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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230913BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J153/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019025583
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020132713
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】森 大祐
(72)【発明者】
【氏名】土居 智
(72)【発明者】
【氏名】石堂 泰志
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/056743(WO,A1)
【文献】特開2017-025126(JP,A)
【文献】特開2010-150452(JP,A)
【文献】特開2018-169612(JP,A)
【文献】特開2015-151452(JP,A)
【文献】特開2013-153071(JP,A)
【文献】特開2013-136672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面に粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、少なくとも1つ以上のハードブロックと1つのソフトブロックを有するブロック共重合体を含有し、
前記ハードブロックは、スチレン系モノマーに由来する構造及び架橋性官能基を有するモノマーに由来する構造を有し(但し、ハードブロック100重量部中に(メタ)アクリル酸エステル80~99.9重量部由来の重合単位を含むものを除く)
前記ソフトブロックは、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造及び酸を有するモノマーに由来する構造を有し、前記酸を有するモノマーに由来する構造の少なくとも一部が架橋されている、
粘着テープ。
【請求項2】
基材の少なくとも片面に粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、少なくとも1つ以上のハードブロックと1つのソフトブロックを有するブロック共重合体を含有し、
前記ハードブロックは、スチレン系モノマーに由来する構造及び架橋性官能基を有するモノマーに由来する構造を有し(但し、ハードブロック中に(メタ)アクリル酸エステル由来の重合単位を含むものを除く)
前記ソフトブロックは、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造及び酸を有するモノマーに由来する構造を有し、前記酸を有するモノマーに由来する構造の少なくとも一部が架橋されている、
粘着テープ。
【請求項3】
基材の少なくとも片面に粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、少なくとも1つ以上のハードブロックと1つのソフトブロックを有するブロック共重合体を含有し、
前記ハードブロックは、スチレン系モノマーに由来する構造及び架橋性官能基を有するモノマーに由来する構造を有し、かつ、前記ハードブロック中の前記スチレン系モノマーの含有量は75重量%を超え
前記ソフトブロックは、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造及び酸を有するモノマーに由来する構造を有し、前記酸を有するモノマーに由来する構造の少なくとも一部が架橋されている、
粘着テープ。
【請求項4】
基材の少なくとも片面に粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、少なくとも1つ以上のハードブロックと1つのソフトブロックを有するブロック共重合体を含有し、
前記ハードブロックは、スチレン系モノマーに由来する構造及びと架橋性官能基を有するモノマーに由来する構造を有し、かつ、前記ハードブロック中の前記スチレン系モノマーの含有量は88重量%以上であり
前記ソフトブロックは、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造及び酸を有するモノマーに由来する構造を有し、前記酸を有するモノマーに由来する構造の少なくとも一部が架橋されている、
粘着テープ。
【請求項5】
前記架橋性官能基を有するモノマーは、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、二重結合含有モノマー及び三重結合含有モノマーからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記架橋性官能基を有するモノマーが(メタ)アクリル酸系モノマーである、請求項1~5のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記ブロック共重合体は前記ハードブロックを10~35重量%含有する、請求項1~6のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記ソフトブロックは、酸価が28.8mgKOH/g以上である、請求項1~7のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記粘着剤層の周波数10Hz、温度-40℃時の貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以上である、請求項1~8のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記基材及び/又は前記粘着剤層は帯電防止剤を含有し、粘着テープのヘイズ値が2%以下である、請求項1~9のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項11】
