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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
F15B15/14 335B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019172664
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021050757
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】大竹 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】菊池 景太
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-156011(JP,A)
【文献】実開昭54-150087(JP,U)
【文献】特表2019-522568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシリンダ本体と、
第2のシリンダ本体と、
前記第1のシリンダ本体の内部に支持される第1の軸部材と、
前記第2のシリンダ本体の内部に支持される第2の軸部材と、
前記第1のシリンダ本体の内部において前記第1の軸部材の周囲に支持される第1のベアリングと、
前記第2のシリンダ本体の内部において前記第2の軸部材の周囲に支持される第2のベアリングと、
を有し、
前記第1のシリンダ本体と前記第2のシリンダ本体は、軸方向に連続して配置され、
前記第1の軸部材と前記第2の軸部材は、互いの中心軸がずれるように軸方向に連続して配置されることで、前記第1のシリンダ本体と前記第2のシリンダ本体の内部における前記第1の軸部材と前記第2の軸部材の回転が抑制され、
前記第1のシリンダ本体は、軸方向において、前記第2のシリンダ本体に近い側の内面に位置する小径筒部と、前記第2のシリンダ本体から遠い側の内面に位置するとともに、前記第1のシリンダ本体のうち前記第2のシリンダ本体と反対側の端面が開放された大径筒部とを有し、
前記小径筒部の内面と前記第1の軸部材の外面の間にはクリアランスが設けられており、
前記第1のシリンダ本体のうち前記第2のシリンダ本体と反対側の端面が開放された前記大径筒部の内面には前記第1のベアリングが嵌め込まれ、前記第1のベアリングの内面には前記第1の軸部材が嵌め込まれている、
ことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記第1の軸部材の外面と前記第1のベアリングの内面の形状、及び、前記第2の軸部材の外面と前記第2のベアリングの内面の形状は、断面視したときに略円形をなし、
前記第1の軸部材の外面と前記第1のベアリングの内面の間のクリアランス、及び、前記第2の軸部材の外面と前記第2のベアリングの内面の間のクリアランスは、前記第1の軸部材と前記第2の軸部材の一体回転を抑制するように設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記第1の軸部材の外面と前記第1のベアリングの内面の形状、及び、前記第2の軸部材の外面と前記第2のベアリングの内面の形状は、断面視したときに、前記第1の軸部材と前記第2の軸部材の一体回転を抑制するような非円形形状に設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記第1の軸部材の外面と前記第1のシリンダ本体の内面の形状、及び、前記第2の軸部材の外面と前記第2のシリンダ本体の内面の形状は、断面視したときに略円形をなし、
前記第1の軸部材の外面と前記第1のシリンダ本体の内面の間のクリアランス、及び、前記第2の軸部材の外面と前記第2のシリンダ本体の内面の間のクリアランスは、前記第1の軸部材と前記第2の軸部材の一体回転を抑制するように設定される、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシリンダ装置。
【請求項5】
前記第1のシリンダ本体と前記第2のシリンダ本体は、互いの中心軸がずれている、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のシリンダ装置。
【請求項6】
前記第1の軸部材と前記第2の軸部材は、別部材から構成され、
