(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】棟固定式屋根上作業用安全補助具
(51)【国際特許分類】
E04D 15/00 20060101AFI20230913BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
E04D15/00 V
E04G21/32 D
(21)【出願番号】P 2022201671
(22)【出願日】2022-12-17
【審査請求日】2023-04-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505216472
【氏名又は名称】株式会社マスタックエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100106378
【氏名又は名称】宮川 宏一
(72)【発明者】
【氏名】舩木 主税
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-109125(JP,A)
【文献】実公昭46-000417(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 15/00
E04G 21/32
E04G 5/00
A62B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根上作業者の屋根上における作業中に前記屋根上作業者の着用するハーネスに過大な引っ張り力が発生した際に当該屋根上作業者の安全を確保するための棟固定式屋根上作業用安全補助具であって、
前記棟固定式屋根上作業用安全補助具は、前記棟の幅方向両側に備わる棟傾斜面の水下側端部に一方の棟折れ下がり部と他方の棟折れ下がり部がそれぞれ形成された棟に取り付けるためのものであり、
屋根の棟に取り付けた状態で見て、屋根の棟の頂きに沿って当該屋根の長手方向に亘って位置する支持延在部と、
前記支持延在部の両端にそれぞれ備わった一端側結合固定部及び他端側結合固定部と、
屋根の棟の棟傾斜面のうち棟の頂部を挟んで一方の棟傾斜面にその棟傾斜面の角度に合わせて載置可能であると共に、磁気引っ張り力によって前記一方の棟傾斜面に密着するようになった第1の磁石ユニットと、
屋根の棟の棟傾斜面のうち棟の頂部を挟んで他方の棟傾斜面にその棟傾斜面の角度に合わせて載置可能であると共に、磁気引っ張り力によって前記他方の棟傾斜面に密着するようになった第2の磁石ユニットと、
前記第1の磁石ユニットにはこれが載置された棟の一方の棟傾斜面に密着固定させるための磁気引っ張り力を作用させる第1の磁石が配置され、
前記第2の磁石ユニットにはこれが載置された棟の他方の棟傾斜面に密着固定させるための磁気引っ張り力を作用させる第2の磁石が配置され、
前記第1の磁石ユニットの下側縁部近傍に沿うように備わり、前記棟の第1の棟斜面の水下側縁部から一定の幅で下方に折れ曲がった一方の棟折れ下がり部に押し付けた状態で固定できるようになった第1の棟折れ下がり面押し当て部と、
前記第2の磁石ユニットの下側縁部に沿うように備わり、前記棟の他方の棟傾斜面の水下側縁部から一定の幅で下方に折れ曲がった他方の棟折れ下がり部に押し付けた状態で固定できるようになった第2の棟折れ下がり面押し当て部と、
前記一方の棟傾斜面及び前記他方の棟傾斜面を跨ぐように延在し、その延在方向中央部は前記一端側結合固定部に固定され、その両端部の
一端が前記第1の棟折れ下がり面押し当て部に互いの取り付け位置を調整して固定可能とし、その両端部の他端が前記第2の棟折れ下がり面押し当て部に互いの取り付け位置を調整して固定するようになった一端側引っ張り力吸収伝達部と、
前記一方の棟傾斜面及び前記他方の棟傾斜面を跨ぐように延在し、その延在方向中央部は前記他端側結合固定部に固定され、その両端部の一端が前記第1の棟折れ下がり面押し当て部に互いの相対位置を調整して固定し、その両端部の他端が前記第2の棟折れ下がり面押し当て部に互いの相対位置を調整して固定するようになった他端側引っ張り力吸収伝達部
と、を有し、
前記第1の磁石ユニットの下側及び第2の磁石ユニットの下側の少なくとも一方には屋根上作業者安全確保用連結部が備わり、
屋根上作業者の屋根上における作業中に当該屋根上作業者の着用するハーネスに過大な引っ張り力が発生した際に、当該過大な引っ張り力が前記ハーネスと連結される前記屋根上作業者安全確保用連結部を介して前記一端側引っ張り力吸収伝達部と他端側引っ張り力吸収伝達部に分かれて伝達されることで、前記第1の磁石ユニット又は第2の磁石ユニットのうち、前記屋根上作業者がいる屋根上面と反対側の屋根上面の棟傾斜面に固定状態で載置されて磁石ユニットに備わる棟折れ下がり面押し当て部をこれが当接する棟折れ下がり部に押し付ける押し付け力として作用させるようになったことを特徴とする棟固定式屋根上作業用安全補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根上作業中に使用する屋根上作業用の安全補助具であって、作業者に作業上の身体的負担や時間的負担をかけずに効率良くかつ迅速に屋根の上に設置可能な棟固定式屋根上作業用安全補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根の施工や修理を行う場合は、作業者の屋根上作業の効率化とは安全を図るために屋根上作業用の足場を設けることが義務付けられている。
【0003】
しかし、実際には建物の屋根の施工や、屋根への太陽光発電パネルの後付け設置、屋根の一部破損部分の補修・張り替え、スレート板に金属板を被せて補強するような作業を行う場合、上述のような大掛かりな足場を設置しないで行っているケースが多い。即ち、例えば作業者が梯子を建物の軒先に立てかけて屋根の上に昇り、屋根上作業が一般的に行われている。
【0004】
そして、このような屋根上作業を行うにあたって、作業者の安全を確保するために例えば棟と軒先との間に主綱を屋根の大きさに応じて一本又は所定間隔を隔てた状態で複数本しっかりと張り渡してこの主綱を屋根の上面に固定した上で、安全ロープの一端を主綱に取り付けると共に、その他端を作業者が身に付けるハーネス型安全帯にしっかりと繋いで屋根上作業を安全に行うことが通常行われている。
【0005】
ここで主綱を棟と軒先との間にしっかりと張り渡すために主綱の軒先側や建物の軒先に様々な工夫がなされることが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の内容は、板材を折り曲げた略コ字状の鉤部を主綱であるベルトの端部に結びつけて、この鉤部を軒先にかけた状態で主綱を屋根の上に棟を介して張り渡し、この主綱にロープ伸縮調整部の一方の端部を取り付け、他方の端部を作業者に結びつけて屋根上作業の安全を確保するようにしている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の内容によると、このような主綱の張り渡しの形態を実現するために作業者が主綱の端部に備わった鉤部を持って屋根の上を軒先まで下り歩いて軒先のすぐ近傍において鉤部を軒先に引っ掛けて固定する作業を行わなければならない。そのため、軒先が傷んでいたりすると、作業者の体重が加わることでその軒先部分が大きく破損して作業者が屋根から思いがけず落下してしまう恐れがある。
【0009】
また、鉤部が角パイプ材を略コ字状に折り曲げて形成されているため、鉤部を軒先に引っ掛けた後に主綱を屋根の上にしっかりと張り渡すために十分な張力を主綱に加えると、この張力が鉤部と軒先との極めて狭い係合部に引っ張り力として作用して元々傷みかけていた軒先がこの引っ張り力で局部的に破損してしまう恐れがある。
【0010】
以上に加えて、近年は地球温暖化の影響に基づく異常気象により巨大台風の到来や巨大低気圧の通過、従来には見られない積雪量の降雪、予期せぬ竜巻の突発的発生に加えて、規模の大きい地震の多発等により屋根の損壊が問題となっている。
【0011】
そして、このような災害の発生に伴う屋根の破損状況の調査を行って必要な箇所の屋根の修理を行うために家屋保険に加入する住宅が増加している。係る家屋保険の加入の増加に伴って、災害発生時の屋根の破損状況を把握するために屋根上作業者による必要な屋根の修理に加えて、屋根の損壊状況の調査を保険会社から委託された屋根上作業に慣れない作業者が調査員として屋根の全体、即ち、一方の棟から他方の棟、上側では一方の棟から他方の棟、下側では一方の軒先から他方の軒先まで隈なく屋根の上を歩いて調査する必要が増えている。
【0012】
このような屋根上の状況調査では当然のことながら危険が伴うが、特に危険な調査としては、身体をかがめて軒先など見にくい部分の破損状況をのぞき込むような確認作業が挙げられる。このような身体をあえて無理な姿勢にして確認する作業は一歩間違えればバランスを崩して屋根からの落下事故を招くと共に、これに伴う大けがや死傷事故を多分に孕んでいる。
【0013】
