応じて、報知手段並びに載荷部排紙手段及び中間脱荷手段を制御し、折不良紙の発生を警告すると共に、折不良紙を排紙除去する。
【0011】
また、特許文献3では、折り丁からの圧力分布に基づいて、折り丁の端面部の角折れ・破れなどの不良の有無を判定する折り丁検査装置が提案されている。特許文献3の装置は、折り丁の両側縁部を突き揃えた後に、折り丁両側縁部に押圧を加え、折り丁からの圧力分布を折り丁搬送方向に取得し、得られた圧力分布を解析して不良の有無を判定する。折り丁の両側縁部に押圧を掛けることで、角折れや破れなどの折り丁の不良部分からの反発力が他の正常な部分に比較して弱くなることに着目したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2006-44903号公報
【文献】特開2010-105794号公報
【文献】特開2002-67275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1の折機及び特許文献2の装置では、端折れが生じていると判定するための閾値等の条件設定を経験値等に基づいて行なっているので、適切に端折れ発生を判定するためには専門的なスキルを要する。また、折り込みローラの振動を検出して端折れの発生を検出しているので、折り込み後の処理において発生した端折れは検出できない。特許文献3の装置では、端折れの判定に使用する圧力分布を取得するために折り丁を瞬間的に停止する必要があるので、新聞紙の高速搬送を阻害してしまう。
【0014】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、高速搬送される新聞紙等の印刷物に対して、専門的なスキル等を要さず、適切に端折れを検出することができる端折れ検出装置及びそれを備える印刷物搬送システム、端折れ検出方法、並びに端折れ検出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0016】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 搬送経路にて搬送される印刷物の端折れを検出する端折れ検出装置であって、前記搬送される印刷物を撮像する撮像手段と、前記撮像手段から出力される画像情報を取得する画像取得部と、前記画像情報に基づいて、学習モデルを用いて、前記印刷物の端折れの判定を行う判定部と、を備え、前記学習モデルは、端折れしている前記印刷物の画像情報及び端折れしていない前記印刷物の画像情報を使用して学習されていることを特徴とする端折れ検出装置。
<2> 前記学習モデルが、端折れの有無の二値でラベル付けされた前記印刷物の画像情報を使用して学習されている<1>に記載の端折れ検出装置。
<3> 前記撮像手段が、把持手段により1部ずつ把持されて搬送される前記印刷物を撮像する<1>又は<2>に記載の端折れ検出装置。
<4> 前記撮像手段が前記印刷物の側面を撮像する<3>に記載の端折れ検出装置。
<5> 前記画像取得部が取得した前記画像情報を記憶する画像記憶部を更に備える<1>乃至<4>のいずれかに記載の端折れ検出装置。
<6> 前記撮像手段が、前記印刷物を走行させるために前記搬送経路に設けられた搬送機構の動作を検知するセンサ部から出力される動作信号に応じて、前記印刷物を撮像する<1>乃至<5>のいずれかに記載の端折れ検出装置。
<7> 前記センサ部が、前記搬送機構の動作として、前記搬送機構が具備する搬送チェーンに噛合する歯車の動作を検知する<6>に記載の端折れ検出装置。
<8> <1>乃至<5>のいずれかに記載の端折れ検出装置と、前記搬送経路に設けられて前記印刷物を脱荷する脱荷部と、を備える印刷物搬送システムであって、前記脱荷部が、前記端折れ検出装置が端折れしていると判定した前記印刷物は脱荷しないことを特徴とする印刷物搬送システム。
<9> <6>又は<7>に記載の端折れ検出装置と、前記センサ部と、前記搬送経路に設けられて前記印刷物を脱荷する脱荷部と、を備える印刷物搬送システムであって、前記脱荷部が、前記動作信号を利用して生成される脱荷停止信号に基づいて、前記端折れ検出装置が端折れしていると判定した場合に、前記端折れしていると判定された印刷物を脱荷しないことを特徴とする印刷物搬送システム。
<10> 搬送経路にて搬送される印刷物の端折れを検出する端折れ検出方法であって、前記搬送される印刷物を撮像した画像情報を取得する画像取得ステップと、前記画像情報に基づいて、学習モデルを用いて、前記印刷物の端折れの判定を行う判定ステップと、を含み、前記学習モデルは、端折れしている前記印刷物の画像情報及び端折れしていない前記印刷物の画像情報を使用して学習されていることを特徴とする端折れ検出方法。
<11> コンピュータに、<10>に記載の端折れ検出方法を実行させるための端折れ検出プログラム。
【発明の効果】
【0017】
本発明の端折れ検出装置、端折れ検出方法、及び端折れ検出プログラムによれば、搬送経路にて搬送される印刷物を撮像した画像情報に基づいて、学習モデルを用いた端折れの判定を行うので、専門的なスキルを要する条件設定等が不要で、高速搬送される印刷物の端折れを適切に検出することができる。
また、本発明の端折れ検出装置を備える印刷物搬送システムによれば、端折れした印刷物を適切に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明に係る印刷物搬送システムの構成例(第1実施形態)の概要を示す図である。
【
図3】端折れした新聞紙の状態の例を示す図である。
【
図4】カメラ及び照明の設置例を示す概要図である。
【
図5】端折れ検出装置の構成例(第1実施形態)を示すブロック図である。
【