前記粘着剤層の表面抵抗値が1.0×1012Ω/□以下である、請求項10記載の粘着テープ。
【請求項12】
前記粘着剤層は架橋剤を含有する、請求項1~11のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項13】
粘着テープの初期粘着力が0.2N/25mm以下であり、
粘着テープをPMMA板に貼り合わせて、温度60℃、湿度90%の条件で3日間経過した後の粘着力が0.4N/25mm以下である、請求項1~12のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項14】
電子部品の保護用に使用される、請求項1~13のいずれかに記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは簡便に接合が可能なことから各種産業分野に用いられている。建築分野では養生シートの仮固定、内装材の貼り合わせ等に、自動車分野ではシート、センサー等の内装部品の固定、サイドモール、サイドバイザー等の外装部品の固定等に、電気電子分野ではモジュール組み立て、モジュールの筐体への貼り合わせ等に粘着テープが用いられている。より具体的には例えば、光学デバイス、金属板、塗装した金属板、樹脂板、ガラス板等の部材の表面を保護するための保護テープとしても粘着テープが広く用いられている(例えば、特許文献1~3)。また、近年では、液晶ディスプレイ等の光学部材を輸送の際の振動や衝撃から保護するために保護テープが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-129085号公報
【文献】特開平6-1958号公報
【文献】特開平8-12952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、光学部材等の薄く損傷しやすい部材の製造にも保護テープが用いられており、部材の両面に保護テープを貼り付けた積層体の状態で打ち抜き加工やレーザー加工等が行われている。このような薄く損傷しやすい部材の保護テープは、剥離の際に部材を損傷しないようにするために、低粘着力、かつ、低接着亢進性(微粘着)であることが求められる。そのため、薄く損傷しやすい部材に用いられる従来の保護テープは、架橋等によって粘着剤を固くすることで微粘着としている。しかしながら、従来の保護テープでは部材に保護テープを貼り付けたまま打ち抜き加工やレーザー加工が行われた場合、粘着剤が砕けて糊カスが発生し、積層体の側面に付着することがある。積層体の側面に糊カスが付着していると、積層体の保護テープや保護対象物を汚染してしまい、洗浄工程が必要になったり歩留まりが下がったりするという課題がある。
【0005】
本発明は、微粘着でありながらも加工時に糊カスが発生し難い粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材の少なくとも片面に粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、少なくとも1つ以上のハードブロックと1つのソフトブロックを有するブロック共重合体を含有し、前記ハードブロックは架橋性官能基を有するモノマーに由来する構造を有する、粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明の粘着テープは、基材を有する。
上記基材は特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、変性オレフィン系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、シクロオレフィンポリマー樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。上記ポリオレフィン系樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、及びポリプロピレンフィルム等が挙げられる。上記ポリエステル系樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。上記変性オレフィン系樹脂フィルムとしては、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これらフィルムは、単層で用いてもよく、同一または異なるフィルムの複層であってもよい。
なお、より高い剥離性を発揮するためには、比較的弾性率が高い基材が好適である。また、粘着テープ越しに被着体の状態を確認したい場合には、比較的ヘイズ値が低い(例えば、ヘイズが2%以下)基材が好適である。
【0008】
