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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】試料測定装置および試料測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20230913BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N21/27 B
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019031055
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2020134414
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100203862
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 香代子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一浩
(72)【発明者】
【氏名】山本 毅
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203148850(CN,U)
【文献】米国特許第06181414(US,B1)
【文献】特開2018-055113(JP,A)
【文献】特開2015-111143(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169770(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0268573(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に照射光を照射し、前記試料中の粒子から光を生じさせる照射部と、
前記試料中の粒子から生じた光が入射する入射面と、入射した光を選択的に反射する反射面と、前記反射面により反射した光を出射する出射面と、を有する複数のプリズムが互いに接合された光学ブロックと、
前記複数のプリズムの前記出射面から出射したそれぞれの光を受光するための共通の受光面を有する受光部と、を備え、
前記複数のプリズムは、前記光学ブロックに入射する際の光の進行方向に沿って配置され、
前記複数のプリズムの前記反射面は、前記光の進行方向に沿って配置され、前記光の進行方向に対して同じ方向に傾いており、
前記複数のプリズムの前記出射面は、前記光の進行方向に並ぶように配置され、
前記複数のプリズムの前記出射面から出射されたそれぞれの光の受光領域が前記共通の受光面上で分離されるように、前記複数のプリズムの前記出射面の傾きが調整されている、
試料測定装置。
【請求項2】
前記光学ブロックは、前記複数のプリズムが接合され一体的に形成されている、請求項1に記載の試料測定装置。
【請求項3】
前記複数のプリズムの前記反射面は、前記光学ブロックに入射する際の光の進行方向に対して同じ角度で傾いている、請求項1または2に記載の試料測定装置。
【請求項4】
前記複数のプリズムの前記出射面は、異なる波長の光をそれぞれ対応する受光領域に向かって出射する、請求項1ないしの何れか一項に記載の試料測定装置。
【請求項5】
前記複数のプリズムの前記出射面は、前記光学ブロックに入射する際の光の進行方向に対して異なる角度で傾いている、請求項に記載の試料測定装置。
【請求項6】
前記複数のプリズムの前記反射面の間隔は、前記反射面で反射された光が、対応する出射面に隣り合う他の出射面に入射しない幅を有する、請求項またはに記載の試料測定装置。
【請求項7】
前記プリズムは、透過性のガラスまたは樹脂からなる、請求項1ないしの何れか一項に記載の試料測定装置。
【請求項8】
前記反射面は、所定の波長の光を反射して前記所定の波長以外の光を透過する、請求項1ないしの何れか一項に記載の試料測定装置。
【請求項9】
前記受光部は、TDIカメラまたはCCDカメラである、請求項1ないしの何れか一項に記載の試料測定装置。
【請求項10】
前記照射光が照射された前記試料中の粒子から生じた光のビームサイズを縮小および平行光化して前記光学ブロックに光を導く縮小光学系を備える、請求項1ないしの何れか一項に記載の試料測定装置。
【請求項11】
前記縮小光学系は、前記試料中の粒子から生じた光を集光する第1レンズと、前記第1レンズにより集光された光を前記平行光に変換して前記光学ブロックへと導く第2レンズと、を備える、請求項10に記載の試料測定装置。
【請求項12】
前記第1レンズおよび前記第2レンズは、凸レンズである、請求項11に記載の試料測定装置。
【請求項13】
前記第1レンズにより集光された光の収束位置に配置され、前記第1レンズにより集光された光以外の不要な光を除去するための絞りを備える、請求項12に記載の試料測定装置。
【請求項14】
前記複数のプリズムの前記反射面によって反射された異なる波長の光を、それぞれ前記受光部に収束させる第3レンズを備える、請求項1ないし13の何れか一項に記載の試料測定装置。
【請求項15】
前記照射光が照射された前記試料中の粒子から生じた光を集光する対物レンズを備える、請求項1ないし14の何れか一項に記載の試料測定装置。
【請求項16】
前記受光部は、前記異なる受光領域において、前記粒子の明視野画像および蛍光画像をそれぞれ撮像する、請求項1ないし15の何れか一項に記載の試料測定装置。
【請求項17】
前記複数のプリズムの前記反射面のうち端に配置された反射面は、前記明視野画像用の光を反射する、請求項16に記載の試料測定装置。
【請求項18】
前記照射光に含まれる所定の波長の光を遮断するフィルターを備える、請求項1ないし17の何れか一項に記載の試料測定装置。
【請求項19】
前記受光部は、前記異なる受光領域において、前記粒子の明視野画像および蛍光画像をそれぞれ撮像し、
前記フィルターは、前記光学ブロックと前記受光部の間に配置され、前記蛍光画像用の光が通る位置で前記明視野画像用の光を遮断する、請求項18に記載の試料測定装置。
【請求項20】
前記試料が流されるフローセルを備え、
前記照射部は、前記フローセルを流れる前記試料に前記照射光を照射する、請求項1ないし19の何れか一項に記載の試料測定装置。
【請求項21】
前記粒子は細胞であり、
前記受光部は、前記照射光が照射された前記細胞から、互いに異なる複数波長の蛍光を受光する、請求項1ないし20の何れか一項に記載の試料測定装置。
【請求項22】
試料に照射光を照射し、
前記照射光が照射された前記試料中の粒子から生じた光が入射する入射面と、入射した光を選択的に反射する反射面と、前記反射面により反射した光を出射する出射面と、を有する複数のプリズムが互いに接合された光学ブロックに、前記試料中の粒子から生じた光を入射させ、
前記複数のプリズムの前記出射面から出射したそれぞれの光を共通の受光面上の対応する受光領域に導
前記複数のプリズムは、前記光学ブロックに入射する際の光の進行方向に沿って配置され、
前記複数のプリズムの前記反射面は、前記光の進行方向に沿って配置され、前記光の進行方向に対して同じ方向に傾いており、
前記複数のプリズムの前記出射面は、前記光の進行方向に並ぶように配置され、
前記複数のプリズムの前記出射面から出射されたそれぞれの光の受光領域が前記共通の受光面上で分離されるように、前記複数のプリズムの前記出射面の傾きが調整されている、
試料測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を測定する試料測定装置および試料測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中の細胞の蛍光画像を取得し、試料の測定を行う試料測定装置が知られている。特許文献1に記載の試料測定装置(蛍光画像分析装置600)は、図16に示すように、4枚のダイクロイックミラーが組み合わせられた構成を有する光学ユニット610を備えている。光学ユニット610の4枚のダイクロイックミラーは、試料に光が照射されることにより試料中の粒子から生じた異なる波長の4種類の光を、互いに僅かに異なる角度で反射し、撮像部620の受光面上において分離させ、波長ごとの蛍光画像を取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-10018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような試料測定装置においては、光学ユニット610が備える複数のダイクロイックミラーによって反射された各波長の光が、撮像部620の受光面上の所望の位置に照射されるよう、装置の製造における組み立て時や装置の出荷後のメンテナンス時に、複数のダイクロイックミラーに対して光軸合わせなどの位置調整が行われている。
【0005】
図17に示すように、上記の光学ユニット610は、たとえば、ダイクロイックミラー611aを保持するプレート611を4枚備えており、作業者は、プレート611に設けられたピン611bを回転させることにより、プレート611に保持されたダイクロイックミラー611aの回転位置を調整する。4枚のプレート611はそれぞれ独立してダイクロイックミラー611aを保持しており、作業者は、4枚のプレート611に対してそれぞれ個別にダイクロイックミラー611aの位置調整を行う。
【0006】