図6】脱荷状態信号の生成に関連する制御装置80の構成例を示すブロック図である。
【
図7】各種信号及び撮像タイミングの時間変化の例を示すタイムチャートである。
【
図8】印刷物搬送システムの動作例(第1実施形態)を示すフローチャートである。
【
図9】端折れ検出装置の構成例(第2実施形態)を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る端折れ検出装置は、新聞輪転機で印刷された新聞紙等の印刷物の端が折れたり曲がったりする端折れを、印刷物を撮像した画像情報に基づいて、学習モデルを用いた判定により検出する。端折れは印刷物の切断及び折り畳みを行う折機で主に発生するので、判定は、折機より排出され、出荷のために搬送される印刷物を撮像した画像情報を使用して行う。印刷物は搬送経路において高速に搬送されるので、目視で端折れを確認するのは困難であるが、カメラ等で撮像することにより、搬送される印刷物を個別に捕捉することができる。
【0020】
学習モデルは、端折れしている印刷物の画像情報と端折れしていない印刷物の画像情報を教師データとして使用して学習されたモデルである。
上述の端折れ検出装置を備える印刷物搬送システムでは、端折れ等が発生していない正常な印刷物は、搬送経路の所定の箇所において、出荷のために脱荷されるが、端折れが発生している印刷物は、当該箇所では脱荷されない。これにより、正常な印刷物と端折れが発生している印刷物を区別する。
【0021】
なお、本発明は、上述の端折れ検出装置として実現しても良いし、端折れ検出装置を備える印刷物搬送システムとして実現しても良い。
【0022】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付し、説明を省略することがある。また、以下では、本発明を実施するための主要な構成及び動作を中心にして説明しており、本発明を実施するために必要となる汎用的な処理、例えばデータ入出力処理等については説明を簡略又は省略している。
【0023】
本発明に係る端折れ検出装置を備える印刷物搬送システムの構成例(第1実施形態)の概要を
図2に示す。なお、本実施形態の印刷物搬送システム2は新聞紙を搬送するが、新聞紙以外の印刷物の搬送も可能である。
【0024】
折機1で切断及び折り畳まれた新聞紙3は、折機1のデリバリーコンベヤ19(
図1参照)により、載荷装置20に排出され、搬送経路を形成する中間搬送部30により搬送される。中間搬送部30の途中には2箇所の集荷エリア40a及び40b並びに排紙エリア50が設けられており、正常な新聞紙3は集荷エリア40a及び40bにおいて脱荷され、端折れ等の不具合が生じている新聞紙3は排紙エリア50において脱荷される。中間搬送部30はガイドレール、搬送チェーン及びグリッパ(把持手段)31(
図4参照)を備え、中間搬送部30には端折れ検出装置60及びセンサ部70が設置されている。制御装置80は、印刷物搬送システム2全体の制御及び外部装置とのデータの送受信等を実行する。
【0025】
集荷エリア40aには、脱荷部41a、コンベヤ42a、潰し装置43a及びカウンタースタッカ44aが配置されており、同様に、集荷エリア40bには、脱荷部41b、コンベヤ42b、潰し装置43b及びカウンタースタッカ44bが配置されている。排紙エリア50には、最終脱荷部51及び排紙ラック52が配置されている。正常な新聞紙3は、通常、下流に位置する集荷エリア40bにおいて脱荷され(以下、集荷エリア40bにて新聞紙3が脱荷される状況を「通常ケース」とする)、集荷エリア40aは、集荷エリア40bのバックアップとして、或いは、外部からの要求等に応じて使用される(以下、集荷エリア40aにて新聞紙3が脱荷される状況を「臨時ケース」とする)。例えば、集荷エリア40b内の装置に故障等が発生し、新聞紙3を脱荷することができない場合、正常な新聞紙3は集荷エリア40aにて脱荷される。本実施形態では集荷エリアは2箇所設けられているが、集荷エリアの数は、必要に応じて変更可能である。集荷エリアが複数設けられている場合、最下流の集荷エリアが集荷エリア40bの役割を担う。
【0026】
なお、集荷エリア40aと集荷エリア40bに配置されている装置の構成及び動作は同じであるから、以下では、両者を区別する必要がない場合、配置されている装置も含めて、添字のa及びbを省略して、集荷エリア40のように表現する。
【0027】
各装置について説明する。
載荷装置20は、折機1から排出される新聞紙3を一部ずつグリッパ31に掴ませる。新聞紙3は、折機1で切断及び折り畳まれて一部ずつが瓦状に積み重なった状態でデリバリーコンベヤ19より排出される。グリッパ31は中間搬送部30にて一定間隔で配置されており、各グリッパ31が新聞紙3を一部ずつ掴む。グリッパ31に掴まれた新聞紙3は、グリッパ31に把持された状態で
図2の矢印Aの方向に搬送される。
【0028】
中間搬送部30は、新聞紙3の搬送経路を形成しており、外枠となるガイドレールの中に搬送チェーンが内挿されている。搬送チェーンには複数の歯車が噛合しており、歯車の回転により搬送チェーンがガイドレール内を循環する。搬送チェーンには複数のグリッパ31が一定間隔で取り付けられており、搬送チェーンの循環により、各グリッパ31に把持された新聞紙3が搬送される。ガイドレールは鋼板製で、ストレート、ひねり、水平ターン、垂直ターンの組合せにより、自由度の高いレイアウトを実現できるようになっている。また、搬送チェーンのテンションは自動的に調整されるようになっている。
【0029】
