(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】クーラントタンク
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20230913BHJP
B04C 3/00 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
B04C3/00 Z
(21)【出願番号】P 2023037132
(22)【出願日】2023-03-10
【審査請求日】2023-03-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523088936
【氏名又は名称】中栄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 友悟
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-036111(JP,A)
【文献】特開2002-233709(JP,A)
【文献】登録実用新案第3055421(JP,U)
【文献】実開平07-007855(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0003283(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00、11/10
B24B 55/03、55/12、57/00
B04C 3/00
B01D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機から排出されるクーラント液が流入される有底円筒状のタンク本体と、前記タンク本体内に前記クーラント液の渦流を発生させる渦流発生手段と、前記クーラント液に混入する不純物を前記クーラント液から分離する分離手段と、前記タンク本体から前記分離手段に前記クーラント液を流すための管路と、を備え、
前記管路は、
前記タンク本体の底面の反対側から前記タンク本体内の前記クーラント液中に延伸されるとともに、前記タンク本体と同軸上に位置していること、
前記タンク本体内の前記クーラント液中の先端部に、前記クーラント液を吸引するための開口部を備えること、
前記タンク本体は、前記底面に向かって前記タンク本体の径を縮小させる縮径部を備えること、
前記タンク本体は、前記タンク本体と同軸上に、前記底面から突設する円錐状の整流部材を備えること、
前記開口部は、前記整流部材の頂点の近傍に位置すること、
を特徴とするクーラントタンク。
【請求項2】
請求項
1に記載のクーラントタンクにおいて、
前記管路を、前記タンク本体内で、同心状に覆う筒状体を備えること、
前記筒状体は、
前記クーラント液の前記渦流の発生前の液面よりも下にスリットを備えること、
前記開口部と同一方向に開口していること、
を特徴とするクーラントタンク。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクーラントタンクにおいて、
前記開口部は、ラッパ状に拡径されていること、
を特徴とするクーラントタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラントタンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、切削機や研削機、研磨機等の加工機に対し、クーラント液を循環供給するクーラントタンクが知られている。
【0003】
クーラント液には加工機で発生する切り屑や砥粒等の不純物が混入するところ、これを放置すると、不純物が塊となり、加工機に対してクーラント液を循環供給するための配管が詰まるおそれがある。そうすると、加工機に対するクーラント液の循環供給が阻害され、加工機の動作に悪影響を及ぼす。したがって、可能な限りクーラント液から不純物を取り除くことが求められている。
【0004】
クーラント液から不純物を取り除く技術としては、例えば、特許文献1に開示されるクーラント清浄装置が知られている。特許文献1に開示されるクーラント清浄装置では、加工機から流出されたクーラント液は、磁気分離器に流入される。これにより、クーラント液は、液中の磁性体の切り屑が吸着分離された上で、円形のクーラントタンクに貯留される。さらに、磁気分離器で分離されずにクーラント液中に残存した切り屑は、クーラント液とともに、クーラントタンクの底部から再び磁気分離器に送られて再処理がなされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クーラント液に混入した不純物は、クーラント液中の油分と結合することで、クーラント液の液面に浮遊することがある。したがって、上記従来技術に係るクーラント清浄装置のように、クーラントタンクの底部から再び磁気分離器に送る構成では、液面に浮遊する不純物を十分に回収することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、クーラント液の液面に浮遊する不純物を回収可能なクーラントタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のクーラントタンクは次のような構成を有している。
