(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20230913BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230913BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20230913BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20230913BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230913BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20230913BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/131
H01M10/0567
H01M4/62 Z
H01M50/457
(21)【出願番号】P 2019042199
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 良太
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛正
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-108444(JP,A)
【文献】特開2011-108516(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221709(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/052-10/587
H01M50/40-50/497
H01M4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、を有する集電体と、前記集電体の前記第1面上に位置する第1活物質層と、を含む正極と、
前記正極の前記第1活物質層に対向する第1絶縁層と、
を含み、
前記第1活物質層は、Li
aNi
bM
1-bO
2(0.95≦a≦1.05、b≧0.50、Mは、Co、Mn、Al、Ti、Zr、Na、Ba及びMgの中から選ばれる一種以上の元素である。)によって示される活物質粒子を含み、
前記第1絶縁層は、水酸化マグネシウム粒子を含み、
前記水酸化マグネシウム粒子の目付及び比表面積の積は、前記活物質粒子の目付及び比表面積の積の0.7倍以上である、電池。
【請求項2】
請求項1に記載の電池において、
前記正極に対向するセパレータと、
前記正極とは反対側から前記セパレータに対向する負極と、
をさらに含み、
前記セパレータは、前記第1絶縁層と、前記負極に対向する第2絶縁層と、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の間に位置する基材と、を含む、電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池において、
前記水酸化マグネシウム粒子は、4.0m
2/g以上8.0m
2/g以下の比表面積を有する、電池。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の電池において、
前記活物質粒子は、前記活物質粒子の総質量100質量部に対して0.52質量部以上の水酸化リチウムをさらに含む、電池。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の電池において、
スルホン酸エステルを含む電解液をさらに含
む、電池。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の電池において、
前記第1絶縁層は、芳香族ポリアミドをさらに含む、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の一種として、二次電池、特に、非水電解質二次電池が開発されている。非水電解質二次電池は、正極、負極及びセパレータを含んでいる。セパレータは、正極及び負極の間に位置している。
【0003】
特許文献1には、セパレータの一例について記載されている。セパレータは、ポリエチレン微多孔膜及びポリエチレン微多孔膜の両面上の耐熱性多孔質層を含んでいる。耐熱性多孔質層は、ポリメタフェニレンイソフタルアミド及び水酸化アルミニウムからなる無機フィラーを含んでいる。
【0004】
特許文献2には、セパレータの一例について記載されている。セパレータは、ポリエチレン微多孔膜及びポリエチレン微多孔膜の両面上の多孔質層を含んでいる。多孔質層は、メタ型全芳香族ポリアミド及びα-アルミナからなる無機フィラーを含んでいる。
【0005】
特許文献3及び4には、セパレータの一例について記載されている。セパレータは、ポリエチレン多孔質フィルム及びポリエチレン多孔質フィルム上の耐熱多孔層を含んでいる。耐熱多孔層は、液晶ポリエステル及びアルミナ粒子を含んでいる。
【0006】
特許文献5には、電池の圧壊試験の耐性を向上させることについて記載されている。特許文献5では、圧壊試験の耐性を向上させるため、正極の引張伸び率、負極の引張伸び率及びセパレータの引張伸び率を特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-231281号公報