脱荷部41は、中間搬送部30にてグリッパ31に把持されて搬送されている新聞紙3を脱荷させる。脱荷部41は、エアシリンダによりカムの位置を変えて、脱荷部41を通過するグリッパ31にカムを接触させることにより、グリッパ31を開いた状態(以下、「開放状態」とする)にして、把持されている新聞紙3を脱荷させる。その際、端折れ検出装置60にて端折れしていると判定された新聞紙3は脱荷しない。脱荷部41は、グリッパ31に接触する状態であるカムの位置を変えて、グリッパ31にカムを接触させず、グリッパ31を閉じた状態(以下、「閉鎖状態」とする)のままにして通過させることにより、新聞紙3を脱荷させない。なお、脱荷部41は、端折れ以外、例えば新聞紙3が大きく曲がっている等の不具合が生じた新聞紙3も脱荷させないようにしても良い。
【0030】
脱荷部41は、制御装置80から出力される脱荷状態信号SrのON/OFFによって、グリッパ31の状態を変化させる。即ち、脱荷状態信号SrがONの場合、カムがグリッパ31に接触するように変位させてグリッパ31を開放状態にし、脱荷状態信号SrがOFFの場合、カムがグリッパ31に接触しないように変位させてグリッパ31を閉鎖状態のままにする。脱荷状態信号SrがONは新聞紙3を脱荷させる状態(以下、「脱荷ON状態」とする)を意味し、脱荷状態信号SrがOFFは新聞紙3を脱荷させない状態(以下、「脱荷OFF状態」とする)を意味する。上述のように、通常ケースでは集荷エリア40bにて新聞紙3が脱荷され、臨時ケースでは集荷エリア40aにて新聞紙3が脱荷されるので、脱荷部41bと脱荷部41aとでは、脱荷ON状態と脱荷OFF状態のタイミングが異なる。これらのタイミングについては、後述する。
【0031】
コンベヤ42は、脱荷部41により脱荷された新聞紙3を受けとめてカウンタースタッカ44の方へ搬送する。新聞輪転機が操作側及び駆動側の2セットの折機を備え、それぞれの折機から排出される新聞紙3を搬送する2つの中間搬送部が設けられている場合は、コンベヤ42は首振り式のスイングコンベヤとなっており、操作側の中間搬送部と駆動側の中間搬送部に自動的に切り換えられるようになっている。
【0032】
潰し装置43は、上下にローラを備え、安定した荷姿で新聞紙3をカウンタースタッカ44に受け渡すために、新聞紙3の折り目を上下のローラでつぶす。新聞紙3の列を矯正するサイドジョガー(紙揃え装置)を潰し装置43の前段又は後段に設け、更に安定性を向上させるようにしても良い。
【0033】
カウンタースタッカ44は、潰し装置43を介してコンベヤ42により搬送される新聞紙3を積層する。新聞紙3は、カウンタースタッカ44にて所定の部数毎に積層整理された後、自動梱包され、所定の発送ラインに搬出される。
【0034】
最終脱荷部51は、集荷エリア40の脱荷部41で脱荷されなかった新聞紙3を脱荷させる。最終脱荷部51は、通過する全てのグリッパ31を開放状態にすることにより、脱荷されずに把持されたままの新聞紙3を脱荷させる。
【0035】
排紙ラック52は、最終脱荷部51にて脱荷させられた新聞紙3を積層する。排紙ラック52は、例えばカウンタースタッカ44が全て紙詰まり等で新聞紙3の受け入れができないときに緊急的に受け入れるために設置されるものであるが、本実施形態では、端折れした新聞紙3を受け入れるためにも使用する。
【0036】
端折れ検出装置60は、中間搬送部30により搬送される新聞紙3を撮像した画像情報に基づいて、新聞紙3の端折れを検出する。中間搬送部30では、新聞紙3はグリッパ31に把持された状態で搬送されているので、新聞紙3が重ならずに撮像することができる。
【0037】
端折れした新聞紙3の状態の例を
図3に示しており、端折れには、
図3(A)に示されるように、新聞紙3の上面の端が外側に折れる外折れと、
図3(B)及び(C)に示されるように、新聞紙3の上面の端が内側に折れる(
図3(B))又は新聞紙3の内部の紙の端が折れる(
図3(C))内折れがある。本実施形態では外折れを対象として検出を行う。
【0038】
端折れ検出装置60は、搬送される新聞紙3を撮像するために、カメラ(撮像手段)61を備えている。カメラ61は、搬送される新聞紙3を、グリッパ31に把持された状態で脱荷される前に撮像する必要があるので、載荷装置20と最上流に位置する脱荷部41aの間に設置される。更に、新聞紙3の端折れの状態を的確に撮像できる位置、例えば中間搬送部30において新聞紙3が水平方向に搬送される位置に設置する。また、カメラ61は、新聞紙3の側面(新聞紙3の搬送方向及び鉛直方向と平行な面)が撮像できるような向きで設置される。カメラ61として、新聞紙3の形状が判別可能なレベルの精度を有するカメラを使用し、例えば160万画素のモノクロタイプのCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ使用のカメラを使用し、新聞紙3それぞれの同じ位置を撮像するために、エリアカメラを使用する。また、新聞紙3は高速に搬送されるので、カメラ61のシャッター方式は、フレーム全体を一度に撮影するグローバルシャッターとし、シャッター速度は、新聞紙3の搬送速度に応じて設定する。
【0039】
新聞紙3を鮮明に撮像できるように、照明62を設置し、新聞紙3に光を当てて撮像する。新聞紙3の搬送速度を考慮して、常時照光式の照明を使用する。照明62として、例えば赤色LED(Light Emitting Diode)バーを使用する。
【0040】
なお、上記以外の仕様や方式のカメラ及び照明、例えばカラータイプのカメラ、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ使用のカメラ、ストロボ方式の照明等を使用しても良い。
【0041】
図4にカメラ61及び照明62の設置例を示す。