【0009】
(1)加工機から排出されるクーラント液が流入される有底円筒状のタンク本体と、前記タンク本体内に前記クーラント液の渦流を発生させる渦流発生手段と、前記クーラント液に混入する不純物を前記クーラント液から分離する分離手段と、前記タンク本体から前記分離手段に前記クーラント液を流すための管路と、を備え、前記管路は、前記タンク本体の底面の反対側から前記タンク本体内の前記クーラント液中に延伸されるとともに、前記タンク本体と同軸上に位置していること、前記タンク本体内のクーラント液中の先端部に、前記クーラント液を吸引するための開口部を備えること、前記タンク本体は、前記底面に向かって前記タンク本体の径を縮小させる縮径部を備えること、前記タンク本体は、前記タンク本体と同軸上に、前記底面から突設する円錐状の整流部材を備えること、前記開口部は、前記整流部材の頂点の近傍に位置すること、を特徴とする。
【0010】
上記クーラントタンクによれば、渦流発生手段によりクーラント液の渦流を発生させると、液面を浮遊する不純物は、渦流の中央部(タンク本体の中央部)に集まる。これは、遠心力により渦流の中央部(タンク本体の中央部)でクーラント液の圧力が低くなり、その外周でクーラント液の圧力が高くなることから、不純物が圧力の低い方に集まるためであると考えられる。
【0011】
加えて、タンク本体は、底面に向かってタンク本体の径を縮小させる縮径部を備えているため、渦流の遠心力により、タンク本体内のクーラント液は縮径部に乗り上げる。これにより、タンク本体の外周付近では、クーラント液の液面がせり上がり、その逆にタンク本体の中央部では液面が低下する。つまり、不純物が集まる中央部の液面が低下する。
【0012】
さらに、タンク本体から分離手段にクーラント液を流すための管路は、タンク本体の底面の反対側から(つまりタンク本体の上方から)タンク本体内のクーラント液中に延伸されるとともに、タンク本体と同軸上に位置していること、タンク本体内のクーラント液中の先端部に、クーラント液を吸引するための開口部を備えること、を特徴とするため、上記のように渦流によって不純物が集まる中央部の液面が低下すれば、開口部から、液面に浮遊する不純物をクーラント液とともに吸引することが可能となる。そして、クーラント液とともに吸引された不純物は、分離手段によりクーラント液から分離される。
【0015】
上記クーラントタンクのように、タンク本体と同軸上に底面から突設する円錐状の整流部材を設けると、渦流を発生させたときに、不純物が集まる中央部の液面を、より効果的に低下させることが可能であることを、本願発明者は実験により発見した。整流部材34を設けた場合に、設けない場合よりもタンク本体3の中央部の液面が低下するのは、整流部材34周辺のクーラント液の渦流Vの周速と、タンク本体3の外周付近のクーラント液の渦流Vの周速との差が、より大きくなるためと考えられる。タンク本体3の中央部の液面が低下することによって、クーラント液中の管路の開口部から、液面に浮遊する不純物を、より確実に吸引することができる。
【0016】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のクーラントタンクにおいて、前記管路を、前記タンク本体内で、同心状に覆う筒状体を備えること、前記筒状体は、前記クーラント液の前記渦流の発生前の液面よりも下にスリットを備えること、前記開口部と同一方向に開口していること、を特徴とする。
【0017】
渦流を発生させてから液面が低下しきるまでの間、中央部に集まってくる不純物が管路の外周面に付着してしまい、回収できなくなるおそれがある。上記クーラントタンクによれば、管路を、タンク本体内で、同心状に覆う筒状体を備えており、当該筒状体は、タンク本体内のクーラント液の液面よりも下にスリットを備えているため、渦流により中央部に集まろうとする不純物は、液面が下がり始めてから、スリットを通して、筒状体の内部(筒状体と管路の間の空間)に流れ込む。さらに、筒状体は、管路の開口部と同一方向に開口しているため、当該開口を介して、筒状体の内部に流れ込んだ不純物を 管路の開口部から吸引することが可能である。よって、不純物が管路に付着することを防止することができる。
【0018】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のクーラントタンクにおいて、前記開口部は、ラッパ状に拡径されていること、を特徴とする。
【0019】