本発明は、試料測定装置の光学ユニットに関し、組み立てやすさやメンテナンス性をより向上できる試料測定装置および試料測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、試料測定装置に関する。図1を参照し、本態様に係る試料測定装置(10)は、試料に照射光を照射し、試料中の粒子から光を生じさせる照射部(100)と、試料中の粒子から生じた光が入射する入射面と、入射した光を選択的に反射する反射面(201~206)と、反射面(201~206)により反射した光を出射する出射面(212、222、232、242、252、262)と、を有する複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)が互いに接合された光学ブロック(200)と、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の出射面(212、222、232、242、252、262)から出射したそれぞれの光を受光するための共通の受光面(311、511、521)を有する受光部(300)と、を備える。複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)は、光学ブロック(200)に入射する際の光の進行方向に沿って配置され、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の反射面(201~206)は、前記光の進行方向に沿って配置され、前記光の進行方向に対して同じ方向に傾いており、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の出射面(212、222、232、242、252、262)は、前記光の進行方向に並ぶように配置され、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の出射面(212、222、232、242、252、262)から出射されたそれぞれの光の受光領域が共通の受光面(311、511、521)上で分離されるように、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の出射面(212、222、232、242、252、262)の傾きが調整されている。
【0008】
光学ブロック(200)とは、一部または全部がほぼ均質な透過性の材料で構成され光を透過すると共に、光学ブロック(200)内および外部空間を進む光の速さの違いを用いて光を屈折させる光学部品のことである。光学ブロック(200)を構成するプリズム(210、220、230、240、250、260、270)は、たとえば、ガラス、樹脂、水晶などからなる。
【0009】
本態様に係る試料測定装置(10)によれば、たとえば、試料中の粒子から生じた互いに異なる複数の波長の光が光学ブロック(200)に設けられた複数の反射面(201~206)によりそれぞれ反射され、受光部(300)にそれぞれ導かれる。複数の波長の光に対して共通の光学ブロック(200)を用いることにより、各波長の光を受光部(300)にそれぞれ導くための個別のダイクロイックミラー等を用いる必要がない。反射面(201~206)を備える複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)が互いに接合された光学ブロック(200)を設けることで、各反射面(201~206)同士がなす角度が固定されるため、このような光学ユニットにおいて、複数の波長毎に個別に複数の光学部品の光軸合わせなどの調整が不要になる。よって、試料測定装置の組み立て時やメンテナンス時の作業負担を軽減できる。
【0010】
本態様に係る試料測定装置(10)において、光学ブロック(200)は、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)が接合され一体的に形成され得る。「複数のプリズムが一体的に形成されている」とは、光が光学ブロック(200)の複数の反射面(201~206)を通る際に、各プリズムの外部(空気)を通らないことを指す。複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)が一体的に形成されることにより、光学ブロック(200)の複数の反射面(201~206)の角度の関係が変化しなくなる。また、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)が一体的に形成されているため、複数の反射面(201~206)が外部(空気)に出ることがない。これにより、複数の反射面(201~206)で反射された各光の光軸が、所望の方向から想定外にずれることを抑制できる。よって、受光部(300)の所望の受光領域に届く光が減少することを抑制できる。
【0015】
本態様に係る試料測定装置(10)において、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の反射面(201~206)は、光学ブロック(200)に入射する際の光の進行方向に対して同じ角度で傾くよう構成され得る。
【0017】
本態様に係る試料測定装置(10)において、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の出射面(212、222、232、242、252、262)は、異なる波長の光をそれぞれ対応する受光領域(321~326)に向かって出射するよう構成され得る。こうすると、複数の出射面の形状を調整することにより、各波長の光を受光部(300)の対応する受光領域に導くことができる。
【0018】
この場合に、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の出射面(212、222、232、242、252、262)は、光学ブロック(200)に入射する際の光の進行方向に対して異なる角度で傾くよう構成され得る。こうすると、複数の出射面(212、222、232、242、252、262)の角度を調整することにより、各波長の光を受光部(300)の対応する受光領域に導くことができる。
【0019】
また、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の反射面(201~206)の間隔は、反射面(201~206)で反射された光が、対応する出射面(212、222、232、242、252、262)に隣り合う他の出射面(212、222、232、242、252、262)に入射しない幅を有するよう構成され得る。こうすると、各波長の光が受光部(300)の受光領域において重なることを抑制できる。よって、各波長の光に基づく信号を精度よく取得できる。
【0020】
本態様に係る試料測定装置(10)において、プリズム(210、220、230、240、250、260、270)は、透過性のガラスまたは樹脂からなるよう構成され得る。
【0021】
本態様に係る試料測定装置(10)において、反射面(201~206)は、所定の波長の光を反射して所定の波長以外の光を透過し得る。
【0024】
本態様に係る試料測定装置(10)において、受光部(300)は、TDIカメラまたはCCDカメラとされ得る。
【0025】
本態様に係る試料測定装置(10)は、照射光が照射された試料中の粒子から生じた光のビームサイズを縮小および平行光化して光学ブロック(200)に光を導く縮小光学系(400)を備えるよう構成され得る。こうすると、光学ブロック(200)のサイズを小型化できる。よって、試料測定装置(10)の全体のサイズを小さくできる。
【0026】
この場合に、縮小光学系(400)は、試料中の粒子から生じた光を集光する第1レンズ(41)と、第1レンズ(41)により集光された光を平行光に変換して光学ブロック(200)へと導く第2レンズ(42)と、を備えるよう構成され得る。こうすると、第1レンズ(41)の焦点距離を第2レンズ(42)の焦点距離よりも大きくすることにより、受光部(300)の受光面上における像を大きく設定できる。
【0027】
この場合に、第1レンズ(41)および第2レンズ(42)は、凸レンズとされ得る。
【0028】
この場合に、本態様に係る試料測定装置(10)は、第1レンズ(41)により集光された光の収束位置に配置され、第1レンズ(41)により集光された光以外の不要な光を除去するための絞り(32)を備えるよう構成され得る。こうすると、余分な光を除去できる。
【0029】
本態様に係る試料測定装置(10)は、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の反射面(201~206)によって反射された異なる波長の光を、それぞれ受光部(300、510、520)に収束させる第3レンズ(43、501、502)を備えるよう構成され得る。こうすると、ビームサイズを縮小する縮小光学系(400)を用いることにより、第3レンズ(43、501、502)の焦点距離を小さく設定できる。これにより、第3レンズ(43、501、502)から受光部(300、510、520)までの距離を小さくできるため、この方向における試料測定装置(10)の幅を小さくできる。
【0030】
本態様に係る試料測定装置(10)は、照射光が照射された試料中の粒子から生じた光を集光する対物レンズ(31)を備えるよう構成され得る。
【0031】
本態様に係る試料測定装置(10)において、受光部(300、510、520)は、異なる受光領域(321~326、531~536)において、粒子の明視野画像および蛍光画像をそれぞれ撮像するよう構成され得る。
【0032】
この場合に、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の反射面(201~206)のうち端に配置された反射面(206)は、明視野画像用の光を反射するよう構成され得る。
【0033】
本態様に係る試料測定装置(10)は、照射光に含まれる所定の波長の光を遮断するフィルター(33、34)を備えるよう構成され得る。照射光に含まれる所定の波長の光は、試料から生じた各波長の光が入射する受光部(300)の受光面に入射すると、この光は迷光となり、粒子から生じた光の測定精度が低下してしまう。これに対し、照射光に含まれる所定の波長の光を遮断するフィルターが設置されると、受光面に導かれる迷光を抑制できる。
【0034】
この場合に、受光部(300)は、異なる受光領域(321~326、531~536)において、粒子の明視野画像および蛍光画像をそれぞれ撮像し、フィルター(34)は、光学ブロック(200)と受光部(300、520)の間に配置され、蛍光画像用の光が通る位置で明視野画像用の光を遮断するよう構成され得る。
【0035】
本態様に係る試料測定装置(10)は、試料が流されるフローセル(20)を備え、照射部(100)は、フローセル(20)を流れる試料に照射光を照射するよう構成され得る。
【0036】