本発明の目的は、台風や低気圧などの通過に伴う強風、大雪に伴う積雪、その他経時的老朽化等様々な要因によって発生する屋根の破損状況の確認作業や、破損した屋根の部分的又は大掛かりな修繕作業などの様々な種類の作業を伴う屋根上作業中に使用する屋根上作業用の安全補助具であって、作業者に作業上の身体的負担や時間的負担をかけずに効率良くかつ迅速に屋根の上に設置可能な棟固定式屋根上作業用安全補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具は、
屋根上作業者の屋根上における作業中に前記屋根上作業者の着用するハーネスに過大な引っ張り力が発生した際に当該屋根上作業者の安全を確保するための棟固定式屋根上作業用安全補助具であって、
前記棟固定式屋根上作業用安全補助具は、前記棟の幅方向両側に備わる棟傾斜面の水下側端部に一方の棟折れ下がり部と他方の棟折れ下がり部がそれぞれ形成された棟に取り付けるためのものであり、
屋根の棟に取り付けた状態で見て、屋根の棟の頂きに沿って当該屋根の長手方向に亘って位置する支持延在部と、
前記支持延在部の両端にそれぞれ備わった一端側結合固定部及び他端側結合固定部と、
屋根の棟の棟傾斜面のうち棟の頂部を挟んで一方の棟傾斜面にその棟傾斜面の角度に合わせて載置可能であると共に、磁気引っ張り力によって前記一方の棟傾斜面に密着するようになった第1の磁石ユニットと、
屋根の棟の棟傾斜面のうち棟の頂部を挟んで他方の棟傾斜面にその棟傾斜面の角度に合わせて載置可能であると共に、磁気引っ張り力によって前記他方の棟傾斜面に密着するようになった第2の磁石ユニットと、
前記第1の磁石ユニットにはこれが載置された棟の一方の棟傾斜面に密着固定させるための磁気引っ張り力を作用させる第1の磁石が配置され、
前記第2の磁石ユニットにはこれが載置された棟の他方の棟傾斜面に密着固定させるための磁気引っ張り力を作用させる第2の磁石が配置され、
前記第1の磁石ユニットの下側縁部近傍に沿うように備わり、前記棟の第1の棟斜面の水下側縁部から一定の幅で下方に折れ曲がった一方の棟折れ下がり部に押し付けた状態で固定できるようになった第1の棟折れ下がり面押し当て部と、
前記第2の磁石ユニットの下側縁部に沿うように備わり、前記棟の他方の棟傾斜面の水下側縁部から一定の幅で下方に折れ曲がった他方の棟折れ下がり部に押し付けた状態で固定できるようになった第2の棟折れ下がり面押し当て部と、
前記一方の棟傾斜面及び前記他方の棟傾斜面を跨ぐように延在し、その延在方向中央部は前記一端側結合固定部に固定され、その両端部の一端が前記第1の棟折れ下がり面押し当て部に互いの取り付け位置を調整して固定可能とし、その両端部の他端が前記第2の棟折れ下がり面押し当て部に互いの取り付け位置を調整して固定するようになった一端側引っ張り力吸収伝達部と、
前記一方の棟傾斜面及び前記他方の棟傾斜面を跨ぐように延在し、その延在方向中央部は前記他端側結合固定部に固定され、その両端部の一端が前記第1の棟折れ下がり面押し当て部に互いの相対位置を調整して固定し、その両端部の他端が前記第2の棟折れ下がり面押し当て部に互いの相対位置を調整して固定するようになった他端側引っ張り力吸収伝達部と、を有し、
前記第1の磁石ユニットの下側及び第2の磁石ユニットの下側の少なくとも一方には屋根上作業者安全確保用連結部が備わり、
屋根上作業者の屋根上における作業中に当該屋根上作業者の着用するハーネスに過大な引っ張り力が発生した際に、当該過大な引っ張り力が前記ハーネスと連結される前記屋根上作業者安全確保用連結部を介して前記一端側引っ張り力吸収伝達部と他端側引っ張り力吸収伝達部に分かれて伝達されることで、前記第1の磁石ユニット又は第2の磁石ユニットのうち、前記屋根上作業者がいる屋根上面と反対側の屋根上面の棟傾斜面に固定状態で載置されて磁石ユニットに備わる棟折れ下がり面押し当て部をこれが当接する棟折れ下がり部に押し付ける押し付け力として作用させるようになったことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、台風や低気圧などの通過に伴う強風、大雪に伴う積雪、その他経時的老朽化等様々な要因によって発生する屋根の破損状況の確認作業や、破損した屋根の部分的又は大掛かりな修繕作業などの様々な種類の作業を伴う屋根上作業中に使用する屋根上作業用の安全補助具であって、作業者に作業上の身体的負担や時間的負担をかけずに効率良くかつ迅速に屋根の上に設置可能な棟固定式屋根上作業用安全補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を斜め上方から示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した棟固定式屋根上作業用安全補助具を棟に固定した状態を斜め上方から示す斜視図である。
【
図3】
図2に示した斜視図をより実際の取り付け状態に近づけて屋根の斜め上方から示す斜視図である。
【
図5】
図2及び
図3とは異なり、棟の延在方向に沿ってその斜め上方から示す斜視図である。
【
図6】本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を用いて屋根上作業者が屋根上作業を行う状態を示す斜視図であり、発明の理解の容易化を図るために屋根の水上側と水下側の間の長さを実際よりも短くして示す説明図である。
【
図7】本発明に係る屋根上作業用安全補助具の棟への取り付け方法を説明する図であり、取付け直前の状態を示す端面図(
図7(a))及び棟に取り付けた状態を示す端面図(
図7(b))である。
【
図8】本発明の作用を示す説明図であり、屋根上作業用安全補助具の一方に備えた第1の屋根上作業者安全確保用連結部に屋根上作業者の屋根上面での転倒時や軒先からのあわやの転落直前に生じる過大な引っ張り力が作用したときに、この過大な引っ張り力を吸収して屋根上作業者の安全を確保する説明図(
図8(a))及び屋根上作業用安全補助具の他方に備えた第2の屋根上作業者安全確保用連結部に屋根上作業者の屋根上面での転倒時や軒先からのあわやの転落直前に生じる過大な引っ張り力が作用したときに、この過大な引っ張り力を吸収して屋根上作業者の安全を確保する説明図(
図8(b))である。
【
図9】本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を用いて屋根上作業を実際に行う工程を時系列的に示す図であって、一方の作業者がはしごを昇り始める状態を示すと共に、他方の作業者がはしごを昇る準備を行っている状態を示す説明図である。
【
図10】
図9に示した屋根上作業に続く状態を示す図であって、一方の屋根上作業者は本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を屋根の棟に取り付ける準備を始め、他方の屋根上作業者は棟に向かって屋根を登り歩いている状態を示す説明図である。
【
図11】
図10に続く状態を示す図であって、一方の屋根上作業者は作業者の着用する安全ハーネスと屋根上作業用安全補助具を屋根上作業者安全確保用連結部で結合した状態で屋根の棟の近くで作業し、他方の屋根上作業者は本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を屋根の棟に取り付ける準備を始めている状態を示す説明図である。
【
図12】
図11に続く状態を示す図であって、屋根の棟に所定の間隔を隔てて取り付けた2つの本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具のそれぞれに各屋根上作業者が着用する安全ハーネスと屋根上作業用安全補助具を屋根上作業者安全確保用連結部で結合した状態で、屋根の棟の近くで各自屋根上作業を行っている状態を示す説明図である。
【
図13】
図12に示した屋根上作業に続く状態を示す図であって、屋根の棟に所定の間隔を隔てて取り付けた2つの本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を主綱に相当するしっかりとした連結ロープで互いに繋いで安全性を更に高めた状態で、2人の作業者が屋根の棟の近くで屋根上作業を行っている状態を示す説明図である。
【
図14】
図13に示した屋根上作業に続く状態を示す図であって、
図13のように屋根の棟に所定の間隔を隔てて取り付けた2つの本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を主綱に相当するしっかりとした連結ロープで互いに繋いで屋根上作業の安全性を更に高めた状態で、一方の作業者が一方の棟固定式屋根上作業用安全補助具の安全ブロックと作業者自身が着用する安全ハーネスとを繋いだまま軒先まで下がっていき、軒先の状態を調べて必要に応じて修理作業を行うと共に、他方の屋根上作業者は他方の棟固定式屋根上作業用安全補助具の近くで待機して一方の屋根上作業者の屋根からの落下の危険性が高まる軒先付近の屋根上作業を安全上念のために見守っている状態を示す説明図である。
【
図15】
図9乃至
図14に示した屋根上と異なり、屋根を上方から見て中心部から四隅に向かってそれぞれ下りながら延在するいわゆる下り棟の形態をなす方型の屋根の4つの下り棟にそれぞれに本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を取り付けると共に、隣接する棟固定式屋根上作業用安全補助具同士を主綱に相当するしっかりとした連結ロープで互いに繋いで安全性を更に高めた状態で、2人の作業者が屋根の棟の近くで屋根上作業を行っている状態を示す説明図(
