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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】メロキシカム含有造粒物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5415 20060101AFI20230913BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230913BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230913BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230913BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230913BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
A61K31/5415
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/36
A61K47/38
A61K9/16
A61K9/28
A61K9/48
A61P29/00
A61P25/04
A61P43/00 111
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019121563
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021008412
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000102496
【氏名又は名称】エスエス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 亮
(72)【発明者】
【氏名】村木 祥文
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許第1233323(CN,C)
【文献】国際公開第2005/105102(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/086457(WO,A1)
【文献】特開2012-021025(JP,A)
【文献】特表2017-517551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
47/00-47/69
9/00-9/72
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)及び(C)を含有し、成分(A)に対する成分(B)の含有質量比〔(B)/(A)〕が、3以上20以下であり、且つ成分(B)に対する成分(C)の含有質量比〔(C)/(B)〕が、2以上10以下である造粒物。
(A)メロキシカム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物:0.5~12.5質量%
(B)炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、アルギニン、リジン、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物
(C)水膨潤性高分子
【請求項2】
成分(B)が、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、アルギニン、リジン及び酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物である、請求項1に記載の造粒物。
【請求項3】
成分(C)が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースの塩、クロスカルメロース、クロスカルメロースの塩、デンプングリコール酸、デンプングリコール酸の塩、及び結晶セルロースから選ばれる1種又は2種以上の水膨潤性高分子である、請求項1又は2に記載の造粒物。
【請求項4】
成分(C)が、カルメロース及びカルメロースの塩から選ばれる1種又は2種以上の水膨潤性高分子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の造粒物。
【請求項5】
成分(A)に対する成分(C)の含有質量比〔(C)/(A)〕が、0.1以上50以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の造粒物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の造粒物を含有する固形製剤。
【請求項7】
下記成分(A)、(B)及び(C)を含有し、成分(A)に対する成分(B)の含有質量比〔(B)/(A)〕が、3以上20以下であり、且つ成分(B)に対する成分(C)の含有質量比〔(C)/(B)〕が、2以上10以下である組成物を造粒することを特徴とする、メロキシカム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の溶出性改善方法。
(A)メロキシカム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物:0.5~12.5質量%
(B)炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、アルギニン、リジン、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物
(C)水膨潤性高分子
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メロキシカムを含有する造粒物及び当該造粒物を含有する固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の多くは、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで、炎症に関係するプロスタグランジンやトロンボキサン、プロスタサイリンの形成を抑えることを、抗炎症の作用機序とする。COXには、胃や腎臓などのほとんどの臓器で恒常的に生成されるCOX1と、炎症部で特異的に生成されるCOX2の2種類があり、COX1阻害能をもつNSAIDには、胃などで消化管障害が副作用として発生しやすいという問題がある。