本態様に係る試料測定装置(10)において、粒子は細胞であり、受光部(300)は、照射光が照射された細胞から、互いに異なる複数波長の蛍光を受光するよう構成され得る。これにより、複数波長の蛍光に基づいて、細胞の分析を詳細に行うことができる。
【0037】
本発明の第2の態様は、試料測定方法に関する。本態様に係る試料測定方法は、試料に照射光を照射し、照射光が照射された試料中の粒子から生じた光が入射する入射面と、入射した光を選択的に反射する反射面(201~206)と、反射面(201~206)により反射した光を出射する出射面(212、222、232、242、252、262)と、を有する複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)が互いに接合された光学ブロック(200)に、試料中の粒子から生じた光を入射させ、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の出射面(212、222、232、242、252、262)から出射したそれぞれの光を共通の受光面(311、511、521)上の対応する受光領域(321~326、531~536)に導く。複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)は、光学ブロック(200)に入射する際の光の進行方向に沿って配置され、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の反射面(201~206)は、前記光の進行方向に沿って配置され、前記光の進行方向に対して同じ方向に傾いており、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の出射面(212、222、232、242、252、262)は、前記光の進行方向に並ぶように配置される。複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の出射面(212、222、232、242、252、262)から出射されたそれぞれの光の受光領域が共通の受光面(311、511、521)上で分離されるように、複数のプリズム(210、220、230、240、250、260、270)の出射面(212、222、232、242、252、262)の傾きが調整されている。
【0038】
本態様に係る試料測定方法によれば、第1の態様と同様の効果が奏される。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、試料測定装置の光学ユニットに関し、組み立てやすさやメンテナンス性をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、実施形態1に係る試料測定装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、実施形態1に係る試料測定装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態1に係る照射部の構成を示す模式図である。
図4図4は、実施形態1に係るプリズムの構成を示す模式図である。
図5図5(a)は、実施形態1に係るプリズムの組み立て前の状態を模式的に示す斜視図である。図5(b)は、実施形態1に係るプリズムの組み立てが完成した状態を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、実施形態1の変更例に係るプリズムの組み立て前の状態を模式的に示す斜視図である。
図7図7は、実施形態1に係る受光部の構成を示す模式図である。
図8図8(a)は、実施形態1に係る縮小光学系および測定部の光学系全体の総合倍率を説明するための模式図である。図8(b)は、比較例に係る縮小光学系および測定部の光学系全体の総合倍率を説明するための模式図である。
図9図9は、実施形態1の変更例に係る縮小光学系の構成を示す模式図である。
図10図10は、実施形態1に係る試料測定装置による測定動作を示すフローチャートである。
図11図11は、実施形態2に係る測定部の構成を示す模式図である。
図12図12は、実施形態3に係るプリズムの構成を示す模式図である。
図13図13は、実施形態4に係るプリズムの構成を示す模式図である。
図14図14は、実施形態4に係る測定部の構成を示す模式図である。
図15図15は、実施形態5に係る測定部の構成を示す模式図である。
図16図16は、関連技術に係る構成を説明するための模式図である。
図17図17は、関連技術に係る構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
<実施形態1>
図1は、試料測定装置10の構成を示す模式図である。図1において、XYZ軸は互いに直交しており、X軸方向およびY軸方向は水平面に平行な方向であり、Z軸正方向は鉛直下方向である。なお、他の図においても、XYZ軸は図1と同様に設定されている。
【0042】
試料測定装置10は、フローセル20の内部に形成された流路21を流れる試料に照射光を照射し、照射光が照射された試料中の粒子の画像を撮像するフローサイトメータである。試料測定装置10は、撮像した粒子の画像を分析することで、粒子や試料等の状態を測定することが可能となる。
【0043】
測定部63は、照射部100と、フローセル20と、対物レンズ31と、絞り32と、フィルター33、34と、第1レンズ41と、第2レンズ42と、第3レンズ43と、光学ブロック200と、受光部300と、を備える。
【0044】
照射部100は、フローセル20の内部に形成された流路21を流れる試料に照射光を照射する。照射光は、複数の波長λ11、λ12、λ13、λ6の光を含む。照射光が試料に照射されると、試料に含まれる粒子から散乱光や蛍光等の光が生じる。試料中の粒子から生じ得る光の波長は照射部100が照射する光の波長および試料中の粒子に施した蛍光標識等によりあらかじめ決まっている。粒子から生じる光は、第1波長の光、第2波長の光、第3波長の光、第4波長の光、第5波長の光、および第6波長の光を含む。第1波長の光、第2波長の光、第3波長の光、第4波長の光、第5波長の光、および第6波長の光を、それぞれ、以下、波長λ1の光、波長λ2の光、波長λ3の光、波長λ4の光、波長λ5の光、および波長λ6の光と称する。実施形態1において、「波長λの光」とは、中心波長λに対して所定範囲の波長の光を意味している。
【0045】
なお、図1では、試料に対してX軸正方向に照射光が照射されるよう図示しているが、フローセル20に対する照射光の照射方向はこれに限らない。図3を参照して後述するように、実施形態1では、蛍光を励起させるための照射光は、試料に対してY軸正方向に照射し、明視野画像を取得するための照射光は、試料に対してX軸正方向に照射している。
【0046】
フローセル20の内部には流路21がZ軸方向に形成されており、流路21にはZ軸正方向に試料が流される。対物レンズ31は、試料からX軸正側に生じた光を、平行光となるよう集光する。第1レンズ41は、凸レンズであり、対物レンズ31によって集光され平行光に変換された光を集光して、絞り32の位置で収束させる。第1レンズ41は、色収差を抑制するように構成されている。なお、第1レンズ41は、複数のレンズにより構成されてもよい。
【0047】
絞り32は、Y-Z平面に平行な平板であり、絞り32には、X軸方向に貫通する孔32aが形成されている。孔32aは、第1レンズ41により集光された光の収束位置に配置される。絞り32が配置されることにより、試料中の粒子から生じた光以外の不要な光、たとえば、フローセル20の外面などで反射した光等は、絞り32によって遮光され、試料中の粒子から生じた光のみが孔32aを通過して第2レンズ42へと導かれる。これにより、余分な光、すなわち試料中の粒子以外から生じた光を除去できる。なお、絞り32は、平板に限らず、孔32aの径を変更可能な絞り機構であってもよい。また、余分な光が特に問題にならない場合は、絞り32を省略してもよい。
【0048】
第2レンズ42は、凸レンズであり、絞り32の孔32aを通過した光を集光して平行光に変換し、光学ブロック200へと導く。第2レンズ42は、色収差を抑制するように構成されている。なお、第2レンズ42は、複数のレンズにより構成されてもよい。フィルター33は、試料中の粒子から生じた光のみを通過させる。具体的には、フィルター33の透過波長は、複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5、λ6の光がフィルター33を透過し、複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5、λ6以外の波長の光がフィルター33で遮断されるように設定される。なお、第2レンズ42とフィルター33との間に位相変調素子を配置し、拡大された被写界深度(Extended Depth of Focus : EDoF)が実現されるようにしてもよい。
【0049】
ここで、上述したように、試料に照射される照射光は、複数の波長λ11、λ12、λ13の光を含む。複数の波長λ11、λ12、λ13の光はビーム強度が高く、試料中の粒子から生じる複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5の光は、たとえば蛍光であり、照射光と比較してビーム強度が低いため、複数の波長λ11、λ12、λ13の光が受光部300の受光面311に入射すると、これらの光は迷光となり、粒子から生じた光の測定精度が低下してしまう。これに対し、複数の波長λ11、λ12、λ13の光を遮断するフィルター33が設置されると、受光面311に導かれる迷光を抑制できる。
【0050】
光学ブロック200とは、一部または全部がほぼ均質な透過性の材料で構成され光を透過すると共に、光学ブロック200内および外部空間を進む光の速さの違いを用いて光を屈折させる光学部品のことである。光学ブロック200は、後述するように複数のプリズムにより構成されている。光学ブロック200を構成するプリズムは、たとえば、ガラス、樹脂、水晶などからなる。光学ブロック200は、試料中の粒子から生じた光を透過する。
【0051】