上記基材は、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤、耐候剤、結晶核剤等の添加剤や、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、エラストマー等の樹脂改質剤等を含有してもよい。
【0009】
上記基材の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は12μm、好ましい上限は200μmである。上記基材の厚さが上記範囲であることによって取り扱い性に優れた粘着テープとすることができる。取り扱い性を更に高める観点から、上記基材の厚さのより好ましい下限は25μm、より好ましい上限は188μmである。
【0010】
本発明の粘着テープは、基材の少なくとも片面に粘着剤層を有し、上記粘着剤層は、少なくとも1つ以上のハードブロックと1つのソフトブロックを有するブロック共重合体を含有する。
ハードブロックとは、高凝集力を有し疑似架橋点の役割を有するブロックであり、ソフトブロックとは、ゴム弾性を示す柔軟なブロックのことを指す。ハードブロックとソフトブロックとを有するブロック共重合体は、ハードブロックとソフトブロックとが相溶し難く、ソフトブロックの海の中にハードブロックが凝集してできた島が点在する不均一な相分離構造をとることがある。そして、ハードブロックの島が疑似架橋点となることで、共重合体にゴム性が付与され、さらに本発明においてはハードブロックに架橋性官能基を有することから凝集力が更に高められ、粘着剤層が加工時の衝撃によって砕けにくくなり、糊カスの発生を抑えることができると考えられる。上記ブロック共重合体は、ハードブロック-ソフトブロックのジブロック構造をとっていてもよく、ハードブロック-ソフトブロック-ハードブロックのトリブロック構造をとっていてもよいが、よりゴム性を高めて糊カスの発生を抑えられることから、トリブロック構造を有することが好ましい。
【0011】
上記ハードブロックは芳香環相互作用を有し、ガラス転移点が高いモノマーと、後述する架橋性官能基を有するモノマーとの共重合体である。上記芳香環相互作用を有し、ガラス転移点が高いモノマーとしては、例えば、スチレン系モノマー、環状構造を有するモノマー、側鎖置換基が短いモノマー等が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、アルファメチルスチレン、パラメチルスチレン、パラメトキシスチレン、クロロスチレン等が挙げられる。環状構造を有するモノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。側鎖置換基が短いモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレートなどが挙げられる。なかでも、糊カスの発生をより抑えられることから、スチレン系モノマーが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0012】
上記ハードブロックは、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構造を有する。
ハードブロックが架橋性官能基を有するモノマーに由来する構造を有することで、ハードブロック同士の凝集力が向上し、糊カスの発生をより抑えることができる。上記架橋性官能基は架橋されていてもよく架橋されていなくてもよいが、架橋性官能基の少なくとも一部が架橋剤によって架橋されていると、粘着力が適度に低下し、接着亢進をより抑えられるため、剥離の際に被着体をより損傷し難くできることから、上記架橋性官能基は架橋されていることが好ましい。
【0013】
上記架橋性官能基を有するモノマーは特に限定されず、例えば、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、二重結合含有モノマー、三重結合含有モノマー、アミノ基含有モノマー、及びニトリル基含有モノマー等が挙げられる。なかでも、より糊カスの発生を抑えられることから、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、二重結合含有モノマー及び三重結合含有モノマーからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。水酸基含有モノマーとしては、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アミド基含有モノマーとしては(メタ)アクリルアミド、等が挙げられる。二重結合含有モノマーとしてはへキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。三重結合含有モノマーとしてはプロパルギル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、粘着テープに適度な低粘着力と低接着亢進性を付与できることから、カルボキシル基含有モノマーが好ましく、(メタ)アクリル酸系モノマーがより好ましく、アクリル酸が更に好ましい。
【0014】