図4は、カメラ61に対向する向きから見た概要図である。新聞紙3はグリッパ31に把持されて搬送され、カメラ61は、端折れが生じる新聞紙3の端部がレンズの略中央前方を通過するように設置し、カメラ61の上部に照明62を設置する。カメラ61は、搬送される新聞紙3を1部ずつ撮像するために、センサ部70から出力される動作信号Saに同期して、新聞紙3の側面を撮像する。よって、カメラ61を設置する際に、動作信号Saの入力のタイミングに合わせて、カメラ61の位置を微調整する。撮像された新聞紙3の画像は画像情報Iimとして出力される。画像情報Iimは、例えば画素毎に0~255階調の数値で表現されたデータである。
【0042】
端折れ検出装置60は、CPU(MPUやMCU等を含む)、RAMやROM等のメモリ等を備えており、端折れの検出は、メモリ等を使用して、CPUで動作するプログラムにより実行される。
【0043】
端折れ検出のための端折れ検出装置60の構成例を
図5に示す。端折れ検出装置60は、画像取得部63、学習モデル記憶部64及び判定部65を備えている。
【0044】
画像取得部63は、カメラ61から出力される画像情報Iimを入力し、画像情報IimAを出力する。この際、画像のセンタリング、不要な部分を除去するトリミング等の前処理を公知の方法で実行しても良い。
【0045】
学習モデル記憶部64は、端折れしている新聞紙3の画像情報(以下、「不良画像情報」とする)と端折れしていない新聞紙3の画像情報(以下、「良画像情報」とする)を使用して学習された学習モデルMdを記憶している。
【0046】
学習モデルMdは、ディープラーニングや畳み込みニューラルネットワークを含むニューラルネットワーク等の機械学習の手法で学習されたモデルである。ニューラルネットワークの他に、サポートベクターマシン、ベイズ分類器等の学習手法で学習されたモデルを使用しても良い。学習モデルMdを生成するための学習は、教師あり学習である。即ち、事前に収集された多くの良画像情報及び不良画像情報に対して、良画像情報には端折れが生じていないことを示す「良」とのラベルを、不良画像情報には端折れが生じていることを示す「不良」とのラベルを付けて、学習を行う。ここでの「良」及び「不良」の判断は、人が目視で行う。ニューラルネットワークは、構造(入力層、中間層、出力層等)、活性化関数、重み及びバイアスで定義され、学習により重み及びバイアスが最適化されるので、学習モデル記憶部64は、学習モデルMdとして、例えば重み及びバイアスを記憶する。
【0047】
判定部65は、画像情報IimAに基づいて、学習モデル記憶部64に記憶されている学習モデルMdを用いて、画像情報IimAに対応する新聞紙3に端折れが生じているか否かの判定(以下、「端折れ判定」とする)を行う。
【0048】
例えば、学習モデルMdがニューラルネットワークで学習されたモデルの場合、判定部65は、ニューラルネットワークの入力層に画像情報IimAを入力し、出力層から出力される数値(確率、スコア)(以下、「判定値」とする)を基に端折れ判定を行う。例えば、判定値が0は「良」(端折れが生じていない)に対応し、判定値が1は「不良」(端折れが生じている)に対応するとして、0~1の値を取る判定値に閾値を設定して、判定値が閾値未満の場合は「良」、閾値以上の場合は「不良」と判定する。
【0049】
判定部65は、端折れ判定の結果が「不良」の場合、検出信号Sdを出力する。端折れ判定の結果が「良」の場合は、何も出力しない。
【0050】
センサ部70は、カメラ61が新聞紙3を撮像するタイミング及び制御装置80が脱荷状態信号Srを切り換えるタイミングの基準となる動作信号Saを出力する。
【0051】
カメラ61はグリッパ31に把持されて搬送される新聞紙3を1部ずつ撮像し、脱荷状態信号Srに応じて脱荷部41にて開放状態及び閉鎖状態にされるグリッパ31は新聞紙3を1部ずつ把持するので、動作信号Saは、搬送される新聞紙3の1部を単位とした時間間隔で、更には移動するグリッパ31の1個を単位とした時間間隔で、順次出力される。つまり、センサ部70は、中間搬送部30の任意の地点を各グリッパ31が通過するタイミング(以下、「基準タイミング」とする)で動作信号Saを出力する。動作信号Saとして、例えば矩形パルスを使用する。
【0052】
基準タイミングは、グリッパ31の通過を検知して生成することができるが、グリッパ31は搬送チェーンに取り付けられて移動しており、搬送チェーンは歯車の回転により循環しているので、グリッパ31の移動は歯車の動作に同期している。よって、センサ部70は、歯車の動作を検知することにより、基準タイミングを生成することも可能である。具体的には、光電センサを使用して、歯車の歯の部分に光を照射することにより、グリッパ31の配置間隔に対応した歯車の動作を検知し、基準タイミングを生成する。光電センサは、投光部から光を発射し、検出物体による反射、透過、吸収等での光量の変化を受光部で検出して出力信号を得るものである。検出方式により透過型、拡散反射型、回帰反射型、距離設定型等の様々な種類があるので、設置場所や使用条件等を基に、適切な光電センサを選択して使用する。
【0053】
なお、新聞紙3を搬送するために使用される搬送チェーン、歯車、グリッパ31等により搬送機構が構成され、歯車以外の搬送機構の構成要素の動作を検知することにより、基準タイミングを生成しても良い。例えば、グリッパ31の取付ボルトの頭部を近接センサで検知する、スリット(切れ目、隙間)を設けた検出用プレートを搬送チェーンの駆動ユニットに取り付けて光電センサを用いて検知する等により、基準タイミングを生成しても良い。
【0054】
カメラ61は、搬送される新聞紙3を1部ずつ撮像するために、基準タイミングに同期して新聞紙3を撮像する。つまり、動作信号Saを入力したタイミングで新聞紙3を撮像する。
【0055】