液面が下がると、管路の開口部からクーラント液とともに空気を吸引してしまうおそれがある。空気を吸引すると、分離手段における不純物の分離効率が低下するおそれがある。上記クーラントタンクによれば、開口部がラッパ状に拡径されていることで、液面の余計な低下をせき止めるため、空気の吸引を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のクーラントタンクによれば、クーラント液の液面に浮遊する不純物を回収可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係るクーラントタンクの正面図である。
【
図2】本実施形態に係るクーラントタンクの平面図である。
【
図4】(a)は、管路を開口部とは反対側から見た斜視図であり、(b)は、管路を開口部の側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のクーラントタンクの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るクーラントタンク1の正面図である。
図2は、本実施形態に係るクーラントタンク1の平面図である。
図3は、
図2のA-A断面図である。なお、
図3中の液面LS11は、渦流Vを発生させる前のクーラント液の液面を表し、液面LS12は、渦流Vを発生させたときのクーラント液の液面を表している。
図4(a)は、管路5を開口部51とは反対側から見た斜視図であり、
図4(b)は、管路5を開口部51の側から見た斜視図である。
【0023】
(クーラントタンクの構成について)
まず、本実施形態に係るクーラントタンク1の構成について説明する。クーラントタンク1は、
図1-
図2に示すように、磁気分離器2と、タンク本体3と、第1クーラントポンプ4と、管路5と、サイクロン式セパレータ6(分離手段の一例)と、沈殿槽7と、クリーン槽8と、第2クーラントポンプ9と、を主要な構成要素としている。
【0024】
磁気分離器2は、クーラント液中の磁性体の不純物(切り屑等)を取り除くための機器である。磁気分離器2は、加工機11(
図1参照)に接続されており、加工機11から排出されたクーラント液が、磁気分離器2に流入されるようになっている。なお、加工機11とは、特に限定されないが、例えば切削機や研削機、研磨機等である。
【0025】
磁気分離器2は、クーラント液が流入されると、内部のマグネットドラムによりクーラント液中の磁性体の不純物を吸着分離することで、クーラント液の処理を行う。そして、処理後のクーラント液は、タンク本体3に流入される。ここで、クーラント液中に含まれる非磁性体の不純物(例えば砥粒等)は、磁気分離器2によっては分離できないため、クーラント液とともにタンク本体3に流入される。
【0026】
タンク本体3は、クーラント液を貯留可能な有底円筒状の筐体であり、クーラントタンク1が動作していない状態でも内部にクーラント液が貯留された状態である(
図3中の液面LS11参照)。タンク本体3は、厚み3mmの鋼材(例えばSS400)により形成されている。タンク本体3の大きさは、求められるクーラント液の貯留量に基づき定まるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、直径D11(
図3参照)が約1200~1500mm、高さD12(
図3参照)が約350mmとされている。
【0027】
タンク本体3は、
図3に示すように、底面31に向かってタンク本体3の径を縮小させる縮径部32を備えている。これにより、底面31の直径D21が、タンク本体3の直径D11よりも小さくなっている。底面31の直径D21は、管路5の直径D41よりも大きいことが望ましく、本実施形態においては、タンク本体3を製造可能な範囲で最も小さい値である200mmとしている。また、縮径部32の、軸方向の長さD22は、タンク本体3の高さD12に対して25~35%の範囲で定められており、本実施形態においては、約100mmである。
【0028】
また、底面31は、
図3に示すように、板材33が溶接されることで、タンク本体3のその他の部分よりも板厚が厚くされている。板材33は、材質をSS400等とする、厚み6mmの円盤状の板材である。板材33は外周部が溶接されることで(溶接部W)固定されている。つまり、底面31の板厚は、9mmと厚くされている。底面31の板厚を厚くしているのは、補強が目的である。クーラント液の渦流V(
図2参照。詳細は後述)が発生されると、クーラント液中の不純物により、底面31が摩耗するおそれがあるからである。なお、板厚9mmの鋼材を用いてタンク本体3を製造しても同様の補強効果が得られるが、上記のように底面31のみ補強するとした方が、タンク本体3の製造が容易である。
【0029】
さらに、底面31には、タンク本体3と同軸上に、円錐状の整流部材34が突設されている。整流部材34の直径D31は、底面31の直径よりも小さく、かつ、管路5の直径D41よりも大きいことが望ましく、本実施形態においては約150mmである。また、整流部材34の高さD32は、縮径部32の軸方向の長さD22の半分程度が望ましく、本実施形態においては約30~50mmである。