光学ブロック200は、第1反射面、第2反射面、第3反射面、第4反射面、第5反射面、および第6反射面を備える。第1反射面、第2反射面、第3反射面、第4反射面、第5反射面、および第6反射面を、それぞれ、以下、反射面201、反射面202、反射面203、反射面204、反射面205、および反射面206と称する。第2レンズ42により平行光に変換された光は、X軸正方向に光学ブロック200に入射する。複数の反射面201~206は、光学ブロック200に入射する光の進行方向に沿って、この順に並んで配置されている。複数の反射面201~206は、互いに異なる波長の光を選択的に反射して、受光部300の異なる受光領域321~326に導く。
【0052】
ここで、「受光部の異なる受光領域に導く」とは、本実施形態のように、光学ブロック200を出る複数波長の光が第3レンズ43等の他の光学部品を介して間接的に受光部300のそれぞれの受光領域321~326に導かれてもよいし、直接受光部300におけるそれぞれの受光領域321~326に導かれてもよい。
【0053】
反射面201は、波長λ1の光を反射して波長λ1以外の光を透過する。反射面202は、波長λ2の光を反射して波長λ2以外の光を透過する。反射面203は、波長λ3の光を反射して波長λ3以外の光を透過する。反射面204は、波長λ4の光を反射して波長λ4以外の光を透過する。反射面205は、波長λ5の光を反射して波長λ5以外の光を透過する。反射面206は、波長λ6の光を反射して波長λ6以外の光を透過する。
【0054】
光学ブロック200は、Y軸正側において、第1出射面、第2出射面、第3出射面、第4出射面、第5出射面、および第6出射面を備える。第1出射面、第2出射面、第3出射面、第4出射面、第5出射面、および第6出射面を、それぞれ、以下、出射面212、出射面222、出射面232、出射面242、出射面252、および出射面262と称する。
【0055】
複数の出射面212、222、232、242、252、262は、それぞれ、複数の反射面201~206で反射された各波長の光を屈折させる。より詳細には、複数の出射面212、222、232、242、252、262は、それぞれ、内部を透過する複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5、λ6の光の進行方向が互いに異なるよう各光を屈折させ、複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5、λ6の光を、それぞれ、受光部300の対応する複数の受光領域321~326(図7参照)に向かって出射する。複数の出射面212、222、232、242、252、262の形状を調整することにより、各波長の光を受光部300の異なる受光領域321~326に導くことができる。
【0056】
また、光学ブロック200は、第1プリズム、第2プリズム、第3プリズム、第4プリズム、第5プリズム、第6プリズム、および第7プリズムを備える。第1プリズム、第2プリズム、第3プリズム、第4プリズム、第5プリズム、第6プリズム、および第7プリズムを、それぞれ、以下、プリズム210、プリズム220、プリズム230、プリズム240、プリズム250、プリズム260、プリズム270と称する。
【0057】
光学ブロック200は、7つのプリズム210、220、230、240、250、260、270が一体的に形成されることにより構成されている。「複数のプリズムが一体的に形成されている」とは、光が光学ブロック200の複数の反射面201~206を通る際に、各プリズムの外部(空気)を通らないことを指す。複数のプリズムが一体的に形成されることにより、光学ブロック200の複数の反射面201~206の角度の関係が変化しなくなる。6つの反射面201~206は、それぞれ、6つのプリズム220、230、240、250、260、270のX軸負側の斜面(試料中の粒子から生じた光が入射する入射面)に形成されている。光学ブロック200の詳細な構成については、追って図4図5(b)を参照して説明する。
【0058】
フィルター34は、複数の反射面201~205で反射された複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5の光が通る位置に配置されており、複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5の光が通る領域に漏れ出た波長λ6の光を遮断する。具体的には、フィルター34の透過波長は、複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5の光がフィルター34を透過し、複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5以外の波長の光がフィルター34で遮断されるように構成される。また、フィルター34は、受光部300の受光領域326に向かって波長λ6の光が通る位置から外れた位置に配置されている。
【0059】
ここで、波長λ6の光は、照射光として試料に照射され、試料中の粒子を透過した光である。このため、波長λ6の光のビーム強度は、たとえば蛍光等の、試料中の粒子から生じる複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5の光のビーム強度より高い。このため、波長λ6の光が、複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5の光に対応した受光部300の5つの受光領域321~325に入射すると、この光は迷光となり、粒子から生じた光の測定精度が低下してしまう。これに対し、波長λ6の光を遮断するフィルター34が設置されると、複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5の5つの受光領域321~325に導かれる迷光を抑制できる。
【0060】
第3レンズ43は、光学ブロック200の複数の反射面201~205で反射されフィルター34を透過した複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5の光を、それぞれ受光部300に収束させる。また、第3レンズ43は、光学ブロック200の反射面206で反射された波長λ6の光を、受光部300に収束させる。第3レンズ43は、色収差を抑制するように構成されている。なお、第3レンズ43は、複数のレンズにより構成されてもよい。
【0061】
なお、実施形態1では、試料から生じた光が平行光として光学ブロック200に入射したが、試料から生じた光が集光する光として光学ブロック200に入射してもよい。この場合、第3レンズ43を省略できる。
【0062】
受光部300は、光学ブロック200を経由した複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5、λ6の光を、それぞれ、互いに異なる受光領域321~326において受光する。受光部300は、TDI(Time Delay Integration)カメラである。受光部300は、光学ブロック200を経由した各波長の光を撮像して、各波長の光にそれぞれ対応した撮像画像を生成する。複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5の光は、後述するように標的部位を染色する蛍光色素から生じた蛍光であるため、複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5の光に基づく撮像画像は蛍光画像である。波長λ6の光は、粒子を透過した光であるため、波長λ6の光に基づく撮像画像は明視野画像である。なお、受光部300は、CCDカメラ等の他のカメラでもよい。ただし、受光部300がTDIカメラであると、標的部位に基づく撮像画像をより精度よく取得できる。
【0063】
以上のように、互いに異なる複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5、λ6の光が試料中の粒子から生じた場合、これらの光が光学ブロック200に設けられた複数の反射面201~206によりそれぞれ反射され、受光部300の異なる受光領域321~326にそれぞれ導かれる。複数の波長の光に対して共通の光学ブロック200を用いることにより、各波長の光を異なる受光領域321~326にそれぞれ導くための個別のダイクロイックミラー等を用いる必要がない。複数の反射面201~206が一体的に形成された光学ブロック200を設けることで、各反射面同士がなす角度が固定されるため、複数の波長毎に個別に複数の光学部品の光軸合わせなどの調整が不要になる。よって、試料測定装置10の組み立て時やメンテナンス時の作業負担を軽減できる。
【0064】
また、複数のプリズム210、220、230、240、250、260、270が一体的に形成されているため、複数の反射面201~206が外部(空気)に出ることがない。これにより、複数の反射面201~206で反射された各光の光軸が、所望の方向から想定外にずれることを抑制できる。よって、受光部300の所望の受光領域に届く光が減少することを抑制できる。
【0065】
なお、上記の説明では、フローセル20の流路21を流れる試料に対して、照射光として、同時に複数の波長λ11、λ12、λ13、λ6を含む光が照射され、試料から複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5、λ6の光が生じ得る例を挙げたが、これに限らない。同時に照射する光は、後述する標的部位を染色する蛍光色素の種類や染色する標的部位の数、および、明視野画像の取得の有無などに応じて決められればよく、複数の波長λ11、λ12、λ13、λ6の少なくとも1つの光が照射光として照射されればよい。この場合、照射光として試料に照射された光の波長に応じて、複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5、λ6の光のうち少なくとも1つの光が試料中の粒子から生じることになる。
【0066】
図2は、試料測定装置10の構成を示すブロック図である。
【0067】