一方、メロキシカムは、選択的COX2阻害薬であり、消化管障害が発生しにくいとされている。そのため、炎症性疾患の患者に対して疼痛治療薬として多くの使用例がある。
【0003】
しかしながら、メロキシカムは、pH5.0以下の低pH領域ではほとんど水に溶けず、固形製剤としたときに溶出しにくいものであるため、固形製剤のバイオアベイラビリティが低く、疼痛緩和の開始が遅いという問題がある。
特許文献1には、メロキシカムにジヒドロキシアルミニウムアミノ酢酸(アルミニウムグリシネート)や炭酸マグネシウム等を加えた顆粒剤や、メロキシカムにアルミノメタケイ酸マグネシウム(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)等を加えた顆粒をカプセルに充填したカプセル剤が記載されているが、メロキシカムの溶出性に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-21025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、メロキシカムの溶出性を改善する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、メロキシカム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物に加えて、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、アルギニン、リジン、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物と、水膨潤性高分子とを組み合わせて造粒することによって、メロキシカムの溶出性が改善されることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、本発明は、以下の<1>~<7>を提供するものである。
<1> 下記成分(A)、(B)及び(C)を含有する造粒物。
(A)メロキシカム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物
(B)炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、アルギニン、リジン、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物
(C)水膨潤性高分子
【0008】
<2> 成分(B)が、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、アルギニン、リジン及び酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物である、<1>に記載の造粒物。
<3> 成分(A)に対する成分(B)の含有質量比〔(B)/(A)〕が、0.1以上250以下である、<1>又は<2>に記載の造粒物。
<4> 成分(C)が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースの塩、クロスカルメロース、クロスカルメロースの塩、デンプングリコール酸、デンプングリコール酸の塩、及び結晶セルロースから選ばれる1種又は2種以上の水膨潤性高分子である、<1>~<3>のいずれかに記載の造粒物。
<5> 成分(A)に対する成分(C)の含有質量比〔(C)/(A)〕が、0.1以上50以下である、<1>~<4>のいずれかに記載の造粒物。
【0009】
<6> <1>~<5>のいずれかに記載の造粒物を含有する固形製剤。
【0010】
<7> 下記成分(A)、(B)及び(C)を含有する組成物を造粒することを特徴とする、メロキシカム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の溶出性改善方法。
(A)メロキシカム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物
(B)炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、アルギニン、リジン、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物
(C)水膨潤性高分子
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メロキシカムの溶出性を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<造粒物>
本発明の造粒物は、下記成分(A)、(B)及び(C)を含有するものである。
(A)メロキシカム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物
(B)炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、アルギニン、リジン、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物
(C)水膨潤性高分子
【0013】
(成分(A))
メロキシカム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物としては、メロキシカム;ナトリウム塩、カリウム塩等のメロキシカムのアルカリ金属塩;メロキシカムのアンモニウム塩;メロキシカムのメグルミン塩;メロキシカムのトリス塩;メロキシカムの塩基性アミノ酸との塩;これらの水和物やアルコール和物が挙げられる。
メロキシカム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、公知の方法により製造でき、市販品を用いることもできる。
【0014】