【0030】
タンク本体3と同軸上に、第1クーラントポンプ4に接続された管路5が位置されている。管路5は、タンク本体3の底面31の反対側(
図1および
図3中の上側)からタンク本体3内のクーラント液中に延伸されている。
【0031】
管路5は、直径D41が50mmの金属製のパイプである。なお、直径D41の大きさは、50mmに限定されない。管路5は、クーラント液中の先端部が開口部51となっている。これにより、管路5は、第1クーラントポンプ4が動作することで、開口部51からクーラント液およびクーラント液中の不純物を吸引することができる。また、開口部51は、先端に向かってラッパ状に拡径されている拡径部53を備えている。また、開口部51は、整流部材34の頂点Pの近傍に位置されている。具体的には、拡径部53と頂点Pの軸方向における位置が重なる程度の位置である。このようにすることで、開口部51の開口面積が整流部材34によって狭められるため、クーラント液を吸引する力を増すことができる。
【0032】
また、管路5は、
図3および
図5に示すように、タンク本体3内で管路5を同心状に覆う、円筒状の筒状体52を備えている。筒状体52は、筒状体52の外周面と内周面を貫通するスリット52aが設けられている。このスリット52aは、筒状体52の周方向に等間隔に3つ設けられている。ただし、スリット52aの個数はあくまで例示であり、3つに限定されるものではない。また、このスリット52aの、筒状体52における軸方向の位置は、
図3に示すように、クーラント液の渦流Vの発生前の液面LS11よりも下に位置するようにされている。また、筒状体52は、管路5の開口部51と同一方向に開口している。この開口を第2開口部52bとする。
【0033】
第1クーラントポンプ4は、ホースH11(
図2参照)によりサイクロン式セパレータ6に接続されている。よって、管路5が吸引したクーラント液および不純物は、ホースH11を介してサイクロン式セパレータ6に流入される。
【0034】
サイクロン式セパレータ6は、内部で螺旋流を発生させることで、遠心力により不純物とクーラント液とを分離する。このように、サイクロン式セパレータ6は遠心力により不純物を分離するものであるため、非磁性体の不純物を確実にクーラント液から分離することが可能である。
【0035】
分離された不純物は、サイクロン式セパレータ6の
図1中の下部から、沈殿槽7に排出される。不純物が分離されたクーラント液(以下、クリーン液という)は、サイクロン式セパレータ6の
図1中の上部から排出される。サイクロン式セパレータ6の上部はホースH12(
図2参照)によりクリーン槽8に接続されており、サイクロン式セパレータ6から排出されるクリーン液はクリーン槽8に流入する。サイクロン式セパレータ6がクリーン液を排出する量は、特に限定されないが、例えば240L/minである。なお、
図1および
図2中にはサイクロン式セパレータ6が3台図示されているが、台数は特に限定されるものではない。
【0036】
クリーン槽8に流入したクリーン液は、第2クーラントポンプ9により、加工機11(
図1参照)に送られる。加工機11に送られるクリーン液の量は、サイクロン式セパレータ6が排出するクリーン液の量よりも少なく設定されており、例えば、180L/minである。そして、加工機11に送られずに余ったクリーン液は、60L/minでタンク本体3に戻される。クリーン液をタンク本体3に流入させるガイド10(渦流発生手段の一例。
図2参照)は、タンク本体3の内周壁に沿って設けられているため、タンク本体3に戻されるクリーン液によって、タンク本体3内のクーラント液に渦流Vが発生する。
【0037】
(作用効果について)
上記のような構成を有するクーラントタンク1は、以下のような作用効果を有する。
【0038】
クーラントタンク1を動作させると、第1クーラントポンプ4により、管路5からタンク本体3内のクーラント液の吸引が開始される。さらに第1クーラントポンプ4は、吸引したクーラント液をサイクロン式セパレータ6に流し、サイクロン式セパレータ6において、クーラント液に残存する不純物が分離される。そして、不純物が分離されたクーラント液(クリーン液)は、クリーン槽8に送られる。クリーン槽8に送られたクーラント液は、第2クーラントポンプ9により、加工機11に送られる。クーラント液は、加工機11で用いられた後、不純物を含んだ状態で、磁気分離器2に流入される。磁気分離器2は磁性体の不純物をクーラント液から分離し、クーラント液をタンク本体3に流入させる。さらに、タンク本体3に流入されたクーラント液は、第1クーラントポンプ4により、管路5から吸引される。このように、クーラントタンク1は、加工機11に対し、クーラント液を循環供給する。
【0039】
クリーン槽8において、加工機11に送られずに余ったクーラント液は、ガイド10によりタンク本体3に戻される。これにより渦流V(