上記ハードブロックは、上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構造を1~25重量%含有していることが好ましい。ハードブロック中における架橋性官能基を有するモノマーに由来する構造の含有量が上記範囲であることで、剥離の際に被着体を損傷しない程度の低い粘着力を持ちながらも、糊カスの発生をより抑えることができる。被着体の損傷と糊カスの発生をより抑える観点から、上記ハードブロック中における上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構造の含有量のより好ましい下限は2重量%、更に好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は20重量%、更に好ましい上限は15重量%である。
【0015】
上記ソフトブロックはゴム弾性を示す柔軟性を有すれば特に限定されず、単一のモノマーの重合体であってもよく、複数のモノマーとの共重合体であてもよい。上記ソフトブロックの原料となるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、シリコン系モノマー等のうち、柔軟性を有するものが挙げられる。なかでも、モノマーの種類が多く自由な設計が可能であることと、官能基の導入が可能により低剥離力、高耐熱性の粘着テープが得られることから、(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。上記(メタ)アクリル系モノマーとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ソフトブロックは、ゴム弾性を示す柔軟性を失わない限り、上記ハードブロックと同じモノマーを含んでいてもよい。
【0016】
上記ソフトブロックは酸を有するモノマーに由来する構造を有し、上記酸を有するモノマーに由来する構造の少なくとも一部が架橋されていることが好ましい。
このことにより、粘着力を適度に減少させることができ、薄い被着体に用いた場合であっても剥離の際に被着体を損傷し難くすることができる。
上記酸を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等が挙げられる。なかでも、被着体の損傷をより抑えられることからアクリル酸が好ましい。
【0017】
上記ソフトブロックが架橋されている場合、上記ソフトブロックは、酸価が65mgKOH/g以下であることが好ましい。
ソフトブロックの酸価が上記範囲であることで、粘着力が適度に低下し、粘着テープを薄い被着体に用いた場合であっても剥離の際に被着体をより損傷し難くすることができる。被着体の損傷を更に抑える観点から、上記ソフトブロックの酸価は50mgKOH/g以下であることがより好ましい。上記ソフトブロックの酸価の下限は、0mgKOH/gであればよいが、粘着テープの意図せぬ剥離を抑え易い観点から、好ましくは2mgKOH/g、より好ましくは5mgKOH/g、更に好ましくは10mgKOH/g、更により好ましくは15mgKOH/g、特に好ましくは20mgKOH/gである。
なお、ここで、ブロック共重合体の酸価とは、ブロック共重合体1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数のことである。
【0018】
上記ソフトブロックが架橋されている場合、上記ブロック共重合体は、酸価が75mgKOH/g以下であることが好ましい。
ブロック共重合体全体の酸価が上記範囲であることで、粘着力が適度に低下し、粘着テープを薄い被着体に用いた場合であっても剥離の際に被着体をより損傷し難くすることができる。被着体の損傷を更に抑える観点から、架橋時の上記ブロック共重合体の酸価は65mgKOH/g以下であることがより好ましい。架橋時の上記ブロック共重合体の酸価の下限は、0mgKOH/g以上であればよいが、粘着テープの意図せぬ剥離を抑える観点から、好ましくは1mgKOH/g、より好ましくは5mgKOH/g、更に好ましくは10mgKOH/gである。
【0019】
上記ブロック共重合体は上記ハードブロックを10~35重量%含有することが好ましい。上記ハードブロックの含有量が10重量%以上であることで、糊カスの発生をより抑えることができる。上記ハードブロックの含有量が35重量%以下であることで、表面抵抗値が低くなり、帯電防止性能を向上させることができる。帯電防止性能をより向上させる観点から、上記ブロック共重合体中における上記ハードブロックの含有量のより好ましい上限は30重量%、更に好ましい上限は26重量%、糊カスをより押さえる観点から、上記ブロック共重合体中における上記ハードブロックの含有量のより好ましい下限は12重量%、更に好ましい下限は14重量%である。
【0020】
上記ブロック共重合体の重合平均分子量は、5万~20万であることが好ましい。
ブロック共重合体の重量平均分子量が上記範囲であることで、帯電防止剤を配合した場合に透明性を維持することができる。上記ブロック共重合体の重合平均分子量のより好ましい下限は8万、より好ましい上限は18万である。
【0021】
上記ブロック共重合体を得るには、ハードブロック及びソフトブロックの原料モノマーを、重合開始剤の存在下にてそれぞれラジカル反応させてハードブロック及びソフトブロックを得た後、両者を共重合するか、上記方法でハードブロックを得た後、続けてソフトブロックの原料モノマーを投入し、共重合すればよい。上記ラジカル反応をさせる方法、即ち、重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
【0022】
上記粘着剤層は架橋剤を含有することが好ましい。