【文献】特開2010-160939号公報
【文献】特開2008-311221号公報
【文献】特開2008-307893号公報
【文献】特開2010-165664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非水電解質二次電池、特にリチウムイオン電池では、充放電においてガス(例えば、電解液内の炭酸エステルの酸化分解によって発生する炭酸ガス)が発生することがある。セル内の残留ガスは、様々な支障(例えば、隣り合う正極及び負極間の距離の拡大又はセルの内圧の上昇)を引き起こすおそれがある。
【0009】
本発明の目的の一例は、セル内の残留ガスを低減することにある。本発明の他の目的は、本明細書の開示から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、
第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、を有する集電体と、前記集電体の前記第1面上に位置する第1活物質層と、を含む正極と、
前記正極の前記第1活物質層に対向する第1絶縁層と、
を含み、
前記第1活物質層は、LiaNibM1-bO2(0.95≦a≦1.05、b≧0.50、Mは、Co、Mn、Al、Ti、Zr、Na、Ba及びMgの中から選ばれる一種以上の元素である。)によって示される活物質粒子を含み、
前記第1絶縁層は、水酸化マグネシウム粒子を含み、
前記水酸化マグネシウム粒子の目付及び比表面積の積は、前記活物質粒子の目付及び比表面積の積の0.7倍以上である、電池が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上述した一態様によれば、セル内の残留ガスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
図1は、実施形態に係る電池10の上面図である。
図2は、
図1のA-A´断面図である。
図3は、
図2の一部分を拡大した図である。
図2では、説明のため、
図1に示した外装材400を示していない。
【0015】
図3を用いて、電池10の概要を説明する。電池10は、正極100及び第1絶縁層322を含んでいる。正極100は、集電体110及び第1活物質層122を含んでいる。集電体110は、第1面112及び第2面114を有している。第2面114は、第1面112の反対側にある。第1活物質層122は、集電体110の第1面112上に位置している。第1絶縁層322は、正極100の第1活物質層122に対向している。第1活物質層122は、Li
aNi
bM
1-bO
2(0.95≦a≦1.05、b≧0.50、Mは、Co、Mn、Al、Ti、Zr、Na、Ba及びMgの中から選ばれる一種以上の元素である。)によって示される活物質粒子を含んでいる。第1絶縁層322は、水酸化マグネシウム粒子を含んでいる。水酸化マグネシウム粒子の目付及び比表面積の積は、活物質粒子の目付及び比表面積の積の0.7倍以上である。
【0016】
本実施形態によれば、セル内(後述する外装材400によって閉ざされた空間内)の残留ガスを低減することができる。具体的には、本発明者は、セル内の残留ガスを低減するため、水酸化マグネシウム粒子の目付及び比表面積の積及び活物質粒子の目付及び比表面積の積の関係に新規に着目した。本発明者が検討したところ、詳細を後述するように、水酸化マグネシウムの当該積及び活物質粒子の当該積の関係に応じて、セル内の残留ガスが低減されることが明らかとなった。
【0017】
LiaNibM1-bO2の組成比bは、b≧0.80であってもよい。この場合においても、本実施形態によれば、セル内の残留ガスを低減することができる。
【0018】
【0019】
電池10は、第1リード130、第2リード230及び外装材400を含んでいる。
【0020】
第1リード130は、
図2に示す正極100に電気的に接続されている。第1リード130は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成させてもよい。
【0021】
第2リード230は、
図2に示す負極200に電気的に接続されている。第2リード230は、例えば、銅若しくは銅合金又はそれらにニッケルメッキを施したもので形成させてもよい。
【0022】
図1に示す例において、外装材400は、4辺を有する矩形形状を有している。
図1に示す例において、第1リード130及び第2リード230は、外装材400の4辺のうちの共通の1辺から突出している。他の例において、第1リード130及び第2リード230は、外装材400の4辺のうちの異なる辺(例えば、互いに反対側の辺)から突出していてもよい。
【0023】
外装材400は、
図2に示す積層体12を電解液(不図示)とともに収容している。
【0024】
外装材400は、例えば、熱融着性樹脂層及びバリア層を含み、例えば、熱融着性樹脂層及びバリア層を含む積層フィルムにしてもよい。
【0025】
熱融着性樹脂層を形成する樹脂材料は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等にしてもよい。熱融着性樹脂層の厚さは、例えば、20μm以上200μm以下、好ましくは30μm以上150μm以下、より好ましくは50μm以上100μm以下である。
【0026】