前記第1のシリンダ本体と前記第2のシリンダ本体は、別部材から構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、エアベアリング式シリンダ等の流体シリンダについて特許出願を行い、特許権を取得している(特許文献1)。この流体シリンダは、シリンダ本体と、シリンダ本体内に支持された軸部材とを有しており、流体の作用により、軸部材を回転させながら、軸方向へのストローク(進退)を可能としている。軸部材には、回転羽根が取り付けられており、回転羽根に対する流体の作用により、回転羽根を備える軸部材を回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6456565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の流体シリンダは、軸部材に回転羽根を設けて、回転羽根に対する流体の作用により軸部材を積極的に回転させるものである。
【0005】
これに対して、本発明者は、軸部材の回転を抑制(禁止)しながら、軸方向へのストローク(進退)を許容するシリンダ装置のニーズがあることに着目して、そのようなシリンダ装置を具体化するべく、さらなる鋭意研究を重ねてきた。
【0006】
例えば、エアベアリング式シリンダ等の流体シリンダは、軸部材を浮遊状態で支持するので抵抗が小さい反面、抵抗が小さいが故に回転方向の外力(外乱)に弱く、軸部材が回転すると正確な作動制御が難しくなってしまう。一方、軸部材の回転を抑制するために軸部材と他部材を当て付けることが考えられるが、その場合、軸部材を浮遊状態で支持するという流体シリンダの前提が崩れてしまう(特性が生かせない)。このように、従来のシリンダ装置(流体シリンダ)では、軸部材のストロークにおける抵抗を小さくすることと、軸部材の回転を抑制することとを両立するのが難しかった(両者がトレードオフの関係にあった)。
【0007】
本発明は、以上の問題意識に基づいてなされたものであり、軸部材のストローク(進退)をスムーズに行うとともに軸部材の回転を抑制することができるシリンダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態のシリンダ装置は、第1のシリンダ本体と、第2のシリンダ本体と、前記第1のシリンダ本体の内部に支持される第1の軸部材と、前記第2のシリンダ本体の内部に支持される第2の軸部材と、前記第1のシリンダ本体の内部において前記第1の軸部材の周囲に支持される第1のベアリングと、前記第2のシリンダ本体の内部において前記第2の軸部材の周囲に支持される第2のベアリングと、を有し、前記第1のシリンダ本体と前記第2のシリンダ本体は、軸方向に連続して配置され、前記第1の軸部材と前記第2の軸部材は、互いの中心軸がずれるように軸方向に連続して配置されることで、前記第1のシリンダ本体と前記第2のシリンダ本体の内部における前記第1の軸部材と前記第2の軸部材の回転が抑制され、前記第1のシリンダ本体は、軸方向において、前記第2のシリンダ本体に近い側の内面に位置する小径筒部と、前記第2のシリンダ本体から遠い側の内面に位置するとともに、前記第1のシリンダ本体のうち前記第2のシリンダ本体と反対側の端面が開放された大径筒部とを有し、前記小径筒部の内面と前記第1の軸部材の外面の間にはクリアランスが設けられており、前記第1のシリンダ本体のうち前記第2のシリンダ本体と反対側の端面が開放された前記大径筒部の内面には前記第1のベアリングが嵌め込まれ、前記第1のベアリングの内面には前記第1の軸部材が嵌め込まれている、ことを特徴としている。
前記第1の軸部材の外面と前記第1のベアリングの内面の形状、及び、前記第2の軸部材の外面と前記第2のベアリングの内面の形状は、断面視したときに略円形をなし、前記第1の軸部材の外面と前記第1のベアリングの内面の間のクリアランス、及び、前記第2の軸部材の外面と前記第2のベアリングの内面の間のクリアランスは、前記第1の軸部材と前記第2の軸部材の一体回転を抑制するように設定されてもよい。
前記第1の軸部材の外面と前記第1のベアリングの内面の形状、及び、前記第2の軸部材の外面と前記第2のベアリングの内面の形状は、断面視したときに、前記第1の軸部材と前記第2の軸部材の一体回転を抑制するような非円形形状に設定されてもよい。
前記第1の軸部材の外面と前記第1のシリンダ本体の内面の形状、及び、前記第2の軸部材の外面と前記第2のシリンダ本体の内面の形状は、断面視したときに略円形をなし、前記第1の軸部材の外面と前記第1のシリンダ本体の内面の間のクリアランス、及び、前記第2の軸部材の外面と前記第2のシリンダ本体の内面の間のクリアランスは、前記第1の軸部材と前記第2の軸部材の一体回転を抑制するように設定されてもよい。