図15(a))、及び
図15(a)に示す方型の屋根の変形例であって、屋根全体が大きく屋根の中心部において長手方向に沿って水平棟が延在しているいわゆる寄せ棟の形態をなす大きな屋根において、4つの下り棟にそれぞれに本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を1つずつ取り付けると共に、水平棟に所定間隔隔てて2つの本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を取り付け、それぞれの隣接する棟固定式屋根上作業用安全補助具同士を主綱に相当するしっかりとした連結ロープで互いに繋いで安全性を更に高めた状態で、4人の作業者が屋根の棟の近くで屋根上作業を行っている状態を示す説明図(
図15(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具(以下適宜「屋根上作業用安全補助具」又は単に「安全補助具」とする)について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を斜め上方から示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示した棟固定式屋根上作業用安全補助具を棟に固定した状態を斜め上方から示す斜視図である。また、
図3は、
図2に示した斜視図をより実際の取り付け状態に近づけて屋根の斜め上方から示す斜視図である。また、
図4は、
図3とは異なる角度から示す斜視図である。また、
図5は、
図2及び
図3とは異なり、棟の延在方向に沿ってその斜め上方から示す斜視図である。また、
図6は、本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を用いて屋根上作業者が屋根上作業を行う状態を示す斜視図であり、発明の理解の容易化を図るために屋根の水上側と水下側の間の長さを実際よりも短くして示す説明図である。
【0018】
なお、本発明の範囲は、上述した通り図面に示す形状や各部品の相対的な寸法関係、構成要素の個数、配置の向きに基づく構成に限定されるものではなく、本発明の作用効果を発揮し得る範囲内であればこれに代わる等価的な構成についても本発明の範囲に含まれるものである。
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具10(以下適宜「屋根上作業用安全補助具10」又は単に「安全補助具10」とする)について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具10を斜め上方から示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示した棟固定式屋根上作業用安全補助具10を棟50に固定した状態を斜め上方から示す斜視図である。また、
図3は、
図2に示した斜視図をより実際の取付け状態に近づけて屋根の斜め上方から示す斜視図である。また、
図4は、
図3とは異なる角度から示す斜視図である。また、
図5は、
図2及び
図3とは異なり、棟50の延在方向に沿ってその斜め上方から示す斜視図である。また、
図6は、本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具10を用いて屋根上作業者RWが屋根上作業を行う状態を示す斜視図であり、発明の理解の容易化を図るために屋根の水上側と水下側の間の長さを実際よりも短くして示す説明図である。
【0020】
本発明の一実施形態に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具10は、屋根上作業者RWの屋根上における作業中に屋根上作業者RWの着用する安全ハーネス91に過大な引っ張り力が発生した際に屋根上作業者RWの安全を確保するための屋根上作業用安全補助具である。
【0021】
そして、この屋根上作業用安全補助具10は、屋根の棟50に取り付けた状態で見て、屋根の棟50の頂部55に沿ってこの屋根の長手方向に亘って位置する支持延在部100と、支持延在部100の両端にそれぞれ備わった一端側結合固定部210及び他端側結合固定部220と、一端側結合固定部210に回動可能に取り付けられた第1の磁石ユニット310と、他端側結合固定部220に回動可能に取り付けられた第2の磁石ユニット320と、一端が第1の磁石ユニット310の一端側の下側端部に取り付けられ、他端が第2の磁石ユニット320の一端側の下側端部に取り付けられた一端側引っ張り力吸収伝達部410(400)と、一端が第1の磁石ユニット310の他端側の下側端部に取り付けられ、他端が第2の磁石ユニット320の他端側の下側端部に取り付けられた他端側引っ張り力吸収伝達部420(400)と、を有している。
【0022】
支持延在部100は、本実施形態の場合、ある程度の厚さを有し十分な強度と耐久性を備えた材質でできた細長の板材でできており、棟50への取り付け状態で見て両端が下方に折れ曲がってこの折り曲げ部110,120のそれぞれに一端側結合固定部210と他端側結合固定部220がボルトやナットなどの締結具で固定されている。
【0023】
一端側結合固定部210は、本実施形態の場合、ある程度の厚さを有し十分な強度と耐久性を備えた材質でできた矩形状の板材でできており、上部が上述したように支持延在部100の一端側折り曲げ部110に固定され、下部には一端側引っ張り力吸収伝達部410がボルトとナットなどの締結具で固定されている。
【0024】
また、他端側結合固定部220は、本実施形態の場合、ある程度の厚さを有し十分な強度と耐久性を備えた材質でできた矩形状の板材でできており、上部が上述したように支持延在部100の他端側折り曲げ部120に固定され、下部には他端側引っ張り力吸収伝達部420がボルトとナットなどの締結具で固定されている。
【0025】
また、第1の磁石ユニット310は、ある程度の厚さを有し十分な強度と耐久性を備えた材質でできた細長の板材やL字材からなる枠体(図示せず)と、枠体にはめられ磁性材である鋼鉄できた磁石固定用板材(図示せず)を有している。そして、鋼鉄でできた磁石固定用板材の上には第1の磁石510が固定状態で配置されている。
【0026】
そして、第1の磁石ユニット310は、屋根の棟50の棟傾斜面のうち棟50の頂部55を挟んで一方の棟傾斜面51-1に全体的に当接した状態で載置できるように両端上側が一端側結合固定部210及び他端側結合固定部220に回動可能に取り付けられている。
【0027】
また、第1の磁石ユニット310の磁石固定板材に備わった第1の磁石510は、これが載置された棟の一方の棟傾斜面51-1に密着固定させるのに十分な磁気引っ張り力を生じさせる役目を果たしている。なお、
図1及び
図2においては、複数の棒磁石511-1,511-2,…,511-n,512-1,512-2,…,512-nを水上側と水下側の2列に亘って並べて配置した状態で示している。その一方、
図3以降については詳細な配置状態を省略して保護部材で全体的に覆われた1つの第1の磁石ユニット310として示している。
【0028】
また、第1の棟折れ下がり面押し当て部610は、ある程度の厚さを有し十分な強度と耐久性を備えた材質でできたL字状細長押し付け用板材611を有し、その両端であって屋根の上面と対向する部分には取り付け位置調整用の長孔612が備わって、第1の磁石ユニット310の両端に備わる磁石ユニット保持固定用L字状長板315の水下側端部の長孔とちょうど重なり合うようになっている。
【0029】
そして、第1の棟折れ下がり面押し当て部610は、第1の磁石ユニット310の下側縁部に沿うように備わり、棟50の第1の棟斜面51の水下側縁部から一定の幅で下方に折れ曲がった一方の棟折り下がり部52-1に押し付けた状態で固定できるように第1の磁石ユニット310との取り付け位置を調整可能となっている。
【0030】
また、第1の磁石ユニット310の下側には第1の屋根上作業者安全確保用連結部710が備わっている。
【0031】
第1の屋根上作業者安全確保用連結部710は、第1の磁石ユニット310の棟50の延在方向に沿った一端側に位置するL字型の板材の水下側と他端側に位置するL字型の板材の水下側に両端部を連結させた鎖711と、鎖711の中央部に接続された安全ハーネス結合用の延長バンド712から構成されている。そして、延長バンド712の他端側には屋根上作業者RWが着用する安全ハーネス結合部にしっかりと連結するようになっている。
【0032】
また、第2の磁石ユニット320は、ある程度の厚さを有し十分な強度と耐久性を備えた材質でできた細長の板材やL字材からなる枠体(図示せず)と、枠体にはめられ磁性材である鋼鉄できた磁石固定用板材(図示せず)を有している。そして、鋼鉄でできた磁石固定用板材の上には第2の磁石520が固定状態で配置されている。
【0033】
そして、第2の磁石ユニット320は、屋根の棟50の棟傾斜面のうち棟50の頂部55を挟んで他方の棟傾斜面51-2に全体的に当接した状態で載置できるように両端上側が一端側結合固定部210及び他端側結合固定部220に回動可能に取り付けられている。
【0034】