バリア層は、例えば、電解液の漏出又は外部からの水分の侵入防止といったバリア性を有しており、例えば、ステンレス(SUS)箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔、チタン箔等の金属により形成されたバリア層にしてもよい。バリア層の厚さは、例えば、10μm以上100μm以下、好ましくは20μm以上80μm以下、より好ましくは30μm以上50μm以下である。
【0027】
積層フィルムの熱融着性樹脂層は、1層であってもよいし、又は2層以上であってもよい。同様にして、積層フィルムのバリア層は、1層であってもよいし、又は2層以上であってもよい。
【0028】
電解液は、例えば、非水電解液である。この非水電解液は、リチウム塩及びリチウム塩を溶解する溶媒を含んでいてもよい。
【0029】
リチウム塩は、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、CF3SO3Li、CH3SO3Li、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、低級脂肪酸カルボン酸リチウム等にしてもよい。
【0030】
リチウム塩を溶解する溶媒は、炭酸エステル、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類を含んでいる。溶媒は、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素溶媒;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の有機酸エステル類;リン酸トリエステルやジグライム類;トリグライム類;スルホラン、メチルスルホラン等のスルホラン類;3-メチル-2-オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類等をさらに含んでいてもよい。これらの物質は、単独で使用されてもよいし、又は組み合わせて使用されてもよい。
【0031】
溶媒内の炭酸エステルは、正極100の近傍において、充放電によって酸化分解して、炭酸ガスを発生させることがある。セル内の残留炭酸ガスは、様々な支障(正極100及び負極200間の距離の拡大又はセルの内圧(外装材400によって閉ざされた空間内の圧力)の上昇)を引き起こすおそれがある。本実施形態においては、このような支障を低減することができる。
【0032】
電解液は、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤は、例えば、環状スルホン酸エステル等のスルホン酸エステルである。
【0033】
【0034】
積層体12は、複数の正極100、複数の負極200及びセパレータ300を含んでいる。複数の正極100及び複数の負極200は、交互に積層されている。
図2に示す例では、セパレータ300は、隣り合う正極100及び負極200の間にセパレータ300の一部分が位置するように、つづら折りに折り返されている。他の例において、互いに離間した複数のセパレータ300が、隣り合う正極100及び負極200の間に位置していてもよい。
【0035】
図3を用いて、正極100、負極200及びセパレータ300のそれぞれの詳細を説明する。
【0036】
正極100は、集電体110及び活物質層120(第1活物質層122及び第2活物質層124)を含んでいる。集電体110は、第1面112及び第2面114を有している。第2面114は、第1面112の反対側にある。第1活物質層122は、集電体110の第1面112上にある。第2活物質層124は、集電体110の第2面114上にある。
【0037】
集電体110は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン又はこれらの合金で形成させてもよい。集電体110の形状は、例えば、箔、平板又はメッシュにしてもよい。
【0038】
活物質層120(第1活物質層122及び第2活物質層124)は、活物質粒子、バインダー樹脂及び導電助剤を含んでいる。
【0039】
活物質層120(第1活物質層122及び第2活物質層124)に含まれる活物質粒子は、LiaNibM1-bO2(Mは、Co、Mn、Al、Ti、Zr、Na、Ba及びMgの中から選ばれる少なくとも一種以上の元素である。)によって示される。LiaNibM1-bO2は、例えば、
リチウム-ニッケル複合酸化物;
リチウム-ニッケル-A1複合酸化物(A1は、コバルト、マンガン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、バリウム及びマグネシウムのうちの一である。);
リチウム-ニッケル-B1-B2複合酸化物(B1及びB2のそれぞれは、コバルト、マンガン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、バリウム及びマグネシウムのうちの一である。B1及びB2は、互いに異なる。);
リチウム-ニッケル-C1-C2-C3複合酸化物(C1~C3のそれぞれは、コバルト、マンガン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、バリウム及びマグネシウムのうちの一である。C1~C3は、互いに異なる。);