前記第1のシリンダ本体と前記第2のシリンダ本体は、互いの中心軸がずれていてもよい。
前記第1の軸部材と前記第2の軸部材は、別部材から構成され、前記第1のシリンダ本体と前記第2のシリンダ本体は、別部材から構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態によるシリンダ装置の外観構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態によるシリンダ装置の内部構成の一例を示す図であり、ピストンロッドの突出状態を描いている。
図3】本実施形態によるシリンダ装置の内部構成の一例を示す図であり、ピストンロッドの収納状態を描いている。
図4】ピストンロッドの外面とエアベアリングの内面の形状及びクリアランスの一例を示す図である。
図5】ピストンロッドの外面とエアベアリングの内面の形状の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図5を参照して、本実施形態によるシリンダ装置1について詳細に説明する。ここでは、シリンダ装置1として、空気(エア)の作用でピストンロッド(軸部材)20をストローク(図中の左右方向に進退)させるエアベアリング式シリンダを例示して説明する。しかし、シリンダ装置1は、空気以外の流体(例えば液体)の作用を利用する流体シリンダにも適用が可能である。
【0018】
図1は、本実施形態によるシリンダ装置1の外観構成の一例を示す図である。図2は、本実施形態によるシリンダ装置1の内部構成の一例を示す図であり、ピストンロッド20の突出状態を描いている。図3は、本実施形態によるシリンダ装置1の内部構成の一例を示す図であり、ピストンロッド20の収納状態を描いている。なお、図1と、図2図3とでは、シリンダ装置1のシルエットが異なっているが、これは作図の便宜上の理由によるものである。本実施形態によるシリンダ装置1の特徴部分は、図2図3によく表現されている。
【0019】
図1に示すように、シリンダ装置1は、シリンダ本体10と、シリンダ本体10の内部に支持されるピストンロッド(軸部材)20とを有している。シリンダ本体10には、シリンダ本体10の内部から外部へと空気を排出する排出口30が設けられている。また、シリンダ本体10には、ピストンロッド20の進退位置に関する情報(信号)を外部機器(図示略)に送信するケーブル40が接続されている。
【0020】
図2図3に示すように、シリンダ本体10は、図中の左側に位置する第1のシリンダ本体10Aと、図中の右側に位置する第2のシリンダ本体10Bとを有している。第1のシリンダ本体10Aと第2のシリンダ本体10Bは、一体に成形したものであってもよいし、別体で成形した後に各種の結合手段(例えばネジ止め等)によって結合したものであってもよい。
【0021】
ピストンロッド(軸部材)20は、図中の左側に位置する第1のピストンロッド(軸部材)20Aと、図中の右側に位置する第2のピストンロッド(軸部材)20Bとを有している。第1のピストンロッド20Aと第2のピストンロッド20Bは、一体に成形したものであってもよいし、別体で成形した後に各種の結合手段(例えばネジ止め等)によって結合したものであってもよい。
【0022】
第1のシリンダ本体10Aと第2のシリンダ本体10Bを別部材から構成し、第1のピストンロッド20Aと第2のピストンロッド20Bを別部材から構成することで、後述する「回転抑制機構」を搭載したシリンダ装置1の構成の簡単化と組付の容易化を図ることができる。
【0023】
第1のシリンダ本体10Aは、相対的に(第2のシリンダ本体10Bより)小径の筒状部材であり、第2のシリンダ本体10Bは、相対的に(第1のシリンダ本体10Aより)大径の筒状部材である。
【0024】
第1のピストンロッド20Aは、相対的に(第2のピストンロッド20Bより)小径の中実(棒状)部材であり、第2のピストンロッド20Bは、相対的に(第1のピストンロッド20Aより)大径の中実(棒状)部材である。
【0025】
第1のシリンダ本体10Aの内部の筒状空間において、第1のピストンロッド20Aが支持される。第2のシリンダ本体10Bの内部の筒状空間において、第2のピストンロッド20Bが支持される。
【0026】