メロキシカム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量は、メロキシカムの溶出性の観点から、本発明の造粒物全質量に対して、好ましくは0.5~50質量%、より好ましくは1~25質量%、更に好ましくは1~15質量%、更に好ましくは1.5~12.5質量%、特に好ましくは2~7.5質量%である。
【0015】
(成分(B))
成分(B)の塩基性化合物としては、メロキシカムの溶出性の観点から、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、アルギニン、リジン及び酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
なお、成分(B)のアルギニン、リジンとして、アルギニン、リジンのフリー体の他、アルギニン、リジンの塩を用いてもよい。アルギニン、リジンの塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩が挙げられる。このようなアルギニン、リジンとしては、具体的には、L-アルギニン、L-アルギニン塩酸塩、L-リジン、L-リジン塩酸塩、L-リジン酢酸塩等が挙げられる。
成分(B)の塩基性化合物は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
成分(B)の塩基性化合物は、公知の方法により製造でき、市販品を用いることもできる。
【0016】
成分(B)の塩基性化合物の含有量は、メロキシカムの溶出性の観点から、本発明の造粒物全質量に対して、好ましくは0.5~80質量%、より好ましくは1~60質量%、更に好ましくは3~50質量%、更に好ましくは5~40質量%、特に好ましくは10~30質量%である。
【0017】
また、本発明の造粒物中の成分(A)に対する成分(B)の含有質量比〔(B)/(A)〕は、メロキシカムの溶出性等の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.75以上、更に好ましくは1以上、更に好ましくは1.5以上、特に好ましくは3以上である。また、メロキシカムの溶出性等の観点から、好ましくは250以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは50以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは15以下、更に好ましくは10以下、特に好ましくは7.5以下である。
【0018】
(成分(C))
本発明において「水膨潤性高分子」とは、水又は含水アルコールを添加したときに膨潤し水又は含水アルコールを多量に保持して膨潤することができる、水に難溶な高分子をいう。
水膨潤性高分子としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースの塩、クロスカルメロース、クロスカルメロースの塩、デンプングリコール酸、デンプングリコール酸の塩、結晶セルロースが挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルメロースの塩としては、例えば、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム等のカルメロースのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が挙げられる。クロスカルメロースの塩としては、例えば、クロスカルメロースナトリウム、クロスカルメロースカルシウム等のクロスカルメロースのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が挙げられる。デンプングリコール酸の塩としては、例えば、デンプングリコール酸ナトリウム等のデンプングリコール酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0019】
また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとしては、メロキシカムの溶出性の観点から、ヒドロキシプロポキシ基の含有量が5~16質量%であるものが好ましく、ヒドロキシプロポキシ基の含有量が6~13質量%であるものがより好ましく、ヒドロキシプロポキシ基の含有量が7~10質量%であるものが特に好ましい。
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの市販品としては、信越化学工業社製L-HPC(LH31)(ヒドロキシプロポキシ基:11質量%)、信越化学工業社製L-HPC(LH11)(ヒドロキシプロポキシ基:11質量%)、信越化学工業社製L-HPC(LH32)(ヒドロキシプロポキシ基:8質量%)、信越化学工業社製L-HPC(NBD-020)(ヒドロキシプロポキシ基:14質量%)が挙げられる。また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの平均粒子径は、通常60μm以下であり、メロキシカムの溶出性の観点から、45μm以下が好ましく、4~25μmが特に好ましい。
【0020】
このような水膨潤性高分子の中でも、メロキシカムの溶出性の観点から、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースの塩、クロスカルメロース、クロスカルメロースの塩、デンプングリコール酸、デンプングリコール酸の塩が好ましく、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースの塩、クロスカルメロース、クロスカルメロースの塩がより好ましく、カルメロースの塩が更に好ましく、カルメロースカルシウムが特に好ましい。
【0021】
水膨潤性高分子の含有量は、メロキシカムの溶出性の観点から、本発明の造粒物全質量に対して、好ましくは1~95質量%、より好ましくは10~90質量%、更に好ましくは20~80質量%、更に好ましくは30~75質量%、特に好ましくは40~70質量%である。
【0022】