リチウム-ニッケル-D1-D2-D3-D4複合酸化物(D1~D4のそれぞれは、コバルト、マンガン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、バリウム及びマグネシウムのうちの一である。D1~C4は、互いに異なる。);
リチウム-ニッケル-E1-E2-E3-E4-E5複合酸化物(E1~E5のそれぞれは、コバルト、マンガン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、バリウム及びマグネシウムのうちの一である。E1~E5は、互いに異なる。);
リチウム-ニッケル-F1-F2-F3-F4-F5-F6複合酸化物(F1~F6のそれぞれは、コバルト、マンガン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、バリウム及びマグネシウムのうちの一である。F1~F6は、互いに異なる。);
リチウム-ニッケル-G1-G2-G3-G4-G5-G6-G7複合酸化物(G1~G7のそれぞれは、コバルト、マンガン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、バリウム及びマグネシウムのうちの一である。G1~G7は、互いに異なる。);又は
リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン-アルミニウム-チタン-ジルコニウム-ナトリウム-バリウム-マグネシウム複合酸化物
である。LiaNibM1-bO2の組成比aは、例えば、0.95≦a≦1.05である。LiaNibM1-bO2の組成比bは、例えば電池10のエネルギー密度に応じて適宜決定することができる。電池10のエネルギー密度は、組成比bが大きい高くなる。組成比bは、例えば、b≧0.50、好ましくはb≧0.80である。他の例において、活物質層120(第1活物質層122及び第2活物質層124)に含まれる活物質は、リチウム-コバルト複合酸化物、リチウム-マンガン複合酸化物等のリチウム及び遷移金属の複合酸化物;TiS2、FeS、MoS2等の遷移金属硫化物;MnO、V2O5、V6O13、TiO2等の遷移金属酸化物、オリビン型リチウムリン酸化物等であってもよい。オリビン型リチウムリン酸化物は、例えば、Mn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nb及びFeからなる群のうちの少なくとも1種の元素と、リチウムと、リンと、酸素とを含んでいる。これらの化合物は、その特性を向上させるために一部の元素を部分的に他の元素に置換したものであってもよい。これらの物質は、単独で使用されてもよいし、又は組み合わせて使用されてもよい。
【0040】
活物質層120(第1活物質層122及び第2活物質層124)に含まれる活物質の密度は、例えば、2.0g/cm3以上4.0g/cm3以下、好ましくは2.4g/cm3以上3.8g/cm3以下、より好ましくは2.8g/cm3以上3.6g/cm3以下である。
【0041】
活物質層120(第1活物質層122及び第2活物質層124)に含まれる活物質粒子は、例えば、0.25m2/g以上1.45m2/g以下の比表面積を有していてもよい。
【0042】
集電体110の両面(第1面112及び第2面114)のうちの一方の面上の活物質層(第1活物質層122又は第2活物質層124)の厚さは、例えば電池10のレートに応じて適宜決定することができる。電池10のレートは、当該厚さが薄いほど高くなる。当該厚さは、例えば、60μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。
【0043】
集電体110の両面(第1面112及び第2面114)上の活物質層(第1活物質層122及び第2活物質層124)の厚さの合計は、例えば電池10のレートに応じて適宜決定することができる。電池10のレートは、当該厚さが薄いほど高くなる。当該厚さは、例えば、120μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。
【0044】
活物質層120(第1活物質層122及び第2活物質層124)は、例えば次のようにして製造可能である。まず、活物質、バインダー樹脂及び導電助剤を有機溶媒中に分散させてスラリーを調製する。有機溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。次いで、このスラリーを集電体110の第1面112上に塗布し、スラリーを乾燥させ、必要に応じてプレスを実施して、集電体110上に活物質層120(第1活物質層122)を形成する。第2活物質層124も同様にして形成可能である。
【0045】
活物質層120(第1活物質層122及び第2活物質層124)に含まれるバインダー樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。
【0046】
活物質層120(第1活物質層122又は第2活物質層124)に含まれるバインダー樹脂の量は、適宜決定することができる。第1活物質層122は、第1活物質層122の総質量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上10.0質量部以下、好ましくは0.5質量部以上5.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以上4.0質量部以下のバインダー樹脂を含んでいる。第2活物質層124についても同様である。