制御装置80は、印刷物搬送システム2全体の制御及び外部装置とのデータの送受信等を実行する中で、脱荷状態信号Srを生成する。脱荷状態信号Srは脱荷部41に入力されるが、上述のように、脱荷部41aと脱荷部41bとでは、脱荷ON状態と脱荷OFF状態のタイミングが異なるので、それぞれに異なる脱荷状態信号Srが入力される。以下では、脱荷部41aに入力される脱荷状態信号を「脱荷状態信号SrA」とし、脱荷部41bに入力される脱荷状態信号を「脱荷状態信号SrB」とし、両者を区別する必要がない場合は、総称として「脱荷状態信号Sr」を使用する。
【0056】
脱荷状態信号Srの生成に関連する制御装置80の構成例を
図6に示す。制御装置80は、脱荷制御部81、端折れ制御部82、論理積部(AND回路)83A及び83B並びに否定部(NOT回路)84A及び84Bを備える構成により脱荷状態信号Srを生成する。脱荷制御部81から出力される基本脱荷状態信号SrA0及びSrB0(以下、総称を「基本脱荷状態信号Sr0」とする)は、論理積部83A及び83Bにそれぞれ入力される。端折れ制御部82から出力される脱荷停止信号SeA及びSeB(以下、総称を「脱荷停止信号Se」とする)は否定部84A及び84Bにそれぞれ入力され、論理反転された信号¬SeA及び¬SeBが論理積部83A及び83Bにそれぞれ入力される。そして、論理積部83A及び83Bでの論理積の結果が脱荷状態信号SrA及びSrBとしてそれぞれ出力される。
【0057】
基本脱荷状態信号Sr0は通常ケース及び臨時ケースに応じて脱荷部41の状態を切り換える信号で、脱荷状態信号Srと同様に、ONが脱荷ON状態に対応し、OFFが脱荷OFF状態に対応する。脱荷停止信号Seは端折れした新聞紙3を集荷エリア40で脱荷させないために使用される信号で、端折れ検出装置60が「不良」(端折れが生じている)と判定した場合に、新聞紙3を脱荷させないためにONとなる。よって、端折れ検出装置60が「良」(端折れが生じていない)と判定した場合は、脱荷停止信号SeはOFFであるから、脱荷状態信号Srの値は基本脱荷状態信号Sr0と同じ値となる。
【0058】
脱荷制御部81は、動作信号Sa及び指令情報Icを入力し、指令情報Icに応じた基本脱荷状態信号SrA0及びSrB0を生成する。
【0059】
指令情報Icは、臨時ケースにおいて外部より脱荷制御部81に入力される。例えば、集荷エリア40bにて新聞紙3が脱荷できず、集荷エリア40aをバックアップとして使用する場合や、下流の装置や生産管理システム等からの指令により集荷エリア40aにて少部数の新聞紙3の束を作成する場合等で、指令情報Icが入力される。
【0060】
通常ケースでは、集荷エリア40bで新聞紙3を脱荷するので、脱荷制御部81は、基本脱荷状態信号SrB0をONにして論理積部83Bに出力し、基本脱荷状態信号SrA0をOFFにして論理積部83Aに出力する。そして、脱荷制御部81は、指令情報Icを入力したら、臨時ケースとして、集荷エリア40aで新聞紙3を脱荷するために、基本脱荷状態信号SrA0をONにして論理積部83Aに出力する。新聞紙3が集荷エリア40aで脱荷されると、グリッパ31の状態に関わらず、集荷エリア40bで新聞紙3が脱荷されることはないので、基本脱荷状態信号SrB0は変更せずにONのままとする。基本脱荷状態信号Sr0のON/OFFの切り換えは、脱荷部41による新聞紙3の脱荷のタイミングに合わせるために、動作信号Saの入力に同期したタイミングで行う。
【0061】
端折れ制御部82は、動作信号Sa及び検出信号Sdを入力し、脱荷停止信号SeA及びSeBを生成する。
【0062】
端折れ検出装置60が「良」と判定し、検出信号Sdが端折れ制御部82に入力されていないときは、端折れ制御部82は、脱荷停止信号SeA及びSeBを共にOFFにして否定部84A及び84Bにそれぞれ出力する。
【0063】
検出信号Sdが端折れ制御部82に入力されたら、端折れ制御部82は、ONにした脱荷停止信号SeA及びSeBを否定部84A及び84Bにそれぞれ出力する。検出信号Sdはカメラ61で撮像した新聞紙3の画像情報Iimに基づいて端折れ検出装置60の判定部65が「不良」と判定した時点で出力されるので、「不良」と判定された新聞紙(以下、「不良判定新聞紙」とする)3を把持したグリッパ31がカメラ61で撮像されてから脱荷部41a及び41bを通過するまでにタイムラグがある。よって、端折れ制御部82は、そのタイムラグを考慮して、脱荷停止信号SeA及びSeBをONにする。具体的には、例えば、中間搬送部30にて新聞紙3を搬送しているとき、カメラ61と脱荷部41aの間に存在するグリッパ31の数がMa、カメラ61と脱荷部41bの間に存在するグリッパ31の数がMbであるとする。Ma及びMbは、予め確認しておくか、カメラ61から脱荷部41a及び41bまでのそれぞれ距離並びにグリッパ31の配置間隔から算出することも可能である。この場合、不良判定新聞紙3がカメラ61の前を通過してから脱荷部41a及び41bに到達するまでに脱荷部41a及び41bを通過する新聞紙3の数は、それぞれMa及びMbである。よって、端折れ制御部82は、検査信号Sdを入力してから、(Ma+1)個の動作信号Saを入力したら脱荷停止信号SeAをONし、(Mb+1)個の動作信号Saを入力したら脱荷停止信号SeBをONする。端折れ制御部82は、脱荷停止信号SeをONにした後、次の動作信号Saを入力したら、脱荷停止信号SeをOFFにする。
【0064】
このように、端折れ制御部82が脱荷停止信号SeのON/OFFを切り換えることにより、基本脱荷状態信号Sr0がONで脱荷ON状態となっている集荷エリア40は、脱荷停止信号SeがONとなることにより、脱荷OFF状態になり、基本脱荷状態信号Sr0がOFFで脱荷OFF状態となっている集荷エリア40は、脱荷停止信号SeのON/OFFに関わらず、脱荷OFF状態のままとなる。