また、本発明の造粒物中の成分(A)に対する成分(C)の含有質量比〔(C)/(A)〕は、メロキシカムの溶出性等の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.75以上、更に好ましくは1以上、更に好ましくは2以上、特に好ましくは5以上である。また、メロキシカムの溶出性等の観点から、好ましくは50以下、より好ましくは25以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは17.5以下、特に好ましくは15以下である。
【0023】
また、本発明の造粒物中の成分(B)に対する成分(C)の含有質量比〔(C)/(B)〕は、メロキシカムの溶出性等の観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは1以上、特に好ましくは2以上である。また、メロキシカムの溶出性等の観点から、好ましくは50以下、より好ましくは25以下、更に好ましくは15以下、更に好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
【0024】
本発明の造粒物は、粒度に応じて、顆粒剤、細粒剤、散剤に大別することができる。本発明の造粒物の平均粒径は、好ましくは50~1000μm、より好ましくは50~500μmである。当該平均粒径は、篩分け法で測定できる。
【0025】
<固形製剤>
本発明の固形製剤は、上記のような本発明の造粒物を含有するものである。
本発明の固形製剤全質量に対する成分(A)~(C)の含有量は特に限定されないが、上記の本発明の造粒物全質量に対する成分(A)~(C)の含有量と同様の範囲が好ましい。また、本発明の固形製剤中の含有質量比〔(B)/(A)〕、〔(C)/(A)〕、〔(C)/(B)〕も、本発明の造粒物中の含有質量比〔(B)/(A)〕、〔(C)/(A)〕、〔(C)/(B)〕と同様の範囲が好ましい。
【0026】
本発明の固形製剤は、本発明の造粒物を原料(中間製品)として使用した固形製剤であればよい。本発明の固形製剤の剤形としては、例えば、顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤(素錠、OD錠、チュアブル錠、分散錠、溶解錠、トローチ剤、舌下錠、バッカル錠、付着錠、発泡錠、ガム剤等)、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤等)、ドライシロップ剤、ゼリー剤等が挙げられる。また、これらは、公知の方法にしたがって、糖衣やフィルムコーティング等で被覆されていてもよい。顆粒剤の平均粒径は、好ましくは50~1000μm、より好ましくは50~500μmである。当該平均粒径は、篩分け法で測定できる。
また、本発明の固形製剤は、好ましくは経口用固形製剤である。
【0027】
本発明の固形製剤の具体的な態様としては、以下の(α-1)~(α-3)が挙げられる。
(α-1)本発明の造粒物をそのまま顆粒剤や細粒剤、散剤等とし、必要に応じて被覆処理をした固形製剤。
(α-2)本発明の造粒物をカプセルに充填したカプセル剤。
(α-3)本発明の造粒物を圧縮法などで製錠して得た錠剤。
【0028】
本発明の造粒物、固形製剤は、上記以外の薬物を、その目的に応じて含んでいてもよい。このような薬物としては、例えば、制酸剤(成分(B)を除く)、抗炎症剤(成分(A)を除く)、鎮静薬、カフェイン類、鎮咳去痰薬、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、抗コリン薬、ビタミン類、筋弛緩剤、生薬類等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記制酸剤としては、例えば、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈生成物、グリシン、ケイ酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、アルミニウムグリシネート等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記制酸剤の含有量は、本発明の造粒物、固形製剤全質量に対して、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~0.01質量%である。
【0030】
上記抗炎症剤としては、例えば、グリチルリチン酸やその塩、トラネキサム酸、グリチルレチン酸、アズレンスルホン酸ナトリウム、アスピリン、サリチルアミド等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記鎮静薬としては、例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロモバレリル尿素等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記鎮静薬の含有量は、本発明の造粒物、固形製剤全質量に対して、好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~1質量%、特に好ましくは0~0.01質量%である。
【0032】
上記カフェイン類としては、例えば、カフェイン水和物、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記カフェイン類の含有量は、本発明の造粒物、固形製剤全質量に対して、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~1質量%である。
【0033】
また、本発明の造粒物、固形製剤は、上記以外の医薬品添加物を含んでいてもよい。このような医薬品添加物としては、例えば、乳糖、スターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の賦形剤;ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、プルラン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリル、ショ糖脂肪酸エステル等の滑沢剤;軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、トウモロコシデンプン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の流動化剤;アルファー化デンプン、クロスポビドン等の崩壊剤が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、保存剤、香料、色素、矯味剤等を使用することができる。