第1のシリンダ本体10Aは、図中の右側に位置する小径筒部11Aと、図中の左側に位置する大径筒部12Aとを有している。小径筒部11Aの内面と第1のピストンロッド20Aの外面の間には、ある程度の径方向のクリアランスが設けられている。大径筒部12Aには、第1のエアベアリング(第1のベアリング)50Aが嵌め込まれている。第1のエアベアリング50Aの内面には、第1のピストンロッド20Aの外面が最小クリアランス(微小クリアランス)で位置している(嵌め込まれている)。つまり、第1のピストンロッド20Aの周囲に第1のエアベアリング50Aが支持されている。小径筒部11Aには、径方向に貫通する収納エア供給孔13Aが形成されている。大径筒部12Aには、径方向に貫通するエアベアリング吸気ポート14Aとエアベアリング排気ポート15Aが形成されている。エアベアリング吸気ポート14Aが左側に位置しており、エアベアリング排気ポート15Aが右側に位置している。
【0027】
第2のシリンダ本体10Bは、図中の左右両側に位置する小径筒部11Bと、図中の中央側に位置する大径筒部12Bとを有している。小径筒部11Bと第2のピストンロッド20Bの外面の間には、ある程度の径方向のクリアランスが設けられている。大径筒部12Bには、第2のエアベアリング(第2のベアリング)50Bが嵌め込まれている。第2のエアベアリング50Bの内面には、第2のピストンロッド20Bの外面が最小クリアランス(微小クリアランス)で位置している(嵌め込まれている)。つまり、第2のピストンロッド20Bの周囲に第2のエアベアリング50Bが支持されている。小径筒部11Bのうち大径筒部12Bより右側の部分には、径方向に貫通する突出エア供給孔13Bが形成されている。大径筒部12Bには、径方向に貫通するエアベアリング吸気ポート14Bとエアベアリング排気ポート15Bとエアベアリング排気ポート16Bが形成されている。エアベアリング吸気ポート14Bが中央に位置しており、エアベアリング排気ポート15Bが右側に位置しており、エアベアリング排気ポート16Bが左側に位置している(エアベアリング吸気ポート14Bがエアベアリング排気ポート15Bとエアベアリング排気ポート16Bによって左右から挟まれている)。
【0028】
ここで、第2のエアベアリング50Bの内面には第2のピストンロッド20Bの外面が最小クリアランスで嵌合しているので、シリンダ本体10(第1のシリンダ本体10Aと第2のシリンダ本体10B)の内部空間は、第2のエアベアリング50Bと第2のピストンロッド20Bの嵌合部より右側の右側空間SRと、第2のエアベアリング50Bと第2のピストンロッド20Bの嵌合部より左側の左側空間SLとに区画される。
【0029】
そして、右側空間SRと左側空間SLを遮蔽して両者の間に圧力差(ストローク力)を確保するべく、エアベアリング排気ポート15Bが、エアベアリング吸気ポート14Bが吸気したエアベアリング用エアを排気して、当該エアベアリング用エアと右側空間SRのエアとの混触を回避する(これにより右側空間SRを確実に加圧することができる)。また、エアベアリング排気ポート16Bが、エアベアリング吸気ポート14Bが吸気したエアベアリング用エアを排気して、当該エアベアリング用エアと左側空間SLのエアとの混触を回避する(これにより左側空間SLを確実に加圧することができる)。さらに、エアベアリング排気ポート15Aが、エアベアリング吸気ポート14Aが吸気したエアベアリング用エアを排気して、第1のエアベアリング50Aと第1のピストンロッド20Aの嵌合部をシールすることで、当該エアベアリング用エアと左側空間SLのエアとの混触を回避する(これにより左側空間SLを確実に加圧することができる)。
【0030】
このように、右側空間SRと左側空間SLを遮蔽して両者の間に圧力差(ストローク力)を確保可能な状態で、突出エア供給孔13Bから突出エアを引き込んで右側空間SRに供給すると、シリンダ本体10に対してピストンロッド20が左側に突出された状態となり(図2)、収納エア供給孔13Aから収納エアを引き込んで左側空間SLに供給すると、シリンダ本体10に対してピストンロッド20が右側に収納された状態となる(図3)。すなわち、シリンダ本体10に対してピストンロッド20が左右方向に進退する。
【0031】
シリンダ本体10に対してピストンロッド20が左側に突出された状態(図2)では、第1のシリンダ本体10Aと第2のシリンダ本体10Bの段差部10Cと、第1のピストンロッド20Aと第2のピストンロッド20Bの段差部20Cとが当て付いて、シリンダ本体10とピストンロッド20の突出端が位置規制される。
【0032】
シリンダ本体10に対してピストンロッド20が右側に収納された状態(図3)では、第2のシリンダ本体10Bの収納端位置規制部17Bと、第2のピストンロッド20Bの収納端位置規制部21Bとが当て付いて、シリンダ本体10とピストンロッド20の収納端が位置規制される。
【0033】
本実施形態のシリンダ装置1は、ピストンロッド20(第1のピストンロッド20Aと第2のピストンロッド20B)の回転を抑制(禁止)しながら、軸方向(図2図3の左右方向)へのストローク(進退)を許容するものである。