【0065】
なお、端折れ制御部82は、検出信号Sdを入力した場合、不良判定新聞紙3のみを脱荷させないように脱荷停止信号SeのON/OFFを切り換えるのではなく、不良判定新聞紙3の前後の所定の部数(例えば前後3部ずつ)の新聞紙3も脱荷させないように脱荷停止信号SeをONにするタイミング及びOFFにするタイミングを調節しても良い。これにより、タイミングのずれ等により不良判定新聞紙3が誤って脱荷されるのを抑制することができる。また、不良判定新聞紙3を集荷エリア40で脱荷しないようにできるのであれば、脱荷状態信号Srの生成に関連する制御装置80の構成は
図6に示される構成に限られない。
【0066】
ここで、タイムチャートを用いて、センサ部70から出力される動作信号Saに同期したカメラ61並びに脱荷制御部81及び端折れ制御部82の動作例について説明する。
【0067】
図7に、動作信号Sa、カメラ61の撮像のタイミング、検出信号Sd、指令情報Ic、基本脱荷状態信号SrA0及びSrB0、脱荷停止信号SeA及びSeB、並びに脱荷状態信号SrA及びSrBの時間変化の例を示す。本例では、カメラ61と脱荷部41aの間に存在するグリッパ31の数(Ma)が3個、カメラ61と脱荷部41bの間に存在するグリッパ31の数(Mb)が15個とし、集積エリア40aでは脱荷ON状態において5個のグリッパ31を開放状態にするものとし、通常ケースで不良判定新聞紙3が未だ検出されていない状態で動作が開始しているとする。
【0068】
図7(A)及び(B)に示されるように、カメラ61は、動作信号Saに同期して、搬送される新聞紙3を撮像する。
【0069】
動作開始時は、集荷エリア40aは脱荷OFF状態で、集荷エリア40bは脱荷ON状態となっている。その状態で、
図7(D)に示されるように、指令情報Icが脱荷制御部81に入力されると、矢印T3で示されるように、基本脱荷状態信号SrA0はONとなり、基本脱荷状態信号SrB0はONのままとなる。その結果、矢印T4で示されるように、脱荷状態信号SrAがONとなり、集荷エリア40aが脱荷ON状態となる。そして、脱荷制御部81が動作信号Saを5つカウントしたら、基本脱荷状態信号SrA0をOFFにする。その結果、矢印T5で示されるように、脱荷状態信号SrAがOFFとなり、集荷エリア40aが脱荷OFF状態となる。
【0070】
図7(C)に示されるように、検出信号Sdが端折れ制御部82に入力されると、端折れ制御部82は、矢印T1で示される時点から脱荷停止信号SeA及びSeBをONにするタイミングを計るために動作信号Saを基にカウントを始める。そして、
図7(G)及び(H)に示されるように、動作信号Saを4個(Ma+1)カウントしたら、脱荷停止信号SeAをONにし、動作信号Saを16個(Mb+1)カウントしたら、脱荷停止信号SeBをONにする。ONにした脱荷停止信号SeA及びSeBは、次の動作信号Saが入力されたタイミングでOFFにする。
【0071】
脱荷停止信号SeAがONになっても、基本脱荷状態信号SrA0はOFFであるから、矢印T2で示されるように、脱荷状態信号SrAはOFFのままで、集荷エリア40aは脱荷OFF状態のままである。
【0072】
脱荷停止信号SeBがONになると、基本脱荷状態信号SrB0はONであるから、矢印T6で示されるように、脱荷状態信号SrBはOFFとなり、集荷エリア40bは脱荷OFF状態となる。そして、脱荷停止信号SeBがOFFになると、矢印T7で示されるように、脱荷状態信号SrBはONとなり、集荷エリア40bは脱荷ON状態に戻る。
【0073】
なお、臨時ケースにおいて、基本脱荷状態信号SrB0は変更せずにONのままとしているが、集荷エリア40aで脱荷された新聞紙3を把持していたグリッパ31が脱荷部41bを通過するタイミングにおいて、基本脱荷状態信号SrB0をOFFにして、集荷エリア40bを脱荷OFF状態にしても良い。このようにした場合、上述では脱荷停止信号Seの切り換えは全ての脱荷部41を対象として行われているが、不良判定新聞紙3を脱荷対象としていた脱荷部のみを対象として行うようにしても良い。このときの脱荷部の特定は、検出信号Sdを入力した時点での脱荷の状況(既に脱荷した新聞紙3の部数)と、カメラ61と脱荷部41の間に存在するグリッパ31の数を基に行う。
【0074】
センサ部70は、例えば歯車の動作検知から基準タイミングを生成する場合、歯車の動作を検知可能であれば、中間搬送部30の任意の箇所に設置可能である。但し、動作信号Saを入力するカメラ61及び制御装置80並びに脱荷部41から遠い箇所に設置すると、搬送チェーンの伸縮やガタによりタイミングのずれが大きくなる可能性があるので、それらに近い箇所に設置するのが好ましい。
図2では、センサ部70は脱荷部41aと41bの間に設置されている。また、センサ部70が出力する動作信号Saに基づいて制御装置80を介して脱荷部41a及び41b両方を制御するのではなく、脱荷部41a及び41bそれぞれの制御用にセンサ部を2つ設けても良い。これにより、ずれ等を抑えた、より正確な制御が可能となる。
【0075】
このような印刷物搬送システム2の構成において、端折れ検出に関連する動作例を、
図8のフローチャートを参照して説明する。
図8において、破線の矢印は端折れ検出装置60と制御装置80の間でのデータの入出力を示す。なお、最初の動作信号Saを入力した時点で、脱荷制御部81は基本脱荷状態信号SrA0をOFFに、基本脱荷状態信号SrB0をONにして出力し、端折れ制御部82は脱荷停止信号SeA及びSeBを共にOFFにして出力するものとする。これにより、OFFの脱荷状態信号SrAとONの脱荷状態信号SrBが制御装置80から出力され、集荷エリア40aは脱荷OFF状態、集荷エリア40bは脱荷ON状態となる。