また、第2の磁石ユニット320にはこれが載置された棟50の他方の棟傾斜面51-2に密着固定させるための磁気引っ張り力を作用させる第2の磁石520が配置されている。なお、
図1及び
図2においては、複数の棒磁石(上側の棒磁石522-1,522-2,…,522-nのみ図示)を水上側と水下側の2列に亘って並べて配置した状態で示している。その一方、
図3以降については詳細な配置状態を省略して保護部材で全体的に覆われた1つの磁石ユニット520として示している。
【0035】
また、第2の棟折れ下がり面押し当て部620は、ある程度の厚さを有し十分な強度と耐久性を備えた材質でできたL字状細長押し付け用板材からなり、その両端であって屋根の上面と対向する部分には取り付け位置調整用の長孔が備わって、第2の磁石ユニットの両端に備わる磁石ユニット保持固定用L字状長板325の水下側端部の長孔とちょうど重なり合うようになっている。
【0036】
そして、第2の棟折れ下がり面押し当て部620は、第2の磁石ユニット320の下側縁部に沿うように備わり、棟50の他方の棟傾斜面51-2に水下側縁部から一定の幅で下方に折れ曲がった第2の棟折り下がり部62に押し付けた状態で固定できるように、第2の磁石ユニット320との取り付け位置を調整可能となっている。
【0037】
また、第2の磁石ユニット320の下側には第2の屋根上作業者安全確保用連結部720が備わっている。
【0038】
第2の屋根上作業者安全確保用連結部720は、第2の磁石ユニット320の棟50の延在方向に沿った一端側に位置するL字型の板材の水下側と他端側に位置するL字型の板材の水下側に両端部を連結させた鎖721と、鎖721の中央部に接続された安全ハーネス結合用の延長バンド722から構成されている。そして、延長バンド722の他端側には屋根上作業者RWが着用する安全ハーネス91の結合部にしっかりと連結するようになっている。
【0039】
一端側引っ張り力吸収伝達部410は、ある程度の厚さ及び所定の幅を有し十分な強度と耐久性を備えた材質でできた半円弧状(
図1及び
図2参照)又は異形三日月状(
図3乃至
図5参照)の形状を有している。そして、その延在方向中央部は、上述したように一端側結合固定部210の下部にボルト及びナットの締結でしっかりと固定されている。
【0040】
一端側引っ張り力吸収伝達部410は、一方の棟傾斜面51-1及び他方の棟傾斜面51-2を跨ぐように延在し、その延在方向中央部415は一端側結合固定部210に固定され、その両端部の一端411が第1の磁石ユニット310の一端側の下側端部に互いの相対位置を調整して固定するように取り付けられ、その両端部の他端412が第2の磁石ユニット420の一端側の下側端部に互いの相対位置を調整して固定するように取り付けられている。
【0041】
他端側引っ張り力吸収伝達部420は、ある程度の厚さ及び所定の幅を有し十分な強度と耐久性を備えた材質でできた半円弧状(
図1及び
図2参照)又は異形三日月状(
図3乃至
図5)の形状を有している。そして、その延在方向中央部425は、上述したように他端側結合固定部220の下部にボルト及びナットの締結でしっかりと固定されている。
【0042】
他端側引っ張り力吸収伝達部420は、一方の棟傾斜面51-1及び他方の棟傾斜面51-2を跨ぐように延在し、その延在方向中央部425は、他端側結合固定部に固定され、その両端部の一端が第1の磁石ユニット310の他端側の下側端部に取り付けられ、その両端部の他端が第2の磁石ユニット320の他端側の下側端部に互いの相対位置を調整可能に固定できるように取り付けられている。
【0043】
棟固定式屋根上作業用安全補助具10は、以上のような構成を有することによって、以下のような作用を生じる。具体的には、屋根上作業者RWの屋根上における作業中にこの屋根上作業者RWの着用する安全ハーネス91に過大な引っ張り力が発生した際に、この過大な引っ張り力が安全ハーネス91と連結される延長バンド712,722及び鎖711,721からなる屋根上作業者安全確保用連結部710,720を介して一端側引っ張り力吸収伝達部410と他端側引っ張り力吸収伝達部420に分かれて伝達されるようになる。
【0044】
これによって、第1の磁石ユニット310又は第2の磁石ユニット320のうち、屋根上作業者RWが作業している屋根上面と反対側の屋根上面の棟傾斜面51,52に固定状態で載置されて磁石ユニット310,320に備わる棟折れ下がり面押し当て部610,620をこれが当接する棟折り下がり部61,62に押し付ける押し付け力として作用させる。
【0045】
即ち、第1の磁石ユニット310が載置される第1の棟傾斜面51側の屋根上面で作業する屋根上作業者RWが何らかの原因でバランスを崩してその場でいきなり転倒しても、体重の約2.5倍といわれる転倒の際に瞬間的に発生する衝撃的な引っ張り力を安全ハーネス91を介して第1の屋根上作業者安全確保用連結部710に伝えて屋根上作業用安全補助具10によって全て吸収して屋根上作業者RWのその後の屋根上面での滑落や屋根の軒先から地面への転落を防止することができる。
【0046】
同じく、第2の磁石ユニット320が載置される他方の棟傾斜面51-2側の屋根上面で作業する屋根上作業者RWが何らかの原因でバランスを崩してその場でいきなり転倒しても、体重の約2.5倍といわれる転倒の際に瞬間的に発生する衝撃的な引っ張り力を安全ハーネス91を介して第1の屋根上作業者安全確保用連結部720に伝えて屋根上作業用安全補助具10によって全て吸収して屋根上作業者RWのその後の屋根上面での滑落や屋根の軒先から地面への転落を防止することができる。
【0047】
図7は、本発明に係る屋根上作業用安全補助具の棟への取り付け方法を説明する図である。より具体的には、
図7(a)は、屋根上作業用安全補助具を棟に取り付ける直前の状態を示す端面図である。また、
図7(b)は、屋根上作業用安全補助具を棟に取り付けた状態を示す端面図である。
【0048】
なお、
図7(a)及び
図7(b)においては、後述する実施例で説明する実際の評価試験に用いた棟固定式屋根上作業用安全補助具を示す
図3乃至
図5における蝶ネジ(ボルト)やナットなどの締結部については、説明の都合上図示を省略する。
【0049】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、一端側結合固定部210及び他端側結合固定部220には、屋根上作業用安全補助具10を棟50に設置した状態に見て、それらの幅方向略中央部において長手方向に沿って、長孔215,225が形成されている。そして、一端側引っ張り力吸収伝達部410及び他端側引っ張り力吸収伝達部420のそれぞれに備わった連結用丸孔415及び425がそれぞれこれらの長孔215,225に合わせて備わり、長孔215,225の長手方向適当な位置に形成された貫通孔に蝶ネジや六角ボルトとナットで締結するようになっている。
【0050】
また、一端側結合固定部210及び他端側結合固定部220の下端縁近傍には、その幅方向左右の対称位置に第1の磁石ユニット保持固定用L字状長板315の起立部316の上側端部近傍及び第2の磁石ユニット保持固定用L字状長板325の起立部326の上側端部近傍をそれぞれ回転中心として回動可能に固定する長板固定部216,226が備わっている。そして、第1の磁石ユニット保持固定用L字状長板315の起立部316の上端部近傍を回転中心として第1の磁石ユニット310を回動可能に固定できるようにすると共に、第2の磁石ユニット保持固定用L字状長板325の起立部326の上端部近傍を回転中心として第2の磁石ユニット320を回動可能に固定できるようにしている。
【0051】
また、第1の磁石ユニット保持固定用L字状長板315の起立部316の下方側及び第2の磁石ユニット保持固定用L字状長板325の起立部326の下方側には、長板の延在方向に沿って長孔317,327がそれぞれ形成されている。また、一端側引っ張り力吸収伝達部410及び他端側引っ張り力吸収伝達部420のそれぞれの両端部近傍にも、この長孔317,327と重なり合って貫通孔を形成する位置に丸孔417,427が形成されている。
【0052】
そして、一端側結合固定部210の長孔215と一端側引っ張り力吸収伝達部410の下端側の丸孔415の相対位置を調整すると共に、第1の磁石ユニット保持固定用L字状長板315の下端側の長孔316と一端側引っ張り力吸収伝達部410の下端側の丸孔415との相対的位置関係をそれぞれ調整した上で、蝶ネジやボルトとナットで締結することによって、第1の磁石ユニット310と第2の磁石ユニット320のそれぞれが一方の棟傾斜面51-1及び他方の棟傾斜面51-2にそれぞれ密着させるようになっている。
【0053】
なお、
図8(b)には示さないが、第1の磁石ユニット310と第2の磁石ユニット320を一方の棟傾斜面51-1と他方の棟傾斜面51-2に密着させるにあたって、好ましくは保護シート900等を介してそれぞれに載置させるのが良い。
【0054】
また、第1の磁石ユニット保持固定用長板315の棟傾斜面対向部318の水下側近傍及び第2の磁石ユニット保持固定用長板325の棟傾斜面対向部328の水下側近傍にはこの長板の長手方向に沿って長孔319,329が形成されている。
【0055】