架橋剤によって上記ブロック共重合体中の架橋性官能基を架橋することで、粘着力が適度に低下し、粘着昂進も抑えられるため、粘着テープを薄い被着体に用いた場合であっても、剥離の際に被着体をより損傷し難くすることができる。上記架橋剤は上記架橋性官能基の種類に応じて適宜用いることができる。上記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。なかでも、より被着体の損傷を抑えられることからエポキシ系架橋剤が好ましい。
【0023】
ソフトブロックが架橋性官能基を有するモノマーに由来する構造を有していない場合は、上記架橋剤の含有量は特に限定されない。ソフトブロックが架橋性官能基を有するモノマーに由来する構造を有している場合は、被着体の損傷を更に抑える観点から、上記ブロック共重合体100重量部に対する上記架橋剤の配合量の好ましい下限が2重量%、より好ましい下限が3重量%であり、好ましい上限が10重量%、より好ましい上限が7.5重量%、更に好ましい上限が5重量%である。
【0024】
上記粘着剤層は、離型剤、酸化防止剤、耐候剤、結晶核剤等の添加剤や、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、エラストマー等の樹脂改質剤等を含有してもよい。
【0025】
上記粘着剤層は、周波数10Hz、温度-40℃時の貯蔵弾性率G’が1×10Pa以上であることが好ましい。
粘着剤層が-40℃において上記範囲の貯蔵弾性率であることで、より糊カスの発生を抑えることができる。更に糊カスを抑える観点から、上記粘着剤層の貯蔵弾性率のより好ましい下限は1.5×10Pa、更に好ましい下限は2×10Pa以上、更により好ましい下限は2.5×10Pa以上である。上記粘着剤層の貯蔵弾性率の上限は特に限定されないが、加工時の糊カスを抑制できる観点から、好ましくは1×10Pa、より好ましくは9×10Pa、さらに好ましくは8×10Pa、さらにより好ましくは7.5×10Paである。なお、上記貯蔵弾性率は動的粘弾性測定装置(例えば、アイティー計測制御社製、DVA-200)を用いて動的粘弾性測定のせん断モード、角周波数10Hz、昇温速度5℃/minの条件で-50℃から200℃まで測定を行った際の、-40℃での値として求めることができる。
【0026】
上記粘着剤層は、表面抵抗値が1.0×1012Ω/□以下であることが好ましい。
粘着剤層表面の抵抗値が上記範囲であることで、静電気による被着体の破損を抑えることができる。静電気による被着体の破損を更に抑える観点から、上記表面抵抗値のより好ましい上限は5.0×1011Ω/□、更に好ましい上限は1.0×1011Ω/□、更により好ましい上限は7.0×1010Ω/□、特に好ましい上限は5.0×1010Ω/□、とりわけ好ましい上限は3.0×1010Ω/□、なお好ましい上限は1.0×1010Ω/□である。上記表面抵抗値の下限は特に限定されず、低いほど良いものであるが、例えば1.0×10Ω/□である。上記表面抵抗値は、後述する帯電防止剤を基材及び/又は粘着剤層に用いることで調節することができる。上記表面抵抗値はJIS K7194に準ずる方法により測定することができる。
【0027】
上記粘着剤層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は1.0μm、より好ましい下限は2.0μm、さらに好ましい下限値は3.0μmであり、好ましい上限は200μm、より好ましい上限は100μm、更に好ましい上限は50μm、更により好ましい上限は20μmである。上記粘着剤層の厚さがこの範囲内であると、被着体に対する充分な粘着力と取り扱い性とを両立することができる。
【0028】
本発明の粘着テープは、上記基材及び/又は上記粘着剤層に帯電防止剤を含有することが好ましい。
本発明の粘着テープが帯電防止剤を含有することで、静電気に弱い被着体の保護に本発明の粘着テープを好適に用いることができるようになる。上記帯電防止剤は特に限定されず、例えば、イオン性液体、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤等が挙げられる。なかでも、表面抵抗値の調整が行いやすいことからイオン性液体が好ましい。
【0029】
上記帯電防止剤の含有量は特に限定されない。上記基材が上記帯電防止剤を有する場合、上記基材中における帯電防止剤の含有量の好ましい下限が5重量%、より好ましい下限が10重量%、好ましい上限が50重量%である。また、上記粘着剤層が上記帯電防止剤を含有する場合、上記粘着剤層中における帯電防止剤の含有量の好ましい下限が2.5重量%、より好ましい下限が5重量%、更に好ましい下限は7.5重量%であり、好ましい上限が20重量%、より好ましい上限が15重量%、更に好ましい上限は12重量%である。
【0030】
本発明の粘着テープは、ヘイズ値が2%以下である。
粘着テープのヘイズ値が2%以下であることで、粘着テープを貼り付けたままアライメント等の光を用いた工程を行うことができる。上記ヘイズ値は1.5%以下であることがより好ましい。上記ヘイズ値は、基材の種類や粘着剤と帯電防止剤との組み合わせによって調節することができる。なお、ヘイズ値はヘイズメーター(例えば、日本電色工業社製、NDH 4000等)を用いることで測定することができる。
【0031】
本発明の粘着テープは、初期粘着力が0.2N/25mm以下であり、粘着テープをPMMA(ポリメタクリル酸メチル)板に貼り合わせて、温度60℃、湿度90%の条件で3日間経過した後の粘着力(以下、経時後の粘着力ともいう)が0.4N/25mm以下であることが好ましい。