【0047】
活物質層120(第1活物質層122及び第2活物質層124)に含まれる導電助剤は、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、天然黒鉛、人工黒鉛、炭素繊維等である。黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛又は球状黒鉛であってもよい。これらの物質は、単独で使用されてもよいし、又は組み合わせて使用されてもよい。
【0048】
活物質層120(第1活物質層122又は第2活物質層124)に含まれる導電助剤の量は、例えば電池10のサイクル特性に応じて適宜決定することができる。電池10のサイクル特性は、活物質層120の導電助剤の量が大きいほど向上する。第1活物質層122は、第1活物質層122の総質量100質量部に対して、例えば、3.0質量部以上8.0質量部以下、好ましくは5.0質量部以上6.0質量部以下の導電助剤を含んでいる。第2活物質層124についても同様である。
【0049】
第1活物質層122又は第2活物質層124の活物質粒子は、水酸化リチウム(LiOH)を含んでいてもよい。水酸化リチウムは、活物質粒子の原料である。水酸化リチウムは、活物質粒子の製造プロセス後、活物質粒子の不純物として残り得る。活物質粒子は、活物質粒子の総質量100質量部に対して例えば0.43質量部以上又は0.52質量部以上の水酸化リチウムを含んでいてもよい。
【0050】
負極200は、集電体210及び活物質層220(第1活物質層222及び第2活物質層224)を含んでいる。集電体210は、第1面212及び第2面214を有している。第2面214は、第1面212の反対側にある。第1活物質層222は、集電体210の第1面212上にある。第2活物質層224は、集電体210の第2面214上にある。
【0051】
集電体210は、例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタン又はこれらの合金で形成させてもよい。集電体210の形状は、例えば、箔、平板又はメッシュにしてもよい。
【0052】
活物質層220(第1活物質層222及び第2活物質層224)は、活物質及びバインダー樹脂を含んでいる。活物質層220は、必要に応じて、導電助剤をさらに含んでいてもよい。
【0053】
活物質層220(第1活物質層222及び第2活物質層224)に含まれる活物質は、例えば、リチウムを吸蔵する黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の炭素材料;リチウム金属、リチウム合金等のリチウム系金属材料;Si、SiO2、SiOx(0<x≦2)、Si含有複合材料等のSi系材料;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー材料等である。これらの物質は、単独で使用されてもよいし、又は組み合わせて使用されてもよい。一例において、活物質層220(第1活物質層222及び第2活物質層224)は、第1平均粒径及び第1平均硬度を有する第1群の黒鉛粒子(例えば、天然黒鉛)及び第2平均粒径及び第2平均硬度を有する第2群の黒鉛粒子(例えば、天然黒鉛)を含んでいてもよい。第2平均粒径は第1平均粒径より小さくてもよく、第2平均硬度は第1平均硬度より高くてもよく、第2群の黒鉛粒子の総質量は、第1群の黒鉛粒子の総質量より小さくてもよく、第2群の黒鉛粒子の総質量は、第1群の黒鉛粒子の総質量100質量部に対して、例えば、20質量部以上30質量部以下であってもよい。
【0054】
活物質層220(第1活物質層222及び第2活物質層224)に含まれる活物質の密度は、例えば、1.2g/cm3以上2.0g/cm3以下、好ましくは1.3g/cm3以上1.9g/cm3以下、より好ましくは1.4g/cm3以上1.8g/cm3以下である。
【0055】
集電体210の両面(第1面212及び第2面214)のうちの一方の面上の活物質層(第1活物質層222又は第2活物質層224)の厚さは、例えば電池10のレートに応じて適宜決定することができる。電池10のレートは、当該厚さが薄いほど高くなる。当該厚さは、例えば、60μm以下、好ましくは55μm以下、より好ましくは50μm以下である。
【0056】
集電体210の両面(第1面212及び第2面214)上の活物質層(第1活物質層222及び第2活物質層224)の厚さの合計は、例えば電池10のレートに応じて適宜決定することができる。電池10のレートは、当該厚さが薄いほど高くなる。当該厚さは、例えば、120μm以下、好ましくは110μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0057】
活物質層220(第1活物質層222及び第2活物質層224)は、例えば次のようにして製造可能である。まず、活物質及びバインダー樹脂を溶媒中に分散させてスラリーを調製する。溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の有機溶媒であってもよいし、又は水であってもよい。次いで、このスラリーを集電体210の第1面212上に塗布し、スラリーを乾燥させ、必要に応じてプレスを実施して、集電体210上に活物質層220(第1活物質層222)を形成する。第2活物質層224も同様にして形成可能である。