前処理ユニット50は、被検者から検体として採取された全血に対して所定の処理を行って、白血球を測定対象の粒子として抽出する。なお、被検者から採取される検体は、生体から採取した全血のほか、血漿、脳脊髄液、組織液、尿であってもよい。測定対象の粒子は、白血球に限らず、たとえば上皮細胞など他の細胞でもよく、小胞体のエクソソームなどでもよい。
【0068】
また、前処理ユニット50は、染色試薬を用いて、測定対象となる粒子の標的部位を蛍光色素で染色する。標的部位は、測定対象となる粒子内の核や遺伝子、および、測定対象となる粒子の表面のポリペプチドなどである。なお、核は、核染色用の蛍光色素により特異的に染色できる。遺伝子および粒子表面のポリペプチドは、蛍光色素を含む標識抗体とハイブリダイズさせることにより染色できる。実施形態1では、λ1、λ2、λ3、λ4、λ5の5種類の波長の蛍光画像を取得できるため、粒子内の核、粒子内の所定の遺伝子、および、粒子表面の所定のポリペプチドなどから、標的部位を最大5つまで選択できる。
【0069】
5つの標的部位が選択された場合、5つの標的部位をP1~P5とすると、標的部位P1は、波長λ11の励起光が照射されることにより波長λ1の蛍光を生じる蛍光色素により染色される。標的部位P2は、波長λ11の励起光が照射されることにより波長λ2の蛍光を生じる蛍光色素により染色される。標的部位P3は、波長λ12の励起光が照射されることにより波長λ3の蛍光を生じる蛍光色素により染色される。標的部位P4は、波長λ12の励起光が照射されることにより波長λ4の蛍光を生じる蛍光色素により染色される。標的部位P5は、波長λ13の励起光が照射されることにより波長λ5の蛍光を生じる蛍光色素により染色される。複数の波長λ11、λ12、λ13、λ1、λ2、λ3、λ4、λ5、λ6は、互いに異なる波長である。
【0070】
試料測定装置10は、前処理ユニット50による前処理により調製された試料を測定して分析を行う。制御部61は、たとえば、CPUである。記憶部62は、たとえば、ROM、RAM、ハードディスクである。制御部61は、記憶部62に記憶されたプログラムやデータに従って、試料測定装置10内の各部を制御する。
【0071】
測定部63は、図1に示した各種の光学部品と、図3を参照して後述する各種の光学部品と、を備える。制御部61は、測定部63の4つの光源101~104(図3参照)と、フローセル20の流路21(図1、3参照)に試料を流すための機構と、受光部300(図1参照)などを駆動して試料の測定を行う。制御部61は、受光部300により生成される撮像画像を取得し、取得した撮像画像を記憶部62に記憶させる。制御部61は、取得した撮像画像に基づいて試料を分析し、分析結果を表示部64に表示する。表示部64は、たとえば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等である。入力部65は、たとえば、マウスやキーボードである。
【0072】
上述したように、測定対象である試料中の白血球の5つの部位P1~P5が蛍光標識され、受光部300は、5つの部位P1~P5から生じた互いに異なる複数波長の蛍光を受光する。これにより、制御部61は、複数波長の蛍光に基づいて、測定対象の白血球の分析を詳細に行うことができる。
【0073】
図3は、照射部100の構成を示す模式図である。
【0074】
照射部100は、4つの光源101~104と、4つの集光レンズ111~114と、2つのダイクロイックミラー121、122と、を備える。
【0075】
4つの光源101~104は、半導体レーザ光源である。4つの光源101~104から出射される光は、それぞれ、異なる4つの波長λ11、λ12、λ13、λ6のレーザ光である。4つの集光レンズ111~114は、それぞれ、4つの光源101~104から出射された光を集光する。ダイクロイックミラー121は、波長λ11の光を透過させ、波長λ12の光を反射する。ダイクロイックミラー122は、2つの波長λ11、λ12の光を透過させ、波長λ13の光を反射する。3つの波長λ11、λ12、λ13の光は、Y軸正方向にフローセル20の流路21に照射される。波長λ6の光は、X軸正方向にフローセル20の流路21に照射される。フローセル20の流路21には、測定対象となる粒子を含む試料が流される。
【0076】
フローセル20の流路21を流れる試料に3つの波長λ11、λ12、λ13の光が照射されると、試料に含まれる測定対象の粒子から蛍光が生じる。具体的には、粒子の5つの標的部位P1~P5から、それぞれ、5つの波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5の蛍光が生じる。また、フローセル20の流路21を流れる試料に波長λ6の光が照射されると、この光は、試料に含まれる測定対象の粒子を透過する。粒子を透過した波長λ6の光は、明視野画像の生成に用いられる。
【0077】
図4は、光学ブロック200の構成を示す模式図である。
【0078】
光学ブロック200は、上述したように複数の反射面201~206を備える。複数の反射面201~206は、光学ブロック200に入射する光の進行方向すなわちX軸正方向に対して、同じ方向に傾いている。すなわち、複数の反射面201~206は、いずれも、光が入射するX軸負側の面が、X-Y平面内においてY軸正側に向くように傾いている。また、複数の反射面201~206は、X-Y平面内において、X軸正方向に対して同じ角度θで傾いている。複数の反射面201~206がX軸正方向に対して同じ方向に傾くことにより、光学ブロック200の複数の反射面201~206で反射された光が一方向側に向かうため、光学ブロック200を経由した光を1つの受光部300によって容易に受光できる。よって、複数の受光部を配置する場合に比べて試料測定装置10を簡素に構成できる。
【0079】
光学ブロック200は、上述したように複数の出射面212、222、232、242、252、262を備える。実施形態1では、複数の出射面212、222、232、242、252、262が、それぞれ、X-Y平面内において、X軸正方向に対して角度θ11、θ12、θ13、θ14、θ15、θ16で傾く平面として構成される。そして、角度θ11、θ12、θ13、θ14、θ15、θ16は、互いに異なる角度である。こうすると、複数の出射面212、222、232、242、252、262の角度を調整することにより、各波長の光を受光部300の対応する受光領域に導くことができる。
【0080】
なお、複数の出射面212、222、232、242、252、262は、平面であることに限らず、レンズ面であってもよい。この場合、複数の出射面212、222、232、242、252、262を通過する各波長の光を収束させることができるため、第3レンズ43を省略することもできる。
【0081】
図5(a)は、光学ブロック200の組み立て前の状態を模式的に示す斜視図である。
【0082】
光学ブロック200は、上述したように7つのプリズム210、220、230、240、250、260、270が一体的に形成されることにより構成される。プリズム210の斜面213と、プリズム220の反射面201および斜面221と、プリズム230の反射面202および斜面231と、プリズム240の反射面203および斜面241と、プリズム250の反射面204および斜面251と、プリズム260の反射面205および斜面261と、プリズム270の反射面206とは、互いに平行である。プリズム210のX軸負側には、Y-Z平面に平行な入射面211が形成され、プリズム270のX軸正側には、Y-Z平面に平行な背面271が形成されている。
【0083】
複数のプリズム220、230、240、250、260、270のX軸負側の斜面(試料中の粒子から生じた光が入射する入射面)に、誘電体の多層膜などの薄膜が蒸着されることにより、それぞれ、複数の反射面201、202、203、204、205、206が形成される。蒸着する誘電体の多層膜の膜厚を変えることにより、各反射面において反射および透過する光の波長を調整できる。すなわち、複数の反射面201~206に形成されている誘電体の多層膜は、異なる厚みを有している。複数の反射面201は、いわゆるダイクロイック面であり、上述したように所定波長の光を反射して所定波長以外の光を透過する波長選択面である。
【0084】
複数の反射面201~206が形成された後、プリズム210の斜面213と反射面201とが接合され、プリズム220の斜面221と反射面202とが接合され、プリズム230の斜面231と反射面203とが接合され、プリズム240の斜面241と反射面204とが接合され、プリズム250の斜面251と反射面205とが接合され、プリズム260の斜面261と反射面206とが接合される。これにより、図5(b)に示すように、複数のプリズム210、220、230、240、250、260、270が一体的に形成された光学ブロック200が完成する。このような組み立て方法によれば、あらかじめ所望の形状となるように容易に光学ブロック200を構成できる。
【0085】
なお、複数のプリズム210、220、230、240、250、260、270の接合は、UV硬化接着剤等の接着剤を用いてもよいし、各プリズムの接合面を高精度研磨し、接合剤を使わずに接合面の表面分子間力により接合(オプティカルコンタクト)してもよい。
【0086】
また、波長選択面は、プリズム210の斜面213、プリズム220の斜面221、プリズム230の斜面231、プリズム240の斜面241、プリズム250の斜面251、および、プリズム260の斜面261に形成されてもよい。
【0087】
また、複数のプリズム210、220、230、240、250、260が、組み立て前の状態において、それぞれ、さらに2つのプリズムにより構成されてもよい。たとえば、図6に示すように、プリズム210は、2つのプリズム210a、210bにより構成され、プリズム220は、2つのプリズム220a、220bにより構成され、プリズム230は、2つのプリズム230a、230bにより構成され、プリズム240は、2つのプリズム240a、240bにより構成され、プリズム250は、2つのプリズム250a、250bにより構成され、プリズム260は、2つのプリズム260a、260bにより構成されてもよい。複数のプリズム210b、220b、230b、240b、250b、260bは、それぞれ、複数の出射面212、222、232、242、252、262を備え、三角柱の形状を有する。