上記の医薬品添加物の含有量は、本発明の造粒物、固形製剤全質量に対して、好ましくは0~70質量%、より好ましくは0~50質量%である。
なお、本発明の造粒物、固形製剤は、水分含量が、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~2.5質量%である。
【0034】
本発明の造粒物、固形製剤の服用量は、メロキシカムを1日あたりに1~30mg服用できる量が好ましく、2.5~15mg服用できる量がより好ましく、5~10mg服用できる量が特に好ましい。また、服用回数は、1日あたりに1~3回が好ましく、1回がより好ましい。
【0035】
<造粒物の製造方法、溶出性改善方法>
本発明の造粒物は、成分(A)、(B)及び(C)を含有する組成物(以下、組成物Xとも称する)を造粒する造粒工程を含む方法によって製造することができる。この方法及びこの方法を用いた固形製剤の製造方法によれば、メロキシカム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の溶出性が改善された造粒物及び固形製剤を簡便に製造することができる。
なお、本明細書において、「溶出性改善」とは、メロキシカム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物が固形製剤から溶出しやすくなることをいう。
【0036】
組成物X中の含有質量比〔(B)/(A)〕、〔(C)/(A)〕、〔(C)/(B)〕としては、本発明の造粒物中の含有質量比〔(B)/(A)〕、〔(C)/(A)〕、〔(C)/(B)〕と同様の範囲が好ましい。なお、成分(A)~(C)の組成物X中への配合の順番の先後は問わない。
【0037】
また、組成物Xは、例えば、成分(A)~(C)及び必要に応じて他の成分(上記薬物や医薬品添加物)を混合する手法や、成分(A)~(C)及び必要に応じて他の成分(上記薬物や医薬品添加物)を混合し、得られた混合物を水又は含水アルコール等の溶媒と練り合わせる手法により調製することができる。上記含水アルコールとしては、アルコール含有量が30質量%以下のものが好ましい。また、アルコールとしては、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールが好ましい。上記溶媒の使用量は、成分(A)~(C)の合計量に対して、好ましくは0.5~3質量倍である。また、上記混合、練り合わせは、例えば、攪拌型混合機等を使用して行うことができる。混合、練り合わせは、それぞれ、20~1200rpmで0.5~10分間行うことが好ましい。
【0038】
上記造粒は、湿式造粒法で行うのが好ましい。湿式造粒法としては、攪拌造粒法、流動層造粒法、押し出し造粒法等が挙げられるが、押し出し造粒法が好ましい。
【0039】
なお、上記のようにして得られた造粒物に、乾燥処理、粉砕処理、篩分け、マルメライザーによる球形化処理、糖類や高分子等のコーティング処理等を適宜選択して行ってもよい。造粒物は、顆粒剤、細粒剤、散剤としてそのまま使用することができる。また、造粒物を常法に従って打錠することで錠剤を得ることができ、造粒物を常法に従ってカプセルに充填することでカプセル剤を得ることができる。
【0040】
そして、本発明の造粒物及び当該造粒物を含有する固形製剤は、メロキシカム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の溶出性が低pH領域(例えばpH1~5)でも極めて大であるため、経口投与したときに抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用が即時的に得られると期待できる。特に、関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群の速やかな消炎・鎮痛が期待できる。
【実施例
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例7~9は参考例である。
【0042】
〔参考例1 顆粒剤〕
メロキシカム(Combi-Blocks社製)、コーンスターチ(松谷化学工業社製)及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製L-HPC(LH31))を合計で40g、顆粒剤の1サンプル当たりそれぞれが下記表1に示す配合量になるように秤量した。これをメカノミルに投入し、900rpmにて3分間混合した。その後、精製水を適量添加して900rpmにて3分間練合し、次いで押出造粒(0.8mmφスクリーン)した。得られた粒状物を箱型乾燥機(65℃終夜運転)で乾燥した。これを整粒することで、参考例1の顆粒剤(16-60メッシュ)を調製した。
【0043】
〔実施例1~6 顆粒剤〕
コーンスターチを、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、アルギニン、リジンに変更する以外は、参考例1と同様にして顆粒剤(16-60メッシュ)を調製した。
【0044】
〔比較例1~9 顆粒剤〕
コーンスターチを、クエン酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト(富田製薬社製)、乾燥水酸化アルミニウムゲル(富田製薬社製)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業社製ノイシリンA FP)、アルミニウムグリシネート(協和化学工業社製グリシナール)、グリシンに変更する以外は、参考例1と同様にして顆粒剤(16-60メッシュ)を調製した。
【0045】
〔参考例2 混合物〕
メロキシカム(Combi-Blocks社製)、コーンスターチ(松谷化学工業社製)及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製L-HPC(LH31))を合計で40g、混合物の1サンプル当たりそれぞれが下記表2に示す配合量になるように秤量した。これをメカノミルに投入し、900rpmにて3分間混合することで、参考例2の混合物を調製した。