【0058】
活物質層220(第1活物質層222及び第2活物質層224)に含まれるバインダー樹脂は、スラリーを得るための溶媒として有機溶媒を用いた場合、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のバインダー樹脂にすることができ、スラリーを得るための溶媒として水を用いた場合、例えば、ゴム系バインダー(例えば、SBR(スチレン・ブタジエンゴム))又はアクリル系バインダー樹脂にすることができる。このような水系バインダー樹脂は、エマルジョン形態にしてもよい。溶媒として水を用いる場合、水系バインダー及びCMC(カルボキシメチルセルロース)等の増粘剤を併用することが好ましい。
【0059】
活物質層220(第1活物質層222又は第2活物質層224)に含まれるバインダー樹脂の量は、適宜決定することができる。第1活物質層222は、第1活物質層222の総質量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上10.0質量部以下、好ましくは0.5質量部以上8.0質量部以下、より好ましくは1.0質量部以上5.0質量部以下、さらにより好ましくは1.0質量部以上3.0質量部以下のバインダー樹脂を含んでいる。第2活物質層224についても同様である。
【0060】
セパレータ300は、基材310及び絶縁層320(第1絶縁層322及び第2絶縁層324)を含んでいる。基材310は、第1面312及び第2面314を有している。第2面314は、第1面312の反対側にある。第1絶縁層322は、基材310の第1面312上にある。第2絶縁層324は、基材310の第2面314上にある。
【0061】
図3に示す例において、セパレータ300は、基材310の両面(第1面312及び第2面314)上に絶縁層320(第1絶縁層322及び第2絶縁層324)を含んでいる。他の例において、セパレータ300は、基材310の両面(第1面312及び第2面314)のうちの一方の面上のみに絶縁層320を含んでいてもよい。
【0062】
セパレータ300は、正極100及び負極200を電気的に絶縁させ、イオン(例えば、リチウムイオン)を透過させる機能を有している。セパレータ300は、例えば、多孔性セパレータにすることができる。
【0063】
セパレータ300の形状は、正極100又は負極200の形状に応じて適宜決定することができ、例えば、矩形にすることができる。
【0064】
基材310は、耐熱性樹脂を含む樹脂層を含んでいることが好ましい。樹脂層は、耐熱性樹脂を主成分として含んでおり、具体的には、樹脂層の総質量100質量部に対して、50質量部以上、好ましくは70質量部以上、より好ましくは90質量部以上の耐熱性樹脂を含んでおり、樹脂層の総質量100質量部に対して100質量部の耐熱性樹脂を含んでいてもよい。樹脂層は、単層であってもよいし、又は二種以上の層であってもよい。
【0065】
耐熱性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ-m-フェニレンテレフタレート、ポリ-p-フェニレンイソフタレート、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、脂肪族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、フッ素系樹脂、ポリエーテルニトリル、変性ポリフェニレンエーテル等から選択される一種又は二種以上である。
【0066】
絶縁層320(第1絶縁層322及び第2絶縁層324)は、例えば以下のようにして製造可能である。まず、水酸化マグネシウム粒子及び樹脂を溶媒中に分散させて溶液を調製する。溶媒は、例えば、水、エタノール等のアルコール類、N-メチルピロリドン(NMP)、トルエン、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等である。次いで、基材310の第1面312上に溶液を塗布して絶縁層320(第1絶縁層322)を形成する。第2絶縁層324も同様にして形成可能である。
【0067】
水酸化マグネシウム粒子は、例えば、4.0m2/g以上8.0m2/g以下の比表面積を有していてもよい。
【0068】
電解液がスルホン酸エステルを含む場合、スルホン酸エステルは、水酸化マグネシウム粒子の総質量100質量部に対して5.0質量部以上のスルホン酸基を含んでいてもよい。スルホン酸エステルは、水酸化マグネシウム粒子に吸着されやすい。したがって、水酸化マグネシウム粒子の質量に対するスルホン酸エステルの質量の比は比較的大きいことが好ましい。
【0069】
絶縁層320(第1絶縁層322及び第2絶縁層324)に含まれる樹脂は、例えば、メタ系芳香族ポリアミド、パラ系芳香族ポリアミド等の芳香族ポリアミド系樹脂;カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系樹脂;アクリル系樹脂;ポリビニリデンフロライド(PVDF)等のフッ素系樹脂;等である。これらの中でも、芳香族ポリアミド系樹脂が好ましく、メタ系芳香族ポリアミドがより好ましい。これらの物質は、単独で使用されてもよいし、又は組み合わせて使用されてもよい。
【0070】
基材310の厚さは、適宜決定することができ、例えば、5.0μm以上10.0μm以下、好ましくは、6.0μm以上10.0μm以下にすることができる。