【0088】
図6の状態から光学ブロック200を組み立てる際には、プリズム210aとプリズム210bの互いに向かい合う面を上述の図5(a)、(b)と同様の方法で接合する。同様に、プリズム220aとプリズム220bとが接合され、プリズム230aとプリズム230bとが接合され、プリズム240aとプリズム240bとが接合され、プリズム250aとプリズム250bとが接合され、プリズム260aとプリズム260bとが接合される。これにより、各プリズムが図5(a)と同様の状態になり、その後、図5(b)のように接合される。
【0089】
図7は、受光部300の構成を示す模式図である。
【0090】
受光部300は、上述したようにTDIカメラである。受光部300は、受光した光を撮像するための集積回路からなる撮像素子310を備える。撮像素子310には受光面311が設けられている。受光面311は、受光部300に入射した光を受光する面であり、信号を生成するための画素が配置された領域に対応する面である。受光面311には、6つの波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5、λ6の光をそれぞれ受光するための6つの異なる受光領域321~326が設定されている。異なる受光領域321~326は、それぞれZ軸方向に延びた矩形状であり、受光面311において互いに重ならないよう、幅方向に並んで設けられている。幅方向は、水平面および受光面311に平行な方向である。ここで、「異なる受光領域」とは、受光部300の受光面311上における、異なる位置に設けられた領域を意味している。
【0091】
図7において、左端の受光領域321は、蛍光画像用の波長λ1の蛍光を受光する。左から2番目の受光領域322は、蛍光画像用の波長λ2の蛍光を受光する。左から3番目の受光領域323は、蛍光画像用の波長λ3の蛍光を受光する。右から3番目の受光領域324は、蛍光画像用の波長λ4の蛍光を受光する。右から2番目の受光領域325は、蛍光画像用の波長λ5の蛍光を受光する。右端の受光領域326は、明視野画像用の波長λ6の光を受光する。
【0092】
6つの受光領域321~326に投影される測定対象となる粒子から生じる光の位置は、粒子がフローセル20の流路21をZ軸正方向に移動することに合わせて、白抜きの矢印で示すように、それぞれ6つの受光領域321~326内でZ軸正方向に移動する。図7の6つの受光領域321~326には、便宜上、測定対象となる粒子から生じた光の像が、点線で図示されている。6つの受光領域321~326の大きさは、測定対象となる粒子から生じた光の像が受光領域の内部に収まるように設定されている。
【0093】
このように、光学ブロック200の複数の反射面201~206で反射された各波長の光は、1つの受光面311上において分離されるため、受光部300は、6つの受光領域321~326内で移動するビームスポットを撮像して、各波長の光に対応した撮像画像を生成できる。
【0094】
次に、図4図5(b)および図7を参照して、光学ブロック200の各部の長さおよび角度について説明する。
【0095】
図4に示すように、複数の反射面201~206は、いずれもX-Y平面内においてX軸方向に対して角度θだけ傾いている。たとえば、本実施形態1の角度θは、60°に設定されている。複数の出射面212、222、232、242、252、262は、X-Y平面内においてX軸方向に対して、それぞれ角度θ11、θ12、θ13、θ14、θ15、θ16だけ傾いている。
【0096】
光学ブロック200に光が入射する入射面211は、Y-Z平面に平行な平面である。入射面211と反射面201のY軸負方向の端部との距離はd1である。X軸方向における、反射面201と反射面202との距離、反射面202と反射面203との距離、反射面203と反射面204との距離、反射面204と反射面205との距離、および、反射面205と反射面206との距離は、いずれもd2である。光学ブロック200のX軸正側の背面271は、Y-Z平面に平行な平面である。反射面206のY軸負方向の端部と背面271との距離はd3である。入射面211のY軸方向の長さおよび背面271のY軸方向の長さはd4である。複数の出射面212、222、232、242、252、262のX-Y平面内における長さは、いずれもd5である。図5(b)に示すように、光学ブロック200のZ軸方向の長さはd6である。
【0097】
たとえば、本実施形態1では、距離d1は2mm、距離d2は6mm、距離d3は4mm、長さd4は4√3mm、長さd5は5mm、長さd6は10mmに設定されている。
【0098】
図4に示すように、複数の反射面201~206のうち隣り合う2つの反射面によって反射される光は、それぞれ対応する出射面に入射する必要がある。たとえば、反射面202で反射された光が、当該光が入射すべき出射面222に隣り合う複数の出射面212、232に入射しないように、反射面201と反射面202との間隔、および反射面202と反射面203との間隔が設定されている。他の反射面201、203~206についても同様である。すなわち、複数の反射面201~206の間隔は、複数の反射面201~206で反射されたそれぞれの光が、対応する出射面に隣り合う他の出射面に入射しない幅を有する。このような観点から、距離d2は6mmに設定されている。このように距離d2が設定されると、各波長の光が受光部300の受光面311(図7参照)において重なることを抑制できる。よって、各波長の光に基づく信号、すなわち撮像画像を精度よく取得できる。
【0099】
図4に示すように、複数の反射面201~206で反射された光は、それぞれ、複数の出射面212、222、232、242、252、262により屈折されて進行方向がX-Y平面内において変化する。複数の反射面201~206でそれぞれ反射された光の方向を「基準線」と称すると、複数の出射面212、222、232、242、252、262から出射される光が、それぞれ、複数の反射面201~206における基準線となす角度は、θ21、θ22、θ23、θ24、θ25、θ26である。Z軸正方向に見て、基準線に対して時計回りの角度を正の角度とすると、図4に示す例では、角度θ21、θ22、θ23が負の値となっており、角度θ24、θ25、θ26が正の値となっている。
【0100】
実施形態1において、角度差θ22-θ21、θ23-θ22、θ24-θ23、θ25-θ24、θ26-θ25は、いずれも同じ角度差Δθである。
【0101】
図7に示すように、受光面311上の隣り合う受光領域の幅方向における中心間の距離はΔxである。ここで、第3レンズ43の焦点距離をf3とすると、角度差Δθは、以下の式(1)により算出される。
【0102】
Δθ=Arctan(Δx/f3) …(1)
【0103】
したがって、隣り合う出射面における光の出射方向の角度差が、上記式(1)により算出される角度差Δθとなるよう、光学ブロック200の複数の出射面212、222、232、242、252、262の傾きが設定される。
【0104】
図8(a)は、測定部63の縮小光学系400と、測定部63の光学系全体の総合倍率とを説明するための模式図である。図8(a)では、便宜上、フローセル20と、対物レンズ31と、第1レンズ41と、第2レンズ42と、第3レンズ43と、受光部300が示されている。また、図8(a)では、便宜上、第2レンズ42により平行光となった光は、直接第3レンズ43に入射し、その後、受光部300の受光面311に集光するように図示されている。
【0105】
縮小光学系400は、図1に示した第1レンズ41と第2レンズ42を含む。上述した対物レンズ31は、試料から生じた光を集光して平行光に変換し、縮小光学系400へと導く。
【0106】
第1レンズ41と第2レンズ42は、凸レンズであり、互いに焦点位置を共有している。第1レンズ41の焦点距離をf1とし、第2レンズ42の焦点距離をf2とすると、第1レンズ41と第2レンズ42との間隔がf1+f2となるよう、第1レンズ41と第2レンズ42が配置される。このとき、第1レンズ41の焦点位置と、第2レンズ42の焦点位置とが共有される。また、第1レンズ41と第2レンズ42の焦点距離は、f1>f2となるよう設定される。これにより、対物レンズ31からの平行光のビームサイズは、縮小光学系400により縮小され、平行光となって縮小光学系400から出射される。具体的には、縮小光学系400から出射される平行光のビーム径は、縮小光学系400に入射する平行光のビーム径のf2/f1になる。
【0107】
このように縮小光学系400が、試料から生じた光のビームサイズを縮小および平行光化して光学ブロック200に光を導くと、光学ブロック200のサイズを小型化できる。これにより、試料測定装置10全体のサイズを小さくできる。
【0108】
次に、図8(a)を参照して、測定部63の光学系全体の総合倍率について説明する。
【0109】
光学系全体の総合倍率をMとし、対物レンズ31の焦点距離をf0とする。第1レンズ41、第2レンズ42、および第3レンズ43の焦点距離は、上述したように、それぞれf1、f2、f3である。フローセル20の流路21と対物レンズ31との間隔がf0となるよう、フローセル20と対物レンズ31が配置され、第3レンズ43と受光部300の受光面311との間隔がf3となるよう、第3レンズ43と受光部300が配置される。総合倍率Mによって、フローセル20の流路21を流れる測定対象の粒子から生じた光を、どの程度の大きさで受光部300の受光面311に照射させるかが決まる。総合倍率Mは、焦点距離f0~f3を用いて以下の式(2)により算出できる。
【0110】
M=(-f1/f0)×(-f3/f2) …(2)
【0111】
たとえば、総合倍率Mの目標値が60倍に設定された場合、M=60を上記式(2)に代入して、各レンズの焦点距離が設定される。一般的な対物レンズ31が用いられる場合、対物レンズ31の焦点距離f0は3mmである。上記式(2)にM=60とf0=3mmを代入して変形すると、以下の式(3)が得られる。
【0112】
f3=180×(f2/f1) …(3)
【0113】
上記式(3)を参照すると、f2/f1の値を小さくすることで、f3の値を小さくできることが分かる。したがって、たとえば、f1=30mm、f2=15mmとすると、f3=90mmに設定できる。