【0034】
そのために、ピストンロッド20(第1のピストンロッド20Aと第2のピストンロッド20B)は、シリンダ本体10(第1のシリンダ本体10Aと第2のシリンダ本体10B)の内部におけるピストンロッド20(第1のピストンロッド20Aと第2のピストンロッド20B)の回転を抑制する「回転抑制機構」を有している。
【0035】
具体的に、「回転抑制機構」は、第1のピストンロッド20Aの中心軸20AXと、第2のピストンロッド20Bの中心軸20BXとを互いにずらすことで構成されている。第1のピストンロッド20Aの中心軸20AXと第2のピストンロッド20Bの中心軸20BXを互いにずらすことで、ピストンロッド20に意図しない回転方向の外力(外乱)が加わった場合でも、ピストンロッド20の回転を抑制して正確な作動制御を実現することができる。また、ピストンロッド20の回転を抑制するために他部材を当て付けるようなことがないので、ピストンロッド20を浮遊状態で支持して、ストローク時(進退時)の抵抗を極限まで低減するというシリンダ装置(流体シリンダ)1の前提(特性)を維持することができる。
【0036】
さらに、第1のピストンロッド20Aの中心軸20AXと第2のピストンロッド20Bの中心軸20BXを互いにずらしたことに付随して、第1のシリンダ本体10Aの中心軸10AXと、第2のシリンダ本体10Bの中心軸10BXとが互いにずらされている。このため、シリンダ本体10の段差部10Cとピストンロッド20の段差部20Cを当て付けやすくすることができる。図2図3では、中心軸10AX、20AXが同軸上に位置しており、中心軸10BX、20BXが同軸上に位置しているが、この限りではない。例えば、中心軸10AX、20AXが異なる軸上に位置しており、中心軸10BX、20BXが異なる軸上に位置していてもよい。あるいは、第1のシリンダ本体10Aの中心軸10AXと第2のシリンダ本体10Bの中心軸10BXが同軸上に位置していてもよい。すなわち、第1のピストンロッド20Aの中心軸20AXと第2のピストンロッド20Bの中心軸20BXを互いにずらすことで「回転抑制機構」が構成されていればよく、その他の構成については種々の設計変更が可能である。
【0037】
なお、図2図3においては、第1のピストンロッド20Aの中心軸20AXと第2のピストンロッド20Bの中心軸20BXのずらし量(図中の上下方向の距離)を誇張して描いている。当該ずらし量は、第1のピストンロッド20Aと第2のピストンロッド20Bの一体回転を抑制できる範囲であればよい。
【0038】
図4Aは、第1のピストンロッド20Aの外面と第1のエアベアリング50Aの内面の形状及びクリアランスの一例を示す図であり、図4Bは、第2のピストンロッド20Bの外面と第2のエアベアリング50Bの内面の形状及びクリアランスの一例を示す図である。
【0039】
図4Aに示すように、第1のピストンロッド20Aの外面と第1のエアベアリング50Aの内面の形状は、断面視したときに略円形をなしている。このため、第1のピストンロッド20Aの外面と第1のエアベアリング50Aの内面の間に環状のクリアランスが設けられている。そして、第1のピストンロッド20Aの外面と第1のエアベアリング50Aの内面の間のクリアランス(径方向の距離)は、第1のピストンロッド20Aと第2のピストンロッド20Bの一体回転を抑制できる範囲であればよい。ここで説明した要件の少なくとも一部は、例えば、「回転抑制機構」の一部と捉えることもできる。
【0040】
図4Bに示すように、第2のピストンロッド20Bの外面と第2のエアベアリング50Bの内面の形状は、断面視したときに略円形をなしている。このため、第2のピストンロッド20Bの外面と第2のエアベアリング50Bの内面の間に環状のクリアランスが設けられている。そして、第2のピストンロッド20Bの外面と第2のエアベアリング50Bの内面の間のクリアランス(径方向の距離)は、第1のピストンロッド20Aと第2のピストンロッド20Bの一体回転を抑制できる範囲であればよい。ここで説明した要件の少なくとも一部は、例えば、「回転抑制機構」の一部と捉えることもできる。
【0041】
図5Aは、第1のピストンロッド20Aの外面と第1のエアベアリング50Aの内面の形状の一例を示す図であり、図5Bは、第2のピストンロッド20Bの外面と第2のエアベアリング50Bの内面の形状の一例を示す図である。
【0042】