一方、棟折れ下がり面に押し当てられる第1の棟折れ下がり面押し当て部610及び第2の棟折れ下がり面押し当て部620をそれぞれ形成するL字状長板の上面側の一端側近傍と他端側近傍には丸孔615,625が形成されている。これらの長孔615,625は、それぞれが第1の磁石ユニット保持固定用L字状長板315に形成された長孔318及び第2の磁石ユニット保持固定用L字状長板325に形成された長孔328に合致してこれら長孔315,326の長手方向適当な位置において貫通孔をなすようになっている。
【0056】
次いで、この状態で第1の棟折れ下がり面押し当て部610と第2の棟折れ下がり面押し当て部620に備わった丸孔615,625を利用して第1の磁石ユニット保持固定用長板315及び第2の磁石ユニット保持固定用長板325の近傍に備わった長孔317,327と第1の棟折れ下がり面押し当て部610と第2の棟折れ下がり面押し当て部620の丸孔612,622との相対位置関係を調整する。これによって、第1の磁石ユニット310と第2の磁石ユニット320を一方の棟傾斜面51-1と他方の棟傾斜面51に密着させる。
【0057】
そして、この丸孔615,625を長手方向に沿って水上側に沿って可能な限り移動させて蝶ネジやボルトとナットで締結して固定することにより、第1の棟折れ下がり面押し当て部610の押し付け力付与折れ曲がり部611の下端若しくは全体が長手方向全体に亘って一方の棟折下がり面52に押し付けられると共に、第2の棟折れ下がり面押し当て部620の押し付け力付与折れ曲がり部621の下端若しくは全体が一方の棟折下がり面51-1に押し付けられる。
【0058】
これによって、一方の棟折れ下がり面52-1と他方の棟折れ下がり面52-2に第1の棟折れ下がり面押し当て部610と第2の棟折れ下がり面押し当て部620をそれぞれ強く押し付けることで、屋根上作業用安全補助具10に棟50をしっかりと挟み込んで固定状態を維持する。
【0059】
なお、一方の棟折れ下がり面52-1と第1の棟折れ下がり面押し当て部610の押し付け力とが、互いに平行ではなく押し付け力付与折れ曲がり部611が下方に向かうに従って一方の棟折下がり面に近づく位置関係になった場合、上述した押し付け作業を行うことによって、第1の棟折れ下がり面押し当て部610の押し付け力付与折れ曲がり部611の下端が一方の棟折下がり面52-1に線接触状態で押し付けられるようになる。
【0060】
これによって、押し付け力付与折れ曲がり部621が一方の棟折れ下がり面52-1に向かって撓むように変形しながら押し付けられるため、第1の棟折下がり面押し当て部610を一方の棟折下がり面51-1によりしっかりと押し付けることが可能になる。
【0061】
同じく、他方の棟折れ下がり面52-2と第2の棟折れ下がり面押し当て部620の押し付け力とが互いに平行ではなく、押し付け力付与折れ曲がり部621が下方に向かうに従って他方の棟折下がり面52-2に近づく位置関係になる場合がある。この場合、上述した押し付け作業を行うことによって、第2の棟折れ下がり面押し当て部620の押し付け力付与折れ曲がり部621の下端縁部が他方の棟折下がり面52-2に線接触状態で押し付けられることになる。
【0062】
これによって、押し付け力付与折れ曲がり部621が他方の棟折れ下がり面52-2に向かって撓むように変形しながら押し付けられるため、第2の棟折れ下がり面押し当て部620を他方の棟折れ下がり面52-2によりしっかりと押し付けることが可能になる。
【0063】
なお、第1の棟折れ下がり面押し当て部610の押し付け力付与折れ曲がり部611が一方の棟折れ下がり面52-1と平行な状態で対向する際には、押し付け力付与折れ曲がり部611全体を一方の棟折れ下がり面52-1に面接触するように押し付ける。この場合、後述する過大な引っ張り力F2が作用した際には押し付け力P1が押し付け力付与折れ曲がり部611を介して一方の棟折れ下がり面52-1全体に面接触状態で作用する。
【0064】
一方、第2の棟折れ下がり面押し当て部620の押し付け力付与折れ曲がり部622が他方の棟折れ下がり面52-2と平行な状態で対向する際には、押し付け力付与折れ曲がり部622全体を他方の棟折れ下がり面52-2に面接触するように押し付ける。この場合、後述する過大な引っ張り力F1が作用した際には押し付け力P2が押し付け力付与折れ曲がり部621を介して一方の棟折れ下がり面52-1全体に面接触状態で作用する。
【0065】
以上に加えて、屋根の棟50や屋根の上面が屋根上作業により汚れたり破損したりしないようにするには、棟50に屋根上作業用安全補助具10を取り付けるに際して、これら両者の間に保護シート900を敷いてこの保護シート900を介して両者を固定することが好ましい。
【0066】
一方、屋根上作業者による必要な屋根上作業を終えて、屋根上作業用安全補助具10を棟50から取り外す際には、上述した取り付け手順と逆の手順で取り外すことによって簡単かつ迅速に取り外し作業を終えることができる。
【0067】
図8は、本発明の作用を示す説明図である。より具体的には、
図8(a)は、屋根上作業用安全補助具の一方に備えた第1の屋根上作業者安全確保用連結部に屋根上作業者の屋根上面での転倒時や軒先からのあわやの転落直前に生じる過大な引っ張り力が作用した際に、この過大な引っ張り力を吸収して屋根上作業者の安全を確保する説明図である。また、
図8(b)は、屋根上作業用安全補助具の他方に備えた第2の屋根上作業者安全確保用連結部に屋根上作業者の屋根上面での転倒時や軒先からのあわやの転落直前に生じる過大な引っ張り力が作用した際に、この過大な引っ張り力を吸収して屋根上作業者の安全を確保する説明図である。
【0068】
なお、
図8(a)及び
図7(b)においては、
図7と同様に後述する実施例で説明する実際の評価試験に用いた棟固定式屋根上作業用安全補助具を示す
図3乃至
図5における蝶ネジ(ボルト)やナットなどの締結部については、説明の都合上図示を省略する。
【0069】
この作用について図面に基づいて説明する。
図8(a)に示すように、図中右側の屋根上で作業する屋根上作業者が何らかの原因やきっかけで転倒しそうになったり実際に転倒してしまったりした際は際に安全ハーネス結合用の鎖711及び延長バンド712に過大な引っ張り力F1が発生する。この過大な引っ張り力F1は、第1の屋根上作業者安全確保用連結部710を介して屋根上作業用安全補助具10の長手方向両側に備わる一端側引っ張り力吸収伝達部410及び他端側引っ張り力吸収伝達部420に伝達する。
【0070】
ここで、一端側引っ張り力吸収伝達部410及び他端側引っ張り力吸収伝達部420が棟50の棟傾斜面51-1,51-2に対して起立した状態となった十分に強度を有する厚板材から構成されているため、過大な引っ張り力F1は、一端側引っ張り力吸収伝達部410及び他端側引っ張り力吸収伝達部420の全面に約半分ずつ分けて伝達されると共にF1よりもかなり小さい力である引っ張り力f1に分散される。
【0071】
なお、図中では、一端側引っ張り力吸収伝達部410側の力の伝達を描くと共に、この分散された引っ張り力f1を3本の矢印として代表的に表記する。このように過大な引っ張り力F1が引っ張り力f1として一端側引っ張り力吸収伝達部410及び他端側引っ張り力吸収伝達部420の全面に拡散吸収されながら屋根上作業用安全補助具10の反対側の押し付け力付与折れ曲がり部621に伝達する。
【0072】
このように一端側引っ張り力吸収伝達部410及び他端側引っ張り力吸収伝達部420が棟50の棟傾斜面51,52に対して起立していることと、かなりの面積を有する厚板材からなることで、過大な引っ張り力F1を一端側引っ張り力吸収伝達部410及び他端側引っ張り力吸収伝達部420の全面に拡散吸収することができる。
【0073】
これによって、屋根上作業者の突然の転倒時などに瞬間的に発生する過大な引っ張り力F1が突然作用しても、一端側引っ張り力吸収伝達部410及び他端側引っ張り力吸収伝達部420が変形したり破損したりすることがないという構造上の特徴を有している。
【0074】
そして、この引っ張り力は、
図8(a)から分かるように押し付け力付与折れ曲がり部621の下端縁全体に伝達され、
他方の棟折れ下がり面52-2に押し付け力Pとして作用する。この際、押し付け力付与折れ曲がり部621の図中上下方向の間でこれを構成する板材が若干撓むことで、当初の過大な引っ張り力F1を一部吸収してこのF1が等価的な大きさで伝達することなく一部吸収されながら
他方の棟折れ下がり面52-2に押し付け力Pとして作用する。
【0075】
他方の棟折れ下がり面52-2は、屋根と一体化して屋根の一部をなしているので、押し付け力Pが作用しても当然のことながらその位置が変わることはない。その結果、屋根上作業用安全補助具10は、他方の押し付け力付与折れ曲がり部621と一方の押し付け力付与折れ曲がり部611によって、屋根の棟50をしっかりと挟みながら棟50への固定状態を維持する。これに加えて、第1の磁石ユニット310及び第2の磁石ユニット320の磁気引っ張り力Fmで一方の棟傾斜面51-1と他方の棟傾斜面51-2にしっかりと密着している。
【0076】