【0071】
第1絶縁層322の厚さ及び第2絶縁層324の厚さの合計は、適宜決定することができ、例えば、10.0μm以上20.0μm以下、好ましくは、12.5μm以上17.5μm以下にすることができる。
【0072】
セパレータ300の厚さは、適宜決定することができ、例えば、15.0μm以上30.0μm以下、好ましくは16.0μm以上27.5μm以下にすることができる。
【0073】
図3に示す例では、正極100、負極200及びセパレータ300は、正極100の第1面112がセパレータ300の第1面312に対向し、かつ負極200の第1面212がセパレータ300の第2面314に対向するように、互いに重なっている。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
以下のようにして電池10を製造した。
【0075】
正極100を次のようにして形成した。まず、以下の材料を有機溶媒に分散させてスラリーを調製した。
活物質粒子:94.0質量部のリチウムニッケル含有複合酸化物(化学式:Li1.01(Ni0.80Co0.15Al0.05)O2)(活物質粒子は、活物質粒子の総質量100質量部に対して0.43質量部の水酸化リチウム(LiOH)を含んでいる。)
導電助剤:2.0質量部の球状黒鉛及び1.0質量部の鱗片状黒鉛
バインダー樹脂:3.0質量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)
次いで、このスラリーをアルミニウム箔(集電体110)の両面(第1面112及び第2面114)上に塗布し、スラリーを乾燥させ、プレスを実施して、活物質層120(第1活物質層122及び第2活物質層124)を形成した。集電体110、第1活物質層122及び第2活物質層124の詳細は、以下のとおりである。
(集電体110)
厚さ:15μm
(第1活物質層122)
密度:3.35g/cm3
厚さ:36.6μm
活物質粒子の目付A1:115.1g/m2
活物質粒子の比表面積S1m:0.25m2/g
(第2活物質層124)
密度:3.35g/cm3
厚さ:36.6μm
活物質粒子の目付A1:115.1g/m2
活物質粒子の比表面積S1m:0.25m2/g
【0076】
負極200を次のようにして形成した。まず、以下の材料を水に分散させてスラリーを調製した。
活物質:77.36質量部の天然黒鉛(平均粒径:16.0μm)及び19.34質量部の天然黒鉛(平均粒径:10.5μm)
導電助剤:0.3質量部の球状黒鉛
バインダー樹脂:2.0質量部のスチレン・ブタジエンゴム(SBR)
増粘剤:1.0質量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)
次いで、このスラリーを銅箔(集電体210)の両面(第1面212及び第2面214)上に塗布し、スラリーを乾燥させ、プレスを実施して、活物質層220(第1活物質層222及び第2活物質層224)を形成した。集電体210、第1活物質層222及び第2活物質層224の詳細は、以下のとおりである。
(集電体210)
厚さ:8μm
(第1活物質層222)
密度:1.55g/cm3
厚さ:50.0μm
(第2活物質層224)
密度:1.55g/cm3
厚さ:50.0μm
【0077】
セパレータ300を次のようにして形成した。まず、以下の材料を溶媒中に分散させて溶液を調製した。
無機フィラー:75質量部の水酸化マグネシウム
樹脂:25質量部のメタ系芳香族ポリアミド
次いで、この溶液をポリエチレンフィルム(基材310)の両面(第1面312及び第2面314)上に塗布して絶縁層320(第1絶縁層322及び第2絶縁層324)を形成した。基材310、第1絶縁層322及び第2絶縁層324の詳細は、以下のとおりである。
(基材310)
厚さ:6.0μm
(第1絶縁層322)
厚さ:8.0μm
水酸化マグネシウム粒子の目付A2:4.8g/m2
水酸化マグネシウム粒子の比表面積S2m:6.1m2/g
(第2絶縁層324)
厚さ:8.0μm
水酸化マグネシウム粒子の目付A2:4.8g/m2
水酸化マグネシウム粒子の比表面積S2m:6.1m2/g
【0078】
積層体12を、
図2に示すように、14個の正極100及び14個の負極200が交互に並び、かつセパレータ300がつづら折りに折り返されるように、形成した。
【0079】
電池10を、
図1に示すように、積層体12を電解液とともに外装材400に収容させて、製造した。電解液は、以下の支持塩、溶媒及び添加剤を含んでいる。
支持塩:LiPF
6
溶媒:30体積%のエチレンカーボネート(EC)、60体積%のジエチルカーボネート(DEC)及び10体積%のメチルエチルカーボネート(MEC)
添加剤:環状スルホン酸エステル(環状スルホン酸エステルは、第1活物質層122又は第2活物質層124の活物質粒子の総質量100質量部に対して0.27質量部のスルホン酸基を含んでいる。)、電解液の総質量100質量部に対して1.5質量部のビニレンカーボネート及び電解液の総質量100質量部に対して1.0質量部のフルオロエチレンカーボネート
【0080】
電池10について、残留ガスの低減を評価した。具体的には、温度25℃において、充電レート0.15C、充電終止電圧4.2V、2.3Aの定電流として、初期充電を実施した。初期充電前の電池10の体積V0(cc)及び初期充電後の電池10の体積Vcharge(cc)を測定した。以下の基準で残留ガスの低減を評価した。