図5Aに示すように、第1のピストンロッド20Aの外面と第1のエアベアリング50Aの内面の形状は、断面視したときに、第1のピストンロッド20Aと第2のピストンロッド20Bの一体回転を抑制するような非円形形状(ここでは四隅が丸みを帯びた矩形形状)に設定されている。この非円形形状は、四隅が丸みを帯びた矩形形状に限定されず、楕円形状等の他の形状とすることもできる。ここで説明した要件の少なくとも一部は、例えば、「回転抑制機構」の一部と捉えることもできる。
【0043】
図5Bに示すように、第2のピストンロッド20Bの外面と第2のエアベアリング50Bの内面の形状は、断面視したときに、第1のピストンロッド20Aと第2のピストンロッド20Bの一体回転を抑制するような非円形形状(ここでは四隅が丸みを帯びた矩形形状)に設定されている。この非円形形状は、四隅が丸みを帯びた矩形形状に限定されず、楕円形状等の他の形状とすることもできる。ここで説明した要件の少なくとも一部は、例えば、「回転抑制機構」の一部と捉えることもできる。
【0044】
詳細な断面形状は省略しているが、第1のピストンロッド20Aの外面と第1のシリンダ本体10A(小径筒部11A)の内面の形状は、断面視したときに略円形をなしている。このため、第1のピストンロッド20Aの外面と第1のシリンダ本体10A(小径筒部11A)の内面の間に環状のクリアランスが設けられている。そして、第1のピストンロッド20Aの外面と第1のシリンダ本体10A(小径筒部11A)の内面の間のクリアランス(径方向の距離)は、第1のピストンロッド20Aと第2のピストンロッド20Bの一体回転を抑制できる範囲であればよい。ここで説明した要件の少なくとも一部は、例えば、「回転抑制機構」の一部と捉えることもできる。
【0045】
第2のピストンロッド20Bの外面と第2のシリンダ本体10B(小径筒部11B)の内面の形状は、断面視したときに略円形をなしている。このため、第2のピストンロッド20Bの外面と第2のシリンダ本体10B(小径筒部11B)の内面の間に環状のクリアランスが設けられている。そして、第2のピストンロッド20Bの外面と第2のシリンダ本体10B(小径筒部11B)の内面の間のクリアランス(径方向の距離)は、第1のピストンロッド20Aと第2のピストンロッド20Bの一体回転を抑制できる範囲であればよい。ここで説明した要件の少なくとも一部は、例えば、「回転抑制機構」の一部と捉えることもできる。
【0046】
第1のピストンロッド20Aと第2のピストンロッド20Bの外面、第1のエアベアリング50Aと第2のエアベアリング50Bの内面、及び、第1のシリンダ本体10A(小径筒部11A)と第2のシリンダ本体10B(小径筒部11B)の内面の形状を、断面視したときに略円形とすることで、加工や設計の容易性を向上させることができる。一方で、これらの形状を非円形形状(例えば図5A図5Bに示したような四隅が丸みを帯びた矩形形状)とすると、クリアランスにばらつきが大きくなり、特に角部からのエア漏れが発生しやすく、エア制御が困難になる傾向がある。
【0047】
このように、本実施形態のシリンダ装置1は、シリンダ本体10の内部におけるピストンロッド20の回転を抑制する回転抑制機構として、第1のピストンロッド20Aの中心軸20AXと第2のピストンロッド20Bの中心軸20BXを互いにずらしている。これにより、ピストンロッド20のストローク(進退)をスムーズに行うとともにピストンロッド20の回転を抑制することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のシリンダ装置は、例えば、エアベアリング式シリンダ等の流体シリンダに適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 シリンダ装置(エアベアリング式シリンダ、流体シリンダ)
10 シリンダ本体
10A 第1のシリンダ本体
10AX 中心軸
11A 小径筒部
12A 大径筒部
13A 収納エア供給孔
14A エアベアリング吸気ポート
15A エアベアリング排気ポート
10B 第2のシリンダ本体
10BX 中心軸
11B 小径筒部
12B 大径筒部
13B 突出エア供給孔
14B エアベアリング吸気ポート
15B エアベアリング排気ポート
16B エアベアリング排気ポート
17B 収納端位置規制部
10C 段差部
20 ピストンロッド(軸部材)
20A 第1のピストンロッド(軸部材)
20AX 中心軸(回転抑制機構)
20B 第2のピストンロッド(軸部材)
20BX 中心軸(回転抑制機構)
21B 収納端位置規制部
20C 段差部
30 排出口
40 ケーブル
50A 第1のエアベアリング(第1のベアリング)
50B 第2のエアベアリング(第2のベアリング)
SR 右側空間
SL 左側空間
図1
図2
図3
図4
図5