以上の棟50の棟折れ下がり面52-1,52-2に対する押し付け力、及び棟50の棟折れ下がり面52-1,52-2に対する挟み力、並びに棟傾斜面51-1,51-2に対する磁気引っ張り力Fmによる第1の磁石ユニット310及び第2の磁石ユニット320の密着によって、後述する実施例で示す非常に大きな引っ張り力F-1が作用しても屋根上作業用安全補助具10は棟50と一体化して棟50に対してずれたり外れたりすることはない。その結果、屋根上作業者の屋根上面での滑落や軒先からの転落を防ぐことができる。
【0077】
図8(b)は、屋根上作業用安全補助具の他方に備えた第2の屋根上作業者安全確保用連結部に屋根上作業者の屋根上面での転倒時や軒先からのあわやの転落直前に生じる過大な引っ張り力が作用した際に、この過大な引っ張り力を吸収して屋根上作業者の安全を確保する説明図である。
【0078】
過大な引っ張り力をどのように吸収して屋根上作業者の安全を図るかについては、
図8(a)と同様でありその力の作用の仕方が図面中左右対称になるだけなので、過大な引っ張り力を
図8(a)に示すF-1の代わりにF-2とし、分散された引っ張り力を
図8(a)に示すf-1の代わりにf-2とし、棟折り下がり部への押し付け力を
図8(a)に示すP-1の代わりにP-2として、力の伝達及び吸収の仕方に関する詳細な説明を省略する。
【実施例】
【0079】
本発明にかかる屋根上作業用安全補助具の評価試験を行ったので以下に説明する。この評価試験においては、説明の容易化のために屋根の大きさを小さくした
図6に示すような状態で屋根上作業者がいきなり転倒又は軒先から地面に転落した場合を想定して特別な引っ張り機械を用い屋根上作業用安全ハーネスに瞬間的かつ衝撃的な引っ張り力を作用させた。
【0080】
その結果、本発明にかかる屋根上作業用安全補助具はこの引っ張り強度試験を行ったところ、5300N(ニュートン)まで引っ張り力を加えても屋根の棟から外れずに固定されている状態を維持していることが分かった。
【0081】
通常このような屋根上作業者の屋根上面上での転倒や屋根の軒先からの転落時には、その作業者の体重の約2.5倍の衝撃的な引っ張り力が瞬間的に発生する。そのため、上述の引っ張り試験強度結果による5300N(ニュートン)まで問題なく本発明にかかる屋根上作業用安全補助具が棟に備わっているか確認したことに基づいて200kgまでの重さ(体重)に耐えることが確認できた。これによって、一般的な体重の屋根上作業者はもちろんのこと、比較的大柄で80キロ台の体重を有する屋根上作業者が屋根上作業中にいきなり転倒してもその際に発生する衝撃的な引っ張り力に問題なく適用可能であることをこの実施例に記載した評価試験結果に基づいて立証できた。
【0082】
続いて、本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具10を屋根の棟50に取り付けて屋根上作業を行う具体的手順について説明する。なお、この説明においては上述した棟固定式屋根上作業用安全補助具10を屋根の棟50に取り付けるための簡略化した説明を、具体的図面を用いて本発明の優れた作用効果を十分に理解できるように行うための詳細な説明である。
【0083】
しかしながら、本発明の作用効果を発揮し得る範囲内であれば、必ずしも以下に説明するような屋根上作業手順及び作業内容に限定されるものでないことは言うまでもない。また、本発明に係る実施の形態のあくまで一般論的な一例であるため、各図面における具体的な符合については、必要最小限のものを記載してそれ以外の符合については省略するものとする。
【0084】
図9は、本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を用いて屋根上作業を実際に行う工程を時系列的に示す図であって、一方の作業者がはしご90を昇り始める状態を示すと共に、他方の作業者がはしご90を昇る準備を行っている状態を示す説明図である。
【0085】
また、
図10は、
図9に示した屋根上作業に続く状態を示す図であって、一方の屋根上作業者は本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を屋根の棟に取り付ける準備を始め、他方の屋根上作業者は棟に向かって屋根を登り歩いている状態を示す説明図である。
【0086】
また、
図11は、
図10に続く状態を示す図であって、一方の屋根上作業者RW1は作業者の着用する安全ハーネスと屋根上作業用安全補助具を屋根上作業者安全確保用連結部で結合した状態で屋根の棟の近くで作業し、他方の屋根上作業者RW2は本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を屋根の棟に取り付ける準備を始めている状態を示す説明図である。
【0087】
以下に、
図9乃至
図11の作業過程を図面に基づいて説明する。最初に、屋根上作業者は上述したように作業者は、棟固定式屋根上作業用安全補助具(以下適宜「安全補助具」とする)例えば肩にしっかりと掛けたり、収容袋WBなどに入れたりしながら屋根の上に昇る。
【0088】
次いで、安全補助具を身に付けながらはしご90を昇って軒先の上に上がる。なお、はしご90を軒先に立てかけるに当たって、軒先とはしご90を所定の結合具でしっかりと結合して、屋根上作業者がはしご90を昇る際にはしご90が倒れないようにすると共に、はしご90の上端部と屋根上作業者の身体とを安全ロープで予め繋いでおく。
【0089】
そして、屋根上作業者は、そのまま安全補助具を取り付ける棟の所定箇所まで登り歩く。そして、安全補助具を固定する所定の棟の位置まで達したら、安全補助具を棟の所定位置に取り付ける作業を行う。
【0090】
この際、安全補助具は上述した構成を有しているので、棟頂上側延在両基台結合部を回動中心として第1の基台部及び第2の基台部を棟の両側の傾斜面に合わせた角度をなすように開き角度の調整を行ないながら、棟に載せて安全補助具を棟に固定する。この固定にあたっては、第1の基台部と第2の基台部を棟頂上側延在両基台結合部周りに略ハの字状に開いた状態で軒先をその幅方向において跨ぐように安全補助具を載せる。
【0091】
安全補助具は、上述したように第1の磁石ユニットと第2の磁石ユニットのそれぞれを有しているので、金属でできた棟の両側の傾斜面に第1の磁石ユニットと第2の磁石ユニットが磁気引っ張り力によってしっかりと密着して安全補助具を棟に固定することができる。
【0092】
なお、上述の実施形態における安全補助具は、第1の磁石ユニット及び第2の磁石ユニットの下側部にすべり止めを兼ねた棟・屋根上面保護とこれを載せる棟やその近傍であって作業用具や安全ブロックをおいておく屋根上面にこの棟及び屋根上面と安全補助具とで挟まれるように作業時保護シートを敷いておくのが良い。これによって、棟の傾斜面やこの付近の屋根の上面を作業用具、安全ブロック等によって安全補助具を棟に固定する際に傷つけたり破損させたりするのを防止できる。
【0093】
次いで、
図7(a)及び
図7(b)の図面と共に上述した詳細な手順で屋根上作業用安全補助具10の棟50への取り付け作業を行う。この取付け作業によって、棟固定式屋根上作業用安全補助具は、棟の両方の幅方向に形成された一方の棟折り下がり部と第2の棟折り下がり部を介して屋根の棟を幅方向においてしっかりと挟み込むようになる。これによって、上述した第1の磁石ユニット及び第2の磁石ユニットがそれぞれ磁石によって棟の第1の傾斜面及び第2の傾斜面にしっかりと密着していることと協働して、棟固定式屋根上作業用安全補助具の棟への固定作業を完了する。
【0094】
次いで、棟固定式屋根上作業用安全補助具に備えた安全ブロックから安全紐を繰り出して作業者の着用するハーネス型安全帯や胴ベルト型安全帯に結合する。以上のようにして、作業者は、屋根の棟の部分において棟固定式屋根上作業用安全補助具を棟の所定位置に身体的負担をかけずに迅速にかつ効率的に取り付けることができる。そして、棟の近辺や屋根の水流方向真ん中あたりまでの屋根の局所的な破損の補修等、比較的短時間で終わらせることができる作業を行う。
【0095】
以上のように棟固定式屋根上作業用安全補助具を屋根の棟に取り付けた後に、屋根上作業者は、安全ハーネス結合用の延長バンド712及び鎖711等からなる第1の屋根上作業者安全確保用連結部710や安全ハーネス結合用の延長バンド722及び鎖721等からなる第2の屋根上作業者安全確保用連結部720に安全ハーネスを繋げた後、屋根上作業を行う。
【0096】
図12は、
図11に続く状態を示す図であって、屋根の棟に所定の間隔を隔てて取り付けた2つの本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具のそれぞれに各屋根上作業者が着用する安全ハーネスを屋根上作業者安全確保用連結部710,720に結合した状態で屋根の棟の近くで各自屋根上作業を行っている状態を示す説明図である。
【0097】
また、
図13は、
図12に示した屋根上作業に続く状態を示す図であって、屋根の棟に所定の間隔を隔てて取り付けた2つの本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を主綱に相当するしっかりとした連結ロープ950で互いに繋いで安全性を更に高めた状態で、2人の作業者が屋根の棟の近くで屋根上作業を行っている状態を示す説明図である。