【0114】
図8(b)は、図8(a)に示す縮小光学系400において、f1=f2とした場合の比較例を示す図である。
【0115】
図8(b)に示すように、第1レンズ41と第2レンズ42の焦点距離が等しい場合、f2/f1=1となる。この場合、上記式(3)において、f2/f1=1を代入すると、f3=180mmが得られる。同様に、縮小光学系400が用いられない場合も、上記式(3)において、f2/f1が省略されるため、f3=180mmが得られる。このように、第1レンズ41と第2レンズ42の焦点距離が等しい場合や、縮小光学系400が用いられない場合、第3レンズ43の焦点距離f3は180mmと大きくなってしまう。
【0116】
これに対し、実施形態1では、目標となる総合倍率Mを実現するために、f2/f1の値すなわち縮小光学系400の縮小率を1/2と小さく設定することで、第3レンズ43の焦点距離f3を90mmと小さくできる。よって、所望の総合倍率Mを実現しながら、第3レンズ43から受光部300までの距離を小さくできるため、第3レンズ43と受光部300の並び方向における試料測定装置10の小型化を実現できる。
【0117】
また、上記式(2)に示すように、焦点距離f1を焦点距離f2より大きくすることにより、言い換えれば縮小光学系400の縮小率f2/f1を小さく設定することにより、総合倍率Mが大きくなる。したがって、縮小光学系400の縮小率を小さくすることにより、微小な粒子から生じた光に基づく光の像を、受光面311上において大きく設定できる。
【0118】
なお、実施形態1において、縮小光学系400の第2レンズ42は凸レンズであったが、凹レンズでもよい。
【0119】
図9は、第2レンズ42が凹レンズにより構成される場合の縮小光学系400の変更例を示す図である。この場合も、第1レンズ41の焦点位置と、第2レンズ42の焦点位置とが共有される。図9の構成の場合も、縮小光学系400は、試料から生じた光のビームサイズを縮小および平行光化して光学ブロック200に光を導くことができるため、光学ブロック200のサイズを小型化できる。また、図9の構成の場合も、上記式(2)の関係が成り立ち、たとえば、f0=3mm、f1=30mm、f2=-15mm、f3=90mmを代入すると、M=-60倍となる。したがって、上記と同様に、縮小光学系400の縮小率f2/f1の値を小さくすることで、第3レンズ43の焦点距離f3を小さくできるため、所望の総合倍率Mを実現しながら、試料測定装置10の小型化を実現できる。
【0120】
なお、図9の構成の場合、孔32aが十分に小さい絞り32を配置できないため、絞り32により余分な光を除去する必要がある場合、図8(a)に示すように第2レンズ42は凸レンズである方が好ましい。
【0121】
図10は、試料測定装置10による測定動作を示すフローチャートである。
【0122】
試料を流す工程S1において、制御部61は、前処理ユニット50による前処理により調製された試料を、フローセル20の流路21に流す。試料に光を照射する工程S2において、制御部61は、フローセル20の流路21を流れる試料に、複数の波長λ11、λ12、λ13、λ6の光を含む照射光を照射する。
【0123】
光を光学ブロックに入射させる工程S3において、対物レンズ31、第1レンズ41、第2レンズ42、およびフィルター33は、照射光が照射された試料中の粒子から生じた光を光学ブロック200に入射させる。これにより、フローセル20のX軸正方向側に生じた複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5の蛍光および明視野画像の生成に用いられる波長λ6の光が、光学ブロック200の入射面211に入射し、光学ブロック200の内部を透過する。
【0124】
光を反射させる工程S4において、光学ブロック200は、光学ブロック200に入射した互いに異なる波長の光を、複数の反射面201~206によって選択的に反射させる。光を屈折させる工程S5において、光学ブロック200は、複数の反射面201~206で反射させた互いに異なる波長の光を、出射面212、222、232、242、252、262によって屈折させる。光を受光領域に導く工程S6において、出射面212、222、232、242、252、262から出射された光は、それぞれ、対応する6つの受光領域321~326に導かれる。
【0125】
撮像工程S7において、受光部300は、6つの受光領域321~326において受光した各波長の光に対応した撮像画像を生成する。分析工程S8において、制御部61は、撮像工程S7で取得された撮像画像に基づいて、標的部位の位置、数、分布状態などに基づいて、測定対象である白血球の分析を行う。表示工程S9において、制御部61は、撮像工程S7で取得した撮像画像と、分析工程S8で取得した分析結果とを、表示部64に表示する。
【0126】
<実施形態2>
図11は、実施形態2に係る測定部63の構成を示す模式図である。
【0127】
実施形態2の測定部63は、図1に示した実施形態1の測定部63と比較して、第1レンズ41と、第2レンズ42と、絞り32とが省略されている。また、実施形態2の光学ブロック200と、フィルター34と、第3レンズ43は、実施形態1に比べて大きく構成されている。実施形態2のその他の構成は、実施形態1の試料測定装置10の構成と同様である。
【0128】
実施形態2では、第1レンズ41と第2レンズ42からなる縮小光学系400が省略されているため、対物レンズ31で集光され平行光化された光は、ビームサイズが縮小されることなく光学ブロック200へと導かれる。このため、図11に示すように光学ブロック200を、実施形態1に比べて大きくする必要がある。また、光学ブロック200に入射するビームサイズが大きくなると、複数の反射面201~206で反射された各波長の光は、互いに重なりやすくなるため、複数の反射面201~206の間隔、すなわち図4に示した距離d2を大きくする必要がある。これにより、実施形態2の光学ブロック200は、実施形態1に比べて大きくなる。また、光学ブロック200の距離d2が大きくなると、フィルター34および第3レンズ43も大きくする必要がある。
【0129】
以上のように、実施形態2においても、実施形態1と同様、複数の波長の光に対して共通の光学ブロック200を用いることにより、各波長の光を異なる受光領域321~326にそれぞれ導くための個別のダイクロイックミラー等を用いる必要がない。このため、複数の波長毎に個別に複数の光学部品の光軸合わせなどの調整が不要になる。よって、試料測定装置10の組み立て時やメンテナンス時の作業負担を軽減できる。その一方で、実施形態2の場合、縮小光学系400が省略されているため、試料測定装置10が、実施形態1と比べて大型化してしまう。よって、試料測定装置10を小型化する観点においては、実施形態1の方が好ましい。
【0130】
<実施形態3>
図12は、実施形態3に係る光学ブロック200の構成を示す模式図である。実施形態3の光学ブロック200以外の構成は、実施形態1の試料測定装置10の構成と同様である。
【0131】
実施形態3では、複数の反射面201~206の傾き角度θ1、θ2、θ3、θ4、θ5、θ6は、互いに異なっている。また、複数の反射面201~206は、実施形態1と同様、光学ブロック200に入射する光の進行方向に対して同じ方向に傾いている。実施形態1では、複数の波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5、λ6の光の進行方向は、複数の出射面によって互いに異なるように変化させられたが、実施形態3では、複数の反射面201~206の傾き角度によって互いに異なるように変化させられる。
【0132】
実施形態3の光学ブロック200は、光学ブロック200のY軸正側に、X-Z平面に平行な1つの出射面200aを備える。複数の反射面201~206で反射された光は、出射面200aで屈折され出射面200aから出射される。ここで、出射面200aにおける各波長の光の屈折角は波長に応じて異なるため、出射面200aから出射される光の進行方向の調整においては、出射面200aによる屈折も考慮する必要がある。
【0133】
実施形態3においては、各波長の光の出射面200aにおける屈折角を考慮しつつ、複数の反射面201~206の傾き角度を調整することにより、出射面200aから出射される各波長の光の進行方向が決められる。この場合も、実施形態1と同様、光学ブロック200により反射された各波長の光を、所望の受光領域に照射させることができる。よって、実施形態3においても、複数の波長の光に対して図12に示す共通の光学ブロック200を用いることにより、実施形態1と同様、各波長の光を異なる受光領域321~326にそれぞれ導くための個別のダイクロイックミラー等を用いる必要がない。このため、複数の波長毎に個別に複数の光学部品の光軸合わせなどの調整が不要になる。よって、試料測定装置10の組み立て時やメンテナンス時の作業負担を軽減できる。
【0134】
<実施形態4>
図13は、実施形態4に係る光学ブロック200の構成を示す模式図である。
【0135】
実施形態4の光学ブロック200は、図12に示した実施形態3の光学ブロック200と比較して、反射面202、204、206の傾き方向が異なっている。実施形態4では、反射面201、203、205は、実施形態3と同様、Y軸正側に向けて光を反射し、反射面202、204、206は、Y軸負側に向けて光を反射する。言い換えれば、複数の反射面のうち第1グループの3つの反射面201、203、205は、光学ブロック200に入射する光の進行方向に対してY軸正方向に傾いており、複数の反射面のうち第1グループとは異なる第2グループの3つの反射面202、204、206は、光学ブロック200に入射する光の進行方向に対してY軸負方向に傾いている。
【0136】
また、実施形態4の光学ブロック200は、図12に示した実施形態3の光学ブロック200と比較して、光学ブロック200のY軸負側に、X-Z平面に平行な1つの出射面200bを備える。第1グループの3つの反射面201、203、205で反射された光は、出射面200aで屈折され出射面200aから出射される。第2グループの3つの反射面202、204、206で反射された光は、出射面200bで屈折され出射面200bから出射される。