粘着テープの初期粘着力が上記範囲かつ、経時後の粘着力が上記範囲であると、被着体の保護に必要な最低限度の粘着力を確保しながらも接着亢進し難い粘着テープとなる。その結果、薄い被着体の保護に用いた場合であっても被着体を充分に保護できるとともに、剥離時には被着体の損傷を抑えることができる。被着体の損傷を更に抑える観点から、上記初期粘着力のより好ましい上限は0.15N/25mm、更に好ましい上限は0.1N/25mmである。上記初期粘着力の下限は特に限定されないが、意図せぬ剥離を抑止する観点から0.03N/25mmであることが好ましい。また、被着体の損傷を更に抑える観点から、上記経時後の粘着力のより好ましい上限は0.3N/25mm、更に好ましい上限は0.2N/25mmである。上記経時後の粘着力の下限は特に限定されないが、意図せぬ剥離を抑止する観点から0.1N/25mmであることが好ましい。上記粘着力は、上記ソフトブロックに上記酸を有するモノマーに由来する構造を導入することで調節することができる。なお、上記初期粘着力及び経時後の粘着力は、JIS Z 0237に準拠して180°剥離試験を行うことで求めることができる。
【0032】
本発明の保護フィルムを製造する方法は特に限定されず、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、ハードブロックの原料モノマーを溶媒中で重合させてハードブロックを得る。次いで単離したハードブロックを溶媒に溶かし、ソフトブロックの原料モノマーを投入して重合させてブロック共重合体溶液を調製する。次いで、得られたブロック共重合体溶液に必要に応じて帯電防止剤や架橋剤等の添加剤を配合して粘着剤溶液を得る。その後、離型フィルム上に得られた粘着剤溶液を塗布して乾燥させることで粘着剤層を形成し、基材と貼り合わせることで本発明の粘着テープを製造することができる。
【0033】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、微粘着でありながら被着体に貼り付けたまま打ち抜き加工等を行っても糊カスが発生し難いことから、タッチパネルや液晶、有機ELディスプレイ等の薄く損傷しやすい電子部品の保護テープとして特に好適に用いることができる。
このような電子部品の保護用に使用される本発明の粘着テープもまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、微粘着でありながらも加工時に糊カスが発生し難い粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0036】
(RAFT剤の製造)
1,6-ヘキサンジチオール0.902gと、二硫化炭素1.83gと、ジメチルホルムアミド11mLとを2口フラスコに投入し、25℃で攪拌した。これに、トリエチルアミン2.49gを15分かけて滴下し、25℃で3時間攪拌した。次いで、メチル-α-ブロモフェニル酢酸2.75gを15分かけて滴下し、25℃で4時間攪拌した。その後、反応液に抽出溶媒(n-ヘキサン:酢酸エチル=50:50)100mLと水50mLとを加えて分液抽出した。1回目と2回目の分液抽出で得られた有機層を混合し、1M塩酸50mL、水50mL、飽和食塩水50mLで順に洗浄した。洗浄後の有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥した後、硫酸ナトリウムをろ過し、ろ液をエバポレーターで濃縮して、有機溶媒を除去した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製することでRAFT剤を得た。
【0037】
(実施例1)
(1)ブロック共重合体の調製
スチレン13.2gと、アクリル酸(Aac)1.8gと、RAFT剤1.0gと、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(ABN-E)0.2gとを反応器に投入し、反応器内を窒素ガスで置換しながら85℃に昇温した。その後、85℃で6時間撹拌して重合反応を行った(第一段階反応)。
反応終了後、フラスコ内にn-ヘキサン4000gを投入し、撹拌して反応物を沈殿させた後、未反応のモノマー、およびRAFT剤をろ別し、反応物を70℃で減圧乾燥して共重合体(ハードブロック)を得た。
次いで、アクリル酸ブチル(BA)42.5g、アクリル酸メチル(MA)42.5g、ABN-E0.03g、及び酢酸エチル50gからなる混合物(ソフトブロック)と、先に得られた共重合体(ハードブロック)とを2口フラスコに投入し、フラスコ内を窒素ガスで置換しながら85℃に昇温した。その後、85℃で6時間撹拌して重合反応を行い、ハードブロック-ソフトブロック-ハードブロックのトリブロック構造を有するブロック共重合体を含む反応液を得た。その後、ろ別してブロック共重合体を単離した。
なお、上記混合物(ソフトブロック)とハードブロックの配合量は、得られるブロック共重合体中におけるハードブロックの含有量が15重量%となる量とした。また、ブロック共重合体全体に対する酸価は14.0mgKOH/gであった。更に、得られたブロック共重合体についてGPC法により重量平均分子量を測定したところ、435000であった。なお、測定の詳細は以下の通りとした。
測定機器:2690 Separations Module、Water社製