【0098】
なお、
図12から
図13に至る過程において、一方の屋根上作業者RW1が安全ハーネスと安全ブロックとを安全紐で既に繋いでいるので、一方の屋根上作業者RW1が棟に取り付けた安全補助具の棟頂上側延在両基台結合部に備わる安全作業用具取付け部と、他方の屋根上作業者RW2が安全補助具を棟に取り付けた後に棟頂上側延在両基台結合部に備わる安全作業用具取付け部との間を上述した主綱に相当する十分な太さと引っ張り強度を有する連結ロープ950でしっかりと結合している。
【0099】
図14は、
図13に示した屋根上作業に続く状態を示す図であって、
図13のように屋根の棟に所定の間隔を隔てて取り付けた2つの本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を主綱に相当するしっかりとした連結ロープ950で互いに繋いで屋根上作業の安全性を更に高めた状態となっている。
【0100】
この状態においては、一方の作業者が一方の棟固定式屋根上作業用安全補助具の屋根上作業者安全確保用連結部710,720と屋根上作業者が着用する安全ハーネスとを繋いだまま軒先まで下がっていき、軒先の状態を調べて必要に応じて修理作業を行っている。そして、他方の屋根上作業者RW2は、他方の棟固定式屋根上作業用安全補助具の近くで待機して、一方の屋根上作業者RW1の屋根上からの落下の危険性が高まる軒先付近の屋根上作業を安全上念のために見守っている。
【0101】
これによって、一方の屋根上作業者RW1が軒先で作業中に他方の作業者がこの作業を安全に行われているかどうかを客観的に確認して判断し、もし何か問題があれば一方の作業者に直ぐに伝えることができる。
【0102】
なお、
図14においては他方の作業者も屋根上作業者安全確保用連結部710,720と屋根上作業者が着用する安全ハーネスとを繋いだ状態で棟に腰掛けて休んでいる。このような形態は例えば屋根上作業の当日が酷暑で熱中症になるような環境において他方の屋根上作業者RW2の体調がその日にたまたま勝れず、それでもなんとか屋根上作業を行うために屋根の棟まで登ったが、屋根からの輻射熱で身体が高温に晒され更に体調が悪化してしまい、その場で休憩している状態も兼ね合わせて示している。
【0103】
このような場合において、万が一他方の屋根上作業者RW2の意識が急に朦朧としてきて棟の上に腰掛けていることができなくなり、その付近に倒れ込んでも、本発明に係る安全補助具を安全紐でその場に留まっておくことができ、屋根の棟付近から軒先までの滑落及び屋根の軒先からの転落に至る重大事故を未然に防止することができる。
【0104】
なお、屋根の棟に所定の間隔を隔てて取り付けた2つの本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を主綱に相当するしっかりとした連結ロープ950で互いに繋いでおくことが非常に好ましい形態といえる。これによって、例えば屋根上作業者が当初予定していた棟近傍の屋根の修繕等だけでなく、当初の予定外であって実際に屋根の上に登って軒先やその近くの破損に気が付いた時、軒先付近まで屋根の様子を見に下がって行き、そのままなんらかの理由により軒先から万が一転落してもダメージを最小限に抑えることができる。
【0105】
即ち、屋根上作業者安全確保用連結部710,720と屋根上作業者が着用する安全ハーネスとが安全紐で繋がった状態にあるので、通常軒先の付近の作業において用いられている主綱を棟と軒先との間で張り渡していなくても、屋根から重大な落下事故を回避することができる。
【0106】
この理由は、屋根上作業者が軒先付近で何らかの理由で急に転んだり倒れたりして、安全紐を介して屋根上作業者の体重全体が一気に棟固定式屋根上作業用安全補助具に作用して、この安全補助具がもしも棟から外れたとしても、この過程に至るまでに屋根の棟に安全補助具をしっかりと密着させた安全補助具の磁気引っ張り力に対抗して安全補助具を屋根の棟から無理矢理に引き離すことが必要となる。
【0107】
これによって、屋根上作業者は、軒先からいきなり自然落下することにならず、安全補助具を屋根の棟から無理矢理に引き離す間の時間、落下を遅らせたり、落下した後であっても落下速度を自然落下の際のスピードからかなり押さえ込んだ速度で落下したりできる。
【0108】
そして、屋根上作業者は、その分の時間的余裕を持つことができ、パニック状態のまま危険な体勢で墜落することなく、落下中に自らの姿勢を変えて頭部や背中の脊椎部分、腰椎部分を保護するように手足を使って軒先の下に着地することができる。これによって、自然落下に伴う軒先からその直下への位置エネルギーが身体の中で最も重要な部分である頭部や頸椎、脊椎、腰椎にいきなり全体的に加わることなく、屋根からの重大でかつ深刻な落下事故を防ぐことができる。
【0109】
また、軒先から落下しても、途中でいわゆる宙ぶらりん状態となって全く怪我をせずに済んだり、例えば軒先との軒下との高さの真ん中辺りで一旦宙ぶらりん状態となった後に軒下に着地して身体にさほど影響のない打撲やすり傷程度の怪我で済ましたりすることができる。これは、一旦宙ぶらりん状態となった時に自分の姿勢を安全に着地できる姿勢に変えることができる時間的かつ心理的な余裕ができるからである。
【0110】
図15(a)は、
図9乃至
図14に示した屋根上と異なり、屋根を上方から見て中心部から四隅に向かってそれぞれ下りながら延在するいわゆる下り棟の形態をなす方型の屋根の4つの下り棟にそれぞれに本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を取り付けると共に、隣接する棟固定式屋根上作業用安全補助具同士を主綱に相当するしっかりとした連結ロープ950で互いに繋いで安全性を更に高めた状態で、2人の作業者が屋根の棟の近くで屋根上作業を行っている状態を示す説明図である。
【0111】
また、
図15(b)は、
図15(a)に示す方型の屋根の変形例であって、屋根全体が大きく屋根の中心部において長手方向に沿って水平棟が延在しているいわゆる寄せ棟の形態をなす大きな屋根において、4つの下り棟にそれぞれに本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を1つずつ取り付けると共に、水平棟に所定間隔隔てて2つの本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を取り付け、それぞれの隣接する棟固定式屋根上作業用安全補助具同士を主綱に相当するしっかりとした連結ロープ950で互いに繋いで安全性を更に高めた状態で、4人の作業者が屋根の棟の近くで屋根上作業を行っている状態を示す説明図である。
【0112】
図15(a)及び
図15(b)から分かるように、本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具は、棟が金属製の棟であれば、水平棟の代わりに下り棟にもしっかりと固定して取り付けることが可能である。
【0113】
この場合、屋根が、
図15(a)に示すような方型の屋根の場合、4つの下り棟にそれぞれに本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具を取り付けると共に、隣接する棟固定式屋根上作業用安全補助具同士を主綱に相当するしっかりとした連結ロープ950で互いに繋ぐことで、この4つの安全補助具が互いにしっかりと方型の屋根のそれぞれの棟の部分に固定して取り付けられ、屋根上作業者の安全が屋根上作業を確保することができる。
【0114】
同様に、屋根が、
図15(b)に示すような水平棟と下り棟の組み合わさった屋根の場合、それぞれの棟に取り付けた棟固定式屋根上作業用安全補助具同士を主綱に相当するしっかりとした連結ロープ950で互いに繋ぐことで、この6つの安全補助具が互いにしっかりと屋根のそれぞれの棟の部分に固定して取り付けられ、屋根上作業者の安全が屋根上作業を確保することができる。
【0115】
以上のようにして屋根上作業を終えた後に、上述した棟固定式屋根上作業用安全補助具を屋根の棟に取り付けた手順と逆の手順で片付け作業を行う。
【0116】
なお、本発明は、その各構成要素が上述の実施形態に記載した寸法、形状、材質、個数に限定されるものでなく、その作用効果を発揮しうる範囲内でこれらの寸法、形状、材質、個数を適宜選択可能であることは言うまでもない。
【0117】
具体的には、
図9乃至
図14においては、水平棟に所定間隔隔てて2つの本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具が取り付けられていたが、必ずしもこの個数に限定されるものではなく、建物の屋根の大きさや屋根上作業の内容や程度に応じて1つ又は3つ以上棟固定式屋根上作業用安全補助具を取り付けて良いことは言うまでもない。
【0118】
また、棟が金属の板材でできていれば、屋根自体は一般的なスレート屋根に本発明を適用可能であるが、屋根自体が瓦などのそれ以外の材質でできていても本発明は同様に適応可能である。
【0119】
また、屋根自体が金属屋根の場合は、上述したように屋根上作業者の軒先からの落下に伴って万が一安全補助具が棟から外れても、それ自身の磁力により金属屋根に密着するので、軒先作業者の落下速度を極めて低く抑えることができ、軒先からの落下に伴うダメージを極めて小さく抑えることができる。