【0076】
センサ部70は歯車の動作を検知して、動作信号Saを出力する。動作信号Saは、端折れ検出装置60のカメラ61及び制御装置80に入力される(ステップS10、S20)。
【0077】
カメラ61は、動作信号Saに同期して、搬送される新聞紙3を撮像し、画像情報Iimを出力する(ステップS30)。画像情報Iimは画像取得部63に入力される。
【0078】
画像取得部63は、入力した画像情報Iimを、画像情報IimAとして、判定部65に出力する(ステップS40)。
【0079】
判定部65は、学習モデル記憶部64に記憶されている学習モデルMdを用いて、画像情報IimAに基づいた端折れ判定を行う(ステップS50)。そして、端折れ判定の結果が「不良」の場合(ステップS60)、検出信号Sdを制御装置80の端折れ制御部82に出力する(ステップS70)。端折れ判定の結果が「良」の場合は(ステップS60)、何も出力しない。
【0080】
制御装置80の端折れ制御部82は、検出信号Sdを入力した状態ならば(ステップS80)、脱荷停止信号SeA及びSeBのON/OFFを切り換えるタイミングを計るための当該検出信号Sdに対するカウンタをカウントアップする(ステップS90)。
【0081】
カウンタの値が脱荷停止信号SeAをONにするタイミングの値(例えばMa+1)ならば(ステップS100)、端折れ制御部82は脱荷停止信号SeAをONにして出力する(ステップS110)。
【0082】
カウンタの値が脱荷停止信号SeAをONからOFFにするタイミングの値(例えばMa+2)ならば(ステップS120)、端折れ制御部82は脱荷停止信号SeAをOFFにして出力する(ステップS130)。
【0083】
カウンタの値が脱荷停止信号SeBをONにするタイミングの値(例えばMb+1)ならば(ステップS140)、端折れ制御部82は脱荷停止信号SeBをONにして出力する(ステップS150)。
【0084】
カウンタの値が脱荷停止信号SeBをONからOFFにするタイミングの値(例えばMb+2)ならば(ステップS160)、端折れ制御部82は脱荷停止信号SeBをOFFにして出力し(ステップS170)、カウンタをリセットする(ステップS180)。この時点で、当該検出信号Sdを入力した状態は終了となる。
【0085】
以上の動作を、印刷物搬送システム2は、基準タイミングの間隔で繰り返し実行する。
【0086】
端折れ検出装置60の検出性能に関して、シミュレーションによる結果を説明する。
【0087】
シミュレーションでは、
図2に示されるように、印刷物搬送システム2にカメラ61及びセンサ部70を設置し、カメラ61から出力される画像情報Iimを収集、保存する。本シミュレーションでは、外折れを検出対象として、中間搬送部30にて搬送されてカメラ61により撮像される新聞紙3の画像情報の中から、端折れしていない「良」の新聞紙135部の画像情報と端折れ(外折れ)している「不良」の新聞紙135部の画像情報を抽出し、それらを使用して学習及び端折れ判定を行う。即ち、「良」の135個の画像情報と「不良」の135個の画像情報を使用して学習モデルMdの学習を行い、同じ画像情報に対して端折れ判定を行う。
【0088】
シミュレーションの結果は、135個の「良」の画像情報の内、2個の画像情報を「不良」と誤判定し、「良」判定が133個、「不良」判定が137個との結果で、正解率は約98.5%であった。学習と評価で同じデータを使用するクローズドテストではあるが、高い正解率が得られた。
【0089】
本発明の他の実施形態について説明する。
【0090】
第1実施形態では、学習モデル記憶部64に記憶されている学習モデルMdは、事前に収集された画像情報(以下、「事前収集画像情報」とする)を用いて学習されたモデルであるが、端折れ検出装置60の画像取得部63が取得した画像情報IimAを蓄積して、学習モデルMdの学習に使用することも可能である。この場合の端折れ検出装置の構成例(第2実施形態)を
図9に示す。第1実施形態の端折れ検出装置60と比べると、第2実施形態の端折れ検出装置160では、画像記憶部66が追加されており、その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0091】
画像記憶部66は、画像取得部63が出力する画像情報IimAを記憶する。即ち、画像情報IimAは判定部65に入力されると共に、画像記憶部66に記憶される。
【0092】
画像記憶部66に記憶された画像情報IimA(以下、「追加画像情報」とする)は、学習モデルMdの学習に使用する。追加画像情報を学習モデルMdの学習に使用するためには、画像情報IimAに対して「良」(端折れが生じていない)又は「不良」(端折れが生じている)のラベル付けが必要であり、ラベル付けは、事前収集画像情報と同様に、人が目視で行う。この際、画像情報IimAに対する判定部65による端折れ判定の結果も画像記憶部66に記憶するようにして、その判定結果を参考にして、ラベル付けを行うようにしても良い。例えば、画像情報IimAに対応させて判定結果(「良」又は「不良」)を画像記憶部66に記憶させる。そして、ラベル付けの作業において、画像情報と共に判定結果も表示し、判定結果が間違っている場合は修正し、間違っていない場合はそのままにして、判定結果をラベルとして利用して学習を行う。
【0093】
学習モデルMdの学習は、事前収集画像情報に追加画像情報を加えて最初から学習を行っても良いし、事前収集画像情報を用いて学習された学習モデルを初期値として追加画像情報だけを用いて学習を行っても良いし、事前収集画像情報を用いて学習された学習モデルを初期値として事前収集画像情報及び追加画像情報を用いて学習を行っても良い。