カラム:GPC KF-806L、昭和電工社製
溶媒:酢酸エチル
サンプル流量:1mL/min
カラム温度:40℃
【0038】
(2)粘着剤溶液の調製
得られたブロック共重合体30gを70gの酢酸エチルに溶かし、ブロック共重合体溶液に帯電防止剤を得られる粘着剤層中での含有量が6重量%となるように添加して粘着剤溶液を得た。なお、帯電防止剤は以下のものを用いた。
CIL-313:イオン性液体、日本カーリット社製
【0039】
(3)粘着テープの製造
厚み50μmの離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの離型処理面上に、得られた粘着剤溶液を、乾燥後に粘着剤層の厚みが10μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させて粘着剤層を形成した。次いで、片面にコロナ処理が施された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを基材として用意した。PETフィルムのコロナ処理面に粘着剤層を貼り合わせて粘着テープを得た。
【0040】
(4)貯蔵弾性率G’の測定
上記方法で粘着剤層のみからなる測定サンプルを作製した。動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA-200)を用いて粘着剤層の貯蔵弾性率G’の測定を行った。なお、測定は、動的粘弾性測定のせん断モード、角周波数10Hzで昇温速度5℃/minの条件で-50℃から200℃まで行い、-40℃での貯蔵弾性率の値をG’とした。
【0041】
(5)表面抵抗値の測定
JIS K7194に準ずる方法により粘着テープの粘着剤層の表面抵抗率を測定した。測定にはハイレスタ-UX(三菱化学アナリティック社製)を用い、得られた粘着テープの粘着剤層を、一直線状に等間隔に配列した探針間隔5mmのプローブにて9点の表面抵抗値を測定し、その平均値を表面抵抗値として求めた。なお、測定条件は以下の通りとした。
印可電圧:10V
測定時間:30秒
測定環境:温度23℃、湿度50%
【0042】
(6)ヘイズの測定
粘着テープの測定サンプルについてヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH 4000)を用いてヘイズを測定した。なお、測定環境は温度23℃、湿度50%とした。
【0043】
(7)粘着力の測定
粘着テープを25mm幅にカットし、試験片を作製した。得られた試験片をPMMA(アクリライト透明L001、三菱レーヨン社製)に貼り付け、粘着テープ上を2kgのゴムローラーで1往復させて、測定サンプルを得た。その後、JIS Z 0237に準拠して剥離速度300mm/minで180°剥離試験を行い、初期粘着力を測定した。次いで、同様の方法で測定サンプルを作製した後、測定サンプルを温度60℃、湿度90%の環境下に3日間静置し、温度23℃、湿度50%の環境に1日静置した。その後、同様の180°剥離試験を行い、経時粘着力を測定した。
【0044】
(実施例2~22)
ブロック共重合体中の組成、ソフトブロックの組成及び粘着剤層の組成を表1、2に記載の通りとした以外は実施例1と同様にして粘着テープを製造し、各測定を行った。なお、表中の2-EHAは2-エチルへキシルアクリレートを、HEAはヒドロキシエチルアクリレートをそれぞれ指し、基材、架橋剤、帯電防止剤は以下のものを用いた。また、架橋剤は、粘着剤の固形分100重量部に、エポキシ系、イソシアネート系架橋剤を表1、2に記載の量となるように配合後、帯電防止剤を粘着剤の固形分100重量部に対して6重量%となるよう添加しその後攪拌した。
<基材>
帯電防止PET:ポリチオフェン表面処理PETフィルム、厚み:50μm、東洋クロス社製
<架橋剤>
L-45E:コロネートL-45E、イソシアネート系架橋剤、東ソー社製
E-50C:E-50Cエポキシ系架橋剤、綜研化学製
<帯電防止剤>
CIL-312:イオン性液体、日本カーリット社製
PEL-20A:リチウム帯電防止剤、日本カーリット社製
【0045】
(比較例1~5)
ブロック共重合体の代わりに以下の粘着剤を用い、粘着剤層の組成を表3に記載の通りとした以外は実施例1と同様にして粘着テープを製造し、各測定を行った。なお架橋剤HXは以下のものを用いた。
ウレタン粘着剤A:US-1353H、ライオンスペシャリティケミカルズ社製
ウレタン粘着剤B:U-250、ライオンスペシャリティケミカルズ社製
アクリル粘着剤A:2030U、綜研化学社製
アクリル粘着剤B:1498B綜研化学社製
アクリル粘着剤C:1499M、綜研化学社製
HX:コロネートHX、イソシアネート系架橋剤、東ソー社製
【0046】
<評価>
実施例、比較例で得られた粘着テープについて以下の評価を行った。結果を表1~3に示した。
【0047】
(糊カスの発生の評価)
粘着テープの粘着剤層を、カッターを用いて、粘着剤層に対するカッターの角度:45度、速度:3000mm/minで切った時に、糊カスがほとんど出なかった場合を「◎」、少量糊カスが出た場合を「○」、大量に糊カスが出た場合を「×」として糊カスの発生を評価した。カッターの替刃としてはNT―H型刃(薄刃0.25)品番BH-11Pを使用した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、微粘着でありながらも加工時に糊カスが発生し難い粘着テープを提供することができる。