【0120】
また、特に棟が水平棟の場合、棟自体が金属でできていなくても棟固定式屋根上作業用安全補助具が棟を跨ぐように乗っかった状態で置かれるため、それ自身の重さや跨ぐような形態でおかれたことに起因して、本発明の作用をそれなりに発揮することが可能である。
【0121】
また、棟固定式屋根上作業用安全補助具に備わる一方の側の磁石ユニットと他方の側の磁石ユニットは、それぞれの磁石ユニットを単一の磁石ユニットとしても良く、若しくは平面視矩形又は円形の厚板状磁石をマトリックス状に配置させてそれぞれの磁石ユニットを構成するようにしても良い。
【0122】
また、本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具には、所定の面積を有する保護シートを備えると共に、主綱等の安全ロープを繋ぐための結合部としてのフックを有しているのが良い。このフックを利用して例えば工具袋に収容した作業用の工具をくくりつけておくことができる。これによって、作業用の工具が屋根から転がって落下するのを防止し、屋根に傷がついたり擦れが生じたりさせることなく屋根面の保護を図ると共に、軒先からの工具等の予期せぬ落下に伴う危険性の排除を図ることが可能となる。
【0123】
また、上述の作業用工具を工具袋などに入れてまとめて安全補助具のフックにくくりつけておくことで、屋根上作業の内容ごとに必要な工具を棟に取り付けた安全補助具のところにいって調達することができるので、屋根上作業を効率良く行うことができ、短時間で必要な屋根上作業を終えて作業者の疲労軽減を図ると共に、例えば猛暑の炎天下での屋根上作業の疲労に伴う体調悪化によって生じる立ちくらみなどによって屋根から転落する落下事故を防止することが可能となる。
【0124】
以上のような理由で、屋根上作業者がこの作業に慣れていない初心者や、熟練者であるが年齢等の理由により長時間の作業で体調がすぐに悪化してしまう恐れのある作業者であっても、安全を確保しながら屋根上作業を行うことが可能となる。
【0125】
なお、本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具の材質については、軽量で強度を有するアルミニウム合金が考えられるが、これに限定されるものではなく、本発明の作用を発揮し得る範囲において、様々な材質を使用可能である。具体的には、例えば鉄板やステンレス鋼板、特別に十分な強度と耐久性を有する軽量の樹脂材等が考えられる。
【0126】
また、本実施形態においては、支持延在部と一端側の結合固定具及び他端側結合固定部をそれぞれそれ別部材として構成していたが、これら全てを一体として構成しても構わない。
【0127】
また、一端側引っ張り力吸収伝達部及び他端側引っ張り力吸収伝達部に関して、本実施形態においてはそれぞれ1枚の板材でそれぞれ構成していたが、これとは異なりそれぞれが2枚の板材からなり、これら2枚の板材を所定の位置で固定して一体化しても良い。
【0128】
また、一端側引っ張り力吸収伝達部及び他端側引っ張り力吸収伝達部に関して、板材の代わりに2本の棒状部材を使って各棒状部材の一方の端部同士を結合していわゆる二等辺三角形2つの斜辺を形成するようにして棟を跨ぐような形態としても良い。
【0129】
また、本発明に係る棟固定式屋根上作業用安全補助具は、屋根上作業者の安全を確保することを主目的としているが、これに加えて屋根上作業にあたって必要な様々な道具を作業用安全補助具の近くに確実に仮置きしておけるような構造を有するのが好ましい。
【0130】
これによって、これらの屋根上作業用の道具が不用意に屋根の斜面を伝わって軒先から地上に落下するのを防止すると共に、屋根上での作業効率を高めて屋根上作業者の身体的負担や時間的負担を軽くすることができる。
【0131】
また、本実施形態においては、磁石ユニットをそれぞれが2列の磁石エレメントを並べて配置した第1の磁石ユニット及び第2の磁石ユニットとして構成していたが、それぞれの磁石ユニットは、本発明の作用を発揮し得る範囲内で様々な形態が考えられる。例えば、多数の磁石を磁性材からなる基板にマトリックス状等様々な形態で配置しても良く、一体化した単体の磁石ユニットを第1の磁石ユニット及び第2の磁石ユニットとしてそのまま使用しても良いことは言うまでもない。
【0132】
また、上述の実施形態に関して、文章中及び特に
図3乃至
図5においては、第1の屋根上作業者安全確保用連結部及び第2の屋根上作業者安全確保用連結部のそれぞれの一部を鎖711,721として紹介したが、本発明がこれに限定されるものではなく、鎖以外であっても本発明における過大な引っ張り力に対して十分な強度と耐久性を有するものであれば、どのようなものでも利用可能であることは言うまでもない。
【0133】
また、一端側引っ張り力吸収伝達部及び他端側引っ張り力吸収伝達部の形態に関しても、過大な引っ張り力を分散吸収して伝達する役目を果たせば、本実施形態のようにある程度幅のある円弧状又はその近似した形状に限定されるものでなく、例えば十分な強度と耐久性を有する略三日月型や略三角形型の厚板を用いても良い。
【0134】
また、上述の実施形態においては、具体的な締結具として例えば
図3乃至
図5においては蝶ネジとナットで示したが、これに限定されるものではなく、ボルトとナットの組み合わせやその他の十分な固定機能を有する締結具であれば、どのような締結具でも使用可能である。即ち、本発明における締結具としての役目を果たすものであれば、
図7及び
図8においては説明の都合上特段図示していない締結部分に様々な締結具を使用することで、
図8に示す過大な引っ張り力の吸収拡散伝達及び磁石の磁気引っ張り力によって、過大な応力が作用した場合であっても棟固定式屋根上作業用安全補助具を棟にしっかりと固定した状態を維持させることが可能となる。
【0135】
また、
図8における力のかかり具合を示す矢印から、次のようなことが明らかであることが理解できる。具体的には、
図8(a)において、図中右側の過大な引っ張り力F1に対して、反対側(図中左側)の第2の棟折れ下がり面押し当て部によって押し付け力P1が作用したが、過大な引っ張り力F1が作用する側の第1の棟折れ下がり面押し当て部においても右側の磁石によって作用する左下向きの磁力の分力が左側に向かっているため、結果的に第1の棟折れ下がり面押し当て部も過大な引っ張り力F1によって右側にずれることは無い。
【0136】
同様に、
図8(b)において、図中左側側の過大な引っ張り力F2に対して、反対側(図中右側)の第1の棟折れ下がり面押し当て部によって押し付け力P2が作用したが、過大な引っ張り力F2が作用する側の第2の棟折れ下がり面押し当て部においても左側の磁石によって作用する右下向きの磁力の分力が右側に向かっているため、結果的に第2の棟折れ下がり面押し当て部も過大な引っ張り力F2によって左側にずれることは無い。
【符号の説明】
【0137】
10 棟固定式屋根上作業用安全補助具(屋根上作業用安全補助具、安全補助具)
50 棟
51-1 一方の棟傾斜面
51-2 他方の棟傾斜面
52-1 (一方の)棟折り下がり部
52-2 (他方の)棟折れ下がり面
55 頂部
61 第1の棟折り下がり部
62 第2の棟折り下がり部
90 はしご
91 安全ハーネス
100 支持延在部
110 一端側折り曲げ部
120 他端側折り曲げ部
210 一端側結合固定部
220 他端側結合固定部
215,225 長孔
216,226 長板固定部
310 第1の磁石ユニット
312 磁石固定用板材
320 第2の磁石ユニット
410(400) 一端側引っ張り力吸収伝達部
411 一端
412 他端
415 延在方向中央部
420(400) 他端側引っ張り力吸収伝達部
425 延在方向中央部
510 第1の磁石(磁石ユニット)
511-1,511-2,…,511-n 棒磁石
512-1,512-2,…,512-n 棒磁石
520 第2の磁石(磁石ユニット)
522-1,522-2,…,522-n 棒磁石
610 第1の棟折れ下がり面押し当て部
611 押し付け用板材
612 長孔
620 第2の棟折れ下がり面押し当て部
710 第1の屋根上作業者安全確保用連結部
720 第2の屋根上作業者安全確保用連結部
711(721) 鎖
712(722) 延長バンド
950 連結ロープ
RW 屋根上作業者
【要約】
【課題】作業者に作業上の身体的負担や時間的負担をかけずに効率良くかつ迅速に屋根の上に設置可能な棟固定式屋根上作業用安全補助具を提供する。
【解決手段】屋根の長手方向に亘って位置する支持延在部100と、支持延在部の両端にそれぞれ備わった結合固定部210,220と、各棟傾斜面に密着第する磁石ユニット510,520と、各棟傾斜面を跨ぐように延在し、その延在方向中央部は一端側結合固定部に固定され、その両端部の他端が棟折れ下がり面押し当て部に互いの取り付け位置を調整して固定可能とし、その両端部の他端が第2の棟折れ下がり面押し当て部に互いの取り付け位置を調整して固定するようになった引っ張り力吸収伝達部410,420と、棟折り下がり部に押し付けた状態で固定できるようになった棟折れ下がり面押し当て部610,620を有する。
【選択図】
図2