【0137】
図14は、実施形態4に係る測定部63の構成を示す模式図である。図14では、便宜上、第1レンズ41よりX軸負側に位置する構成が省略されている。実施形態4の測定部63以外の構成は、実施形態1の試料測定装置10の構成と同様である。
【0138】
実施形態4の測定部63は、実施形態1と比較して、第3レンズ43および受光部300に代えて、2つの第3レンズ501、502と、2つの受光部510、520と、を備える。第3レンズ501と受光部510は、実施形態1と同様、光学ブロック200のY軸正側に配置され、第3レンズ502と受光部520は、光学ブロック200のY軸負側に配置される。Y軸正側に向けて反射された3つの波長λ1、λ3、λ5の光は、第3レンズ501により集光され、受光部510の受光面511において互いに異なる受光領域531、533、535で受光される。一方、Y軸負側に向けて反射された3つの波長λ2、λ4、λ6の光は、第3レンズ502により集光され、受光部520の受光面521において互いに異なる受光領域532、534、536で受光される。
【0139】
また、フィルター34は、光学ブロック200と第3レンズ502との間に配置される。この場合のフィルター34の透過波長は、2つの波長λ2、λ4の光がフィルター34を透過し、2つの波長λ2、λ4以外の波長の光がフィルター34で遮断されるように構成される。また、フィルター34は、受光部520の受光面521に向かって波長λ6の光が通る位置から外れた位置に配置される。
【0140】
実施形態4においても、複数の波長の光に対して図13、14に示すように共通の光学ブロック200を用いることにより、実施形態3と同様、各波長の光を異なる受光領域531~536にそれぞれ導くための個別のダイクロイックミラー等を用いる必要がない。このため、複数の波長毎に個別に複数の光学部品の光軸合わせなどの調整が不要になる。よって、試料測定装置10の組み立て時やメンテナンス時の作業負担を軽減できる。
【0141】
なお、実施形態1の光学ブロック200において、複数の反射面202、204、206の傾き方向を変更して、複数の反射面202、204、206が、Y軸負側に向けて光を反射してもよい。この場合、複数の反射面202、204、206に対応する複数の出射面222、242、262が、光学ブロック200のY軸負側に設けられる。
【0142】
<実施形態5>
図15は、実施形態5に係る測定部63の構成を示す模式図である。
【0143】
実施形態5では、照射部100の光源101(図3参照)から出射される波長λ11の光は、直線偏光となっており、光源101は、直線偏光の偏光方向が、所定の方向となるよう装置内に設置されている。光源101からの光が試料に照射されるときの偏光方向を、「初期の偏光方向」と称する。波長λ11の光が試料中の粒子に照射されると、粒子からX軸正方向に散乱光が生じる。粒子から生じる散乱光の偏光方向は、粒子に含まれる成分が持つ旋光性に応じて、初期の偏光方向から変化する。
【0144】
なお、実施形態5では、光源101から出射される光は、図3を参照して説明したようにY軸正方向に試料に照射され、対物レンズ31は、流路21のX軸正方向に配置されている。したがって、対物レンズ31によって集光され、光学ブロック200を経て受光部300に導かれる散乱光は、粒子から生じた側方散乱光である。
【0145】
実施形態5のフィルター33は、波長λ11の光を透過するよう構成される。これにより、試料から生じる波長λ11の散乱光がフィルター33を透過し、光学ブロック200に入射する。
【0146】
実施形態5の複数の反射面201~206は、実施形態1と比較して、さらに波長λ11の光を透過するよう構成される。実施形態5の光学ブロック200は、実施形態1と比較して、反射面206のX軸正側に、さらに第7反射面と第8反射面を備える。第7反射面および第8反射面を、それぞれ、以下、反射面207および反射面208と称する。また、実施形態5の光学ブロック200は、さらに第8プリズムと第9プリズムを備える。第8プリズムおよび第9プリズムを、それぞれ、以下、プリズム280およびプリズム290と称する。実施形態5のプリズム270、280は、実施形態1のプリズム220、230、240、250、260と同様の形状を有しており、実施形態5のプリズム290は、実施形態1のプリズム270と同様の形状を有している。
【0147】
反射面207に対応する組み立て前のプリズム280の斜面に、偏光用コーティングが施されることにより、この斜面に偏光フィルターが形成され、反射面207が形成される。反射面207は、第1偏光方向の光を反射し、第1偏光方向とは異なる第2偏光方向の光を透過する。具体的には、反射面207は、初期の偏光方向に一致する波長λ11の散乱光を反射し、初期の偏光方向に一致しない波長λ11の散乱光を透過する。反射面208に対応する組み立て前のプリズム290の斜面に、光を全反射するコーティングが施されることにより、この斜面に全反射ミラーが形成され、反射面208が形成される。プリズム270とプリズム280の接合、およびプリズム280とプリズム290の接合は、実施形態1の各ブロックの接合と同様に行われる。
【0148】
反射面207で反射された初期の偏光方向に一致する波長λ11の散乱光は、反射面207のY軸正側に位置する出射面272によって、進行方向が変化させられる。反射面208で反射された初期の偏光方向に一致しない波長λ11の散乱光は、反射面208のY軸正側に位置する出射面282によって、進行方向が変化させられる。
【0149】
こうして、複数の反射面201~208で反射された各光は、受光部300の受光面311上の異なる受光領域321、322、323、324、325、326、327、328に照射される。初期の偏光方向に一致する波長λ11の散乱光は、受光領域327に導かれ、初期の偏光方向に一致しない波長λ11の散乱光は、受光領域328に導かれる。これにより、複数の反射面201~206で反射された光に基づく撮像画像に加えて、複数の反射面207、208で反射された光に基づく撮像画像も取得できる。複数の反射面207、208で反射された光に基づく撮像画像を参照することにより、測定対象の粒子に含まれる成分の旋光性を判断して、測定対象の粒子を分析できる。
【0150】
実施形態5では、初期の偏光方向の散乱光および初期の偏光方向に一致しない散乱光が試料中の粒子から生じた場合、これらの散乱光が光学ブロック200に設けられた複数の反射面207、208によりそれぞれ反射され、受光部300の異なる受光領域327、328に導かれる。したがって、偏光方向の異なる光に対して図15に示す共通の光学ブロック200を用いることにより、偏光方向の異なる光を異なる受光領域327、328にそれぞれ導くための個別の偏光フィルター等を用いる必要がない。複数の反射面207、208が一体的に形成された光学ブロック200を設けることで、各反射面同士がなす角度が固定されるため、偏光方向の異なる光毎に個別に複数の光学部品の光軸合わせなどの調整が不要になる。よって、試料測定装置10の組み立て時やメンテナンス時の作業負担を軽減できる。
【0151】
また、実施形態5では、図10に示した実施形態1の試料測定装置10と同様の測定動作において、試料中の粒子から生じた波長λ11の散乱光に基づいて、分析および表示が行われる。以下、図10を参照しながら、実施形態1と異なる測定動作について説明する。
【0152】
実施形態5では、光を光学ブロックに入射させる工程S3において、対物レンズ31、第1レンズ41、第2レンズ42、およびフィルター33は、照射光が照射された試料中の粒子から生じた波長λ11の散乱光を光学ブロック200に入射させる。
【0153】
光を反射させる工程S4において、光学ブロック200は、光学ブロック200に入射した偏光方向の異なる光を、2つの反射面207、208によって選択的に反射させる。光を屈折させる工程S5において、光学ブロック200は、2つの反射面207、208で反射させた異なる偏光方向の光を、それぞれ、2つの出射面272、282によって屈折させる。光を受光領域に導く工程S6において、2つの出射面272、282から出射された光は、それぞれ、対応する2つの受光領域327、328に導かれる。
【0154】
撮像工程S7において、受光部300は、異なる2つの受光領域327、328において受光した、異なる偏光方向の2種類の散乱光に対応した撮像画像を生成する。分析工程S8において、制御部61は、撮像工程S7で取得された撮像画像に基づいて、粒子に含まれる成分が持つ旋光性を判定し、判定した旋光性に基づいて測定対象の粒子の分析を行う。表示工程S9において、制御部61は、撮像工程S7で取得した撮像画像と、分析工程S8で取得した分析結果とを、表示部64に表示する。
【0155】
なお、図15に示す構成において、散乱光の分析のみを行う場合は、複数の反射面207、208および出射面272、282のみが設けられた光学ブロック200が用いられてもよい。また、反射面207は、初期の偏光方向に一致する波長λ11の散乱光を透過し、初期の偏光方向に一致しない波長λ11の散乱光を反射してもよい。また、光学ブロック200によって複数の受光領域327、328に導かれる偏光方向の異なる光は、側方散乱光に限らず、前方散乱光や蛍光でもよい。
【符号の説明】
【0156】
10 試料測定装置
20 フローセル
31 対物レンズ
32 絞り
33、34 フィルター
41 第1レンズ
42 第2レンズ
43 第3レンズ
100 照射部
200 光学ブロック
201~208 反射面
200a、200b、212、222、232、242、252、262、272、282 出射面
210、220、230、240、250、260、270、280、290 プリズム
300 受光部
310 撮像素子
311 受光面
321~328 受光領域
400 縮小光学系
501、502 第3レンズ
510 受光部(第1受光部)
511 受光面(第1受光面)
520 受光部(第2受光部)
521 受光面(第2受光面)
531~536 受光領域
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