【0094】
なお、画像取得部63から出力される画像情報IimAを全て画像記憶部66に記憶すると、データ量が膨大となり、また、良画像情報のデータ量が不良画像情報のデータ量より多くなる可能性があるので、判定部65による端折れ判定の結果を利用する等して、良画像情報と不良画像情報のバランスを考慮した上で、記憶する画像情報を削減するようにしても良い。例えば、判定部65が「不良」と判定したときに、その前後の所定の数の画像情報のみを画像記憶部66に記憶する。
【0095】
第2実施形態での端折れ検出装置160の動作は、第1実施形態での端折れ検出装置60の動作と比べると、上述のように、画像取得部63が画像情報IimAを判定部65に出力する際に、画像情報IimAが画像記憶部66に記憶される動作が加わるだけで、その他の動作は端折れ検出装置60の動作と同じである。
【0096】
上述の実施形態(第1及び第2実施形態)に対して、以下のような変形が可能である。
【0097】
上述の実施形態では、グリッパ31で把持された状態で搬送されている新聞紙3を撮像することにより、新聞紙3が重なり合わずに撮像することが可能となっているが、端折れする可能性がある箇所が重なり合わないのであれば、それ以外の状態で搬送されている新聞紙3を撮像しても良い。更に、本発明は、端折れする可能性がある印刷物で、端折れする可能性がある箇所が重なり合わない状態で搬送されるのであれば、適用可能である。
【0098】
また、カメラ61は、新聞紙3の側面を撮像しているが、新聞紙3の平面を撮像し、新聞紙3の平面の画像情報に基づいて端折れ判定を行っても良い。この場合、学習モデル記憶部64に記憶される学習モデルMdも、新聞紙の平面の画像情報を使用して学習されたモデルとなる。
【0099】
上述の実施形態では、カメラ61が撮像するタイミング、基本脱荷状態信号SrA0をONからOFFにするタイミング、並びに脱荷停止信号SeをON及びOFFにするタイミングは、センサ部70が搬送機構の歯車等の動作を検知することにより生成する基準タイミングで出力される動作信号Saに基づいて決定されているが、時間のずれが生じ難い環境等においては、一定の時間間隔で生成されるタイミングに基づいて決定しても良い。この場合、これらのタイミングのうちの少なくとも1つを、一定の時間間隔で生成されるタイミングに基づいて決定するようにしても良い。
【0100】
また、脱荷部41によるグリッパ31の状態(開放状態、閉鎖状態)の変化を、脱荷状態信号SrのON/OFFによって行っているが、グリッパ31を開放状態にする信号及び閉鎖状態にする信号をそれぞれ設け、これらの信号の入力によりグリッパ31の状態を変化させるようにしても良い。この場合、これらの信号を全ての脱荷部41が共有して使用するようにしても良い。
【0101】
上述の実施形態では、新聞紙3の端折れとして、外折れを対象として検出を行っているが、内折れを対象として検出を行っても良い。更に、外折れ及び内折れ両方を対象とし、端折れ判定の結果の「不良」(端折れが生じている)を細分化して、外折れと内折れのどちらが生じているかまで判定するような検出を行っても良い。この場合、学習モデルMdも、端折れしていない新聞紙3、外折れしている新聞紙3及び内折れしている新聞紙3それぞれの画像情報に、「良」、「外折れ」及び「内折れ」のラベル付けをして学習したモデルとなる。
【0102】
また、上述の実施形態の端折れ検出装置は、外部の装置等で学習された学習モデルMdを使用して端折れ判定を行っているが、端折れ検出装置が、学習モデルMdを学習する学習部を備えて、学習部で学習された学習モデルを使用して端折れ判定を行っても良い。この場合、例えば、画像取得部63が取得する画像情報IimAを学習に使用するために、第2実施形態のように、画像記憶部66も備える。また、学習部は、学習モデルMdの学習の場合と同様に、ニューラルネットワーク等の機械学習の手法を使用する。学習に使用する画像情報IimAに対するラベル付けに、判定部65での端折れ判定の結果を利用するようにしても良い。
【0103】
上述の実施形態は、学習モデル記憶部及び画像記憶部をメモリとして、それ以外の構成要素の処理を、上述のようにプログラムとして実現することにより、コンピュータとメモリの構成で実現可能である。各構成要素は専用IC(Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアでも実現可能である。また、上述の実施形態は装置又はシステムとしての形態で説明されているが、本発明は、方法又はプログラムとしての形態を取ることも可能である。
【0104】
なお、本発明は上記形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 折機
2 印刷物搬送システム
3 新聞紙
11 フォーマー
12 フォーミングローラ
13 ニッピングローラ
14 鋸胴
14a、14b 断裁刃
15 折胴
16 折下ガイド
17 折下ドラッグローラ
18 デリバリーファン
19 デリバリーコンベヤ
20 載荷装置
30 中間搬送部
31 グリッパ
40、40a、40b 集荷エリア
41、41a、41b 脱荷部
42、42a、42b コンベヤ
43、43a、43b 潰し装置
44、44a、44b カウンタースタッカ
50 排紙エリア
51 最終脱荷部
52 排紙ラック
60、160 端折れ検出装置
61 カメラ
62 照明
63 画像取得部
64 学習モデル記憶部
65 判定部
66 画像記憶部
70 センサ部
80 制御装置
81 脱荷制御部
82 端折れ制御部