図2参照)が発生する。
【0040】
渦流Vが発生すると、液面に浮遊する不純物は、渦流Vの中央部(タンク本体3の中央部)に集まる。これは、遠心力により渦流Vの中央部(タンク本体3の中央部)で圧力が低くなり、その外周で圧力が高くなるためであると考えられる。加えて、渦流Vの遠心力により、タンク本体内のクーラント液は縮径部32に乗り上げる。これにより、
図3中の液面L12に示すように、タンク本体3の外周付近では、クーラント液の液面がせり上がり、その逆にタンク本体3の中央部では液面が低下する。
【0041】
さらに、タンク本体3と同軸上に底面31から突設する整流部材34が設けることで、不純物が集まるタンク本体3の中央部の液面を、より効果的に低下させることが可能であることを、本願発明者は実験により発見した。整流部材34を設けた場合に、設けない場合よりもタンク本体3の中央部の液面が低下するのは、整流部材34周辺のクーラント液の渦流Vの周速と、タンク本体3の外周付近のクーラント液の渦流Vの周速との差が、より大きくなるためと考えられる。
【0042】
つまり、不純物が集まる中央部の液面が低下する。管路5がタンク本体3と同軸上に位置しているため、低下した液面から、液面に浮遊する不純物を効率的に吸引することが可能である。管路5が、タンク本体3と同軸上に位置しているため、低下した液面LS12から クーラント液とともに液面LS12に浮く不純物を吸引することができる。
【0043】
また、渦流Vが発生すると、タンク本体3の底の側に沈殿する不純物も、渦流Vの中央部(タンク本体3の中央部)に集まっていく(
図3中の矢印F11参照)。これは、遠心力により渦流Vの中央部(タンク本体3の中央部)で圧力が低くなり、その外周で圧力が高くなるためであると考えられる。渦流Vの中央部(タンク本体3の中央部)に集まった不純物は、整流部材34に沿うようにして、管路5により吸い上げられる(
図3中の矢印F12参照)。よって、クーラント液に浮遊する不純物だけでなく、沈殿する不純物も回収可能である。なお、
図3中の矢印F11および矢印F12は、不純物の動きを示すものであり、クーラント液の流れを示すものではない。
【0044】
また、渦流Vを発生させてから液面が低下しきるまでの間、タンク本体3の中央部に集まってくる不純物が管路5の外周面に付着してしまい、回収できなくなるおそれがある。しかし、管路5は、管路5を同心状に覆う筒状体52を備えており、当該筒状体52は、タンク本体3内のクーラント液の液面LS11よりも下にスリット52aを備えているため、渦流Vにより中央部に集まろうとする不純物は、液面が下がり始めてから、スリット52aを通して、筒状体52の内部(筒状体52と管路5の間の空間)に流れ込む(
図3中の矢印F13参照)。さらに、筒状体52は、管路5の開口部51と同一方向に開口しているため(第2開口部52b)、当該開口を介して、筒状体52の内部に流れ込んだ不純物を 管路5の開口部51から吸引することが可能である(
図3中の矢印F14参照)。よって、不純物が管路5に付着することを防止することができる。なお、
図3中の矢印F13および矢印F14は、不純物の動きを示すものであり、クーラント液の流れを示すものではない。
【0045】
また、クーラント液の液面が下がると、管路5の開口部51からクーラント液とともに空気を吸引してしまうおそれがある。空気を吸引すると、サイクロン式セパレータ6における不純物の分離効率が低下するおそれがある。しかし、管路5は、拡径部53を備えることで、開口部51がラッパ状に拡径されているため、拡径部53により液面の余計な低下をせき止めるため、空気の吸引を防止することができる。
【0046】
なお、上記実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 クーラントタンク
3 タンク本体
5 管路
6 サイクロン式セパレータ(分離手段の一例)
10 ガイド(渦流発生手段の一例)
11 加工機
32 縮径部
34 整流部材
51 開口部
52 筒状体
52a スリット
52b 第2開口部
P 頂点
【要約】
【課題】クーラント液の液面に浮遊する不純物を回収可能なクーラントタンクを提供すること。
【解決手段】加工機11から排出されるクーラント液が流入されるタンク本体3と、タンク本体3内にクーラント液の渦流Vを発生させるガイド10と、クーラント液に混入する不純物をクーラント液から分離するサイクロン式セパレータ6と、タンク本体3からサイクロン式セパレータ6にクーラント液を流すための管路5と、を備え、管路5は、タンク本体3の上方側からタンク本体3内のクーラント液中に延伸されるとともに、タンク本体3と同軸上に位置していること、タンク本体3内のクーラント液中の先端部に、クーラント液を吸引するための開口部51を備えること、タンク本体3は、底面31に向かってタンク本体3の径を縮小させる縮径部32を備えること。
【選択図】
図3