【0046】
〔比較例10~18 混合物〕
コーンスターチを、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、アルギニン、リジン、乾燥水酸化アルミニウムゲル(富田製薬社製)、アルミニウムグリシネート(協和化学工業社製グリシナール)、グリシンに変更する以外は、参考例2と同様にして混合物を調製した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
〔試験例1〕
マッキルベイン緩衝液を精製水で希釈してpH4.0の液剤900mLを得て、この液剤に、参考例1の顆粒剤180mgを添加し、37℃にて50rpmで撹拌した。撹拌開始から5分間経過後、10分間経過後、30分間経過後に、参考例1の顆粒剤のメロキシカムの溶出率を測定した。
メロキシカムの溶出率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定し、メロキシカムの溶出量から、下記式(α)に従って算出した。
メロキシカム溶出率(質量%) = {(メロキシカム溶出量(mg))/(メロキシカム初期含有量(mg))}×100 ・・・ (α)
<HPLC測定条件>
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんしたもの
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:353nm)
移動相:薄めたリン酸(1→1000)/アセトニトリル混液(1:1)
また、実施例1~6、比較例1~18、参考例2の顆粒剤又は混合物についても、同様にしてメロキシカムの溶出率を測定した。
結果を表3に示す。なお、30分間経過後の溶出率が大きいほど、メロキシカムの溶出性が良好といえる。
【0050】
【表3】
【0051】
〔実施例7 顆粒剤〕
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの配合量が7.5mgとなるようにした以外は、実施例1と同様にして顆粒剤(16-60メッシュ)を調製した。
【0052】
〔実施例8~9 顆粒剤〕
炭酸水素ナトリウムの配合量が20mg、100mgとなるようにした以外は、実施例1と同様にして顆粒剤(16-60メッシュ)を調製した。
【0053】
〔試験例2〕
実施例7~9の顆粒剤について、試験例1と同様にしてメロキシカムの溶出率を測定した。
結果を表4に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
〔実施例10~16 顆粒剤〕
信越化学工業社製L-HPC(LH31)を、信越化学工業社製L-HPC(LH11)(低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)、信越化学工業社製L-HPC(LH32)(低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)、信越化学工業社製NBD-020(低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)、クロスカルメロースナトリウム(FMC INTERNATIONAL社製Ac-Di-Sol)、カルメロース(ニチリン化学工業社製NS-300)、カルメロースカルシウム(ニチリン化学工業社製E.C.G-505)、デンプングリコール酸ナトリウム(DFE pharma社製Primojel)に変更する以外は、実施例1と同様にして顆粒剤(16-60メッシュ)を調製した。
【0056】
〔比較例19 顆粒剤〕
信越化学工業社製L-HPC(LH31)を、乳糖水和物(DFE pharma社製200M)に変更する以外は、実施例1と同様にして顆粒剤(16-60メッシュ)を調製した。
【0057】
〔試験例3〕
実施例10~16、比較例19の顆粒剤について、試験例1と同様にしてメロキシカムの溶出率を測定した。
結果を表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
〔製造例1~6 顆粒剤〕
表6に記載の各顆粒処方に従い、秤量した各成分を高速撹拌造粒機(VG-10型、パウレック社製)に投入し、3分間混合した。続いて、混合末に精製水を添加し、高速撹拌造粒機(VG-10型、パウレック社製)にて、3分間練合した。その練合物を押出造粒機(TDG-80型、ダルトン社製)を用いて造粒した。更に、得られた押出造粒顆粒を流動層乾燥機(FLO-2型、フロイント産業社製)に投入し、顆粒水分が2%以下になるまで乾燥したのち、コーミルにて整粒を行い、製造例1~6の顆粒剤を得た。
【0060】
【表6】
【0061】
〔製造例7~12 フィルムコーティング錠〕
製造例1~6で得られた各顆粒剤900gに対し、結晶セルロース140g、ステアリン酸マグネシウム10gを各々添加し、V型混合機(TCV-5型、徳寿工作所社製)にて混合し、打錠末1050gを得た。次に、ロータリー打錠機(VIRG0512型、菊水製作所社製)にて打錠を行い、直径7.5mm、錠剤質量210mg(メロキシカム含量10mg)の素錠を製造した。
次に、ヒプロメロース120g、マクロゴール6000 20gを精製水に溶解させた後、タルク10g及び酸化チタン10gを分散させて固形分濃度8%のフィルムコーティング液2000gを調製した。次いで、素錠500gをコーティング機(HC-LABO型、フロイント産業社製)に投入し、調製したフィルムコーティング液を噴霧してコーティングを行い、製造例7~12のフィルムコーティング錠(錠剤質量220mg、白色)を得た。
【0062】
〔製造例13~18 硬カプセル剤〕
製造例1~6で得られた各顆粒剤900gに対し、ステアリン酸マグネシウム9gを添加し、V型混合機(TCV-5型、徳寿工作所社製)にて混合し、充てん用顆粒末909gを得た。次に、カプセル充てん機(LIQUFIL-5型、クオリカプス社製)を用いて4号ゼラチンカプセルに充てんを行い、製造例13~18の硬カプセル剤(メロキシカム含量10mgに相当するカプセル内容物質量181.8mg)を得た。