○:Vcharge/V0×100が115%未満であった
×:Vcharge/V0×100が115%以上であった
【0081】
電池10について、サイクル特性を評価した。具体的には、温度45℃において、充電レート1.0C、放電レート1.0C、充電終止電圧4.2V及び放電終止電圧2.5Vとしてサイクル試験を実施した。10サイクル目の放電容量C10(mAh)及び500サイクル目の放電容量C500(mAh)を測定した。以下の基準でサイクル特性を評価した。
○:C500/C10×100が90%以上であった
×:C500/C10×100が90%未満であった
【0082】
表1は、実施例1における正極100の条件、セパレータ300の条件、残留ガスの低減及びサイクル特性を示している。
【0083】
実施例2~9及び比較例1~4のそれぞれにおける正極100の条件及びセパレータ300の条件は、表1に示す点を除いて、実施例1における正極100の条件及びセパレータ300の条件とそれぞれ同様とした。なお、表1において、比較例4における「-」は、第1絶縁層322及び第2絶縁層324が水酸化マグネシウム粒子を含まないことを意味する。
【0084】
実施例2~9及び比較例1~4のそれぞれにおける残留ガスの低減及びサイクル特性は、表1に示すようになった。
【0085】
実施例1~9の結果及び比較例1~4の結果の比較より、水酸化マグネシウム粒子の目付A2及び比表面積S2mの積P2は、活物質粒子の目付A1及び比表面積S1mの積P1の0.7倍以上にしてもよい(数値(0.7)は、有効数字1桁に丸められている。)。積P1及び積P2の関係に応じて、セル内の残留ガスを低減することができる。
【0086】
積P1及び積P2の関係によって残留ガスが低減する理由は、次のとおりと推測される。初期充電によって発生するガスの多くは、電解液内に含まれる炭酸エステルの酸化分解によって発生する炭酸ガスであると推測される。積P1は、単位面積当たりの活物質粒子の総表面積に相当し、積P2は、単位面積当たりの水酸化マグネシウム粒子の総表面積に相当する。積P1が大きいほど、炭酸ガスを発生させる化学反応の表面積(つまり、活物質粒子の総表面積)が大きくなり、炭酸ガスの発生が増加し得る。これに対して、積P2が大きいほど、炭酸ガスを吸収する化学反応の表面積(つまり、水酸化マグネシウム粒子の総表面積)が大きくなり、炭酸ガスの吸収が増加し得る。実施例1~9のそれぞれでは、炭酸ガスを吸収する化学反応の表面積(つまり、積P2)は、炭酸ガスを発生させる化学反応の表面積(つまり、積P1)に対して比較的大きな比を有しており、これによって、残留炭酸ガスが低減される。
【0087】
実施例1~9の結果より、基材310の厚さに対する第1絶縁層322の厚さの比又は基材310の厚さに対する第2絶縁層324の厚さの比は、3.8/7.5以上4.0/3.0以下にしてもよい。残留ガスは、少なくとも上述した範囲において、基材310の厚さ及び第1絶縁層322の厚さの関係又は基材310の厚さ及び第2絶縁層324の厚さの関係に依存せずに低減される。
【0088】
実施例2、3、7及び8の結果及び比較例1、3及び4の結果の比較より、第1活物質層122又は第2活物質層124の活物質粒子は、活物質粒子の総質量100質量部に対して0.52質量部以上の水酸化リチウムを含んでいてもよい。具体的には、比較例2の結果及び比較例1、3及び4の結果の比較より、サイクル特性は、水酸化リチウムの量が比較的多い場合に劣化する傾向がある。しかしながら、実施例2、3、7及び8の結果及び比較例1、3及び4の結果の比較より、水酸化リチウムの量が比較的多い場合であっても、積P1及び積P2が上述した関係を有する場合、サイクル特性の劣化を低減することができるといえる。
【0089】
水酸化リチウムの量が比較的多い場合にサイクル特性が劣化する傾向がある理由は、次のとおりと推測される。第1に、水酸化リチウム及び炭酸ガスの反応によって正極100の表面に高抵抗の炭酸リチウム(Li2CO3)が堆積され、正極100の表面におけるLiイオンのインターカレーションが阻害され得る。第2に、導電助剤によって活物質粒子間に形成された導電パスが炭酸リチウムによって遮断され、正極100の電子移動抵抗が増加し得る。第3に、活物質粒子の一次粒子間の水酸化リチウムが電解液に溶出して活物質粒子の二次粒子の表面を覆うように炭酸リチウムが形成され得る。
【0090】
水酸化リチウムの量が比較的多い場合であっても、積P1及び積P2の関係に応じてサイクル特性の劣化が低減される理由は、次のとおりと推測される。上述したように、積P1及び積P2の関係に応じて炭酸ガスを低減することができる。したがって、水酸化リチウム及び炭酸ガスの反応を低減することができる。
【0091】
【0092】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0093】
10 電池
12 積層体
100 正極
110 集電体
112 第1面
114 第2面
120 活物質層
122 第1活物質層
124 第2活物質層
130 第1リード
200 負極
210 集電体
212 第1面
214 第2面
220 活物質層
222 第1活物質層
224 第2活物質層
230 第2リード
300 セパレータ
310 基材
312 第1面
314 第2面
320 絶縁層
322 第1絶縁層
324 第2絶縁層
400 外装材